(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060556
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】検出装置および検出方法
(51)【国際特許分類】
G01J 5/48 20220101AFI20230421BHJP
【FI】
G01J5/48 E
G01J5/48 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170215
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000205661
【氏名又は名称】大崎電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】村上 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】相京 靖明
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AC09
2G066AC13
2G066BB01
2G066BB05
2G066BB11
2G066BC01
2G066BC11
2G066BC15
2G066CA02
2G066CA08
2G066CA15
(57)【要約】
【課題】より簡易な構成により、赤外線センサの内部温度が変動する影響を補正することを目的とする。
【解決手段】
複数の赤外線検出素子が二次元に配置された赤外線センサ2が測定した、対象エリアAの温度分布を取得する取得部10と、温度分布において、互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算し、測定温度の変化量を含む、温度分布の勾配分布を求める処理部11と、求められた勾配分布に基づいて、対象エリアAに存在する検出対象の物体の有無を判定する判定部12と、判定部12による判定結果を提示する提示部13とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の赤外線検出素子が二次元に配置されたセンサが測定した、対象エリアの温度分布を取得する取得部と、
前記温度分布において、互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算し、前記測定温度の変化量を含む、前記温度分布の勾配分布を求める処理部と、
求められた前記勾配分布に基づいて、前記対象エリアに存在する検出対象の物体の有無を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を提示する提示部と
を備える検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検出装置において、
前記判定部は、前記勾配分布に含まれる前記測定温度の変化量のうち、少なくとも1つの測定温度の変化量の大きさが、前記物体の温度に関して設定されたしきい値を超える場合には、前記対象エリアには前記物体が存在すると判定する
ことを特徴とする検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検出装置において、
前記処理部は、前記温度分布において、第1方向に互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算して第1勾配分布を求め、かつ、前記第1方向に垂直な第2方向に互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算して第2勾配分布を求め、
前記判定部は、前記第1勾配分布および前記第2勾配分布の何れかにおいて、少なくとも1つの測定温度の変化量の大きさが、前記しきい値を超える場合には、前記対象エリアには前記物体が存在すると判定する
ことを特徴とする検出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の検出装置において、
さらに、前記勾配分布の経時データにおいて、前記測定温度の変化量が時間と共に所定の増加率で増加する赤外線検出素子間の測定温度の変化量を、前記物体以外の熱源として、前記勾配分布から除去する除去部を備え、
前記判定部は、前記除去部によって前記物体以外の熱源が除去された勾配分布に基づいて、前記対象エリアに存在する前記物体の有無を判定し、
前記所定の増加率は、前記物体に係る測定温度の変化量の増加率とは異なる増加率である
ことを特徴とする検出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の検出装置において、
前記温度分布は、三次元領域の前記対象エリアの温度を二次元平面上で捉えた温度分布であり、
前記センサは、前記対象エリアの床面を指向するように配置されている
ことを特徴とする検出装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の検出装置において、
前記物体は、生体を含む
ことを特徴とする検出装置。
【請求項7】
複数の赤外線検出素子が二次元に配置されたセンサが測定した、対象エリアの温度分布を取得する第1ステップと、
前記温度分布において、互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算し、前記測定温度の変化量を含む、前記温度分布の勾配分布を求める第2ステップと、
