(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060673
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】安全帯
(51)【国際特許分類】
A62B 35/00 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
A62B35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170392
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000149930
【氏名又は名称】株式会社谷沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬島 淳
(72)【発明者】
【氏名】中澤 雅一
(72)【発明者】
【氏名】根本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】小澤 崚介
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184KA11
2E184LA23
(57)【要約】
【課題】高い強度と耐久性が得られる安全帯を提供する。
【解決手段】装着者の肩に掛けわたす平帯状の縦ベルト2を備えるハーネス型の安全帯1であって、縦ベルト2に交差する平帯状の横ベルト3を備え、横ベルト3は、一部が縦ベルト2に逢着固定されて縦ベルト2に沿って下方から上方に向かって延びる第1基端部13と、第1基端部13の上縁から連続して第1基端部13に交差する方向に延びる第1延出部14と、第1基端部13と第1延出部14との間に形成された第1折曲部18とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の肩に掛けわたす平帯状の縦ベルトを備えるハーネス型の安全帯であって、
前記縦ベルトに交差する平帯状の横ベルトを備え、
前記横ベルトは、一部が前記縦ベルトに逢着固定されて前記縦ベルトに沿って下方から上方に向かって延びる第1基端部と、該第1基端部の上縁から連続して該第1基端部に交差する方向に延びる第1延出部と、前記第1基端部と前記第1延出部との間に形成された第1折曲部とを備えることを特徴とする安全帯。
【請求項2】
前記縦ベルトは、平帯状の第1縦ベルト部材と該第1縦ベルト部材に離反自在に重合する第2縦ベルト部材とを備え、
前記横ベルトの前記第1基端部は、前記第1縦ベルト部材と前記第2縦ベルト部材との間に収容されていることを特徴とする請求項1記載の安全帯。
【請求項3】
前記横ベルトは、前記第1基端部の上方位置で一部が前記縦ベルトに逢着固定されて前記縦ベルトに沿って上方からした上方に向かって延びる第2基端部と、該第2基端部の下縁から連続して前記第1延出部に沿って延びる第2延出部と、前記第2基端部と前記第2延出部との間に形成された第2折曲部とを備えることを特徴とする請求項1記載の安全帯。
【請求項4】
前記縦ベルトは、平帯状の第1縦ベルト部材と該第1縦ベルト部材に離反自在に重合する第2縦ベルト部材とを備え、
前記横ベルトの前記第1基端部と前記第2基端部とは、前記第1縦ベルト部材と前記第2縦ベルト部材との間に収容されていることを特徴とする請求項3記載の安全帯。
【請求項5】
前記横ベルトに、連結環が取り付けられていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載の安全帯。
【請求項6】
前記横ベルトは、装着者の胸前に延びる胸ベルトであることを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載の安全帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂ハーネス型の安全帯に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業に従事する作業者は、高所からの落下を防止するため、安全帯を装着し、この安全帯に命綱を連結することが行われる。この種の安全帯として、上下に延びる一対の肩ベルトと、この肩ベルトの前側で肩ベルトの延設方向に直行して延びる胸ベルト備えるハーネス型の安全帯が挙げられる。
【0003】
ハーネス型の安全帯においては、肩ベルトの背中側と肩ベルトの前側の胸ベルトとに選択的に命綱が連結できるようになっているものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
命綱を連結するタイプの胸ベルトは、胸ベルトの端部が肩けベルトに対して強固に縫着されており、胸ベルトの一部に取り付けられた連結環を介して命綱が連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、装着者が胸ベルトに連結した命綱によって吊り下げられた状態になったときには、装着者から伝わる比較的大きな荷重によって、胸ベルトが上方(場合によって下方)に引っ張られる。このとき、胸ベルトは肩ベルトに直交方向に逢着されていると、当該逢着部分の近傍の胸ベルト端部にのみ局所的に荷重が集中し、肩ベルトから胸ベルトの端部を引き裂く方向に荷重が作用する。
【0007】
このため、当該逢着部分の近傍の胸ベルト端部が疲労し、損傷するおそれがあり、高い強度が維持できず十分な耐久性が得られない不都合がある。
