IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2023-6059玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法
<>
  • -玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法 図1
  • -玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法 図2
  • -玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法 図3
  • -玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法 図4
  • -玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法 図5
  • -玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法 図6
  • -玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法 図7
  • -玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法 図8
  • -玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法 図9
  • -玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法 図10
  • -玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006059
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/14 20060101AFI20230111BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B24B9/14 A
G02C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108450
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】伊川 寿
【テーマコード(参考)】
2H006
3C049
【Fターム(参考)】
2H006DA02
3C049AA03
3C049AA12
3C049AA13
3C049AC02
3C049BA02
3C049BA04
3C049BA07
3C049BB02
3C049BB06
3C049BB08
3C049BB09
3C049BC01
3C049BC02
3C049CA01
3C049CB01
(57)【要約】
【課題】玉型レンズが特殊な外周形状となっている場合に、加工前に玉型形状データに基づいてその状態を検出する方法、あるいは判断する方法、あるいは玉型レンズの加工装置及び加工方法等を提供すること。
【解決手段】前駆体レンズを加工して玉型レンズを作製する際に、玉型形状の形状ラインの一部に特異な形状となる部分がある場合に、加工に用いる玉型形状データに基づいて特異な形状を検出する検出方法であって、玉型形状データから選択された3つのデータを測点とし、角度を取得する対象としての測点であるX点から10点目にある測点をA点とし、A点とは逆方向に10点目にある測点をB点とする。A点とX点とB点とのなす角度を算出し、算出した角度に基づいて形状ラインの一部の特異な形状となる部分があるかどうかを検出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体レンズを加工して玉型レンズを作製する際に、玉型形状の外周のライン(以下、形状ラインとする)の一部に特異な形状となる部分がある場合に、加工に用いる玉型形状データに基づいて特異な形状を検出する検出方法であって、
前記玉型形状データから選択された3つのデータを測点とし、前記形状ライン上で隣接する関係にある前記測点間を直線で結んだ際の頂点位置となる中央の前記測点と隣接する前後の前記測点とのなす角度を算出し、算出した角度に基づいて前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分を検出することを特徴とする玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法。
【請求項2】
前記3つの測点と同じ測点間隔で配置された複数組の3つの測点を用いて複数の前記角度を算出し、得られた複数の前記角度に基づいて前記形状ラインの一部に特異な形状となる部分を検出することを特徴とする請求項1に記載の玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法。
【請求項3】
前記複数組の3つの測点の隣接する前記測点間を直線で結んだ際の頂点位置となる中央の前記測点は、連続した一定の前記形状ライン上の領域においてその領域のすべての前記玉型形状データを用いることを特徴とする請求項2に記載の玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法。
【請求項4】
前記連続した一定の前記形状ライン上の領域とは前記形状ラインの全長であることを特徴とする請求項3に記載の玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法。
【請求項5】
前記3つの測点を中央の前記測点を挟んだ2つの前記測点を第1の測点と第2の測点とした場合に、中央の前記測点と前記第1の測点と中央の前記測点と前記第2の測点の間の前記玉型形状データ数は同じであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法。
【請求項6】
前記3つの測点を中央の前記測点を挟んだ2つの前記測点を第1の測点と第2の測点とした場合に、前記形状ライン内に設定した原点から中央の前記測点と前記第1の測点を結んだ直線間の挟角と、原点から中央の前記測点と前記第2の測点を結んだ直線間の挟角の角度は同じであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法。
【請求項7】
前記3つの測点は1~5mmの間隔に配置されることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法。
【請求項8】
前記3つの測点となる前記玉型形状データは2次元又は3次元上の座標上の点として数値化されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法。
【請求項9】
前記特異な形状とは前記形状ラインの一部が外方に突起している形状であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法。
【請求項10】
前記特異な形状とは前記形状ラインの一部が内方に凹んでいる形状であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法。
【請求項11】
