(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060719
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】スペーサ及び合成スラブ構造
(51)【国際特許分類】
E04C 5/18 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
E04C5/18 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170459
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】加藤 鐘悟
(72)【発明者】
【氏名】神谷 洋介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恵太
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA01
2E164BA02
2E164BA43
(57)【要約】
【課題】デッキプレートからスペーサを外れにくくすること。
【解決手段】デッキプレート(100)とデッキプレートに配置される補強材(30)との間隔を保つスペーサ(10)は、デッキプレートから離れた位置で補強材を支持する支持部(1)と、デッキプレートに係合する係合部(3)と、係合部の離脱を規制するストッパ(4)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキプレートと前記デッキプレートに配置される補強材との間隔を保つスペーサであって、
前記デッキプレートから離れた位置で前記補強材を支持する支持部と、
前記デッキプレートに係合する係合部と、
前記係合部の離脱を規制するストッパと、
を備えることを特徴とするスペーサ。
【請求項2】
前記支持部と前記係合部を連結する一対の脚部を備え、
前記係合部は、各脚部にそれぞれ連なり、前記デッキプレートに形成された対向する溝にそれぞれ係合し、
前記ストッパは、外力が作用した際に、変形を抑制して前記係合部の前記溝からの離脱を規制することを特徴とする請求項1に記載のスペーサ。
【請求項3】
前記ストッパは、互いの係合部が所定距離以上接近することを規制することを特徴とする請求項2に記載のスペーサ。
【請求項4】
前記ストッパは、一方の脚部に設けられた第1の部材と、他方の脚部に設けられ、前記第1の部材に対向する第2の部材とを備え、
前記第1の部材と前記第2の部材は、その先端部同士が間隔をあけて設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のスペーサ。
【請求項5】
前記支持部は各脚部の延在方向一端部に設けられており、前記係合部は各脚部の延在方向他端部に設けられており、
前記ストッパは、一方の脚部の延在方向一端部に設けられた第1の部材と、他方の脚部の延在方向一端部に設けられた第2の部材とを備え、
前記第1の部材と前記第2の部材は、前記支持部に間隔をあけて対向するように設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のスペーサ。
【請求項6】
前記支持部と前記脚部の少なくとも一方には、肉抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項2から5までのいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項7】
前記係合部は、それぞれ前記溝に係合させた状態において、前記溝の延在方向に沿って延びる第1の縁部と、前記第1の縁部に連なって前記溝から離間する方向に延びる第2の縁部と、を有することを特徴とする請求項2から6までのいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項8】
前記脚部に設けられ、前記脚部の主面方向に交差する方向に主面を有するリブを備えることを特徴とする請求項2から7までのいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項9】
前記ストッパは、前記係合部をそれぞれ前記溝に係合させた状態において、前記脚部における前記溝の延在方向一端部に設けられており、
前記リブは、前記係合部をそれぞれ前記溝に係合させた状態において、前記脚部における前記溝の延在方向他端部に設けられていることを特徴とする請求項8に記載のスペーサ。
【請求項10】
前記一対の脚部は、前記支持部から前記係合部に向かうにつれて互いの間隔が大きくなるように設けられていると共に、前記支持部から前記係合部に向かうにつれて幅が広くなるように形成されていることを特徴とする請求項2から9までのいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項11】
前記支持部は、前記補強材を受容する凹部を有することを特徴とする請求項1から10までのいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項12】
前記凹部は、底面に凸部を有することを特徴とする請求項11に記載のスペーサ。
【請求項13】
前記凹部は、前記補強材の離脱を規制する返し部を有することを特徴とする請求項11又は12に記載のスペーサ。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一項に記載のスペーサと、