求められた前記勾配分布に基づいて、前記対象エリアに存在する検出対象の物体の有無を判定する第3ステップと、
前記第3ステップでの判定結果を提示する第4ステップと
を備える検出方法。
【請求項8】
請求項7に記載の検出方法において、
前記第3ステップは、前記勾配分布に含まれる前記測定温度の変化量のうち、少なくとも1つの測定温度の変化量の大きさが、前記物体の温度に関して設定されたしきい値を超える場合には、前記対象エリアには前記物体が存在すると判定する
ことを特徴とする検出方法。
【請求項9】
請求項8に記載の検出方法において、
前記第2ステップは、前記温度分布において、第1方向に互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算して第1勾配分布を求め、かつ、前記第1方向に垂直な第2方向に互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算して第2勾配分布を求め、
前記第3ステップは、前記第1勾配分布および前記第2勾配分布の何れかにおいて、少なくとも1つの測定温度の変化量の大きさが、前記しきい値を超える場合には、前記対象エリアには前記物体が存在すると判定する
ことを特徴とする検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置および検出方法に関し、特に生体の検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、赤外線センサを用いて特定の領域に存在する物体を検知する技術が知られている。特に、人の検知において赤外線センサを用いることで、プライバシーに配慮しながら人の動きを認識する見守り支援や、夜間などにおいてカメラを利用することが困難な状況での侵入検知、工場等における作業員の不測の事態への備えを含むスマート保安など、様々な用途に利用されている。
【0003】
従来の赤外線センサを用いた物体の検出技術では、原理的な要因から検出精度が低下する場合がある。例えば、赤外線センサが実装された位置の近傍に発熱体が存在する場合、赤外線センサ本体に温風や冷風が当たる場合、および、赤外線センサ本体の温度が急激に変化する場合には、赤外線センサの温度精度が低下する場合がある。その他にも、赤外線センサと検出対象の物体との間に、ガラス、アクリル、水蒸気などの遠赤外線を透過しにくい物体がある場合、および、赤外線センサ本体のレンズに、遠赤外線を透過しにくい異物や水滴などの物体が付着している場合にも、赤外線センサの温度精度の低下が生ずる場合がある。
【0004】
例えば、特許文献1は、時間変化や、環境温度変化によって発生する2次元赤外線アレイセンサ内における温度ドリフトを演算補正する補正回路を内蔵した2次元赤外線アレイセンサを開示している。特許文献1が開示する補正回路は、赤外線アレイセンサの初期設定時における、温度ドリフトのない状態での画素列の出力データによって、赤外線アレイセンサの測定モードでの画素列の出力を補正し、補正後のデジタルデータを赤外線アレイセンサから出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された技術では、CPUおよび揮発性メモリを有する補正回路を赤外線センサに内蔵する構成を有するものであり、赤外線センサの構成がより複雑となる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、より簡易な構成により、赤外線センサの内部温度が変動する影響を補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係る検出装置は、複数の赤外線検出素子が二次元に配置されたセンサが測定した、対象エリアの温度分布を取得する取得部と、前記温度分布において、互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算し、前記測定温度の変化量を含む、前記温度分布の勾配分布を求める処理部と、求められた前記勾配分布に基づいて、前記対象エリアに存在する検出対象の物体の有無を判定する判定部と、前記判定部による判定結果を提示する提示部とを備える。
【0009】
また、本発明に係る検出装置において、前記判定部は、前記勾配分布に含まれる前記測定温度の変化量のうち、少なくとも1つの測定温度の変化量の大きさが、前記物体の温度に関して設定されたしきい値を超える場合には、前記対象エリアには前記物体が存在すると判定してもよい。
【0010】
また、本発明に係る検出装置において、前記処理部は、前記温度分布において、第1方向に互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算して第1勾配分布を求め、かつ、前記第1方向に垂直な第2方向に互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算して第2勾配分布を求め、前記判定部は、前記第1勾配分布および前記第2勾配分布の何れかにおいて、少なくとも1つの測定温度の変化量の大きさが、前記しきい値を超える場合には、前記対象エリアには前記物体が存在すると判定してもよい。
【0011】
