(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060612
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】力覚提示装置
(51)【国際特許分類】
B25J 3/00 20060101AFI20230421BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
B25J3/00 A
B25J11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170298
(22)【出願日】2021-10-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://ac.rsj-web.org/2021/eventmap/eventmap.html 掲載日:令和3年9月8日 [刊行物等] 第39回日本ロボット学会学術講演会 開催日:令和3年9月9日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度,国立研究開発法人科学技術振興機構,研究成果展開事業「繊細な力制御が可能なMR 流体アクチュエータによる汎用ハプティックマスタ」委託研究,産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武士
(72)【発明者】
【氏名】阿部 功
(72)【発明者】
【氏名】池田 旭花
(72)【発明者】
【氏名】高野 哲仁
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS24
3C707HS27
3C707HT12
3C707JT04
3C707JU12
3C707KS20
3C707LU06
3C707LU07
(57)【要約】
【課題】機構や装置が大型で、逆転駆動性、応答性に欠けるとの従来技術の問題点を解決し、コンパクトで、逆転駆動性、応答性に優れた力覚提示装置を提供すること。
【解決手段】本発明の力覚提示装置は、デルタ型パラレルリンク機構と、機能性流体アクチュエータとを備える。デルタ型パラレルリンク機構は、操作部と、該操作部をデルタ型パラレルリンク機構の設置面に対して平行姿勢のまま可動に連結する、3組のリンクアームとを備え、各リンクアームは、ジョイント部で回動自在に連結された上部リンクおよび下部リンクを備える。機能性流体アクチュエータは、1つの駆動用モータと、1つの駆動用モータの駆動力を正転駆動軸と逆転駆動軸との両方に伝達する駆動力伝達手段と、正転駆動軸と逆転駆動軸にそれぞれ連結された1対の機能性流体クラッチと、1対の機能性流体クラッチの出力を合成する出力合成手段とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
力覚提示装置であって、
デルタ型パラレルリンク機構と、機能性流体アクチュエータとを備え、
前記デルタ型パラレルリンク機構は、操作部と、前記操作部を前記デルタ型パラレルリンク機構の設置面に対して平行姿勢のまま可動に連結する、3組のリンクアームとを備え、各前記リンクアームは、ジョイント部で回動自在に連結された上部リンクおよび下部リンクを備え、
前記機能性流体アクチュエータは、1つの駆動用モータと、1つの前記駆動用モータの駆動力を正転駆動軸と逆転駆動軸との両方に伝達する駆動力伝達手段と、前記正転駆動軸と前記逆転駆動軸にそれぞれ連結された1対の機能性流体クラッチと、1対の前記機能性流体クラッチの出力を合成する出力合成手段と、
を備える、力覚提示装置。
【請求項2】
前記出力合成手段が、1つの連結部材と1対のレバーアームとを含む平行リンク機構である、請求項1に記載の力覚提示装置。
【請求項3】
前記駆動力伝達手段が、正転ギアおよび逆転ギアを含む歯車セットである、請求項1または2に記載の力覚提示装置。
【請求項4】
前記機能性流体クラッチがMR流体クラッチである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の力覚提示装置。
【請求項5】
前記出力合成手段と、前記デルタ型パラレルリンク機構の各前記下部リンクとが、同一平面上、または互いに近接した平行な平面上に配置されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の力覚提示装置。
【請求項6】
前記平行リンク機構の1対の前記レバーアームのうちの一方が、前記デルタ型パラレルリンク機構の各前記下部リンクと接続または一体化されており、かつ、1対の前記機能性流体クラッチが互いに上下位置となるように配置されている、請求項2に記載の力覚提示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚を操作者にフィードバックすることが可能な力覚提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、産業用ロボットの構成要素としてデルタ型パラレルリンク機構が知られている。このデルタ型パラレルリンク機構の手先部が上側となり、基部が下側となるように配置した概略図を
