(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060725
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】味付き生卵の製造方法及び味付き生卵の製造装置
(51)【国際特許分類】
A23L 15/00 20160101AFI20230421BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
A23L15/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170482
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】521457310
【氏名又は名称】株式会社TSK総合企画室
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593000052
【氏名又は名称】楠ボイラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】吉村 末男
(72)【発明者】
【氏名】松川 泰三
(72)【発明者】
【氏名】谷口 一夫
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】桝田 琢也
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC10
4B042AD40
4B042AG07
4B042AH09
4B042AK20
4B042AP06
4B042AP07
4B042AT05
(57)【要約】
【課題】短時間で味付き生卵を製造することの可能な方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、殻付きの生卵Eを調味液Lに浸漬させるとともに圧力容器2に収容し、圧力容器2内の大気圧超への加圧と加圧状態からの減圧とを複数回行う、味付き生卵の製造方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殻付きの生卵を調味液に浸漬させるとともに圧力容器に収容し、前記圧力容器内の大気圧超への加圧と加圧状態からの減圧とを複数回行う、味付き生卵の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の味付き生卵の製造方法であって、
前記圧力容器内へ気体を供給することにより、前記圧力容器内を加圧する、味付き生卵の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の味付き生卵の製造方法であって、
前記加圧状態における前記圧力容器内の圧力は0.2MPa以上である、味付き生卵の製造方法。
【請求項4】
味付きの生卵の製造装置であって、
圧力容器と、前記圧力容器内を加圧する加圧手段と、前記圧力容器内を減圧する減圧手段と、前記加圧手段及び前記減圧手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、殻付きの生卵を調味液に浸漬させるとともに前記圧力容器に収容した状態で、前記加圧手段及び前記減圧手段を制御することにより、前記圧力容器内の大気圧超への加圧と加圧状態からの減圧とを複数回行う、味付きの生卵の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味付きの生卵を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生卵を調味液に浸漬させて、生卵に味を付ける方法がある。例えば、特許文献1には、生卵を調味液(味付き水溶液)内に所定時間浸漬して調味液を殻の内部に浸透させる生卵の味付け方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される方法では、生卵を調味液に24時間程度浸漬する必要があり、味付きの生卵を短時間で製造することはできなかった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、短時間で味付き生卵を製造することの可能な方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、殻付きの生卵を調味液に浸漬させるとともに圧力容器に収容し、前記圧力容器内の大気圧超への加圧と加圧状態からの減圧とを複数回行う、味付き生卵の製造方法が提供される。
【0007】
本発明によれば、圧力容器の加圧と減圧を複数回行うことで殻付き生卵の内部に調味液を素早く浸透させ、味付き卵を短時間で製造することが可能となっている。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、前記圧力容器内へ気体を供給することにより、前記圧力容器内を加圧する。
【0010】
好ましくは、前記加圧状態における前記圧力容器内の圧力は0.2MPa以上である。
【0011】
