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特開2023-60729CO2排出量計算システムおよびCO2排出量計算方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060729
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】CO2排出量計算システムおよびCO2排出量計算方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20230421BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170487
(22)【出願日】2021-10-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年9月9日に大成建設株式会社ウェブサイト「https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/210909_8453.html」において公開 (2)令和3年9月8日に日本経済新聞電子版「https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC313J10R30C21A8000000/」において公開 (3)令和3年9月9日に「日本経済新聞,朝刊,第14面」において公開
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 健一
(72)【発明者】
【氏名】中谷 晃治
(72)【発明者】
【氏名】中村 良平
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】建設現場で発生する二酸化炭素の排出量を計算するCO排出量計算システムおよびCO排出量計算方法を提案する。
【解決手段】本発明は、建設現場の入退場ゲートに配設されたカメラ2と、カメラ2により撮影された画像から建設機械を識別する処理装置1とを備えるCO排出量計算システムであって、処理装置1は、建設機械の画像に基づいて、建設機械の入退場を判定する判定部11と、判定の結果に基づいて、建設機械の二酸化炭素の排出量を計算する計算部12と、を備えるCO排出量計算システム100である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場の入退場ゲートに配設された撮影手段と、前記撮影手段により撮影された画像から建設機械を識別する計算手段とを備えるCO排出量計算システムであって、
前記計算手段は、
前記建設機械の画像に基づいて、前記建設機械の入退場を判定する判定部と、
前記判定の結果に基づいて、前記建設機械の二酸化炭素の排出量を計算する計算部と、を備えるCO排出量計算システム。
【請求項2】
前記建設機械が、重機であり、
前記判定部が、前記重機の前記建設現場での滞在期間を特定し、
前記計算部が、前記特定した滞在期間に基づいて、前記重機の二酸化炭素の排出量を計算する請求項1に記載のCO排出量計算システム。
【請求項3】
前記判定部が、前記滞在期間としての滞在日数を特定し、
前記計算部が、前記滞在日数と、前記重機の種類ごとの二酸化炭素の平均排出量とに基づいて、前記重機の二酸化炭素の排出量の総量を計算する請求項2に記載のCO排出量計算システム。
【請求項4】
コンピュータが、
建設現場の入退場ゲートに配設された撮影手段により撮影された建設機械の画像に基づいて、前記建設機械の入退場を判定するステップと、
前記判定の結果に基づいて、前記建設機械の二酸化炭素の排出量を計算するステップと、を実行するCO排出量計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場で発生する二酸化炭素(CO)の排出量を計算するCO排出量計算システムおよびCO排出量計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルの需要が高まっている。建設分野においても、カーボンニュートラルの取り組みを促進させるために、建設現場で発生する二酸化炭素の排出量を正確に把握する必要がある。従来では、現場担当者が重機や運搬車両などの建設機械の稼働状況を調査して二酸化炭素の排出量を計算していた。この場合の調査を、複数あるうちの一部の作業所において所定期間に亘るサンプル調査とし、全作業所での全期間の二酸化炭素の排出量を概算することもあった。
また、二酸化炭素の排出量を計算する従来技術が特許文献1,2に開示されている。特許文献1には、重機等の管理対象機器に搭載されているディーゼルエンジンの回転数を、回転数センサを用いて検出し、排出ガスの排出量を計測する技術が開示されている。また、特許文献2には、バックホウ等の機械に設けられた燃費計測盤で瞬時燃料消費量を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-227397号公報