図10に示す。
図10において、θ1~θ3は各モータの出力角度である。三つのモータでθ1~θ3を制御することによって、上側の手先部の三角形は常に下側の基部の三角形と常に平行な姿勢を維持した状態で、手先部の三次元位置を調整することができる。この機構はパラレルリンク機構の一種であり、手先部の軽量化と高剛性化に有用である。
【0003】
上記のデルタ型パラレルリンク機構を操作装置に採用し、手先部を把持部として、力覚(力触覚)情報を操作者にフィードバックすることが提案されている(特許文献2、特許文献3参照。)。しかしながら、この装置は、機構が複雑となり、装置自体も大型となっていた。また、サーボモータを用いているため、逆転駆動性、応答性が十分とはいえなかった。
【0004】
近年、力覚フィードバック機能を有する遠隔操作システムとして、遠隔操作型手術支援ロボットが実用化されている。しかしながら、このようなシステムは、特に医療ロボットの操作に特化した仕様となっているために、他の用途に容易にかつ安価に適用できるものではなかった。
【0005】
また、力覚情報を操作者にフィードバックする機器に、機能性流体アクチュエータを採用することが提案されている(非特許文献1参照。)。このアクチュエータは1つの駆動モータ、一対のフラットギア、機能性流体(MR流体)クラッチ、平行リンク機構およびロータリエンコーダからなる。ACサーボモータはアクチュエータに駆動トルクを供給するが、その回転は一方向に一定速度で制御されている。ACサーボモータの一方向の回転は一対のフラットギアで正回転と逆回転に変換され、それぞれの駆動トルクが1対のMR流体クラッチによって調整され、伝達される。さらに1対の機能性流体(MR流体)クラッチの出力トルクは平行リンクを介して合成されて出力軸に出力される。本機構により、ACサーボモータの慣性は機能性流体(MR流体)クラッチによって分断されるため、出力慣性は小さく、逆転駆動性は良好である。加えて、機能性流体(MR流体)クラッチの応答時定数は約10ミリ秒と高速であるため、アクチュエータとしても高速応答できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4-45310号公報
【特許文献2】特開2020-69631号公報
【特許文献3】特開2018-192595号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kikuchi T., Abe I., Nagata T., Yamaguchi A., Takano T., Twin-Driven Actuator with Multi-layered Disc MR Fluid Clutches for Haptics, Journal of Intelligent Material Systems and Structures, DOI: 10.1177/1045389X20943958, 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、機構や装置が大型で、逆転駆動性、応答性に欠けるとの従来技術の問題点を解決し、コンパクトで、逆転駆動性、応答性に優れた力覚提示装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、ゲームコントローラや遠隔操作のユーザインタフェースに適用できる、汎用の力覚提示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による力覚提示装置は、デルタ型パラレルリンク機構と、機能性流体アクチュエータとを備え、デルタ型パラレルリンク機構は、操作部と、該操作部をデルタ型パラレルリンク機構の設置面に対して平行姿勢のまま可動に連結する、3組のリンクアームとを備え、各リンクアームは、ジョイント部で回動自在に連結された上部リンクおよび下部リンクを備え、機能性流体アクチュエータは、1つの駆動用モータと、1つの駆動用モータの駆動力を正転駆動軸と逆転駆動軸との両方に伝達する駆動力伝達手段と、正転駆動軸と逆転駆動軸にそれぞれ連結された1対の機能性流体クラッチと、1対の機能性流体クラッチの出力を合成する出力合成手段と、を備える。本発明による力覚提示装置は、デルタ型パラレルリンク機構と、機能性流体アクチュエータとを備えることにより、コンパクトで、応答性に優れた装置を提供できる。
【0011】
好ましくは、本発明による力覚提示装置は、1対の機能性流体クラッチの出力を合成する手段が、1つの連結部材と1対のレバーアームとを含む平行リンク機構である。
【0012】
好ましくは、本発明による力覚提示装置は、駆動力伝達手段が正転ギアおよび逆転ギアを含む歯車セットである。
【0013】
好ましくは、本発明による力覚提示装置は、機能性流体クラッチがMR流体クラッチである。これにより、本発明は、コンパクトで、逆転駆動性、応答性に優れた力覚提示装置を提供することができる。