一方の面に前記スペーサの前記係合部が係合する溝が形成されたデッキプレートと、
前記デッキプレートの前記溝に係合された前記スペーサの前記支持部に載置される補強材と、
前記デッキプレートの前記一方の面に打設され、前記スペーサ及び前記補強材を覆うコンクリート部と、
を備えることを特徴とする合成スラブ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサ及び合成スラブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
合成スラブの構築において、デッキプレートの上面に設けられ、デッキプレートの上面と鉄筋との間隔を保つスペーサが知られている。
スペーサは、一対の脚部の先端が対向するデッキプレートの溝にそれぞれ嵌め込まれることにより、デッキプレートの上面に取り付けられる。スペーサは、構成する材料が有する弾性力により、各溝に突っ張るように保持されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業者は、デッキプレートに取り付けられたスペーサに躓いてしまうことがある。また、作業者は、デッキプレートに配置された鉄筋を誤って踏んでしまうことがある。これらの場合には、スペーサに外力がかかるため、脚部の先端がデッキプレートの溝から外れてしまい、スペーサを再度デッキプレートに取り付けなおす必要がある。これは作業効率が大幅に低下するため、デッキプレートからより外れにくいスペーサが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、デッキプレートからスペーサを外れにくくする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様は、デッキプレートと前記デッキプレートに配置される補強材との間隔を保つスペーサであって、前記デッキプレートから離れた位置で前記補強材を支持する支持部と、前記デッキプレートに係合する係合部と、
前記係合部の離脱を規制するストッパと、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記支持部と前記係合部を連結する一対の脚部を備え、前記係合部は、各脚部にそれぞれ連なり、前記デッキプレートに形成された対向する溝にそれぞれ係合し、前記ストッパは、外力が作用した際に、変形を抑制して前記係合部の前記溝からの離脱を規制することが好ましい。
【0008】
また、前記ストッパは、互いの係合部が所定距離以上接近することを規制することが好ましい。
【0009】
また、前記ストッパは、一方の脚部に設けられた第1の部材と、他方の脚部に設けられ、前記第1の部材に対向する第2の部材とを備え、前記第1の部材と前記第2の部材は、その先端部同士が間隔をあけて設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記支持部は各脚部の延在方向一端部に設けられており、前記係合部は各脚部の延在方向他端部に設けられており、前記ストッパは、一方の脚部の延在方向一端部に設けられた第1の部材と、他方の脚部の延在方向一端部に設けられた第2の部材とを備え、前記第1の部材と前記第2の部材は、前記支持部に間隔をあけて対向するように設けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記支持部と前記脚部の少なくとも一方には、肉抜き孔が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記係合部は、それぞれ前記溝に係合させた状態において、前記溝の延在方向に沿って延びる第1の縁部と、前記第1の縁部に連なって前記溝から離間する方向に延びる第2の縁部と、を有することが好ましい。
【0013】
また、前記脚部に設けられ、前記脚部の主面方向に交差する方向に主面を有するリブを備えることが好ましい。
【0014】
また、前記ストッパは、前記係合部をそれぞれ前記溝に係合させた状態において、前記脚部における前記溝の延在方向一端部に設けられており、前記リブは、前記係合部をそれぞれ前記溝に係合させた状態において、前記脚部における前記溝の延在方向他端部に設けられていることが好ましい。
【0015】
また、前記一対の脚部は、前記支持部から前記係合部に向かうにつれて互いの間隔が大きくなるように設けられていると共に、前記支持部から前記係合部に向かうにつれて幅が広くなるように形成されていることが好ましい。
【0016】
また、前記支持部は、前記補強材を受容する凹部を有することが好ましい。
【0017】
また、前記凹部は、底面に凸部を有することが好ましい。
【0018】
また、前記凹部は、前記補強材の離脱を規制する返し部を有することが好ましい。
【0019】
本発明に係る一態様は、合成スラブ構造であって、上記のスペーサと、一方の面に前記スペーサの前記係合部が係合する溝が形成されたデッキプレートと、前記デッキプレートの前記溝に係合された前記スペーサの前記支持部に載置される補強材と、前記デッキプレートの前記一方の面に打設され、前記スペーサ及び前記補強材を覆うコンクリート部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る一態様によれば、デッキプレートからスペーサを外れにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】コンクリート部を部分的に除いた合成スラブ構造を示す斜視図である。