また、本発明に係る検出装置において、さらに、前記勾配分布の経時データにおいて、前記測定温度の変化量が時間と共に所定の増加率で増加する赤外線検出素子間の測定温度の変化量を、前記物体以外の熱源として、前記勾配分布から除去する除去部を備え、前記判定部は、前記除去部によって前記物体以外の熱源が除去された勾配分布に基づいて、前記対象エリアに存在する前記物体の有無を判定し、前記所定の増加率は、前記物体に係る測定温度の変化量の増加率とは異なる増加率であってもよい。
【0012】
また、本発明に係る検出装置において、前記温度分布は、三次元領域の前記対象エリアの温度を二次元平面上で捉えた温度分布であり、前記センサは、前記対象エリアの床面を指向するように配置されていてもよい。
【0013】
また、本発明に係る検出装置において、前記物体は、生体を含んでいてもよい。
【0014】
上述した課題を解決するために、本発明に係る検出方法は、複数の赤外線検出素子が二次元に配置されたセンサが測定した、対象エリアの温度分布を取得する第1ステップと、前記温度分布において、互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算し、前記測定温度の変化量を含む、前記温度分布の勾配分布を求める第2ステップと、求められた前記勾配分布に基づいて、前記対象エリアに存在する検出対象の物体の有無を判定する第3ステップと、前記第3ステップでの判定結果を提示する第4ステップとを備える。
【0015】
また、本発明に係る検出方法において、前記第3ステップは、前記勾配分布に含まれる前記測定温度の変化量のうち、少なくとも1つの測定温度の変化量の大きさが、前記物体の温度に関して設定されたしきい値を超える場合には、前記対象エリアには前記物体が存在すると判定してもよい。
【0016】
また、本発明に係る検出方法において、前記第2ステップは、前記温度分布において、第1方向に互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算して第1勾配分布を求め、かつ、前記第1方向に垂直な第2方向に互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算して第2勾配分布を求め、前記第3ステップは、前記第1勾配分布および前記第2勾配分布の何れかにおいて、少なくとも1つの測定温度の変化量の大きさが、前記しきい値を超える場合には、前記対象エリアには前記物体が存在すると判定してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の赤外線検出素子が二次元に配置されたセンサが測定した、対象エリアの温度分布において、互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算し、測定温度の変化量を含む、温度分布の勾配分布を求めるので、より簡易な構成により、赤外線センサの内部温度が変動する影響を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る検出装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態に係る検出装置の検出範囲である対象エリアの一例を示す模式図である。
【
図4A】
図4Aは、第1の実施の形態に係る検出装置が取得した温度分布の一例を説明するための図である。
【
図4B】
図4Bは、第1の実施の形態に係る検出装置が取得した温度分布の一例を説明するための図である。
【
図4C】
図4Cは、第1の実施の形態に係る検出装置が取得した温度分布の一例を説明するための図である。
【
図4D】
図4Dは、第1の実施の形態に係る検出装置が取得した温度分布の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態に係る検出装置が取得した赤外線センサによる1日の測定値の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施の形態に係る検出装置が用いる赤外線センサの本体における温度の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施の形態に係る検出装置における空調設備の影響を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1の実施の形態に係る検出装置によって求められる勾配分布の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施の形態に係る検出装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図10は、第1の実施の形態に係る検出装置の効果を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第2の実施の形態に係る検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、第2の実施の形態に係る検出装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、
図1から
図12を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態では、検出対象の物体は、人である場合を例に挙げて説明する。
【0020】
[発明の概要]
はじめに、本実施の形態に係る発明の概要を説明する。
【0021】
本実施の形態に係る検出装置1は、対象エリアAに設置された赤外線センサ2の内部温度が変動する影響を補正して、対象エリアAに存在する人を検出する。特に、本実施の形態では、環境温度の変化に伴う赤外線センサ2の内部温度の変化と、同じ状況下で測定された温度分布の変化の特徴との関係に着目して補正を行う。
