(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060715
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】弾性表面波共振子、その製造方法、及び接合基板
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20230421BHJP
H03H 3/08 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170453
(22)【出願日】2021-10-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年2月12日発行の「2020年度 山梨大学大学院 医工農学総合教育部 修士課程 工学専攻 電気電子工学コース 修士論文発表会 講演予稿集」にて発表 (2)令和3年2月12日開催の「2020年度 山梨大学大学院 医工農学総合教育部 修士課程 工学専攻 電気電子工学コース 修士論文発表会」にて発表 (3)令和3年2月16日発行の「2020年度 山梨大学 工学部 電気電子工学科卒業論文発表会予稿集」にて発表 (4)令和3年2月17日開催の「2020年度 山梨大学 工学部 電気電子工学科卒業論文発表会」にて発表 (5)令和3年8月26日発行の「第82回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集」にて発表 (6)令和3年9月11日開催の「第82回応用物理学会秋季学術講演会」にて発表 (7)令和3年9月6日開催の「弾性波素子技術コンソーシアム 第4回総会/研究会」にて発表 (8)令和3年9月28日開催の「第50回EMシンポジウム」にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岸田 和人
(72)【発明者】
【氏名】垣尾 省司
(72)【発明者】
【氏名】横田 裕章
(72)【発明者】
【氏名】丸子 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小川 健吾
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA19
5J097AA21
5J097BB02
5J097BB11
5J097EE08
5J097EE09
5J097GG02
5J097GG07
5J097HA03
5J097KK03
5J097KK05
5J097KK06
(57)【要約】
【課題】優れた弾性表面波共振子を提供すること。
【解決手段】一実施形態に係る弾性表面波共振子では、第1の水晶基板のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)が、0°≦φ1≦2°、123°≦θ1≦128°、31°≦ψ1≦44°を満たし、第1の水晶基板上に接合された第2の水晶基板のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)が、83°≦φ2≦95°、82°≦θ2≦95°、159°≦ψ2≦161°を満たし、第2の水晶基板の厚さが、弾性表面波の波長の0.17~0.19倍である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の水晶基板と、
前記第1の水晶基板上に接合された第2の水晶基板と、
前記第2の水晶基板上に形成されたIDT(Interdigital Transducer)電極と、を備え、
前記第1の水晶基板のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)が、0°≦φ1≦2°、123°≦θ1≦128°、31°≦ψ1≦44°を満たし、
前記第2の水晶基板のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)が、83°≦φ2≦95°、82°≦θ2≦95°、159°≦ψ2≦161°を満たし、
前記第2の水晶基板の厚さが、前記第2の水晶基板の表面を伝播する縦型漏洩弾性表面波の波長の0.17~0.19倍である、
弾性表面波共振子。
【請求項2】
第1の水晶基板と、
前記第1の水晶基板上に接合された第2の水晶基板と、
前記第2の水晶基板上に形成されたIDT(Interdigital Transducer)電極と、を備え、
前記第1の水晶基板のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)が、83°≦φ1≦97°、80°≦θ1≦100°、30°≦ψ1≦59°を満たし、
前記第2の水晶基板のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)が、88°≦φ2≦92°、88°≦θ2≦92°、53°≦ψ2≦63°を満たし、
前記第2の水晶基板の厚さが、前記第2の水晶基板の表面を伝播する縦型漏洩弾性表面波の波長の0.33~0.46倍である、
弾性表面波共振子。
【請求項3】
第1の水晶基板と、
前記第1の水晶基板上に接合された第2の水晶基板と、
前記第2の水晶基板上に形成されたIDT(Interdigital Transducer)電極と、を備え、
前記第1の水晶基板のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)が、74°≦φ1≦107°、64°≦θ1≦116°、14°≦ψ1≦87°を満たし、
前記第2の水晶基板のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)が、89°≦φ2≦91°、87°≦θ2≦93°、0°≦ψ2≦13°又は172°≦ψ2<180°を満たし、
前記第2の水晶基板の厚さが、前記第2の水晶基板の表面を伝播する縦型漏洩弾性表面波の波長の0.94~1.04倍である、
弾性表面波共振子。
【請求項4】
前記縦型漏洩弾性表面波の単位波長当たりの伝播減衰が、0.01dB以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の弾性表面波共振子。
【請求項5】
前記第1の水晶基板と前記第2の水晶基板とが直接接触するように接合されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の弾性表面波共振子。
【請求項6】
(a)第1の水晶基板上に、第2の水晶基板を接合する工程と、
(b)前記第2の水晶基板上にIDT(Interdigital Transducer)電極を形成する工程と、を備え、
前記第1の水晶基板のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)が、0°≦φ1≦2°、123°≦θ1≦128°、31°≦ψ1≦44°を満たし、
前記第2の水晶基板のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)が、83°≦φ2≦95°、82°≦θ2≦95°、159°≦ψ2≦161°を満たし、
前記第2の水晶基板の厚さが、前記第2の水晶基板の表面を伝播する縦型漏洩弾性表面波の波長の0.17~0.19倍である、
弾性表面波共振子の製造方法。
【請求項7】
(a)第1の水晶基板上に、第2の水晶基板を接合する工程と、
(b)前記第2の水晶基板上にIDT(Interdigital Transducer)電極を形成する工程と、を備え、
前記第1の水晶基板のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)が、83°≦φ1≦97°、80°≦θ1≦100°、30°≦ψ1≦59°を満たし、
前記第2の水晶基板のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)が、88°≦φ2≦92°、88°≦θ2≦92°、53°≦ψ2≦63°を満たし、
前記第2の水晶基板の厚さが、前記第2の水晶基板の表面を伝播する縦型漏洩弾性表面波の波長の0.33~0.46倍である、
弾性表面波共振子の製造方法。
【請求項8】
(a)第1の水晶基板上に、第2の水晶基板を接合する工程と、
(b)前記第2の水晶基板上にIDT(Interdigital Transducer)電極を形成する工程と、を備え、
前記第1の水晶基板のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)が、74°≦φ1≦107°、64°≦θ1≦116°、14°≦ψ1≦87°を満たし、
前記第2の水晶基板のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)が、89°≦φ2≦91°、87°≦θ2≦93°、0°≦ψ2≦13°又は172°≦ψ2<180°を満たし、