前記角度があらかじめ設定したしきい値を超えることで前記形状ラインの一部に特異な形状となる部分があることを検出することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかの検出方法によって検出された前記角度によって前記形状ラインの一部に特異な形状となる部分があると判断することを特徴とする玉型レンズの形状ラインの形状の判断方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかの検出方法によって前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分を検出した際の玉型形状データを用いて玉型レンズを作製する玉型レンズの加工装置であって、
前駆体レンズを前記玉型レンズに加工する加工手段と、前記前駆体レンズ又は/及び前記加工手段の少なくとも一方の加工の際の動作を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は前記玉型形状データに基づいて加工する際に、前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分と対応した前記玉型形状データがある場合に、そのデータに基づく加工位置での加工速度を変化させるように制御することを特徴とする玉型レンズの加工装置。
【請求項14】
前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分を検出した際の玉型形状データはデータ記憶手段に記憶され、前記制御手段は前記データ記憶手段に記憶された玉型形状データに基づいて前記前駆体レンズを加工するための制御を実行することを特徴とする請求項13に記載の玉型レンズの加工装置。
【請求項15】
前記加工速度とは前記前駆体レンズの周方向への回転速度あるいは前記前駆体レンズの前記加工手段方向への移動速度の少なくとも一方を意味することを特徴とする請求項13又は14に記載の玉型レンズの加工装置。
【請求項16】
前記加工速度とは前記加工手段の回転速度あるいは前記加工手段の前記前駆体レンズ方向への移動速度の少なくとも一方を意味することを特徴とする請求項13~15のいずれかに記載の玉型レンズの加工装置。
【請求項17】
前記制御手段は、前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分を加工させる際に、その特異な形状となる部分の前後の領域において加工速度を通常の加工速度に対して遅くなるように制御することを特徴とする請求項13~16に記載の玉型レンズの加工装置。
【請求項18】
前記玉型形状データの前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分の前記角度は前記制御手段によって算出されることを特徴とする請求項13~17のいずれかに記載の玉型レンズの加工装置。
【請求項19】
前記特異な形状とは前記形状ラインの一部が外方に突起している形状であることを特徴とする請求項13~18のいずれかに記載の玉型レンズの加工装置。
【請求項20】
請求項1~11のいずれかの検出方法によって前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分を検出した際の玉型形状データを用いて玉型レンズを作製する玉型レンズの加工方法であって、
前駆体レンズを加工して玉型レンズを作製する際に、前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分と対応した前記玉型形状データがある場合に、そのデータに基づく加工位置での加工速度を通常の加工速度に対して遅くなるように制御することを特徴とする玉型レンズの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法、判断方法、玉型レンズの加工装置及び加工方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズは、ベースとなる円形形状あるいは楕円形状の外周のレンズ(一般に丸レンズと呼称する)をフレーム形状に合わせて加工して作製する。そのフレーム形状に合わせて加工したレンズを一般に玉型レンズ、あるいは単に玉型と呼称する(以下では玉型レンズとする)。一般にユーザーが眼鏡店でフレームを選択すると、そのフレームに基づく玉型形状データが眼鏡店からレンズメーカーに送られ、レンズメーカーではその玉型形状データに基づいて丸レンズを加工して玉型レンズを作製する。一般に玉型形状データは原点を中心とした周方向を等間隔で割り付けたフレーム形状に対応した3次元座標で示されたラインデータとなる。
玉型レンズの加工はコンピュータ制御による加工装置によって行われる。加工装置は高速回転する切削工具や研削工具等の加工工具を備え、丸レンズの外周を切削あるいは研削した加工する。このような加工装置の一例について特許文献1を挙げる。
一般的に加工工程は玉型形状データに基づいて玉型レンズの形状に合わせたそれよりもわずかに大きな外周形状に加工する粗削り工程と、粗削り後にそれを玉型形状データ通りの滑らかな外形形状に仕上げる仕上げ工程とを有している。玉型形状データはそのままでは仕上げをするほどには細かくないため、玉型形状データに基づいて補完計算をして(これをスムージング処理という)スムーズな外周ラインとなるように仕上げ処理をして玉型レンズを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-177234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特異な形状、例えば角を有するように突起する部分がデザイン的に丸くなっていないような場合では仕上げ処理で必要以上に角が面取りされてしまい予定された突起状の形状にならなくなってしまう可能性があった。しかし、眼鏡店からは玉型形状データが送られてくるだけであることが多いため、レンズメーカー側ではそれが特異な形状であるかどうかはわからない場合がある。また、玉型形状データに基づいてレンズメーカー側で玉型レンズ形状を描画できたとしても、その玉型形状が特異な形状であるため仕上げ処理で丸くなってしまうかどうかはにわかにはわからない。そのため従来から特殊な形状であることを玉型レンズの加工前に客観的に検出する技術が望まれていた。
また、眼鏡店から送られてきた玉型形状データに間違いがある場合、例えばフレームの測定ミス、データの入力ミス、フレームの内面の欠損等があると、そのような玉型形状データで加工するとレンズが窪んで欠けたような玉型レンズを作製してしまいことにもなりかねない。そのような間違いをなくす必要があった。そのような玉型形状データの間違いはレンズメーカーに送る前に眼鏡店側でもチェックできることがよい。
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであり、その目的は、玉型レンズが特殊な外周形状となっている場合に、加工前に玉型形状データに基づいてその状態を検出する方法、あるいは判断する方法、あるいは玉型レンズの加工装置及び加工方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1の手段では、前駆体レンズを加工して玉型レンズを作製する際に、玉型形状の外周のライン(以下、形状ラインとする)の一部に特異な形状となる部分がある場合に、加工に用いる玉型形状データに基づいて特異な形状を検出する検出方法であって、前記玉型形状データから選択された3つのデータを測点とし、前記形状ライン上で隣接する関係にある前記測点間を直線で結んだ際の頂点位置となる中央の前記測点と隣接する前後の前記測点とのなす角度を算出し、算出した角度に基づいて前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分を検出するようにした。
