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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060724
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】駐車支援装置および駐車支援方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
B60W30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170475
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】岡 均
(72)【発明者】
【氏名】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】石橋 裕大
(72)【発明者】
【氏名】岡部 吉正
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA21
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD07
3D241CE05
3D241DA55Z
3D241DB05Z
3D241DB27Z
3D241DB32Z
3D241DC33Z
3D241DC35Z
(57)【要約】
【課題】自動駐車の実行中に中断事象が生じた場合でも安全かつ好適に自動駐車の実行を支援できる。
【解決手段】駐車支援装置は、車両に設けられ、車両の周辺の撮影画像を取得する撮像手段と、車両を駐車すべき駐車枠の位置を特定する駐車枠検知を、撮影画像に基づいて行う駐車枠検知手段と、駐車枠への車両の駐車動作を支援する駐車支援手段と、を備える。駐車支援手段は、駐車動作中に所定の中断事象があった場合、駐車枠検知に適するように車両を位置させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられ、前記車両の周辺の撮影画像を取得する撮像手段と、
前記車両を駐車すべき駐車枠の位置を特定する駐車枠検知を、前記撮影画像に基づいて行う駐車枠検知手段と、
前記駐車枠への前記車両の駐車動作を支援する駐車支援手段と、を備え、
前記駐車支援手段は、前記駐車動作中に所定の中断事象があった場合、前記駐車枠検知に適するように前記車両を位置させる、
駐車支援装置。
【請求項2】
前記駐車支援手段は、前記駐車枠検知の試行、または、前記車両が前記駐車枠検知に適した位置に在るかの判定のいずれか、または両方を行い、前記駐車枠検知が成功しない場合、または、前記車両が前記駐車枠検知に適した位置にいないと判定した場合、前記駐車枠検知に適するように前記車両を移動させる、
請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記駐車枠検知手段は、前記中断事象に伴って前記車両が停止した場合、前記車両が停止した位置で前記駐車枠検知を試行し、前記中断事象に伴って前記車両が停止しない場合、前記車両を停止させずに前記駐車枠検知を試行する、
請求項1または2に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記駐車枠検知手段は、前記車両の走行中および停止後に前記駐車枠検知を試行し、走行中の前記試行で前記駐車枠検知が成功し、かつ、停止後の前記試行で前記駐車枠検知が成功した場合、停止後の前記駐車枠検知の結果から前記駐車枠の位置を特定する、
請求項1~3のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記駐車枠検知手段は、前記車両の走行中および停止後に前記駐車枠検知を試行し、
前記駐車支援手段は、走行中の前記試行で前記駐車枠検知が成功し、かつ、停止後の前記試行で前記駐車枠検知が失敗した場合、前記車両が進行していた方向と逆方向に前記車両を移動させる、
請求項1~4のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項6】
前記駐車枠検知手段は、前記中断事象が前記車両の停止を伴わない場合に、前記車両の進行方向が前記駐車枠検知に適する位置に近づく方向である場合は前記車両の移動を継続させ、前記車両の進行方向が前記駐車枠検知に適する位置から遠ざかる方向である場合は前記車両を停止させる、
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項7】
前記車両の状況に応じて、前記駐車枠検知に適する位置を判定する状況判定手段を更に備え、
前記車両の状況は、少なくとも位置情報を含み、前記位置情報は、前記駐車枠または駐車枠線に対する前記車両の相対位置、または、前記駐車枠または前記駐車枠線および前記車両の位置を含む、
請求項1~6のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項8】
前記車両の状況は、車両の進行方向を更に含み、前記状況判定手段による判定結果は、前記車両の進行方向が前進である場合は、前記車両の進行方向が後退である場合よりも、前記車両の進行方向が前記駐車枠検知に適する位置に近づく方向に当たる判定結果が出やすい、
請求項7に記載の駐車支援装置。
【請求項9】
前記車両の状況は、前記車両の停止の有無をさらに含み、前記状況判定手段による判定結果は、前記車両の停止が無い場合に、前記車両の停止がある場合よりも、前記車両の進行方向が前記駐車枠検知に適する位置に近づく方向に当たる判定結果が出やすい、
請求項7または請求項8に記載の駐車支援装置。
【請求項10】
前記車両は、手動制動手段、自動制動手段、加速度検知手段、および、車輪速検知手段のうち少なくとも1つ、を備え、
前記中断事象は、前記駐車動作として予定された駐車地点とは異なる位置での、前記手動制動手段または前記自動制動手段の作動、または、前記加速度検知手段または前記車輪速検知手段による前記車両のスリップの検知、または、車体の傾斜角の変化量が閾値を超えた事、または運転者による自動運転の中断の指示、のうちいずれかである、
請求項1~9のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項11】
前記駐車支援手段は、前記車両が前記駐車枠検知に適する位置に移動した場合、前記車両が停止してから前記駐車枠検知を再実行する、
請求項1~10のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項12】
前記駐車支援手段は、前記駐車枠検知に適する位置で前記駐車枠検知が成功した場合に、その検知された前記駐車枠への前記車両の駐車の支援を開始する、
請求項1~11のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項13】
前記駐車支援手段は、前記車両の少なくとも一部が前記駐車枠を構成する駐車枠線上に位置する事によって前記駐車枠検知が成功しない場合、前記駐車枠線上に位置する前記車両の部位と、前記駐車枠と前記車両との相対関係とに基づいて、前記駐車枠検知に適するように前記車両の移動方向を選択する、
請求項1~12のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項14】
前記駐車支援手段は、前記駐車枠検知に適するように前記車両を移動させる場合、前記車両の舵角をゼロにして前記車両を直進移動させる、
請求項1~13のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項15】
前記駐車支援手段は、前記駐車枠検知に適するように前記車両を移動させる場合、前記中断事象があった時の舵角を維持して前記車両を移動させる、
請求項1~14のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項16】
前記駐車支援手段は、前記駐車枠検知に適するように前記車両を移動させる場合、前記駐車枠を構成する一対の駐車枠線のうち一方を検知している事を条件として、その検知された駐車枠線に最も近い前記車両の車体の角、あるいは操舵輪が、その検知された前記駐車枠線と並行に移動するように前記車両を移動させる、
請求項1~15のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項17】
前記駐車支援手段は、前記駐車枠検知に適するように前記車両を移動させる場合、前記駐車枠を構成する一対の駐車枠線の両方を検知していない事を条件として、前記車両の舵角を制御して前記車両の車体前端が前記駐車枠の中心軸方向に移動するように前記車両を移動させる、
請求項1~16のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項18】
前記車両は、障害物検知手段、を備え、
前記駐車支援手段は、前記駐車枠検知に適するように前記車両を移動させる場合、前記障害物検知手段により検知された障害物を迂回する方向に前記車両の舵角を制御して前記車両を移動させる、
請求項1~17のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項19】
前記車両は、障害物検知手段、を備え、
前記駐車支援手段は、前記駐車枠検知に適するように前記車両を移動させる場合、前記障害物検知手段により検知された障害物があり、かつ、その障害物が移動物である場合、前記障害物を検知しなくなるまで前記車両の移動を延期させる、
請求項1~18のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項20】
前記駐車支援手段は、前記駐車枠検知に適するように前記車両を移動させる場合、前記駐車枠を構成する一対の駐車枠線に挟まれる領域に前記車両の固定輪の両方が入っている事を条件として、前記車両の操舵輪を前記領域に収める方向に移動させる、
請求項1~19のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項21】
前記駐車支援手段は、前記車両の目標駐車位置の方向に設けられた前記撮像手段が、前記駐車枠を構成する一対の駐車枠線に挟まれる領域に位置しないと判定した場合は、前記車両を前記駐車枠線に挟まれる領域に近づける制御を選択する
請求項1~20のうちいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項22】
前記駐車枠検知手段は、前記車両を前記駐車枠線に挟まれる領域に近づける制御を選択した場合、前記駐車枠を構成する一対の駐車枠線のうち目標駐車位置への接近を開始する位置である最終接近開始位置に近い側の枠線を延長した直線である敷居ラインを基準とする位置に前記目標駐車位置の方向に設けられた撮像手段が達した時点で、前記駐車枠検知の試行を開始する、
請求項21に記載の駐車支援装置。
【請求項23】
前記駐車支援手段は、前記駐車枠の中心軸と前記車両の車体の前後軸とによる車体角が第1角度閾値以上である場合に前記車両を目標駐車位置から遠ざける制御を選択し、前記車体角が第1角度閾値未満である場合に前記車両を目標駐車位置に近づける制御を選択する、
請求項21に記載の駐車支援装置。
【請求項24】
前記駐車動作が後退駐車である場合の前記第1角度閾値は、前記駐車動作が前進駐車である場合の前記第1角度閾値よりも大きい、
請求項23に記載の駐車支援装置。
【請求項25】
前記中断事象が前記車両の停止を伴わない場合の前記第1角度閾値は、前記中断事象が前記車両の停止を伴う場合の前記第1角度閾値よりも大きい、
請求項23に記載の駐車支援装置。
【請求項26】
前記駐車支援手段は、車体の底面積のうち駐車枠と重なる部分の割合、または、駐車枠内にある駐車経路のうち車両が通過した部分の割合、のいずれかを数値化した重複率が、第1重複率閾値以上である場合に前記車両を目標駐車位置に近づける制御を選択し、前記重複率が第1重複率閾値未満である場合に前記車両を目標駐車位置から遠ざける制御を選択する、
請求項21に記載の駐車支援装置。
【請求項27】
前記駐車動作が、前進駐車である場合の前記第1重複率閾値は、前記駐車動作が、後退駐車である場合の前記第1重複率閾値よりも小さい
請求項26に記載の駐車支援装置。
【請求項28】
前記中断事象が前記車両の停止を伴わない場合の、前記第1重複率閾値は、前記中断事象が前記車両の停止を伴う場合の、前記第1重複率閾値よりも小さい
請求項26に記載の駐車支援装置。
【請求項29】
前記駐車支援手段は、前記車両を目標駐車位置に近づける制御を選択した場合、前記車体の前後軸が前記駐車枠の中心軸に近づく方向に前記車両を移動させるか、中断事象があった時の舵角を維持して移動させるか、または、中断した自動駐車の駐車経路に沿って移動させる、
請求項23または請求項26のいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項30】
前記駐車支援手段は、前記車両を目標駐車位置から遠ざける制御を選択した場合、前記車両を遠ざける際の舵角は、舵角ゼロ、または、前記中断事象があった時の舵角を設定する、
請求項23または請求項26のいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項31】
車両に設けられた撮像手段により、前記車両の周辺の撮影画像を取得するステップと、
前記車両を駐車すべき駐車枠の位置を特定する駐車枠検知を、前記撮影画像に基づいて行うステップと、
前記駐車枠への前記車両の駐車動作を支援するステップと、を有し、
前記駐車動作中に所定の中断事象があった場合に、前記駐車枠検知に適するように前記車両を位置させる、
駐車支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駐車支援装置および駐車支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両周辺の物体を検出する周辺物検出センサと、各種情報を運転者に報知する報知装置と、周辺物検出センサの検出情報に基づいて自動駐車支援を実行する車両制御装置と、を備える自動駐車支援システムが開示されている。車両制御装置は、自動駐車支援を実行中に自動駐車支援の中断が必要な所定の中断条件が成立した場合、車両を停止状態として待機モードに移行し、次の動作として実行可能な動作を報知装置により報知させ、次の動作を選択させる。次の動作は、例えば、自動駐車支援開始時の位置に復帰させる自動復帰がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-43174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動駐車の実行中に自動駐車を中断させる所定の中断条件が成立した場合、上述した従来の自動駐車支援の技術に比べて安全に自動駐車の実行を支援する技術が望まれている。
【0005】
本開示は、自動駐車の実行中に中断事象が生じた場合でも安全かつ好適に自動駐車の実行を支援できる駐車支援装置および駐車支援方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、車両に設けられ、前記車両の周辺の撮影画像を取得する撮像手段と、前記車両を駐車すべき駐車枠の位置を特定する駐車枠検知を、前記撮影画像に基づいて行う駐車枠検知手段と、前記駐車枠への前記車両の駐車動作を支援する駐車支援手段と、を備え、前記駐車支援手段は、前記駐車動作中に所定の中断事象があった場合、前記駐車枠検知に適するように前記車両を位置させる、駐車支援装置を提供する。
【0007】
また、本開示は、車両に設けられた撮像手段により、前記車両の周辺の撮影画像を取得するステップと、前記車両を駐車すべき駐車枠の位置を特定する駐車枠検知を、前記撮影画像に基づいて行うステップと、前記駐車枠への前記車両の駐車動作を支援するステップと、を有し、前記駐車動作中に所定の中断事象があった場合に、前記駐車枠検知に適するように前記車両を位置させる、駐車支援方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、自動駐車の実行中に中断事象が生じた場合でも安全かつ好適に自動駐車の実行を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】駐車支援装置が搭載された車両におけるそれぞれのカメラおよびソナーの配置例を示す図
図2】駐車支援装置が搭載された車両におけるハードウェア構成例を示すブロック図
図3】従来技術による課題の説明図
図4】自動駐車に際して実行する駐車枠検知の一例を示す図
図5】自動駐車に際して実行する駐車枠検知の一例を示す図
図6】前進駐車の際に車両が駐車枠検知を実行できない状況の例を示す図
図7】前進駐車の際に車両が駐車枠検知を実行できない状況の例を示す図
図8】後退駐車の際に車両が駐車枠検知を実行できない状況の例を示す図
図9】後退駐車の際に車両が駐車枠検知を実行できない状況の例を示す図
図10】後退駐車の際に車両が駐車枠検知を実行できない状況の例を示す図
図11】駐車枠検知を実行できる場合は駐車枠検知のための移動が不要であることの説明図
図12】駐車枠検知を実行できる場合は駐車枠検知のための移動が不要であることの説明図
図13】駐車枠検知を成功させるための車両の運動の説明図
図14】駐車枠検知を精度よく行うための車両の運動の別の説明図
図15】車両が駐車枠の外に位置する場合の状況の例を示す図
図16】車両が駐車枠の外に位置する場合の状況の例を示す図
図17】車両の後輪付近だけが駐車枠を隠す場合の状況の例を示す図
図18】車両の前輪付近だけが駐車枠を隠す場合の状況の例を示す図
図19】車両の前輪付近だけが駐車枠を隠す場合の状況の例を示す図
図20】車体が概ね駐車枠内で駐車枠線の端点が前輪に近い場合の状況の例を示す図
図21】車体が概ね駐車枠内で端点が後輪に近い場合の状況の例を示す図
図22】車体が概ね駐車枠内で端点が後輪に近い場合の状況の例を示す図
図23】前輪および後輪の両方が駐車枠を隠す場合の状況の例を示す図
図24】前輪および後輪の両方が駐車枠を隠す場合の状況の例を示す図
図25】前輪および後輪の両方が駐車枠を隠す場合の状況の例を示す図
図26】駐車枠検知に最適な方向に移動できない場合の状況の例を示す図
図27】駐車枠検知に最適な方向を判定する場合の状況の例を示す図
図28】一時的な障害物が検知された場合の状況の例を示す図
図29】固定的な障害物が検知された場合の状況の例を示す図
図30】走路に勾配が無く駐車枠に勾配がある場合の状況の例を示す図
図31】前進駐車の状況の例を示す図
図32】前進駐車によって自動駐車する動作手順例を示すフローチャート
図33】後退駐車の状況の例を示す図
図34】後退駐車によって自動駐車する動作手順例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示に至る経緯)
特許文献1に開示の車両制御装置は、自動駐車支援を実行中に自動駐車支援の中断が必要な所定の中断条件が成立した場合、車両を停止状態として待機モードに移行し、次の動作として実行可能な動作を報知装置により報知させ、次の動作を運転者に選択させる。ここの次の動作は、例えば、自動駐車支援開始時の位置に復帰させる自動復帰がある。
【0011】
自動駐車では、駐車の為の走行を開始する前に駐車枠の位置を特定し、走行を開始した後の、駐車枠に対する車両の車体の位置(座標)および姿勢(向き)は、例えば、その車両の舵角と車輪の回転数(または、車速)とに基づいて推測される。ところが、走行中に生じた舵角の誤差あるいは車輪のスリップにより、車両の車体の位置および姿勢の各推測値に誤差が生じる事がある。特に急制動の際に、スリップあるいはブレーキの片利きがあると、車体の位置および姿勢の推測値が、実際の位置および姿勢から大きくずれる事がある。すると、上述した自動復帰の際に、計算上の走行経路からずれた位置に車体があり、計算上の向きと異なる方向に車体が向いているため、自動駐車の開始位置に復帰するための経路から大きくずれて車両が走行し、その結果、他車両あるいは障害物に接触する可能性があった。
【0012】
図3は、従来技術による別の課題の説明図である。ここでは、車両V1が後退による自動駐車(以下「後退駐車」と称する)を実行する場合を例示して説明する。例えば、自動駐車の途中で中断条件が成立した場合、特許文献1のように自動駐車を開始した位置に車両V1を自動復帰させると、その動作が駐車場からの出庫と誤って判断され、自動駐車を開始した位置を後続車に占められて、駐車できなくなる可能性がある。
【0013】
図3を参照して説明する。車両V1は、自動駐車を開始した位置(地点sz1、以下「自動駐車開始位置」と称する)に停車した状態で自動駐車を開始し、自動駐車開始位置から前進して地点sz2で折り返しのために一時停止し、地点sz2から駐車枠WK1に向かうための後退を開始する。駐車枠WK1は、例えば、駐車場内で既に駐車されている他車両V2,V3の間の駐車用スペースであり、車両V1によって検知済みである。車両V1が、地点sz3にある時(図3左図)に中断条件が成立した場合、自動駐車開始位置に車両V1を自動復帰させる経路は、地点sz3→地点sz2→地点sz1となる。
【0014】
ここで、他車両V4が地点sz3の位置で停止するまでの駐車動作を見ておらず、車両V1を自動復帰させるための地点sz3→地点sz2の移動だけを見た場合、駐車枠WK1から車両V1が出庫したように見える。このため、上述した自動復帰させる経路を地点sz2の位置まで車両V1が進んだ時に、駐車枠が空いたと誤解した他車両V4が地点sz1の位置に進出する事がある(図3右図)。すると、車両V1は自動駐車開始位置の地点sz1に戻れず、検知していた駐車枠WK1に駐車できなくなるという課題がある。また、自動駐車開始位置に車両V1を自動復帰できたとしても、それに費やす時間が長い事も課題として挙げられる。なお、図3以降の添付図面において、他車両V2,V3の駐車向きは前進駐車でも後退駐車でも良い。