【
図3】デッキプレートの構成を説明する正面図である。
【
図8】スペーサをデッキプレートに取り付ける工程を示す図である。
【
図9】スペーサをデッキプレートに取り付ける工程を示す図である。
【
図10】スペーサをデッキプレートに取り付ける工程を示す図である。
【
図11】スペーサをデッキプレートに取り付けた状態を示す図である。
【
図12】スペーサに鉄筋を載置した状態を示す図である。
【
図13】スペーサに外力が加わった際のストッパの機能を説明する図である。
【
図18】変形例におけるスペーサを複数積み重ねた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<合成スラブ構造>
図1、
図2に示すように、合成スラブ構造200は、鉄筋コンクリート構造物の天井又は床として用いられる。
合成スラブ構造200は、デッキプレート100と、スペーサ10と、補強材としての鉄筋30と、溶接金網50と、コンクリート部70と、を備える。デッキプレート100は、構造物において互いに対向して配置された、例えば、H型鋼からなる梁と梁との間に架け渡される。
【0023】
<デッキプレート>
図3に示すように、デッキプレート100は、亜鉛メッキ等の表面処理が施された薄板状の鋼板をロールフォーミング等することによって形成した波型鋼板である。デッキプレート100は、山頂部110と、谷底部120と、傾斜部130と、を有する。
以下において、デッキプレート100が梁と梁とに架け渡される方向を、デッキプレート100の長手方向Lとし、長手方向Lに交差してデッキプレート100が延びる方向を短手方向Wとする。デッキプレート100は、それぞれ長手方向Lに延びる山頂部110及び谷底部120が傾斜部130を介して互いに短手方向Wに連続する波形状をなしている。
【0024】
デッキプレート100のプレート単体では、2つの山頂部110と、1つの谷底部120と、2組の一対の傾斜部130とからなり、短手方向Wに沿った断面において波型に形成されている。デッキプレート100は、長手方向Lの両端部においてエンドクローズ加工が施されていてもよい。
【0025】
山頂部110は、梁と梁との間に架け渡された状態において、梁に対して上側に位置する平坦に形成された部分であり、長手方向Lに延在する板状の部分である。山頂部110は、溝111を有する。溝111は、谷底部120の側に向けて凹むように形成されている。溝111は、長手方向Lに延在し、溝111が1つの場合には短手方向Wにおいて中央近傍に設けられている。
山頂部110における溝111により、山頂部110の強度が向上する。溝111は、山頂部110に1つ形成されている場合に限らず、複数形成されていてもよい。なお、溝111は、形成されていなくてもよい。
【0026】
谷底部120は、山頂部110に対して平行又は略平行であり、梁と梁との間に架け渡された状態において、山頂部110に対して梁に載置される平坦に形成された部分である。谷底部120は、長手方向Lに延在する板状の部分である。谷底部120は、短手方向Wにおいて山頂部110とは重ならない。
【0027】
傾斜部130は、山頂部110と谷底部120とを連結する部分であり、長手方向Lに延在する板状の部分である。傾斜部130は、短手方向Wにおいて山頂部110の両端部の側から斜めに谷底部120に向かって斜めに延びている。傾斜部130は、山頂部110及び谷底部120に対して所定の角度、例えば、鈍角を形成するように傾斜している。
【0028】
谷底部120と傾斜部130との間の移行部140には膨出部141が形成されている。膨出部141は、一対の傾斜部130において互いに反対の側に突出した部分である。すなわち、対向する一対の傾斜部130において、膨出部141は対向するように形成されており、互いに近づく方向に膨出している。膨出部141と谷底部120との間には、スペーサ10が係合する係合溝142が形成されている。短手方向Wに沿った係合溝142の短手方向Wに沿った断面は湾曲するように形成されている。すなわち、デッキプレート100の一方の面における対向する一対の傾斜部130において、係合溝142は対向するように形成されており、互いに離れる方向に湾曲している。スペーサ10は、対向する係合溝142にそれぞれ係合して位置が固定され、膨出部141によって係合溝142からの離脱が規制される。スペーサ10は、この固定された状態において、鉄筋30を下方から支持することにより、デッキプレート100とデッキプレート100に配置される鉄筋30との間隔を保つことができる。
【0029】
<スペーサ>
図1、
図2、
図4~
図7に示すように、スペーサ10は、デッキプレート100に着脱自在に取り付けられる。
スペーサ10は、デッキプレート100の一方の面(上面)の谷底部120において長手方向Lに所定の間隔をあけて複数設けられている。スペーサ10は、谷底部120に設置された状態において、デッキプレート100の長手方向Lに沿って配される鉄筋30を、山頂部110を越えて谷底部120から所定の高さだけ離間した位置で支持する。スペーサ10は、長手方向Lに沿って鉄筋30を谷底部120の側から支持する。
【0030】
スペーサ10は、例えば、鋼板により形成されている。スペーサ10は、支持部1と、一対の脚部2と、一対の係合部3と、ストッパ4と、リブ5,6と、を備える。スペーサ10は、支持部1と、一対の脚部2と、一対の係合部3と、ストッパ4と、リブ5,6とが連続して、つまり一体に形成された部材である。なお、支持部1において鉄筋30を支持する方向は、デッキプレート100の長手方向Lに一致する。