【0022】
図1に示すように、検出装置1は、赤外線センサ2と通信可能に接続されており、赤外線センサ2が測定した対象エリアAの温度分布の取得、および処理、さらには対象エリアAに存在する人の有無を検出する。
【0023】
本実施の形態で用いる赤外線センサ2は、二次元の赤外線アレイセンサであり、8行、8列に配置した64個の赤外線検出素子を用いて縦横8×8のピクセルマトリクスを構成する。赤外線センサ2は、三次元領域の対象エリアA内の温度変化を二次元平面上で検知することができ、64画素の各画素の位置は、三次元領域の対象エリアAにおける二次元位置座標として用いられる。また、各画素での赤外線エネルギーの検出強度から、フレームごとの温度分布を取得することができる。赤外線センサ2のフレームレートは、1フレーム/秒であり、各赤外線検出素子が測定可能な温度範囲は0~80℃で、かつ、温度分解能は0.25℃である。
【0024】
対象エリアAは、例えば、ビル内の会議室などの領域であり、赤外線センサ2が有する縦横60°の視野角によって対象エリアA全体がカバーされる。
図3は、対象エリアAの一例を示す模式図であり、具体的には会議室に関する鉛直方向視の平面図である。本実施の形態では、赤外線センサ2は、対象エリアAであるビル内の会議室における天井付近の壁表面に、床面を指向するように配置される。したがって、赤外線センサ2は、対象エリアA内の温度変化を、床面に対応する二次元位置座標として縦横8×8、64画素の位置で測定することができる。対象エリアAには、机、椅子a、b、c、d、モニター、および棚が配置され、机の上にはパーテーションが置かれている。対象エリアAの入口から検出対象の人が出入りする。また、対象エリアAには、図示されない空調設備の吹き出し口が天井に埋め込まれている。
【0025】
図4Aから
図4Dは、対象エリアAの椅子a、b、c、dのそれぞれの位置に人が座ったときに赤外線センサ2が測定した対象エリアAの温度分布を縦横8×8構成、64画素のピクセルマトリクスで示した図である。対象エリアAの環境温度は、およそ18.50℃から20.25℃の範囲で測定されている。
【0026】
図4Aは、人が椅子aに座っている状態で測定された温度分布、つまり、赤外線センサ2から見た熱画像である。椅子aの位置に対応する四角で囲った画素の位置で、22.5℃が測定され、人が検出されていることがわかる。
図4Bは、人が椅子bに座った状態で測定された温度分布の熱画像であり、椅子bの位置に対応する四角で囲った画素の位置で、21.5℃が測定され、人が検出されていることがわかる。
図4Cは、人が椅子cに座った状態で測定された温度分布の熱画像であり、椅子cの位置に対応する四角で囲った画素の位置で測定温度21.75℃が得られており、人が検出されていることがわかる。
【0027】
このように、対象エリアAに人が存在する位置では、環境温度に対して2℃から3℃高い温度が測定されている。
【0028】
ここで、対象エリアA内の環境温度の変化が赤外線センサ2の測定値に与える影響について、
図5を参照して説明する。
図5は、赤外線センサ2の縦横8×8構成、合計64画素うち、対象エリアA内の人が映らない天井方向を向いた赤外線検出素子による1日の測定温度を示している。この赤外線検出素子に対応する画素は、
図4Aのピクセルマトリクスの点線で囲った位置にある64番目に配置された画素e(以下、「画素64」という。)である。
【0029】
図5に示すように、画素64の測定温度は、検出対象の人を検出しない位置に係る画素であるが、特に日中の時間帯で測定温度の変動がより大きい。測定温度の変動がより激しい日中の時間帯は、空調設備が稼働していたこと、さらに、室温データとの比較からも、画素64の位置での測定温度は空調設備の吹き出し口からの給気の影響を受けていると考えられる。
【0030】
さらに、ここで、赤外線センサ2本体の温度を赤外線センサ2に付属されたサーミスタで測定すると、
図6に示すように、空調設備が稼働していた時間帯に赤外線センサ2本体の温度が大きく変化していることがわかる。このことから、画素64の測定温度の変動は、空調設備の稼働によって赤外線センサ2の本体温度が変動したことがその要因の一つであると考えられる。前述したように、赤外線センサを用いた温度測定は、原理的に、センサ本体に温風や冷風が当たる場合やセンサ本体の温度が急激に変化する場合に、その測定精度が低下するとされる。
【0031】
図7の(c)は、空調設備が稼働していた13:00~15:00の時間範囲で測定した、赤外線センサ2の内部温度を示している。
図7の(a)および(c)は、
図7の点線で示す時刻13:47および時刻13:52の各々で赤外線センサ2が測定した対象エリアAの温度分布の熱画像を示している。
【0032】
図7の(c)に示すように、時刻13:47から時刻13:52までの5分間に、赤外線センサ2の内部温度が約2℃上昇している。時刻13:47で赤外線センサ2が測定した温度分布と(
図7の(a))5分後の時刻13:52で赤外線センサ2が測定した温度分布(
図7の(b))とを比較すると、合計64画素で示される温度分布全体において、測定温度が3℃前後上昇している。特に、合計64画素のピクセルマトリクスで示される温度分布において、各画素とその近傍の画素においての測定温度の上昇が同等であることがわかる。
【0033】
