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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060549
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】甲殻類脱皮兆候判別プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20230421BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170207
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】519045387
【氏名又は名称】ASSEST株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】澤田 綾子
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】養殖場にて甲殻類を養殖するにあたり、甲殻類の脱皮のタイミングを高精度かつ自動的に判別する。
【解決手段】甲殻類の脱皮の兆候を判別する甲殻類脱皮兆候判別プログラムにおいて、甲殻類の動きを撮像した動き映像情報を取得する情報取得ステップと、過去において取得した甲殻類の動きに関する参照用動き映像情報と、当該甲殻類の脱皮の可能性との3段階以上の連関度を利用し、上記情報取得ステップにおいて取得した動き映像情報に応じた参照用動き映像情報に基づき、脱皮の可能性を判別する判別ステップとをコンピュータに実行させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲殻類の脱皮の兆候を判別する甲殻類脱皮兆候判別プログラムにおいて、
甲殻類の動きを撮像した動き映像情報を取得する情報取得ステップと、
過去において取得した甲殻類の動きに関する参照用動き映像情報と、当該甲殻類の脱皮の可能性との3段階以上の連関度を利用し、上記情報取得ステップにおいて取得した動き映像情報に応じた参照用動き映像情報に基づき、脱皮の可能性を判別する判別ステップとをコンピュータに実行させること
を特徴とする甲殻類脱皮兆候判別プログラム。
【請求項2】
上記情報取得ステップは、更に上記甲殻類のふ化させてからの期間に関する期間情報を取得し、
上記推定ステップでは、上記参照用動き映像情報と、上記参照用動き映像情報を取得した甲殻類のふ化させてからの期間に関する参照用期間情報とを有する組み合わせと、上記脱皮の可能性との3段階以上の連関度を利用し、更に上記情報取得ステップにおいて取得した上記動き映像情報に応じた参照用動き映像情報と、期間情報に応じた参照用期間情報とに基づいて脱皮の可能性を推定すること
を特徴とする請求項1記載の甲殻類脱皮兆候判別プログラム。
【請求項3】
上記情報取得ステップは、更に甲殻類が生育する水の水質に関する水質情報を取得し、
上記推定ステップでは、上記参照用動き映像情報と、過去において取得した甲殻類が生育する水の水質に関する参照用水質情報とを有する組み合わせと、上記脱皮の可能性との3段階以上の連関度を利用し、更に上記情報取得ステップにおいて取得した上記動き映像情報に応じた参照用動き映像情報と、水質情報に応じた参照用水質情報とに基づいて脱皮の可能性を推定すること
を特徴とする請求項1記載の甲殻類脱皮兆候判別プログラム。
【請求項4】
上記情報取得ステップは、更に甲殻類の動きの映像を取得るとともに、その映像を予め類型化したパターンに当てはめることで動き映像情報を取得し、
上記推定ステップでは、過去において甲殻類の動きの映像を取得するとともに、その映像を予め類型化したパターンに当てはめることにより取得した参照用動き映像情報と、上記脱皮の可能性との3段階以上の連関度を利用すること
を特徴とする請求項1~3のうち何れか1項記載の甲殻類脱皮兆候判別プログラム。
【請求項5】
甲殻類の脱皮の兆候を判別する甲殻類脱皮兆候判別プログラムにおいて、
甲殻類の動きの映像を取得するとともに、その映像から上記甲殻類の移動加速度を予め類型化したパターンに当てはめることで加速度情報を取得する情報取得ステップと、
過去において甲殻類の動きの映像を取得するとともに、その映像から上記甲殻類の移動加速度を予め類型化したパターンに当てはめることにより取得した参照用加速度情報と、当該甲殻類の脱皮の可能性との3段階以上の連関度を利用し、上記情報取得ステップにおいて取得した加速度情報に応じた参照用加速度情報に基づき、脱皮の可能性を判別する判別ステップとをコンピュータに実行させること
を特徴とする甲殻類脱皮兆候判別プログラム。
【請求項6】
上記情報取得ステップは、更に甲殻類の餌の消費量に関する餌消費量情報を取得し、
上記推定ステップでは、上記参照用動き映像情報と、過去において取得した甲殻類の餌の消費量に関する参照用餌消費量情報とを有する組み合わせと、上記脱皮の可能性との3段階以上の連関度を利用し、更に上記情報取得ステップにおいて取得した上記動き映像情報に応じた参照用動き映像情報と、餌消費量情報に応じた参照用餌消費量情報とに基づいて脱皮の可能性を推定すること
を特徴とする請求項1記載の甲殻類脱皮兆候判別プログラム。
【請求項7】
上記情報取得ステップは、更に甲殻類を撮像した画像情報を取得し、
上記推定ステップでは、上記連関度を利用するとともに、更に上記画像情報に基づいて、脱皮の可能性を推定すること
を特徴とする請求項1記載の甲殻類脱皮兆候判別プログラム。
【請求項8】
上記連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されること
を特徴とする請求項1~7のうち何れか1項記載の甲殻類脱皮兆候判別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甲殻類脱皮兆候判別プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年における水産業において養殖のウェートが高くなっている。特にエビやカニといった甲殻類等は、従来と比較して洋上や河川において大量に獲ることができなくなっており、養殖の比率が益々高くなっている。
【0003】
養殖を行う場合には、養殖場を作り、その生け簀の中に甲殻類を稚魚から育て上げ、大きく成長して肉が沢山ついた後にこれを水揚げする。ところで、このような甲殻類は脱皮してからの経過時間に応じて味が変わってくる。このため、この脱皮してからの経過時間に基づいて、水揚げのタイミングを決定する場合が多い。
【0004】