前記第2の水晶基板の厚さが、前記第2の水晶基板の表面を伝播する縦型漏洩弾性表面波の波長の0.94~1.04倍である、
弾性表面波共振子の製造方法。
【請求項9】
前記縦型漏洩弾性表面波の単位波長当たりの伝播減衰が、0.01dB以下である、
請求項6~8のいずれか一項に記載の弾性表面波共振子の製造方法。
【請求項10】
工程(a)において、
前記第1の水晶基板と前記第2の水晶基板とを直接接触するように接合する、
請求項6~8のいずれか一項に記載の弾性表面波共振子の製造方法。
【請求項11】
第1の水晶基板と、
前記第1の水晶基板上に接合された第2の水晶基板と、を備え、
前記第1の水晶基板のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)が、0°≦φ1≦2°、123°≦θ1≦128°、31°≦ψ1≦44°を満たし、
前記第2の水晶基板のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)が、83°≦φ2≦95°、82°≦θ2≦95°、159°≦ψ2≦161°を満たし、
前記第2の水晶基板の厚さが、前記第2の水晶基板の表面を伝播する縦型漏洩弾性表面波の波長の0.17~0.19倍である、
接合基板。
【請求項12】
第1の水晶基板と、
前記第1の水晶基板上に接合された第2の水晶基板と、を備え、
前記第1の水晶基板のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)が、83°≦φ1≦97°、80°≦θ1≦100°、30°≦ψ1≦59°を満たし、
前記第2の水晶基板のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)が、88°≦φ2≦92°、88°≦θ2≦92°、53°≦ψ2≦63°を満たし、
前記第2の水晶基板の厚さが、前記第2の水晶基板の表面を伝播する縦型漏洩弾性表面波の波長の0.33~0.46倍である、
接合基板。
【請求項13】
第1の水晶基板と、
前記第1の水晶基板上に接合された第2の水晶基板と、を備え、
前記第1の水晶基板のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)が、74°≦φ1≦107°、64°≦θ1≦116°、14°≦ψ1≦87°を満たし、
前記第2の水晶基板のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)が、89°≦φ2≦91°、87°≦θ2≦93°、0°≦ψ2≦13°又は172°≦ψ2<180°を満たし、
前記第2の水晶基板の厚さが、前記第2の水晶基板の表面を伝播する縦型漏洩弾性表面波の波長の0.94~1.04倍である、
接合基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性表面波共振子、その製造方法、及び接合基板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの移動体通信機器の進化に伴い弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタについても高性能化が要求されている。SAWフィルタを構成する弾性表面波共振子には、例えば、電気機械結合係数K2の向上による広帯域化や周波数温度係数(TCF:Temperature Coefficient of Frequency)の絶対値の低減等が求められている。特許文献1~3に開示されているように、発明者らは、これまで水晶基板上に圧電体結晶基板が接合された弾性表面波共振子を開発してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-026695号公報
【特許文献2】特開2019-004308号公報
【特許文献3】特開2019-145920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、水晶基板を備えた弾性表面波共振子の開発に際し、様々な課題を見出した。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る弾性表面波共振子では、第1の水晶基板のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)が、0°≦φ1≦2°、123°≦θ1≦128°、31°≦ψ1≦44°を満たし、第1の水晶基板上に接合された第2の水晶基板のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)が、83°≦φ2≦95°、82°≦θ2≦95°、159°≦ψ2≦161°を満たし、第2の水晶基板の厚さが、弾性表面波の波長の0.17~0.19倍である。
【発明の効果】
【0006】
前記一実施形態によれば、優れた弾性表面波共振子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】Xカット、Yカット、Zカット、及びATカットの水晶基板QS1における弾性表面波の位相速度の伝播方向依存性を示すグラフである。
【
図3】第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の諸特性について、水晶基板QS2の規格化板厚依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図4】第1の実施形態に係る弾性表面波共振子のシミュレーションによる共振特性解析結果を示すグラフである。
【
図5】第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1のカット角φ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図6】第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1のカット角θ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図7】第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1の伝播角ψ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図8】第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2のカット角φ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図9】第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2のカット角θ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図10】第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2の伝播角ψ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図11】第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の諸特性について、水晶基板QS2の規格化板厚依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図12】第2の実施形態に係る弾性表面波共振子のシミュレーションによる共振特性解析結果を示すグラフである。
【
図13】第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1のカット角φ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図14】第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1のカット角θ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図15】第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1の伝播角ψ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図16】第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2のカット角φ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図17】第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2のカット角θ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図18】第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2の伝播角ψ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図19】第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の諸特性について、水晶基板QS2の規格化板厚依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図20】第3の実施形態に係る弾性表面波共振子のシミュレーションによる共振特性解析結果を示すグラフである。