【0008】
上記の点に鑑み、本発明は、高い強度と耐久性が得られる安全帯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、装着者の肩に掛けわたす平帯状の縦ベルトを備えるハーネス型の安全帯であって、前記縦ベルトに交差する平帯状の横ベルトを備え、前記横ベルトは、一部が前記縦ベルトに逢着固定されて前記縦ベルトに沿って下方から上方に向かって延びる第1基端部と、該第1基端部の上縁から連続して該第1基端部に交差する方向に延びる第1延出部と、前記第1基端部と前記第1延出部との間に形成された第1折曲部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、横ベルトは、第1基端部が縦ベルトに沿って延びて縦ベルトに逢着固定されており、第1基端部に連続する第1延出部は第1折曲部を介して設けられている。これにより、縦ベルトに下方へ向かう荷重が付与され、横ベルトに上方へ向かう荷重が付与されると(例えば、装着者が横ベルトに連結した命綱によって足を下に向けて吊り下げられた状態のとき)、縦ベルトと横ベルトとに付与される荷重の方向は略同一直線方向に沿ったものとなる。これにより、縦ベルトと横ベルトとの逢着部分に引き裂くような荷重が作用することを抑制することができ、高い強度と耐久性を得ることができる。
【0011】
また、前記縦ベルトは、平帯状の第1縦ベルト部材と該第1縦ベルト部材に離反自在に重合する第2縦ベルト部材とを備え、前記横ベルトの前記第1基端部は、前記第1縦ベルト部材と前記第2縦ベルト部材との間に収容されていることが好ましい。
【0012】
第1基端部を第1縦ベルト部材と第2縦ベルト部材との間に収容することにより、第1基端部とその近傍にある第1折曲部の全部または一部を覆い隠すことができる。しかも、第1基端部や第1折曲部が露出しないことから、外観良好となるだけでなく、第1基端部や第1折曲部の他部への接触による損傷等を防止することができ、耐久性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明において、前記横ベルトは、前記第1基端部の上方位置で一部が前記縦ベルトに逢着固定されて前記縦ベルトに沿って上方からした上方に向かって延びる第2基端部と、該第2基端部の下縁から連続して前記第1延出部に沿って延びる第2延出部と、前記第2基端部と前記第2延出部との間に形成された第2折曲部とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、横ベルトは、第2基端部が縦ベルトに沿って延びて縦ベルトに逢着固定されており、第2基端部に連続する第2延出部は第2折曲部を介して設けられている。これにより、縦ベルトに上方へ向かう荷重が付与され、横ベルトに下方へ向かう荷重が付与されると(例えば、装着者が横ベルトに連結した命綱によって頭を下に向けて吊り下げられた状態のとき)、縦ベルトと横ベルトとに付与される荷重の方向は略同一直線方向に沿ったものとなり、この場合にも、縦ベルトと横ベルトとの逢着部分に引き裂くような荷重が作用することを抑制することができる。
【0015】
そして、前記縦ベルトが、平帯状の第1縦ベルト部材と該第1縦ベルト部材に離反自在に重合する第2縦ベルト部材とを備えている場合には、前記横ベルトの前記第1基端部と前記第2基端部とは、前記第1縦ベルト部材と前記第2縦ベルト部材との間に収容されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、第1基端部及び第2基端部が第1縦ベルト部材と第2縦ベルト部材とに覆われ、第1折曲部及び第2折曲部も第1縦ベルト部材と第2縦ベルト部材とに覆われるので、第1基端部、第2基端部、第1折曲部、及び第2折曲部の他部への接触が抑制され、耐久性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明においては、前記横ベルトに、連結環が取り付けられていることが好ましい。これによれば、連結環を介して命綱を容易に横ベルトに連結することができる。
【0018】
また、本発明における前記横ベルトの好ましい具体的態様として、前記横ベルトを装着者の胸前に延びる胸ベルトとすることを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の安全帯1は、高所で作業する作業員(装着者)に命綱を付けて装着される所謂ハーネス型のものであり、装着者の両肩に夫々掛け回される一対の肩ベルト2と、装着者の胸側で両肩ベルト2を繋ぐ胸ベルト3と、装着者の腰位置から腿間に掛けてループ形状を有する一対の腿ベルト4とを備えている。また、腰位置には腰ベルト5が設けられている。
【0021】
肩ベルト2は、本発明における縦ベルトに相当し、胸ベルト3は、本発明における横ベルトに相当する。
【0022】
両肩ベルト2は、平帯状に形成されており、背中に位置する留め具6によって結束されて、背面ベルト7に連続する。肩ベルト2と背面ベルト7とは、その下端で腿ベルト4に連結されている。
【0023】
また、肩ベルト2は、
図2に平面視した断面図で示すように、平帯状の第1肩ベルト部材8と、この第1肩ベルト部材8に離反自在に重合する第2肩ベルト部材9とを備えている。
【0024】
胸ベルト3は、左右に延びる長手方向の大略中央位置でバックル10により連結されており、第1胸ベルト部11と第2胸ベルト部12とでバックル10を介して左右に分離自在となっている。