しかしながら、脱皮直後の甲殻類を水揚げしたい場合、脱皮をする徴候が現れてから即座に水揚げの準備をしないと間に合わない場合が多々ある。このため、甲殻類の脱皮の兆候を高精度に判別する必要があるが、従来においてそのような技術は未だ案出されていないのが現状であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、養殖場にて甲殻類を養殖するにあたり、甲殻類の脱皮のタイミングを高精度かつ自動的に判別することが可能な甲殻類脱皮兆候判別プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る甲殻類脱皮兆候判別プログラムは、甲殻類の脱皮の兆候を判別する甲殻類脱皮兆候判別プログラムにおいて、甲殻類の動きを撮像した動き映像情報を取得する情報取得ステップと、過去において取得した甲殻類の動きに関する参照用動き映像情報と、当該甲殻類の脱皮の可能性との3段階以上の連関度を利用し、上記情報取得ステップにおいて取得した動き映像情報に応じた参照用動き映像情報に基づき、脱皮の可能性を判別する判別ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
特段のスキルや経験が無くても、人手に頼ることなく、養殖場にて甲殻類を養殖するにあたり、甲殻類の脱皮のタイミングを高精度かつ自動的に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明を適用したシステムの全体構成を示すブロック図である。
図2】探索装置の具体的な構成例を示す図である。
図3】本発明の動作について説明するための図である。
図4】本発明の動作について説明するための図である。
図5】本発明の動作について説明するための図である。
図6】本発明の動作について説明するための図である。
図7】本発明の動作について説明するための図である。
図8】本発明の動作について説明するための図である。
図9】本発明の動作について説明するための図である。
図10】本発明の動作について説明するための図である。
図11】本発明の動作について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した甲殻類脱皮兆候判別プログラムについて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0010】
第1実施形態
図1は、本発明を適用した甲殻類脱皮兆候判別プログラムが実装される甲殻類脱皮兆候判別システム1の全体構成を示すブロック図である。甲殻類脱皮兆候判別システム1は、情報取得部9と、情報取得部9に接続された判別装置2と、判別装置2に接続されたデータベース3とを備えている。
【0011】
情報取得部9は、本システムを活用する者が各種コマンドや情報を入力するためのデバイスであり、具体的にはキーボードやボタン、タッチパネル、マウス、スイッチ等により構成される。情報取得部9は、テキスト情報を入力するためのデバイスに限定されるものではなく、マイクロフォン等のような音声を検知してこれをテキスト情報に変換可能なデバイスで構成されていてもよい。また情報取得部9は、カメラ等の画像を撮影可能な撮像装置として構成されていてもよい。情報取得部9は、紙媒体の書類から文字列を認識できる機能を備えたスキャナで構成されていてもよい。また情報取得部9は、後述する判別装置2と一体化されていてもよい。情報取得部9は、検知した情報を判別装置2へと出力する。また情報取得部9は地図情報をスキャニングすることで位置情報を特定する手段により構成されていてもよい。また情報取得部9は、温度センサ、湿度センサ、風向センサ、を測るための照度センサで構成されていてもよい。また情報取得部9は、天候についてのデータを気象庁や民間の天気予報会社から取得する通信インターフェースで構成されていてもよい。また情報取得部9は身体に装着して身体のデータを検出するための身体センサで構成されていてもよく、この身体センサは、例えば体温、心拍数、血圧、歩数、歩く速度、加速度を検出するためのセンサで構成されていてもよい。また身体センサは人間のみならず動物の生体データを取得するものであってもよい。また情報取得部9は図面等の情報をスキャニングしたり、或いはデータベースから読み出すことで取得するデバイスとして構成されていてもよい。情報取得部9は、これら以外に臭気や香りを検知する臭気センサにより構成されていてもよい。
【0012】
また、情報取得部9は、養殖場の水温を計測するための水温計、日射量を計測するための各種センサ、溶存酸素濃度を測定するための各種センサ、水質を計測するための各種センサ等も含まれる。
【0013】
データベース3は、甲殻類脱皮兆候判別を行う上で必要な様々な情報が蓄積される。
【0014】
判別装置2は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等を始めとした電子機器で構成されているが、PC以外に、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等、他のあらゆる電子機器で具現化されるものであってもよい。ユーザは、この判別装置2による探索解を得ることができる。
【0015】
図2は、判別装置2の具体的な構成例を示している。この判別装置2は、判別装置2全体を制御するための制御部24と、操作ボタンやキーボード等を介して各種制御用の指令を入力するための操作部25と、有線通信又は無線通信を行うための通信部26と、各種判断を行う判別部27と、ハードディスク等に代表され、実行すべき検索を行うためのプログラムを格納するための記憶部28とが内部バス21にそれぞれ接続されている。さらに、この内部バス21には、実際に情報を表示するモニタとしての表示部23が接続されている。
【0016】
制御部24は、内部バス21を介して制御信号を送信することにより、判別装置2内に実装された各構成要素を制御するためのいわゆる中央制御ユニットである。また、この制御部24は、操作部25を介した操作に応じて各種制御用の指令を内部バス21を介して伝達する。
【0017】
操作部25は、キーボードやタッチパネルにより具現化され、プログラムを実行するための実行命令がユーザから入力される。この操作部25は、上記実行命令がユーザから入力された場合には、これを制御部24に通知する。この通知を受けた制御部24は、判別部27を始め、各構成要素と協調させて所望の処理動作を実行していくこととなる。この操作部25は、前述した情報取得部9として具現化されるものであってもよい。
【0018】