【
図21】第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1のカット角φ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図22】第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1のカット角θ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図23】第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1の伝播角ψ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図24】第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2のカット角φ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図25】第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2のカット角θ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【
図26】第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2の伝播角ψ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。
【0009】
(第1の実施形態)
<弾性表面波共振子の構成>
まず、
図1を参照して、第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の構成について説明する。本実施形態に係る弾性表面波共振子の用途は、何ら限定されないが、例えば、広帯域ではあるが、なだらかな減衰特性を有するセラミックLCフィルタに接続するバンドリジェクションフィルタに適用できる。より具体的には、高周波側及び低周波側のバンドリジェクションフィルタとして、本実施形態に係る一対の弾性表面波共振子をセラミックLCフィルタに接続することによって、広帯域かつカットオフ特性が急峻なバンドパスフィルタが得られる。
本実施形態に係る弾性表面波共振子の他の用途としては、高いQ値が得られることから気体や液体の高感度センサや音響光学効果を用いたレーザー光制御素子等への応用が考えられる。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の構成の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS、IDT(Interdigital Transducer)電極IDT、及び反射器REF1、REF2を備えている。
【0011】
図1に示すように、水晶基板QS上にIDT電極IDT及び反射器REF1、REF2が形成されている。
図1に示した弾性表面波共振子は、2つの反射器REF1、REF2の間に1つのIDT電極IDTが配置された1ポート弾性表面波共振子である。
なお、2つの反射器REF1、REF2の間に2つのIDT電極が配置された2ポート弾性表面波共振子でもよい。また、反射器REF1、REF2は必須ではない。
【0012】
本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QSが2枚の水晶基板QS1、QS2を備える。
水晶基板(第1の水晶基板)QS1は、所定の結晶面においてカットされた水晶(SiO2)からなる単結晶基板である。本実施形態に係る水晶基板QS1は、ATカットかつ縦型漏洩弾性表面波(LLSAW:Longitudinal Leaky Surface Acoustic Wave)の伝播方向が結晶X軸に対して39°(ATカット39°X伝播)の水晶基板である。
本実施形態に係る弾性表面波共振子では、縦型漏洩弾性表面波を用いるため、以下では縦型漏洩弾性表面波を単に弾性表面波と呼ぶ。
【0013】
ここで、水晶基板QS1におけるATカット39°X伝播をオイラー角(φ1、θ1、ψ1)によって表示すると、オイラー角(φ1、θ1、ψ1)=(0°、125°、39°)で表される。オイラー角における角度φ1、θ1は、水晶基板QS1のカット角を示し、角度ψ1は水晶基板QS1における弾性表面波の伝播方向を示している。水晶基板QS1のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)は、それぞれ許容範囲を有しているが、詳細については後述する。
【0014】
図2は、Xカット、Yカット、Zカット、及びATカットの水晶基板QS1における弾性表面波の位相速度の伝播方向依存性を示すグラフである。
図2は、水晶基板QS1の自由表面(Free Surface)における弾性表面波の位相速度の理論解析結果である。水晶基板QS2に弾性表面波を閉じ込め、伝播減衰を小さくするには、水晶基板QS1における弾性表面波の位相速度は大きい方が好ましい。
【0015】
図2に示すように、ATカットの水晶基板QS1では、48°X伝播において、弾性表面波の位相速度が7000m/s程度で最大となる。理論解析の結果、ATカット39°X伝播の水晶基板QS1と後述する水晶基板QS2との組み合わせにおいて、伝播減衰が極小化し、優れた共振特性が得られることが分かった。
図2に示すように、ATカット39°X伝播の水晶基板QS1においても、7000m/sに近い弾性表面波の位相速度が得られる。
水晶基板QS1の厚さは、例えば5~500μmである。
【0016】
図1に示すように、水晶基板(第2の水晶基板)QS2は、支持基板である水晶基板QS1上に接合されている。すなわち水晶基板QSは接合基板である。水晶基板QS1と水晶基板QS2とは、例えば表面活性化接合法等によって、直接接触するように接合される。水晶基板QS2は、Xカットかつ弾性表面波の伝播方向が結晶Y軸に対して160°(Xカット160°Y伝播)の水晶基板である。水晶基板QS1における弾性表面波の伝播方向と、水晶基板QS2における弾性表面波の伝播方向とが一致している。本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2の表面を伝播する弾性表面波を用いる。
【0017】
ここで、水晶基板QS2におけるXカット160°Y伝播をオイラー角(φ2、θ2、ψ2)によって表示すると、オイラー角(φ2、θ2、ψ2)=(90°、90°、160°)で表される。オイラー角における角度φ2、θ2は、水晶基板QS2のカット角を示し、角度ψ2は水晶基板QS2における弾性表面波の伝播方向を示している。水晶基板QS2のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)も、それぞれ許容範囲を有しているが、詳細については後述する。
【0018】
ここで、
図3を参照して、水晶基板QS2の厚さ及び本実施形態に係る弾性表面波共振子の諸特性について説明する。
図3は、第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の諸特性について、水晶基板QS2の規格化板厚依存性の理論解析結果を示すグラフである。上述の通り、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、ATカット39°X伝播の水晶基板QS1上にXカット160°Y伝播の水晶基板QS2が接合された構成を有している。
図3では、X160°Y-Qz/AT39°X-Qzと示されている。
【0019】
図3の横軸は、共通であって、弾性表面波の波長λによって規格化された水晶基板QS2の板厚hすなわち水晶基板QS2の規格化板厚h/λを示している。
図3の縦軸は、上から伝播減衰、位相速度、電気機械結合係数K
2、及び周波数温度係数(TCF)を示している。
