(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060667
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】内筒ユニット、液封防振装置及び液封防振装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 13/14 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
F16F13/14 A
F16F13/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170385
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】田代 慎之介
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA05
3J047AB01
3J047CA02
3J047CD02
3J047CD05
3J047FA01
3J047GA01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、ゴムを外筒に圧入する際に生じるオリフィス部の破損や過剰な変形に伴う不具合を防止可能な液封防振装置等を提供する。
【解決手段】内筒10と、内筒10の外周側に設けられた中間筒20と、内筒10と中間筒20の間に介在するゴム材と、周方向に延在する溝を有し、当該溝により内部に封入された液体の複数の液室WL;WR間の流動を確保するオリフィス通路とを備え、内筒10と同軸上に配置される外筒50内に、軸方向に沿って圧入可能な内筒ユニット60であって、オリフィス通路は、溝の両縁部に、弾性変形可能とされ、径方向外側に向けて突出し、軸方向の他方に位置する面が軸方向の一方に傾斜する傾斜面として形成された一対の突起46;48を有する内筒ユニットとした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、
前記内筒の外周側に設けられた中間筒と、
前記内筒と前記中間筒の間に介在するゴム材と、
周方向に延在する溝を有し、当該溝により内部に封入された液体の複数の液室間の流動を確保するオリフィス通路と、
を備え、
前記内筒と同軸上に配置される外筒内に、軸方向に沿って圧入可能な内筒ユニットであって、
前記オリフィス通路は、前記溝の両縁部に、弾性変形可能とされ、径方向外側に向けて突出し、軸方向の他方に位置する面が軸方向の一方に傾斜する傾斜面として形成された一対の突起を有することを特徴とする内筒ユニット。
【請求項2】
前記内筒ユニットが前記外筒内に圧入された液封防振装置であって、
前記一対の突起の前記傾斜面が前記外筒の内周面と圧接した状態であることを特徴とする液封防振装置。
【請求項3】
内筒と、
前記内筒の外周側に設けられた中間筒と、
前記内筒と前記中間筒の間に介在するゴム材と、
周方向に延在する溝を有し、当該溝により内部に封入された液体の複数の液室間の流動を確保するオリフィス通路と、
を備えた内筒ユニットを前記内筒と同軸上に配置される外筒内に、軸方向に沿って圧入する工程を備えた液封防振装置の製造方法であって、
前記オリフィス通路における溝の両縁部に、弾性変形可能とされ、前記外筒側に向けて突出し、軸方向の他方に位置する面が軸方向の一方に傾斜する傾斜面として形成された一対の突起を形成し、
前記内筒ユニットの圧入に際し、前記傾斜面が形成された軸方向の他方を前記外筒に向けて圧入し、前記一対の突起の前記傾斜面を前記外筒の内周面と圧接させることを特徴とする液封防振装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液封防振装置に関し、特に、ゴム材の圧入時におけるオリフィスの破損防止が可能な液封防振装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外筒に中間筒を圧入して得られる液封防振装置が知られている。このような形態にあっては、液封防振装置の製造過程において、内筒と中間筒とを弾性的に連結するゴム材を外筒に圧入する際に要する軸力が高くなるため、オリフィスの破損・倒れ等が発生する懸念があった。近年においては、中間筒の外周面に、径方向に突出し、周方向に延びる環状突部を軸方向に間隔をあけて複数配置し、隣接する環状突部間にゴム材料からなるシール片を配設することで、ゴム材を圧入する際の軸力を抑制しつつ、液室及びオリフィス通路のシール性を確保する構成の液封防振装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような形態にあっては、中間筒の構造が複雑となると言う問題点があった。