また、本発明によれば、味付きの生卵の製造装置であって、圧力容器と、前記圧力容器内を加圧する加圧手段と、前記圧力容器内を減圧する減圧手段と、前記加圧手段及び前記減圧手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、殻付きの生卵を調味液に浸漬させるとともに前記圧力容器に収容した状態で、前記加圧手段及び前記減圧手段を制御することにより、前記圧力容器内の大気圧超への加圧と加圧状態からの減圧とを複数回行う、味付きの生卵の製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る味付き生卵の製造装置1を示す模式図である。
【
図2】本発明の変形例に係る味付き生卵の製造装置1を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0014】
1.味付き生卵の製造装置
本発明の一実施形態に係る味付き生卵の製造装置1は、殻付きの生卵Eに調味液Lを浸透させ、味付きの生卵を製造するための装置である。本実施形態の味付き生卵の製造装置1は、
図1に示すように、圧力容器2と、加圧手段3と、減圧手段4と、加圧手段3及び減圧手段4を制御する制御手段5とを備える。また、本実施形態の味付き生卵の製造装置1は、殻付きの生卵Eを調味液Lに浸漬した状態で圧力容器2に収容するためのラック6及び浸漬容器7を備える。以下、各部材の具体的な構成を説明する。
【0015】
圧力容器2は、加圧手段3による加圧に耐える耐圧容器とされる。本実施形態において、圧力容器2は、水平方向に開口する開口部20aを有する円筒状の容器本体20と、扉21とを備える。容器本体20は、一度に製造する殻付きの生卵Eの個数に応じて、浸漬容器7を収容可能な大きさとされる。扉21は、上下方向にスライドすることで開閉する。扉21は、容器本体20の開口部20aを閉止することで、圧力容器2を密閉可能に構成される。なお、複数(例えば、3つ)の浸漬容器7を収容可能な構成とすることも好適である。
【0016】
加圧手段3は、圧縮気体供給源30と、加圧ライン31と、加圧弁32とを備える。圧縮気体供給源30は、コンプレッサ及び定圧レギュレータ(いずれも図示せず)を備え、コンプレッサにより圧縮された気体としての圧縮空気を定圧レギュレータにより既知の圧力として供給することができる。加圧ライン31は、圧力容器2の容器本体20と圧縮気体供給源30とを接続し、圧縮気体供給源30により生成された圧縮ガスを容器本体20へと供給する。加圧弁32は、加圧ライン31に設けられており、自動弁(電磁弁や電動弁)とされる。
【0017】
減圧手段4は、排気ライン40と、排気弁41とを備える。排気ライン40は、一端が圧力容器2の容器本体20に接続され、他端が大気に開放されている。排気弁41は、排気ライン40に設けられており、自動弁(電磁弁や電動弁)とされる。
【0018】
制御手段5は、加圧手段3の圧縮気体供給源30及び加圧弁32と、減圧手段4の排気弁41とを制御して、圧力容器2内の大気圧超への加圧及び加圧状態からの減圧を制御する。制御手段5は、具体的には例えば、CPU、メモリ(例えばフラッシュメモリ)、入力部及び出力部を備えた情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段5の上述した各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)あるいはマイコンが用いられる。ただし、制御手段5の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。
【0019】
ラック6は、複数のエッグトレイを複数段に収容することで、複数個の殻付きの生卵Eを保持可能に構成される。具体的には例えば、ラック6は、殻付きの生卵Eを30個載置可能なエッグトレイを40トレイ収容可能とされ、合計1200個の殻付きの生卵Eを保持可能とされる。また、浸漬容器7は、上部が開放された開放容器である。調味液Lが満たされた浸漬容器7に殻付きの生卵Eの載置されたラック6を収容することで、殻付きの生卵Eを調味液Lに浸漬させることが可能である。なお、例えばラック6が1200個の殻付きの生卵Eを保持する構成の場合で、圧力容器2が3つの浸漬容器7を収容可能なものであれば、3600個の殻付きの味付き生卵を一度に製造することが可能である。
【0020】
ここで、調味液Lは、例えば、塩(食塩)を含む液体である。塩(食塩)を含む液体は、好ましくは飽和食塩水、食塩水或いは飽和食塩水に出汁醤油を加えたもの、又は食塩水或いは飽和食塩水に他の調味料を添加したもの等である。一態様においては、調味液Lは飽和食塩水に出汁醤油を加えたものが好適である。
【0021】
また、本実施形態において、浸漬容器7は、図示しない台車に載置されて圧力容器2内へ搬入される(
図1参照)。浸漬容器7の圧力容器2内への搬入は、図示しない搬送手段により自動で行ってもよく、人力で行っても良い。
【0022】
なお、上述した味付き生卵の製造装置1の構成は一例に過ぎず、殻付きの生卵Eを圧力容器2内に収容した状態で圧力容器2内の大気圧超への加圧と加圧状態からの減圧を行うことが可能であれば、任意の構成とすることができる。
【0023】
2.味付き生卵の製造方法