玉型形状データは形状ラインに反映されるデータである。これによって玉型形状データに基づいて加工される玉型形状の形状ライン上に周囲とは異なる特異な形状となる部分がある場合に、それを検出することができ、実際に眼鏡レンズを玉型形状に加工をする前に予定した形状に加工できるかどうかを検出結果に基づいて判断することができる。
玉型形状データのうち3つの測点を用いることで特異な形状でなければある位置の上記の「角度」は一定の角度内に収まることとなるが、特異な形状だと角度が大きく異なることがある。それを検出するものである。「測点間を直線で結んだ際の頂点位置となる中央の測点と隣接するの前記測点とのなす角度」はいいかえると「前後それぞれの測点と中央の測点とを結んだ際の2つの直線の交点の角度」でもある。
このような検出はレンズメーカー側のみならずレンズを発注する眼鏡店側でもコンピュータ装置を使用して算出して実施することが可能である。眼鏡店側で検出できれば間違った発注を防止することができる。
【0006】
「前駆体レンズ」は上記背景技術で説明した丸レンズのような玉型レンズを作製するために加工されるレンズである。
「玉型形状データ」は玉型レンズの形状ラインを加工するための位置データであり、3次元座標で示された多数のラインデータである。一般にフレーム形状に対応した数値データとされる。フレーム形状はフレームの立体形状に応じた3次元座標データがよいが、フレームを正面視した際の輪郭的な形状だけでも概ね角度は算出できるため2次元座標データでもよい。
「3つの測点」は玉型形状データから選択される。玉型形状データのどのような測点間隔でも理論上角度は得られるが、特異な形状を検出するできる精度が人の眼の前に配置するフレームの形状から演繹されるべきである。また、玉型形状データの数にもよる。眼鏡のフレームの外周長さは一般に100mm~200mm程度である。例えば、玉型形状データのデータ数を1000点とする。この1000点の位置はフレーム内の原点を中心として360度/1000の均等の角度間隔で取得する。1000点の隣接する測点の間隔は概ね0.1~0.2mm程度の距離となる。隣接する一点間隔に3つの測点を配置するとそれらの距離は0.2~0.4mm程度となってしまう。それでは近すぎて特異な形状を検出できる程度の角度の大きな変化を検出しにくい。一方、例えば隣接する測点間に100点あるとすると20~40mm程度の間隔での角度の検出となってしまう。この場合では例えば突起状の特異な形状の角度を緩やかに検出してしまう可能性がある。そのため検出対象とする3つの測点の距離については、オーダー的にはその中間の一桁台のmm単位であることがよく、更に1~2mm程度の距離であることがよりよい。
一方、データに大きな「欠け」がある場合ではそれで作製した場合の窪み自体の大きさが長さ数mmに及ぶことがあり深さも同様である。その場合では「3つの測点」は上記よりも長い測点間隔であることがよく、測点間は50~150点程度、長さでは5~15mm程度であることがよい。
「中央の測点と隣接する前後の測点とのなす角度」は、外に突起する場合は内角は胸郭狭角となり、内に凹む場合は広角となる。前もってしきい値として取得した角度との関係でその角度を超えることでその位置に特異な形状があることを検出することができる。
【0007】
第2の手段では、前記3つの測点と同じ測点間隔で配置された複数組の3つの測点を用いて複数の前記角度を算出し、得られた複数の前記角度に基づいて前記形状ラインの一部に特異な形状となる部分を検出するようにした。
複数の角度を算出することで、それら検出された複数の角度データに基づいて加工できないような特異な形状、あるいはデータの欠けのように玉型レンズとして本来あってはならない特異な形状かどうかを他の角度データとの関係で判断することができる。例えば、相前後する複数の角度データがあり、ある位置で急激な角度の変化が続けばその位置に特異な形状があることを判断することができる。この複数の角度を算出は形状ラインのある一部であってもよく全周において行ってもよい。
【0008】
第3の手段では、前記複数組の3つの測点の隣接する前記測点間を直線で結んだ際の頂点位置となる中央の前記測点は、連続した一定の前記形状ライン上の領域においてその領域のすべての前記玉型形状データを用いるようにした。
つまり、3つの測点に基づく角度を一点ずつずらしながら連続してデータすべてについて角度を算出することである。このように形状ラインの連続する玉型形状データについてすべての角度を求めることで急激な角度の変化を容易に判断することができる。
第4の手段では、前記連続した一定の前記形状ライン上の領域とは前記形状ラインの全長であるようにした。
これによってフレームの形状全周の玉型形状データについて角度データを得ることができ、あるフレーム形状についてまんべんなく特異な形状がないかどうかを判断することができる。
【0009】
第5の手段では、前記3つの測点を中央の前記測点を挟んだ2つの前記測点を第1の測点と第2の測点とした場合に、中央の前記測点と前記第1の測点と中央の前記測点と前記第2の測点の間の前記玉型形状データ数は同じであるようにした。
つまり、中央の測点を基準に第1の測点までと第2の測点までのデータ数は同じ(データ数的に間隔が同じ)であることである。なるべく計算をシンプルにするためである。計算上問題がなければ、第1の測点と中央の測点と第2の測点の間の玉型形状データ数が同じでなくともよい。
第6の手段では、前記3つの測点を中央の前記測点を挟んだ2つの前記測点を第1の測点と第2の測点とした場合に、前記形状ライン内に設定した原点から中央の前記測点と前記第1の測点を結んだ直線間の挟角と、原点から中央の前記測点と前記第2の測点を結んだ直線間の挟角の角度は同じであるようにした、
玉型形状データの位置は原点を中心とした各データに均等に割り振られた角度に対応するため、中央の測点の前後の挟角を一致させることで上記と同様に計算をシンプル化することができる。
【0010】
第7の手段では、前記3つの測点は1~5mmの間隔に配置されるようにした。
上記第1の手段でも説明したように、3つの測点の長さは人の顔に装用させる眼鏡のフレーム形状としては一般に100mm~200mm程度である。そのため、フレームの特異な形状を精度よく取得するための3つの測点の間隔としては1~5mmの間隔がよく、更に1~2mm程度の距離であることがよりよい。
第8の手段では、前記3つの測点となる前記玉型形状データは2次元又は3次元上の座標上の点として数値化されているようにした。
玉型形状データは2次元又は3次元上の座標上の点、すなわちx軸-y軸座標あるいはx軸-y軸-z軸座標とすることが計算上有利だからである。x軸方向及びy軸方向はフレームの平面方向であり、z軸方向はフレームの平面方向に直交する眼球中心を通る軸線方向である。2次元で計算する場合にはz軸方向0となる。もちろんベクトル的に表現するようにしてもよい。
第9の手段では、前記特異な形状とは前記形状ラインの一部が外方に突起している形状であるようにした。
第10の手段では、前記特異な形状とは前記形状ラインの一部が内方に凹んでいる形状であるようにした。