【0031】
支持部1は、鉄筋30を支持するものであり、例えば、平面視において矩形又は略矩形に形成されている。支持部1は、スペーサ10をデッキプレート100に取り付けた状態において、最も上方に位置している。支持部1は、例えば、二つの凹部11を有する。各凹部11は、スペーサ10をデッキプレート100に取り付けた状態において、デッキプレート100の谷底部120に向かって円弧状に凹むように形成されており、デッキプレート100の長手方向Lに沿って延びている。凹部11は、デッキプレート100の短手方向Wにおいて中央近傍に並んで形成されている。
凹部11は、その延在方向(長手方向L)に沿って鉄筋30を受容する。つまり、鉄筋30は、凹部11において部分的に収容される。各凹部11の底部には、凸部11pが設けられている。凸部11pは、一つの凹部13aにつき、その延在方向(長手方向L)に沿って間隔をあけて2つ設けられている。なお、凸部11pは、一つの凹部13aにつき、2つ以上設けられていてもよい。凸部11pは、凹部11に鉄筋30を収容した際に、鉄筋30に接触し、鉄筋30の長手方向への位置ずれを抑制する。なお、鉄筋30が異形鉄筋の場合には、鉄筋30の突出部分に凸部11pが引っ掛かるので、位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0032】
一対の脚部2は、支持部1の互いに対向する縁部のうち、長手方向Lに沿って延びる縁部から支持部1の主面に対して所定の角度をなして互いに同じ面側に延びる。具体的に、一対の脚部2は、支持部1に対して鈍角をなして延びている。つまり、一対の脚部2は、それぞれの延在方向一端部が支持部1に連なるように設けられ、互いに離れるようにして支持部1から延びている。言い換えると、一対の脚部2は、支持部1から係合部3に向かうにつれて互いの間隔が大きくなるように設けられている。
図7に示すように、一対の脚部2は、側面視において略矩形状に形成されている。
一対の脚部2は、一枚の鋼板により連続して形成されているので、互いに接近及び離間するように弾性変形自在である。それぞれの脚部2において、支持部1とは反対の側の他端部(延在方向他端部)には、係合部3が設けられている。
【0033】
一対の係合部3は、それぞれ、各脚部2の他端部から互いに離れる方向に延出している。一対の係合部3は、スペーサ10をデッキプレート100に取り付けた状態において、短手方向Wに沿って支持部1に対して平行又は略平行に延びている。つまり、一対の係合部3は、それぞれの一端部が脚部2に連なるように設けられている。一対の係合部3は、それぞれ対向する係合溝142に係合されることにより、デッキプレート100からの離脱が規制され、これにより、スペーサ10は、デッキプレート100に取り付けられた状態となる。一対の係合部3は、スペーサ10をデッキプレート100に取り付けた状態において、谷底部120に接触している。
一対の係合部3の他端部は、それぞれ係合溝142に係合させた状態において、係合溝142の延在方向(長手方向L)に沿って延びる第1の縁部31と、第1の縁部31に連なって係合溝142から離間する方向に延びる第2の縁部32と、を有する。
【0034】
図5に示すように、一対の係合部3のうち、一方の係合部3においては、平面視した際に、第1の縁部31が係合部3における長手方向Lに沿った一端部から他端部に向かって直線状に形成され、他端部に至るまでに第2の縁部32に移り、他端部の角部が面取りされた形状となっている。すなわち、第2の縁部32は、湾曲するように円弧状に形成されている。一対の係合部3のうち、他方の係合部3においては、平面視した際に、第1の縁部31が係合部3における長手方向Lに沿った他端部から一端部に向かって直線状に形成され、一端部に至るまでに第2の縁部32に移り、一端部の角部が面取りされた形状となっている。すなわち、第2の縁部32は、湾曲するように円弧状に形成されている。
つまり、短手方向Wに対向するように設けられた一対の係合部3において、第1の縁部31及び第2の縁部32は、対角上に向かい合う位置に形成されている。これは、スペーサ10を90°回転させて、係合部3を係合溝142に係合させる際に、係合部3における回転方向先端側を湾曲するように形成することで、係合溝142への引っ掛かりを防止し、滑らかに回転させて係合部3を係合溝142に係合させるためである。
【0035】
ストッパ4は、スペーサ10に外力が作用した際に、その変形量を所定範囲内に留まるように抑制して係合部3の係合溝142からの離脱を規制する。
具体的には、ストッパ4は、一方の脚部2に設けられた第1の腕部(第1の部材)41と、他方の脚部2に設けられ、第1の腕部41に対向する第2の腕部(第2の部材)42と、を備える。
第1の腕部41は、一方の脚部2の延在方向における途中の位置に設けられている。第1の腕部41は、一端部が一方の脚部2に連なるように形成されており、一方の脚部2の延在方向に交差する方向に延びている。デッキプレート100にスペーサ10を取り付けた状態において、一方の腕部41の延在方向は、短手方向Wに沿っており、係合部3の延在方向と平行となっている。第1の腕部41の他端部は、一対の脚部2間のほぼ中央、言い換えると、支持部1の短手方向Wの中央近傍から垂下した位置まで延びている。