【特許文献2】特開2012-59105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、稼働状況の調査は、多くの手間と時間を要してしまい、人的負担が大きい。サンプル調査で対象領域と対象期間を限定しても人的負担の低減は十分とはいえない。さらに、建設工事の種類(建築工事、トンネル工事、ダム工事など)に応じて、使用される重機の種類や台数などは大きく異なる。また、同じ建設工事であっても当該建設工事の各段階で使用される重機の種類や台数などが大きく異なることがある。これらの事情により、サンプル調査による対象領域と対象期間の選択次第で、二酸化炭素排出量の概算値が大きく異なる虞がある。
また、特許文献1,2の技術では、所定の計測機器を建設機械に搭載したり接続したりする必要がある。しかし、建設機械の所有者でない元請け業者が各下請け業者の建設機械に計測機器を取り付けることは事実上困難である。また、現場には不特定多数の建設機械が出入りすることを踏まえると、計測機器の取り付けは現実的な手法ではない。
このような観点から、本発明は、建設現場で発生する二酸化炭素の排出量を計算するCO排出量計算システムおよびCO排出量計算方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、建設現場の入退場ゲートに配設された撮影手段と、前記撮影手段により撮影された画像から建設機械を識別する計算手段とを備えるCO排出量計算システムであって、前記計算手段は、前記建設機械の画像に基づいて、前記建設機械の入退場を判定する判定部と、前記判定の結果に基づいて、前記建設機械の二酸化炭素の排出量を計算する計算部と、を備えるCO排出量計算システムである。
また、本発明は、コンピュータが、建設現場の入退場ゲートに配設された撮影手段により撮影された建設機械の画像に基づいて、前記建設機械の入退場を判定するステップと、前記判定の結果に基づいて、前記建設機械の二酸化炭素の排出量を計算するステップと、を実行するCO排出量計算方法である。
かかる構成によれば、撮影手段の画像から建設機械の入退場を判定部が自動で判定するため、建設機械の稼働状況の調査に対する人的負担はほとんどない。また、撮影手段を常時稼働すれば、建設工事の全作業所の全期間を調査対象にすることが容易となる。また、画像による判定で済むため、建設機械に計測機器を取り付ける必要がない。よって、各建設機械の二酸化炭素の排出量を容易に計算できる。
【0006】
また、前記建設機械が、重機であり、前記判定部が、前記重機の前記建設現場での滞在期間を特定し、前記計算部が、前記特定した滞在期間に基づいて、前記重機の二酸化炭素の排出量を計算することが好ましい。
建設現場に滞在する重機は建設計画に従って稼働するため、例えば1日当たりの重機の消費電力および消費燃料を事前に把握できる。よって、予め知得できる、重機の燃費および二酸化炭素の排出係数を用いることで、1日当たりの重機の二酸化炭素の排出量を計算できる。その結果、判定部が重機の建設現場での滞在期間を特定することで、計算部が建設現場で稼働した重機の二酸化炭素の排出量を容易に計算できる。
【0007】
また、前記判定部が、前記滞在期間としての滞在日数を特定し、前記計算部が、前記滞在日数と、前記重機の種類ごとの二酸化炭素の平均排出量とに基づいて、前記重機の二酸化炭素の排出量の総量を計算することが好ましい。
かかる構成によれば、建設現場で稼働した全種類の重機の二酸化炭素の排出量を確実に計算できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、建設現場で発生する二酸化炭素の排出量を計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のCO排出量計算システムの機能構成図である。
図2】建設機械が建設現場に入場する様子の説明図である。
図3】カメラが撮影した画像の説明図(その1)である。
図4】カメラが撮影した画像の説明図(その2)である。
図5】判定処理のフローチャートである。
図6】第1集計処理のフローチャートである。
図7】第2集計処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0011】
[構成]
図1は、本実施形態のCO排出量計算システムの機能構成図である。CO排出量計算システム100は、建設工事に携わる建設機械が排出する二酸化炭素の排出量を計算するシステムである。CO排出量計算システム100は、処理装置1とカメラ2とを備えている。処理装置1は、入力されたデータに対して所定の演算処理をする計算機である。カメラ2は、所定の被写体を撮影する機器である。処理装置1は、カメラ2により撮影された画像から建設機械を識別できる。図2は、建設機械が建設現場に入場する様子の説明図である。図3は、カメラが撮影した画像の説明図(その1)である。カメラ2は、建設現場の入退場ゲート3に配設されており、入退場ゲート3を通過する建設機械としての重機4を撮影できる。カメラ2の配設位置は適宜変更できるが、入退場ゲート3を通過する建設機械を撮影可能な位置であることが好ましい。