判別部27は、探索解を判別する。この判別部27は、判別動作を実行するに当たり、必要な情報として記憶部28に記憶されている各種情報や、データベース3に記憶されている各種情報を読み出す。この判別部27は、人工知能により制御されるものであってもよい。この人工知能はいかなる周知の人工知能技術に基づくものであってもよい。
【0019】
表示部23は、制御部24による制御に基づいて表示画像を作り出すグラフィックコントローラにより構成されている。この表示部23は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)等によって実現される。
【0020】
記憶部28は、ハードディスクで構成される場合において、制御部24による制御に基づき、各アドレスに対して所定の情報が書き込まれるとともに、必要に応じてこれが読み出される。また、この記憶部28には、本発明を実行するためのプログラムが格納されている。このプログラムは制御部24により読み出されて実行されることになる。
【0021】
上述した構成からなる甲殻類脱皮兆候判別システム1における動作について説明をする。
【0022】
甲殻類脱皮兆候判別システム1では、例えば図3に示すように、参照用画像情報と、脱皮の可能性との3段階以上の連関度が予め設定されていることが前提となる。参照用画像情報とは、エビやカニ等を始めとする甲殻類についてカメラにより撮像した画像データである。この参照用画像情報は静止画像を想定しているが、これに限定されるものではなく、動画像であってもよい。参照用画像情報は、画像解析された後のデータで構成されていてもよい。参照用画像情報は、RGBによる画像のみならず、スペクトル帯域毎に色分けされたスペクトル画像で構成してもよい。また画像情報から特徴となりえる甲殻類のハサミの部分や足の部分、ヒゲの部分、口ばしも部分、目、腹部、その他全てのひれ、色等の情報を抽出し、これを類型化してもよい。その類型化を図る上では画像情報から特徴量を抽出し、機械学習、ディープラーニング技術を利用して判別してもよい。参照用画像情報は、その撮影対象の甲殻類が育っていく過程毎に時系列的に順次撮像するようにしてもよい。これにより甲殻類の成長過程、ふ化してからの期間に対する参照用画像情報を紐付けてデータ化することが可能となる。
【0023】
この参照用画像情報においてデータ化するのは、例えば甲殻類の甲殻の色やヒビ、亀裂等を中心とするものであってもよい。かかる場合において参照用画像情報は、甲殻が透明感があるか、白っぽくなっているか等をそれぞれデータ化してもよい。
【0024】
脱皮の可能性は、甲殻類が脱皮する可能性に関する情報である。脱皮の可能性は文字通り百分率で示されるものであってもよいが、これに限定されるものではなく、脱皮の可能性が高い、普通、低い等の3レベルで示されるものであってもよいし、今すぐ脱皮するか、脱皮しないかの2段階で示されるものであってもよい。脱皮の可能性をどのようにスコアリングするかについては、甲殻類を観察した専門家や飼育員が今までの経験で脱皮の可能性を判定してもらい、またそのときの甲殻類を撮像した参照用画像情報とともにデータセットとして学習させるようにしてもよい。
【0025】
図3の例では、入力データとして例えば参照用画像情報P01~P03であるものとする。このような入力データとしての参照用画像情報P01~P03は、出力としての脱皮の可能性に連結している。この出力においては、出力解としての、脱皮の可能性A~Dが表示されている。この脱皮の可能性は例えば、脱皮の可能性Aが90%、脱皮の可能性Bが50%、脱皮の可能性Cが25%等で構成されている。
【0026】
参照用画像情報は、この出力解としての脱皮の可能性A~Dに対して3段階以上の連関度を通じて互いに連関しあっている。参照用画像情報がこの連関度を介して左側に配列し、各脱皮の可能性が連関度を介して右側に配列している。連関度は、左側に配列された参照用画像情報に対して、何れの脱皮の可能性と関連性が高いかの度合いを示すものである。換言すれば、この連関度は、各参照用画像情報が、いかなる脱皮の可能性に紐付けられる可能性が高いかを示す指標であり、参照用画像情報から最も確からしい脱皮の可能性を選択する上での的確性を示すものである。図3の例では、連関度としてw13~w19が示されている。このw13~w19は以下の表1に示すように10段階で示されており、10点に近いほど、中間ノードとしての各組み合わせが出力としての脱皮の可能性と互いに関連度合いが高いことを示しており、逆に1点に近いほど中間ノードとしての各組み合わせが出力としての値段と互いに関連度合いが低いことを示している。
【0027】
【表1】
【0028】
判別装置2は、このような図3に示す3段階以上の連関度w13~w19を予め取得しておく。つまり判別装置2は、実際の探索解の判別を行う上で、参照用画像情報と、その場合の脱皮の可能性の何れが採用、評価されたか、過去のデータセットを蓄積しておき、これらを分析、解析することで図3に示す連関度を作り上げておく。
【0029】
例えば、過去において養殖場について計測した参照用画像情報に対する脱皮の可能性としては脱皮の可能性Aが最も漁獲量が多かったものとする。このようなデータセットを集めて分析することにより、参照用画像情報との連関度が強くなる。
【0030】
この分析、解析は人工知能により行うようにしてもよい。かかる場合には、例えば参照用画像情報P01である場合に、過去の脱皮の可能性の評価を行った結果の各種データから分析する。参照用画像情報P01である場合に、脱皮の可能性Aの事例が多い場合には、この脱皮の可能性の評価につながる連関度をより高く設定し、脱皮の可能性Bの事例が多い場合には、この脱皮の可能性の評価につながる連関度をより高く設定する。例えば参照用画像情報P01の例では、脱皮の可能性Aと、脱皮の可能性Cにリンクしているが、以前の事例から脱皮の可能性Aにつながるw13の連関度を7点に、脱皮の可能性Cにつながるw14の連関度を2点に設定している。
【0031】
また、この図3に示す連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されるものであってもよい。即ち、このニューラルネットワークのノードが出力に対する重み付け係数が、上述した連関度に対応することとなる。またニューラルネットワークに限らず、人工知能を構成するあらゆる意思決定因子で構成されるものであってもよい。
【0032】
かかる場合には、図4に示すように、入力データとして参照用画像情報が入力され、出力データとして脱皮の可能性が出力され、入力ノードと出力ノードの間に少なくとも1以上の隠れ層が設けられ、機械学習させるようにしてもよい。入力ノード又は隠れ層ノードの何れか一方又は両方において上述した連関度が設定され、これが各ノードの重み付けとなり、これに基づいて出力の選択が行われる。そして、この連関度がある閾値を超えた場合に、その出力を選択するようにしてもよい。