【0015】
そこで、以下の実施の形態では、自動駐車の実行中に中断事象が生じた場合でも、安全かつ好適に自動駐車の実行を支援できる駐車支援装置および駐車支援方法の例を説明する。
【0016】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る駐車支援装置および駐車支援方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になる事を避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定する事は意図されていない。
【0017】
(駐車支援装置ならびに車両の構成)
図1は、駐車支援装置10が搭載された車両Vc1におけるそれぞれのカメラおよびソナーの配置例を示す図である。図2は、駐車支援装置10が搭載された車両Vc1におけるハードウェア構成例を示すブロック図である。なお、図1に示されている車両Vc1の8台のソナーのそれぞれの配置例および検知範囲例は一例であって、これに限定されない。また、図1には、車両Vc1が備えるエンジン、ブレーキ、モータなどの構成要素は図示を省略し、駐車支援装置10の構成および動作を説明する上で必要となる構成要素に限って図示している。
【0018】
実施の形態1に係る駐車支援装置10が搭載される車両Vc1は、左前車輪Wh1,右前車輪Wh2,左後車輪Wh3,右後車輪Wh4を有する4輪自動車である。また、車両Vc1は駐車支援装置10の指示(運転支援)を受けた運転者によって手動運転で駐車される車両でも良いし、駐車支援装置10が舵角または速度の一方、または両方を制御する車両でも良いし、あるいは、運転者の乗車の有無に拘わらず自律的に走行して駐車する事が可能な自動運転車両でも良い。つまり、車両Vc1は、運転支援を受けた運転者による手動運転から完全自動運転(無人運転)までの、いずれかの水準の駐車支援手段による自動駐車を実行可能であれば本発明の実施に適する。が、実施の形態1としては、車両Vc1は自動駐車を開始すると、舵角と速度が自動制御されるものとして説明を進める。車両Vc1は、自動駐車の駐車位置として設定された目標駐車位置(以下「目標駐車枠」と称する)に駐車するために、前進あるいは後退を、舵角を制御しつつ自動実行する。また、以下の説明において、目標駐車枠を単に「駐車枠」と称する場合がある。
【0019】
車両Vc1は、車両Vc1の車体前端部に配置されたカメラCaF、車両Vc1の左サイドミラーに配置されたカメラCaL、車両Vc1の右サイドミラーに配置されたカメラCaR、車両Vc1の車体後端部に配置されたカメラCaB、を備える。ここで、カメラにより撮影(撮像)される周辺被写体は、例えば、路面と、路面に表示された駐車枠を示す白線が該当するが、これらに限定されなくて良い。
【0020】
カメラCaF(撮像手段の一例)は、その視野範囲内に存在する車両Vc1の前方の周辺被写体を撮像し、その周辺被写体の撮影画像を取得する。カメラCaL(撮像手段の一例)は、その視野範囲内に存在する車両Vc1の左側方の周辺被写体を撮像し、その周辺被写体の撮影画像を取得する。カメラCaR(撮像手段の一例)は、その視野範囲内に存在する車両Vc1の右側方の周辺被写体を撮像し、その周辺被写体の撮影画像を取得する。カメラCaB(撮像手段の一例)は、その視野範囲内に存在する車両Vc1の後方の周辺被写体を撮像し、その周辺被写体の撮影画像を取得する。カメラCaF,CaL,CaR,CaBのそれぞれにより取得された撮影画像のデータは、センサ制御装置5(図2参照)に入力される。
【0021】
以上により、実施の形態1に係る車両Vc1は、4台のカメラを用いる事で、車両Vc1の周辺被写体の状況を検知可能とするための全周囲の撮影画像を取得できる。
【0022】
車両Vc1は、車両Vc1の車体前方のバンパーに配置された4つのソナーFL,FLC,FR,FRC、車両Vc1の車体後方のバンパーに配置された4つのソナーBL,BLC,BR,BRC、を備える。車両Vc1は、その走行速度が所定速度未満である場合、8台のソナーを用いた障害物検知を実行する。ここで、ソナーにより検知される障害物は、固定的あるいは準固定的な障害物(例えば、駐車中の他車両、カラーコーン(登録商標)、柱、縁石)と、固定的な障害物(例えば、走行中の車両や歩行者)とに分けられる。後者は、移動物と呼び変えてもよい。
【0023】
車体前方に配置された4つのソナーFL,FLC,FR,FRCは、車幅方向に沿って略等間隔に設けられる。一方、車体後方に配置された4つのソナーBL,BLC,BR,BRCは、車幅方向に沿って略等間隔に設けられる。なお、各ソナーを区別する際には、車体前方に配置されたソナーを、車体左側から順にソナーFLC,FL,FR,FRCとし、車体後方に配置されたソナーを、車体左側から順にソナーBLC,BL,BR,BRCとする。
【0024】
車体前方に配置された4つのソナーのうち、中央2つのソナーFL,FRは、検知範囲の中心が平面視で前方に向かうように設定され、両端2つのソナーFLC,FRCは、検知範囲の中心が平面視で斜め前方に向かうように設定される。車体後方に配置された4つのソナーのうち、中央2つのソナーBL,BRは、検知範囲の中心が平面視で後方に向かうように設定され、両端2つのソナーBLC,BRCは、検知範囲の中心が平面視で斜め後方に向かうように設定される。
【0025】
ソナーFL,FLC,FR,FRCの検知範囲は、それぞれRng1,Rng2,Rng3,Rng4である。ソナーFL,FR,FLC,FRCのそれぞれにより取得された障害物検知のデータは、車内LAN7を介してセンサ制御装置5(図2参照)に入力される。
【0026】
なお、4つのソナーFL,FLC,FR,FRCのそれぞれの検知範囲は、図1の様な明確な境界線がある訳ではなく、中心線から外れるにつれて検知能力が低下しつつ広がっている。そのため、図示した検知範囲から少し離れた位置でも、物体が大きければ検知可能である。例えば、車両Vc1の正面付近の物体は、二つのソナーFR,FLで検知出来るが、コーナー部の二つのソナーFRC,FLCでも物体が大きければ検知出来る事がある。隣り合う位置に配置されたソナーの検知範囲は、必ず、少なくとも一部が重複している。例えば、検知範囲Rng1は、検知範囲Rng2あるいは検知範囲Rng3の一部と重複している。検知範囲Rng2は、検知範囲Rng1あるいは検知範囲Rng4の一部と重複している。検知範囲Rng3は、検知範囲Rng1の一部と重複している。検知範囲Rng4は、検知範囲Rng2の一部と重複している。車両Vc1の前方にある所定の大きさよりも大きい障害物は、概ね二つ以上のソナーで検知可能であり、二つのソナーからの距離を検知する事により、障害物の位置を算出することが出来る。
【0027】
ソナーBL,BR,BLC,BRCも、それぞれ車両後方に設定された検知範囲内の障害物を検知し、それぞれにより取得された障害物検知のデータは、車内LAN7を介してセンサ制御装置5(図2参照)に入力される。
【0028】
4つのソナーBL,BLC,BR,BRCのそれぞれの検知範囲も、前方の4つのソナーFL,FLC,FR,FRCと同様に、隣り合う位置に配置されたソナーのそれぞれの検知範囲と少なくとも一部が重複する。車両の後方にある所定の大きさよりも大きい場外物は、概ね二つ以上のソナーで検知可能であり、二つのソナーからの距離を検知する事により、障害物の位置を算出することが出来る点も、車両の前方のソナーと同じである。
【0029】
以上の様に、実施の形態1に係る車両Vc1は、前方を4つ、後方を4つのソナーを用いて検知する事で、車両Vc1の前後に存在する障害物を検知できるが、車両の側方(右側と左側)はソナーで検知していない。
【0030】
車両Vc1は、車両センサ群S1、カメラCaF,…,CaB、ソナーFL,…,BRC、操舵制御装置1、速度制御装置2、車両制御装置3、HMI(Human Machine Interface)装置4、センサ制御装置5、手動制動装置6を少なくとも有する。少なくとも操舵制御装置1、速度制御装置2、車両制御装置3、HMI装置4、センサ制御装置5、手動制動装置6により、実施の形態1に係る駐車支援装置10が構成される。
【0031】
車両センサ群S1、カメラCaF,…,CaB、ソナーFL,…,BRC、操舵制御装置1、速度制御装置2、車両制御装置3、HMI(Human Machine Interface)装置4、センサ制御装置5、手動制動装置6は、車内LAN(Local Area Network)を介して互いにデータの入出力が可能となるように接続される。なお、カメラCaF,…,CaB、ソナーFL,…,BRCは、センサ制御装置5との間で専用のケーブルで直結されても良い。
【0032】
車両センサ群S1は、車両Vc1の操舵輪(例えば左前車輪Wh1および右前車輪Wh2)の舵角、車両Vc1のギヤ位置を示すシフトポジション、車両Vc1の車速をそれぞれ計測して検出する各種のセンサにより構成される。車両センサ群S1を構成するセンサの一例としての加速度センサ(加速度検出手段の一例)は、車両Vc1が受ける加速度を検出する。車両センサ群S1を構成する各種のセンサにより検出された検出結果のデータは、車内LAN7を介してセンサ制御装置5に入力される。
【0033】
カメラCaF,…,CaBのそれぞれは、CCD(Charged Coupled Device)あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide-Semiconductor)等の固体撮像素子を有し、周辺被写体からの光を結像し、結像した光学像を電気信号に変換(撮像)する事で撮影画像を取得する。カメラCaF,…,CaBのそれぞれは、撮像により得られた撮影画像のデータをセンサ制御装置5に送る。
【0034】
ソナーFL,…,BRCのそれぞれは、センサ制御装置5による制御の下で、同一周波数の超音波(送信波)を発するとともに、超音波信号が障害物により反射された反射波(エコー)を受信する。ソナーFL,…,BRCのそれぞれは、検知物までの距離の情報を含む検知情報に、それぞれのソナーを識別可能な識別情報を付加してセンサ制御装置5に送る。
【0035】
操舵制御装置1は、運転者のステアリング操作あるいは車両制御装置3からの制御信号に基づいて、車両Vc1の操舵輪(上述参照)の舵角を制御する。図1に示されるように、操舵制御装置1は、舵角の制御に有利な位置に配置される事が好ましい。
【0036】
速度制御装置2は、運転者のアクセルペダル(図示略)あるいはブレーキペダル(図示略)の踏み込み操作あるいは車両制御装置3からの制御信号に基づいて、車両Vc1の速度(車速)を制御する。図1に示されるように、速度制御装置2は、車両Vc1のエンジン(図示略)あるいはモータ(図示略)とブレーキ(図示略)との制御に有利な位置に配置される事が好ましい。
【0037】
車両制御装置3は、センサ制御装置5あるいは手動制動装置6からの出力データに基づいて、操舵制御装置1あるいは速度制御装置2を制御するための制御信号(命令)を生成して操舵制御装置1あるいは速度制御装置2に送る。車両制御装置3(駐車支援手段の一例)は、カメラ群とセンサ制御装置5により実行される駐車枠検知の結果、位置が特定された駐車枠への車両Vc1の駐車動作(自動駐車)を支援する。また、車両制御装置3は、駐車動作中に所定の中断事象(後述参照)があった場合、駐車枠検知(後述参照)に適するように車両Vc1を位置させる。つまり、車両制御装置3は、車両Vc1の駐車支援機能(例えば、自動駐車)を統括し、操舵制御装置1および速度制御装置2を介して車両Vc1の舵角および車速を制御し、駐車枠検知により得られた駐車枠まで車両Vc1を移動させる。なお、車両制御装置3は、HMI装置4を介して運転者に指示を与える事により、舵角または車速のうち一方、あるいは両方を運転者に制御させ、目的とする駐車枠への車両Vc1の移動を実行しても良い。
【0038】
また、車両制御装置3(自動制動手段の一例)は、センサ制御装置5により算出された障害物の位置の情報と車両センサ群S1により検出された舵角および車速の情報とから、車両Vc1が検知された障害物に接触する危険性を判定する。車両制御装置3は、検知された障害物に接触(つまり、衝突)する危険性があると判定した場合、HMI装置4を介して障害物への接近を運転者に報知し、所定時間内に危険性が解消されない場合には、速度制御装置2に制御信号を与えて緊急制動(自動制動)を行わせるとともに、HMI装置4を介して緊急制動を行う事を運転者に報知する。これにより、車両Vc1に乗車している運転者は、緊急制動が行われる事を即座に把握できる。図1に示されるように、車両制御装置3は、操舵制御装置1および速度制御装置2の近くに配置される事が好ましい。緊急制動を行う手段は、後出する手動制動装置6に組み込まれたブレーキアクチュエータでも良いし、手動制動装置6とは独立した電動ブレーキ(不図示)であっても良い。
【0039】
HMI装置4は、例えば、ディスプレイ、タッチパネル、ボタン、スイッチ、スピーカー等の入出力装置を含んで構成される。HMI装置4は、車両Vc1に乗車している運転者などの人物による操作を受け付け可能である。HMI装置4は、受け付けられた操作内容を示す信号を生成して車両制御装置3に送る。また、HMI装置4は、車両制御装置3から送られた緊急制動の実行を予告する予告情報、緊急制動あるいは減速制御の実行を通知する警告情報を出力する。図1に示されるように、HMI装置4は、運転席の周辺に配置される事が好ましい。
【0040】
センサ制御装置5は、カメラCaF,CaL,CaR,CaBのうちいずれかからの撮影画像に基づいて、車両Vc1の周辺被写体のうちから、特に駐車枠を構成する白線を検知する。
【0041】
具体的には、センサ制御装置5は、撮影画像の中で、高輝度領域を挟んで対を成す平行なエッジ(輪郭線)を検出する。この、対を成す平行な輪郭線で挟まれた高輝度領域が白線である。センサ制御装置5は、白線の端点(白線が終わる位置)、または、白線同士の交点(白線が他の白線と交わる位置)の、いずれかに当たる位置を特定する。ここでは、白線の交点も白線の端点に含まれるものとする。白線は一つのカメラで撮影された一枚の画像の範囲内に収まるとは限らないので、センサ制御装置5は、全てのカメラで撮影された全ての画像に渡って、白線の検知と、白線の端点、または交点の特定を行う。この、白線の検出と、白線の端点(交点を含む)の特定を含む処理を、以下、まとめて白線検知と呼ぶ事にする。白線検知の結果、駐車枠を構成する線(以下、駐車枠線、または単に枠線と呼ぶ)の条件に適合する線がある場合、駐車枠線を検知した、と判定する。駐車枠線の条件は、一本線、または二重線で路面に描かれ、車両の全長に相当する長さを有する事である。
【0042】
更に、センサ制御装置5(駐車枠検知手段の一例)は、白線検知の結果に基づいて、車両Vc1を駐車すべき駐車枠の位置を特定する駐車枠検知(以下「駐車枠検知」と称する)を行う。具体的には、検知された白線の組み合わせのうち、駐車枠の条件に適合する組み合わせを探す。駐車枠の条件とは、平行な白線の対で挟まれ、白線の対と白線の端点を結ぶ線分で囲まれた四角形、または白線の対と交差した線で区切られた四角形の領域があって、その領域が車両Vc1を駐車させるのに適した寸法を備えている事である。センサ制御装置5は、適合する組み合わせがあれば、駐車枠検知が成功したと判定し、適合するものが無い場合は、駐車枠検知が失敗したと判定する。白線検知の段階で、白線の端点付近が障害物や車両Vc1の車体で隠されている場合、白線の端点の位置が特定できないので、駐車枠検知が失敗したと判定する事になる。駐車枠検知が失敗した場合も、駐車枠線の条件に近い白線がある場合は、白線検知で得られた座標情報が、駐車枠検知の実行結果である駐車枠検知情報に含まれる。駐車枠検知が成功した場合、一対の駐車枠線の座標情報は、駐車枠の座標情報の一部として、駐車枠検知の結果である駐車枠検知情報に含まれる。センサ制御装置5は、駐車枠検知を実行した結果として得られるデータとして、駐車枠検知情報を車両制御装置3に送る。
【0043】
また、センサ制御装置5(状況判定手段の一例)は、車両Vc1の状況(例えば、判定対象状況)を判定する。ここで、判定対象状況は、中断状況情報と位置情報とを含む。中断状況情報は、車両Vc1の駐車動作中に所定の中断事象(後述参照)があった駐車動作の種別(例えば、前進駐車あるいは後退駐車)、駐車動作の駐車経路、中断事象があった時の駐車経路上の区間あるいは車両Vc1の進行方向、中断事象による車両Vc1の停止の有無、駐車枠検知の試行の有無、のいずれかを含む。駐車枠検知の試行があれば、前述の通り、センサ制御装置5は、駐車枠検知情報を車両制御装置3に送る。位置情報は、駐車経路における中断事象があった場合の車両Vc1の位置、あるいは、中断事象に伴って停止した車両Vc1の位置、あるいは、駐車枠検知の試行があった場合の車両Vc1の位置、のいずれかである。また、この位置情報は、推測値であってもよいし、駐車枠検知の試行により得られた測定値(前述の駐車枠検知情報)のいずれであっても良い。また、位置情報の基準(原点の位置と方位のゼロ度方向)は、駐車枠を基準としても良いし、所定の時点での車両Vc1の位置と方向を基準としても良い。例えば、駐車枠を検知した時の車両の位置と方向を基準として、駐車枠の相対位置を特定しても良い。
【0044】
手動制動装置6は、例えばブレーキペダルおよびブレーキアクチュエータ(不図示)により構成される。手動制動装置6は、運転者のブレーキペダルの踏み込み操作に基づいて、ブレーキアクチュエータを作動させる。ブレーキアクチュエータは車輪と一体に取り付けたディスクをブレーキシューで挟み込む電動の装置であり、ブレーキペダルの踏み込み量に応じてブレーキシューで挟み込む強さを変える。緊急制動の時には、車両制御装置3は、手動制動装置6を制御下において、ブレーキアクチュエータを強制的に作動させる。車両制御装置3(駐車支援手段の一例)は、自動駐車中に運転者のブレーキペダル操作によりブレーキアクチュエータが作動した時、または、緊急制動のために車両制御装置3がブレーキアクチュエータを作動させた時に、車両Vc1の自動駐車を中断させるべき所定の中断事象があった(発生した)と判定して良い。
【0045】
(自動駐車が中断されるケースとその理由)
一般的に、自動駐車機能を有する車両は、自動駐車を実行する際、移動の開始前に一度だけ駐車枠の位置を特定するための駐車枠検知を実行し、検知された駐車枠に対する自車両の位置を特定して、車両の現在位置から駐車枠までの駐車経路を計算する。この時、自車両の位置を原点として駐車枠の位置を特定し、特定した駐車枠までの駐車経路を計算しても良い。一般的な駐車は後退駐車なので、自動駐車を開始すると、車両は前進した後、折り返し地点で停止し、ギヤを後退に切換えてから駐車枠に向かう。この間、車両は、舵角および車輪パルス(車輪の回転数)から車両の位置および姿勢を推測する推測航法を行っており、走行中は駐車枠の検知をしていない。
【0046】
車両の位置および姿勢の推測値には、様々な要因により誤差が生じる事がある。例えば、車両がハンドルを切って走行した時の姿勢(車体の向き)の変化量は車速によって変化し、積み荷あるいはタイヤの空気圧によっても変化する。また、車両が停止する時にスリップすると車輪の回転数が車両の位置と対応しなくなり、特にハンドルを切っている状態でブレーキの片利きが発生すると、車輪の回転数から姿勢を特定できなくなるので、車両の位置および姿勢の推測に、直接的かつ検知不能な誤差が生じる。更に、駐車経路の中で勾配の変化がある場合、駐車経路は路面が平面である事を前提に計算されるので、車両が三次元的に移動する事により、平面上の推測位置からずれることになる。このように、車両の位置および姿勢の推測値にずれがある状態で自動駐車を継続すると、予定された駐車経路(進路)から外れて他車両などの障害物に接近し、自動制動(自動ブレーキ)が作動して車両の自動駐車が中断される事がある。また、推測航法による姿勢(車体の角度)の推測値と、実際の車体姿勢のずれが小さくとも、自動駐車の過程で車両が移動するにつれて位置のずれが大きくなり、結果として自車両が他車両等の障害物に接近する事がある。この時に運転者が驚いてブレーキを強く踏む急制動を行うと、自動駐車が中断されるのと同時にスリップが起きて、車両が予定された駐車経路から更にずれる事がある。急制動すると必ずスリップが起きる訳ではないが、雨や雪で路面が滑り易い時は、特にスリップが起き易い。
【0047】
つまり、推測航法は、車両の停車中に駐車枠検知を行って駐車枠に対する車両の位置を特定し、走行中は舵角と車輪パルスとから車両の位置および姿勢を推測し、車両の停車中に設定された駐車経路から外れないように舵角を制御する方式である。よって、この推測航法の方式では、上述したように、車輪のスリップなどの、舵角と車輪パルスとでは特定できない車両の動きがあると、予定の駐車経路から外れる事がある。
【0048】
一方、推測航法とは異なる方式として、常時補正方式がある。常時補正方式は、常時(車両の走行中も)駐車枠検知を行い、カメラの撮影画像に映る駐車枠線などの位置から車両の位置および姿勢を逆算し、車両の停車中に設定された駐車経路からずれがあれば、フィードバック制御により補正する方式である。この常時補正方式では、車輪のスリップによるずれも補正されるので、自動駐車中に駐車経路から外れる事は無い。
【0049】
後者の方式によれば自動駐車の成功率が高くなるが、カメラの撮影画像から車両の位置および姿勢を逆算する演算を常時実行する必要がある。このため、高コストなプロセッサを必要とするので、コストアップが避けられないという課題が生じる。そこで、本実施の形態では、低コストの推測航法を用いながらも、自動駐車が中断した時には駐車枠検知を実行して自動駐車をリトライする事で、自動駐車の成功確率を向上する例を説明する。
【0050】
(なぜ駐車開始位置に復帰させるのか?)