前述したように、人の存在は、環境温度に対する2~3℃の温度上昇として検出される。しかし、
図7に示されるように、空調設備が稼働している場合には、人がいることによる温度変化よりも空調設備の給気が赤外線センサ2本体に当たること等によって赤外線センサ2の内部温度が変化することによる測定温度の変動の方が大きくなっている。これは、人の検出における検出精度が低下することを意味する。つまり、赤外線センサ2の測定温度は、赤外線センサ2の内部温度によって大きく変化するため、内部温度の影響を補正する必要がある。
【0034】
そこで、本発明の実施の形態に係る検出装置1は、対象エリアA内での空調設備による給気が赤外線センサ2の内部温度の変化に与える影響が、各画素で概ね同等であることに着目して、赤外線センサ2の内部温度の影響を補正する。
【0035】
具体的には、赤外線センサ2によって測定された対象エリアAの二次元の温度分布において、互いに近接して配置された画素の温度の差を計算し、勾配を求める。
図8の(a)は、異なる時刻13:47および時刻13:52の各々で赤外線センサ2が測定した対象エリアAの温度分布を示している。時刻13:47での温度分布に対して、時刻13:52での温度分布は、赤外線センサ2の内部温度の上昇により、全体的に2~4℃高い温度分布となっている。そこで、縦横8×8のピクセルマトリクスにおいて、例えば、行方向(以下、「横方向」ということがある。)、および/又は、列方向(以下、「縦方向」ということがある。)に互いに近接して配置された画素間の測定温度の変化量、つまり差をとった勾配分布を求める。例えば、横方向における、ある画素とその2つ隣の画素との測定温度の差分を計算することができる。これは、対象エリアAにおいて人が存在する位置の画素と、人が存在しない位置、つまり、人の存在による影響がない画素との測定温度の差分により勾配を求めることがより適切であることに基づく。
【0036】
図8の(b)は、時刻13:47の温度分布、および時刻13:52の温度分布の各々で横方向の差をとって求めた勾配分布を示しており、それぞれの時刻での勾配分布は、同様の値の分布となっている。このことから、空調設備の給気が赤外線センサ2に当たることなどによって赤外線センサ2の内部温度が変化する影響は、温度分布における互いに近接して配置された画素間の測定温度の差を計算して勾配マップを生成することで補正される。
【0037】
このように、本発明の実施の形態に係る検出装置1は、赤外線センサ2が測定した温度分布の勾配分布を求め、さらに、求められた勾配分布に基づいて対象エリアAに存在する人の有無を判定することで、赤外線センサ2の内部温度が変化する影響を補正して対象エリアAに存在する人の検出を行う。
【0038】
[第1の実施の形態]
次に、上述した赤外線センサ2の内部温度の変動による影響を補正する機能を含む、第1の実施の形態に係る検出装置1の構成について、
図1のブロック図を参照して説明する。
【0039】
図1に示すように、検出装置1は、取得部10、処理部11、判定部12、提示部13、および記憶部14を備える。
【0040】
取得部10は、複数の赤外線検出素子が二次元に配置された赤外線センサ2(センサ)が測定した、対象エリアAの温度分布を取得する。具体的には、取得部10は、対象エリアAに配置された赤外線センサ2が、8行、8列に配置された64個の赤外線検出素子を用いて測定した、縦横8×8構成の合計64画素のピクセルマトリクス構成で示される温度分布を、有線または無線により取得する。
【0041】
処理部11は、取得部10によって取得された温度分布において、互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算し、測定温度の変化量を含む勾配分布を求める。
【0042】
具体的には、処理部11は、温度分布において、横方向(第1方向)に互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算して勾配分布(第1勾配分布)を求め、かつ、縦方向(第1方向に垂直な第2方向)に互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算して勾配分布(第2勾配分布)を求めることができる。
【0043】
例えば、処理部11は、64画素のピクセルマトリクス構成の温度分布において、横方向、および/又は、縦方向に、ある画素とその画素の2つ隣の画素との測定温度の差を計算し、差を含む勾配分布を生成することができる。
【0044】
判定部12は、処理部11が求めた勾配分布に基づいて、対象エリアAに存在する検出対象の人の有無を判定する。具体的には、判定部12は、処理部11が求めた勾配分布に含まれる測定温度の変化量のうち、少なくとも1つの測定温度の変化量の大きさが、検出対象の人の体温に関して設定されたしきい値を超える場合には、対象エリアAには人が存在すると判定する。
【0045】
例えば、判定部12は、勾配分布に含まれる測定温度の差の絶対値が2.0℃以上であれば、対象エリアAに人が存在すると判定することができる。また、判定部12は、縦方向の勾配分布および横方向の勾配分布の何れかにおいて、少なくとも1つの測定温度の変化量の大きさ、つまり差の絶対値が2.0℃以上である場合に、対象エリアAには人が存在すると判定することができる。
【0046】