【0033】
このような連関度が、人工知能でいうところの学習済みデータとなる。このような学習済みデータを作った後に、実際にこれから新たに脱皮の可能性の判別を行う上で、上述した学習済みデータを利用して脱皮の可能性を探索することとなる。かかる場合には、実際に提案対象の養殖場における甲殻類の画像情報を新たに取得する。この提案対象の養殖場は、上述した参照用画像情報を計測した養殖場と必ずしも同一のものである必要は無く、他の養殖場の画像情報であってもよい。新たに取得する画像情報は、上述した情報取得部9により計測される。
【0034】
このようにして新たに取得した画像情報に基づいて、脱皮の可能性を判別する。かかる場合には、予め取得した図3(表1)に示す連関度を参照する。例えば、新たに取得した画像情報がP02と同一かこれに類似するものである場合には、連関度を介して脱皮の可能性Bがw15、脱皮の可能性Cが連関度w16で関連付けられている。かかる場合には、連関度の最も高い脱皮の可能性Bを最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる脱皮の可能性Cを最適解として選択するようにしてもよい。また、これ以外に矢印が繋がっていない出力解を選択してもよいことは勿論であり、連関度に基づくものであれば、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0035】
このようにして、新たに取得する画像情報から、最も好適な脱皮の可能性を探索し、ユーザに表示することができる。この探索結果を見ることにより、養殖場内の稚魚がより好適に育ち、漁獲量を上げる上で最適な脱皮の可能性を判別することが可能となる。なお、参照用画像情報が上述したように類型化されている場合、取得した画像情報もその類型に沿って分類された上で、脱皮の可能性を判別することとなる。図5は、上述した参照用画像情報に加え、上述した参照用期間情報との組み合わせと、当該組み合わせに対する脱皮の可能性との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0036】
参照用期間情報とは、参照用画像情報を取得した甲殻類のふ化させてからの期間に関する情報である。参照用期間情報は、甲殻類が生まれてからの期間を示すものでもあり、生まれてからの日数、週数、時間数で表されていてもよい。このような参照用期間情報は業者が管理するデータベースから取得しても良いし、都度手入力をしてもよい。
【0037】
図5の例では、入力データとして例えば参照用画像情報P01~P03、参照用期間情報P18~21であるものとする。このような入力データとしての、参照用画像情報に対して、参照用期間情報が組み合わさったものが、図5に示す中間ノードである。各中間ノードは、更に出力に連結している。この出力においては、出力解としての、脱皮の可能性が表示されている。
【0038】
参照用画像情報と参照用期間情報との各組み合わせ(中間ノード)は、この出力解としての、脱皮の可能性に対して3段階以上の連関度を通じて互いに連関しあっている。参照用画像情報と参照用期間情報がこの連関度を介して左側に配列し、脱皮の可能性が連関度を介して右側に配列している。連関度は、左側に配列された参照用画像情報と参照用期間情報に対して、脱皮の可能性と関連性が高いかの度合いを示すものである。換言すれば、この連関度は、各参照用画像情報と参照用期間情報が、いかなる脱皮の可能性に紐付けられる可能性が高いかを示す指標であり、参照用画像情報と参照用期間情報から最も確からしい脱皮の可能性を選択する上での的確性を示すものである。
【0039】
判別装置2は、このような図5に示す3段階以上の連関度w13~w22を予め取得しておく。つまり判別装置2は、実際の探索解の判別を行う上で、参照用画像情報と、参照用画像情報を取得する際に得た参照用期間情報、並びにその場合の脱皮の可能性が何れが好適であったか、過去のデータを蓄積しておき、これらを分析、解析することで連関度を作り上げておく。
【0040】
このような連関度が、人工知能でいうところの学習済みデータとなる。このような学習済みデータを作った後に、実際にこれから魚の脱皮の可能性の探索を行う際において、上述した学習済みデータを利用して行うこととなる。かかる場合には、実際にその脱皮の可能性の判別対象の画像情報と、期間情報とを取得する。ここで期間情報は、脱皮の可能性を新たに判別する際に画像情報の取得対象の甲殻類がふ化されてからの期間、生まれてからの期間に関するものであるが、その取得方法は、上述した参照用期間情報と同様である。
【0041】
このようにして新たに取得した画像情報と、期間情報に基づいて、最適な脱皮の可能性を探索する。かかる場合には、予め取得した図5に示す連関度を参照する。例えば、新たに取得した画像情報がP02と同一かこれに類似するものである場合であって、期間情報がP21と同一か又は類似する場合には、連関度を介してノード61dが関連付けられており、このノード61dは、脱皮の可能性Cがw19、脱皮の可能性Dが連関度w20で関連付けられている。かかる場合には、連関度の最も高い脱皮の可能性Cを最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる脱皮の可能性Dを最適解として選択するようにしてもよい。また、これ以外に矢印が繋がっていない出力解を選択してもよいことは勿論であり、連関度に基づくものであれば、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0042】
また、この図5に示す連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されるものであってもよい。即ち、このニューラルネットワークのノードが出力に対する重み付け係数が、上述した連関度に対応することとなる。またニューラルネットワークに限らず、人工知能を構成するあらゆる意思決定因子で構成されるものであってもよい。その他、人工知能に関する構成は、図4における説明と同様である。
【0043】
また、入力から伸びている連関度w1~w12の例を以下の表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
この入力から伸びている連関度w1~w12に基づいて中間ノード61が選択されていてもよい。つまり連関度w1~w12が大きいほど、中間ノード61の選択における重みづけを重くしてもよい。しかし、この連関度w1~w12は何れも同じ値としてもよく、中間ノード61の選択における重みづけは何れも全て同一とされていてもよい。