【0012】
処理装置1とカメラ2は、互いに無線通信可能に接続されているが、有線通信可能に接続されていてもよい。処理装置1は、入力部、出力部、制御部、および、記憶部といったハードウェアを備える。例えば、制御部がCPU(Central Processing Unit)から構成される場合、その制御部を含むコンピュータによる情報処理は、CPUによるプログラム実行処理で実現される。また、そのコンピュータに含まれる記憶部は、CPUの指令により、そのコンピュータの機能を実現するためのさまざまなプログラムを記憶する。これによりソフトウェアとハードウェアの協働が実現される。前記プログラムは、記録媒体に記録したり、ネットワークを経由したりすることで提供可能となる。
【0013】
処理装置1は、判定部11と、計算部12とを備えている。また、処理装置1は、建設計画DB13と、建設機械DB14と、入退場DB15とを記憶している。なお、DBは、データベースの略である。
判定部11は、カメラ2が撮影した建設機械の画像に基づいて、建設機械の入退場を判定する。
計算部12は、判定部11の判定の結果に基づいて、建設機械の二酸化炭素の排出量を計算する。
建設計画DB13は、建設現場で行われる建設工事の計画を示す建設計画情報を含む。建設計画情報は、例えば、建設工事の作業日程、建設工事の作業工程、各作業工程に用いる建設機械の種類、建設機械が運搬車両である場合は、運搬車両による土砂等の搬送先(目的地)などの情報を対応付けて含むが、これらに限定されない。搬出先が決まれば、建設現場と搬出先を結ぶ搬送経路が決まる。搬送経路を建設計画情報に含めてもよい。処理装置1は、例えば、処理装置1と通信可能に接続されている外部システム(図示略)から建設計画情報を取得できる。
建設機械DB14は、建設工事に携わる建設機械を示す建設機械情報を含む。建設機械情報は、例えば、建設機械の種類(例:油圧ショベル、ブルドーザ、クレーンなどの重機、ダンプトラックなどの運搬車両)、建設機械の燃費(平均値)、建設機械のCO排出係数(平均値)などの情報を対応付けて含むが、これらに限定されない。処理装置1は、例えば、処理装置1と通信可能に接続されている外部システム(図示略)から建設機械情報を取得できる。
入退場DB15は、建設機械が入退場ゲート3を通過して建設現場に入場したり、建設現場から退場したりしたことの履歴を示す入退場情報を含む。入退場情報は、例えば、建設機械の種類、建設現場への入場を示す入場フラグ、建設現場からの退場を示す退場フラグ、入退場の日時などの情報を対応付けて含むが、これらに限定されない。処理装置1は、例えば、判定部11の判定によって入退場情報を取得できる。
【0014】
(建設機械の入退場の判定、種類の判定)
判定部11は、例えば、カメラ2の撮影画像中の被写体となる建設機械を追跡して入退場を判定できる。図3に示すように、カメラ2が入退場ゲート3と、建設現場内と、建設現場外(一般道路)を撮影する場合、判定部11は、入退場ゲート3に重複するゲート上面5を撮影画像上に用意する。このとき、撮影画像において、ゲート上面5の左側を「建設現場外」と定義し、ゲート上面5の右側を「建設現場内」と規定する。また、建設現場外から建設現場内に向かって重機4がゲート上面5を横切る場合に「入場」とし、建設現場内から建設現場外に向かって重機4がゲート上面5を横切る場合に「退場」と規定できる。
判定部11は、例えば、カメラ2の撮影画像から、物体検出技術を用いて建設機械を検出できる。建設機械の検出は、静止画に対して行ってもよいし、動画に対して行ってもよい。動画の場合はフレームごとに建設機械の検出ができる。図3に示すように、判定部11は、重機4を検出すると重機4を囲むバウンディングボックス6を生成できる。バウンディングボックス6は、フレームごとに生成できる。また、判定部11は、バウンディングボックス6の中央座標を求め、フレームごとに中央座標を繋ぐことで、追跡線7を生成できる。追跡線7により、重機4の追跡(トラッキング)が可能となる。追跡線7がゲート線分5を建設現場外から建設現場内に向かって横切った場合、判定部11は、重機4が入場したと判定できる。また、追跡線7がゲート線分5を建設現場内から建設現場外に向かって横切った場合、判定部11は、重機4が退場したと判定できる。