図3に示すように、伝播減衰、位相速度、及びTCFについては、短絡表面(Metallized Surface)における理論解析結果である。
なお、電気機械結合係数K
2は、自由表面での位相速度v
fと短絡表面での位相速度v
mとを用いて、K
2=2(v
f-v
m)/v
fの関係式から得られる。
【0020】
図3の最上段のグラフに示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS2の規格化板厚h/λ=0.182において、伝播減衰が極小値を示す。
図3において、ドットハッチングして示すように、水晶基板QS2の規格化板厚h/λが0.169~0.194において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2の厚さは、弾性表面波の波長λの0.17~0.19倍を満たすように構成されている。
【0021】
図3の上から2段目のグラフに示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子における弾性表面波の位相速度は5980m/sと大きく、例えば3.5GHz以上の高周波数帯のフィルタに適用できる。
【0022】
また、
図3の上から3段目のグラフに示すように、本実施形態に係る電気機械結合係数K
2は、0.150%と小さい。電気機械結合係数K
2が小さいと、バントパスフィルタとしては通過帯域が狭くなる。そのため、上述のように、例えばバンドリジェクションフィルタ用途に適している。
【0023】
さらに、
図3の最下段のグラフに示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子のTCFは、8.5ppm/℃と小さく、良好である。
【0024】
図1に戻って、本実施形態に係る弾性表面波共振子の構成を説明する。
IDT電極IDTは、水晶基板QS上すなわち水晶基板QS2上に形成されており、例えばアルミニウム(Al)や銅(Cu)を主成分とする金属膜から構成される。金属膜の厚さは、例えば数10~数100nmである。
図1に示すように、IDT電極IDTは、それぞれ櫛形状の電極E1、E2から構成されている。電極E1、E2の一方が入力電極であり、他方が出力電極である。
【0025】
詳細には、電極E1、E2のそれぞれは、互いに平行に並んで配置され、かつ、一端が互いに接続された複数本の電極指(櫛歯)を備えている。そして、電極E1、E2の一方の隣接する電極指間に、他方の電極指が1本ずつ挿入されるように、電極E1と電極E2とが対向配置されている。すなわち、電極E1の電極指と電極E2の電極指とが交互に平行に並んで配置されている。
【0026】
図1に示すように、電極E1、E2の電極指は、水晶基板QS2の表面における弾性表面波の伝播方向に対して垂直に延設されている。ここで、電極E1、E2の電極指の幅w、及び電極E1の電極指と隣接する電極E2の電極指とのギャップgは、一定である。すなわち、IDT電極IDT(電極E1、E2)の電極指の配置ピッチpも一定であり、電極指の幅wとギャップgとの和である。すなわち、p=w+gが成立する。
【0027】
ここで、弾性表面波の波長λは、ピッチpの2倍(すなわちλ=2p)であり、幾何学的に定まる。
また、弾性表面波の中心周波数f0は、弾性表面波の位相速度vと波長λとを用いて、f0=v/λで表されるため、次式が成立する。
f0=v/λ=v/2p=v/2(w+g)
位相速度vは、水晶基板QS2のカット面及び伝播方向等によって定まるため、ピッチpを小さくすることによって、弾性表面波の中心周波数f0を高くできる。
【0028】
ここで、メタライゼーション比w/pは、特に限定されないが、例えば0.1~0.9とする。w/p=0.5のとき、3次高調波が励振されないことが知られている。また、ピッチpを一定とすると(すなわち弾性表面波の中心周波数f0を一定とすると)、メタライゼーション比w/pが大きい程、電極指の幅wも大きくなるため、低抵抗化できる。
【0029】
他方、メタライゼーション比w/pが0.9を超えると、ギャップgが小さくなり、IDT電極IDTの製造が難しくなる。また、メタライゼーション比w/pが0.1を下回ると、幅wが小さくなり、IDT電極IDTの製造が難しくなる。
IDT電極IDT(電極E1、E2)の電極指の幅wは、例えば0.2~1.5μmである。
【0030】
なお、
図1の例では、電極E1の電極指の本数が、電極E2の電極指の本数よりも1本多いが、同じでもよい。また、電極E1及び電極E2の電極指の本数は、適宜設定される。さらに、電極E1、E2の一方の隣接する電極指間に、電極E1、E2の他方の電極指が2本以上ずつ挿入される構成であってもよい。
【0031】
反射器REF1、REF2は、例えばIDT電極IDTと同じ金属膜から構成される。
図1に示すように、反射器REF1、REF2のそれぞれは、互いに平行に並んで配置され、かつ、両端が互いに接続された複数本のストリップから構成されている。ストリップは、電極E1、E2の電極指と同一ピッチpで、電極E1、E2の電極指と平行に設けられている。IDT電極IDTによって励振された弾性表面波が、反射器REF1、REF2によって反射されて定在波となるため、Q値が高く低損失な弾性表面波共振子が得られる。
【0032】
また、第1の実施形態に係る弾性表面波共振子は反射係数が大きいため反射器本数を削減でき、フィルタ面積を小型化できる。
なお、水晶基板QS1上に水晶基板QS2を接合した後、水晶基板QS2上にIDT電極IDT及び反射器REF1、REF2を形成する。
【0033】
<シミュレーションによる共振特性解析>
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る弾性表面波共振子のシミュレーションによる共振特性解析結果について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る弾性表面波共振子のシミュレーションによる共振特性解析結果を示すグラフである。横軸は位相速度(m/s)、縦軸はアドミタンス(S)を示す。位相速度vは、弾性表面波の波長λに周波数fを乗じたものである。
【0034】
図4には、ATカット39°X伝播の水晶基板QS1上にXカット160°Y伝播すなわちオイラー角(φ2、θ2、ψ2)=(90°、90°、160°)の水晶基板QS2が接合された弾性表面波共振子の解析結果が実線で示されている。
図4では、X160°Y-Qz/AT39°X-Qzと示されている。
【0035】
また、
図4には、ATカット39°X伝播の水晶基板QS1上にオイラー角(φ2、θ2、ψ2)=(89.0°、88.7°、160°)の水晶基板QS2が接合された弾性表面波共振子の解析結果が破線で示されている。すなわち、水晶基板QS2のカット角φ2がXカットから1.0°ずれると共に、カット角θ2がXカットから1.3°ずれた構成である。
図4では、(89.0°、88.7°、160°)-Qz/AT39°X-Qzと示されている。
【0036】
上記の弾性表面波共振子について、ムラタソフトウェア株式会社製の解析ソフトFemtetを用い、共振特性の有限要素法(FEM:Finite Element Method)解析を行った。弾性表面波の波長λ(=2p)を8μm、支持基板の厚みを10λに設定した。また、
図3に示すように、水晶基板QS2の規格化板厚h/λを伝播減衰が小さくなる0.180に設定した。
【0037】
図1に示したIDT電極IDTは、膜厚0.01μm(=0.00125λ)のアルミニウム(Al)膜からなり、無限周期構造を有するものと仮定した。また、IDT電極の底面に完全整合層(PML:Perfect Matched Layer)を設定した。メタライゼーション比w/pは0.5に設定した。そして、IDT電極IDTに、±1Vの正弦波交流電圧を印加した。各材料の誘電損、機械損は考慮しなかった。
【0038】
図4に実線で示すX160°Y-Qz/AT39°X-Qzの弾性表面波共振子では、アドミタンス比は75dB、共振Q値は46900、反共振Q値も46900であり、いずれも高い値が得られた。なお、比帯域幅は0.070%であった。
【0039】
図4に破線で示す(89.0°、88.7°、160°)-Qz/AT39°X-Qzの弾性表面波共振子では、アドミタンス比は101dB、共振Q値は107000、反共振Q値は375000であり、いずれもさらに高い値が得られた。なお、比帯域幅は0.083%であった。
【0040】
このように、ATカット39°X伝播の水晶基板QS1上に、0.18の規格化板厚h/λを有するXカット160°Y伝播の水晶基板QS2が接合された弾性表面波共振子において、単体の水晶基板では得られないような優れた共振特性が得られた。
また、水晶基板QS2のカット角φ2=89.0°、カット角θ2=88.7とし、Xカットから僅かにずらすことによって、さらに優れた共振特性が得られた。