自動駐車中に急制動などで車両が停車した時は車両の位置の推測値がずれている可能性があるが、急制動が発生しなくても、自動運転で走行している間に車両の位置と姿勢の推測値がずれている事がある。このため、自動駐車を再開させるためには、駐車枠を再検知して、駐車枠に対する自車両の位置と姿勢を特定し直す必要がある。
【0051】
しかし、車両が自動駐車中に停車した位置によっては、駐車枠の再検知ができない事がある。例えば、2本の枠線(例えば、白線)で駐車枠が示される場合、2本の白線と、白線の端点同士を結ぶ線で囲まれる領域が駐車枠となるが、白線の端点が車両の下にある(つまり、車体の周囲を撮像する目的で設けられたカメラの撮像範囲外にある)場合には、車両は駐車枠の端点を検知できない(図6など参照)。
【0052】
自動駐車開始位置は、例えば運転者が目標となる駐車位置に横付けして駐車枠を確認する位置であり(図4参照)、車両のサイドカメラ(例えば、カメラCaL,CaR)から駐車枠検知が可能となる位置でもある。自動駐車開始位置は駐車枠検知が成功した事が判っている位置なので、自動駐車中に車両が停車した場合に自動駐車開始位置に車両を復帰させることができれば、駐車枠検知の再実行が確実にできる。
【0053】
しかし、自動駐車中に車両が急制動で停車する時に、車輪と路面とのグリップ力が、左右の車輪で異なっていると、一方の車輪が路面とグリップしたまま他方の車輪がスリップし、車体が少し回転して停車する事がある。いわゆる、ブレーキの片効きである。例えば、図3の矢印で示される遷移前の状態を示す図で、車体が車両V1(地点sz3)の位置で急制動した際に、右前車輪がグリップしたまま、他の車輪(つまり、左前車輪、左後車輪、右後車輪)がスリップすると、グリップした右前車輪を中心に車体が左を向くように回転してしまう。停車後に自動駐車開始位置に向けて復帰する時、車体の実際の位置および姿勢は、それらの推測値(つまり、前述の推測航法で計算した位置と姿勢)と異なっているので、復帰する経路にずれが生じることになる。つまり、図3の矢印で示される遷移後の状態を示す図の様に、停車するまで辿っていた自動駐車の駐車経路を逆向きに戻るつもりで走行すると、実際の走行経路はその予定の駐車経路よりも左側に逸れ、内輪差によって車両の側面が駐車車両(例えば、他車両V2)の角部に接触する事故が起きる可能性がある。つまり、自動駐車開始位置に車両を復帰させる制御は、必ずしも安全ではない。
【0054】
(所定の中断事象)
実施の形態1において、所定の中断事象とは、車両Vc1が自動駐車中にその自動駐車を中断させるべき事象、または、自動駐車を中断させた事象であり、様々な事象が相当する。例えば、前述のスリップは、急制動があった場合に限らず、駆動輪が摩擦抵抗の低い金属物の上に乗った時や、駆動輪が車止めや段差を乗り越えた時にも発生する。具体的には、車両Vc1の自動駐車中の車輪速もしくは加速度の異常があれば、中断事象があったと判定して良い。また、自動駐車は舵角制御、または速度制御の、一方または両方を自動で行うので、運転者による手動制動で速度制御が妨げられた場合、あるいは、運転手がハンドルを手動操作して舵角制御に介入した場合は、何らかの危険を避ける為に運転手が行った危険回避であると安全側に判断して、自動駐車を中断する。同様に、障害物などの検知に基づく自動制動も危険回避であり自動駐車の中断事象に該当する。自動駐車の中断条件(中断事象)は自動駐車機能の仕様として任意に定めて良く、ブレーキペダルの閾値を超える踏込みによる速度制御への介入や、自動ブレーキによる緊急制動があれば、スリップの有無に関わらず自動駐車を中断して良い。スリップを伴わない中断事象の例として、自動駐車の開始以降の車体の傾斜角の変化量が閾値を越えた時も、所定の中断事象が発生したと見做してよい。車体の傾斜角の変化は車両が三次元的に移動している事を示しており、二次元平面上に駐車枠がある事を前提とした駐車枠検知や駐車経路計算は、正確でないと判断できるからである。また、中断事象は検知によるものに限らず、運転者の操作によって指示されるものでも良い。例えば、自動駐車中に自動駐車開始ボタンが押された時は自動駐車を中断する仕様としても良いし、その場合は、自動駐車中の自動駐車開始ボタンの操作が所定の中断事象に該当する。
【0055】
以下、検知による中断事象の検出方法を例示する。実施の形態1に係る車両Vc1は、車体の姿勢を適正に制御する事を目的として、個々の車輪(具体的には、左前車輪Wh1、右前車輪Wh2、左後車輪Wh3、右後車輪Wh4)の回転速度の異常を検知する手段(例えば、センサ制御装置5)を備えている。具体的には、センサ制御装置5は、車両センサ群S1を構成するセンサの一例としての加速度センサが検出した加速度のデータと、車両センサ群S1を構成するセンサの一例としてのセンサから得られた個々の車輪ごとの車輪速(つまり、車輪の回転速度)のデータとを照合して、異常の有無を判定する。
【0056】
舵角がゼロで走行(直進)し、個々の車輪がスリップしていない時、個々の車輪ごとに検出される車輪速は同じである。舵角がゼロでない時には、舵角に応じて内輪差に対応した車輪速の差が生じるが、その差は舵角に応じた所定の関係が維持される。ところが、車輪がスリップすると、車輪速の差が上述した所定の関係から外れる。したがって、センサ制御装置5(車輪速異常検知手段の一例)は、車両センサ群S1を構成するセンサの一つである車輪速センサから得られた個々の車輪ごとの車輪速(つまり、車輪の回転速度)の差が、所定の関係から所定の閾値を超えて外れた事を条件として車輪がスリップしたと判定して良い。例えば、一つの駆動輪の車輪速が他の3輪の車輪速よりも著しく大きいなら、その一つの駆動輪が空転していると判定できる。また、各々の車輪の車輪速の予測値を求めて、予測値と実際の車輪速の差が所定の閾値を超えた事を条件として、車輪がスリップしたと判定して良い。例えば、進路変更のために前輪に舵角を付けている(ハンドルを切っている)場合は、内側輪の車輪速と外側輪の車輪速との間に、内輪差に相当する差が生じると予測する。この時、例えば、後輪の車輪速が同じであるとしたら、車両は前輪が横滑りした状態で直進している可能性がある。この様なスリップは、降雪や氷結で滑りやすくなった駐車場で起きる事がある。
【0057】
なお、車輪のスリップの判定は、車輪速の差のデータを用いる代わりに、加速度センサにより検出された加速度のデータを用いても良いし、車輪速と加速度のデータを照合して判定しても良い。加速度センサは、上下方向、左右方向、前後方向の計3軸方向の加速度を独立して検出可能である。車両Vc1は、車両センサ群S1の一例として車体前部および車体後部のそれぞれに配置された加速度センサを備える。センサ制御装置5(加速度異常検出手段の一例)は、車体前部および車体後部のそれぞれの加速度センサにより検出された加速度のデータを車輪速と照合する事で、車輪のスリップを検知する事ができる。
【0058】
例えば、車両Vc1が転回する途中で急制動した時に、全ての車輪(具体的には、左前車輪Wh1、右前車輪Wh2、左後車輪Wh3、右後車輪Wh4)が路面とのグリップを失わずに停止した場合は、その制動による加速度のピーク値は、車体前部および車体後部のそれぞれの加速度センサで同時になる。しかし、減速によって前輪(例えば、左前車輪Wh1あるいは右前車輪Wh2)の路面荷重が増して後輪(例えば、左後車輪Wh3あるいは右後車輪Wh4)の路面荷重が減り、前輪が路面とグリップしたまま後輪だけグリップを失い、遠心力で車体後部が横滑りした場合、車体後部の加速度センサが検出する左右方向の加速度(いわゆる、横G)は後輪がスリップしている間は小さくなり、後輪がグリップを取り戻した時にピークを取るので、先に停止する車体前部の加速度センサが検出する加速度がピーク値をとる時点と時間差を生じる。別の例として、直進中の急制動で4輪全てがグリップを失った場合は、先ず車輪速がゼロになり、グリップが戻って車体が停止する時に加速度がピーク値をとる。この様に、車輪速と加速度で変化点に時間差がある場合にスリップが発生したと判定しても良い。また、車体のいずれかの加速度センサが所定の閾値を超える上下方向の加速度を検知した場合も、スリップが発生したと判定して良い。車輪の回転数と移動量とは、車輪が接地している事を条件として一致するので、段差や車止めを乗り越えるなどして、タイヤが浮くような加速度が発生した時には、車輪が空転して回転数と移動量との関係が崩れるからである。
【0059】
このように、車輪がスリップしたり空転したりすると、車両Vc1の車体の位置および姿勢の推測を正しく行えなくなる。このため、車両Vc1もしくは駐車支援装置10(例えば、センサ制御装置5)は、車輪速の異常を検知した時、自動駐車を中断すべき所定の中断事象が発生したと判定して良い。また、車輪速の異常が検知されなくても、車両Vc1もしくは駐車支援装置10(例えば、車両制御装置3)は、運転者による手動制動装置6の作動に基づく急制動があった時点、あるいは車両制御装置3による自動制動を実行した時点で、上述した所定の中断事象が発生したと判定して良い。なお、運転者または車両制御装置3が徐々に制動した為にスリップが検出されなかった場合、または、急制動があってもスリップが検出されなかった場合は、自動駐車の途中で停車しても、中断事象が発生しなかったと判定して良い。途中で停車した時に中断事象が発生したと判定しなかった場合は、進行方向の歩行者が進路外に移動するなどして停車の原因が解消された時、または運転者がブレーキペダルを離して制動を解除した時に、実行していた自動駐車を再開して良い。つまり、実行していた自動駐車を再開できる場合は、所定の中断事象が発生しなかったと判定して良い。
【0060】
以下、車両Vc1が所定の中断事象に伴って自動駐車を中断した際に、駐車枠検知に適した位置に、効率的(例えば、短い移動距離で、短時間で)かつ安全に車両Vc1を移動する例を説明する。なお、所定の中断事象が発生した際に、車両Vc1が停止する場合と停止しない場合がある。これは、中断事象には、車両の停止を伴う中断事象と、車両の停止を伴わない中断事象がある、と言い換えても良い。前者は、例えば緊急制動で停止した際にスリップが検出された場合であり、中断事象の発生と前後して車両は停止している。後者は、走行中に車輪速の異常や加速度の異常が検出されて、これを中断事象と判定した場合であり、中断事象が発生した時点で車両は停止していない。つまり、駐車枠検知に適した位置に移動を開始する時点で、車両Vc1が停止している場合と、停止していない場合がある。
【0061】
(直進による離脱の効果)
以下、駐車枠検知に適した位置に移動する際に、直進する事の効果を説明する。ソナーが発した超音波によって障害物を検知し、その検知された障害物に接近すると自動制動装置(自動ブレーキ)を作動させるソナーシステムは、昨今、普及が進んでいる。例えば、実施の形態1に係る車両Vc1のように、車体前端部および車体後端部のそれぞれに4つずつソナーが配置される8ソナーシステムが広く普及している。なお、車体の左側方および右側方のそれぞれにも2つずつソナーが更に配置される12ソナーシステムも知られているが、8ソナーシステムよりも高価であるため、一般的ではない。
【0062】
実施の形態1に係る車両Vc1に搭載されている8ソナーシステムでは、車両Vc1の舵角をゼロにして直進していれば、進行方向に障害物があっても自動制動装置が作動するので、車両Vc1はその障害物と衝突する事はない。しかし、車両Vc1が舵角を付けて走行すると、内輪差によって車両Vc1の車体の側面が他車両などの障害物に接近する事がある。この時、車両Vc1に搭載されている8ソナーシステムは、車体の左右両側方にソナーを備えないために自動ブレーキは作動せず、車両Vc1の車体側面が傷付く可能性がある。したがって、実施の形態1に係る車両Vc1は、駐車枠検知ができる位置に移動する場合に、舵角をゼロにして離脱(言い換えると、移動)する事により、周囲の障害物との衝突を回避できる。
【0063】
(駐車枠検知)
以下、駐車枠検知について説明する。図4および図5は、自動駐車に際して実行する駐車枠検知の一例を示す図である。なお、以下の説明において、図4以降の添付図面において同一の要素には同一の符号を付与しており、その要素の説明を簡略化あるいは省略する。
【0064】
図4に示されるように、車両Vc1は、自動駐車を実行する際、目標駐車位置となる駐車枠WK1に横付けする。車両Vc1のセンサ制御装置5は、サイドカメラ(カメラCaL)により撮像された撮影画像から駐車枠線である白線Ln1,Ln2の位置を計算し、駐車枠線の位置に基づいて、車両Vc1の進行方向に対して直角な方向に目標駐車位置である駐車枠WK1を設定する。つまり、図4の例では、車両Vc1が自動駐車の目標駐車位置となる駐車枠WK1に対して直角に位置している場合に、駐車枠検知が可能となっている。以下の説明において、駐車枠WK1は、2本の白線Ln1,Ln2を長辺の枠線とする平面視で長方形状の領域であり、車両Vc1が行う自動駐車の目標駐車位置の一例である。
【0065】
また、センサ制御装置5は、駐車枠WK1に対して車両Vc1が横付け可能に位置していない場合でも、駐車枠WK1を検知可能であり、車両Vc1に搭載される左右前後の計4台のカメラ(カメラCaF,CaL,CaR,CaB)のいずれの撮影画像からでも白線を検知し、駐車枠WK1を検知する事が可能である(図5参照)。つまり、図4の例に限らず車両Vc1からみてどの方向に駐車枠WKが存在しても、センサ制御装置5は、車両Vc1に搭載される4台のカメラ(上述参照)のいずれかの撮像画像を用いることで駐車枠検知を実行でき、その駐車枠WKへの自動駐車における駐車経路を計算できる。図5の例では、センサ制御装置5は、カメラCaBにより撮像された撮影画像から駐車枠WK1を検知できる。
【0066】
自動駐車における駐車枠検知の次の処理として、センサ制御装置5は、目標駐車位置に設定した駐車枠の中に移動する為の駐車経路を計算する。ここで、自動駐車の開始時の車両Vc1の位置と駐車枠WK1の位置との位置関係を、例えば図4の様な位置関係を標準とするように制約すると、駐車経路の計算が容易になる。例えば、標準の位置関係に最適化した予め計算済みの駐車経路のテンプレートを駐車支援装置10のメモリ(図示略)に記憶しておき、車両Vc1の現在位置に対応する標準の位置関係との差に応じてテンプレートを補正する事により、より少ない計算量で駐車経路を計算する事が可能である。一方で、上述した位置関係を制約せず、任意の位置関係に対応する駐車経路計算を実行しても良いし、予め計算済みの多数の駐車経路のテンプレートを駐車支援装置10のメモリ(図示略)に記憶しておき、いずれかのテンプレートを補正して駐車経路を算出しても良い。駐車経路計算の方法は、各種の提案が知られているので任意の方法が選択されて良い。
【0067】
駐車枠検知ができない場合の車両Vc1の位置の例について、図6図10を参照して説明する。図6および図7は、前進駐車の際に車両Vc1が駐車枠検知を実行できない状況の例を示す図である。図8図9および図10は、後退駐車の際に車両Vc1が駐車枠検知を実行できない状況の例を示す図である。この様に、中断事象があった時に、車両Vc1の位置によっては、車両Vc1のセンサ制御装置5は、駐車枠検知を実行する事ができない事がある。その場合には、車両Vc1の車両制御装置3は、駐車枠検知ができる位置まで車両Vc1を離脱(移動)させる必要がある。
【0068】
図6の例では、車両Vc1は、駐車枠WK2を目標駐車位置として自動駐車(前進駐車)していたが、中断事象に伴って自動駐車が中断されている。この時、センサ制御装置5は、自動駐車の目標駐車位置に設定されていた駐車枠WK2の検知を試行するが、車両Vc1の右前車輪Wh2の付近が駐車枠WK2を構成する白線Ln1,Ln2のうち白線Ln2の一部を隠している。このため、車両Vc1のセンサ制御装置5は、4台のカメラ(具体的には、カメラCaF,CaL,CaR,CaB)のいずれの撮影画像を用いても、図6に示す駐車枠WK2の検知を実行できない。なお、図6では駐車枠の形状が平行四辺形状である場合を例示して説明したが、駐車枠の形状が長方形状であっても同様である。以上の説明において、駐車枠WK2は、2本の白線Ln1,Ln2を長辺とする平行四辺形状の領域であり、車両Vc1が行う自動駐車の目標駐車位置の一例である。
【0069】
図7の例では、車両Vc1は、駐車枠WK1を目標駐車位置として自動駐車(前進駐車)していたが、中断事象に伴って自動駐車が中断されている。この時、センサ制御装置5は、自動駐車の目標駐車位置に設定されていた駐車枠WK1の検知を試行するが、車両Vc1の右後車輪Wh4の付近が駐車枠WK1を構成する白線Ln1,Ln2のうち白線Ln2の一部を隠している。このため、車両Vc1のセンサ制御装置5は、4台のカメラ(具体的には、カメラCaF,CaL,CaR,CaB)のいずれの撮影画像を用いても、図7に示す駐車枠WK1の検知を実行できない。なお、図7では駐車枠の形状が長方形状である場合を例示して説明したが、駐車枠の形状が平行四辺形状であっても同様である。
【0070】
図8の例では、車両Vc1は、駐車中の他車両V4,V3に挟まれた駐車枠WK1を目標駐車位置として自動駐車(後退駐車)していたが、中断事象に伴って自動駐車が中断されている。この時、センサ制御装置5は、自動駐車の目標駐車位置に設定されていた駐車枠WK1の検知を試行するが、車両Vc1のカメラCaBの視野範囲内に他車両V4が映り込んで、駐車枠WK1を構成する白線Ln1,Ln2のうち白線Ln1の一部あるいは全体を隠している。このため、車両Vc1のセンサ制御装置5は、4台のカメラ(具体的には、カメラCaF,CaL,CaR,CaB)のいずれの撮影画像を用いても、図8に示す駐車枠WK1の検知を実行できない。なお、図8では駐車枠の形状が長方形状である場合を例示して説明したが、駐車枠の形状が平行四辺形状であっても同様である。
【0071】
図9の例では、車両Vc1は、駐車枠WK1を目標駐車位置として自動駐車(後退駐車)していたが、中断事象に伴って自動駐車が中断されている。この時、センサ制御装置5は、自動駐車の目標駐車位置に設定されていた駐車枠WK1の検知を試行する。ところが、車両Vc1の左後車輪Wh3の付近が駐車枠WK1を構成する白線Ln1,Ln2のうち白線Ln1の一部を隠している。このため、車両Vc1のセンサ制御装置5は、4台のカメラ(具体的には、カメラCaF,CaL,CaR,CaB)のいずれの撮影画像を用いても、図9に示す駐車枠WK1の検知を実行できない。なお、図9では駐車枠の形状が長方形状である場合を例示して説明したが、駐車枠の形状が平行四辺形状であっても同様である。
【0072】
図10の例では、車両Vc1は、駐車枠WK1を目標駐車位置として自動駐車(後退駐車)していたが、中断事象に伴って自動駐車が中断されている。この際、センサ制御装置5は、自動駐車の目標駐車位置に設定されていた駐車枠WK1の検知を試行する。ところが、車両Vc1の左前車輪Wh1の付近が駐車枠WK1を構成する白線Ln1,Ln2のうち白線Ln1の一部を隠している。このため、車両Vc1のセンサ制御装置5は、4台のカメラ(具体的には、カメラCaF,CaL,CaR,CaB)のいずれの撮影画像を用いても、図10に示す駐車枠WK1の検知を実行できない。なお、図10では駐車枠の形状が長方形状である場合を例示して説明したが、駐車枠の形状が平行四辺形状であっても同様である。図6図10のいずれの例でも、車両Vc1の位置に問題があるために駐車枠検知を実行できないので、駐車枠検知に適した位置まで車両Vc1を移動させる必要がある。
【0073】
図11および図12は、駐車枠検知を実行できる場合は駐車枠検知のための移動が不要である場合の説明図である。図11に示されるように、車両Vc1が自動駐車中に中断事象があって停止した位置が、車両Vc1の車体が駐車枠WK1を遮蔽せず、カメラCaL,CaBのそれぞれの撮影画像に白線Ln1,Ln2が映っているとする。例えば、カメラCaLの撮影画像に白線Ln1が映り、カメラCaBの撮影画像に白線Ln2が映っている。この場合、センサ制御装置5は、駐車枠WK1を検知できるので、推測航法で推測していた自車両の位置、および姿勢の推測値と、駐車枠検知で算出した自車両の位置、および姿勢の実測値とを照合し、実測値に対する推測値のずれが所定の範囲内であれば中断した自動駐車を再開(続行)しても良いし、ずれが所定の範囲を超えていれば、目標駐車位置までの経路を再計算して、新たに生成した経路で自動駐車を実行してもよい。いずれの場合も、駐車枠検知により自車両の位置を再確認した上で、安全な経路で自動駐車を再開する事ができる。
【0074】
つまり、センサ制御装置5は、車両Vc1が自動駐車中に中断事象があって停止した場合に駐車枠検知を試行する。ここで、センサ制御装置5は、駐車枠検知が成功した場合には、既に駐車枠検知ができるように車両Vc1が位置していると判定し、駐車枠検知ができるように車両Vc1を位置させるための車両Vc1の移動は不要と判定して良い。一方、センサ制御装置5は、駐車枠検知が成功しない場合には、駐車枠検知ができるように車両Vc1を移動させる必要があると判定する。駐車枠検知が成功しない場合には、車両Vc1が駐車枠から離れていて駐車枠線が他の車両で隠される場合や、駐車枠線が車両Vc1自身の車体で隠される場合が該当するので、車両Vc1が駐車枠に近く、駐車枠線が車両Vc1自身で隠されない状態にすれば、駐車枠検知ができるようになる。
【0075】
また、センサ制御装置5は、車両Vc1が駐車枠検知に適した位置にいないと判定した場合には、駐車枠検知を試行せずに、車両Vc1を移動させる必要がある、と判定しても良い。例えば、図12に示されるように、駐車枠WK1を自動駐車(後退駐車)の目標駐車枠として選択していた車両Vc1が後退開始位置(言い換えると、折り返し地点)付近に位置しており、駐車枠WK1から一定距離以上離れている場合を考える。この車両Vc1の位置からでもカメラCaBにより撮像された撮影画像に基づいて駐車枠WK1の検知が可能であるが、車両Vc1が駐車枠WK1から遠いために、駐車枠WK1の近くで検知した時より、検知結果の精度が劣ると考えられる。このため、センサ制御装置5は、車両Vc1から駐車枠WK1までの距離を算出し、この算出結果(距離)が閾値を超える事を条件として、より精度よく駐車枠検知ができるように車両Vc1を移動させる必要があると判定して良い。この距離は、車両Vc1の位置の推定値に基づいて計算しても良いし、駐車枠検知を試行して得られた実測値に基づいて計算しても良い。精度よく駐車枠検知ができる距離になるまでは、駐車枠検知を試行しなくて良い。
【0076】
図13は、駐車枠検知に適した位置に移動させるための車両Vc1の運動の例を示す説明図である。センサ制御装置5は、駐車枠WK1を自動駐車(後退駐車)の目標駐車枠として選択していた車両Vc1が、自動駐車中に中断事象のためにVc1(s1)の位置で停止した場合、その位置で駐車枠検知を試行する。車両制御装置3は、駐車枠検知が成功しない場合には、その判定結果に基づいて、駐車枠検知ができるように車両Vc1を移動させる。この時、図13に示されるように、センサ制御装置5は、車両Vc1の移動中(例えば、Vc1(s1)の位置からVc1(s2)の位置への移動中)も駐車枠検知を継続する。車両制御装置3は、車両Vc1に搭載されたカメラの撮影画像から駐車枠検知が成功した場合には、その判定結果に基づいて、その判定時点で車両Vc1を停車させる。
【0077】
なお、車両Vc1の移動中、あるいは、車両Vc1を停止させた直後は、車両Vc1の車体の姿勢変化もしくは動揺によって駐車枠の検知精度が劣化(つまり、検知誤差が増大)する事がある。このため、例えば、センサ制御装置5は、車両Vc1に搭載された加速度センサが加速度を検知しなくなった時点(つまり、動揺が収束した時点)での駐車枠検知の結果を最終的な検知結果として確定し、その時点で駐車枠検知を終了すると良い。
【0078】