これらは特異な形状の具体例であり一例である。外方に突起している形状とは、例えば狭角となるエッジがあってその部分で不連続に折れているような場合である。内方に凹んでいる形状はデザイン的なもの以外に、例えば形状をトレースする対象のフレームが欠けている場合も含む。外方に突起している形状も内方に凹んでいる形状も、ともにデータの入力ミスやフレーム測定におけるトレース異常やデータバグに起因する場合も含む。
【0011】
第11の手段では、前記角度があらかじめ設定したしきい値を超えることで前記形状ラインの一部に特異な形状となる部分があると判断するようにした。
この判断主体は例えばコンピュータ装置の制御手段であり、上記で算出された角度データについてしきい値を超えるかどうかを判断する。判断結果はなんらかの出力手段によって報知される。例えば、コンピュータ装置のモニター上の表示やプリンターによる帳票としてハードコピーする等によってコンピュータ装置を操作する作業者に知らされることとなる。
第12の手段では、第1~第11の手段のいずれかの検出方法によって検出された前記角度によって前記形状ラインの一部に特異な形状となる部分があると判断するようにした。
つまり、検出した結果に基づいて判断をするということである。判断主体は検出結果の数値を見て人が判断してもよく、コンピュータ装置が判断するようにしてもよい。判断手法は検出結果を例えばしきい値を超えたかどうかを判断してもよく、判断主体が主観的に判断するようにしてもよい。
【0012】
第13の手段では、第1~第11の手段のいずれかの検出方法によって前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分を検出した際の玉型形状データを用いて玉型レンズを作製する玉型レンズの加工装置であって、前駆体レンズを前記玉型レンズに加工する加工手段と、前記前駆体レンズ又は/及び前記加工手段の少なくとも一方の加工の際の動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は前記玉型形状データに基づいて加工する際に、前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分と対応した前記玉型形状データがある場合に、そのデータに基づく加工位置での加工速度を変化させるように制御するようにした。
これによって、玉型形状の形状ライン上に周囲とは異なる特異な形状となる部分がある場合に、それを検出し、玉型レンズを作製する際に、特異な形状付近での加工速度を通常の加工速度に対して遅くなるようにすることで特異な形状部位への急激な衝撃や圧力で特異な形状部分がダメージを受けるのが防止される。「変化させる」とは、例えば通常の加工における前駆体レンズに対する加工手段の相対的な移動速度よりも遅くするようなことである。その位置で一旦移動を停止するような場合も含む。
また、特異な形状は周囲に比べて大きな形状の変化があるため通常の加工速度では早すぎて形状の大きな変化に追随できず加工位置にズレが生じてしまう可能性もある。そのためこのように特異な形状付近での加工速度を通常の加工速度に対して遅くなるようにすることで加工位置のズレを防止することができる。
「加工手段」は、例えば切削やは研削をするための加工工具を有する加工装置である。制御手段はコンピュータ装置の一部であるが、加工装置がコンピュータ装置を有していてもよく、加工装置とは別体のコンピュータ装置によって加工装置を制御する構成でもよい。
【0013】
第14の手段では、前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分を検出した際の玉型形状データはデータ記憶手段に記憶され、前記制御手段は前記データ記憶手段に記憶された玉型形状データに基づいて前記前駆体レンズを加工するための制御を実行するようにした。
形状ラインの一部の特異な形状となる部分を検出した際の玉型形状データは、他のコンピュータ装置からデータ記憶手段に転送されても、当該加工装置のコンピュータ装置で計算されてもどちらでもよい。
第15の手段では、前記加工速度は前記前駆体レンズの周方向への回転速度あるいは前記前駆体レンズの前記加工手段方向への移動速度の少なくとも一方を意味する。
第16の手段では、前記加工速度とは前記加工手段の回転速度あるいは前記加工手段の前記前駆体レンズ方向への移動速度の少なくとも一方を意味する
つまり、特異な形状に対して上記のような加工における問題を防止するための具体的な加工速度をクレームしたものである。回転速度と移動速度の両方を遅くするように制御してもよく、片方だけでもよく、片方を遅くした際にかえって他方を速くするように制御してもよい。
【0014】
第17の手段では、前記制御手段は、前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分を加工させる際に、その特異な形状となる部分の前後の領域において加工速度を通常の加工速度に対して遅くなるように制御するようにした。
これによって、特異な形状となる部分だけではなく、徐々に特異な形状と接続される周囲の形状も慎重に研削することとなり加工の際に前駆体レンズ負荷がよりかかりにくくなる。
第18の手段では、前記玉型形状データの前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分の前記角度は前記制御手段によって算出されるようにした。
つまり、他のコンピュータ装置で計算するのではなく、加工装置のコンピュータ装置(CPU)で計算するようにしてもよい。
第19の手段では、前記特異な形状とは前記形状ラインの一部が外方に突起している形状であるようにした。
外方に突起している形状は特に周囲に比べて突起周辺領域が張り出し状に構成される場合であるため折れやすく、特にこのように制御して加工することで製品の不良率を減らすことができる。
第20の手段では、第1~第11の手段のいずれかの検出方法によって前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分を検出した際の玉型形状データを用いて玉型レンズを作製する玉型レンズの加工方法であって、前駆体レンズを加工して玉型レンズを作製する際に、前記形状ラインの一部の特異な形状となる部分と対応した前記玉型形状データがある場合に、そのデータに基づく加工位置での加工速度を通常の加工速度に対して遅くなるように制御するようにした。
第13の手段を方法的にクレームしたものである。このようにすれば、上記と同様に特異な形状への急激な衝撃や圧力で特異な形状部分がダメージを受けるのが防止されることとなる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1~請求項12の発明によれば、玉型形状の形状ライン上に周囲とは異なる特異な形状となる部分がある場合に、それを検出することができ、実際に眼鏡レンズを玉型形状に加工をする前に予定した形状に加工できるかどうかを検出結果に基づいて判断することができる。
請求項13~請求項20の発明によれば、玉型形状の形状ライン上に周囲とは異なる特異な形状となる部分がある場合に、それを検出し、眼鏡レンズを玉型形状に加工する際に特異な形状付近での加工速度を通常の加工速度に対して遅くなるようにすることで、特異な形状への急激な衝撃や圧力で特異な形状部分がダメージを受けるのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明にかかる実施の形態1を説明するメーカー側のコンピュータ装置、眼鏡販売店のコンピュータ装置、クラウドサーバがインターネットのネットワーク上に組み込まれていることを説明する概念図。