【0041】
<水晶基板QS1のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)の許容範囲>
次に、
図5~
図7を参照して、水晶基板QS1のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)の許容範囲について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1のカット角φ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図6は、第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1のカット角θ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図7は、第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1の伝播角ψ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【0042】
図5~
図7において、水晶基板QS2は、Xカット160°Y伝播の水晶基板である。水晶基板QS2の規格化板厚h/λは、いずれも
図3において伝播減衰が極小値を示す0.182とした。
【0043】
図5に示すように、水晶基板QS1のカット角φ1を変化させる際、カット角θ1=125°、伝播角ψ1=39°に固定した。
図6に示すように、水晶基板QS1のカット角θ1を変化させる際、カット角φ1=0°、伝播角ψ1=39°に固定した。
図7に示すように、水晶基板QS1の伝播角ψ1を変化させる際、カット角φ1=0°、カット角θ1=125°に固定した。
【0044】
図5にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS1のカット角φ1が0~2.2°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS1のカット角φ1が、0°≦φ1≦2°を満たすように構成されている。水晶基板QS1のカット角φ1は、0°≦φ1≦1°を満たすことが好ましい。なお、
図5に示されたカット角φ1の範囲のみにおいて解が得られた。
【0045】
図6にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS1のカット角θ1が122.7~128.1°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS1のカット角θ1は、123°≦θ1≦128°を満たすように構成されている。水晶基板QS1のカット角θ1は、124°≦θ1≦127°を満たすことが好ましい。
【0046】
図7にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS1の伝播角ψ1が31.3~44.2°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS1の伝播角ψ1は、31°≦ψ1≦42°を満たすように構成されている。水晶基板QS1の伝播角ψ1は、37°≦ψ1≦41°を満たすことが好ましく、38°≦ψ1≦40°を満たすことがより好ましい。
【0047】
<水晶基板QS2のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)の許容範囲>
次に、
図8~
図10を参照して、水晶基板QS2のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)の許容範囲について説明する。
図8は、第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2のカット角φ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図9は、第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2のカット角θ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図10は、第1の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2の伝播角ψ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【0048】
図8~
図10において、水晶基板QS1は、ATカット39°X伝播の水晶基板である。水晶基板QS2の規格化板厚h/λは、いずれも
図3において伝播減衰が極小値を示す0.182とした。
【0049】
図8に示すように、水晶基板QS2のカット角φ2を変化させる際、カット角θ2=90°、伝播角ψ2=160°に固定した。
図9に示すように、水晶基板QS2のカット角θ2を変化させる際、カット角φ2=90°、伝播角ψ2=160°に固定した。
図10に示すように、水晶基板QS2の伝播角ψ2を変化させる際、カット角φ2=90°、カット角θ2=90°に固定した。
【0050】
図8にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS2のカット角φ2が83.4~95.2°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2のカット角φ2が、83°≦φ2≦95°を満たすように構成されている。水晶基板QS2のカット角φ2は、88°≦φ2≦90°を満たすことが好ましい。
【0051】
図9にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS2のカット角θ2が82.1~95.3°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2のカット角θ2が、82°≦θ2≦95°を満たすように構成されている。水晶基板QS2のカット角θ2は、87°≦φ2≦90°を満たすことが好ましい。
【0052】
図10にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS2の伝播角ψ2が158.7~161.4°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2の伝播角ψ2が、159°≦ψ1≦161°を満たすように構成されている。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の構成について説明する。第1の実施形態に係る弾性表面波共振子と同様に、第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の構成も、
図1に示す通りである。
【0054】
本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS1が、Xカットかつ弾性表面波の伝播方向が結晶Y軸に対して41°(Xカット41°Y伝播)の水晶基板である。
ここで、水晶基板QS1におけるXカット41°Y伝播をオイラー角(φ1、θ1、ψ1)によって表示すると、オイラー角(φ1、θ1、ψ1)=(90°、90°、41°)で表される。水晶基板QS1のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)は、それぞれ許容範囲を有しているが、詳細については後述する。
【0055】
図2に示すように、Xカットの水晶基板QS1では、41°Y伝播において、弾性表面波の位相速度が7000m/s程度で最大となる。理論解析の結果、位相速度が最大となるXカット41°Y伝播の水晶基板QS1と後述する水晶基板QS2との組み合わせにおいて、伝播減衰が極小化し、優れた共振特性が得られることが分かった。
【0056】
さらに、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2が、Xカットかつ弾性表面波の伝播方向が結晶Y軸に対して59°(Xカット59°Y伝播)の水晶基板である。
ここで、水晶基板QS2におけるXカット59°Y伝播をオイラー角(φ2、θ2、ψ2)によって表示すると、オイラー角(φ2、θ2、ψ2)=(90°、90°、59°)で表される。水晶基板QS2のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)も、それぞれ許容範囲を有しているが、詳細については後述する。
【0057】
ここで、
図11を参照して、水晶基板QS2の厚さ及び本実施形態に係る弾性表面波共振子の諸特性について説明する。