【0046】
なお、本発明によれば、上述した参照用画像情報に加え、上述した参照用期間情報の代わりに参照用水質情報との組み合わせと、当該組み合わせに対する脱皮の可能性との3段階以上の連関度に基づいて解探索を行うようにしてもよい。
【0047】
参照用期間情報の代わりに説明変数として加えられるこの参照用水質情報、水質情報は、その地域におけるあらゆる水質情報を示すものであり、甲殻類が生息する養殖場、河川、海の水質に関するあらゆるデータを含む。この水質のデータの例としては、例えばpH(水素イオン濃度)、溶存酸素量、化学的酸素消費量、アンモニア性窒素の量、亜硝酸態窒素の量、硝酸態窒素の量、これ以外の各種元素の含有量、大腸菌群数、水温、塩分濃度等があるが、これに限定されるものではない。水質のデータとしては他に硬度が挙げられ、或いは以下の化学物質の含有量で構成されている。化学物質の例としては、アンチモン及びその化合物、ウラン及びその化合物、ニッケル及びその化合物、1,2-ジクロロエタン、トルエン、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、亜塩素酸、二酸化塩素、ジクロロアセトニトリル、残留塩素、カルシウム、マグネシウム等(硬度)であるがこれらに限定されるものではない。このような参照用水質情報は、各地域単位でデータベース3内にて管理されている。
【0048】
このような水質情報も脱皮の可能性に影響を及ぼす。解探索時には、実際に判別対象の甲殻類が生息する水の水質情報を取得する。新たに取得した画像情報と、水質情報に基づいて、甲殻類の脱皮の可能性を判別する。かかる場合には、予め取得した連関度を参照し、上述した方法に基づいて脱皮の可能性を判別する。なお、本発明によれば、上述した参照用画像情報に加え、上述した参照用期間情報の代わりに参照用動き映像情報との組み合わせと、当該組み合わせに対する脱皮の可能性との3段階以上の連関度に基づいて解探索を行うようにしてもよい。
【0049】
参照用期間情報の代わりに説明変数として加えられるこの参照用動き映像情報、動き映像情報は、水中における甲殻類の動きを撮像した動画像である。甲殻類の動きは、予め定めた類型にパターン化し、これを参照用動き映像情報としてもよい。かかる場合には甲殻類の動きの軌道やしぐさを撮像した動画像を通じて解析し、これを解析した軌跡やパターンから、あらかじめ定めた類型に当てはめるようにしてもよい。かかる場合には、その類型化を図る上では画像情報から特徴量を抽出し、機械学習、ディープラーニング技術を利用して判別してもよい。このようにして、過去において取得した甲殻類の動きを撮像するとともに、その映像を予め類型化したパターンに当てはめることにより取得した参照用動き映像情報を学習させておくことで、判別対象の甲殻類の動きを撮像するとともに、その映像を予め類型化したパターンに当てはめることで取得した動き映像情報に対応する参照用動き映像情報を介して解探索を行うことが可能となる。
【0050】
このような動き映像情報も脱皮の可能性に影響を及ぼす。解探索時には、実際に判別対象の甲殻類が生息する水中における当該甲殻類の動き映像情報を取得する。新たに取得した画像情報と、動き映像情報に基づいて、甲殻類の脱皮の可能性を判別する。かかる場合には、予め取得した連関度を参照し、上述した方法に基づいて脱皮の可能性を判別する。
【0051】
なお、本発明によれば、上述した参照用画像情報に加え、上述した参照用期間情報の代わりに参照用加速度情報との組み合わせと、当該組み合わせに対する脱皮の可能性との3段階以上の連関度に基づいて解探索を行うようにしてもよい。
【0052】
参照用期間情報の代わりに説明変数として加えられるこの参照用加速度情報、加速度情報は、水中における甲殻類が移動する際の加速度に関する情報である。参照用加速度情報は、甲殻類の動きの映像を取得するとともに、その映像から甲殻類の移動加速度を予め類型化したパターンに当てはめることで加速度情報を取得するようにしてもよい。かかる場合には、その類型化を図る上では画像情報から特徴量を抽出し、機械学習、ディープラーニング技術を利用して判別してもよい。
【0053】
解探索時には、実際に甲殻類の動きを撮像するとともに、その映像から甲殻類の移動加速度を予め類型化したパターンに当てはめることで加速度情報を取得する。新たに取得した画像情報と、加速度情報に基づいて、甲殻類の脱皮の可能性を判別する。かかる場合には、予め取得した連関度を参照し、上述した方法に基づいて脱皮の可能性を判別する。
なお、本発明によれば、上述した参照用画像情報に加え、上述した参照用期間情報の代わりに参照用餌消費量情報との組み合わせと、当該組み合わせに対する脱皮の可能性との3段階以上の連関度に基づいて解探索を行うようにしてもよい。
【0054】
参照用期間情報の代わりに説明変数として加えられるこの参照用餌消費量情報、餌消費量情報は、水中における甲殻類の餌の消費量に関するあらゆる情報である。参照用餌消費量情報、餌消費量情報は、甲殻類が摂取する餌の消費量を飼育担当者が都度計測することで得るようにしてもよい。その計測方法は、餌の量を一定にした場合の残存餌量を介して測定するようにしてもよい。残存餌量は、養殖場の水中における甲殻類の餌の食べ残しによる残存した餌の量を示すものである。この残存餌量の計測については、水中に設置したカメラにより撮像した画像、或いは地上から撮像した画像を解析することで得るようにしてもよい。また残存餌量の計測は、上述した水質データから推定してもよい。またかかる場合には、水質データを構成する上述した各化学物質と実測した残存餌量との間で人工知能により、互いに3段階以上の連関度の重みづけをもって学習済みモデルを作っておき、これを利用することで水質データを介して残存餌量を推定するようにしてもよい。また撮像した画像から水の濁りに応じて水の色が変化することから、水の色と残存餌量とのデータを集めておき、これを機械学習させることで残存餌量を求めるようにしてもよい。
なお、この参照用餌消費量情報、餌消費量情報は、摂取した餌の種類に関する情報に代替されるものであってもよい。
【0055】
解探索時には、実際に判別対象の甲殻類から餌消費量情報を取得する。新たに取得した画像情報と、餌消費量情報に基づいて、甲殻類の脱皮の可能性を判別する。かかる場合には、予め取得した連関度を参照し、上述した方法に基づいて脱皮の可能性を判別する。
【0056】
なお、本発明によれば、上述した参照用画像情報に加え、上述した参照用期間情報の代わりに参照用日射量との組み合わせと、当該組み合わせに対する脱皮の可能性との3段階以上の連関度に基づいて解探索を行うようにしてもよい。