また、図14は、駐車枠検知を精度よく行うための車両Vc1の運動の別の説明図である。図14では、駐車枠WK1を目標駐車位置として自動駐車していた車両Vc1が、自動駐車の途中で中断事象(スリップ等)のためにVc1(s3)の位置で停車している。この停止した位置が、駐車枠WK1から遠い場合には、仮に、この位置で駐車枠検知が成功しても、十分な検知精度が得られないので、車両制御装置3は、駐車枠検知が精度よくできるように車両Vc1を移動させる。この場合、車両制御装置3は、駐車枠検知に適した位置まで車両Vc1を移動(例えば、Vc1(s3)の位置からVc1(s4)の位置までの距離d1だけ直進で後退)して、車体後部のカメラCaBが駐車枠線である白線Ln1の延長線上に達する位置で停止させる。または、後退中に駐車枠検知を試行し、カメラCaBの撮影画像上の駐車枠線である白線Ln1の像が、垂直な線になった時点で車両Vc1を停止させてもよい。更に、センサ制御装置5は、この停止後に、加速度センサが加速度を検知しなくなった時点で駐車枠検知を行い、その結果を検知結果として確定すれば良い。
【0079】
(駐車枠検知のユースケース例:車両が駐車枠の外に位置する場合)
図15および図16は、車両Vc1が駐車枠WK1の外に位置する場合の状況の例を示す図である。実施の形態1に係る車両Vc1は、全周囲を撮影可能なカメラ(具体的には、カメラCaF,CaL,CaR,CaB)を備える。このため、車両Vc1が駐車枠の外に位置する場合、駐車枠は上述したカメラのいずれかの視野範囲内に位置する。但し、駐車場では、他車両に隠されて駐車枠検知ができない事がある。つまり、他車両に隠されて駐車枠検知ができない位置も、駐車枠検知に適する位置には当たらない。
【0080】
例えば、図15は、車両がVc1(s11)の位置から駐車枠WK1を目標駐車位置として自動駐車を開始した後、折り返し地点に到着する前のVc1(s12)の位置において、前方に歩行者などの障害物OBS1を検知して緊急停止した場面を図示する。この場合、駐車済みの他車両V3,V4と車両Vc1との位置関係によって、駐車枠WK1を表示する白線Ln1の大部分が他車両V3,V4に隠されている。図15の例では、駐車枠WK1を構成する白線Ln1の入口側の端点(つまり、車両Vc1に近い側の白線の端点)がカメラCaBの視野範囲内にあるが、白線Ln1と白線Ln2の両方が車長に相当する長さを持つ事を条件として駐車枠検知に成功したと判定するので、少なくとも白線の大部分が検知できる必要がある。つまり、図15の例では、Vc1(s12)の位置では、駐車枠WK1を検知できない。
【0081】
上述したように、車両Vc1が折り返し地点付近に位置し、駐車枠WKを検知できない場合には、車両制御装置3は、駐車枠WK1の方向に車両Vc1を直進後退させる事で、駐車枠WKを検知可能な位置に安全に移動できる(図16参照)。図16は、車両がVc1(s12)の位置より後退して、Vc1(s14)の位置に達した時に駐車枠WKを検知可能となる事を示している。なお、中断事象が発生した時点で車両Vc1が停止していない場合に、Vc1の移動方向が駐車枠WKを検知可能な位置に近づく方向である場合は、中断事象が発生した時点で車両Vc1を停車させる事をしなくてもよい。例えば、車両Vc1が折り返し地点から駐車枠に向けて後退を始めた直後に駆動輪の空転を検知した場合、車両制御装置3は中断事象が発生したと判定するが、その時の進行方向は駐車枠WKを検知可能な位置に移動する方向と同じなので、駐車枠WKを検知可能な位置に達するまで走行を継続して良い。元々、駐車経路は他車両などに著しく接近することがない様に設定されており、特に通路上を移動する区間では駐車中の車両から離れているので、一部の車輪の空転などが発生した地点から一定の範囲内で移動しても、他車両などに接近する可能性は低い。そのため、中断事象が発生した時点で車両Vc1を直ちに停車させる必要は無い。
【0082】
車両Vc1が折り返し地点付近の位置s12に位置する場合、車体の前後方向の軸は自動駐車開始位置の方向と駐車枠WK1の間口(具体的には、目標駐車位置とした長方形状の領域である駐車枠WK1の手前側の短辺Sh1)の方向との間を向いている(図16参照)。したがって、図16に示されるように、車両Vc1は中断事象があって停止した位置から駐車枠WK1の方向に直進で進出(つまり、まっすぐ後退)する事で、隣接した駐車枠に位置する車両(例えば、他車両V3,V4)などの障害物と干渉(衝突や著しい接近)する可能性が低くなる。仮に障害物があったとしても、直進で後退していればソナーと連動した自動ブレーキで衝突が予防されるので、接触事故が起きる恐れはない。車両制御装置3が車両Vc1を駐車枠WK1の方向に直進(この場合、後退)させ、カメラCaBが後退開始位置に近い側の駐車枠線(つまり、白線Ln1)の延長線Ex1上に達すればセンサ制御装置5は、他車両V4の有無に関わらず駐車枠WK1全体を検知可能になる。なお、駐車枠検知から停止するまでの時間差で、カメラCaBの位置が駐車枠線(白線Ln1)の延長線Ex1を超えても、全周囲表示に対応したカメラCaBは180度以上の視野角を有するので、直ちに駐車枠WK1を捉えられなくなることはない。
【0083】
(駐車枠検知のユースケース例:車両の後輪付近だけが駐車枠を隠す場合)
図17は、車両Vc1の後輪付近だけが駐車枠WK1を隠す場合の状況例を示す図である。図17に示されるように、自動駐車の目標駐車枠として選択された駐車枠WK1に隣接する、後退開始位置に近い側の隣接駐車枠が空いている場合、後輪(この場合、左後車輪Wh3)がその隣接駐車枠の角部を踏む形で駐車経路を設定する事がある。そのように駐車経路を設定すると、その隣接駐車枠の角部を踏まない駐車経路よりも回転半径が大きくなるので、よりスムーズな自動駐車が可能となるからである。隣接駐車枠の角部を通る経路上の、駐車枠WK1の端点(例えば、白線Ln1の車両Vc1側の端点)が車体後部の下になる位置s21で中断事象が起きると、その位置では駐車枠WK1の端点を検知できない。この位置では、車両Vc1の後端部分だけが駐車枠線である白線Ln1に重なっているので、駐車枠WK1から遠ざかる方向に車体を移動すれば、駐車枠線である白線Ln1は車体の下から現れる。この場合、中断事象が起きた時の車両Vc1の進行方向は後退方向であり、駐車枠を検知可能にするために車両Vc1が駐車枠WK1から遠ざかる方向は前進方向なので、進行方向が逆になる。つまり、走行中の片方の駆動輪の空転のような、停車を伴わない中断事象が起きた場合、車両Vc1を駐車枠検知に適した位置に移動する前に車両Vc1を停車させる必要がある。
【0084】
具体的には、車両制御装置3は、駐車枠WK1に対する車両Vc1の位置を推測航法により、常時推測しており、車両Vc1の後輪付近だけが駐車枠WK1を隠す位置で中断事象が発生した時には、駐車枠検知に適した位置に移動する方向が駐車枠WK1から遠ざかる方向(この場合、前進方向)であると判定し、その時の進行方向が後退方向であれば、手動制動装置6の制御に強制介入して、自動制動により直ちに車両を停車させる。中断事象が緊急停止などであって、車両が既に停止している場合や、実行中の制動により間もなく停止する場合は、この自動制動のステップを省けば良い。車両制御装置3は、停止した位置から車体を移動させる際、センサ制御装置5が出力する検知情報を確認し、進行方向(つまり、駐車枠WK1から遠ざかる方向)に人物などの障害物が検知されなければ、車体を直進させてよい。車両Vc1が駐車枠WK1から遠ざかってVc1(s22)の位置に達すれば、後輪(ここでは、左後車輪Wh3)が駐車枠WK1の端点(白線Ln1の車両Vc1側の端点)を隠さなくなるので、センサ制御装置5は、カメラ(CaB)により撮像された撮影画像に基づいて駐車枠WK1を検知できる。
【0085】
上述の例において、センサ制御装置5が出力する検知情報を確認した際に、車両を移動させる方向に壁面などの障害物OBS2の検知情報がある場合、車両制御装置3は、舵角をゼロ(直進)に変更せず、中断事象の発生時点の舵角を維持して進行させてもよい。車両Vc1の舵角は障害物OBS2などに車体が接触しない様に設定されているので、車両Vc1は、舵角を維持して遠ざかれば、障害物OBS2との衝突を安全に回避しつつ、後輪(例えば、左後車輪Wh3)が駐車枠WK1の端点(例えば、白線Ln1の車両Vc1側の端点)を隠さなくなる位置s23に達する事が出来る。この位置s23では、カメラCaBにより撮像された撮影画像に基づいて駐車枠WK1を検知できる。
【0086】
(駐車枠検知のユースケース例:車両の前輪付近だけが駐車枠を隠す場合)
図18および図19は、車両Vc1の前輪付近だけが駐車枠WK1,WK2を隠す場合の状況の例を示す図である。図18に示されるように、他車両V2を廻り込んで駐車枠WK1に向かう前進駐車の場合、後輪の車軸中心(具体的には、左後車輪Wh3と右後車輪Wh4の中点)を駐車枠WK1の中心線WKCL1に乗せるため、図18の矢印で示される遷移前の状態を示す図の車両Vc1(位置s31)のように、他車両V2の反対側の駐車枠には他車両が無い事を利用して、前輪(左前車輪Wh1)が前進駐車の進入方向、または他車両V2から遠い側の枠線(白線Ln2)の間口側の端部を踏むように駐車経路を設定する事がある。この位置s31で中断事象が発生した場合には、センサ制御装置5は、駐車枠WK1を検知できない。
【0087】
同様に、図19に示されるように、他車両V2,V3に挟まれる斜め駐車の駐車枠WK2に向かう前進駐車の場合、後輪の車軸中心(具体的には、左後車輪Wh3および右後車輪Wh4の中点)を駐車枠WK2の中心線WKCL2に乗せるため、前進駐車の進入方向から遠い側の枠線の間口側の端部が他車両V2から離れている事を利用して、図19の矢印で示される遷移前の状態を示す図の車両Vc1(位置s33)のように、前輪(右前車輪Wh2)が前進駐車の進入方向から遠い側の枠線(白線Ln2)を踏むように駐車経路を設定する事がある。この位置s33で中断事象が発生した場合にも、センサ制御装置5は、駐車枠WK2を検知できない。
【0088】
図16および図17で示した例と、図18および図19で示した例との違いは、後退駐車と前進駐車との違いであり、中断事象が発生した時点で車体の進行方向の部分が駐車枠の枠線を隠している点は共通している。このように車体の進行方向の限られた部分が駐車枠の枠線を隠している場合、駐車枠検知に適した位置は、駐車枠から遠ざかる方向にある。前進駐車において車両Vc1の前輪付近だけが駐車枠WK1,WK2を隠す場合、車両制御装置3は車両Vc1を後退させて、その駐車枠WK1,WK2から遠ざかる方向に車体を移動すればよい。中断事象が発生した時点での進行方向と、駐車枠検知に適した位置に移動する方向とが逆方向であるので、中断事象が停車を伴わない場合に自動制動を必要とする点も図16および図17で示した例と同じである。駐車枠検知に適した位置への移動を開始する際に、進行方向の障害物の有無を検知し、障害物の有無に応じて舵角を制御する点も同様である。
【0089】
例えば、図18の矢印で示される遷移後の状態を示す図に示されるように、車両制御装置3は、駐車枠検知に適した位置へ車体を移動させる際に進行方向(後方)を検知し、後方に障害物が検知されない場合には、駐車枠WK1から遠ざかるように車体を直進で後退させればよい。これにより、車両Vc1は、直進で後退する事で駐車枠WK1から安全に遠ざかることができ、車両がVc1(位置s32)の位置に達すれば、駐車枠WK1の検知が可能になる。また、図19の矢印で示される遷移後の状態を示す図に示されるように、車両制御装置3は、駐車枠検知に適した位置へ移動させる際に、進行方向(後方)を検知し、右後方に壁面などの障害物OBS2が検知された場合には、中断事象が発生した時点の舵角を維持して駐車枠WK2から遠ざかるように車体を進行(後退)するとよい。車両Vc1は、障害物OBS2に車体が接触しないように舵角が設定されているので、舵角を維持して後退する事により駐車枠WK2から安全に遠ざかることができ、車両がVc1(位置s34)の位置に達すれば、駐車枠WK2の検知が可能になる。
【0090】
(駐車枠検知のユースケース例:車両が概ね駐車枠内で端点が前輪に近い場合)
図20は、車体が概ね駐車枠WK1の中にある状況の例を示す図である。図20の中央の図は、駐車枠WK1を目標駐車枠とする自動駐車(後退駐車)の際、車両Vc1(位置s41)の前輪付近まで車体が駐車枠WK1内に入った時に中断事象が起きた状況を示している。この場合、前輪(この場合、左前車輪Wh1)付近が駐車枠WK1の駐車枠線の端点(白線Ln1の前輪側の端点)を隠す状態になっているので、この位置では駐車枠検知が出来ない。この状態から車両Vc1が舵角ゼロで直進すると、車両Vc1(位置s42)の様に車体が駐車枠線の端点を隠した状態で移動するので、車両Vc1の後端が駐車枠WK1から出るまで、駐車枠線の端点がカメラで捉えられない状態が続く。その間に車両Vc1の車体前端が通路の反対側の端(図示略)に達すると停止を強いられ、駐車枠WK1の端点がセンサ制御装置5により検知されない状態が解消できなくなる。
【0091】
そこで、車体が概ね駐車枠内にある事を条件として、駐車枠線の端点が車両Vc1の前輪(この場合、左前車輪Wh1)付近に重なっている場合、車両制御装置3は、車両Vc1(位置s43)のように、舵角を駐車枠WK1の中心軸WKCL3の方向に切って前進する。これにより、車両Vc1は、比較的短距離の前進移動によって駐車枠線の端点が車体の下から出るので、カメラCaLにより撮像された撮影画像に基づいて駐車枠WK1を迅速に検知できる。中断事象が発生した時点での進行方向と、駐車枠検知に適した位置に移動する方向とが逆方向であるので、中断事象が停車を伴わない場合に自動制動を必要とする。
【0092】
図20の中央の図の位置の場合、車体が概ね駐車枠WK1内にあるので、自動駐車の為の運動を継続させて車両Vc1を駐車枠内に収める事も、駐車枠検知に適した位置に移動する動作として適合する。しかし、中断事象が運転者による急制動であった場合、駐車枠内にソナー等で検知できない障害物(例えば、幼児や小動物)があったり、死角から接近する物(例えば、隣接している他車両V3の後ろから廻り込もうとする歩行者)があったりする可能性があるので、その様な場合には、遠ざかる方向に移動させる方が安全と言える。こうした運転手による介入や、進行方向の障害物検知による自動ブレーキではなくて、スリップの検知の様に停車を伴わない中断事象であった場合は、駐車枠検知に適した位置に移動する動作として目標駐車位置まで移動させてもよい。この場合は、中断事象が発生した時点での進行方向と、駐車枠検知に適した位置に移動する方向とが同じであるので、車両を停止させる必要は無い(停止させても良い)。中断事象があっても目標駐車位置まで移動させた場合、自動駐車の目標位置に達して停車した時に、駐車枠検知を再実行して、車両Vc1と駐車枠WK1の位置関係を評価する。中断事象の影響で、車両Vc1が駐車枠WK1に正しく収まっていない可能性があるので、駐車枠検知の結果、所定の閾値を超えるずれがある場合は、車体の位置を補正する為の経路を計算し、そのための運動を追加で行えばよい。位置ずれが小さければ、そのまま自動駐車を終了しても良いし、位置ずれが大きくても、運転者に位置ずれを報知して、運転者が位置の補正が不要と指示した時は、そのまま自動駐車を終了すれば良い。
【0093】
(駐車枠検知のユースケース例:車両が概ね駐車枠内で端点が後輪に近い場合)
図21および図22の矢印で示される遷移前の状態を示す上側の図は、車体が概ね駐車枠WK1内にあり、駐車枠線の端点が後輪付近と重なる場合の状況の例を示す図である。後退駐車の場合、最後に駐車枠に収まる前輪付近が左右に動きやすいのに対し、前進駐車は最後に駐車枠に収まる後輪付近が左右に動きにくいという違いがある。そのため、図21の矢印で示される遷移前の状態を示す上側の図に示されるような、並列駐車の駐車枠WK1に前進駐車で自動駐車する場合は、後輪の車軸中心(具体的には、左後車輪Wh3と右後車輪Wh4の中点)が駐車枠WK1の手前で駐車枠の中心線WKCL4に乗るように駐車経路を設定する。しかし、スリップなどで駐車経路からずれていると、図21の車両Vc1(位置s51)のように駐車枠WK1の手前側の枠線(白線Ln1)を後輪が踏む事がある。この位置で中断事象があった場合は、駐車枠WK1を検知できない。
【0094】
図22の矢印で示される遷移前の状態を示す上側の図に示されるように、斜めの駐車枠WK2に前進駐車する場合、後輪が駐車枠に入ってから一定距離を移動するので、駐車開始位置から見て手前側の枠線(白線Ln2)の端部を後輪(この場合、左後車輪Wh3)が踏むように駐車経路が設定される事がある。図22のように、車両Vc1(位置s53)の後輪付近が枠線(白線Ln2)と重なっている時に中断事象があった場合、この位置では駐車枠WK1を検知できない。図21および図22の矢印で示される遷移前の状態を示す上側の図のVc1(位置s51)、Vc1(位置s53)の位置から、駐車枠検知に適した位置に移動する目的で、舵角ゼロで直進すれば駐車枠線(白線Ln2)が車体後端部の下から現れるが、移動して手前側の枠線(白線Ln2)が車体後端部の下から現れた時点で、車体前端部がもう一方の駐車枠線(白線Ln1)を覆う位置に達していると、駐車枠WK2を検知できない。
【0095】
そこで、前進駐車で車両が概ね駐車枠内にある場合は、車体と駐車枠線の位置関係に応じて、駐車枠検知に適した位置に移動する為の車体運動の方向を変える。車体と駐車枠線の位置関係は、推測航法による推測値を用いても良いが、中断事象があった時点で駐車枠検知を試行する事により、実測値を得ても良い。中断事象が車両の停止を伴わない場合は、車両を停止させて駐車枠検知を試行しても良いが、車両を停止させずに駐車枠検知を試行しても良い。車両を停止させずに駐車枠検知を行うと、車両を停止させて駐車枠検知した場合よりも位置情報の精度が劣るが、その時点での車体と駐車枠線の位置関係を特定する目的に限れば、位置情報の精度が劣っていても問題ないので、直ちに駐車枠検知を試行すれば良い。車両制御装置3は、駐車開始位置から遠い側の枠線(白線Ln1)を検知して、駐車開始位置から違い側の枠線(白線Ln2)を検知しないとセンサ制御装置5が判定した場合には、図21の矢印で示される遷移後の状態を示す下側の図の様に、検知された枠線(白線Ln2)に近い側の車体前端の角が沿うように舵角を調整して前進させると良い。具体的には、センサ制御装置5は、車両Vc1に対する駐車枠線(白線Ln2)の方向を特定し、車両制御装置3は、センサ制御装置5の特定結果を受けて、舵角を駐車枠線(白線Ln2)と同じ方向に修正して前進する。これにより、車両Vc1の前輪(左前車輪Wh1および右前車輪Wh2)は駐車枠線(白線Ln1と白線Ln2)と平行に移動するので、車体前端部が駐車枠線と重ならない状態を保ったまま、車体が駐車枠内に引き込まれる。その結果、後輪(特に、右後車輪Wh4)は駐車枠WK1の中心線WKCL4の方向に移動するので、両方の枠線(白線Ln1,Ln2)が車体に隠されない状態になり、車両Vc1(位置s52)の位置で駐車枠WK1の検知が可能となる。中断事象が車両の停止を伴う場合、つまり、運転者による制動か自動ブレーキによる緊急制動があった場合は、前進を開始する際に、運転者によるブレーキの解放、またはブレーキペダルの空踏みによる自動ブレーキの解除を待って前進を開始すると良い。図20の後退駐車の場合と異なり、進行方向が運転者の前方であるので、運転者は制動を要した原因を把握し易く、再びリスクが生じた時も直ちにブレーキを踏むことが出来る。
【0096】
図22の矢印で示される遷移後の状態を示す下側の図に示す場合も同様であり、中断事象が起きた時点で駐車枠検知を試行して、一方の枠線(白線Ln1)を検知して他方の枠線(白線Ln2)を検知しない場合には、検知された枠線(白線Ln1)に車体前端が沿うように前進させると、後輪(左後車輪Wh3)は駐車枠WK1の中心軸WKCL5の方向に移動するので、両方の枠線(白線Ln1,Ln2)が車体に隠されない状態になり、車両Vc1(位置s53)の位置で駐車枠WK2の検知が実行可能となる。図21および図22の例で、中断事象が車両の停止を伴わなかった場合に駐車枠検知に適した位置に移動するために、前進駐車であり、かつ、中断事象が発生した時点で車体が概ね目標の駐車枠WK2内に入っている事を条件として、実行していた自動駐車の残りの部分の移動を続けて実行しても良い。この場合、駐車枠検知に適した位置に移動する方向は中断事象が起きた時点の車両の移動方向と同じなので、制動は不要である。自動駐車は目標の駐車枠WK1の中央を終点として駐車経路を設定しているので、実行していた自動駐車を駐車経路の終点まで継続した時の車体の位置は、中断事象が車体位置や車体姿勢に与えた影響が小さければ、概ね目標駐車枠である駐車枠WK1の中央付近になると期待できる。自動駐車が前進駐車である場合、駐車経路の終点まで移動する間、運転者は進行方向を容易に監視できるので、中断事象が車体位置や車体姿勢に与えた影響が大きく、他の車両に接近しすぎるなど何らかの問題がある時は、直ちにブレーキを踏んで自動駐車を中断できる。つまり、リスクと利便性のバランスが後退と前進で異なるので、後退駐車の場合より、前進駐車の場合の方が、駐車経路の終点まで移動する運動を選択し易くしても良い。具体的には、車体が概ね目標の駐車枠内に入っていると判定する閾値を、前進駐車の場合と後退駐車の場合に分けて設定し、前進駐車の場合の閾値を後退駐車の場合の閾値よりも低く設定しても良い。中断事象が車両の停止を伴わなかった場合に自動駐車を継続して行うと、全体としてスムーズな動作になる効果が得られるが、中断事象が車両の停止を伴う場合も、駐車枠検知に適した位置に移動する運動として、実行していた自動駐車の残りの部分の移動を続けて実行しても良い。自動駐車の駐車経路の終点で車両を停止させた後に駐車枠検知を試行し、車体と駐車枠線が重なっている部分があれば、駐車枠検知に適した位置に移動する運動を追加して行っても良いし、車両Vc1の車体が概ね目標の駐車枠WK1の中央付近に収まっていれば、その時点で自動駐車の完了を運転者に報知して良い。
【0097】
(駐車枠検知のユースケース例:前輪および後輪が駐車枠を隠す場合)
図23図24および図25は、前輪および後輪の両方が駐車枠を隠す場合の状況例を示す図である。図23図24および図25のそれぞれに示されるように、車両Vc1が他車両V2,V3が並列で駐車している間の駐車枠WK1,WK2への自動駐車中に中断事象が起きた時に、車体が両方の枠線(白線Ln1,Ln2)と重なる位置s61になる事がある。
【0098】
図23の例では、車体の左前車輪Wh1の付近が白線Ln2の一部を隠し、車体の右後車輪Wh4の付近が白線Ln1の一部を隠している状況である。このような状況である事は、推測航法による車両位置で判定しても良いし、駐車枠検知の試行によって判定しても良い。車両制御装置3は、前進駐車中の車両Vc1の車体が両方の枠線(白線Ln1,Ln2)を隠している状況である事がセンサ制御装置5により判定された場合、車体前端部が駐車枠WK1の中心軸WKCL6の方向に移動するように舵角を最大値に設定して、駐車枠検知を実行しつつ車体を移動させる。これにより、車両Vc1(位置s62)の位置に車体が移動すると、車体前端部が駐車枠線(白線Ln2)の上から外れ、駐車枠線(白線Ln2)の全体を検知できるようになる。すると、図21で説明した、後輪付近だけが駐車枠線と重なっている状況になるので、車両Vc1(位置s62)の位置で前輪が駐車枠線と並行に移動する様に舵角を変更した上で、前進する運動を更に行う事により、車体がいずれの駐車枠線とも重ならない状態を作れる。
【0099】
図24の例では、右前車輪Wh2付近の車体が駐車枠線(白線Ln1)の一部を隠し、左後車輪Wh3付近の車体が駐車枠線(白線Ln2)の一部を隠している。そこで、車両制御装置3は、車体前端が駐車枠WK2の中心軸WKCL7の方向に移動するように舵角を最大値に設定して車体を前進させる。これにより、車両がVc1(s64)の位置に移動すると、車体前端部が駐車枠線(白線Ln1)の上から外れる。以後、前輪が駐車枠線と並行に移動する様に舵角を変更した上で、前進する運動を更に行う事により、車体が駐車枠線と重ならない状態を作れる事は、図23の場合と同様である。または、図22の例で説明したように、駐車枠検知に適した位置に移動するために、前進駐車であり、かつ、中断事象が発生した時点で車体が概ね目標の駐車枠WK2内に入っている事を条件として、実行していた自動駐車の残りの部分の移動を続けて実行しても良い。