建設機械の入退場の判定の方法は、上記に限らない。図4は、カメラが撮影した画像の説明図(その2)である。図4に示すように、カメラ2が入退場ゲート3と、建設現場内と、建設現場外(一般道路)を撮影する場合、判定部11は、入退場ゲート3に重複するゲートベクトル8を撮影画像上に用意する。ゲートベクトル8の方向は、入退場ゲート3の延在方向であり、便宜上図4に示す通り、斜め上方向とする(逆方向でもよい)。「建設現場外」と「建設現場内」の定義は、すでに説明した通りであるが、図示の便宜上、図4にてゲート上面5の図示は省略してある。また、図4に示すように、判定部11は、入退場ゲート3を通過する重機4の移動を示す移動ベクトル9を撮影画像上に用意する。移動ベクトル9は、例えば、2つのフレーム中の重機4の画像の位置の差分を判定部11が特定することで求められる。
判定部11は、ゲートベクトル8と移動ベクトル9が交差するか否かの交差判定をする。交差すると判定した場合、判定部11は、ゲートベクトル8と移動ベクトル9のクロス積(ベクトル積、外積)を計算する。判定部11は、計算されたクロス積(ベクトル)の方向(2次元の画像の法線方向)から重機4の入退場を判定できる。判定部11は、クロス積の符号が正(+)であった場合、重機4が入場したと判定できる。また、判定部11は、クロス積の符号が負(-)であった場合、重機4が退場したと判定できる。
【0015】
また、判定部11は、例えば、AI(Artificial Intelligence)を用いて入退場する建設機械の種類を判定できる。具体的には、システム開発者は、建設機械の画像データを入力とし、建設機械の種類を規定する値を出力する学習器(学習済みモデル)を用意する。入力する画像データは、建設機械の種類ごとに用意できる。また、入力する画像データは、建設機械の外観を捉える方向ごとに用意したり、建設機械が呈する姿勢(建設機械がクレーンの場合、ブームが折り畳まれているときの姿勢や、起立しているときの姿勢など)ごとに用意したりできる。機械学習の学習段階では、入力と出力の対応関係が学習器に記憶される。機械学習の利用段階では、判定部11は、すでに説明した物体検出技術を用いて建設機械を検出できる。判定部11は、検出した建設機械の画像データを学習器に入力することで、当該建設機械の種類を判定できる。また、判定部11は、すでに説明した通り、建設機械の入退場を判定できる。判定部11は、判定結果に応じて入退場情報を生成し、入退場DB15を更新できる。
【0016】
(二酸化炭素の排出量の計算[1]-重機の場合)
建設機械の各々は、建設計画DB13の建設計画情報に従って作業する。建設機械が重機である場合、重機は、1日当たりの稼働時間が決まっている。また、重機による二酸化炭素の発生源は、建設作業に伴う燃料消費である。よって、重機1台あたりの二酸化炭素の排出量(CO2排出量)は、建設現場での滞在日数に基づいて計算できる。具体的には、計算部12が以下の式1で計算できる。
CO2排出量(kg-CO2
= 滞在日数 × 燃費(L/日) × CO2排出係数(kg-CO2/L)
・・・式1
ここで、燃費(L/日)とCO2排出係数(kg-CO2/L)は、重機の種類に応じて、または重機の機械的性能に応じて決めることができ、建設機械DB14の建設機械情報に含まれている。燃費(L/日) × CO2排出係数(kg-CO2/L)は、対象種類の重機の二酸化炭素の平均排出量に相当する。計算部12は、対象種類の重機の燃費(L/日)とCO2排出係数(kg-CO2/L)を建設機械情報から取得できる。また、滞在日数は、判定部11が入退場DB15の入退場情報を参照して、対象種類の重機の入場と退場を判定することで特定できる。計算部12は、建設工事に携わるすべての重機に対して式1を適用することで、建設工事の全期間に亘る二酸化炭素の排出量の総量を計算できる。
【0017】
なお、滞在日数を特定するためには、判定部11による重機の判定の際、同種の複数の重機の各々を識別することが本来必要である。一般的には、同種の複数の重機が任意のタイミングで建設現場に入退場するため、建設現場での滞在期間が一致または一部重複する同種の重機が複数存在する場合がある。この場合、カメラ2の撮影画像のみに基づく判定により重機の各々を識別することは容易でない。しかし、二酸化炭素の排出量の計算に関しては、同種の複数の重機の各々を識別する必要はない。入退場DB15の入退場情報によれば、建設現場に滞在する対象種類の重機の各日の滞在台数(各日における入場台数と退場台数との差分)を求めることができる。よって、計算部12は、対象種類の重機の1日あたりの二酸化炭素の排出量(CO2排出量)を、
CO2排出量(kg-CO2
= 滞在台数 × 燃費(L/日) × CO2排出係数(kg-CO2/L)
・・・式2
として計算できる。計算部12は、計算した排出量を建設工事の全期間に亘って積算することで、二酸化炭素の排出量の総量を計算できる。また、計算部12は、建設工事の全期間でなく、一部期間(例:1カ月間)に亘って積算し、当該一部期間の二酸化炭素の排出量を計算してもよい。また、計算部12は、一部期間の二酸化炭素の排出量の計算を、期間を逐次ずらして行った後、すべての計算結果を足し合わせることで、全期間に亘る二酸化炭素の排出量の総量を計算できる。
本実施形態の判定部11は、カメラ2の画像から重機の種類は判定するが、同種の複数の重機の各々を識別しない。このような処理により、画像認識に基づく建設機械の管理負担を低減できる。