第2の腕部42は、他方の脚部2の延在方向における途中の位置に設けられている。第2の腕部42は、一端部が他方の脚部2に連なるように形成されており、他方の脚部2の延在方向に交差する方向に延びている。デッキプレート100にスペーサ10を取り付けた状態において、第2の腕部42の延在方向は、短手方向Wに沿っており、係合部3の延在方向と平行となっている。第2の腕部42の他端部は、一対の脚部2間のほぼ中央、言い換えると、支持部1の短手方向Wの中央近傍から垂下した位置まで延びている。
【0036】
第1の腕部41と第2の腕部42は、互いの先端部(他端部)同士が対向するように、間隔をあけて設けられている。この間隔は、短手方向Wに沿った係合部3と係合溝142とが重なり合う長さよりも短くなるように形成されている。これにより、例えば、脚部2に外力が加わって弾性変形し、第1の腕部41と第2の腕部42とが近づくように変形したとしても、すぐに第1の腕部41と第2の腕部42の先端部(他端部)同士が当接してそれ以上の変形が規制されるため、互いの係合部3がそれ以上接近することを規制する。
第1の腕部41及び第2の腕部42は、係合部3をそれぞれ係合溝142に係合させた状態において、脚部2における係合溝142の延在方向(長手方向L)一端部に設けられている。
【0037】
リブ5,6は、スペーサ10の剛性を高めて変形を抑制するものである。リブ5,6は、脚部2に設けられ、脚部2の主面方向に交差する方向に主面を有する。具体的には、リブ5,6の主面と脚部2の主面とが略直交している。
リブ5は、係合部3をそれぞれ係合溝142に係合させた状態において、一対の脚部2における係合溝142の延在方向(長手方向L)他端部にそれぞれ連なるように設けられている。各リブ5は、脚部2の長手方向、すなわち、脚部2における支持部1と係合部3とを結ぶ方向に沿って延びている。各リブ5は、脚部2における係合溝142の延在方向(長手方向L)他端部から外側に張り出すように延びている。
リブ6は、係合部3をそれぞれ係合溝142に係合させた状態において、一対の脚部2における係合溝142の延在方向(長手方向L)一端部にそれぞれ連なるように設けられている。各リブ6は、脚部2の長手方向、すなわち、脚部2における支持部1と係合部3とを結ぶ方向に沿って延びている。各リブ6は、脚部2における係合溝142の延在方向(長手方向L)一端部から内側に張り出すように延びている。一方のリブ6は、第1の腕部41に連なるように形成され、他方のリブ6は、第2の腕部42に連なるように形成されている。
【0038】
<鉄筋、溶接金網>
鉄筋30は、デッキプレート100の長手方向Lに沿って設けられた複数のスペーサ10に支持されて、デッキプレート100の長手方向Lに延びるように配置されている。具体的には、鉄筋30は、デッキプレート100の係合溝142に係合されたスペーサ10の支持部1の凹部11に外れにくい状態で載置されており、鉄筋30が支持部1から転げ落ちないように配置されている。
鉄筋30は、例えば、鋼を圧延して表面にリブや節と呼ばれる凹凸の突起を設けた異形鉄筋である。ただし、これに限らず、合成スラブ構造200の補強材として機能するものであれば、例えば、丸鋼や角鋼等のその他種々の形状および種類の鉄筋、他の材料からなる棒材を用いてもよい。
溶接金網50は、例えば、鋼製の線材により格子状に形成されていて、スペーサ10及び鉄筋30の上に載せられている。
【0039】
<コンクリート部>
コンクリート部70は、コンクリートをデッキプレート100の一方の面(上面)に打設して固化することにより形成されている。コンクリート部70は、スペーサ10、鉄筋30及び溶接金網50を覆うように打設され、コンクリート部70の固化後は、コンクリート部70内に埋設された状態にある。
【0040】
<合成スラブ構造の構築方法>
次に、合成スラブ構造の構築方法について説明する。
最初に、梁と梁とにデッキプレート100を架け渡し、デッキプレート100を梁に固定する。
次いで、
図8、
図9に示すように、デッキプレート100の谷底部120に、長手方向Lに所定の間隔をあけてスペーサ10を載置する。その際、一対の係合部3が長手方向Lに並ぶようにスペーサ10を谷底部120に載置する。
次いで、
図10に示すように、作業者は、ハッカーや治具等でスペーサ10を掴んで長手方向L及び短手方向Wに直交する高さ方向に沿った軸回りにスペーサ10を回転させる。その際、一対の係合部3を谷底部120に当接させた状態でスペーサ10を回転させる。また、スペーサ10を回転させる際には、係合部3における第2の縁部32から係合溝142内に進入していくようにスペーサ10を回転させる。これにより、係合部3の角部(第1の縁部31)が係合溝142に引っ掛かることなく、スムーズにスペーサ10を回転させることができる。
【0041】
次に、スペーサ10を高さ方向に沿った軸回りに90°回転させると、
図11に示すように、係合部3の第1の縁部31及び第2の縁部32は、係合溝142に嵌り込み、係合部3の高さ方向への移動が規制される。これにより、デッキプレート100におけるスペーサ10の位置が固定される。このとき、支持部1の凹部11は、長手方向Lに沿った状態となっている。
次いで、
図12に示すように、鉄筋30を凹部11に入れて載置していくことで、鉄筋30は凹部11に収容され、支持部1により鉄筋30が下方から支持された状態となる。ここで、鉄筋30の継ぎ目に当たる位置に配置されるスペーサ10は、
図1に示すように、支持部1に形成された二つの凹部11でそれぞれの鉄筋30を支持することになるが、鉄筋30の途中を支持するスペーサ10は、支持部1に形成された二つの凹部11のうち、一方の凹部11で鉄筋30を支持することになる。