【0100】
図25の例では、左前車輪Wh1付近の車体が駐車枠線(白線Ln1)の一部を隠し、右後車輪Wh4付近の車体が駐車枠線(白線Ln2)の一部を隠している状況である。後退駐車の駐車経路は、車両Vc1の後輪の中点が、比較的早期に駐車枠の中心線WKCL8の上に移動する様に設定されるので、車体が概ね目標の駐車枠WK1の中に入っている時点で車体の後部が駐車枠線と重なっている状況は、通常の車体姿勢からの偏差が大きいと言える。車両制御装置3は、後退駐車中の車両Vc1の車体が両方の駐車枠線(白線Ln1,Ln2)の両方と重なっている状況である事がセンサ制御装置5により判定された場合、車体前端部が駐車枠WK1の中心線WKCL8の方向に移動するように舵角を最大値に設定して車体を移動させる。これにより、車両がVc1(s66)の位置に移動すると、車体前端部が駐車枠WK1の上から外れ、は駐車枠線(白線Ln1)検知が可能となる。以後、前輪が駐車枠線と並行に移動する様に前進する運動を更に行う事により、車体が駐車枠線と重ならない状態を作れる。
【0101】
(駐車枠検知のユースケース例:駐車枠検知に最適な方向に移動できない場合)
図26は、駐車枠検知に最適な方向に移動できない場合の状況例を示す図である。図26の中央の図では、白線Ln1,Ln2により定まる駐車枠への自動駐車を行っていた車両Vc1が、位置s71で中断事象に伴って停止している。この位置で駐車枠検知を試行して成功しなかった場合、より少ない車体移動量で駐車枠検知ができる状態にすれば、より早く自動駐車を再開できる。つまり、車両Vc1が自動駐車中に中断事象があって停止した時点で駐車枠検知ができない場合、車両制御装置3は、最短の移動量(つまり、最短時間)で駐車枠検知ができる方向に車体を移動させると良い。
【0102】
図26中央の図の場合は、図21で説明したように、前進駐車であって車体が概ね駐車枠の中に納まっていて、車体の後輪部分だけが駐車枠線に重なっている状況なので、図26の場合と同様の方法で移動することを先ず評価すると良い。具体的には、車両Vc1の前輪(左前車輪Wh1)が枠線(白線Ln2)に沿って移動するように車両Vc1が前進すると、後輪(右後車輪Wh4)が枠線(白線Ln1)の上から外れると期待される。但し、このように移動すると、車両がVc1(位置s72)の位置に進んだ時に、障害物OBS3に接触する可能性が高まる。
【0103】
そこで、車両制御装置3は、障害物OBS3が検知された場合、図26のVc1(位置s73)の様に、検知された障害物OBS3を回避する方向に舵角を増やして前進しても良い。但し、車体前端部が駐車枠線(白線Ln1)に近づく方向に舵角を増して移動させると、車両の前進によって後輪(右後車輪Wh4)を枠線(白線Ln1)から離す方向の移動量が減るので、移動後の車両Vc1(位置s73)の位置で、駐車枠検知ができない可能性もある。
【0104】
別の方法として、車両制御装置3は、図26の車両Vc1(位置s74)のように、駐車枠から遠ざかる方向に車両Vc1を移動させても良い。この時、車両制御装置3は、中断事象の発生時の舵角を維持して後退しても良いし、車体の左前の角部が右側の枠線(白線Ln2)に沿って移動するように舵角を制御しても良い。センサ制御装置5により右側の枠線(白線Ln2)が検知可能であれば、右に駐車された他車両V3は右側の枠線(白線Ln2)の上にはみ出していないと期待できる。よって、車両制御装置3は、車両Vc1の車体が右側の枠線(白線Ln2)の上に出ないように車体の移動を制御すれば、駐車中の他車両V3との接触を予防できる。位置s73の位置に移動すれば移動時間が短く、位置s74の位置に移動すると移動時間が長くなるが、移動時間が短い方を選択すると、必要な駐車枠検知ができない可能性がある。そこで、車両制御装置3は、移動時間が短い方(即ち、位置s73への移動)の可否を先ず評価して、必要な駐車枠検知ができないと予測した場合に、移動時間が長いが確実な方(即ち、位置s74)への移動を選択する様にしても良い。また、車両制御装置3では回避手段を評価せず、位置s73に移動する回避手段と、位置s74に移動する回避手段の両方を、HMI装置4を介して運転者に提示し、運転者が選択した方を実行する様にしても良い。
【0105】
(目標駐車位置に近づける制御と目標駐車位置から遠ざける制御の選択)
図27は、駐車枠検知に最適な移動方向を判定する場合の状況例を示す図である。図27は、他車両V3に隣接する駐車枠WK1を目標駐車位置として自動駐車する車両Vc1の位置の変化を示している。自動駐車の中断事象があった時に駐車枠検知に適した位置に移動させる制御として、目標駐車位置に近づける制御と、目標駐車位置から遠ざける制御との、いずれを選択するかについて、車両制御装置3は、中断事象があった時点での車両Vc1の状況に応じて判定する。車両Vc1の状況とは、具体的には、駐車動作のステージ(進捗)、駐車枠に対する車両の位置と姿勢と進行方向(前進か後退か)と速度、中断事象の原因と停車を伴うか否か、の情報を含み、前記の情報から評価した、駐車枠検知が可能か、駐車枠までの距離が駐車枠検知に適する範囲内か、の評価結果を車両Vc1の状況を構成する情報に加えても良い。また、センサ制御装置5により駐車枠検知を試行して、駐車枠検知の成否の情報と、成功した時は駐車枠に対する車両の位置と姿勢の実測値を得ても良いし、駐車枠検知の試行をせずに、推測航法による駐車枠に対する車両の位置と姿勢の推測値を用いても良い。また、障害物検知などにより取得した、車両周辺の状況も、車両Vc1の状況に加えて進行方向を判定しても良い。但し、駐車枠検知に適する位置の判定は、主として駐車動作のステージ(進捗)の判定結果に基づいて行う。その他の状況は、ステージの判定に反映したり、例外処理の要否の判断や、舵角制御に反映したりする。つまり、センサ制御装置5(状況判定手段の一例)の、状況判定の結果として主たるものは、駐車動作のステージ(進捗)の判定結果であり、駐車枠検知に適する位置の判定結果は、原則としてステージの判定結果に基づく。駐車枠検知に適する位置の判定結果がステージの判定結果に基づかない場合は、例外処理が必要な場合であり、例えば、ステージの判定結果に基づいて駐車枠検知に適する位置を選択すると、その位置の方向にソナーが検知している障害物があって、これに衝突する恐れがある場合が該当する。例外処理では、障害物を避ける様に舵角を変更したり、進行方向を逆にして障害物の方向に進まない様にしたりして衝突を回避する。
【0106】
駐車動作のステージ(進捗)は、一つの尺度により評価しても良いし、複数の尺度の組み合わせにより評価しても良い。例えば後退駐車の場合は、駐車動作としてのステージが、自動駐車開始位置から切返し位置までのステージか、切返し位置から目標駐車位置までのステージか、は、車両の進行方向が前進か後退かで判定できる。目標駐車位置への移動開始後の状況(ステージ)を細分化するには、別の尺度による評価が必要である。ここまで、目標駐車位置への移動開始後の状況の典型として、駐車枠まで遠い位置である場合と、駐車枠に車体の一部だけ重なっている場合と、車体が概ね駐車枠内にある場合とを取り上げて、駐車枠検知に適した位置に移動する制御を説明してきた。これは、駐車枠に車体が重ならない場合は、駐車枠までの距離に応じて評価し、駐車枠に車体が重なる場合は、車体が概ね駐車枠内にあるか否かで評価する、と言い換えても良い。車体が概ね駐車枠内にあるか否かを判定する際は、車体の底面積を100として、その面積のうち駐車枠と重なる部分の割合を数値化した重複率を尺度として用いても良い。より簡易な方式として、面積の代わりに距離を評価しても良い。例えば、自動駐車の経路のうち、駐車枠内にある区間の長さを100として、その駐車枠内にある区間の車両が進んだ部分の割合に応じて重複率を決めても良い。駐車動作のステージは、尺度に応じた閾値により複数のステージに分割して良い。例えば、重複率閾値を50%として、重複率が重複率閾値(50%)未満である場合と、重複率が重複率閾値(50%)以上の場合とに分けてステージを判定し、ステージの判定結果に応じて駐車枠検知に適した位置に移動する方向を決定しても良い。つまり、車体が概ね駐車枠内にあると判定する条件を、重複率が重複率閾値以上である時としてよい。後退駐車のステージを、予備動作中、序盤、中盤、終盤の様な呼称を付けて分類し、呼称を尺度と対応付けても良い。呼称と尺度の対応付けは任意であり、切返しのある後退駐車の場合には切返し位置に達する迄を予備動作中とし、目標駐車位置への移動を開始して以降を、重複率が0%なら序盤、重複率が0%超、50%未満なら中盤、重複率が50%超なら終盤の様に対応付けても良い。これを前進駐車に適用する場合、最初から目標駐車位置へ移動する前進駐車のステージは、序盤、中盤、終盤の3ステージに分類される。
【0107】
駐車動作のステージ(進捗)を評価する別の尺度として、例えば、駐車枠WK1の中心線WKCL10(具体的には、駐車枠WK1の長辺に平行で駐車枠WK1の二つの短辺の中点を通る直線)と車体の前後方向の中心線AX1の成す角度である車体角θを用いて評価しても良い。例えば、後退駐車であって車体角θが30度以内なら自動駐車の終盤であると判定し、終盤における駐車枠検知に適した位置の方向である、目標駐車位置の方向を選択して車両を移動させても良い。また、車体の位置を評価する際の評価対象は、車体の中心の位置に限られず、車載カメラの位置を評価対象としても良い。更に、車体の位置を評価する際の基準は駐車枠WK1に限られず、駐車枠WK1を長辺方向に延長した領域ExWK1(言い換えると、駐車枠線に挟まれる領域)を基準にしても良い。以下、駐車枠線に挟まれる領域とは、対を成す駐車枠線(駐車枠のWK1の長辺)を通る二本の直線の間の領域を指すものとする。ステージを評価する尺度を車体角θとする場合に限らず、重複率とする場合においても、車両の目標駐車位置の方向に設けられたカメラが駐車枠線に挟まれる領域にない事を条件として序盤と判定しても良い。つまり、序盤と中盤を判定する尺度や閾値は、中盤と終盤を判定する尺度や閾値と異ならせても良い。前述の通り、ステージの判定は、目標駐車位置に近づける制御と、目標駐車位置から遠ざける制御との選択に紐づけられているので、目標駐車位置に近づけるか遠ざけるかを、複数の尺度や閾値の組合せで判定しても良い、と言い換えることが出来る。
【0108】
目標駐車位置への移動を開始していて、車両Vc1が概ね駐車枠WK1の中にある時に中断事象が起きた場合は、ステージが終盤であると判定して良い。終盤では、目標駐車位置の方向に駐車枠検知に適した位置があるので、車両制御装置3は、駐車枠WK1から外れている部分が駐車枠WK1の内側に収まる様に車体を移動させる事により、自車体や他車両で遮られずに駐車枠WK1を検知可能な状態にすることが出来る。この時、障害物の検知情報などを更に評価し、目標駐車位置の方向に障害物などがあって目標駐車位置に近づく方向に移動する事ができない場合は、車両制御装置3は、駐車枠WK1の中心線WKCL10の方向に車体が移動する様に舵角を変更したり、目標駐車位置から遠ざかる方向に車体を移動させたりする事によって、その駐車枠線に挟まれる領域ExWK1に車体を収めても良い。また、中断事象が起きた時が中盤であり、車両Vc1の車体の一部しか駐車枠WK1に入っていない場合、車両制御装置3は、目標駐車位置から遠ざかる方向に車体を移動させる。この移動により、車両Vc1と駐車枠WK1との重なりが無くなれば自車体で遮られずに駐車枠WK1を検知できる。中断事象が起きた時が序盤であり、車両Vc1の車体が駐車枠WK1に全く入っていない場合、カメラと駐車枠WK1の距離を評価して距離が閾値を超える場合、および、駐車枠検知を試行して駐車枠検知が成功しない場合は、目標駐車位置の方向に駐車枠検知に適した位置があるので、その方向に車両を移動させればよい。
【0109】
駐車枠検知に最適な方向の判定の尺度あるいは閾値は、自動駐車の種別が前進駐車か後退駐車か、によって異ならせても良い。例えば、前進駐車では、車両Vc1の車体が駐車枠WK1に入る前に車体の向きを駐車枠WK1の向きに近づけるのに対し、後退駐車では車体の後端が駐車枠WK1に入ってから車体角が大きく変化する。また、前進駐車では駐車枠が斜めに設定されている事があり、斜めの駐車枠の場合は車体角の変化量が小さい。つまり、前進駐車のステージが中盤か終盤かを、車体角によって判定する事は難しい。そこで、駐車のステージが中盤か終盤かを判定する尺度は、前進駐車では駐車枠WK1と車両Vc1の車体との底面積の重なりを尺度とし、後退駐車では駐車枠WK1の中心線WKCL10と車体の中心線AX1との成す角度である車体角θを尺度としても良い。
【0110】
また、後退駐車では目標駐車位置の方向が運転者の死角となる方向なので、移動速度を抑える必要があるのに対し、前進駐車では目標駐車位置の方向を運転者が直接、目視で監視できるので、駐車枠検知に適した位置への移動が前進であれば、後退する場合よりも速い速度で移動しても良い。そこで、駐車枠WK1と車両Vc1の車体との底面が重なる割合を尺度として中盤か終盤かを判定する際に、前進駐車の場合は閾値を50%よりも低くしても良い。一方、後退駐車の場合は、駐車枠から出る方向が前進となるので、閾値を50%より高くしても良い。つまり、進行方向が前進である時は、進行方向が後退である時よりも、進行方向が駐車枠検知に適した位置に近づく方向に当たる判定が出やすい様に調整すると良い。更に、中断事象が車両の停止を伴うか否かによって閾値を変えても良い。中断事象が車両の停止を伴わず、車両が進行している場合、序盤、または終盤と判定した場合は進行方向が駐車枠検知に適した位置に近づく方向に当たるので、車両を停止させる必要が無いのに対し、中盤と判定した場合には、進行方向が駐車枠検知に適した位置から遠ざかる方向に当たるので、移動開始の前に車両を停止させる強制制動が必要である。この強制制動は事前に運転者に予告する必要があり、実施に時間を要するので、時間を尺度として評価すると、進行方向と逆の方向を選択すると車両を停止させる事になるのでペナルティ(時間のロス)が大きくなる、と言える。そこで、中盤と終盤を判別する閾値を停車の有無に応じて補正し、中断事象が車両の停止を伴わない場合には、中断事象に伴って車両が停止する場合よりも、終盤と判定し易くする(重なりの割合で判定する場合、閾値を低くする)事により、時間の消費を抑制しても良い。つまり、中断事象が車両の停止を伴わない場合には、中断事象が車両の停止を伴う場合よりも、進行方向が駐車枠検知に適した位置に近づく方向に当たる状況判定が出やすい様に、判定条件を調整すると良い。
【0111】
また、障害物検知などにより取得した、車両周辺の状況も、車両Vc1の状況に加えて進行方向を判定しても良い。中断事象が自動駐車の終盤で発生した場合、駐車枠検知に適した位置への移動方向は駐車目標位置の方向であるが、図26を用いて説明した様に、駐車枠WK1中に障害物が存在する事がセンサ制御装置5により判定された場合には、その方向を選択できない事がある。車両制御装置3は、障害物の位置を回避する変更を加えて目標駐車位置に近づく移動をした時に、駐車枠検知に適した位置への移動になるか、を評価しても良いし、回避の必要な障害物がある時には目標駐車位置に近づく選択肢を予め除外し、必ず駐車枠WK1から遠ざかる方向に移動する制御としても良い。
【0112】
(舵角の制御の方策)
実施の形態1に係る車両Vc1では、自動駐車中に中断事象があった時、駐車枠検知に適した位置へ移動する際の舵角制御として、車両制御装置3は、例えば、状況の判定に従って、次の方策のいずれかを採用して車体を移動させる。
【0113】
第1の方策として、車両制御装置3は、舵角をゼロに保って直進(つまり、舵角をゼロにして真直ぐ前進あるいは、真直ぐ後退)すれば良い。これにより、車両Vc1は、内輪差によって車体の側面が他車両もしくは障害物との接触する事を予防できる。車両Vc1は、前後方向を検知範囲とするソナーを備えていて、前後方向の障害物を検知した時には自動ブレーキが作動するので、直進であれば、比較的長い距離でも安全に移動できる。例えば、自動駐車の折り返し地点付近で中断事象が発生し、目標駐車位置である駐車枠から遠くに位置しているために駐車枠検知に適さない場合には、舵角をゼロにして駐車枠の方向に直進する事により安全に移動できる。
【0114】
第2の方策として、車両制御装置3は、中断事象があった時の舵角を維持して移動すれば良い。目標駐車位置に接近する際の舵角は、駐車中の他車両との接触あるいは隣接する駐車枠への進入を回避するように設定されているので、中断事象があった時の舵角を維持して移動する事により、安全に駐車枠検知に適した位置へ移動できると期待できる。または、中断事象があった時の舵角を維持し続けるのではなく、中断された自動駐車の駐車経路に沿って移動する様に舵角を制御しても良い。例えば、中断事象があった時の舵角を徐々にゼロに近づけて、目標駐車位置に達した時に操舵輪が真直ぐになる様にする制御を予定していたのであれば、予定していた通りに制御した方が、予定していた駐車経路に沿う移動となるので、より安全であり、かつ好適である。このような中断事象があった時の舵角を維持する制御や、予定していた駐車経路に沿う舵角制御をする方策は、移動距離が比較的短い、中盤から終盤に適している。
【0115】
第3の方策として、車両制御装置3は、進行方向に障害物を検知した事がセンサ制御装置5により判定された場合に、舵角の制御を動的に変えても良い。例えば、車両制御装置3は、センサ制御装置5により進行方向に障害物が検知されなければ舵角ゼロで車両Vc1を直進させ、センサ制御装置5により進行方向に障害物が検知された場合には自動駐車を中断した時の舵角を維持して車両Vc1を移動させても良い。また、車両制御装置3は、センサ制御装置5により検知された障害物との距離に応じて、車両Vc1の舵角を増して障害物への接近を抑えるようにしても良い。このように、進行方向における障害物の有無に応じて舵角を動的に変更する事により、安全に駐車枠検知に適した位置へ移動できる。
【0116】
第4の方策として、車両制御装置3は、中断事象が発生した時にセンサ制御装置5によって駐車枠検知を試行し、駐車枠を構成する一対の駐車枠線の一方が検知されたが、他方が車両Vc11の後輪付近で隠されている、と判定された場合、検知された側の駐車枠線と並行に前輪または車体前端が移動する様に、舵角(操舵輪の方向)を駐車枠線の方向に合わせても良い。これは、車体が駐車枠線を越えて移動すると、隣接して駐車している他車両がある時に接触する可能性が高いからである。したがって、車両Vc1は、検知された側の駐車枠線(つまり、車体と交差していない駐車枠線)と並行に車体が移動するように舵角を制御すれば、より安全に駐車枠検知に適した位置へ移動できる。この方策は、車体が概ね駐車枠線に挟まれる領域に収まっている状況、つまり、終盤に適している。
【0117】
第5の方策として、車両制御装置3は、中断事象が発生した時に駐車枠検知を試行し、駐車枠を構成する一対の駐車枠線の一方が車両Vc1の前輪付近で隠されているとセンサ制御装置により判定された場合には、車体前端が駐車枠の中心軸に接近するよう舵角を制御すれば良い。この時、車両制御装置3は、舵角を最大値に設定する事により、駐車枠検知を可能とするための移動距離を最小にできる。この方策は、後退駐車の終盤に適する。
【0118】
第6の方策として、車両制御装置3は、中断事象が発生した時に駐車枠検知を試行し、駐車枠を構成する一対の駐車枠線の一方が車両Vc1の前輪付近で隠され、かつ、他方の駐車枠線が車両Vc1の後輪付近で隠されている場合、車体前端が駐車枠の中心軸に接近するよう舵角を制御して、駐車枠線の一方が車両Vc1の前輪付近で隠されている状況を解消すればよい。この方策を用いて車両を移動すれば、駐車枠線の一方が検知可能で、他方が車両Vc1の後輪付近で隠されている状態になる。ここで、第4の方策を続けて用い、検知された枠線に前輪あるいは車体前端が沿うように車両を移動させれば、一方の駐車枠線が検知可能である状態を保ったまま、他方の駐車枠線が後輪付近で隠されている状況を解消できる。この方策は、駐車枠に対して車両の姿勢が斜めになっている中盤に適する。
【0119】
以下、障害物を検知した時の制御について、図28図29を用いて説明する。図28は、一時的な障害物OBS4を検知した場合の状況の例を示す図である。図29は、固定的な障害物OBS5を検知した場合の状況の例を示す図である。
【0120】
図28では、駐車枠WK1への自動駐車を中断させた事象が、歩行者などの一時的な障害物OBS4を検知した事による緊急制動であったとする。一時的な障害物である事は、検知物の座標が移動する事により判定できる。更に、カメラの撮影画像の分析を加えて判定しても良い。この場合、車両制御装置3は、緊急制動の際にスリップが発生していなければ、所定の中断事象に当たらないと判定し、一時的な障害物OBS4が検知されなくなるまで待って、自動駐車を再実行しても良い。緊急制動の際にスリップが発生していた場合は、駐車枠検知の再実行が必要であるので、所定の中断事象に当たると判定する。図28に示される車両の位置は、駐車枠検知に適した位置であるので、駐車枠検知に適した位置に移動する必要は無い。その場で駐車枠検知を試行した時に、一時的な障害物OBS4によって駐車枠線が遮蔽されて、駐車枠検知が成功しない事があるが、障害物OBS4が一時的な障害物である事が分かっているので、障害物OBS4が検知されなくなるのを待って駐車枠検知の再実行を行っても良いし、駐車枠検知に成功するまで試行を繰り返しても良い。駐車枠検知が成功して推測航法による位置と姿勢の推定値を駐車枠検知による実測値で更新すれば、安全に自動駐車を再開できる。
【0121】
図29では、自動駐車の途中でセンサ制御装置5が固定的な障害物を検知し、自動ブレーキで車両を停止させており、一対の駐車枠線である白線Ln1,Ln2のうち一方(例えば、Ln2)上に固定的な障害物OBS5が有る。固定的な障害物である事は、検知物の座標が変化しない事により判定できる。更に、カメラの撮影画像の分析を加えて動物でないと判定しても良い。この場合、車両Vc1が中断された(白線Ln1,Ln2により定まる駐車枠を目標駐車位置としている)自動駐車を続行しようとしても、自動制動装置(自動ブレーキ)が再び作動して自動駐車が中断される。そこで、駐車枠線で示される駐車枠とは異なる位置に、目標駐車枠(仮想の駐車枠)を設定する必要がある。
【0122】
例えば、車両制御装置3は、障害物OBS5が置かれていない枠線(例えば、白線Ln1)の位置と障害物OBS5との位置関係に基づいて、障害物OBS5を回避するように目標駐車枠である駐車枠WK3(仮想の駐車枠)を設定する。その上で、HMI装置4を介して車両Vc1の運転者に駐車枠WK3を提示し、その駐車枠への自動駐車に安全性等の問題が無いか確認させる。具体的には、センサ制御装置5は、車両Vc1に搭載されたカメラ(例えば、カメラCaFとカメラCaR)により撮像された撮影画像から障害物OBS5の位置を認識し、車両制御装置3が、その障害物OBS5と干渉(例えば、衝突)しない位置に目標駐車枠である駐車枠WK3を設定する。更に、HMI装置4を介して、撮影画像、または撮影画像を俯瞰図に変換した画像の上に、仮想の駐車枠WK3を重畳させた表示画像を生成して運転者に提示し、目標駐車位置に問題が無いか、YES/NOで回答を求める。また、別の手段として、運転者に目標駐車枠である駐車枠WK3を設定させても良い。例えば、俯瞰画の上に自車両を表すアイコンを重畳した表示画像を生成して運転者に提示し、運転者の操作によりアイコンが置かれた位置を目標駐車位置(目標駐車枠)としても良い。いずれかの手段により目標駐車枠である駐車枠WK3(仮想の駐車枠)が運転者の同意のもとに設定された場合、車両制御装置3は目標駐車枠である駐車枠WK3を目標駐車位置とする新たな自動駐車を開始できる。
