(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060633
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】インフレータブル構造のクレーン。
(51)【国際特許分類】
B64G 1/22 20060101AFI20230421BHJP
B64G 4/00 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
B64G1/22 224
B64G4/00 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170340
(22)【出願日】2021-10-18
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ゴアテックス
2.ダクロン
3.ノーメックス
(71)【出願人】
【識別番号】506391657
【氏名又は名称】菊川 清
(72)【発明者】
【氏名】菊川 清
(72)【発明者】
【氏名】菊川 康介
(57)【要約】
【課題】宇宙ステーションの船外で使用するインフレータブル構造のクレーン
【解決手段】宇宙飛行士にとって従来の船外作業は命綱を付け、重装備の宇宙服を纏って行われ危険を伴っていたが、クレーンの構成材に中空チューブを使用することで、軽量化、小さく折り畳めて小体積で運搬・保管が容易等が図れ、チューブの中空を宇宙飛行士の移動通路や作業空間としてできるようになり、安全・安心な作業環境が得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙ステーションの船外で使用するクレーンは、流体導入式中空孔形成チューブシステム(特許No.4801214)の流体導入式中空孔形成チューブを骨格とした構造で、該流体導入式中空孔形成チューブを単本または複数本を連結して、回転・傾斜を制御する伸縮アクチュエーターとから成り、使用しない時は折畳み又は巻回して保管、使用するときはホースに流体を圧入し、該圧力により順次膨らみ前方へ押し出されて前記折畳み又は巻回状態から直進して大径のチューブとなる。
前記流体導入式中空孔形成チューブ及び前記伸縮アクチュエーター内には宇宙飛行士が通る通路および作業空間が設けられ、前記クレーンの先端部或いは途中部を、前記伸縮アクチュエーターを操作して修理箇所へ接近させ、前記宇宙飛行士は前記流体導入式中空孔形成チューブに設けられた船外作業用出入口から手または身体を乗り出して船外作業を行うことができることを特徴とする宇宙ステーションの船外で使用するインフレータブル構造のクレーン。
【請求項2】
前記船外作業用出入口は、前記流体導入式中空孔形成チューブの先端部
を開口、及びチューブ外側のシート体に網目状或いは中途に船外作業用出入口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の宇宙ステーションの船外で使用するインフレータブル構造のクレーン。
【請求項3】
前記流体導入式中空孔形成チューブのホースに圧入された流体は、圧入後にホース内に発砲硬化して、前記流体導入式中空孔形成チューブの円周を保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の宇宙ステーションの船外で使用するインフレータブル構造のクレーン。
【請求項4】
前記伸縮アクチュエーターは、電動或いは流体圧の調整により稼働し、宇宙ステーションの内部又は宇宙飛行士がクレーン内部からの直接遠隔操作により回転・傾斜を行うことを特徴とする請求項1~3に記載の宇宙ステーションの船外で使用するインフレータブル構造のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体導入式中空形成チューブ(以下単に「中空チューブ」と称す、
特許No.4801214)からなるインフレータブル構造のクレーンであって、
前記中空チューブは、所定の大径直径円の円周上に、前記大径直径より小さい直径及び長尺で内部への圧縮流体の導入により膨らむ複数本の小径ホースを螺旋状に巻回して配設され、圧縮流体が導入されたときに形成される大径中空を通路および作業空間とするインフレータブル構造のクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている宇宙ステーションの船外で使用するクレーンは、金属等の枠体で骨格形成され、その枠体を船内からコントロールして目的の箇所へ修理部品等を誘導し、その後、宇宙飛行士が有人飛行ユニット等の重装備を纏った宇宙服で船外作業を行うが、ISSにスペースシャトルがいないときに船外活動中に命綱が切れたときは救助にいけないなど、安全面で問題がある。
そのようなことから、ISS組立時の船外活動では宇宙服に必ず装着することになっている。
また、酸素の供給と排出される二酸化炭素の処理、120度から零下150度という温度差に耐えつつ内部の温度を一定に保ち放射線からの防御など宇宙服には多くの条件が求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