次いで、デッキプレート100の長手方向Lに延在する複数の鉄筋30に対して、例えば、溶接金網50を設置する又は交差する方向に別の鉄筋を配筋する。
次いで、デッキプレート100の上面にコンクリートを打設し、養生して固化させることにより、コンクリート部70が形成される。これにより、コンクリート部70にスペーサ10、鉄筋30、溶接金網50が埋設された状態となり、合成スラブ構造200が完成する。
【0042】
以上のように、上記のような構成を有するスペーサ10とすることにより、作業者の足がスペーサ10に接触した場合や、溶接金網50のたわみ等でスペーサ10に外力が加わった場合、スペーサ10は、弾性変形して一対の脚部2の間隔が縮まり、脚部2の弾性変形と共に係合部3が係合溝142から離脱しようとする。しかし、脚部2が少し変形したところで、脚部2に設けられている第1の腕部41と第2の腕部42の先端部同士が当接するので、脚部2の変形が規制され、係合部3もそれ以上移動することはない。これにより、係合部3の係合溝142からの離脱が規制され、デッキプレート100からスペーサ10が外れにくくなる。
また、スペーサ10は、予めデッキプレート100に取り付けておく必要がないので、デッキプレート100の運搬の際にスペーサ10が邪魔になることもなく、デッキプレート100を容易に重ねて運搬することができる。
また、係合部3は、第1の縁部31と第2の縁部32を有しているので、スペーサ10をデッキプレート100に取り付ける際に、円弧状に形成された第2の縁部32から係合溝142に進入させていくことで係合部3が係合溝142に引っ掛かることなく、スペーサ10をスムーズに回転させて係合溝142に係合させることができる。
また、一対の脚部2にはリブ5,6が設けられているので、スペーサ10の剛性を高めることができ、外力が加わった場合でもスペーサ10の変形をより抑制することができる。また、断面を大きくしなくてもスペーサ10の剛性を高めることができるので、スペーサ10自体の大型化を抑えることができる。また、スペーサ10の大型化を抑えることにより、スペーサ10の下方におけるコンクリートの目詰まりを抑えることができる。
また、支持部1は、鉄筋30を受容する凹部11を有しているので、スペーサ10に鉄筋30を載置する際に鉄筋30が支持部1上を転がったり、滑ったりすることがなくなり、鉄筋30を簡単に配置できるほか、鉄筋30を安定した状態で支持することができる。
【0043】
<変形例>
例えば、スペーサ10Aは、上記のような構成に限らず、
図14~
図17に示すような構成としてもよい。
図14に示すように、スペーサ10Aは、例えば、鋼板により形成されている。スペーサ10Aは、支持部1aと、一対の脚部2aと、一対の係合部3aと、ストッパ4aと、リブ5a,6aと、を備える。スペーサ10Aは、支持部1aと、一対の脚部2aと、一対の係合部3aと、ストッパ4aと、リブ5a,6aとが連続して、つまり一体に形成された部材である。なお、支持部1aにおいて鉄筋30を支持する方向は、デッキプレート100の長手方向Lに一致する。
【0044】
支持部1aは、鉄筋30を支持するものであり、例えば、平面視において矩形又は略矩形に形成されている。支持部1aは、スペーサ10Aをデッキプレート100に取り付けた状態において、最も上方に位置している。
支持部1aは、一対の脚部2aに連なる底部11aと、底部11aに立設された一対の壁部12aとを備える。
底部11aは、スペーサ10Aをデッキプレート100に取り付けた状態において、短手方向Wの両端部が各脚部2aに連なるように形成されている。底部11aには、二つの肉抜き孔11bが形成されている。一対の壁部12aは、長手方向Lの両端縁に連なるように形成されている。すなわち、一対の壁部12aは、長手方向Lに沿って対向するように形成されている。底部11aの面方向と壁部12aの面方向は、略90°の角度をなしている。一対の壁部12aは、スペーサ10Aをデッキプレート100に取り付けた状態において、ストッパ4aよりも長手方向Lの外側に張り出した位置に設けられている。
各壁部12aは、例えば、二つの凹部13aを有する。各凹部13aは、底部11aに向かって円弧状に凹むように形成されている。各凹部13aは、デッキプレート100の短手方向Wにおいて中央近傍に並んで形成されている。各壁部12aに形成されている各凹部13aは、長手方向Lに沿って対向するように形成されている。
凹部13aは、その延在方向(長手方向L)に沿って鉄筋30を受容する。つまり、鉄筋30は、凹部13aにおいて部分的に収容される。各凹部13aには、返し部13Pが形成されている。返し部13pは、凹部13aの外側(脚部2a側)の上縁に連続するように形成されている。返し部13pは、凹部13aに鉄筋30を収容した際に、鉄筋30の中心を通る短手方向Wに沿った直線と凹部13aの面との交点よりも上方、かつ、スペーサ10Aの内側に向けて延びるように形成されている。これにより、凹部13aに収容された鉄筋30が凹部13aから離脱しようとしても、鉄筋30は返し部13pに接触して凹部13aからの離脱が規制される。
【0045】
一対の脚部2aは、支持部1aの互いに対向する縁部のうち、長手方向Lに沿って延びる縁部から底部11aの主面に対して所定の角度をなして互いに同じ面側に延びる。具体的に、一対の脚部2aは、底部11aに対して鈍角をなして延びている。つまり、一対の脚部2aは、それぞれの延在方向一端部が支持部1aに連なるように設けられ、互いに離れるようにして支持部1aから延びている。言い換えると、一対の脚部2aは、支持部1aから係合部3aに向かうにつれて互いの間隔が大きくなるように設けられている。