図2】同じ実施の形態1においてメーカー側のコンピュータ装置の電気的構成を説明する概念図。
図3】同じ実施の形態1においてクラウドサーバの電気的構成を説明する概念図。
図4】玉型形状データの角度の計算手法を説明する説明図。
図5】メーカー側のコンピュータ装置からの要求に応じてクラウドサーバが実行する玉型形状の計算~メーカー側のコンピュータ装置への結果の送信までのルーチンを説明するフローチャート。
図6図5のフローチャートにおけるサブルーチンを説明するフローチャート。
図7図5のフローチャートにおけるサブルーチンを説明するフローチャート。
図8】実施の形態2のレンズ加工装置の構造を模式的に説明する説明図。
図9】実施の形態2におけるレンズ加工装置の研削理論を砥石車とレンズの位置関係とあわせて説明する説明図。
図10】レンズ加工のメインルーチンを説明するフローチャート。
図11図10のフローチャートにおけるサブルーチンを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1の玉型レンズの形状ラインの形状の検出方法及び判断方法を図面に基づいて説明する。
まず、眼鏡販売店側でユーザー(装用者)の選択したフレームについて、図示しないトレーサーによってフレーム内周をトレースする。そのトレースして得た情報を玉型形状の外周のライン、つまり形状ラインを特定する玉型形状データとなる。玉型形状データは三次元座標データとして実際にフレームをトレースしなくとも、例えばCGデータとして作成したフレームデータから内周の三次元座標データを得るようにしてもよい。三次元座標データはトレースした結果(あるいはCGデータから)得られた三次元的な位置情報を一定間隔でサンプリングしてデジタル化したラインデータとする。本実施の形態のトレーサーではフレーム内に原点Oを設定し、原点Oの周囲の角度を所定の間隔(本実施の形態では1000等分(つまり0.36度間隔))とし、その間隔で原点Oを通りフレーム内周と交差する放射状の直線を想定し、この直線とフレームデータとの1000点の交点座標を玉型形状データとしている。
本実施の形態では眼鏡販売店がメーカー側のホームページにアクセスし、眼鏡販売店側で測定した上記の玉型形状データをオンライン上でインターネットを介してメーカー側に送信する。メーカー側はインターネットを介して取得した玉型形状データに基づいて当該玉型形状データの形状を分析する。眼鏡販売店とメーカー側のやり取りはコンピュータ装置によって実行される。図1に示すようにメーカー側のコンピュータ装置1は眼鏡販売店のコンピュータ装置2とインターネットのネットワーク3を介して接続可能である。また、メーカー側のコンピュータ装置1はWEBクライアントとしてWEBサーバ装置であるクラウドサーバ5と接続可能とされる。メーカーは玉型形状データについてクラウドサーバ5上で計算して玉型形状を分析する。そして、分析結果に基づいて玉型形状に特異な形状となる部分があるかどうかを判断する。
【0018】
次に、オンライン上での動作を実行するための電気的構成について説明する。
図2に示すように、メーカー側のコンピュータ装置1は機能部6、入力部7、出力部8及び通信インターフェース9を含んで構成される。
機能部6は、メーカー側のコンピュータ装置1の基本部分を構成するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、併設の記憶装置(例えば、ハードディスク装置、リムーバブルディスク装置、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、USBメモリ)等のハードウェア資源を含んで構成される。また、これらハードウェア資源上でコンピュータソフトウェアを実行する(演算処理される)ことによって実現されるプログラム処理手段を含んで構成される。機能部6は玉型形状データ情報管理部10を備えている。
入力部7は例えばキーボード、タッチパネル、テンキー、マウス、トラックボール等で構成される。出力部8は例えば画像を呈示する液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、画像を印刷するレーザープリンター装置等で構成される。
通信インターフェース9は情報通信網を介して、他の情報通信機器と情報をやり取りするためのインターフェースを含んで構成される。
玉型形状データ情報管理部10は、クライアントである眼鏡販売店ごとの固有の番号と、クライアントから依頼された玉型の玉型形状データとを関連付けて登録管理し、クライアントの玉型の依頼、加工、製品搬出等の管理を行う機能を有する。
【0019】
図3に示すように、クラウドサーバ5は機能部11及び通信インターフェース12を含んで構成される。機能部11は、コンピュータのCPU、ROM、RAM、併設の記憶装置(例えば、ハードディスク装置、リムーバルディスク装置、SSD(Solid State Drive))等のハードウェア資源を含んで構成される。また、ハードウェア資源上でコンピュータソフトウェアを実行することによって実現されるプログラム処理手段を含んで構成される。本発明に特化した「形状ラインの一部に特異な形状となる部分を検出する」ためのプログラム処理手段として、機能部11はプログラムに基づいて次のような計算を実行する。
(1)1000点の玉型形状データの角度の計算
メーカー側のコンピュータ装置1から送信される玉型形状データに基づいて玉型形状データの各データ位置に対応する角度データを算出する。
玉型形状データは原点Oから0.36度刻みで取得したフレームの内周の全長に対応するラインデータである。このデータ列を、0X~直線0X1000とする。
各玉型形状データの角度は次のように取得する。
0X~直線0X1000のうちのあるX点目の角度を求めようとした場合その点から所定間隔離れた前後2点を考える。この前後2点をA点とB点とする。以下、これら角度計算に使用する3点を測点とする。
図4に基づいて計算手法を例示する。角度を取得する対象としての測点であるX点目(図4では角位置、以下X点)から10点目にある測点をA点とする。A点とは逆方向に10点目にある測点をB点とする。このとき、
X点目の座標:X (a,b,c)
A点の座標 :Xn+i (l、m、n)
B点の座標 :Xn-i (p、q、r)
とする。
iはX点目から離間させるA点及びB点指定までのデータ数(点数)であり、ここでは10となる。後述するようにiを80とする計算も行う。つまり、各データについて複数の角度を得るようにする。
このような条件で直線A-Xと直線B-Xとのなす内角としての角度αは次の数1の式又は数2の式で表される。
【0020】
【数1】
【0021】
【数2】
【0022】
(2)得られた測点毎の角度の凸と凹の判断
図4では凸となる位置、つまり180度以下となる角度計算であるが、逆に凹、つまり180度以上の内角となるケースもあるため、形状がいずれであるかで数1の式と数2の式のいずれかを適用することとなる。
図4に基づいてX点が凸の場合と凹の場合の判断手法について説明する。A点とB点を直線で結び、原点OとX点を直線で結んだ際の交点Pとする。直線O-Xが直線O-Pより長い場合は、∠αは180度未満として凸であると判断し、直線O-Xが直線O-Pより短い場合は、∠αは180度以上して凹であると判断する。
本実施の形態では0X~直線0X1000のラインデータについて0Xから1つずつずらしながら上記の計算を実行し、0X~直線0X1000ごとの角度を取得し、関連付けて保存する。