背景技術で記述しているが、使用されている宇宙ステーションの船外で使用するクレーンに、インフレータブル構造のクレーンの提案はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
理由は物を動かすにはある程度の加速度を与えなければならず、重量が大きい時は移動物の加速がされ難いことから大きな力と頑強さ必要で、インフレータブル構造のクレーンは考え難いと思われていた。
しかし、前記中空チューブを利用することで、従来のチューブに比し固くてチューブの中空を活用でき、宇宙へ運ぶ荷物の軽量化、小容積化が可能となる。
【0005】
本発明はこのような条件等から、宇宙空間が無重力で地球上ほど重力が働かず、また、動きはある程度緩やかで良く、軽量、小容積で操作性に優れた安全なインフレータブル構造のクレーンを提案する。
なお、クレーンは密閉されたものではなく、宇宙と直結している。
【問題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様のインフレータブル構造のクレーンは、宇宙ステーションの船外で使用するクレーンは、流体導入式中空孔形成チューブシステム(特許No.4801214)の中空チューブを骨格とした構造で、該中空チューブを単本または複数本を連結して、回転・傾斜を制御する伸縮アクチュエーターとから成り、使用しない時は折畳み又は巻回して保管、使用するときはホースに流体を圧入し、該圧力により順次膨らみ前方へ押し出されて前記折畳み又は巻回状態から直進して大径のチューブとなる。
前記中空チューブ及び前記伸縮アクチュエーターには宇宙飛行士が通る通路および作業空間が設けられ、前記クレーンの先端部或いは途中部を、前記伸縮アクチュエーターを操作して修理箇所へ接近させ、前記宇宙飛行士は前記中空チューブに設けられた船外作業用出入口から手または身体を乗り出して船外作業を行うことができることを特徴とする。
【0007】
また、第2の態様のインフレータブル構造のクレーンは、前記船外作業
用出入口は、前記中空チューブの先端部を開口、及びチューブ外側のシート体に網目状或いは中途に船外作業用出入口が設けられていることを特徴とする
【0008】
更に、第3の態様のインフレータブル構造のクレーンは、前記中空チューブのホースに圧入された流体は、圧入後にホース内に発砲硬化して、前記中空チューブの円周を保持することを特徴とする。
【0009】
更にまた、第4の態様のインフレータブル構造のクレーンは、前記伸縮アクチュエーターは、電動或いは流体圧の調整により稼働し、宇宙ステーションの内部又は宇宙飛行士がクレーン内部からの直接遠隔操作により回転・傾斜を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、宇宙飛行士にとって従来の船外作業は命綱を付け、重装備の宇宙服を纏って行われ、危険を伴っていたが、クレーンの構成材に中空チューブを使用することで、移動は命綱が不要となり宇宙と直結したクレーン内部から作業が可能で安全・安心な作業環境が得られる。
また、酸素供給タンクなど多くの必須としていたものを中空チューブ内にケーブル等を敷設しておくことで装着する所持品も少なくでき身軽となり、船外作業が容易となる。
【0011】
また、クレーンの構造は、圧縮流体の導入により膨らむ複数本の小径ホー
スを螺旋状に巻回したものであり、鉄やアルミ等の固い金属とは異なるが、ホースの圧力により強靭なチューブとなる。
、クレーンの性能は、動かす物の重量等、小径ホースの本数、太さ、長さや螺旋の角度、材質、圧入する流体の圧力などに、インフレータブル構造物ゆえ、軽量、小さく折り畳めて小体積で運搬・保管が容易等を考慮して目的に合わせた能力のものを製作できる。
更にまた、中空チューブは複数本の小径ホースからなるので、隕石の衝突等により小径ホースに破損が生じても、全小径ホースが一度に破損しない限り安全を保つことができる。
【0012】
更にまた、前記中空チューブのホースに圧入された流体は、圧入後にホース内に発砲硬化して、前記中空チューブの円周を保持すれば、長期間クレーン状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1はインフレータブル構造クレーンの概略図である。
【
図2】
図2は中空チューブシステムの概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための宇宙ステーションの船外で使用するインフレータブル構造のクレーン10を例示するものであって、本発明をこれらに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【実施形態1】
【0015】
図1・
図2を参照して、本発明の実施形態1に係る宇宙ステーションの船外90で使用するインフレータブル構造のクレーン10を説明する。
図1は本発明の実施形態のクレーン10は、