【0057】
参照用期間情報の代わりに説明変数として加えられるこの参照用日射量、日射量は、甲殻類が生息する環境への日射量である。日射量に応じて甲殻類の成長や食欲、動きが異なるものとなり、また水温にも影響を及ぼす。このため、これを学習データに組み合わせて判断することで、より高精度に判別することができる。
【0058】
解探索時には、実際に判別対象の甲殻類が生息する環境の射量を取得する。新たに取得した画像情報と、日射量に基づいて、甲殻類の脱皮の可能性を判別する。かかる場合には、予め取得した連関度を参照し、上述した方法に基づいて脱皮の可能性を判別する。
【0059】
また参照用画像情報に加え、上述した参照用日射量の代わりに参照用溶存酸素濃度との組み合わせと、当該組み合わせに対する脱皮の可能性との3段階以上の連関度を設定してもよい。
【0060】
参照用日射量の代わりに説明変数として加えられるこの参照用溶存酸素濃度は、甲殻類が生息する環境の水中における溶存酸素濃度である。このような溶存酸素濃度も脱皮の可能性との関係において大きく影響を及ぼすファクターになるため、これを説明変数に加えている。
【0061】
解探索時には、実際に判別対象の甲殻類が生息する環境の水中における溶存酸素濃度を取得する。新たに取得した画像情報と、溶存酸素濃度に基づいて、甲殻類の脱皮の可能性を判別する。かかる場合には、予め取得した連関度を参照し、上述した方法に基づいて脱皮の可能性を判別する。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものでは無い。出力に該当する探索解は、脱皮の可能性の代替として、脱皮のタイミングも提案するようにしてもよい。給餌タイミングは、どの日の何時何分に脱皮するかを示すものである。かかる場合には、学習済みモデルを作る段階で、脱皮の可能性の代替として脱皮のタイミングのデータを一緒に読み込ませて学習させる。これにより、探索解として、脱皮の可能性のみならず、その給餌タイミングも出力されることとなる。
【0063】
上述した連関度においては、10段階評価で連関度を表現しているが、これに限定されるものではなく、3段階以上の連関度で表現されていればよく、逆に3段階以上であれば100段階でも1000段階でも構わない。一方、この連関度は、2段階、つまり互いに連関しているか否か、1又は0の何れかで表現されるものは含まれない。
【0064】
上述した構成からなる本発明によれば、特段のスキルや経験が無くても、誰でも手軽に脱皮の可能性の判別・探索を行うことができる。また本発明によれば、この探索解の判断を、人間が行うよりも高精度に行うことが可能となる。更に、上述した連関度を人工知能(ニューラルネットワーク等)で構成することにより、これを学習させることでその判別精度を更に向上させることが可能となる。
【0065】
なお、上述した入力データ、及び出力データは、学習させる過程で完全に同一のものが存在しない場合も多々あることから、これらの入力データと出力データを類型別に分類した情報であってもよい。つまり、入力データを構成する情報P01、P02、・・・・P15、16、・・・は、その情報の内容に応じて予めシステム側又はユーザ側において分類した基準で分類し、その分類した入力データと出力データとの間でデータセットを作り、学習させるようにしてもよい。
【0066】
なお、上述した連関度では、参照用画像情報に加え、参照用動き映像情報、参照用期間情報、参照用水質情報、参照用加速度情報、参照用餌消費量情報、参照用餌消費量情報、参照用日射量、参照用溶存酸素濃度等の何れかとの組み合わせで構成されている場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではない。つまり連関度は、参照用画像情報に加え、参照用動き映像情報、参照用期間情報、参照用水質情報、参照用加速度情報、参照用餌消費量情報、参照用餌消費量情報、参照用日射量、参照用溶存酸素濃度等の何れか2以上との組み合わせで構成されていてもよい。また連関度は、参照用動き映像情報、参照用期間情報、参照用水質情報、参照用加速度情報、参照用餌消費量情報、参照用餌消費量情報、参照用日射量、参照用溶存酸素濃度等の何れか1以上に加え、他のファクターがこの組み合わせに加わって連関度が形成されていてもよい。
【0067】
いずれの場合も、その連関度の参照情報に合わせたデータの入力がなされ、その連関度を利用して脱皮の可能性を求める。
【0068】
また本発明は、図6に示すように参照用情報Uと参照用情報Vという2種類以上の情報の組み合わせの連関度に基づいて脱皮の可能性を判別するものである。この参照用情報Uが参照用画像情報であり、参照用情報Vが参照用日射量、参照用溶存酸素濃度、参照用水質データ、参照用動き映像情報、参照用残存餌量、参照用残存比率の何れかであるものとする。
【0069】
このとき、図6に示すように、参照用情報Uについて得られた出力をそのまま入力データとして、参照用情報Vとの組み合わせの中間ノード61を介して出力(脱皮の可能性)と関連付けられていてもよい。例えば、参照用情報U(参照用画像情報)について、図3に示すように出力解を出した後、これをそのまま入力として、他の参照用情報Vとの間での連関度を利用し、出力(脱皮の可能性)を探索するようにしてもよい。
【0070】
また、本発明によれば、3段階以上に設定されている連関度を介して最適な解探索を行う点に特徴がある。連関度は、上述した10段階以外に、例えば0~100%までの数値で記述することができるが、これに限定されるものではなく3段階以上の数値で記述できるものであればいかなる段階で構成されていてもよい。
【0071】
このような3段階以上の数値で表される連関度に基づいて最も確からしい脱皮の可能性、を判別することで、探索解の可能性の候補として複数考えられる状況下において、当該連関度の高い順に探索して表示することも可能となる。このように連関度の高い順にユーザに表示できれば、より確からしい探索解を優先的に表示することも可能となる。
【0072】
これに加えて、本発明によれば、連関度が1%のような極めて低い出力の判別結果も見逃すことなく判断することができる。連関度が極めて低い判別結果であっても僅かな兆候として繋がっているものであり、何十回、何百回に一度は、その判別結果として役に立つ場合もあることをユーザに対して注意喚起することができる。
【0073】