【0023】
(3)しきい値
上記のように計算して算出された0X~直線0X1000の角度について前もって設定したしきい値と比較してそれより大きいかどうかを判断し、結果を保存するとともに、しきい値より大きいと判断した場合にはその旨を0X~直線0X1000と関連付けて保存する。本実施の形態では特異な形状となる部分が凸か凹かで複数(3種類)のしきい値が用意されている。
イ)第1のしきい値は、∠αが凸である場合であり、本実施の形態では115度とした。115度を超えると特異な形状であるとする。デザイン的に凸にした場合である。特異な形状となる部分として幅(長さ)が1~3mm程度を想定している。加工機によっては加工が困難な場合である。
ロ)第2のしきい値は、∠αが凹である場合であり、本実施の形態では200度とした。200度を超えると特異な形状であるとする。凹であってデザイン的に逆R型としている場合である。特異な形状となる部分として幅(長さ)が10~20mm程度を想定している。加工機によっては加工が困難な場合である。
ハ)第3のしきい値は、∠αが凹である場合であり、本実施の形態では180度とした。190度を超えると特異な形状であるとする。第2のしきい値はデータに「欠け」がある場合を想定している。玉型データに段差を有するため加工すると大きな窪みができてしまうような場合である。特異な形状となる部分として幅(長さ)が1~3mm程度を想定している。
【0024】
次に、メーカー側のコンピュータ装置1からの要求に応じてクラウドサーバ5の機能部11(CPU)が実行するプログラムに従った玉型形状の計算~メーカー側のコンピュータ装置1への結果の送信までのルーチンの一例について図5のフローチャートに基づいて説明する。尚、以下においてフローチャートに記述した各ステップの内容は記載順に従って時系列的に実行される場合のみならず、時系列的に反して実行される場合や同時に実行される場合も含む。つまり、処理は適宜変更して実行することができる。
メインルーチンにおいて、CPUは、まずステップS1においてメーカー側のコンピュータ装置1からの0X~直線0X1000のラインデータと計算を実行する旨のコマンドを受信すると、ステップS2において0X~直線0X1000のラインデータすべてについてアドレス順に第1の角度データを算出する。第1の角度は玉型の凸や凹の形状を検出し、特異な形状となる部分があるかどうかを判断する処理である。すなわち角度計算ルーチンを実行する。ステップS2ではi=10に設定して角度を計算する。
次いでステップS3に移行し、ステップS3において0X~直線0X1000のラインデータについて順に第2の角度データを算出する。第2の角度は玉型に欠けたように加工によって大きく窪んでしまうような部分があるかどうかを検出し、判断する処理である。ステップS2と同様に角度計算ルーチンを実行する。ステップS3ではi=80に設定して角度を計算する。
このように第2の角度データを算出する場合においてX点目から離間させる指定のデータ数(点数)iが第1の角度データを算出する場合よりも多いのは、第1の角度データでは主としてデザイン的な点から特異な形状となる部分を有する場合では形状が徐々に変化するのであるが、第2の角度データを算出する場合ではより大きな領域で大きく窪む「欠け」を想定するためであり、直線A-Xと直線B-Xの間隔を大きくしないと大きな「欠け」を認識できないからである。経験的に「欠け」は1~2mm程度であり、デザイン的な凹凸よりも窪みの長さや深さが急激でかつ大きくなるためi=80に設定している。
そして、ステップS4において算出したすべての玉型形状データの第1の角度データと第2の角度データをメーカー側のコンピュータ装置1に出力するとともに、併せてしきい値を超えている玉型形状データについて報告する。
【0025】
次に、ステップS2の第1のサブルーチンについて図6のフローチャートに基づいて説明する。第1のサブルーチンはステップS2の処理において個々の玉型形状データについて第1の角度データを算出するためのルーチンである。
CPUはステップS11で0X番目の玉型形状データがデータアドレスの1番目であるかどうかを判断し、1番目である場合にルーチンを開始する。ステップS12でX点とA点とB点の座標に基づいて上記のように原点Oから交点Pまでの距離と原点OからX点までの距離によって内角∠αが180度未満かどうかを判断し、∠αが180度未満であると判断した場合には凸であるとしてステップS13で上記数1の式に基づいて∠αを算出する。一方、ステップS12で内角∠αが180度以上であると判断した場合には凹であるとしてステップS14で上記数2の式に基づいて∠αを算出する。
ステップS13で∠αを算出すると、処理はステップS15に移行し、その角度が第1のしきい値、つまり凸である場合のしきい値に対して、それを超えているかどうか判断する。超えている場合にはステップS16でしきい値を超えている旨の所定のタグを付して保存する。一方、第1のしきい値を超えていないと判断した場合にはステップS17でそのまま保存する。
【0026】
これに対し、ステップS14で∠αを算出すると、処理はステップS18に移行し、その角度が第2のしきい値、つまり凹である場合のしきい値に対して、それを超えているかどうか判断する。超えている場合にはステップS16に移行して上記と同様にしきい値を超えている旨の所定のタグを付して保存する。一方、第2のしきい値を超えていないと判断した場合にはステップS17に移行してそのまま保存する。
ステップS16又はステップS17で角度データを保存した後、処理はステップS19に移行し、1000番目の角度を算出かどうかを判断し、1000番目に達していればサブルーチンを終了する。一方、1000番目に達していなければステップS20で0Xのデータ順を1つインクリメントして処理をステップS12に移行させ、次の0X番目の玉型形状データについて角度を算出するルーチンを続行する。
第1のサブルーチンによって0X~直線0X1000のすべてのデータの角度を算出するとともに、デザイン上の点から形状ラインの一部に特異な形状となる部分がある場合にそれを検出して保存することができる。
【0027】
次にステップS3の第2のサブルーチンについて図7のフローチャートに基づいて説明する。第2のサブルーチンはステップS3の処理において玉型の個々の玉型形状データについて第2の角度データを算出するため、つまり「欠け」の状態を判断するためのルーチンである。
CPUはステップS21で0X番目の玉型形状データがデータアドレスの1番目であるかどうかを判断し、1番目である場合にルーチンを開始する。ステップS22で上記数2の式に基づいて∠αを算出する。
ステップS22で上記第1のサブルーチンと同様にX点とA点とB点の座標に基づいて上記のように原点Oから交点Pまでの距離と原点OからX点までの距離によって内角∠αが180度未満かどうかを判断する。∠αが180度未満であると判断した場合には凸であるとしてステップS23で上記数1の式に基づいて∠αを算出し、処理はステップS24に移行して∠αを保存する。
一方、ステップS22で内角∠αが180度以上であると判断した場合には凹であるとしてステップS25で上記数2の式に基づいて∠αを算出する。そして、数2の式に基づいて∠αを算出した場合にはステップS26でその角度が第3のしきい値を超えているかどうか、つまりレンズの外周か欠けているか状態かどうかを判断する。第2のサブルーチンでは「欠け」の状態を判断するためであり、基本的に窪んでいるため内角∠αは180度以上となる。そのため、∠αが180度未満である場合にはしきい値を超えているかどうかの判断対象とはしない。