【0123】
(勾配がある場合の再試行の制御)
図30は、走路に勾配が無く駐車枠WK1に勾配がある場合の状況例を示す図である。狭小な宅地では、住宅と道路(走路)の間を駐車場とする事がある。住宅の土台は浸水を予防する為に道路より高くする事が多く、道路との間の駐車場をスロープにして高低差を調整した結果、図30に示されるように、自動駐車の目標駐車位置である駐車枠WK1を含む部分SLP1が道路SLP0と勾配が異なっている事がある。駐車枠WK1は、駐車中の他車両V3に隣接する駐車枠であって、駐車枠線(白線Ln1,Ln2)により定められる。駐車枠検知において駐車枠線(白線Ln1,Ln2)の位置を特定する時、車両Vc1が位置する路面と同一平面上に駐車枠線がある事を前提として座標を計算するので、勾配がある場合に計算された座標は、実際の座標からずれる。すると、検知した駐車枠の位置が実際の駐車枠の位置とずれているため、駐車枠WK1に駐車する為の理想的な駐車経路と、車両Vc1が通過する実際の経路との相違(ずれ)が生じる。また、駐車経路自体も、車両Vc1が位置する路面と同一平面上を走行する事を前提に設定されているので、車両Vc1が通過する経路は設定された駐車経路からずれる。その結果、駐車中の他車両V3に接近するなどして自動制動(自動ブレーキの作動)が起きる事がある。このずれは、駐車枠を検知した時の車両の傾きと、駐車枠がある位置の傾きの差が大きいほど大きくなる。
【0124】
例えば、図30に示されるように、走路の部分である道路SLP0に勾配が無く駐車枠WK1を含む部分SLP1に上り勾配がある場合、走路の部分である道路SLP0に車両Vc1を停止させて駐車枠検知した時の、車両Vc1(道路SLP0)の傾きと駐車枠WK1を含む部分SLP1の傾きの差を100とすると、車体の半分が上り勾配に乗って傾いた状態で駐車枠WK1を検知した時の、車両と駐車枠傾きの差は、半分の50になる。このため、勾配が実質的に半分になった状態で計算した駐車経路と理想的な駐車経路との差(ずれ)は、走路上で経路計算した場合の半分になる、と期待できる。つまり、目標駐車位置がスロープ上にある自動駐車が途中で中断した場合、車両制御装置3は、駐車枠WK1の検知に必要な最小限の距離だけ戻るように車体を移動させ、駐車枠WK1を再検知した時に車体の半分以上が上り勾配に乗っていれば、その位置で再計算した駐車経路と理想的な駐車経路との差は、最初の経路計算の場合の半分以下になるので、よりズレが少ない状態で自動駐車を再実行できると期待できる。また、この効果を利用するために、自動駐車の開始後の車体の傾斜角の変化量が閾値を超えた事を、所定の中断事象と見なして車両を一時停止させ、駐車枠検知と駐車経路計算を再実行してから自動駐車を再開させる事により、より正確に、より安全に駐車枠に収めてもよい。加速度センサは重力加速度を検知しており、重力加速度の方向を特定する事により車体の傾斜角を算出できる。
【0125】
次に、実施の形態1に係る駐車支援装置10による前進駐車の自動駐車時の動作手順について、図31および図32を参照して説明する。図31は、前進駐車の状況の例を示す図である。図32は、前進駐車によって自動駐車する動作手順例を示すフローチャートである。図32のフローチャートの説明において、前進駐車の場合には自動駐車開始位置と同義である最終接近開始位置に近い側の枠線(例えば、図31の白線Ln2)の延長線を敷居ラインTHL1と定義し、駐車枠WK2の中心線WKCL11(具体的には、平行四辺形状の駐車枠WK2の長辺に平行であってその短辺の中点を通る線)と車体の中心線AX1との成す角度を車体角θと定義する。
【0126】
以下、実施の形態1に係る車両Vc1あるいは駐車支援装置10の動作に関して適宜、図31を参照して説明する。また、図31では、車両Vc1が駐車中の他車両V2,V3の間に設けられ、駐車枠線である白線Ln1,Ln2を長辺とする駐車枠WK2に前進駐車する例が示されている。
【0127】
駐車場内で車両Vc1が停止した時または停止する前に、センサ制御装置5が白線Ln1,Ln2、および駐車枠WK2を検知し、更に、その駐車場内での車両Vc1の走路に対する駐車枠WK2の角度が、斜め駐車判定閾値(例えば、110度)以上であると判定している場合、車両Vc1が停止した状態で運転者が自動運転を指示した時に、車両制御装置3は前進駐車を選択する。前進駐車では、車両Vc1は、目標とする駐車枠WK2の手前から駐車枠WK2に直接進入するので、後退駐車のように前進から後進に転じる折り返し動作を行わない。つまり、運転者が自動運転を指示した時の停止位置が最終接近開始位置になる。
【0128】
駐車枠WK2への最終接近を開始した後に中断事象があった場合、図32に示されるフローが開始される。このフローは、例えば、車両制御装置3による自動制動装置(自動ブレーキ)の作動、運転者のブレーキペダルを踏み込む操作(手動制動)により車両Vc1が停止した時、車輪のスリップがセンサ制御装置5により検知された事を条件として車両制御装置3が自動制動装置(自動ブレーキ)を作動させた時、などに開始される。つまり、中断事象が車両Vc1の停止を伴わないケースを除外して説明しており、図32のフローの初期状態として、車両Vc1は停止している。また、推測航法に伴う誤差があると想定されるものの、駐車枠線(白線Ln1,Ln2)および駐車枠WK2に対する車両Vc1の位置および姿勢の各推測値が保持されており、駐車枠検知の試行があった時に、駐車枠検知による測定値によって、各推測値を更新する事が可能とする。
【0129】
また、このフローは、車両Vc1が停止した時点で直ちに開始する必要はない。例えば、ソナーFL,FR,FLC,FRC,BL,BR,BLC,BRCのうち少なくとも1つが、車両Vc1の進行方向に歩行者などの一時的な障害物を検知した事で、自動制動装置(自動ブレーキ)が作動した場合には、車両制御装置3は、進行方向に歩行者などの一時的な障害物が検知されなくなってからフローを開始すると良い。また、フローの開始により車両Vc1が移動する事があるので、このフローを開始する前に、車両制御装置3が、HMI装置4を介して運転者に移動する事を報知したり、移動について承認を求めたりするよう、任意の動作やステップをフローに追加しても良い。
【0130】
前進駐車の説明に関して、前進駐車動作のステージ(進捗)を序盤、中盤、終盤の3ステージに区分し、中断事象があって前進駐車が中断された時点でのステージに応じて車両Vc1の制御方法を選択する手順を説明する。
【0131】
序盤は、最終接近開始位置で発進してから車両Vc1のフロントカメラ(具体的には、カメラCaF)が敷居ラインTHL1に達しない間、とする。敷居ラインTHL1は、上述したように、最終接近開始位置(言い換えると、自動駐車開始位置)に近い側の枠線(例えば、白線Ln2)の延長線であって、駐車枠を構成する駐車枠線に挟まれる領域の境界線でもある。フロントカメラは目標駐車位置の方向に設けられたカメラであり、駐車枠検知に適した位置は駐車枠線に挟まれる領域の中であるので、目標駐車位置の方向に設けられたカメラが駐車枠線に挟まれる領域になければ序盤であって、序盤では車両Vc1を駐車枠線に挟まれる領域に近づける制御を行う、と言い換えることが出来る。
【0132】
図32において、車両Vc1のフロントカメラ(カメラCaF)が敷居ラインTH1(駐車枠線である白線Ln2を延長した線)を越えていないと判定した場合(St1、YES)、自動駐車のステージは序盤であり、車両Vc1は駐車枠WK2の検知に適した位置にないと判定する。そこで、車両制御装置3は、駐車枠WK2の検知に適した位置への移動として、舵角をゼロに設定して前進する(St2)。なお、序盤に自動駐車が中断事象のために中断した場合の舵角として、車両制御装置3は、舵角をゼロに設定するのではなく、中断時の舵角を維持して前進してもよい。例えば、斜め駐車枠に前進駐車する場合の序盤では、車両制御装置3は、一対の枠線(例えば、白線Ln1,Ln2)に挟まれる領域に車体の後部が入るように直進または小さい舵角で車両Vc1を前進させるので、舵角をゼロに設定しても舵角を中断時の舵角に維持した場合の軌道と大きく違わない(図31参照)。
【0133】
序盤に自動駐車が中断された場合は、車両制御装置3は、車体を前進させてフロントカメラ(カメラCaF)が枠線(白線Ln2)の延長線上に達した時点で、駐車枠検知を開始させる(St3)。ここで説明している車両Vc1のフロントカメラ(カメラCaF)の位置は、推測航法による推測位置であり、駐車枠検知を開始した時点でフロントカメラ(カメラCaF)が枠線(白線Ln1,Ln2)の延長線上に位置しない事もある。
【0134】
そこで、実施の形態1では、敷居ラインTHL1を、例えば枠線(白線Ln2)の50cm手前(つまり、自動駐車開始位置寄りに)設定しても良い。その敷居ラインTHL1を基準として駐車枠検知を開始するようにすれば、枠線(白線Ln2)の延長線の手前で駐車枠検知を開始するので、駐車枠検知が開始された時点で、フロントカメラ(カメラCaF)が枠線(白線Ln2)の延長線を大きく通り過ぎているような事態の発生を避けられる。または、敷居ラインを目標として前進を開始(St2)した直後に、駐車枠検知をON(St3)にしても良い。
【0135】
なお、車両Vc1の走行中に駐車枠検知を実行したり停止直後に駐車枠検知を検知したりすると、車体の動揺で正確な検知結果が得られない事がある。このため、車両Vc1の走行中に駐車枠検知に成功した場合、より精度よくするため、車両制御装置3は、駐車枠検知ができた時点で車体を停止させ、車両Vc1の動揺が止まった後に実行した駐車枠検知で得られたデータを最終的な検知結果とする。
【0136】
駐車枠検知ができた時に、推測航法による車両Vc1の位置および姿勢の各推測値と、駐車枠検知による実測値の間に大きな差(推測航法の誤差)がない事が判明した場合は、車両制御装置3は、駐車経路計算を再実行せずに、中断した時点の自動駐車の残りの部分を実行しても良いし、駐車枠検知の結果から位置および姿勢の各推測値の誤差を特定し、駐車経路に補正を加えて自動駐車を再実行しても良い。駐車枠検知に適した位置に移動する事によって、元の駐車経路から外れた場合も、元の駐車経路からのズレ幅が小さければ、誤差があった場合と同様に補正すれば良い。誤差やズレ幅が大きい場合は、駐車経路を一から計算し直せばよいし、無論、誤差やズレの有無や大小を評価せず、無条件に新たな駐車経路を一から計算する様にしても良い。再開後の自動駐車の経路として、中断した自動駐車の経路を補正したものを利用できれば、新たな駐車経路を一から計算するより計算時間を短縮できる可能性があるが、それが出来ない場合は、ズレを評価する分、処理時間が伸びる事になるので、ズレの評価を省いて無条件に再計算する方法にも合理性がある。つまり、可能な方法を任意に選択して実行すれば良い。なお本実施例では、駐車経路を再計算する場合も目標とする駐車枠は変わらないので、図32のフローを正常終了した場合は、再計算の有無に関係なく、中断した自動駐車を再開するものとして説明している。
【0137】
車両制御装置3は、ステップSt3においてセンサ制御装置5に駐車枠検知を開始させ、その駐車枠検知の結果を取得する。車両制御装置3は、駐車枠検知の結果が検知成功である場合(St4、YES)、図32のフローを終了し、中断事象があって中断した自動駐車を再開する。
【0138】
一方、車両制御装置3は、駐車枠検知の結果が検知失敗だった場合(St4、NO)、センサ制御装置5に駐車枠検知を継続させながら(駐車枠検知ON)、舵角を現在値のまま維持して車体を前進させる(St5)。ステップSt4において、駐車枠検知に成功している場合でも、駐車枠までの距離が所定値を超える場合は、測定値の誤差が大きい可能性があるので、駐車枠検知に成功していない(St4、NO)ものと見做して車両Vc1を前進させても良い(St5)。つまり、ステップSt4の判定条件に、距離の条件を加えても良い。その場合、次のステップSt6でループバックしてSt4に戻った時に、駐車枠までの距離が所定値以内であれば図32のフローを終了して良い。ステップSt3において駐車枠検知を開始して以降、駐車枠検知に成功しておらず(St4,NO)、フロントカメラ(カメラCaF)が駐車枠WK2の中心線WKCL11を超えていない場合(St6、NO)、駐車支援装置10の処理はステップSt4に戻る。
【0139】
一方、ステップSt3において駐車枠検知を開始して以降、駐車枠検知が成功しないままフロントカメラ(カメラCaF)の位置が駐車枠WK2の中心線WKCL11に達した場合(St6、YES)、車両制御装置3は、不測の事故を予防するために異常終了の処理を行う。異常終了の処理では、車両制御装置3は、車両Vc1を停止させ、自動駐車を実行できない事を、HMI装置4を介して運転者に通知する。なお、異常終了の処理は、他の条件で判定しても良く、例えば、車両制御装置3は、駐車枠検知の開始後の走行距離が閾値超えをした事で判定しても良いし、舵角を付けて移動する場合には駐車枠WK2の中心線WKCL11を基準とした車体角θ(図31参照)が角度閾値(例えば、5度)以下になった事を条件として判定しても良い。
【0140】
また、ステップSt1において車両Vc1のフロントカメラ(カメラCaF)が敷居ラインTHL1に達している場合(St1、NO)、駐車支援装置10の処理はステップSt7に進む。言い換えれば、フロントカメラ(カメラCaF)が駐車枠線で挟まれる領域にある場合には、車両制御装置3は、自動駐車のステージ(進捗)が中盤以降であると判定する。中盤以降であればフロントカメラは駐車枠検知に適した領域にあるので、先ず、センサ制御装置5は、駐車枠検知を開始する(St7)。
【0141】
次のステップSt8において、中盤か終盤か、の判定を車体角θに基づいて行う。自動駐車のステージが中盤以降であって、駐車枠WK2の中心線WKCL11を基準とした車体角θ(図31参照)が角度閾値(例えば、20度)未満である時(St8、YES)、車両制御装置3は、自動駐車のステージが終盤であると判定し、ステップSt11に分岐する。ここで車体角θが閾値以上であれば中盤であるので、次のステップ9に進む。ステップ9では駐車枠検知の成否に基づいて判断する。ここで駐車枠検知が成功した場合には(St9、YES)、駐車枠検知のための、これ以上の移動は不要なので、車両制御装置3は、図32のフローを終了した後、車両Vc1の停止を維持して駐車経路を再計算し、自動駐車を再開すれば良い。
【0142】
一方、駐車枠検知が成功しない場合には(St9、NO)、車両制御装置3は、センサ制御装置5が駐車枠検知を継続した状態で車両を後退させる(St10)。つまり、自動駐車が中盤で中断され、車両Vc1が停止した位置で駐車枠WKの検知ができない時には、駐車枠線(白線Ln1,Ln2のうち少なくとも一方)に車体の一部が重なっていると判断し、車両制御装置3は、車体を後退させる制御を選択する(St10)。図32では、ステップSt10から無条件にステップSt9に戻り、駐車枠検知に成功するまでループするフローとしているが、ステップ6の様な、異常終了の判定処理を挿入しても良い。中盤における異常終了の条件は、例えば進行方向(後方)に障害物を検知する事であっても良い。
【0143】
ステップSt10において車体を後退させる時の舵角は、停車した時の舵角を維持すると良い。中盤は、駐車枠WK2の中心線WKCL11に向けて車両Vc1の車体の向きを変えつつある局面である。このため、車両制御装置3は、隣接して駐車中の他車両V2,V3との接触を回避可能となる舵角を設定している。よって、車両制御装置3は、中断事象があって停止した時の舵角を維持して車体を後退させる事により、他車両V2,V3との接触を回避できる。
【0144】
なお、車両制御装置3は、舵角の制御について、推測航法により推測した駐車枠と車体の位置関係、または、駐車枠の検知結果である駐車枠検知情報(駐車枠線の情報を含む)に応じて、中断事象があった時の舵角の値以外の値を設定しても良い。例えば、車両制御装置3は、最終接近開始位置(つまり、自動駐車開始位置)に近い側の枠線(白線Ln2)が検知でき、最終接近開始位置から遠い側の枠線(白線Ln1)が検知できない場合、車体前端部が遠い側の枠線(白線Ln1)に重なっていて、車体後端部は近い側の枠線(白線Ln2)に重なっていない、と判定する。そこで、車両制御装置3は、停止した時の舵角とは逆向きに舵角の最大値を設定して後退させる事で、車体前端を駐車枠の中央線WKC11の方向に移動させ、枠線(白線Ln1)の上から車体を外退かして、駐車枠WK2を検知可能な状態にする。このようにすると、駐車枠WK2を検知する為の車両Vc1の移動量が最小になるので、移動に要する時間を短縮できるとともに、移動に伴う他車両V2,V3との接触などのリスクも小さくできる。
【0145】
ステップSt8において、駐車枠WK2の中心線WKCL11を基準とした車体角θ(図31参照)が角度閾値(例えば、20度)未満である時(St8、YES)、車両制御装置3は、自動駐車のステージ(進捗)が終盤であると判定する。自動駐車を終盤で中断し、停止した位置でセンサ制御装置5が駐車枠WK2を検知できない場合は、車体が概ね駐車枠WK2に収まっているが、枠線(白線Ln1,Ln2)のうち少なくとも一方に車体の一部が重なっていると推測する。そこで、車両制御装置3は、車体を枠線(白線Ln1,Ln2)に挟まれる領域に収める制御を行う。
【0146】
終盤では先ず、車両制御装置3は、ステップSt11において、センサ制御装置5からの検知情報に基づいて、前方に障害物が検知されていないか判定する。ここで、前方に障害物が検知されていないと判定した場合には(St11、NO)、車体を駐車枠WK2に収める方向で制御するが、車両を移動させる前に、その場で駐車枠検知に成功するか判定する(St12)。ここで駐車枠検知が成功した場合には(St12、YES)、駐車枠検知のための移動は不要なので、車両制御装置3は、図32のフローを終了する。駐車枠検知に成功しない場合(St12、NO)にはステップ13に進んで、舵角を維持して車体を前進させ、駐車枠WK2に収める。つまり、それまでの舵角を維持して前進を再開する。車体が駐車枠WK2に収まって、駐車枠WK2を再検知した結果、車体の位置が問題ないことが判れば、その時点で自動駐車を終了して良いので運転者にとって最も好ましい結果となる。次のステップSt14は異常終了の判定である。ステップSt14において車体角θ(図31参照)がゼロではない場合には(St14,NO)、ステップSt12に戻って駐車枠検知と前進を続行する。しかし、駐車枠検知に成功しないままループを繰り返し、車体角θ(図31参照)がゼロになった場合には(St14、YES)、車両制御装置3は、不測の事故を予防するために異常終了の処理(上述参照)を行う。終盤の異常終了の条件は、角度ではなく距離であってもよい。例えば、中断した時点での目標駐車位置までの距離を基準とする距離閾値を設定し、駐車枠を検知しない状態での走行距離が前記の距離閾値を越えた時に、異常終了と判定する様にしてもよい。その様にすれば、車両が駐車枠WK2を超えて前進する事を、より確実に予防できる。
【0147】
ステップSt11では、車体を前進させるか否かを、駐車枠WK2内の障害物の有無に基づいて判定する。駐車枠WK2内は車両の前方に当たるので、前方の障害物と言い換えても良い。上述の様に、前進駐車では、駐車枠を検知可能にする為の移動が、車体を駐車枠に収める方向の移動である方が好ましいので、障害物の為に前進できない場合に限って別の手段を選択する(St11,YES)。自動駐車が終盤で中断される場合には、例えば、駐車枠WK2内にいる歩行者をソナーが検知したり、駐車枠WK2内に生えている雑草をカメラが検知したりして自動制動装置(自動ブレーキ)が作動した場合も該当する。このような場合、車両制御装置3はステップSt11の処理を保留し、歩行者が駐車枠WK2を出るのを待って処理を再開させても良いし、ソナーが受信したエコーの強度が弱い時はカメラ画像を運転者に提示し、運転者が障害物でないとオーバーコールした時には、障害物が無かったものとして処理を再開させても良い。このような判断は上述したソナーあるいはカメラなどのセンサによる検知よりも人間の判断の方が優れているので、車両制御装置3は、車両の移動の可否を、HMI装置4を介して運転者に判断させても良い。また、前進駐車の場合は車体を駐車枠に収める方向が運転者の前方であり、視認による確認が容易なので、後退駐車の場合よりも積極的に運転車の判断力を利用して良い。ステップ11で障害物を検知した場合に、直ちに車体を目標駐車位置から遠ざける方向(St16)に分岐せず、障害物を回避して前進する事が可能か判断するステップを挿入し、障害物を回避して前進する事が可能な場合は、前進させる制御にしても良い。車体を目標駐車位置から遠ざけると、確実に大きなタイムロスになるのに対し、前進して駐車枠に収めれば、その場で自動駐車を終了できる可能性があるので、出来るだけ前進して駐車枠に収める方針で制御フローを設計すると良い。
【0148】
車両制御装置3は、センサ制御装置5からの検知情報に基づいて、進行方向(前方)に障害物が検知された場合(St11、YES)、車体を目標駐車位置から遠ざける方向で制御する(St16)が、その前に駐車枠検知に成功するか判定する(St15)。ここで駐車枠検知が成功した場合には(St15、YES)、駐車枠検知のための移動は不要なので、車両制御装置3は、図32のフローを終了する。駐車枠検知が成功しない場合、舵角を逆向きの最大値に設定して車体を後退させる(St16)。特に、自動駐車の終盤は、車体後部が枠線(白線Ln1,Ln2)に挟まれる領域に収まっていて、最終接近開始位置(つまり、自動駐車開始位置)に近い側の枠線(白線Ln2)が検知できる場合に相当するので、最終接近開始位置(自動駐車開始位置)寄りの枠線(白線Ln2)を車体後端部が超えた事、または、この枠線が検知できる事を条件として、車両制御装置3は、自動駐車の終盤であると判定しても良い。その場合、駐車枠が検知できない場合は、車体前端部と遠い側の枠線(白線Ln1)との重なりを解消すれば良いので、車両制御装置3は、中断事象があった時の舵角と逆向きの最大舵角を設定して後退する事で(St16)、最短距離の移動で駐車枠WK2を検知可能にできる。
【0149】
次のステップSt17は異常終了の判定である。ステップSt17においては車体角θを評価し、車体角θがゼロでない場合はステップSt15に戻って後退と駐車枠検知を続行する(St17、NO)。一方、駐車枠検知に成功しないまま車体角θがゼロになった場合は(St17、YES)、車両制御装置3は、不測の事故を予防するために異常終了の処理(上述参照)を行う。
【0150】
次に、実施の形態1に係る駐車支援装置10による後退駐車の動作手順について、図33および図34を参照して説明する。図33は、後退駐車の状況の例を示す図である。図34は、後退駐車によって自動駐車する動作手順例を示すフローチャートである。図34のフローチャートの説明において、後退駐車の場合には前進移動から後退移動への折り返し地点と同義である最終接近開始位置に近い側の枠線(例えば、図33の白線Ln1)の延長線を敷居ラインTHL2と定義し、駐車枠WK1の中心線WKCL12(具体的には、長方形状の駐車枠WK1の長辺に平行であってその短辺の中点を通る線)と車体の中心線AX2との成す角度を車体角θと定義する。
【0151】
以下、実施の形態1に係る車両Vc1あるいは駐車支援装置10の後退駐車の動作に関して適宜、図33を参照して説明する。また、図33では、駐車中の他車両V2,V3の間に設けられ、枠線である白線Ln1,Ln2を長辺とする駐車枠WK1に、車両Vc1が後退駐車する例が示されている。
【0152】