提示部13は、判定部12による判定結果を提示する。提示部13は、例えば、図示されない表示画面、あるいは、外部の端末装置に判定結果を提示することができる。さらに、提示部13は、判定結果に基づいて予め設定された警報を自装置あるいは外部端末の表示画面やスピーカ等に、テキスト、画像、または音声情報として提示することもできる。例えば、予め設定された夜間などの検出期間に対象エリアAで人が検出された場合に、侵入の恐れ等があることを示す警報を発報することができる。あるいは、1時間に1回等、定期的に会議室等の使用状況を確認するために、判定結果を外部端末等に送出することもできる。
【0047】
記憶部14は、取得部10が取得した対象エリアAの温度分布、処理部11が求めた勾配分布、および、判定部12が人の有無の判定に用いるしきい値等を記憶する。さらに、記憶部14は、提示部13が判定結果を提示するために用いる情報を記憶する。
【0048】
[検出装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する検出装置1を実現するハードウェア構成の一例について、
図2を用いて説明する。
【0049】
図2に示すように、検出装置1は、例えば、バス101を介して接続されるプロセッサ102、主記憶装置103、通信インターフェース104、補助記憶装置105、入出力I/O106を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。また、検出装置1は、バス101を介して接続される表示装置107を備えることができる。さらに、検出装置1には、バス101を介して前述した赤外線センサ2が接続されている。
【0050】
主記憶装置103には、プロセッサ102が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ102と主記憶装置103とによって、
図1に示した処理部11、および判定部12の各機能が実現される。
【0051】
通信インターフェース104は、検出装置1と各種外部電子機器との間をネットワーク接続するためのインターフェース回路である。
図1で説明した提示部13は、判定結果を、ネットワークNWを介して通信インターフェース104より外部端末に送信する構成としてもよい。
【0052】
補助記憶装置105は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。補助記憶装置105には、記憶媒体としてハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリを使用することができる。
【0053】
補助記憶装置105は、検出装置1が実行する検出プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。補助記憶装置105によって、
図1で説明した記憶部14が実現される。また、補助記憶装置105には、しきい値に関する情報、対象エリアAに関する情報、および赤外線センサ2に関する情報が記憶されている。さらには、例えば、上述したデータやプログラムやなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0054】
入出力I/O106は、外部機器からの信号を入力したり、外部機器へ信号を出力したりするI/O端子により構成される。
【0055】
表示装置107は、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイなどによって構成される。表示装置107によっても
図1で説明した提示部13を実現することができる。
【0056】
ここで、補助記憶装置105のプログラム格納領域に格納されているプログラムは、本明細書で説明する検出方法の順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよく、並列に、あるいは呼び出しが行われたときなどの必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。また、プログラムは、1つのコンピュータにより処理されるものでもよく、複数のコンピュータによって分散処理されるものであってもよい。
【0057】
[検出装置の動作]
図9は、本実施の形態に係る検出装置1の動作を示すフローチャートである。
事前に赤外線センサ2が対象エリアAに設置され、以下の処理が開始される。
【0058】
まず、取得部10は、赤外線センサ2が測定した、対象エリアAの温度分布を取得する(ステップS1)。赤外線センサ2は二次元の赤外線アレイセンサであり、取得される温度分布は、例えば、縦横8×8構成、合計64画素のピクセルマトリクス構成による対象エリアAの二次元の温度分布である。
【0059】
次に、処理部11は、ステップS1で取得された対象エリアAの温度分布において、互いに近接して配置された画素間の測定温度の変化量を計算し、その測定温度の変化量を含む勾配分布を求める(ステップS2)。より具体的には、処理部11は、縦横8×8構成、合計64画素を有するピクセルマトリクスの温度分布において、ある画素とその横方向に2つ隣の画素との測定温度の差を計算して勾配分布を求めることができる。同様に、処理部11は、64画素のピクセルマトリクスを有する温度分布において、ある画素とその縦方向に2つ隣の画素との測定温度の差を計算して勾配分布を求めることができる。
【0060】