更に本発明によれば、このような3段階以上の連関度に基づいて探索を行うことにより、閾値の設定の仕方で、探索方針を決めることができるメリットがある。閾値を低くすれば、上述した連関度が1%のものであっても漏れなく拾うことができる反面、より適切な判別結果を好適に検出できる可能性が低く、ノイズを沢山拾ってしまう場合もある。一方、閾値を高くすれば、最適な探索解を高確率で検出できる可能性が高い反面、通常は連関度は低くてスルーされるものの何十回、何百回に一度は出てくる好適な解を見落としてしまう場合もある。いずれに重きを置くかは、ユーザ側、システム側の考え方に基づいて決めることが可能となるが、このような重点を置くポイントを選ぶ自由度を高くすることが可能となる。
【0074】
更に本発明では、上述した連関度を更新させるようにしてもよい。この更新は、例えばインターネットを始めとした公衆通信網を介して提供された情報を反映させるようにしてもよい。また参照用画像情報を初めとする各参照用情報を取得し、これらに対する脱皮の可能性に関する知見、情報、データを取得した場合、これらに応じて連関度を上昇させ、或いは下降させる。
【0075】
つまり、この更新は、人工知能でいうところの学習に相当する。新たなデータを取得し、これを学習済みデータに反映させることを行っているため、学習行為といえるものである。
【0076】
また、この連関度の更新は、公衆通信網から取得可能な情報に基づく場合以外に、専門家による研究データや論文、学会発表や、新聞記事、書籍等の内容に基づいてシステム側又はユーザ側が人為的に、又は自動的に更新するようにしてもよい。これらの更新処理においては人工知能を活用するようにしてもよい。
【0077】
第2実施形態
第2実施形態においては、参照用動き映像情報と、脱皮の可能性のデータセットを学習させる。
【0078】
図7の例では、入力データとして、各地域における参照用動き映像情報P01、P02、P03であるものとする。このような入力データとしての参照用動き映像情報P01、P02、P03は、出力としての脱皮の可能性に連結している。
【0079】
参照用動き映像情報P01、P02、P03は、この出力解としての脱皮の可能性A~Bに対して3段階以上の連関度を通じて互いに連関しあっている。参照用動き映像情報がこの連関度を介して左側に配列し、各脱皮の可能性が連関度を介して右側に配列している。連関度は、左側に配列された参照用動き映像情報に対して、何れの脱皮の可能性と関連性が高いかの度合いを示すものである。換言すれば、この連関度は、各参照用動き映像情報が、いかなる脱皮の可能性に紐付けられる可能性が高いかを示す指標であり、各参照用動き映像情報について最も確からしい脱皮の可能性を選択する上での的確性を示すものである。
【0080】
また、この連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されるものであってもよい。即ち、このニューラルネットワークのノードが出力に対する重み付け係数が、上述した連関度に対応することとなる。またニューラルネットワークに限らず、人工知能を構成するあらゆる意思決定因子で構成されるものであってもよい。
【0081】
このような連関度が、人工知能でいうところの学習済みデータとなる。このような学習済みデータを、以前の各地域の参照用動き映像情報と、脱皮の可能性とのデータセットを通じて作った後に、実際にこれから新たに脱皮の可能性の判別を行う上で、上述した学習済みデータを利用して脱皮の可能性を探索することとなる。これらのデータセットは、業者が管理しているデータベースから読み出すことで作成するようにしてもよい。解探索の方法は、上述した第1実施形態と同様であることから以下での説明を省略する。
【0082】
図8の例では、参照用動き映像情報と、参照用期間情報との組み合わせの連関度が形成される例である。
【0083】
入力データとして例えば参照用動き映像情報P01~P03、参照用期間情報P14~17であるものとする。このような入力データとしての、参照用動き映像情報に対して、参照用期間情報が組み合わさったものが、図8に示す中間ノードである。各中間ノードは、更に出力に連結している。この出力においては、出力解としての、脱皮の可能性が表示されている。
【0084】
参照用動き映像情報と参照用期間情報との各組み合わせ(中間ノード)は、この出力解としての、脱皮の可能性に対して3段階以上の連関度を通じて互いに連関しあっている。参照用動き映像情報と参照用期間情報がこの連関度を介して左側に配列し、脱皮の可能性が連関度を介して右側に配列している。連関度は、左側に配列された参照用動き映像情報と参照用期間情報に対して、脱皮の可能性と関連性が高いかの度合いを示すものである。換言すれば、この連関度は、各参照用動き映像情報と参照用期間情報が、いかなる脱皮の可能性に紐付けられる可能性が高いかを示す指標であり、参照用動き映像情報と参照用期間情報から最も確からしい脱皮の可能性を選択する上での的確性を示すものである。このため、これらの参照用動き映像情報と参照用期間情報の組み合わせで、最適な脱皮の可能性を探索していくこととなる。
【0085】
図8の例では、連関度としてw13~w22が示されている。このw13~w22は表1に示すように10段階で示されており、10点に近いほど、中間ノードとしての各組み合わせが出力と互いに関連度合いが高いことを示しており、逆に1点に近いほど中間ノードとしての各組み合わせが出力と互いに関連度合いが低いことを示している。
【0086】
探索装置2は、このような図8に示す3段階以上の連関度w13~w22を予め取得しておく。つまり探索装置2は、実際の探索解の判別を行う上で、参照用動き映像情報と参照用期間情報、並びにその場合の脱皮の可能性が何れが見合うものであったか、過去のデータを蓄積しておき、これらを分析、解析することで図8に示す連関度を作り上げておく。
【0087】
また、この図8に示す連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されるものであってもよい。即ち、このニューラルネットワークのノードが出力に対する重み付け係数が、上述した連関度に対応することとなる。またニューラルネットワークに限らず、人工知能を構成するあらゆる意思決定因子で構成されるものであってもよい。その他、人工知能に関する構成は、図4、5における説明と同様である。
【0088】
図8に示す連関度の例で、ノード61bは、参照用動き映像情報P01に対して、参照用期間情報P14の組み合わせのノードであり、脱皮の可能性Cの連関度がw15、脱皮の可能性Eの連関度がw16となっている。ノード61cは、参照用動き映像情報P02に対して、参照用期間情報P15、P17の組み合わせのノードであり、脱皮の可能性Bの連関度がw17、脱皮の可能性Dの連関度がw18となっている。
【0089】