【0014】
好ましくは、本発明による力覚提示装置は、出力合成手段と、デルタ型パラレルリンク機構の各下部リンクとが、同一平面上、または互いに近接した平行な平面上に配置されている。
【0015】
好ましくは、本発明による力覚提示装置は、平行リンク機構の1対のレバーアームのうちの一方が、デルタ型パラレルリンク機構の各下部リンクと接続または一体化されている。これにより、本発明は、コンパクトな装置を提供することができる。
【0016】
好ましくは、本発明による力覚提示装置は、1対の機能性流体クラッチが互いに上下位置となるように配置されている。このような配置により、本発明は、コンパクトな装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、構造が簡易で、改善された力覚提示装置を提供することができ、また、ゲームコントローラや遠隔操作のユーザインタフェースに適用できる、汎用の力覚提示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の力覚提示装置を備える例示的なシステムのブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態による力覚提示装置の上面図と斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の力覚提示装置1を構成する機能性流体アクチュエータであるツインドライブ型MR流体アクチュエータの斜視図である。
【
図4】
図4は、ツインドライブ型MR流体アクチュエータの構成要素であるMR流体クラッチの断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態による力覚提示装置の平行リンク機構を示す側面図と斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施形態による力覚提示装置の平行リンク機構の動きを示す側面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施形態による力覚提示装置の平行リンク機構の変形例の動きを示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態による力覚提示装置の上面図と斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3の実施形態による力覚提示装置の上面図と斜視図である。
【
図10】
図10は、デルタ型パラレルリンク機構の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による力覚提示装置1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図面中、同一の部材には同一の符号を用いている。
【0020】
図1は、本発明の力覚提示装置1を備える例示的なシステムのブロック図である。
図2は、本発明の第1の実施形態による力覚提示装置1の上面図と斜視図である。
【0021】
図1に示されるように、力覚提示装置1(マスター装置)は、操作部21の三次元方向の移動を検出部で検知し、検出部で検出した検出信号を力覚提示装置1の制御部を介して被制御装置(スレーブ装置)の駆動部に送信することによって、被制御装置を駆動制御することができる。そして、被制御装置側で物体と接触した情報(力触覚情報)を力覚提示装置1側にフィードバックするために、被制御装置の検出部(力覚センサ等)の検出信号(力覚信号)を力覚提示装置1の制御部を介して駆動部(アクチュエータ等)にフィードバックするので、操作者は、力覚提示装置1を介して力覚を感知することができる。このように、実際の物体からの力覚情報が力覚提示装置1にフィードバックされるので、力覚提示装置1は、操作者に力覚を提示することができる。
【0022】
図2に示されるように、力覚提示装置1は、デルタ型パラレルリンク機構20と、3つのMR流体アクチュエータ10とを備える。デルタ型パラレルリンク機構20は、操作部(把持部)21と、3組のリンクアーム(上部リンク22、下部リンク23)とを備え、リンクアームは、各上部リンク22と各下部リンク23とがジョイント部により回動自在に接続されている。操作部21が、3組のリンクアーム(上部リンク22、下部リンク23)を介して、基部または適宜の部材(図示せず)に固定されて、操作部21がデルタ型パラレルリンク機構20の設置面に対して平行姿勢を維持した状態で、三次元方向に移動可能に支持される。操作部21上にグリップ等の把持部が固定される(図示せず)。
図2(A)の上面図ではデルタ型パラレルリンク機構20を省略しており、三角形状の破線部は、デルタ型パラレルリンク機構20の仮想的な基部を示す。
【0023】