図17に示すように、一対の脚部2aは、側面視において略台形状に形成されている。具体的には、一対の脚部2aは、支持部1aから係合部3aに向かうにつれて幅が広くなるように形成されている。脚部2aには、三つの肉抜き孔2bが形成されている。
一対の脚部2aは、一枚の鋼板により連続して形成されているので、互いに接近及び離間するように弾性変形自在である。それぞれの脚部2aにおいて、支持部1aとは反対の側の他端部(脚部2aの延在方向他端部)には、係合部3aが設けられている。
【0046】
一対の係合部3aは、それぞれ、各脚部2aの他端部から互いに離れる方向に延出している。一対の係合部3aは、短手方向Wに沿って支持部1aの底部11aに対して平行又は略平行に延びている。つまり、一対の係合部3aは、それぞれの一端部が脚部2aに連なるように設けられている。一対の係合部3aは、それぞれ対向する係合溝142に係合されることにより、デッキプレート100からの離脱が規制され、これにより、スペーサ10Aは、デッキプレート100に取り付けられた状態となる。一対の係合部3aは、スペーサ10Aをデッキプレート100に取り付けた状態において、谷底部120に接触している。
一対の係合部3aの他端部は、それぞれ係合溝142に係合させた状態において、係合溝142の延在方向(長手方向L)に沿って延びる第1の縁部31aと、第1の縁部31aに連なって係合溝142から離間する方向に延びる第2の縁部32aと、を有する。
【0047】
図15に示すように、一対の係合部3aのうち、一方の係合部3aにおいては、平面視した際に、第1の縁部31aが係合部3aにおける長手方向Lに沿った一端部から他端部に向かって直線状に形成され、他端部に至るまでに第2の縁部32aに移り、他端部の角部が面取りされた形状となっている。すなわち、第2の縁部32aは、湾曲するように円弧状に形成されている。一対の係合部3aのうち、他方の係合部3aにおいては、平面視した際に、第1の縁部31aが係合部3aにおける長手方向Lに沿った他端部から一端部に向かって直線状に形成され、一端部に至るまでに第2の縁部32aに移り、一端部の角部が面取りされた形状となっている。すなわち、第2の縁部32aは、湾曲するように円弧状に形成されている。
つまり、短手方向Wに対向するように設けられた一対の係合部3aにおいて、第1の縁部31a及び第2の縁部32aは、対角上に向かい合う位置に形成されている。これは、スペーサ10Aを90°回転させて、係合部3aを係合溝142に係合させる際に、係合部3aにおける回転方向先端側を湾曲するように形成することで、係合溝142への引っ掛かりを防止し、滑らかに回転させて係合部3aを係合溝142に係合させるためである。
【0048】
ストッパ4aは、スペーサ10Aに外力が作用した際に、その変形量を所定範囲内に留まるように抑制して係合部3aの係合溝142からの離脱を規制する。
具体的には、ストッパ4aは、一方の脚部2aに設けられた第1の腕部(第1の部材)41aと、他方の脚部2aに設けられ、第1の腕部41aに対向する第2の腕部(第2の部材)42aと、を備える。
第1の腕部41aは、一方の脚部2aの延在方向における係合部3aとは反対側の端部(脚部2aの延在方向一端部)に設けられている。第1の腕部41aは、一端部が一方の脚部2aに連なるように形成されており、一方の脚部2aの延在方向に交差する方向に延びている。デッキプレート100にスペーサ10Aを取り付けた状態において、一方の腕部41aの延在方向は、短手方向Wに沿っており、係合部3aの延在方向と平行となっている。第1の腕部41aの他端部は、一対の脚部2a間の途中の位置まで延びている。
第2の腕部42aは、他方の脚部2aの延在方向における係合部3aとは反対側の端部(脚部2aの延在方向一端部)に設けられている。第2の腕部42aは、一端部が他方の脚部2aに連なるように形成されており、他方の脚部2aの延在方向に交差する方向に延びている。デッキプレート100にスペーサ10Aを取り付けた状態において、第2の腕部42aの延在方向は、短手方向Wに沿っており、係合部3aの延在方向と平行となっている。第2の腕部42aの他端部は、一対の脚部2a間の途中の位置まで延びている。これにより、第1の腕部41aと第2の腕部42aは、互いの先端部(他端部)同士が対向するように、間隔をあけて設けられている。
【0049】
第1の腕部41a及び第2の腕部42aは、支持部1aの底部11aの下面側(脚部2a側の面)に張り出すように形成されており、底部11aに僅かな間隔をあけて対向している。これにより、例えば、脚部2aに外力が加わって弾性変形し、一対の係合部3a同士が近づくように変形したとしても、すぐに第1の腕部41aと第2の腕部42aが支持部1aの底部11aに当接して各腕部2aのそれ以上の変形が規制されるため、互いの係合部3aがそれ以上接近することを規制する。なお、第1の腕部41a及び第2の腕部42aは、支持部1aの底部11aの下面側に当接していてもよい。
第1の腕部41a及び第2の腕部42aは、係合部3aをそれぞれ係合溝142に係合させた状態において、脚部2aにおける係合溝142の延在方向(長手方向L)一端部に設けられている。
【0050】
リブ5a,6aは、スペーサ10Aの剛性を高めて変形を抑制するものである。リブ5a,6aは、脚部2aに設けられ、脚部2aの主面方向に交差する方向に主面を有する。具体的には、リブ5a,6aの主面と脚部2aの主面とが略直交している。