駐車場内で車両Vc1が停止した時、または停止する前に、センサ制御装置5が駐車枠WK1を検知し、更に、その駐車場内での車両Vc1の走路に対する駐車枠WK1の中心線WKCL12の角度が斜め駐車判定閾値(例えば、70度)以上であると判定した場合、運転者が自動運転を指示した時に、車両制御装置3は、後退駐車を自動選択する。後退駐車では、車両Vc1は、目標とする駐車枠WK1の前を前進で通過し、前進から後進に転じる切り返し(言い換えると、折り返し)を行った後に駐車枠WK1に進入する。この切返し地点(折り返し地点)を最終接近開始位置と呼び、切返し以降の動作を狭義の駐車動作と見做すと、自動駐車開始位置から最終接近開始位置に移動するまでのステージは、駐車動作の予備段階と呼んで良い。
【0153】
予備段階では、車両Vc1の走行軌跡と駐車枠線(白線Ln1,Ln2)とは重ならず、車両Vc1から駐車枠WK1までの距離と、他車両V2,V3による遮蔽が駐車枠検知を行う上での障害となる。駐車枠線に挟まれる領域では、他車両V2,V3に遮られずに駐車枠を検知できるので、駐車枠検知に適した位置は駐車枠線に挟まれる領域である、と言える。
【0154】
そこで、最終接近開始位置に近い側の枠線(白線Ln1)を延長した線を敷居ラインTHL2とし、車両制御装置3は、車両Vc1が敷居ラインTHL2の手前で停止した時と、敷居ラインTHL2を超えて停止した時で制御を分ける。予備段階では、目標となる駐車枠WK1の方向に設けられたカメラである左カメラ(カメラCaL)が駐車枠検知に適しているので、車両の位置の基準を左カメラ(カメラCaL)の位置とし、車両制御装置3は、この位置と敷居ラインTHL2の位置とを比較する。なお、駐車動作の予備段階であっても、車両Vc1が最終接近開始位置に近づいて、リアカメラ(カメラCaB)の方が目標となる駐車枠WK1の方向に設けられたカメラとして適する様になった場合は、車両の位置の基準をリアカメラ(カメラCaB)に変えても良い。
【0155】
自動駐車開始位置から車両Vc1が前進した後、中断事象のために自動駐車が中断された場合、図34に示されるフローが開始される。このフローは、例えば、障害物検知に基づく車両制御装置3による自動制動装置(自動ブレーキ)の作動、運転者のブレーキペダルを踏み込む操作(手動制動)により車両Vc1が停止した時、車輪のスリップがセンサ制御装置5により検知された事を条件として車両制御装置3が自動制動した時、などにフローが開始される。中断事象が車両Vc1の停止を伴わない場合は説明から除外しており、図34のフローの初期状態として、車両Vc1は停止している。また、誤差がある事が想定されるものの、駐車枠WK1に対する車両Vc1の位置および姿勢の各推測値が保持されており、駐車枠検知が成功した時に各推測値の更新が可能となる。
【0156】
また、このフローは、車両Vc1が停止した時点で直ちに開始する必要はない。例えば、ソナーが一時的な障害物を検知した場合は、一時的な障害物が検知されなくなったとセンサ制御装置5により判定されてからフローを開始すれば良い事は、前進駐車の場合と同じである。また、車両Vc1が移動する事があるので、HMI装置4を介して運転者に移動する事を報知したり承認を求めたりするよう、任意の動作やステップをフローに追加しても良い事も、前進駐車の場合と同じである。
【0157】
図34において、車両Vc1が折り返し地点の手前で停止した場合(St21、YES)ステージは予備段階である、と判定する。車両制御装置3は、敷居ラインTHL2の手前で車両Vc1が停止したか否かを判定する(St22)。一方、車両Vc1が折り返し地点を過ぎて後退動作中に停止した場合には(St21、NO)、序盤以降であるので駐車支援装置10の処理はステップSt28に進む。
【0158】
予備段階では、車両の位置は目標駐車位置の方向に設けられたサイドカメラ(カメラCaLまたはカメラCaR)の位置を基準点とする。前述の通り、車両の位置の基準をリアカメラ(カメラCaB)に変えても良いが、図33の場合、基準とするカメラはカメラCaLである、としている。中断事象で停車した時、敷居ラインTHL2の手前に車両Vc1の左カメラ(カメラCaL)が位置した場合には(St22、YES)、左カメラ(カメラCaL)が駐車枠WK1に近く、駐車枠線に挟まれる領域の中に位置しているので、隣接する駐車中の他車両V2,V3に駐車枠線(白線Ln1,Ln2)が遮蔽される事が無い、と期待できる。このため、車両は既に駐車枠検知に適した位置にあると判断し、車両制御装置3は、車両を移動させずに、直ちに駐車枠検知をセンサ制御装置5に開始させる(St24)。
【0159】
一方、敷居ラインTHL2を超えて車両Vc1が停止した場合(St22、NO)、隣接する駐車中の他車両V2,V3に枠線(白線Ln1,Ln2)が遮蔽される可能性があり、駐車枠WK1が比較的遠い事もあるので、車両制御装置3は、車体(この場合の基準点であるカメラCaLの位置)を、駐車枠線に挟まれる領域の方向に舵角ゼロで後退させ(St23)、敷居ラインTHL2に達した時(つまり、駐車枠線に挟まれる領域に入った時)に駐車枠検知を開始させる(St24)。この後退では、車両制御装置3は、内輪差によって障害物あるいは他車両V2,V3に接触するリスクを避けるため直進で(つまり、舵角ゼロで)後退させる事を説明したが、中断事象があった時の舵角を維持して後退させても良い。停止時の舵角を維持して後退した場合、車両Vc1は、停止する迄の駐車経路を逆戻りする事になる。このため、障害物あるいは他車両V2,V3への接触などのリスクは大きくない。
【0160】
中断事象により敷居ラインTHL2の手前で停止していた場合(St22,YES)、または後退して敷居ラインTHL2に達した場合(St23)は、ステップSt24で駐車枠検知を開始し、次に駐車枠検知の結果を評価する(St25)。ここで判断に用いている駐車枠WK1に対する車両Vc1の位置および姿勢は、推測航法による推測値であるので、駐車枠検知に成功しなかった場合(St25、NO)、実際の車両Vc1の位置が駐車枠線に挟まれる領域に入っていない可能性がある。そこで、車両制御装置3は、駐車枠検知を継続しながら車体を後退させ、これを駐車枠検知が成功するまで続ける(St26)。但し、不測の事故を予防するため、駐車枠を検知しないまま中心線WKCL12に達した時は(St27、YES)、異常終了の処理に進む。つまり、車両制御装置3は、車両Vc1を停止させ、自動駐車を異常終了した事を、HMI装置4を介して運転者に通知する。
【0161】
異常終了の条件に該当しない(左カメラであるカメラCaLの位置が駐車枠WK1の中心線WKCL12を超えない)場合には(St27、NO)、駐車支援装置10の処理はステップSt25に戻る。ここで、駐車枠検知に成功した場合(St25、YES)、駐車枠検知のための、それ以上の移動は不要なので、車両制御装置3は、図34のフローを終了した後、駐車経路を再計算し、自動駐車を再開すれば良い。但し、最新の駐車枠検知が走行中に行われていた場合は、車両Vc1を停止させた上で駐車枠検知を再実行し、その検知結果を用いて駐車経路を再計算する事が望ましい。
【0162】
以下は、ステップSt21でNO(予備段階でない)と判定した場合の動作の説明である。後退駐車のステージの区分として、自動駐車開始位置から折り返し地点までのステージを予備段階として区分し、折り返し地点以降のステージ、つまり、最終接近開始位置から目標駐車位置である駐車枠WK1までの自動駐車のステージを、序盤、中盤、終盤の3ステージに区分している。つまり、以下は、序盤以降の状況(後退駐車のステージが、序盤、中盤、終盤のいずれか)に応じて最適な制御を選択する動作の説明である。
【0163】
後退駐車の序盤以降では、目標駐車位置の方向に設けられたカメラとしてリアカメラ(カメラCaB)の位置を車両Vc1の位置の基準とし、最終接近開始位置に近い側の枠線(白線Ln1)を延長した線を敷居ラインTHL2とする。リアカメラ(カメラCaB)の位置が敷居ラインTHL2を超えていない場合(St28、YES)、車両制御装置3は、自動駐車のステージ(進捗)が序盤であると判定する。リアカメラ(カメラCaB)の位置が敷居ラインTHL2を超えている場合は(St28、NO)、自動駐車のステージ(進捗)は中盤か終盤であり、駐車支援装置10の処理はステップSt34に進む。
【0164】
ここで、リアカメラ(カメラCaB)の位置を車両Vc1の位置の基準とする理由は、序盤においてリアカメラ(カメラCaB)が駐車枠WK1に最も近く、最も早く駐車枠検知に適する位置に達するからである。序盤では、敷居ラインTHL2の手前(つまり、駐車枠線に挟まれる領域の外)にリアカメラがあるので、他車両V2,V3によって駐車枠線(白線Ln1,Ln2のうち少なくとも1つ)が遮蔽されて撮影画像に映らなくなる事があり、リアカメラの位置から駐車枠WK1までの距離も比較的に大きい場合もある。このため、車両制御装置3は、車体を駐車枠線に挟まれる領域の方向に後退させ(St29)、リアカメラ(カメラCaB)が敷居ラインTHL2を超えてから駐車枠WK1の検知を開始させる(St30、駐車枠検知ON)。この時、図34のフローのステップSt29では中断時の舵角を維持して後退する、としているが、舵角ゼロで後退するとしても良い。舵角ゼロで後退した方が外輪差による接触のリスクが小さくなるが、舵角を維持して後退した場合には、駐車枠WK1を再検知した時に、当初の駐車経路のままで自動駐車を続行できる可能性が、舵角ゼロとした場合より高くなるので、状況に応じて舵角制御を選択してもよい。例えば、隣接する駐車枠に他車両が駐車している場合は外輪差が発生しない直進を選択し、周囲に他車両が無い場合は舵角維持を選択する、としても良い。
【0165】
また序盤においても、予備段階と同様に、判断に用いている駐車枠WK1に対する車両Vc1の位置および姿勢が推測航法による推測値であるために、駐車枠検知に成功しない事がある。(St31、NO)、つまり、推測値では駐車枠線に挟まれる領域に位置していても、実際の車両Vc1(のリアカメラであるカメラCaB)の位置が敷居ラインTHL2に達していない可能性がある。そこで、車両制御装置3は、車体を後退させながら駐車枠検知を継続させる(St32)。但し、不測の事故を予防するためにリアカメラ(カメラCaB)の位置が駐車枠WK1の中心線WKCL12に達したと判断した時は(St33、YES)、異常終了の処理を開始する。即ち、車両制御装置3は、車両Vc1を停止させ、自動駐車異常終了した事を、HMI装置4を介して運転者に通知する。予備段階と序盤では、駐車枠線に挟まれる領域にカメラが位置しているか否か、で移動の要否を判定する点が同じであり、駐車枠検知に適した位置に移動させる制御が、駐車枠線に挟まれる領域に近づける制御である点も同じである。また、後退駐車の序盤と前進駐車の序盤も同じであると言える。つまり、目標駐車位置の方向に設けられたカメラが駐車枠を構成する駐車枠線に挟まれる領域に位置しないと判定した場合は、駐車枠検知に適するように車両を位置させる制御として、車両を駐車枠線に挟まれる領域に近づける制御を選択する、と言い換えることが出来る。なお、目標駐車位置の方向に設けられたカメラが、後退駐車の予備段階と後退駐車の序盤と前進駐車の序盤とで異なるが、これをパラメーターとして扱い、同じプログラムを用いて制御しても良い。
【0166】
ステップSt33において、異常終了の条件に当たらない場合、つまり、リアカメラ(カメラCaB)の位置が駐車枠WK1の中心線WKCL12を超えない場合には(St33、NO)、駐車支援装置10の処理はステップSt31に戻る。また、駐車枠検知の成功した場合(St31、YES)、駐車枠検知のための、それ以上の移動は不要なので、車両制御装置3は、図34のフローを終了した後、車両Vc1の停止を維持して駐車経路を再計算し、自動駐車を再開すれば良い。
【0167】
ステップSt28に戻って説明を続ける。ステップSt28において、リアカメラ(カメラCaB)の位置が敷居ラインTHL2を超えている場合には(St28、NO)、車両制御装置3は、自動駐車のステージ(進捗)が中盤以降であると判定する。中盤以降であれば駐車枠線に挟まれる領域にカメラが位置していて、駐車枠WK1までの距離にも問題は無いので、先ず、センサ制御装置5は、駐車枠検知を開始する(St34)。図34には図示していないが、駐車枠を検知したかの判定ステップをステップSt34の後に挿入し、駐車枠検知に成功した場合、図34のフローを正常終了させても良い。
【0168】
後退駐車の中盤以降は車体角によって制御を選択している。駐車枠WK1の中心線WKCL12を基準とした車体角θが角度閾値(例えば、30度)以上である場合には(St35、NO)、車両制御装置3は、自動駐車のステージ(進捗)が中盤であると判定する。一方、駐車枠WK1の中心線WKCL12を基準とした車体角θが角度閾値(例えば、30度)未満の場合には(St35、YES)、終盤であると判定し、駐車支援装置10の処理はステップSt40に進む。
【0169】
この角度閾値は、図32の前進駐車の場合(20度)と図34の後退駐車の場合(30度)とで異ならせてある。その理由は、後輪が操舵輪でないために、車両Vc1の車体後部は車幅方向に変位させにくい特性があり、駐車枠線(白線Ln1,Ln2)に挟まれる領域に車体後部に収める運動を行う時期が、前進駐車と後退駐車で異なるためである。例えば、前進駐車は車体後部が駐車枠線に挟まれる領域に概ね収まった後の車体角θの変化量が小さいのに対し、後退駐車は車体後部が概ね駐車枠線に挟まれる領域に収まった後で、車体角θが大きく変わる、という違いによる。つまり、駐車枠線に挟まれる領域に車体後部が概ね収まった時点での車体角θは、前進駐車の場合より後退駐車の方が大きいので、これに対応して後退駐車と前進駐車で角度閾値を変えている。
【0170】
車両制御装置3は、自動駐車が中盤である場合、障害物検知の結果によって処理を変更する。目標駐車位置の方向に障害物が検知されない場合には(St36、NO)、目標駐車位置の方向に移動しても支障が無いので、終盤と同様に処理する(St40)。終盤は車体を駐車枠に収める方向で移動させるので、出来るだけ終盤として処理した方が、乗員にメリットがあるからである。一方、目標駐車位置の方向に障害物が検知された場合は(St36、YES)、駐車支援装置10の処理はステップSt37に進む。
【0171】
ステップSt37において、駐車枠検知の成否を判定する。駐車枠検知が成功した場合(St37,YES)は、正常終了でフローを終了する。駐車枠検知が成功しない場合(St37,NO)は、駐車枠から遠ざかる方向に移動する。つまり、車両を前進させる(St38)。車体を前進させる時の舵角は、駐車枠WK1の中心線WKCL12に向けた方向である。つまり、駐車枠WK1の中心線WKCL12の方向に車体が向くように舵角を付けて前進する事により、駐車枠線に挟まれる領域に収まる方向に車体の前半部分を移動させる。
【0172】
ステップSt38の後、続いて車体角θ(図33参照)を評価し、車体角θがゼロである場合には(St39、YES)、車両制御装置3は、不測の事故を予防するために異常終了の処理(上述参照)を行う。一方で、車体角θ(図33参照)がゼロではない場合には(St39、NO)、駐車支援装置10の処理はステップSt37に戻る。
【0173】
ステップ39は異常終了の判定であり、駐車枠を検知しないまま車体角がゼロになった時に異常終了する。車体角がゼロになるまでは、車体は駐車枠WK1の中心線WKCL12の方向に向きを変えるが、それ以降は隣接する駐車枠の方に向きを変える事になり、車体側面が隣接して駐車していた車両と接触する可能性が出て来るからである。
【0174】
車両制御装置3は、中盤において車体を前進させる時の舵角の制御として、駐車枠線(白線Ln1,Ln2)と車体の位置関係、障害物の検知結果(ステップSt36参照)に応じて変更を加えても良い。後退駐車の駐車枠WK1は、通路部分の幅が狭い距離余裕の少ない駐車場で設定される事が多いので、前進する前または前進を開始した後に、進行方向の近距離に障害物を検知した時は、障害物への接近が抑えられるように舵角を切り増しても良い。
【0175】
後退駐車の中盤以降で、駐車枠WK1の中心線WKCL12を基準とした車体角θが角度閾値(例えば、30度)未満である場合には(St35、YES)、車両制御装置3は、自動駐車のステージ(進捗)が終盤であると判定する。後退駐車を終盤で中断し、停止した位置で駐車枠WK1の検知ができない時は、車体が概ね駐車枠WK1に収まっているが、駐車枠線(白線Ln1,Ln2のいずれか)に車体の一部が重なっている場合が相当するので、車両制御装置3は、車体を駐車枠WK1の中、または駐車枠線(白線Ln1と白線Ln2)に挟まれる領域に収める制御を行う。
【0176】
終盤では先ず、駐車枠検知の成否を判定する(St40)。駐車枠検知が成功した場合(St40,YES)は、正常終了でフローを終了する。駐車枠検知の検知情報から車体の位置が問題ないことが判れば、その時点で自動駐車を終了して良いので、運転者にとって最も好ましい結果となる。また、車体の前後軸が駐車枠WK1の中心線WKCL12に対して傾いていたり、駐車枠との前後左右の位置が不適切であったりしている事が判った場合には、再開する自動駐車の動作として、車体の向きや位置を小修正する運動をすれば良い。
【0177】
駐車枠検知が成功しない場合(St40,NO)は、車両制御装置3は、舵角を維持して後退を再開させ、車体を駐車枠WK1に収める方向に移動させる(St41)。図34のSt40では、それまでの舵角を維持して後退する、としているが、終盤では、車体後部が駐車枠線(白線Ln1と白線Ln2)に挟まれる領域に収まっていると期待できる。あるいは、最終接近開始位置寄りの枠線(白線Ln1)を車体後端部が超えた事を条件として終盤と判定しても良い。そこで、最終接近開始位置寄りの駐車枠線と車体前端部との重なりを早期に解消する為に、車両制御装置3は、舵角を最大舵角まで切り増して、車体前端部を駐車枠線から離す速度を早くしても良い。
【0178】
ステップSt41に続いて、車体角θ(図33参照)を評価し(St42)、車体角θがゼロである場合には(St42、YES)、車両制御装置3は、不測の事故を予防するために異常終了の処理を行う。異常終了の条件を、車体角θがゼロである事とする理由は、中盤の場合と同じである。または、車両が後退できる距離が限られる事に着目して、目標駐車位置まで進んだ事を異常終了の条件としても良い。車体角θがゼロでない場合(St42、NO)ステップSt40に戻って、車両制御装置3は、舵角を維持して後退を再開させ、車体を駐車枠WK1に収める方向に移動させる(St41)。
【0179】
なお、図32および図34のフローでは、中盤の場合に限って障害物検知の有無による分岐を記載しているが、それ以外の序盤、および終盤でも、障害物を検知した場合の対応が必要である。例えば、後退駐車の終盤で、目標駐車位置の方向に障害物を検知した場合には、中盤の制御と同様に前進で移動すると良い。正確を期するには、他の場合でも各々、フローで図示しして説明を加えるべきであるが、煩雑を避ける為に割愛されたものと理解されたい。
【0180】
以上の説明は、中断事象が車両の停止を伴う場合を前提に説明しているが、中断事象には自動制動装置(自動ブレーキ)の作動、運転者による手動制動のように車両Vc1の停止を伴うもの以外に、車両Vc1の走行中に発生して停止を伴わない中断事象もある。
【0181】
例えば、後退駐車で折り返し地点から目標駐車位置である駐車枠WK1に向かう途中で車両Vc1の操舵輪がスリップした場合、車体の位置および姿勢の各推測値が実際の車体の位置および姿勢の値と異なってくる可能性があるので、上述したスリップは自動駐車の中断事象に該当する。この中断事象が発生した時点で、車両Vc1は自動駐車の為の移動を続けているので、中断事象の発生を理由として車両を停止させずに、直ちに駐車枠検知を行なっても良い。車両Vc1が走行した状態で駐車枠検知を行うと、車体の移動や動揺で路面との位置関係が変動しつつある中での検知となり、検知結果が不正確になる可能性があるが、カメラが撮像した位置で駐車枠検知が可能か否か、の情報は得られる。つまり、中断事象が発生した位置で駐車枠検知が可能か否かを判定する目的であれば、車両制御装置3は、車両Vc1を停止させずに駐車枠検知の試行を行わせても良い。前述の通り、走行中の駐車枠検知は不正確なので、車両が停止した状態で駐車枠検知を再実行する必要がある。例えば、先の前進駐車や後退駐車のフローにおいて、移動しつつ駐車枠検知するステップでの検知結果は、駐車枠検知が可能か否かのみを評価し、最終的な検知結果は、フローの終了後に車両を停止させた上で駐車枠検知を再実行して取得する必要がある。
【0182】
また、停車を伴わない中断事象が発生した時に、車両制御装置3は、中断事象が発生した位置が駐車枠検知に適した位置であるか判定し、駐車枠検知に適した位置であると判定した場合に限って車両Vc1を停止させて駐車枠検知を行なっても良い。つまり、中断事象が発生した位置が駐車枠から遠く、車両が駐車枠に向かって走行している場合には、駐車枠に近づいてから停車させて、駐車枠検知を行なえば良い。逆に、車両制御装置3は、駐車枠検知に適した位置であるか否かの判定を行わず、無条件に駐車枠検知を試行させ、駐車枠検知が可能か否かの結果を得るようにしても良い。例えば、車両制御装置3は、後退駐車の折り返し地点から目標駐車位置である駐車枠WK1に向かう途中で中断事象が発生した時に、車両Vc1を停止させずに無条件に駐車枠検知の試行を開始しても良い。この試行で駐車枠検知に成功した時は、車両制御装置3は、車両Vc1を停止させ、車両Vc1の車体の動揺が止まるのを待ってセンサ制御装置5に駐車枠検知を再実行させて正確な位置情報を得れば良い。ここで、駐車枠検知に成功しなかった場合、リアカメラ(カメラCaB)が駐車枠検知に適した枠線(白線Ln1,Ln2)に挟まれる領域の外に位置すると推測できる。したがって、車両制御装置3は、駐車枠検知をさせつつ車両Vc1の後退を続け、駐車枠検知に成功した時点で車両Vc1を停止させ、車両Vc1の動揺が止まるのを待って駐車枠検知を再実行させれば良い。
【0183】
なお、走行中に駐車枠検知に成功した時点で車両Vc1を停車させる際に、急制動を避けて徐々に減速するために車両Vc1が停止するまでに移動する距離が長くなり、停止した位置で駐車枠検知に失敗する事がある。例えば、後退駐車で自動駐車開始位置から折り返し地点に向かう途中で、リアカメラ(カメラCaB)が敷居ラインTHL2(図33参照)を超える直前に中断事象が発生した場合、走行したまま駐車枠検知を試行した時は成功しても、停止するまでの間に敷居ラインTHL2を超えると、停止した位置では駐車枠検知が失敗する事がある。この場合、中断事象が発生した位置で駐車枠検知が成功する事が分かっているので、車両制御装置3は、中断事象が発生してから停止するまでに走行した距離の分だけ、舵角を維持して車両Vc1を後退させ、停止後、車両Vc1の動揺が止まるのを待って駐車枠検知を再実行すれば良い。
【0184】
後退駐車で自動駐車開始位置から折り返し地点に向かう途中で中断事象が起きた時の舵角制御として、舵角をゼロにして直進する事があるが、この時の舵角としては、中断事象の発生時の舵角を維持しても良い。中断事象が起きた時から停車する迄の間に衝突が起きなかった事が、停車した時点で判っているので、舵角を維持して中断事象の発生地点まで逆戻りする経路はリスクが低く、駐車枠検知が出来た地点に戻る経路だからである。但し、中断事象が起きてから停車する迄の間に別のスリップが更に起きていた場合には、前記の経路を逆戻りすることが出来ないので、自動ブレーキによる衝突回避が可能な、舵角ゼロでの直進を選択すると良い。
【0185】