図3は、本発明の力覚提示装置を構成する機能性流体アクチュエータであるMR流体アクチュエータ10(「ツインドライブ型MR流体アクチュエータ」ともいう。)の斜視図である。機能性流体とは、外部刺激により特定の性質、機能を示す流体の総称であって、MR流体(磁気粘性流体、Magnetorheological fluid)、ER流体(電気粘性流体、Electrorheological Fluid)などが含まれる。MR流体は、外部から磁場を加えることによって磁性体の微粒子を含む流体の粘度を変化させることができる。ER流体は、電界を印可することによって絶縁体の微粒子を含む流体の粘度を変化させることができる。以下で説明する本発明の実施形態では、MR流体を用いているが、MR流体以外でも、ER流体等の別の機能性流体を用いて同様に本発明を実施することができる。
【0024】
図3に記載のツインドライブ型MR流体アクチュエータ10は、1つの駆動用モータ11と、正転ギア13および逆転ギア13’からなる平歯車のセットと、1対のMR流体クラッチ12、12’と、平行リンク機構14、14’と、出力軸15と、角度センサ16とを備える。ツインドライブ型MR流体アクチュエータについては、非特許文献1にその詳細が開示されている。なお、角度センサ16は、ロータリエンコーダ、ロータリポテンショメータ、磁気センサ等の適宜のセンサを採用することができる。
【0025】
MR流体アクチュエータ10の駆動用モータ11はACサーボモータ等、適宜のモータを採用することができる。正転ギア13および逆転ギア13’は、1つの駆動用モータ11の一定方向の駆動力を逆転駆動することなく、正転駆動力と逆転駆動力とを同時に得るための駆動力伝達手段である。したがって、駆動力伝達手段は、実施形態に記載の平歯車のセットに限定されることなく、適宜の駆動力伝達手段を採用することができる。
【0026】
MR流体アクチュエータ10のMR流体クラッチ12、12’の一例として、
図4を提示する。ここでは概要のみを説明し、詳細な説明は省略する。MR流体クラッチ12、12’は、回転軸12a、ロータ12b、ステータ12c、コイル12dなどを備えている。磁界を発生させることによって、図示の破線のように磁路が形成され、形成された磁路がMR流体を貫通し、これにより、MR流体には、磁界の強さに応じた粘度が生じる。MR流体の粘度を変化させることによって、MR流体クラッチ12、12’は、印可される磁界の磁束密度に応じて伝達するトルクを調整することができる。
【0027】
このように、MR流体は磁性体の微粒子(磁性粒子)を含んでおり、磁界を印可することによって粘度を変化させることができるので、MR流体クラッチ12、12’は、力覚提示装置の構成部品として、高い応答性と再現性のある力覚提示を行うことができる。
【0028】
MR流体は、磁性粒子を分散媒に分散させて形成した流体である。磁性粒子は、磁化可能な金属材料から構成され、金属材料としては、軟磁性体が好ましいが、それに限定されない。
【0029】
軟磁性体としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、パーマロイ等の合金を上げることができる。分散媒としては、疎水性のシリコーンオイルを用いることができるが、それに限定されない。
【0030】
MR流体における磁性粒子の配合量は、例えば、3~40vol%とすることができる。また、磁気粘性流体の所望の各種特性を得るために、磁気粘性流体に各種の添加剤を添付してもよい。
【0031】
(MR流体アクチュエータの試作)
MR流体アクチュエータ10(ツインドライブ型MR流体アクチュエータ、TD-MRA)の試作を行った。試作したTD-MRAが達成した性能は表1のとおりである。
【表1】
【0032】
この試作例では、0.3Nmという最大出力を保持しつつ、小型化することができた。MR流体アクチュエータとしての最大出力は、好ましくは、0.1Nm~0.6Nm、より好ましくは、0.2Nm~1.0Nmである。
【0033】
MR流体アクチュエータ10の平行リンク機構14、14’は、U字状の連結部材14と、1対のレバーアーム14’を含み、MR流体クラッチ12、12’の出力である正転駆動力と逆転駆動力とを合成する出力合成手段である。なお、MR流体クラッチ12、12’は応答性がよく、瞬時に切り換えることができるので、実際上は、正転駆動力と逆転駆動力とが相殺されることはない。したがって、出力軸15には、合力ではなく一方の駆動力が出力される。
【0034】
図5に、本発明の第1の実施形態による力覚提示装置1の平行リンク機構14、14’を示す。
図5(A)は、デルタ型パラレルリンク機構20の下部リンク23が連結された平行リンク機構14、14’の側面図であり、
図5(B)は、デルタ型パラレルリンク機構20の下部リンク23が連結されたMR流体アクチュエータ10の斜視図である。
【0035】