リブ5aは、係合部3aをそれぞれ係合溝142に係合させた状態において、一対の脚部2aにおける係合溝142の延在方向(長手方向L)他端部にそれぞれ連なるように設けられている。各リブ5aは、脚部2aの長手方向、すなわち、脚部2aにおける支持部1aと係合部3aとを結ぶ方向に沿って延びている。各リブ5aは、脚部2aにおける係合溝142の延在方向(長手方向L)他端部から内側に張り出すように延びている。
リブ6aは、係合部3aをそれぞれ係合溝142に係合させた状態において、一対の脚部2aにおける係合溝142の延在方向(長手方向L)一端部にそれぞれ連なるように設けられている。各リブ6aは、脚部2aの長手方向、すなわち、脚部2aにおける支持部1aと係合部3aとを結ぶ方向に沿って延びている。各リブ6aは、脚部2aにおける係合溝142の延在方向(長手方向L)一端部から内側に張り出すように延びている。一方のリブ6aは、第1の腕部41aに連なるように形成され、他方のリブ6aは、第2の腕部42aに連なるように形成されている。
【0051】
以上のように、上記のような構成を有するスペーサ10Aとすることにより、作業者の足がスペーサ10Aに接触した場合や、溶接金網50のたわみ等でスペーサ10Aに外力が加わった場合、スペーサ10Aは、弾性変形して一対の脚部2aの間隔が縮まり、脚部2aの弾性変形と共に係合部3aが係合溝142から離脱しようとする。しかし、脚部2aが変形しようとしても、脚部2aに設けられている第1の腕部41a及び第2の腕部42aが支持部1aの底部11aに当接するので、脚部2aの変形が規制され、係合部3aもそれ以上移動することはない。これにより、係合部3aの係合溝142からの離脱が規制され、デッキプレート100からスペーサ10Aが外れにくくなる。
また、スペーサ10Aは、予めデッキプレート100に取り付けておく必要がないので、デッキプレート100の運搬の際にスペーサ10Aが邪魔になることもなく、デッキプレート100を容易に重ねて運搬することができる。
また、係合部3aは、第1の縁部31aと第2の縁部32aを有しているので、スペーサ10Aをデッキプレート100に取り付ける際に、円弧状に形成された第2の縁部32aから係合溝142に進入させていくことで係合部3aが係合溝142に引っ掛かることなく、スペーサ10Aをスムーズに回転させて係合溝142に係合させることができる。
また、一対の脚部2aにはリブ5a,6aが設けられているので、スペーサ10Aの剛性を高めることができ、外力が加わった場合でもスペーサ10Aの変形をより抑制することができる。また、断面を大きくしなくてもスペーサ10Aの剛性を高めることができるので、スペーサ10A自体の大型化を抑えることができる。また、スペーサ10Aの大型化を抑えることにより、スペーサ10Aの下方におけるコンクリートの目詰まりを抑えることができる。
また、支持部1aは、鉄筋30を受容する凹部13aを有しているので、スペーサ10Aに鉄筋30を載置する際に鉄筋30が壁部12aの上縁を転がったり、滑ったりすることがなくなり、鉄筋30を簡単に配置できるほか、鉄筋30が外れにくい状態で凹部13aに載置され、鉄筋30を保持することができる。
また、支持部1aの底部11aには肉抜き孔11bが形成されており、脚部2aには肉抜き孔2bが形成されているので、スペーサ10Aの軽量化を図ることができる。また、肉抜き孔11b,2bを形成することにより、スペーサ10Aの下方の空間(支持部1aの底部11aの下方の空間)にコンクリートを充填しやすくなるので、コンクリートの充填不良による空隙の発生を抑制することができる。
また、一対の脚部2aは、支持部1aから係合部3aに向かうにつれて互いの間隔が大きくなるように設けられていると共に、支持部1aから係合部3aに向かうにつれて幅が広くなるように形成されている。これにより、
図18に示すように、スペーサ10A同士を複数積み重ねて運搬することが可能となり、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0052】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、上記実施の形態及び変形例における各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。
例えば、支持部、脚部、係合部、ストッパ、リブの形状は、上記の例に限らず、各部の機能を発揮する範囲において変更可能である。
また、脚部の数、係合部の数、ストッパを構成する腕部の数、リブの数、肉抜き孔の数も各部の機能を発揮する範囲において変更可能である。
また、
図4に示すスペーサ10の支持部1や脚部2に肉抜き孔を形成してもよい。
また、
図14において、肉抜き孔は、支持部1aと脚部2aの一方のみに形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1,1a 支持部
11,13a 凹部
11a 底部
11p 凸部
12a 壁部
13p 返し部
2,2a 脚部
2b,11b 肉抜き孔
3,3a 係合部
31,31a 第1の縁部
32,32a 第2の縁部
4,4a ストッパ
41,41a 第1の腕部
42,42a 第2の腕部
5,5a リブ
6,6a リブ
10,10A スペーサ
30 鉄筋(補強材)
50 溶接金網
70 コンクリート部
100 デッキプレート
142 係合溝
200 合成スラブ構造