中断事象が発生した時点で駐車枠検知を試行して成功しなかった場合に、車両制御装置3は、走行を継続させるか車両Vc1を停止させるかを、自動駐車の種別と中断事象が発生した時点での車両Vc1の進行方向と、駐車枠WK1に対する車両Vc1の推測位置とを含む状況に応じて判定する。または、車両制御装置3は、駐車枠検知の試行が成功か失敗かを上述した状況に含めた上で、中断事象が発生した際の状況に応じて車両の移動を決める制御にしても良い。この制御では、駐車枠検知の試行が成功した場合に、車両制御装置3は車両Vc1を停止させ、駐車枠検知の試行が失敗した場合には、車両制御装置3は駐車枠WKに対する車両Vc1の推測位置と車両Vc1の進行方向との関係から、車両Vc1の進行方向が駐車枠検知に適した領域に向かう方向であるか否かによって、移動を続けるか、直ちに車両Vc1を停止させて移動方向を反転させるか、を選択する。例えば、後退駐車の折り返し地点から目標駐車位置である駐車枠WK1に向かった直後に中断事象が発生した場合は、車両Vc1の進行方向が駐車枠検知に適した領域に向かう方向である。この場合、中断事象が発生した時点で駐車枠検知の試行が失敗しても、移動を続ければ駐車枠検知に適した位置に達すると予想できるので、車両制御装置3は車両Vc1を停止させない方が良い。別の例として、後退駐車の自動駐車開始地点から折り返し地点に向かう途中で中断事象が発生した場合は、車両Vc1の進行方向が駐車枠検知に適した領域から遠ざかる方向であるので、中断事象が発生した時点で駐車枠検知の試行が失敗した場合は、車両制御装置3は、直ちに車両Vc1を停止させて移動方向を反転させる事により、駐車枠検知に適した位置に戻るための移動時間を短縮する。
【0186】
ここまで、中断事象が発生した際に先ず駐車枠検知を試行し、その結果に応じて車両の停止を含む次の運動を判断する制御を説明したが、図32あるいは図34を参照して説明したように、中断事象が発生した際に先ず無条件に車両Vc1を停止させ、停止した位置で車両Vc1の次の運動を判断する制御を用いても良い。その様にすれば、必ず停止した状態で次の運動を判断するので、処理時間の余裕を確保し易いという利点がある。しかし、停止して判断した結果、駐車枠検知に適した領域に向かう方向が、それまでの進行方向と同じであった場合には、停止せずに駐車枠検知に適した領域に向かう移動を続けた場合よりも、余分に1回、停止しているので、それだけ余分な時間が掛かる。つまり、車両Vc1を停止させずに次の運動を判断する制御にした方が、余分な時間を消費せずにスムーズに駐車できる可能性がある。
【0187】
以上、駐車枠検知の為の車両の制御に絞って説明を加えてきたが、駐車枠検知ができる位置に達するための車両Vc1の移動を運転者が予期していないと、運転者が心理的にも物理的にも動揺する事がある。そこで、車両Vc1が移動を始める時、特に、それまでの進行方向とは逆方向に移動を始める時には、車両制御装置3は、車両Vc1が動く事と動く方向を、移動の開始前にHMI装置4を介して運転者に報知する事が好ましい。例えば、「バックします」の様な一言があれば、運転者は車両Vc1の運動に対して身構える事が出来るので、姿勢を崩して誤ってアクセルを踏み込んでしまう、といった事態を予防できる。また、移動の目的が分からないと誤動作している様に思われる事があるので、「駐車枠が検知できる位置までバックします」の様に、目的を付け加えても良い。
【0188】
以上により、実施の形態1に係る駐車支援装置10は、車両Vc1に設けられ、車両Vc1の周辺の撮影画像を取得する撮像手段(例えば、カメラ)と、車両Vc1を駐車すべき駐車枠の位置を特定する駐車枠検知を、撮影画像に基づいて行う駐車枠検知手段(例えば、センサ制御装置5)と、駐車枠への車両の駐車動作を支援する駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)と、を備える。駐車支援手段は、駐車動作中に所定の中断事象があった場合、駐車枠検知に適するように車両Vc1を位置させる。これにより、駐車支援装置10は、車両Vc1の自動駐車の実行中に中断事象が生じた場合でも車両Vc1の位置を駐車枠検知により再確認した上で、安全に自動駐車の再実行を支援できる。また、駐車支援装置10は、中断事象が生じた後に駐車枠を再検知して自動駐車を再開する事を目的として、車両Vc1に最小限の距離を走行させ、駐車枠から離れずに自動駐車を再開させるので、駐車枠を離れた時に他車両に駐車枠の前の位置を占められ、その駐車枠に駐車出来なくなる事を回避できる。
【0189】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、駐車枠検知の試行、または、車両Vc1が駐車枠検知に適した位置に在るかの判定のいずれか、または両方を行い、駐車枠検知が成功しない場合、または、車両Vc1が駐車枠検知に適した位置にいないと判定した場合、駐車枠検知に適するように車両Vc1を移動させる。これにより、駐車支援装置10は、駐車枠検知に適した位置に既に位置している場合は、車両Vc1に不必要な移動をさせず、必要とする場合に限って、駐車枠検知に適した位置まで移動させるので、不必要な移動に伴う時間のロスやリスクの発生を回避する事ができる。
【0190】
また、駐車枠検知手段(例えば、センサ制御装置5)は、中断事象に伴って車両Vc1が停止した場合は、車両Vc1が停止した位置で駐車枠検知を試行し、中断事象に伴って車両Vc1が停止しない場合は、車両Vc1を停止させずに駐車枠検知を試行する。これにより、駐車支援装置10は、中断事象に伴って車両Vc1が停止したか否かに拘わらず、駐車枠検知を即座に試行できる。走行中に駐車枠検知すると得られる位置情報が不正確になるが、駐車枠検知に適した位置に車両Vc1が位置するか否か、の情報を得る目的の試行であれば問題は無い。駐車枠検知に適した位置にある事が判れば、停止させてから駐車枠検知を試行し、正確な位置情報を取得すればよいからである。
【0191】
また、駐車枠検知手段(例えば、センサ制御装置5)は、車両Vc1の走行中および停止後に駐車枠検知を試行し、走行中の試行で駐車枠検知が成功し、かつ、停止後の試行で駐車枠検知が成功した場合、停止後の駐車枠検知の結果から駐車枠の位置を特定する。これにより、駐車支援装置10は、中断事象によって車両Vc1が停止する前後の両方で駐車枠検知が成功した場合、停止後の駐車枠検知の結果から駐車枠の位置を高精度に特定できる。走行中に駐車枠検知すると得られる位置情報が不正確になるので、必ず停止後に再検知を行う。その上で、正確な停止後の駐車枠検知で得られた位置情報に基づいて以後の移動を制御するので、安全に自動駐車の実行を支援できる。
【0192】
また、駐車枠検知手段(例えば、センサ制御装置5)は、車両Vc1の走行中および停止後に駐車枠検知を試行する。駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、走行中の試行で駐車枠検知が成功し、かつ、停止後の試行で駐車枠検知が失敗した場合、車両が進行していた方向と逆方向に車両を移動させる。走行中の車両が停止するまでの間に、駐車枠検知が可能な位置から外れる事があるが、駐車枠検知に適した位置が駐車枠検知に成功した位置である事が判っているので、この逆方向への移動により、駐車枠検知に適した位置に、車両Vc1の車体を安全に移動させる事ができる。
【0193】
また、駐車枠検知手段(例えば、センサ制御装置5)は、中断事象が車両Vc1の停止を伴わない場合に、車両Vc1の進行方向が駐車枠検知に適する位置に近づく方向である場合は車両Vc1の移動を継続させ、車両Vc1の進行方向が駐車枠検知に適する位置から遠ざかる方向である場合は車両を停止させる。この様に、進行方向が駐車枠検知に適した位置に近づく方向である場合は車両を停止させない事により、駐車枠検知に適した位置への移動に要する時間の平均値(期待値)を、可及的に短縮する事ができる。
【0194】
また、駐車支援装置10は、車両Vc1の状況に応じて、駐車枠検知に適する位置を判定する状況判定手段(例えば、センサ制御装置5)を更に備える。車両の状況は、少なくとも位置情報を含み、位置情報は、駐車枠または駐車枠線に対する車両の相対位置、または、駐車枠または駐車枠線および車両の位置を含む。これにより、駐車支援装置10は、中断事象があった時の車両Vc1の位置情報を少なくとも含む状況に応じて、駐車枠検知に最も適する位置に車両Vc1を移動させる事ができる。
【0195】
また、車両の状況は、車両の進行方向を更に含み、状況判定手段による判定結果は、車両の進行方向が前進である場合は、車両の進行方向が後退である場合よりも、車両の進行方向が駐車枠検知に適する位置に近づく方向に当たる判定結果が出やすい。駐車枠検知に適する位置に車両Vc1を移動させる際に、進行方向が前進方向であれば、運転手は進行方向の状況を認識しやすいので、後退方向である場合よりも高い速度で、即ち、短い時間で移動できる。つまり、車両の低速での後退を必要とする様な判定結果を出にくくする事により、駐車枠検知に適する位置への移動に要する時間の平均値(期待値)を、可及的に短縮する事ができる。
【0196】
また、車両の状況は、車両の停止の有無を更に含み、状況判定手段による判定結果は、車両の停止が無い場合に、車両の停止がある場合よりも、車両の進行方向が駐車枠検知に適する位置に近づく方向に当たる判定結果が出やすい。これにより、車両の進行方向が駐車枠検知に適する位置から遠ざかる方向になる様な判定結果が出にくくなるので、駐車枠検知に適する位置に移動する前に停車を行う確率が低くなる。すると、停車に伴って発生する時間の損失が平均的に小さくなるので、駐車枠検知に適する位置への移動に要する時間の平均値(期待値)を、可及的に短縮する事ができる。
【0197】
また、車両Vc1は、手動制動手段(例えば、手動制動装置6)、自動制動手段(例えば、車両制御装置3)、加速度検知手段(例えば、センサ制御装置5)、および、車輪速検知手段(例えば、センサ制御装置5)のうち少なくとも1つ、を備える。中断事象は、駐車動作として予定された駐車地点とは異なる位置での、手動制動手段または自動制動手段の作動、または、加速度検知手段または車輪速検知手段による車両のスリップの検知、または、車体の傾斜角の変化量が閾値を超えた事、または運転者による自動運転の中断の指示、のうちいずれかである。これにより、駐車支援装置10は、スリップにより車両の位置と姿勢の推定値が実際と異なった場合には、駐車枠検知に適する位置に車両Vc1を位置させて、駐車枠検知から始まる自動駐車を再実行できるし、車両が3次元的に移動する事により正確な自動駐車が期待できない場合や、または中断必要と運転者が判断した場合は、駐車枠検知に適する位置に車両Vc1を位置させて駐車枠検知からやり直す事により、当初、実行していた自動駐車よりも正確な自動駐車を行う事ができる。
【0198】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、車両Vc1が駐車枠検知に適する位置に移動した場合、車両Vc1が停止してから駐車枠検知を再実行する。これにより、駐車支援装置10は、車体の動揺による誤差の発生を避けた状態で、駐車枠検知を高精度に行える。
【0199】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、駐車枠検知に適する位置で駐車枠検知が成功した場合に、その検知された駐車枠への車両の駐車の支援を開始する。これにより、駐車支援装置10は、所定の中断事象があって自動駐車が中断された場合でも、駐車枠検知により特定された駐車枠に向けて自動駐車を再開するので、中断による時間の損失を低減できる。
【0200】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、車両Vc1の少なくとも一部が駐車枠を構成する駐車枠線上に位置する事によって駐車枠検知が成功しない場合、駐車枠線上に位置する車両Vc1の部位と、駐車枠と車両Vc1との相対関係とに基づいて、駐車枠検知に適するように車両Vc1の移動方向を選択する。これにより、駐車支援装置10は、駐車枠線上に車両Vc1の車体の一部が位置する状況に対応して、駐車枠検知に最適な方向に車両Vc1を移動させる事ができる。
【0201】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、駐車枠検知に適するように車両Vc1を移動させる場合、車両Vc1の舵角をゼロにして車両を直進移動させる。これにより、内輪差の為に車両の側面が他車両などの障害物に接触する可能性を排除しつつ、前後に備えられた衝突防止装置により他車両などの障害物との接触を回避した状態を保って駐車枠検知ができる位置へ車両Vc1を安全に移動させる事ができる。
【0202】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、駐車枠検知に適するように車両Vc1を移動させる場合、中断事象があった時の舵角を維持して車両を移動させる。これにより、駐車支援装置10は、所定の中断事象があって自動駐車が中断された場合、自動駐車の経路に近い経路で車両を移動させる事により、駐車枠検知ができる位置へ安全に車両Vc1を移動させる事ができる。
【0203】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、駐車枠検知に適するように車両Vc1を移動させる場合、駐車枠を構成する一対の駐車枠線のうち一方を検知している事を条件として、その検知された駐車枠線に最も近い車両Vc1の車体の角、あるいは操舵輪が、その検知された駐車枠線と並行に移動するように車両Vc1を移動させる。これにより、駐車支援装置10は、車両Vc1の車体の角、または操舵輪が検知済みの駐車枠線に沿って移動し、駐車枠線を越えない様にする事で、駐車枠検知ができる位置へ車両Vc1を安全に移動させる事ができる。
【0204】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、駐車枠検知に適するように車両Vc1を移動させる場合、駐車枠を構成する一対の駐車枠線の両方を検知していない事を条件として、車両Vc1の舵角を制御して車両Vc1の車体前端が駐車枠の中心軸方向に移動するように車両Vc1を移動させる。これにより、駐車支援装置10は、車両Vc1の車体前端が駐車枠内に収まって駐車枠線の一方が検知できる状況を作り、車体後端部を駐車枠内に収める為の移動を開始できる様になる。
【0205】
また、車両Vc1は、障害物検知手段(例えば、センサ制御装置5)を備える。駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、駐車枠検知に適するように車両Vc1を移動させる場合、障害物検知手段により検知された障害物を迂回する方向に車両Vc1の舵角を制御して車両Vc1を移動させる。これにより、駐車支援装置10は、中断時の車両Vc1の位置の周囲に障害物が検知されて移動が阻害される可能性があっても、その障害物との接触を回避しつつ、駐車枠検知ができるように車両Vc1を安全に移動させる事ができる。
【0206】
また、車両Vc1は、障害物検知手段(例えば、センサ制御装置5)を備える。駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、駐車枠検知に適するように車両Vc1を移動させる場合、障害物検知手段により検知された障害物があり、かつ、その障害物が移動物である場合、その障害物を検知しなくなるまで車両Vc1の移動を延期させる。これにより、駐車支援装置10は、その移動物が検知されなくなるまで車両Vc1の移動を延期する事によって、移動物と接触する危険を回避するとともに、移動物を迂回する為の運動を行うことによって生じる時間的損失を避ける事ができる。
【0207】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、駐車枠検知に適するように車両Vc1を移動させる場合、駐車枠を構成する一対の駐車枠線に挟まれる領域に車両Vc1の固定輪の両方が入っている事を条件として、車両Vc1の操舵輪を上述した領域に収める方向に移動させる。これにより、駐車支援装置10は、中断時の車両Vc1の位置の状況適合した、より少ない移動量で駐車枠検知ができる方向を選択し、他車両と接触する恐れが無い方向を選択する事により、車両Vc1を安全に移動させる事ができる。
【0208】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、車両Vc1の目標駐車位置の方向に設けられた撮像手段(前進駐車の予備段階であればサイドカメラの一方、前進駐車の序盤であればカメラCaF、後退駐車であればカメラCaB)が、駐車枠を構成する一対の駐車枠線に挟まれる領域に位置しないと判定した場合は、車両を駐車枠線に挟まれる領域に近づける制御を選択する。これにより、駐車支援装置10は、カメラが駐車枠線に挟まれる領域に無い場合は駐車枠線に挟まれる領域に移動するので、他車両などの障害物に遮蔽されずに駐車枠検知ができる位置へ効率的に車両Vc1を移動させる事ができる。
【0209】
また、駐車枠検知手段(例えば、センサ制御装置5)は、車両を駐車枠線に挟まれる領域に近づける制御を選択した場合、撮像手段(後退駐車の予備段階であればサイドカメラの一方、前進駐車の序盤であればカメラCaF、後退駐車の序盤であればCaB)が、駐車枠を構成する一対の駐車枠線のうち目標駐車位置への接近を開始する位置である最終接近開始位置に近い側の枠線を延長した直線である敷居ラインTHL1(図31参照)を基準とする位置に達した時点で、駐車枠検知の試行を開始する。これにより、駐車支援装置10は、駐車枠内を見通せる位置の端に位置する敷居ラインTHL1を基準とする位置に、カメラが達した時点から撮影画像を用いた駐車枠検知を開始する事で、迅速かつ効率的に駐車枠検知を行う事ができる。
【0210】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、駐車枠の中心軸と車両Vc1の車体の前後軸とによる車体角θが第1角度閾値(例えば、20度)以上である場合は、車両Vc1を目標駐車位置から遠ざける制御を選択し、車体角θが第1角度閾値未満である場合は、車両Vc1を目標駐車位置に近づける制御を選択する。これにより、駐車支援装置10は、中断時の車両Vc1の位置で駐車枠検知ができず、駐車枠線に車両Vc1の車体の一部が重なっていると考えられる場合に、駐車枠検知ができるように車両Vc1を移動させる制御において、車両Vc1の駐車枠に対する傾きに応じて、効率的な移動方向を選択する事ができる。
【0211】
また、駐車動作が後退駐車である場合の第1角度閾値は、駐車動作が前進駐車である場合の第1角度閾値よりも大きい。これにより、比較的早い時期に車体角が大きく変化する前進駐車と、比較的遅い時期に車体角が大きく変化する前進駐車との両方に対応して、適切に車両を移動させる制御を選択できる。
【0212】
また、中断事象が車両の停止を伴わない場合の第1角度閾値は、中断事象が車両の停止を伴う場合の第1角度閾値よりも大きい。これにより、中断事象が車両の停止を伴わない場合は、車両の移動方向が駐車枠検知に適する位置に近づく方向となる判定結果が出やすくなり、車両の移動方向が駐車枠検知に適する位置から遠ざかる方向となるために、車両を停止させる必要を生じる判定結果が出にくくなるので、駐車枠検知に適する位置に達するのに要する時間の期待値が小さくなる。中断事象が車両の停止を伴う場合は、それまでの進行方向に関係なく、車両を停止させる為の追加のタイムロスは発生しない(というよりも、既に発生しているので変わらない)ので、駐車枠検知に適する位置までの距離だけに応じて閾値を決めれば良いが、車両が移動している時は、移動方向に応じて閾値を操作する事により、消費時間を短縮できる場合がある。
【0213】
また、駐車支援装置10は、車両Vc1の車体の底面積のうち駐車枠と重なる部分の割合、または、駐車枠内にある駐車経路のうち車両が通過した部分の割合、のいずれかを数値化した重複率が、第1重複率閾値以上である場合に車両を目標駐車位置に近づける制御を選択し、重複率が第1重複率閾値未満である場合に車両を目標駐車位置から遠ざける制御を選択する。これにより、駐車支援装置10は、中断時の車両Vc1の位置で駐車枠検知ができず、駐車枠線に車両Vc1の車体の一部が重なっていると考えられる場合に、駐車枠検知ができるように車両Vc1を移動させる制御において、車両Vc1の駐車枠と重なっている程度に応じて、効率的な移動方向を選択する事ができる。
【0214】
また、駐車動作が、前進駐車である場合の第1重複率閾値は、駐車動作が、後退駐車である場合の第1重複率閾値よりも小さい。これにより、駐車枠検知に適する位置への車両の移動が前進となる確率が、後退となる確率よりも高くなる。前進は後退よりも速い速度で移動可能なので、前進で移動する確率を後退で移動する確率よりも高くする事により、駐車枠検知に適する位置に達するのに要する時間の期待値が小さくなる。
【0215】
また、中断事象が車両の停止を伴わない場合の第1重複率閾値は、中断事象が車両の停止を伴う場合の第1重複率閾値よりも小さい。これにより、中断事象が車両の停止を伴わない場合は、車両の移動方向が駐車枠検知に適する位置に近づく方向となる判定結果が出やすくなり、車両の移動方向が駐車枠検知に適する位置から遠ざかる方向になり、車両を停止させる必要を生じる判定結果が出にくくなるので、駐車枠検知に適する位置に達するのに要する時間の期待値が小さくなる。中断事象が車両の停止を伴う場合は、それまでの進行方向に関係なく、車両を停止させる為の追加のタイムロスは発生しない(というよりも、既に発生しているので変わらない)。
【0216】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、車両を目標駐車位置に近づける制御を選択した場合、車体の前後軸が駐車枠の中心軸に近づく方向に車両を移動させるか、中断事象があった時の舵角を維持して移動させるか、または、中断した自動駐車の駐車経路に沿って移動させる。これにより、駐車支援装置10は、中断時の車両Vc1の位置で駐車枠検知ができない場合に、車体の前後軸が駐車枠の中心軸に近づく方向に車両Vc1を移動させる事で、駐車枠の中に車体が収まり、駐車枠検知ができるようにする事ができる。駐車枠検知ができるようにするには、駐車枠の中に車体が収まれば良いので、中断事象があった時の舵角を維持して移動させても良いし、中断した自動駐車の駐車経路に沿って移動させても同じ効果が得られる。
【0217】
また、駐車支援手段(例えば、車両制御装置3)は、車両を目標駐車位置から遠ざける制御を選択した場合、車両を遠ざける際の舵角は、舵角ゼロ、または、中断事象があった時の舵角を設定する。これにより、駐車支援装置10は、中断時の車両Vc1の位置で駐車枠検知ができない場合に、車両の状況に応じた舵角を設定して、駐車枠検知ができる位置に車両Vc1を安全に移動させる事ができる。
【0218】
また、駐車支援方法は、車両に設けられた撮像手段により、車両の周辺の撮影画像を取得するステップと、車両を駐車すべき駐車枠の位置を特定する駐車枠検知を、撮影画像に基づいて行うステップと、駐車枠への車両の駐車動作を支援するステップと、を有し、駐車動作中に所定の中断事象があった場合に、駐車枠検知に適するように車両を位置させる。これにより、車両の自動駐車の実行中に中断事象が生じた場合でも、車両の位置を駐車枠検知により再確認した上で、安全に自動駐車の再実行を支援できる。
【0219】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均など例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本開示は、自動駐車の実行中に中断事象が生じた場合でも安全かつ好適に自動駐車の実行を支援できる駐車支援装置および駐車支援方法として有用である。
【符号の説明】
【0221】
1 操舵制御装置
2 速度制御装置
3 車両制御装置
4 HMI装置
5 センサ制御装置
6 手動制動装置
7 車内LAN
10 駐車支援装置
CaB、CaF、CaL、CaR カメラ
Ln1、Ln2 白線
S1 車両センサ群
BL、BLC、BR、BRC、FL、FLC、FR、FRC ソナー
V2、V3、V4 他車両
Vc1 車両
Wh1 左前車輪
Wh2 右前車輪
Wh3 左後車輪
Wh4 右後車輪
WK1 駐車枠
図1
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