図11は、第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の諸特性について、水晶基板QS2の規格化板厚依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図11は、第1の実施形態における
図3に対応する。上述の通り、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、Xカット41°Y伝播の水晶基板QS1上にXカット59°Y伝播の水晶基板QS2が接合された構成を有している。
図11では、X59°Y-Qz/X41°Y-Qzと示されている。
【0058】
図11の横軸は、共通であって、弾性表面波の波長λによって規格化された水晶基板QS2の板厚hすなわち水晶基板QS2の規格化板厚h/λを示している。
図11の縦軸は、上から伝播減衰、位相速度、電気機械結合係数K
2、及びTCFを示している。
図11に示すように、伝播減衰、位相速度、及びTCFについては、短絡表面における理論解析結果である。
【0059】
図11の最上段のグラフに示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS2の規格化板厚h/λ=0.390において、伝播減衰が極小値を示す。
図11において、ドットハッチングして示すように、水晶基板QS2の規格化板厚h/λが0.331~0.462において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2の厚さが、弾性表面波の波長λの0.33~0.46倍を満たすように構成されている。水晶基板QS2の厚さは、弾性表面波の波長λの0.35~0.43倍が好ましく、0.37~0.41倍がさらに好ましい。
【0060】
図11の上から2段目のグラフに示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子における弾性表面波の位相速度は6930m/sと大きく、例えば3.5GHz以上の高周波数帯のフィルタに適用できる。
【0061】
また、
図11の上から3段目のグラフに示すように、本実施形態に係る電気機械結合係数K
2は、0.030%と小さい。電気機械結合係数K
2が小さいと、バントパスフィルタとしては通過帯域が狭くなる。そのため、上述のように、例えばバンドリジェクションフィルタ用途に適している。
【0062】
さらに、
図11の最下段のグラフに示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子のTCFは、-68.1ppm/℃とやや大きい。
【0063】
<シミュレーションによる共振特性解析>
次に、
図12を参照して、本実施形態に係る弾性表面波共振子のシミュレーションによる共振特性解析結果について説明する。
図12は、第2の実施形態に係る弾性表面波共振子のシミュレーションによる共振特性解析結果を示すグラフである。
図12は、第1の実施形態における
図4に対応し、
図12の横軸は位相速度(m/s)、縦軸はアドミタンス(S)を示す。
【0064】
図12には、Xカット41°Y伝播の水晶基板QS1上にXカット59°Y伝播の水晶基板QS2が接合された弾性表面波共振子の解析結果が実線で示されている。
図12では、X59°Y-Qz/X41°Y-Qzと示されている。
【0065】
上記の弾性表面波共振子について、ムラタソフトウェア株式会社製の解析ソフトFemtetを用い、共振特性の有限要素法(FEM:Finite Element Method)解析を行った。弾性表面波の波長λ(=2p)を8μm、支持基板の厚みを10λに設定した。また、
図11に示すように、水晶基板QS2の規格化板厚h/λを伝播減衰が小さくなる0.400に設定した。
【0066】
図1に示したIDT電極IDTは、膜厚0.02μm(=0.00250λ)のアルミニウム(Al)膜からなり、無限周期構造を有するものと仮定した。また、IDT電極の底面に完全整合層(PML:Perfect Matched Layer)を設定した。メタライゼーション比w/pは0.5に設定した。そして、IDT電極IDTに、±1Vの正弦波交流電圧を印加した。各材料の誘電損、機械損は考慮しなかった。
【0067】
図12に示すX59°Y-Qz/X41°Y-Qzの弾性表面波共振子では、アドミタンス比は78dB、共振Q値は217000、反共振Q値は289000であり、いずれも高い値が得られた。なお、比帯域幅は0.016%であった。
このように、Xカット41°Y伝播の水晶基板QS1上に、0.4の規格化板厚h/λを有するXカット59°Y伝播の水晶基板QS2が接合された弾性表面波共振子において、単体の水晶基板では得られないような優れた共振特性が得られた。
【0068】
<水晶基板QS1のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)の許容範囲>
次に、
図13~
図15を参照して、水晶基板QS1のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)の許容範囲について説明する。
図13は、第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1のカット角φ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図14は、第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1のカット角θ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図15は、第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1の伝播角ψ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【0069】
図13~
図15において、水晶基板QS2は、Xカット59°Y伝播の水晶基板である。水晶基板QS2の規格化板厚h/λは、いずれも
図11において伝播減衰が極小値を示す0.390とした。
【0070】
図13に示すように、水晶基板QS1のカット角φ1を変化させる際、カット角θ1=90°、伝播角ψ1=41°に固定した。
図14に示すように、水晶基板QS1のカット角θ1を変化させる際、カット角φ1=90°、伝播角ψ1=41°に固定した。
図15に示すように、水晶基板QS1の伝播角ψ1を変化させる際、カット角φ1=90°、カット角θ1=90°に固定した。
【0071】
図13にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS1のカット角φ1が82.7~97.3°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS1のカット角φ1が、83°≦φ1≦97°を満たすように構成されている。なお、
図13に示された曲線の範囲のみにおいて解が得られた。水晶基板QS1のカット角φ1は、85°≦φ1≦95°を満たすことが好ましく、87°≦φ1≦93°を満たすことがより好ましい。
【0072】
図14にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS1のカット角θ1が79.6~100.4°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS1のカット角θ1は、80°≦θ1≦100°を満たすように構成されている。なお、
図14に示された曲線の範囲のみにおいて解が得られた。水晶基板QS1のカット角θ1は、85°≦θ1≦95°を満たすことが好ましく、87°≦θ1≦93°を満たすことがより好ましい。
【0073】
図15にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS1の伝播角ψ1が30.3~58.5°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS1の伝播角ψ1は、30°≦ψ1≦59°を満たすように構成されている。なお、
図15に示された曲線の範囲のみにおいて解が得られた。水晶基板QS1の伝播角ψ1は、36°≦ψ1≦46°を満たすことが好ましく、38°≦ψ1≦44°を満たすことがより好ましい。
【0074】
<水晶基板QS2のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)の許容範囲>
次に、
図16~
図18を参照して、水晶基板QS2のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)の許容範囲について説明する。