ステップS26で第3のしきい値を超えていないと判断した場合に処理はステップS24に移行して∠αを保存する。一方、ステップS26で第3のしきい値を超えて居ると判断した場合にはステップS27で所定のタグを付して保存する。
ステップS25又はステップS27で角度データを保存した後、処理はステップS28に移行し、1000番目に達していればサブルーチンを終了する。一方、1000番目に達していなければステップS29で0Xのデータ順を1つインクリメントして処理をステップS12に移行させ、次の0X番目の玉型形状データについて角度を算出するルーチンを続行する。
第2のサブルーチンによって0X~直線0X1000のすべてのデータの角度を算出するとともに、例えばフレームに欠けている部分があるような場合で加工すると窪みになってしまうような特異な形状となる部分がある場合にそれを検出して保存することができる。
【0028】
上記のように、メーカー側のコンピュータ装置1からの要求に応じてクラウドサーバ5が計算した結果に基づいて、メーカー側のコンピュータ装置1は出力部8の例えばディスプレイ装置からなるモニター上に1000点の玉型形状データに基づいて玉型形状を表示させ、併せて算出された第1の角度データと第2の角度データに基づいてモニター上のある玉型形状データの形状が特異な形状となることをタグに基づいて表示させる。
例えば、メーカー側のコンピュータ装置1の機能部6(CPU)は、プログラムに基づいてモニター上にx-y座標を表示させ、その座標上に玉型形状データに基づく玉型形状を表示させ、特異な形状となる部分がある場合にはその位置を玉型形状との関係で表示させる。
具体的には、もっとも大きくしきい値を超えた位置を中心にして当該特異な形状となる部分を円や正方形等の図形で囲むように表示したり、当該特異な形状となる部分の玉型形状の形状ラインの色を他の部分と違った色で表示させる等の表示方法である。
また、例えば、そのような図形的な表示方法以外に(あるいは同時に)、機能部6(CPU)はプログラムに基づいてモニター上に当該特異な形状となった角度の数値を表示させてもよい。当該特異な形状となった角度の数値だけを表示してもよく、他の数値と同じ画面上に表示してもよい。他の数値と異なるような表示、例えば画面上において下線を付したり、数値の数字の色を変える等の一見して他の数値と違うことがわかりように表示してもよい。
また、例えば、機能部6(CPU)は、そのようにモニター上に表示した情報をレーザープリンター装置のような帳票作成装置によってハードコピーとして出力してもよい。
【0029】
上記のように構成することで、実施の形態1では次のような効果が奏される。
(1)メーカー側で玉型形状データに基づいて玉型の形状を分析し、玉型形状の形状ライン上に周囲とは異なる特異な形状となる部分がある場合に、眼鏡店から送られた玉型形状データに基づいて計算するだけでそれを検出することができる。そして検出し、玉型形状データに基づいて作製したと仮定すると特異な形状となる部分があるかどうかを容易に判断できることとなる。これによって玉型レンズの仕上げ処理をする場合に例えば用意したある加工機では加工が無理であることを実際に加工してしまう前に判断することができる。
(2)デザイン的な周囲とは異なる特異な形状となる部分だけではなく、眼鏡フレームのトレースミスや実際にフレームに突起部分があるような意に反して周囲とは異なる特異な窪んだ形状となる部分がある場合も同時に検出することができる。
【0030】
(実施の形態2)
次に、玉型形状データに基づいて、実際に前駆体レンズとしてのプラスチック製の丸レンズを玉型レンズに加工する際に使用するレンズ加工装置について説明する。
図8に示すように、実施の形態2のレンズ加工装置21は丸レンズLを保持するレンズ保持機構22とレンズの周縁を研削するための加工部23を筐体24内に備えている。レンズ保持機構22は一対のチャック軸25を有し、このチャック軸25によって加工対象としての丸レンズLを挟持する。丸レンズLは第1のモータ27によってチャック軸25はとともに周方向に回転させられ、第2のモータ28の駆動によってチャック軸25の軸方向(X軸方向)に移動させられる。また、丸レンズLは第3のモータ29の駆動によって加工部23側に移動させられる。ここでは加工部23方向に対する進退をY軸方向とする。加工部23は加工手段(研削手段)としての砥石車30が取り付けられた回動軸31を備え、回動軸30は第4のモータ32によって高速回転させられる。第1のモータ27、第2のモータ28、第3のモータ27、第4のモータ31はアンプ33を介して機能部34内のコントローラ35に接続されている。尚、図8は簡略化した図であり、本発明と直接関係のない構成については省略されている。
【0031】
コントローラ35はCPUからなるレンズ加工装置21の制御部である。コントローラ35にはROM36及びRAM37が接続されている。ROM36にはレンズ加工装置21のシステムプログラム、NC加工プログラム、OS(Operation System)等の各種プログラムが記憶されている。また、コントローラ35には入力部や出力部を備えている。RAM37には製品データ、加工条件データ、機械データ等が記憶されている。本実施の形態2ではメーカー側のコンピュータ装置1とコントローラ35(機能部34)が接続されており、コンピュータ装置1から玉型形状データと、玉型形状データと関連付けられた上記実施の形態1で算出された第1の角度データ(第1の角度データにタグがあればタグも同時に)が機能部34のRAM37に記憶される。
【0032】
次に、このように構成されるレンズ加工装置21のレンズの加工動作について説明する。図9に示すように、高速回転する砥石車30に対してチャック軸25に支持された前駆体レンズとしての丸レンズLが回転しながらY軸方向に接離することで研削加工が実行される。丸レンズLは砥石車30のもっとも丸レンズLに近い点、つまりX軸と平行な線分Sを接線とする当接位置が加工位置となるため、丸レンズLは当接位置において玉型形状データの座標が重なった段階で研削が完了することとなる。線分Sを接線とする当接位置は玉型の形状やチャック軸25の回転による周方向への変位によって変化する。
コントローラ35は丸レンズLが当接位置と接する座標をチャック軸25の回転量(つまり周方向への変位量)と丸レンズLのY軸方向への移動量に基づいて算出する。コントローラ35は加工データの座標が当接位置の座標と一致するように加工制御する。コントローラ35はチャック軸25の回転量(つまり丸レンズLの周方向への変位量)と丸レンズLのY軸方向への移動量を図示しないロータリーエンコーダのような検出装置に基づいて常時取得し、その情報に基づいて第1から第4のモータ27、28、27、31を制御し加工データに従って丸レンズLを加工する。
砥石車30は複数の粗さの異なる砥石面を備えており、丸レンズLをX軸方向に移動させることで丸レンズL外周に接する面を変え、粗削り処理と仕上げ処理の複数の加工ができるようになっている。加工処理はNCプログラムによるNC制御によって実行される。
【0033】
次に、コントローラ35が制御して実行される仕上げ処理について図10のフローチャートに基づいて説明する。尚、以下においてフローチャートに記述した各ステップの内容は記載順に従って時系列的に実行される場合のみならず、時系列的に反して実行される場合や同時に実行される場合も含む。つまり、処理は適宜変更して実行することができる