次に、判定部12は、ステップS2で得られた対象エリアAの勾配分布に基づいて、対象エリアAに存在する検出対象の人の有無を判定する(ステップS3)。具体的には、判定部12は、しきい値処理を行って、対象エリアAにおける人の有無を判定することができる。例えば、判定部12は、横方向の勾配分布、および、縦方向の勾配分布の何れかにおいて、これらの勾配分布に含まれる測定温度の差の絶対値のうち、少なくとも1つの差の絶対値が2.0℃以上である場合には、対象エリアAには人が存在する、と判定することができる。しきい値の具体的な値は、検出対象の熱源の特徴に応じて設定することができる。また、判定部12は、設定により、横方向の勾配分布、および縦方向の勾配分布の両方においてしきい値以上の値が存在する場合に、検出対象の人が存在する、とする判定結果を出力する構成としてもよい。あるいは、判定部12は、横方向または縦方向の一方向の勾配分布のみを用いて判定処理を行ってもよい。
【0061】
次に、提示部13は、ステップS4で得られた判定結果を提示する(ステップS4)。例えば、対象エリアAに人が存在するとする判定結果が得られた場合において、提示部13は、表示装置107または外部の端末に対して警報を発報することができる。
【0062】
次に、上述した本実施の形態に係る検出装置1の効果について、
図10を参照して説明する。
図10の上段は、対象エリアAの会議室において、検出装置1が1日にわたる期間で出力した判定結果を示している。また、
図10の下段は、比較対象として、同じ会議室の同じ期間に照度センサで検出した照明の点灯状況を示している。
【0063】
図10に示すように、時刻9:00から時刻19:00までの時間帯に照度センサが示す会議室の点灯状況と、検出装置1によって人が検出された判定結果とは一致している。ここで、時刻6:00から時刻9:00の間に照度センサのみが点灯状態「照明ON」を検出し、検出装置1は人を検出していないが、これは、警備の巡回のために照明のみが点灯され、会議室内には人が入らなかったものである。このことからも、検出装置1は、照明が点灯した状況で人が存在しなかった状況を正確に検出していることがわかる。
【0064】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る検出装置1によれば、複数の赤外線検出素子が二次元に配置された赤外線センサ2が測定した、対象エリアAの温度分布において、互いに近接して配置された赤外線検出素子間の測定温度の変化量を計算し、測定温度の変化量を含む、温度分布の勾配分布を求めるので、より簡易な構成により、赤外線センサ2の内部温度が変動する影響を補正することができる。さらに、その結果として、検出装置1はより高精度で検出対象の人を検出することができる。
【0065】
また、本実施の形態に係る検出装置1は、より高精度で人を検出することができるため、検出精度の点から従来の赤外線センサを利用することが困難であるため可視カメラが用いられているような場面において、これらの可視カメラを用いた検出装置に替えた利用が可能である。さらには、例えば、プライバシーの配慮のためにカメラを設置することが困難な商業施設や公共施設の化粧室、貸しスペース、会議室などの在室確認、高齢者の安否確認、工場の現場作業員の安否確認等にも利用することができる。また、可視カメラの利用が困難な夜間などの状況での施設や外周警備用の検出システムとしても利用することもでき、様々な場面で省人化を図ることができる。
【0066】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
第1の実施の形態では、処理部11が、対象エリアAの温度分布において互いに近接して配置された画素間の測定温度の差を計算して勾配分布を求め、さらに、判定部12が、勾配分布に基づいて対象エリアAに存在する人の有無を判定する場合について説明した。これに対し、第2の実施の形態では、さらに、勾配分布から検出対象の人以外の特定の熱源を除去する除去部15を備える。
【0068】
[検出装置の機能ブロック]
図11は、第2の実施の形態に係る検出装置1Aの構成を示すブロック図である。
図11に示すように、検出装置1Aは、二次元の赤外線アレイを有する赤外線センサ2と通信可能に接続されている。検出装置1Aは、取得部10、処理部11、判定部12、提示部13、記憶部14、および除去部15を備える。以下、第1の実施の形態と異なる構成を中心に説明する。
【0069】
除去部15は、処理部11によって求められた勾配分布の経時データにおいて、測定温度の変化量が時間と共に所定の増加率で増加する赤外線検出素子間の測定温度の変化量を、人以外の熱源として勾配分布から除去する。所定の増加率とは、検出対象である「人」の測定温度の変化量の増加率とは異なる増加率をいう。本実施の形態では、所定の増加率は、人がいる位置での測定温度の経時変化による上昇よりも緩やかな上昇である場合について説明する。
【0070】
より詳細には、除去部15は、対象エリアAに配置された人以外の特定の熱源を予め除去するように構成されている。人以外の熱源とは、例えば、
図3に示したモニター等が含まれる。除去部15は、これらの特定の熱源を、予め勾配分布から除去する。一般に、対象エリアAに人が存在する場合、人が存在する位置における測定温度は比較的急激に上昇する。一方において、モニター等の検出対象以外の物体の中には、温度の上昇が人の場合と比較して緩やかな熱源が存在する。このような場合に、除去部15が、人以外の熱源を予め除去することで、判定部12は、人以外の熱源が除去された勾配分布に基づいて対象エリアAの人の有無を判定することができる。
【0071】