本発明は、上記点を課題としてなされた発明であって、簡易な構成で、ゴムを外筒に圧入する際に生じるオリフィスの破損や過剰な変形に伴う不具合を防止可能な液封防振装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するための構成として、内筒と、内筒の外周側に設けられた中間筒と、内筒と前記中間筒の間に介在するゴム材と、周方向に延在する溝を有し、当該溝により内部に封入された液体の複数の液室間の流動を確保するオリフィス通路とを備え、内筒と同軸上に配置される外筒内に、軸方向に沿って圧入可能な内筒ユニットであって、オリフィス通路は、溝の両縁部に、弾性変形可能とされ、径方向外側に向けて突出し、軸方向の他方に位置する面が軸方向の一方に傾斜する傾斜面として形成された一対の突起を有する内筒ユニットとした。
本構成に係る内筒ユニットによれば、オリフィス通路が、溝の両縁部に、弾性変形可能とされ、径方向外側に向けて突出し、軸方向の他方に位置する面が軸方向の一方に傾斜する傾斜面として形成された一対の突起を有していることから、外筒への圧入時における外筒の内周面との接触面積が減少し、破損に結び付くような摩擦による過剰な変形を防止できる。
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る液封防振装置を示す概略断面図である。
【
図2】外筒への圧入前の状態と内筒ユニットの圧入方向を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[液封防振装置の構造]
図1(a)~(c)は、実施形態に係る液封防振装置1を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のA-A断面図、(b)図は(a)図のB-B断面図である。液封防振装置1は、内筒10、中間筒20、ゴム材30、オリフィス形成部材40、及び、外筒50を備える。内筒10は、例えば、自動車のサスペンションアーム等の振動発生部側に組付けられ、外筒50は車体フレーム等の振動受動部側に組付けられる。以下、本明細書において
図1、
図2の矢印で示す上下、左右、前後方向を液封防振装置1の上下、左右、前後方向として説明する。また、
図1(b)及び
図1(c)の一点鎖線で示す内筒10の中心軸Jの延長方向(以下、軸方向とも言う)は、上下方向と一致する。
【0008】
内筒10は、中心に貫通孔12が形成された円筒状の部材体であって、アルミニウムや鉄等の金属から構成される。内筒10の長さ寸法は、中間筒20及び外筒50の長さ寸法よりも長く形成されている。即ち、内筒10の上端部及び下端部は、それぞれ、中間筒20の上端部及び下端部、外筒50の上端部及び下端部よりも上方及び下方に突出している。また、貫通孔12の中心軸は内筒10の中心軸Jと同軸である。
【0009】
中間筒20は、内筒10と同軸上であって、内筒10の外周側に設けられ、ゴム材30を介して内筒10と一体化される。
図1(b),(c)に示すように、中間筒20は、内筒10の上端側に配置された環状の上側環状部22と、下方に配置された環状の下側環状部24と、上側環状部22及び下側環状部24を接続する一対の接続部26とを備える。上側環状部22と下側環状部24の内径寸法及び外径寸法は、同一に設定される。上側環状部22及び下側環状部24の外周面には、後述のゴム材30と同様のゴムによる被覆23がなされており、後述の外筒50の上下のカシメ部52;54との間がシールされる。接続部26は、周方向の所定範囲に渡って形成され、前後方向に設けられた一対の領域である。接続部26は、上側環状部22及び下側環状部24よりも縮径され、軸方向と平行に延長する直線部26aを有する。直線部26aの上部は、径方向外側に向かって傾斜する上側接続片26bを介して上側環状部22と接続される。直線部26aの下部は、径方向外側に向かって傾斜する下側接続片26cを介して下側環状部24と接続される。