次に、本発明の一実施形態に係る味付き生卵の製造方法を説明する。本実施形態の味付き生卵の製造方法は、上述した味付き生卵の製造装置1を用いた方法である。
【0024】
本実施形態の味付き生卵の製造方法では、具体的には、まず、殻付きの生卵Eが載置されたラック6を調味液Lが満たされた浸漬容器7に収容する。そして、調味液Lに殻付きの生卵Eを浸漬した状態の浸漬容器7を圧力容器2に収容(搬入)し、扉21を閉止する(収容工程)。
【0025】
次に、制御手段5の制御により、加圧手段3による圧力容器2内の大気圧超への加圧と、減圧手段4による圧力容器2内の加圧状態からの減圧とを複数回行う(加減圧工程)。ここで、「複数回行う」とは、加圧及び減圧をそれぞれ2回以上行うことを意味する。具体的には例えば、加圧手段3により大気圧超の加圧状態を10分維持し、その後、減圧手段4により減圧して大気圧状態を5分維持するという加減圧のサイクルを4回繰り返す(ただし、4回目において大気圧状態を5分維持する必要はなく、減圧後はすぐに終了可能である)。なお、繰り返す回数及び加圧状態及び大気圧状態の維持時間は、上述した例に限定されるわけではなく、適宜調整が可能である。また、加圧状態における圧力容器2内の圧力は、全サイクルで同じであっても良く、サイクルごとに異なっていても良い。加えて、減圧状態の圧力容器2内の圧力は、大気圧とすることが好適であるが、加圧状態よりも低圧であれば、大気圧以上であっても大気圧以下であっても良い。さらに、減圧状態の圧力容器2内の圧力も全サイクルで同じであっても良く、サイクルごとに異なっていても良い。
【0026】
ここで、加圧状態における圧力容器2内の圧力は、0.05MPa以上とすることが好ましく、0.1MPa以上とすることがより好ましく、0.2MPa以上とすることがさらに好ましい。また、加圧状態における圧力容器2内の圧力は、0.05~0.5MPaとすることが好ましく、0.1~0.4MPaとすることがより好ましく、0.2~0.3MPaとすることがさらに好ましい。加圧状態における圧力容器2内の圧力は、具体的には例えば、0.05,0.1,0.15,0.2,0.25,0.3,0.35,0.4,0.45,0.5MPaであり、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
そして、最後の減圧の後は、扉21を開放し、浸漬容器7を圧力容器2から搬出して、浸漬容器7からラック6を取り出す。これにより、調味液Lが浸透した殻付きの味付き生卵が完成する。
【0028】
なお、圧力容器2内を加圧しても、調味液Lの温度はほとんど変化せず、殻付きの生卵Eがゆで卵となることはない。
【0029】
3.作用効果
以上のように、本実施形態の味付き生卵の製造方法は、殻付きの生卵Eを調味液Lに浸漬させるとともに圧力容器2に収容し、加圧手段3及び減圧手段4により、圧力容器2内の大気圧超への加圧と加圧状態からの減圧とを複数回行うものである。このような構成となっていることにより、調味液Lを効果的に殻付きの生卵Eに浸透させ、短時間で味付き生卵を製造することが可能となっている。加えて、圧力容器2内へ圧縮空気を供給して圧力容器2内を加圧することにより、殻付きの生卵Eに割れが生じる等の影響を与えることなく、調味液Lを浸透させることが可能となっている、
【0030】
また、本実施形態の味付き生卵の製造装置1によれば、制御手段5が加圧手段3の圧縮気体供給源30及び加圧弁32と、減圧手段4の排気弁41とを制御することで、圧力容器2内を好適に加圧及び減圧することが可能となっている。
【0031】
4.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0032】
上述した実施形態において、加圧手段3の圧縮気体供給源30はコンプレッサ(圧縮機)を備え、コンプレッサにより圧縮空気を供給するものであった。しかしながら、圧縮気体供給源30は、圧力容器2内を加圧可能であれば、これに限定されない。例えば、圧縮気体供給源30として、圧縮空気が充填されたボンベを用いることも可能である。また、圧縮気体供給源30が供給する気体は、空気以外の気体、例えば窒素ガスであっても良い。
【0033】
上述した実施形態において、減圧手段4は排気ライン40及び排気弁41により構成されていたが、真空ポンプ等により吸気する構成とすることも可能である。
【0034】
上述した実施形態において、味付き生卵の製造装置1は浸漬容器7を備えており、味付き生卵の製造方法としては、殻付きの生卵Eが浸漬された浸漬容器7を圧力容器2内に収容し、その後、圧力容器2内の加圧及び減圧を行うものであった。しかしながら、本発明の味付き生卵の製造方法は、上述した方法に限定されず、本発明の味付き生卵の製造装置1は、浸漬容器7を備えていなくても良い。例えば、
図2に示すように、味付き生卵の製造装置1が直接調味液Lを投入可能な圧力容器2を備え、殻付きの生卵Eが載置されたラック6を圧力容器2内にそのまま収容する構成とすることも可能である。
図2の構成の場合、圧力容器2は、上方に開口部20aを有する構成とすることが好適である。この構成の場合、殻付きの生卵Eを圧力容器2に収容してから、調味液Lを圧力容器2に加えることも可能となる。なお、当該構成の場合、圧力容器2は、調味液Lを排出する排出手段8を備えていることが好ましい。排出手段8の一例としては、