なお、除去部15が除去対象とする熱源は、人がいる位置での測定温度の経時変化による上昇よりも緩やかに温度が上昇する熱源だけでなく、対象エリアAにおいて移動がなく位置が固定されているような熱源であってもよい。
【0072】
[検出装置の動作]
次に、上述した構成を有する検出装置1Aの動作について
図12のフローチャートを用いて説明する。赤外線センサ2が対象エリアAに設置され、以下の処理が開始される。
【0073】
まず、取得部10は、赤外線センサ2が測定した、対象エリアAの温度分布を取得する(ステップS1)。赤外線センサ2は二次元の赤外線アレイセンサであり、取得される温度分布は、例えば、1フレーム/秒のフレームレートで測定された縦横8×8、合計64画素のピクセルマトリクス構成を有する対象エリアAの二次元温度分布である。
【0074】
次に、処理部11は、ステップS1で取得された対象エリアAの温度分布において、互いに近接して配置された画素間の測定温度の変化量を計算し、その測定温度の変化量を含む勾配分布を求める(ステップS2)。より具体的には、処理部11は、縦横8×8構成の合計64画素を有するピクセルマトリクスの温度分布において、ある画素と、その横方向に2つ隣の画素との測定温度の差を計算して勾配分布を求める。同様に、処理部11は、64画素のピクセルマトリクスの温度分布において、ある画素と、その縦方向に2つ隣の画素との測定温度の差を計算して勾配分布を求めることができる。
【0075】
次に、除去部15は、処理部11が求めた勾配分布の経時データにおいて、所定の増加率で時間と共に測定温度が増加する熱源であって、「人」が含まれる位置での測定温度の増加率とは異なる特定の熱源を、人以外の熱源として勾配分布から除去する(ステップS20)。具体的には、除去部15は、人が存在する位置で生ずる測定温度の比較的急激な上昇と比較した場合に、より緩やかな測定温度の上昇を呈するモニターなど、既知の熱源の情報を勾配分布から除去する。なお、除去部15は、取得部10がステップS1で取得した対象エリアAの温度分布の経時データに基づいて、除去対象の人以外の特定の熱源の存在を特定してもよい。
【0076】
次に、判定部12は、ステップS20で除去部15によって人以外の熱源が除去された勾配分布に基づいて、対象エリアAに存在する人の有無を判定する(ステップS3)。例えば、判定部12は、横方向の勾配分布、および、縦方向の勾配分布の何れかにおいて、これらの勾配分布に含まれる測定温度の差の絶対値のうち、少なくとも1つの差の絶対値が2.0℃以上である場合には、対象エリアAには人が存在する、と判定することができる。
【0077】
次に、提示部13は、ステップS4で得られた判定結果を提示する(ステップS4)。例えば、提示部13は、対象エリアAに人が存在するとする判定結果が得られた場合に、表示装置107、あるいは、外部の端末に対して、警報を提示することができる。
【0078】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る検出装置1Aによれば、検出対象の人以外の特定の熱源を事前に除去するので、検出装置1Aは、より高い精度で人の検出を行うことができる。
【0079】
なお、説明した実施の形態では、検出対象の物体が人である場合について説明したが、物体は、周辺環境の温度差や温度変化を検知できるものであれば、動物などの人以外の生体、その他の熱源であってもよい。
【0080】
また、説明した実施の形態では、赤外線センサ2の内部温度の変化を生ずる要因が、特に、空調設備の給気が赤外線センサ2本体に当たる場合を例に挙げて説明した。しかし、赤外線センサ2の内部温度の変化が生ずる要因は空調設備の給気によるものに限らない。例えば、対象エリアAの温度分布において、ある画素とその近傍の画素とにおいてその影響が同等であり、かつ、対象エリアAに人が存在しない状況において、各画素の測定温度に大きな差が生じないような空調設備以外の他の要因も含まれ得る。
【0081】
また、説明した実施の形態では、対象エリアAの温度分布から勾配分布を求める際に、ある画素とその画素の2つ隣の画素との測定温度の差分を計算する場合を例示した。しかし、勾配の計算は、人が存在することによって測定温度に影響が生じている画素と、人が存在しない位置の画素との測定温度の差分を計算することができれば、2つ隣の画素同士の差分に限らない。例えば、互いに隣接する画素間の差分であってもよい。さらに、勾配の計算方法についても、例えば、横方向および/又は縦方向のカーネル(3×3)の1次微分フィルタなどを用いることができる。また、フィルタは重みの和が0となることを満たせばよく、熱源の特徴に応じたフィルタを設計することで、例えば、温度分布において縦に長く映る熱源、あるいは横に長く映る熱源を強調するフィルタ等を用いることも可能である。
【0082】
また、説明した実施の形態では、一つの検出装置1にすべての機能部が設けられている場合について説明した。しかし、検出装置1が備える各機能部は、一つのコンピュータとして実現される場合以外にも、ネットワーク上に分散した構成とすることもできる。
【0083】
以上、本発明の検出装置および検出方法における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…検出装置、2…赤外線センサ、10…取得部、11…処理部、12…判定部、13…提示部、14…記憶部、101…バス、102…プロセッサ、103…主記憶装置、104…通信インターフェース、105…補助記憶装置、106…入出力I/O、107…表示装置、NW…ネットワーク。