図1に示すように、宇宙ステーションに設けられたらハッチ40上に設置されたインフレータブル構造のクレーン10の概略図で、一般的に建築物等で使用するクレーンのマスト、ジブに相当する部位を中空チューブ20、旋回台を伸縮アクチュエーター30、フックなどはマニピュレーターと替え、旋回台は旋回だけでなくジブの上下動の機能が追加されているのが特徴である。
【0016】
平常時は中空チューブ20を折り畳んで不図示の収納ケースなどに収納し、使用時には、この収納ケースから取り出して、中空チューブ20を構成する複数本の直線状の小径ホース21に圧縮流体を導入することによって展張させて内部に大径の中空を形成させ、この大径中空を宇宙飛行士50の移動用通路80・作業用空間として利用できるようにしたインフレータブル構造のクレーン10である。
【0017】
クレーン10の長さは宇宙ステーションの大きさ等により決定されるが、中空チューブの長さは5.0~20.0メートル、ホースの内径は0.8~1.5メートル程度とし、必要により伸縮アクチュエーター30により連結して延長すると良い。
クレーン10の性能は、動かす物の重量等、小径ホース21の本数、太さ、長さや螺旋の角度、材質、圧入する流体の圧力や、インフレータブル構造物ゆえの軽量、小さく折り畳めて小体積で運搬・保管が容易等を考慮し、使用目的に合わせて製作する。
以下このクレーン10を構成する個々の項目について詳述する。
【0018】
図示を省略しているが、宇宙ステーション内に中空チューブ10へ流体を導入する圧縮流体導入装置25を備えている。クレーン10の中空チューブ20と圧縮流体導入装置25とは、切換え弁を介して連結管で連結され、連結管の途中に流量計及び圧力計などが設けられている。
宇宙では太陽向きは高温になり、逆は低温となることから小径ホース21内圧力が急激に変化して小径ホース21の破損等に繋がることから、流体の圧力をコントロールが大事である。
【0019】
前記伸縮アクチュエーター30は、重力の無い宇宙空間はロープやフックを使用できないことから旋回台に上下する機能を追加しており、また、図示していないが必要によりクレーン10の先端にマニピュレーターを取り付けても良い。
前記伸縮アクチュエーター30は,電動或いは流体圧の調整により稼働し、宇宙ステーションの内部、又は宇宙飛行士がクレーン内部からの直接遠隔操作により回転・傾斜を行う。
【0020】
圧縮流体の導入により内部に移動通路80が形成される中空チューブ20は、使用する小径ホース21の本数等により強度が決まり、それぞれ同じ構成のものとなっている。これらの小径ホース21は、機械的には偏平、折畳み、巻回可能にできるように可撓性、弾性を有し、材質的には耐磨耗性、軽量、耐火性、耐圧性、高圧性、丈夫で破れ難く、軽量素材性のいずれか又は複数の特性を有するものを使用する。
小径ホース21の材質であるが、宇宙の特性よりナイロン、ダクロン、アルミ蒸着マイラー(ポリエステルフィルム層)、ゴアテックス/ノーメックスなど宇宙服に使用されている気密、断熱対策などに対応する布地を使用するのが良い。
【0021】
前記小径ホース21に圧入する流体は、空気に限定されるものでなく、例えば、気体に窒素、水素、ヘリウムガスや、水などの液体などである。また、発泡剤によって膨張と硬化を一緒に行う方法など圧入後に小径ホース21を硬化させて形状を保持することが考えられており、クレーン10の後々の使用を考慮して行うと良い。
【0022】
中空チューブ20がクレーン10に使用されるための特質は、小径ホース21に流体が圧入されると、順次膨らんで螺旋階段状に巻回されている小径ホース21が真っ直ぐに伸張する力が小径ホース21に作用する。その結果、小径ホース21に作用する伸張力により、中空チューブ20の先端部が真っ直ぐに直進し、該直進力を螺旋状に巻回させることで中空チューブ20の頑強な直進力と円形力が生まれることにある。
【0023】
中空チューブ20は、複数本の小径ホース21に流体が導入されていないときは、
図2に示すように、偏平状の長尺体でこの長尺体が折畳み又は不図示の回転機構などに巻回されている。複数本の小径ホース21に流体が導入されると、円形筒状体となるが、流体が導入される前は、この円形筒状体を押し潰した平状の長尺体となっている。
【0024】
次に中空チューブ20の外皮を構成する前記シート体22や当布バンド23の材質であるが、基本的には宇宙であることを考慮し、前記小径ホース21に近い性能のものが良い。
【0025】
宇宙ステーションの船外で使用するインフレータブル構造のクレーン10はその構成する中空チューブ20の小径ホース21の圧力を、材質の技術開発により高圧にできれば、宇宙だけでなく地球等に於いてもインフレータブル構造のクレーン10が使用可能となり、今後更に期待されるものと確信している。
【符号の説明】
【0026】
10 クレーン(インフレータブル構造)
20 中空チューブ(流体導入式中空孔形成チューブ)
21 小径ホース
22 シート体
23 当布バンド
24 船外出入口(解放)
25 流体圧入等装置
30 伸縮アクチュエーター
40 ハッチ(宇宙ステーション)
50 宇宙飛行士
80 移動用通路
90 宇宙船外