この実施形態では、平行リンク機構14、14’は、U字状の連結部材14と、1対のレバーアーム14’を備えており、デルタ型パラレルリンク機構20の下部リンク23が、平行リンク機構14、14’の1対のレバーアーム14’のうちの一方のレバーアーム14’に連結されている。言い換えると、デルタ型パラレルリンク機構20の下部リンク23と、MR流体アクチュエータ10の平行リンク機構14、14’とが、同一平面上に配置されている。この配置により、本発明の第1の実施形態による力覚提示装置1は、コンパクトとすることができる。
また、デルタ型パラレルリンク機構20の下部リンク23と、MR流体アクチュエータ10の平行リンク機構14、14’との配置は、同一平面上でなくてもよく、例えば、互いに近接した平行な平面上に配置することができる。
さらに、MR流体アクチュエータ10の出力軸15にデルタ型パラレルリンク機構20の下部リンク23を連結してもよいし、出力軸15を延長して下部リンク23と連結してもよい。
【0036】
図6は、平行リンク機構14、14’の動きを示す側面図である。
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)に示されるように、平行リンク機構14、14’の駆動により、デルタ型パラレルリンク機構20の下部リンク23が駆動される。
図6に記載の実施例では、下部リンク23の可動範囲を180°程度とすることが可能である。
【0037】
図7に、本発明の第1の実施形態による力覚提示装置1の平行リンク機構14、14’の変形例を示す。この変形例では、
図5、
図6のものとは異なり、平行リンク機構14、14’の連結部材14が直線状のロッドである。平行リンク機構14、14’の1対のレバーアーム14’のうちの一方のレバーアーム14’に、その側方に延びるように、デルタ型パラレルリンク機構20の下部リンク23が連結されている。
図7(A)、
図7(B)に示されるように、平行リンク機構14、14’の駆動により、デルタ型パラレルリンク機構20の下部リンク23が駆動される。
図6の実施例と比較すると、
図7の実施例では、下部リンク23の可動範囲は狭くなるものの、比較的単純な構成を有するため、作成が容易であり、高耐久性、高剛性という利点を有する。
【0038】
本発明の第1の実施形態では、1対のMR流体クラッチ12、12’の出力を合成する出力合成手段として、平行リンク機構14、14’を採用している。出力合成手段として、平行リンク機構14、14’に代えて、ベルト機構など他の出力合成手段を採用することもできる。
【0039】
図8に、本発明の第2の実施形態による力覚提示装置1の上面図と斜視図を示す。第2の実施形態では、
図2に記載の第1の実施形態とは異なり、MR流体アクチュエータ10の1対のMR流体クラッチ12、12’が水平方向に並ぶように横置きに配置したものである。力覚提示装置1としての設置面積は拡大するものの、MR流体アクチュエータ10を水平面に安定させて設置することができ、かつ、高さ方向の可動域を拡大させることができるとの利点がある。
【0040】
図9に、本発明の第3の実施形態による力覚提示装置1の上面図と斜視図を示す。第3の実施形態においては、力覚提示装置1をより小型化するために、デルタ型パラレルリンク機構20の上部リンク22を湾曲させて、リンク機構とMR流体アクチュエータとの干渉を防止し、リンク機構の可動域の確保を実現している。また、
図2に記載の第1の実施形態と同様に、MR流体アクチュエータ10の1対のMR流体クラッチ12、12’が上下方向に並ぶように縦置きに配置している。このように、本発明に係る力覚提示装置は、コンパクトな設計と、操作装置としての可動域の確保とを両立させることができる。
【0041】
(力覚提示装置1の試作)
図9に記載の第3の実施形態による力覚提示装置1について、下記のとおり試作を行った。
操作部21の三角形の一辺の長さを95mm、上部リンク22の長さを120mm、下部リンク23の長さを90mmとし、MR流体アクチュエータ10として、試作した上記TD-MRAを採用した。
可動域については、三次元の各方向に±50mmを達成し、操作範囲内での最大反力はx方向、y方向に約2N、z方向で約4.5Nとなり、設計目標としての2Nを達成することができた。
力覚提示装置としての最大反力は、好ましくは1N~4N、より好ましくは1N~10Nであり、力覚提示装置としての可動域は、三次元の各方向に、好ましくは30mm~80mm、より好ましくは50mm~300mmである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る力覚提示装置は、ゲームコントローラや、遠隔操作のユーザインタフェースなど、様々な用途に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 力覚提示装置
10 MR流体アクチュエータ(機能性流体アクチュエータ)
11 駆動用モータ
12、12’ MR流体クラッチ
13、13’ ギア(正転ギア、逆転ギア)
14 平行リンク機構(ロッド、連結部材)
14’ 平行リンク機構(レバーアーム)
15 出力軸
16 角度センサ
20 デルタ型パラレルリンク機構
21 操作部(手先部、把持部)
22 上部リンク
23 下部リンク