図16は、第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2のカット角φ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図17は、第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2のカット角θ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図18は、第2の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2の伝播角ψ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【0075】
図16~
図18において、水晶基板QS1は、Xカット41°Y伝播の水晶基板である。水晶基板QS2の規格化板厚h/λは、いずれも
図11において伝播減衰が極小値を示す0.390とした。
【0076】
図16に示すように、水晶基板QS2のカット角φ2を変化させる際、カット角θ2=90°、伝播角ψ2=59°に固定した。
図17に示すように、水晶基板QS2のカット角θ2を変化させる際、カット角φ2=90°、伝播角ψ2=59°に固定した。
図18に示すように、水晶基板QS2の伝播角ψ2を変化させる際、カット角φ2=90°、カット角θ2=90°に固定した。
【0077】
図16にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS2のカット角φ2が87.9~92.1°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2のカット角φ2が、88°≦φ2≦92°を満たすように構成されている。水晶基板QS2のカット角φ2は、89°≦φ2≦91°を満たすことが好ましい。
【0078】
図17にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS2のカット角θ2が87.7~92.3°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2のカット角θ2が、88°≦θ2≦92°を満たすように構成されている。水晶基板QS2のカット角θ2は、89°≦θ2≦91°を満たすことが好ましい。
【0079】
図18にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS2の伝播角ψ2が53.1~63.0°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2の伝播角ψ2が、53°≦ψ1≦63°を満たすように構成されている。水晶基板QS2の伝播角ψ2は、57°≦ψ1≦61°を満たすことが好ましい。なお、
図18に示された曲線が途切れた範囲では解が得られない。
その他の構成は第1の実施形態に係る弾性表面波共振子と同様である。
【0080】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の構成について説明する。第1の実施形態に係る弾性表面波共振子と同様に、第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の構成も、
図1に示す通りである。
【0081】
第2の実施形態と同様に、本実施形態に係る弾性表面波共振子でも、水晶基板QS1が、Xカットにおいて位相速度が最大となる41°Y伝播の水晶基板である。
ここで、水晶基板QS1におけるXカット41°Y伝播をオイラー角(φ1、θ1、ψ1)によって表示すると、オイラー角(φ1、θ1、ψ1)=(90°、90°、41°)で表される。水晶基板QS1のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)は、それぞれ許容範囲を有しているが、詳細については後述する。
【0082】
さらに、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2が、Xカットかつ弾性表面波の伝播方向が結晶Y軸に対して0°(Xカット0°Y伝播)の水晶基板である。
ここで、水晶基板QS2におけるXカット0°Y伝播をオイラー角(φ2、θ2、ψ2)によって表示すると、オイラー角(φ2、θ2、ψ2)=(90°、90°、0°)で表される。水晶基板QS2のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)も、それぞれ許容範囲を有しているが、詳細については後述する。
【0083】
ここで、
図19を参照して、水晶基板QS2の厚さ及び本実施形態に係る弾性表面波共振子の諸特性について説明する。
図19は、第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の諸特性について、水晶基板QS2の規格化板厚依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図19は、第1の実施形態における
図3に対応する。上述の通り、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、Xカット41°Y伝播の水晶基板QS1上にXカット0°Y伝播の水晶基板QS2が接合された構成を有している。
図19では、X0°Y-Qz/X41°Y-Qzと示されている。
【0084】
図19の横軸は、共通であって、弾性表面波の波長λによって規格化された水晶基板QS2の板厚hすなわち水晶基板QS2の規格化板厚h/λを示している。
図19の縦軸は、上から伝播減衰、位相速度、電気機械結合係数K
2、及びTCFを示している。
図19に示すように、伝播減衰、位相速度、及びTCFについては、短絡表面における理論解析結果である。
【0085】
図19の最上段のグラフに示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS2の規格化板厚h/λ=0.990において、伝播減衰が極小値を示す。
図19において、ドットハッチングして示すように、水晶基板QS2の規格化板厚h/λが0.942~1.036において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2の厚さが、弾性表面波の波長λの0.94~1.04倍を満たすように構成されている。水晶基板QS2の厚さは、弾性表面波の波長λの0.96~1.02倍が好ましく、0.98~1.00倍がさらに好ましい。
【0086】
図19の上から2段目のグラフに示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子における弾性表面波の位相速度は6070m/sと大きく、例えば3.5GHz以上の高周波数帯のフィルタに適用できる。
【0087】
また、
図19の上から3段目のグラフに示すように、本実施形態に係る電気機械結合係数K
2は、0.143%と小さい。電気機械結合係数K
2が小さいと、バントパスフィルタとしては通過帯域が狭くなる。そのため、上述のように、例えばバンドリジェクションフィルタ用途に適している。
【0088】
さらに、
図19の最下段のグラフに示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子のTCFは、-11.6ppm/℃と小さく、良好である。
【0089】
<シミュレーションによる共振特性解析>
次に、
図20を参照して、本実施形態に係る弾性表面波共振子のシミュレーションによる共振特性解析結果について説明する。
図20は、第3の実施形態に係る弾性表面波共振子のシミュレーションによる共振特性解析結果を示すグラフである。
図20は、第1の実施形態における
図4に対応し、
図20の横軸は位相速度(m/s)、縦軸はアドミタンス(S)を示す。
【0090】
図20には、Xカット41°Y伝播の水晶基板QS1上にXカット0°Y伝播の水晶基板QS2が接合された弾性表面波共振子の解析結果が実線で示されている。
図20では、X0°Y-Qz/X41°Y-Qzと示されている。
【0091】
また、
図20には、Xカット41°Y伝播の水晶基板QS1上にXカット176.5°Y伝播の水晶基板QS2が接合された弾性表面波共振子の解析結果が破線で示されている。すなわち、水晶基板QS2の伝播角ψ2が0°Y伝播から負方向に3.5°ずれた構成である。
図20では、X176.5°Y-Qz/X41°Y-Qzと示されている。
【0092】
上記の弾性表面波共振子について、ムラタソフトウェア株式会社製の解析ソフトFemtetを用い、共振特性の有限要素法(FEM:Finite Element Method)解析を行った。弾性表面波の波長λ(=2p)を8μm、支持基板の厚みを10λに設定した。また、
図20に示すように、Xカット0°Y伝播の水晶基板QS2については、規格化板厚h/λを