図2に示すように、排出ライン80と排出弁81を備えた構成とすることができる。なお、
図2では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付しており、その説明は省略することとする。また、このような構成の場合、圧力容器2内に気体を供給するのではなく、圧力容器2内を調味液Lで満たし、調味液Lを加圧手段3としての加圧ポンプで加圧する構成とすることも可能である。ただし、この構成の場合、圧力容器2内を調味液Lで満たす必要があるため大量の調味液Lを必要とし、圧力容器2内の洗浄も大掛かりになる。したがって、上述した実施形態のように、圧力容器2内に気体を供給することで加圧する構成の方がコスト面及びメンテナンス性において優れている。
【0035】
上述した実施形態の味付き生卵の製造方法では、加圧手段3による加圧と減圧手段4による減圧を制御手段5により自動で制御していたが、その一部又は全部を手動で行うことも可能である。
【実施例0036】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
<実験1>
加圧と減圧を複数回繰り返すことによる調味液Lの浸透効果を調べるため、調味液Lとして飽和食塩水を用い、飽和食塩水に浸漬させた殻付きの生卵を小型の圧力容器内に収容して殻付きの生卵の味付けを行った。具体的には、小型の圧力容器としては、内径100mm、高さ150mm、厚さ3.0mmの円筒形のステンレス容器を用いた。そして、当該圧力容器に3個の殻付きの生卵及び飽和食塩水を投入し、全ての殻付きの生卵が飽和食塩水に浸漬するようにして、下記に示す条件の実施例1と比較例1の比較実験を行った。
実施例1:(加圧状態10分+大気圧5分)を4回繰り返す(4回目は加圧のみ・計55分)
比較例1:55分間加圧状態とする
実施例1,比較例1ともに、加圧状態での圧力容器内の圧力は0.2MPa(一定)とし、それぞれ3個の生卵の全卵(黄身+白身)の塩分濃度の平均値(平均塩分濃度)を算出した。塩分濃度は、殻から取り出した生卵をよく撹拌し黄身と白身をよく混ぜ合わせた卵液を塩分計(ドリテック製:EN-904IV)で計測した。なお、本実験環境においては、圧力容器内が大気圧状態から加圧状態になるまでの時間、加圧状態から大気圧状態になるまでの時間は数秒程度の短時間であり、無視できる時間である。
【0038】
【0039】
実験1の結果を表1に示す。実施例1は、加圧状態である時間が比較例1より少ないにもかかわらず、全卵の塩分濃度が高かった。これにより、加圧と減圧を複数回繰り返すことによる塩分の浸透効果が確認された。なお、加圧と減圧を繰り返すほうが、常時加圧を継続するより塩水(調味液)が浸透しやすい理由は明確ではない。ただし、発明者らは、「加圧の際、殻が縮むことなく中身のみが縮むこと」及び「常時加圧する場合と比較して、卵内外に適宜圧力差を発生させることで水分が移動しやすくなり殻の内部で塩水が混ざりやすいこと」が関係しているのではないかと考えている。
【0040】
<実験2>
次に、加圧と減圧を繰り返す際の最適な加圧状態時の圧力容器内の圧力を特定するため、飽和食塩水に浸漬させた殻付きの生卵に対し、下記に示す条件の比較例2-1及び実施例2-1~2-4の比較実験を行った。なお、圧力容器及び塩分計は実験1と同じものを使用した。
比較例2-1:-0.08MPa
実施例2-1:0.08MPa
実施例2-2:0.1MPa
実施例2-3:0.2MPa
実施例2-4:0.3MPa
ここで、比較例2-1は、加圧と減圧の繰り返しではなく、真空ポンプ等を用いた大気圧未満への減圧と大気圧への加圧の繰り返しとなる。また、比較例2-1及び実施例2-1~2-4ではいずれも、実施例1と同様、(加圧(減圧)状態10分+大気圧5分)の加減圧を4回繰り返し(4回目は加圧(減圧)のみ)、加減圧の総時間は55分であった。さらに、実験1と同様、各例では、それぞれ3個の生卵の全卵(黄身+白身を混ぜ合わせたもの)の塩分濃度の平均値を算出した。なお、実施例2-3は、実験1の実施例1と同じ条件であり、実験1の結果を用いている。
【0041】
【0042】
実験2の結果を表2に示す。まず、比較例2-1と実施例2-1の比較により、大気圧との差圧がいずれも0.08MPaと同じであっても、大気圧からの減圧と加圧を繰り返すよりも、大気圧からの加圧と減圧を繰り返すほうが全卵の塩分濃度が高くなることがわかった。なお、大気圧からの加圧と減圧を繰り返す方法は、大気圧からの減圧と加圧を繰り返す方法と比較して、圧力差を大きく取れる点及び、圧力容器の補強が不要であり設備コストを抑えることができる点からも有利である。
【0043】
また、実施例2-1~実施例2-4により、大気圧からの加圧と減圧を繰り返す場合、加圧状態時の圧力容器内の圧力は0.2MPa程度で塩分濃度が最も高くなることがわかった。すなわち、加圧状態時の圧力容器2内の圧力は、高ければ高いほど良いのではなく、0.2~0.3MPa程度が最も優れた結果になることがわかった。なお、加圧状態時の圧力容器2内の圧力を0.3MPa以下とすることで、殻付きの生卵Eに割れが生じることを防止でき、さらに、加圧のための設備等のコストも抑えることが可能となる。