このような連関度が、人工知能でいうところの学習済みデータとなる。このような学習済みデータを作った後に、実際にこれから脱皮の可能性を判別する際において、上述した学習済みデータを利用して行うこととなる。かかる場合には、実際に脱皮の可能性を判別しようとする地域を同様に入力する。そしてデータベース3内にある、各地域毎に整理されている動き映像情報と期間情報を取得する。
【0090】
このようにして新たに取得した動き映像情報、期間情報に基づいて、最適な脱皮の可能性を探索する。かかる場合には、予め取得した図8(表1)に示す連関度を参照する。例えば、新たに取得した動き映像情報がP02と同一かこれに類似するものである場合であって、期間情報がP17と同一か類似である場合には、連関度を介してノード61dが関連付けられており、このノード61dは、脱皮の可能性Cがw19、脱皮の可能性Dが連関度w20で関連付けられている。かかる場合には、連関度の最も高い脱皮の可能性Cを最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる脱皮の可能性Dを最適解として選択するようにしてもよい。また、これ以外に矢印が繋がっていない出力解を選択してもよいことは勿論であり、連関度に基づくものであれば、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0091】
上述した実施の形態に限定されるものでは無く、例えば図9に示すように、基調となる参照用情報と、脱皮の可能性との3段階以上の連関度を利用するようにしてもよい。かかる場合には、新たに取得した情報に応じた参照用情報と脱皮の可能性との3段階以上の連関度に基づき、解探索を行うことになる。基調となる参照用情報は、上述した全ての参照用情報(参照用画像情報に加え、参照用動き映像情報、参照用期間情報、参照用水質情報、参照用加速度情報、参照用餌消費量情報、参照用餌消費量情報、参照用日射量、参照用溶存酸素濃度等)を適用可能である。
【0092】
これらの場合も同様に、学習用データとして用いられた参照用情報に応じた情報が入力された場合に、上述した方法に基づいて解探索が行われることとなる。
【0093】
連関度を通じて求められる探索解は、更に、他の参照用情報に基づいて修正され、或いは重み付けを変化させるようにしてもよい。
【0094】
ここでいう他の参照用情報とは、上述した参照用情報の何れかを基調となる参照用情報とした場合、当該基調となる参照用情報以外のいかなる参照用情報に該当する。
【0095】
例えば、他の参照用情報の一つとして、ある参照用期間情報Fにおいて、以前において脱皮の可能性Bが判別される経緯が多かったものとする。このような参照用期間情報Fに応じた期間情報を新たに取得したとき、脱皮の可能性としての探索解Bに対して、重み付けを上げる処理を行い、換言すれば脱皮の可能性の探索解Bにつながるようにする処理を行うように予め設定しておく。
【0096】
例えば、他の参照用情報Gが、より脱皮の可能性としての探索解Cを示唆するような分析結果であり、参照用情報Fが、より脱皮の可能性としての探索解Dを示唆するような分析結果であるものとする。このように参照用情報との間での設定の後、実際に取得した情報が参照用情報Gと同一又は類似する場合には、脱皮の可能性Cの重み付けを上げる処理を行う。これに対して、実際に取得した情報が参照用情報Fと同一又は類似する場合には、脱皮の可能性Dの重み付けを上げる処理を行う。つまり、脱皮の可能性につながる連関度そのものを、この参照用情報F~Hに基づいてコントロールするようにしてもよい。或いは、脱皮の可能性を上述した連関度のみで決定した後、この求めた探索解に対して参照用情報F~Hに基づいて修正を加えるようにしてもよい。後者の場合において、参照用情報F~Hに基づいてどのように探索解としての脱皮の可能性にいかなるウェートで修正を加えるかは、都度システム側において設計したものを反映させることとなる。
【0097】
また参照用情報は、何れか1種で構成される場合に限定されるものではなく、2種以上の参照用情報に基づいて解探索するようにしてもよい。かかる場合も同様に、参照用情報の示唆する脱皮の可能性につながるケースほど、連関度を介して求められた探索解としての当該判別類型をより高く修正するようにしてもよい。
【0098】
同様に、図10に示すように、基調となる参照用情報と、他の参照用情報とを有する組み合わせに対する、脱皮の可能性との連関度を形成する場合においても、基調となる参照用情報は、いかなる参照用情報(参照用画像情報、参照用動き映像情報、参照用期間情報、参照用水質情報、参照用加速度情報、参照用餌消費量情報、参照用餌消費量情報、参照用日射量、参照用溶存酸素濃度等)も適用可能である。他の参照用情報は、基調となる参照用情報以外のいかなる参照用情報が含まれる。
【0099】
このとき、基調となる参照用情報が、参照用動き映像情報であれば、他の参照用情報としては、これ以外のいかなる参照用情報が含まれる。
【0100】
かかる場合も同様に解探索を行うことで、脱皮の可能性を推定することができる。このとき、上述した図9に示すように、連関度を通じて得られた探索解に対して、更なる他の参照用情報(参照用情報F、G、H等)を通じて、脱皮の可能性を修正するようにしてもよい。
【0101】
このとき、他の参照用情報が1のみならず、2以上組み合わさるようにして連関度が学習されるものであってもよい。
【0102】
また、図11に示すように基調となる参照用情報のみと、脱皮の可能性との間で連関度が形成されるものであってもよい。この基調となる参照用情報は、第1実施形態、第2実施形態におけるいかなる参照用情報(参照用画像情報、参照用動き映像情報、参照用期間情報、参照用水質情報、参照用加速度情報、参照用餌消費量情報、参照用餌消費量情報、参照用日射量、参照用溶存酸素濃度等)も適用可能である。この図11の解探索方法は、図3の説明を引用することで以下での説明を省略する。
【0103】
なお、第1実施形態、第2実施形態ともに、養殖場に生息する甲殻類の脱皮可能性を判別する場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではなく、養殖場以外の海、川において天然に生息する甲殻類の脱皮可能性の判別にも適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0104】
1 甲殻類脱皮兆候判別システム
2 判別装置
21 内部バス
23 表示部
24 制御部
25 操作部
26 通信部
27 判別部
28 記憶部
61 ノード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11