図19において伝播減衰が小さくなる0.970に設定した。Xカット176.5°Y伝播の水晶基板QS2については、規格化板厚h/λを
図19において伝播減衰が小さくなる0.980に設定した。
【0093】
図1に示したIDT電極IDTは、アルミニウム(Al)膜からなり、無限周期構造を有するものと仮定した。また、IDT電極の底面に完全整合層(PML:Perfect Matched Layer)を設定した。メタライゼーション比w/pは0.5に設定した。そして、IDT電極IDTに、±1Vの正弦波交流電圧を印加した。各材料の誘電損、機械損は考慮しなかった。Xカット0°Y伝播の水晶基板QS2については、IDT電極IDTの膜厚を0.06μm(=0.00750λ)とした。Xカット176.5°Y伝播の水晶基板QS2については、IDT電極IDTの膜厚を0.04μm(=0.00500λ)とした。
【0094】
図20に実線で示すX0°Y-Qz/X41°Y-Qzの弾性表面波共振子では、アドミタンス比は63dB、共振Q値は34600、反共振Q値は16200であり、いずれも高い値が得られた。なお、比帯域幅は0.082%であった。
【0095】
図20に破線で示すX176.5°Y-Qz/X41°Y-Qzの弾性表面波共振子では、アドミタンス比は122dB、共振Q値は185000、反共振Q値は741000であり、いずれもさらに高い値が得られた。なお、比帯域幅は0.086%であった。
【0096】
このように、Xカット41°Y伝播の水晶基板QS1上に、約1.0の規格化板厚h/λを有するXカット0°Y伝播の水晶基板QS2が接合された弾性表面波共振子において、単体の水晶基板では得られないような優れた共振特性が得られた。
また、水晶基板QS2の伝播角ψ2を176.5°とし、0°Y伝播から負方向に3.5°ずらすことによって、さらに優れた共振特性が得られた。
【0097】
<水晶基板QS1のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)の許容範囲>
次に、
図21~
図23を参照して、水晶基板QS1のオイラー角(φ1、θ1、ψ1)の許容範囲について説明する。
図21は、第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1のカット角φ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図22は、第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1のカット角θ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図23は、第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS1の伝播角ψ1依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【0098】
図21~
図23において、水晶基板QS2は、Xカット0°Y伝播の水晶基板である。水晶基板QS2の規格化板厚h/λは、いずれも
図19において伝播減衰が極小値を示す0.990とした。
【0099】
図21に示すように、水晶基板QS1のカット角φ1を変化させる際、カット角θ1=90°、伝播角ψ1=41°に固定した。
図22に示すように、水晶基板QS1のカット角θ1を変化させる際、カット角φ1=90°、伝播角ψ1=41°に固定した。
図23に示すように、水晶基板QS1の伝播角ψ1を変化させる際、カット角φ1=90°、カット角θ1=90°に固定した。
【0100】
図21にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS1のカット角φ1が73.5~106.5°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS1のカット角φ1が、74°≦φ1≦107°を満たすように構成されている。水晶基板QS1のカット角φ1は、80°≦φ1≦100°を満たすことが好ましく、85°≦φ1≦95°を満たすことがより好ましい。
【0101】
図22にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS1のカット角θ1が64.0~116.0°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS1のカット角θ1は、64°≦θ1≦116°を満たすように構成されている。カット角θ1は、70°≦θ1≦110°を満たすことが好ましく、80°≦θ1≦100°を満たすことがより好ましく、85°≦θ1≦95°を満たすことがさらに好ましい。
なお、
図22に示された曲線の範囲のみにおいて解が得られた。
【0102】
図23にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS1の伝播角ψ1が13.8~86.6°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS1の伝播角ψ1は、14°≦ψ1≦87°を満たすように構成されている。水晶基板QS1の伝播角ψ1は、21°≦ψ1≦61°を満たすことが好ましく、31°≦ψ1≦51°を満たすことがより好ましく、36°≦ψ1≦46°を満たすことがさらに好ましい。
【0103】
<水晶基板QS2のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)の許容範囲>
次に、
図24~
図26を参照して、水晶基板QS2のオイラー角(φ2、θ2、ψ2)の許容範囲について説明する。
図24は、第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2のカット角φ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図25は、第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2のカット角θ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
図26は、第3の実施形態に係る弾性表面波共振子の伝播減衰について、水晶基板QS2の伝播角ψ2依存性の理論解析結果を示すグラフである。
【0104】
図24~
図26において、水晶基板QS1は、Xカット41°Y伝播の水晶基板である。水晶基板QS2の規格化板厚h/λは、いずれも
図19において伝播減衰が極小値を示す0.990とした。
【0105】
図24に示すように、水晶基板QS2のカット角φ2を変化させる際、カット角θ2=90°、伝播角ψ2=0°に固定した。
図25に示すように、水晶基板QS2のカット角θ2を変化させる際、カット角φ2=90°、伝播角ψ2=0°に固定した。
図26に示すように、水晶基板QS2の伝播角ψ2を変化させる際、カット角φ2=90°、カット角θ2=90°に固定した。
【0106】
図24にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS2のカット角φ2が88.8~91.2°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2のカット角φ2が、89°≦φ2≦91°を満たすように構成されている。
【0107】
図25にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS2のカット角θ2が86.9~93.1°において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2のカット角θ2が、87°≦θ2≦93°を満たすように構成されている。88°≦θ2≦92°を満たすことが好ましく、89°≦θ2≦91°を満たすことがより好ましい。
【0108】
図26にドットハッチングして示すように、本実施形態に係る弾性表面波共振子は、水晶基板QS2の伝播角ψ2が0~13.2°及び172.2°以上180°未満において伝播減衰が0.01dB/λ以下を示す。そのため、本実施形態に係る弾性表面波共振子では、水晶基板QS2の伝播角ψ2が、0°≦ψ2≦13°又は172°≦ψ2<180°を満たすように構成されている。また、伝播角ψ2=176.5°において極小値を示すため、伝播角ψ2は174°≦ψ2≦179°を満たすことがさらに好ましい。
その他の構成は第1の実施形態に係る弾性表面波共振子と同様である。
【0109】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0110】
E1、E2 電極
IDT IDT電極
QS、QS1、QS2 水晶基板
REF1、REF2 反射器