【0010】
ゴム材30は、内筒10の外周面と中間筒20の内周面との間に加硫接着され、内筒10と中間筒20とを弾性的に連結する。
図1(b)に示すように、ゴム材30は、内筒10の上端側から中間筒20の上側環状部22に向けて延在する上壁部32と、内筒10の下端側から中間筒20の下側環状部24に向けて延在する下壁部34とを有する。上壁部32と下壁部34は、内筒10の外周を被覆する被覆部38により接続される。被覆部38は、上壁部32及び下壁部34に対して径方向内側に窪むように形成されており、その外周面は、上壁部32の下面及び下壁部34の上面、及びオリフィス形成部材40の内周面と共に液室WL;WRを区画する。
図1(c)に示すように、ゴム材30は、周方向の所定範囲に渡って形成された隔壁部36を有する。隔壁部36が液室WL,WR間に形成されることにより、液室WL,WRが周方向に間隔を有して離間した状態となる。
なお、液室の数や形状、範囲、或いは、ゴム材30の断面形状は減衰特性等の要求に応じて適宜設定可能である。また、液室WL,WRには、例えば、エチレングリコール、水、シリコーンオイル等が封入されている。
【0011】
[オリフィス形成部材について]
図1(b)及び
図2に示すように、オリフィス形成部材40は、断面形状が略台形状の本体部42と、断面矩形状のオリフィス通路の一部を形成する一連の溝部44と、溝部44の経路に沿って、縁部(溝縁部)42a;42bにそれぞれ設けられた一対の突起46及び突起48とを有する。オリフィス形成部材40は、例えば、樹脂、アルミ、鉄、ゴム等から構成される平面視円弧状の部材であって、左右方向両側にそれぞれ配置される。
【0012】
各オリフィス形成部材40は、被覆部38の外周面と外筒50の内周面との間の位置にてはめ込まれ、周方向の両端面がゴム材30の隔壁部36の周方向両端面と密接し、軸方向(上下方向)の両端面が上側環状部22及び上壁部32の下端面と、下側環状部24及び下壁部34の上端面とそれぞれ密接する。そして、この状態で外筒50に圧入されることにより、オリフィス形成部材40が適切に位置決めされる。なお、以下の説明において、オリフィス形成部材40がはめ込まれ、かつ、圧入により外筒50との一体化が図られる以前の状態を内筒ユニット60という場合がある。
【0013】
図2は、外筒50に圧入される以前の内筒ユニット60を示す概要図である。
図1(b),
図2に示すように、オリフィス通路の一部を構成する溝部44は、液室WL;WRの内部と連通する開口部WL1;WR1に接続,連通される一方の直線部44aと、図外の湾曲状の反転部を介して直線部44aと連続し、前側の隔壁部36に向かって延長する他方の直線部44bとを有する。また、
図2に示すように、前側の隔壁部36の外周面には、溝部44の他方の直線部44b;44bと対応するように、外筒50の内周面に向けて開口する溝部35が形成されている。溝部35の縁部(溝縁部)35a;35bには、溝部44の縁部42a;42bに形成された突起46及び突起48と連接する同様の突起46;48が形成される。オリフィス形成部材40の溝部44と隔壁部36の溝部35とが互いに連通することにより、液室WLから液室WRに至る流路(オリフィス通路)が画成され、一方の液室WL;WRに封入された液体が、前側に位置する隔壁部36を経由して他方の液室WR;WLに流動可能とされる。なお、オリフィス通路の配置や形状は、減衰特性に応じて任意に設定可能である。例えば後側の隔壁部36についても溝部35及び突起46;48を形成し、液体の流動範囲を前側及び後側に設定しても良い。また、図示の例では、溝部44の延長形状を一方の直線部44a、図外の反転部及び他方の直線部44bを含むループ状としたが、これに限られるものではなく、液室WLから液室WRに至る延長形状をストレート状としても良い。
【0014】
[突起について]