図3に示すように、第1胸ベルト部11は、第1基端部13、第1延出部14、第2基端部15、第2延出部16を備えている。第1延出部14と第2延出部16とは折り返し部17を介して折り返されている。
【0025】
更に、第1基端部13と第1延出部14とは、第1折曲部18を介して連設されており、第2基端部15と第2延出部16とは、第2折曲部19を介して連設されている。
【0026】
図3に示すように、第1基端部13は、第1肩ベルト部材8に沿って上下方向に延設され、第1肩ベルト部材8と第2肩ベルト部材9とに第1逢着部20を介して逢着固定されている。なお、
図3において、説明の便宜上、第2肩ベルト部材9を図示していない。
【0027】
第1折曲部18は、第1基端部13の上端部と第1延出部14と間に形成されている。第1延出部14は、第1折曲部18によって、第1基端部13に交差する方向に延出するように設けられる。
【0028】
また、
図3に示すように、第2基端部15は、第2肩ベルト部材9に沿って上下方向に延設され、第1肩ベルト部材8と第2肩ベルト部材9とに第2逢着部21を介して逢着固定されている。第2折曲部19は第2基端部15の下端部と第2延出部16と間に形成されている。第2延出部16は、第2折曲部19によって、第2基端部15に交差する方向に延出するように設けられる。
【0029】
そして、
図3に示すように、第1折曲部18と第2折曲部19とは、互いに重なり合う位置に設けられ、これによって、第1延出部14と第2延出部16とが重合された状態で延設される。このとき、第1基端部13、第1折曲部18、第2基端部15、第2折曲部19は、第1肩ベルト部材8と第2肩ベルト部材9との間に収容されるので、
図1に示すように、露出状態にならず、外観良好であり、また、第1折曲部18や第2折曲部19の外部への干渉を防止することができる。
【0030】
また、
図2に示すように、第1延出部14と第2延出部16との連結部分である折り返し部17には、図示しない命綱を連結するための連結環22が取り付けられている。
【0031】
なお、図中符号23で示すものは、補強片である。補強片23は、連結環22と折り返し部17との摺接による胸ベルト3の損傷を防止する。
【0032】
更に、第1胸ベルト部11にはバックル10を取り付けるバックル取り付け部24が逢着固定されている。
【0033】
胸ベルト3の第2胸ベルト部12については、第1胸ベルト部11と同様の構成部分に同一の符号を付して説明を省略する。なお、第2胸ベルト部12においては、折り返し部17にバックル10が取り付けられている。
【0034】
以上の構成による胸ベルト3を備えることにより、例えば、装着者が胸ベルト3に連結した命綱によって足を下に向けた姿勢で吊り下げられた状態となったとき、
図4に示すように、胸ベルト3の第1折曲部18の屈曲が延びるように変形して、第1延出部14と第1基端部13とが肩ベルト2に沿った形状となる。これによって、肩ベルト2と胸ベルト3とに付与される荷重の方向は略同一直線方向に沿ったものとなり、胸ベルト3の第1基端部13と第1肩ベルト部材8とを逢着している第1逢着部20に引き裂くような荷重が作用することを抑制することができるので、高い強度と耐久性を得ることができる。
【0035】
また、例えば、装着者が胸ベルト3に連結した命綱によって頭を下に向けた姿勢で吊り下げられた状態となったときには、図示しないが、第1折曲部18と同様に、第2折曲部19の屈曲が延びるように変形して、第2延出部16と第2基端部15とが肩ベルト2に沿った形状となる。これによって、肩ベルト2と胸ベルト3とに付与される荷重の方向は略同一直線方向に沿ったものとなり、胸ベルト3の第2基端部15と第2肩ベルト部材9とを逢着している第2逢着部21に引き裂くような荷重が作用することを抑制することができ、これによっても高い強度と耐久性を得ることができる。
【0036】
なお、本実施形態においては、本発明の横ベルトの構成を胸ベルト3に適用した例を挙げて説明したが、本発明の横ベルトの構成が適用できるのは胸ベルト3に限らない。
【0037】
例えば、
図5に示すように、連結環としての機能を有する環状部25を備える連結ベルト26に、本発明の横ベルトの構成を適用してもよい。環状部25に図示しないカラビナ等の連結具を介して命綱を連結することができる。なお、
図5に一方のみを示して他方を図示省略するが、左右一対の連結ベルト26を設けて、両環状部25に連結具を通して用いることが好ましい。
【0038】
この連結ベルト26も前述した胸ベルト3と同様に、第1基端部13、第1延出部14、第2基端部15、第2延出部16を備えているが、第1延出部14と第2延出部16とは環状部25を介して連設されている。そして、第1基端部13と第1延出部14とは、第1折曲部18を介して連設されており、第2基端部15と第2延出部16とは、第2折曲部19を介して連設されている。このように構成した連結ベルト26によっても、上述した胸ベルト3と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0039】
1…安全帯、2…肩ベルト(縦ベルト)、3…胸ベルト(横ベルト)、8…第1肩ベルト部材(第1縦ベルト部材)、9…第2肩ベルト部材(第2縦ベルト部材)、13…第1基端部、14…第1延出部、15…第2基端部、16…第2延出部、18…第1折曲部、19…第2折曲部、22…連結環、25…環状部(連結環)、26…連結ベルト(横ベルト)。