ステップS31で玉型形状データが入力されると、コントローラ35は1000点の玉型形状データをよりスムーズな加工のために補間計算してデータ数を増やす処理を実行させる。補間計算では前後の複数の玉型形状データの平均を取って新たなデータとする。次いで、コントローラ35はステップS32で玉型形状データについて第1の角度データからタグの有無を認識し、当該タグのある玉型形状データを形状ライン上の特異な形状となる部分としてその玉型形状データを記憶する。
次いで、ステップS33において粗削り処理を実行させる。粗削り処理ではルーチンは数回(2~3回)行われ、少しずつ丸レンズLが削られていき、予定される玉型形状の若干外側の位置となってステップS32の処理は終了する。
次いで、ステップS34で仕上げ処理を実行させルーチンを終了する。仕上げ処理でもルーチンは数回(2~3回)行われ、徐々に丸レンズLが研削される。
【0034】
図11に示すように、ステップS34の仕上げ処理においては、次のようなサブルーチンが実行される。以下の各処理は本実施の形態2では2ms毎に繰り返し実行される。
コントローラ35はステップS341で玉型形状データと補間データ(つまり加工データ)に基づいて第1から第4のモータ27、28、27、31を制御して加工を開始する。そして、ステップS342で加工している位置がタグのある位置の10点前データの位置に達したかどうかを判断し、10点前に達したと判断するとステップS343で第1のモータ27と第3のモータ27の速度を遅くするように制御する。第1のモータ27は丸レンズLの回転角度(周方向の位相)を変更し、第3のモータ27は丸レンズLの砥石車30への接近を司るものであるため、これらの速度を遅くすることで特異な形状となる部分、つまり形状が周囲よりも大きく変化する部分が慎重に研削されることとなる。
一方、ステップS342で10点前に達していないと判断すればステップS334でそのまま通常の第1のモータ27と第3のモータ27を通常の速度で駆動させ、処理はステップS342に移行する。
【0035】
ステップS343で第1のモータ27と第3のモータ27の速度を遅くするように制御した場合においてはステップS345において当該タグのある位置から10点後データの位置に達したかどうかを判断し、達したと判断するとステップS346で第1のモータ27と第3のモータ27の速度を通常に戻すように制御する。一方、コントローラ35はステップS346で10点前に達していないと判断すれば、処理はステップS343に移行する。
このように特異な形状となっている位置の少し前からと少し後まで速度を遅くする領域とすることで特異な形状となる部分だけではなく、徐々に特異な形状と接続される周囲の形状も慎重に研削することとなり丸レンズLに加工時の負荷がよりかかりにくくなる。
次いで、ステップS347で検出装置に基づいて丸レンズL全周囲を加工したかどうか判断し、丸レンズL全周を加工したと判断すると処理を一旦終了する。一方丸レンズL全周囲を加工していないと判断した場合には処理はステップS342に移行する。
【0036】
上記のように構成することにより本実施の形態2では次のような効果が奏される。
(1)特異な形状となっている部分、通常の丸レンズLの周方向への変位量と丸レンズLのY軸方向への移動量を遅くして加工するため丸レンズLに大きな負荷がかからなくなる。特に突起しているような部分についてはこのような制御によって折れることがなくなり、大きく振動したりしなくなるため加工精度が向上する。
(2)特異な形状となっている部分の前後の領域で加工速度が減速されるため、実際に特異な形状となっている部分だけではなく、その周辺を含めて大きな負荷がかからなくなる。
【0037】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記実施の形態1ではクラウドサーバ5において角度を算出する例について説明したが、メーカー側のコンピュータ装置1のみで算出するように構成してもよい。
・上記実施の形態1では 一例としてフレーム内周をトレースするようにしたが、例えばフレーム内周に対応する型板外周をトレースするようにしてもよい。実際にトレースをせずに例えばコンピュータグラフィック作成したフレーム内周データを使用してもよい。
・上記実施の形態1の数式やしきい値は一例を示したのみであり、他の式や数値を用いて計算することも自由に可能である。
・上記実施の形態1ではデザイン的な凸形状と凹形状に基づく特異な形状となる部分と、「欠け」ていることから窪んで加工してしまうような特異な形状となる部分の両方を検出する場合について説明したが、前者あるいは後者のいずれかのみを検出するようなシステムでもよい。また、これらの検出以外に、例えばデータにバグがあって窪んだり突起するような場合を検出するようにしてもよい。
・上記実施の形態2ではレンズ加工装置21はメーカー側のコンピュータ装置1とコントローラ35が接続されて、メーカー側のコンピュータ装置1から出力された角度データに基づいて制御するように構成されていたが、メーカー側のコンピュータ装置1がレンズ加工装置21の一部として一体化していてもよい。つまり、レンズ加工装置21のコンピュータ装置とは眼鏡販売店のコンピュータ装置2がインターネットのネットワーク3を介して接続されて、レンズ加工装置21上で角度が算出されるような構成でもよい。また、その場合にクラウドサーバ5上で角度を算出するような構成でもよい。
・角度算出の際のX点とA点とB点の間隔の設定の手法は上記は一例である。つまり、上記設定したiの値は自由に変更可能である。
・上記実施の形態1や2では丸レンズの全周の角度を検出するような例で説明したが、外周の一部のみについて実行するような場合でもよい。
・上記実施の形態1では玉型形状データのデータ数を1000点としたが、この数値は測定機種や設定によって適宜変更される数値である。他のデータ数であってもよい。
・上記実施の形態2ではレンズ加工装置21の加工部23の砥石車30はその位置で高速回転するだけで、自身は丸レンズL方向にまったく移動しない。つまり、丸レンズLが自転しかつ移動することで砥石車30に接することで研削加工されるような構成であった。しかし、丸レンズLが移動せず逆に砥石車30側が移動するような構成であってよい。砥石車30側が移動することで例えば、丸レンズLがまったく自転も移動しない、あるいは移動だけするようなレンズ加工装置で本発明を実現してもよい。
・砥石車30の回転速度を特異な形状となっている位置で変化させるようにしてもよい。例えば特異な形状となっている位置で回転速度を遅くするようにしてもよい。
・上記では特異な形状となっている位置の少し前からと少し後までを移動速度を遅くする領域としており、一例としてデータ10点分の間隔を取っていたが、この間隔は適宜変更可能である。
・上記実施の形態1はレンズメーカー側での実施を例示したが、発注側である眼鏡店で実施することも可能である。
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としてもよいし、その部材の部分としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
21…レンズ加工装置、35…制御手段としてのコントローラ、37…データ記憶手段としてのRAM。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11