隔壁部36に形成された突起46;48は、隔壁部36を構成するゴムと同じゴム材からなる弾性変形可能な部位であり、溝部35の上方の縁部35aと下方の縁部35bとに分かれて形成される。また、オリフィス形成部材40に形成された突起46;48も同様に、溝部44の縁部42aと縁部42bとに分かれて形成される。なお、オリフィス形成部材を樹脂や金属により形成した場合にあっては、弾性変形可能なゴムを縁部42a及び縁部42bに沿って加硫接着することで突起46;48を形成可能である。各突起46;48は、径方向外側、即ち、外筒50の内周面側に突出しており、圧入により外筒50との一体化が図られた
図1の例では、外筒50の内周面に圧接(押圧)されて変形した状態となる。なお、突起46;48の圧接前の形状については後述する。
【0015】
外筒50は、内筒10と同軸上に、中間筒20の径方向外側に配置される円筒状の部材であって、アルミニウムや鉄等の金属から構成される。外筒50は、中間筒20及びオリフィス形成部材40の外周面を覆うように密接する。外筒50の両端部に形成されたカシメ部52;54は、中間筒20側に折曲され、中間筒20の上端及び下端を保持する。
【0016】
[突起の形状について]
以下、突起46;48の詳細な形状について説明する。
図2,
図3の矢印で示すように以下の説明において内筒ユニット60は、外筒50の上側から下側に向けて圧入されるものとする。なお、
図2の部分拡大断面図、及び
図3は、前側の隔壁部36に形成された溝部35と突起46;48との関係を示すものであるが、オリフィス形成部材40に形成された溝部44と突起46;48との関係についても同様であるため、図示の関係を代表例として説明する。
図2に示すように、上方に位置する突起46は、断面視台形状に形成される。突起46は、溝部35の縁部35aから径方向外側に向けて上方に向かって傾斜して延長する傾斜面400と、当該傾斜面400と接続して鉛直方向に延長する直立面402と、直立面402と接続して径方向内側に向けて水平に延長する平面404とから構成される。直立面402の上下寸法は、傾斜面400の内側端部と平面404の内側端部とを上下に結んだ破線(溝開口)で示す寸法よりも短く設定される。
【0017】
下方に位置する突起48は、径方向外側に向けて上方に向かって傾斜して延長する傾斜面500と、当該傾斜面500と接続して鉛直方向に延長する直立面502と、直立面502と接続して径方向内側に向けて水平に延長し、縁部35bと交わる平面504とから構成される。直立面502の上下寸法は、傾斜面500の内側端部と平面504の内側端部とを上下に結んだ破線で示す寸法よりも短く設定される。即ち、上方の突起46と下方の突起48とは実質的に同一の断面形状とされる。
【0018】
このように、突起46;48は、それぞれ溝部35の両縁部35a;35bと対応して形成されると共に、軸方向の一方に向けて傾斜する傾斜面400;500を有しており、外筒50に対して圧入されると軸方向の一方に向けて僅かに潰れるように弾性変形する。突起46;48の変形後の詳細については後述する。
【0019】
次に、液封防振装置1の製造工程ついて説明する。
[内筒ユニットの製造工程]
(1)内筒10、中間筒20、オリフィス形成部材40、及び、外筒50を個別に作製する。
(2)内筒10と中間筒20、オリフィス形成部材40及び未加硫ゴムを金型内に配置して位置決めする。そして、金型を加熱しながら圧力をかけて、ゲートから未加硫ゴムをキャビティ内に充填し、所定時間加硫した後に脱型する。これにより、内筒10、中間筒20、オリフィス形成部材40及びゴム材30が加硫接着により一体化された内筒ユニット60が得られる。なお、脱型後にオリフィス形成部材40を別途接着により取り付けても良い。
【0020】
[内筒ユニットの圧入]
(3)内筒ユニット60を外筒50の上方から下方に向けて圧入する。即ち、
図3に示すように、下側突起48の傾斜面500を下方に向けた状態で外筒50に対して圧入する。換言すれば、軸方向の一方に向けて傾斜する傾斜面400;500の傾斜方向とは反対となる軸方向の他方を外筒50に向けて圧入する。なお、外筒50と内筒ユニット60との圧入による一体化は、封入対象となる液中にて行われ、一体化と同時に液室WL;WR内に液体が封入される。
【0021】
図3(a)に示すように、内筒ユニット60が外筒50の軸方向中心付近まで圧入されると、外筒50の上端面の角部50aが下方の突起48の傾斜面500に当接する。
図3(b)に示すように、内筒ユニット60を更に下側に圧入すると、角部50aが突起48を上側に向けて僅かに圧し潰し、傾斜面500が外筒50の内周面に押圧された状態で密着する。またこのとき、平面504は、溝部35の開口側に向けて僅かに膨出するものの、溝部35の断面形状は維持され、オリフィス通路としての流路断面が維持,確保される。また、更なる圧入によって、上方に位置する突起46が同様に僅かに圧し潰され、
図3(c)に示すように、突起46;突起48が共に上方に向けて変形する共に、傾斜面400;500が外筒50の内周面に対して圧接され、溝部35、突起46;48、外筒50の内周面により囲まれたオリフィス通路が画成される。また、オリフィス形成部材40に形成された溝部44及び突起46;48についても同様であり、外筒50の内周面に対する圧接により、溝部44、突起46;48、及び外筒50の内周面により囲まれたオリフィス通路が画成されることにより、一連のオリフィス通路が形成される。
【0022】
上記圧入の過程において、上側突起46及び下側突起48の傾斜面400;500は、いずれも圧入方向(図示では下側)とは反対側に向かって傾斜(図示では上側)する。また、突起46;48の断面形状は、外筒50に向かって先細となる形状であって根本のゴム幅が確保された形状である。よって、外筒50の角部50aや内周面との接触面積が少なくなり、圧入時の摩擦が低減される。よって、簡易な構成により、突起46;48自体が破断すること、過剰な変形によって突起48が溝部35;44内に進入すること、或いは、溝部35;44自体の断面形状の変化によりオリフィス通路の流路断面の減少や閉塞等を防止できる。
【0023】
(4)内筒ユニット60の圧入完了後には、外筒50の上下のカシメ部52;54を折曲する。これらの工程によって液体が液室WL;WR内に封入された液体防振装置1を得ることができる。なお、図示の圧入工程の説明においては、説明の便宜上、外筒50に対して内筒ユニット60を傾斜面400;500の傾斜方向(軸方向の一方側)とは反対の軸方向の他方側から圧入する例を示したが、例えば内筒ユニット60を不動として外筒50を圧入する場合には、軸方向の他方側から一方側に向けて圧入すべきことは当然である。
【0024】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0025】
上述の実施形態では、上方の突起46及び下方の突起48の断面形状を台形状としたが、
図4(a)に示すように、突起46の傾斜面400及び突起48の傾斜面500を上方に向かって平面404;504に近づくような弧状の傾斜面としても良い。また、
図4(b)に示すように、溝部35;44の縁部に土台となる接着層410を形成し、当該接着層410を介して突起46;48を設けても良い。また、
図4(c)に示すように、突起46;48を傾斜面400;500を有する断面三角形状としても良い。
【0026】
上述の各実施形態に係る内筒ユニット60を外筒50に圧入すれば、一対の突起46;48の傾斜面400;500が外筒50の内周面と圧接した状態となり、簡易な構成により溝部35;44の両縁部に適切なシールが形成され、オリフィス通路における液漏れを防止可能な液封防振装置を得ることができる。
また、オリフィス通路を形成する溝部35;44の縁部(35a;35b,42a;42b)に、弾性変形可能であり、軸方向の他方に位置する面が軸方向の一方に傾斜する傾斜面400;500として形成された一対の突起46;48を形成し、当該内筒ユニット60を外筒50に圧入する際に傾斜面400;500が形成された軸方向の他方を外筒に向けて圧入する態様とすれば、外筒50への圧入時における外筒50の内周面との接触面積が減少し、破損に結び付くような摩擦による過剰な変形を防止しつつ、液漏れを防止可能な液封防振装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 液封防振装置、10 内筒、20 中間筒、22 上側環状部、
24 下側環状部、26 接続部、30 ゴム材、32 上壁部、34 下壁部、
35 溝部、36 隔壁部、38 被覆部、40 オリフィス形成部材、42 本体部、
44 溝部、46 上側突起、48 下側突起、50 外筒、60 内筒ユニット、
WL,WR 液室、WL1;WR1 開口部。