【0018】
(二酸化炭素の排出量の計算[2]-運搬車両の場合)
建設機械が運搬車両である場合、運搬車両も重機と同様、建設計画DB13の建設計画情報に従って作業する。運搬車両は、土砂や廃棄物などの運搬物を建設現場から搬出するときの搬出先(目的地)および搬送経路が決まっている。また、運搬車両による二酸化炭素の発生源は、運搬作業に伴う燃料消費である。よって、運搬車両1台あたりの二酸化炭素の排出量(CO2排出量)は、建設現場と搬出先との間を往復したときの走行距離に基づいて計算できる。具体的には、計算部12が以下の式3で計算できる。
CO2排出量(kg-CO2
= 走行距離(km) × 燃費(L/km) × CO2排出係数(kg-CO2/L)
・・・式3
ここで、燃費(L/km)とCO2排出係数(kg-CO2/L)は、運搬車両の種類に応じて、または運搬車両の機械的性能に応じて決めることができ、建設機械DB14の建設機械情報に含まれている。燃費(L/km) × CO2排出係数(kg-CO2/L)は、対象種類の運搬車両の二酸化炭素の平均排出量に相当する。計算部12は、対象種類の運搬車両の燃費(L/km)とCO2排出係数(kg-CO2/L)を建設機械情報から取得できる。また、走行距離(km)は、判定部11が入退場DB15の入退場情報を参照して、対象種類の運搬車両の入場と退場を判定することで特定できる。計算部12は、建設工事に携わるすべての運搬車両に対して式3を適用することで、建設工事の全期間に亘る二酸化炭素の排出量の総量を計算できる。
【0019】
なお、走行距離を特定するためには、判定部11による運搬車両の判定の際、同種の複数の運搬車両の各々を識別することが本来必要である。一般的には、同種の複数の運搬車両が任意のタイミングで建設現場に入退場し、建設現場と搬出先との間を複数回往復するため、建設現場から退場して搬出中である同種の運搬車両が複数存在する場合がある。この場合、カメラ2の撮影画像のみに基づく判定により運搬車両の各々を識別することは容易でない。しかし、二酸化炭素の排出量の計算に関しては、同種の複数の運搬車両の各々を識別する必要はない。入退場DB15の入退場情報によれば、建設現場から退場する運搬車両の各日の退場回数を求めることができる。よって、計算部12は、対象種類の運搬車両の1日あたりの二酸化炭素の排出量(CO2排出量)を、
CO2排出量(kg-CO2
= 退場回数 × 搬送経路距離(km) ×2 × 燃費(L/km) × CO2排出係数(kg-CO2/L)
・・・式4
として計算できる。土砂等の搬出先が建設計画DB13の建設計画情報に含まれているため、搬送経路距離(km)は、建設計画DB13の建設計画情報から決定できる。「搬送経路距離(km) ×2」は、土砂等の搬出1回分の走行距離(往復)となる。計算部12は、計算した排出量を建設工事の全期間に亘って積算することで、二酸化炭素の排出量の総量を計算できる。また、計算部12は、建設工事の全期間でなく、一部期間(例:1カ月間)に亘って積算し、当該一部期間の二酸化炭素の排出量を計算してもよい。また、計算部12は、一部期間の二酸化炭素の排出量の計算を、期間を逐次ずらして行った後、すべての計算結果を足し合わせることで、全期間に亘る二酸化炭素の排出量の総量を計算できる。
本実施形態の判定部11は、カメラ2の画像から運搬車両の種類は判定するが、同種の複数の運搬車両の各々を識別しない。このような処理により、画像認識に基づく建設機械の管理負担を低減できる。
【0020】
(建設機械の個別識別の可能性)
例えば、対象の複数の建設機械が同じ種類であっても、所定条件を満たした場合、判定部11は、物体検出技術によりカメラ2の撮影画像のみで建設機械を個別に識別できる。例えば、所定条件が、同じ種類の複数の建設機械の色が異なっており、建設機械の対象数が少数であることである。交差点の人流解析のように検知対象が不特定多数となる場合には個別識別は適用困難であるが、建設現場に関しては、建設機械の種類ごとの入退場数はせいぜい数台であり、物体検出技術を適用できる可能性は高い。
【0021】
色の異なる同じ種類の複数の建設機械をカメラ2撮影した場合、判定部11は、バウンディングボックスを用いて建設機械の各々の部分画像を切り出し、切り出した部分画像の各々において、ヒストグラムや特徴点などを抽出し比較することで、同種の建設機械の各々を識別できる。例えば、赤色の第1クレーンと青色の第2クレーンが建設現場に入場した際、判定部11が第1クレーンの部分画像の第1ヒストグラムと、第2クレーンの部分画像の第2ヒストグラムを抽出しておく。その後、退場するクレーンをカメラ2が撮影した場合、判定部11は、退場するクレーンの部分画像の第3ヒストグラムを抽出し、第3ヒストグラムを、第1、第2ヒストグラムの各々と比較し、第1、第2類似度を算出する。判定部11は、第1、第2類似度のうち類似度がより大きなクレーンを退場するクレーンと判定できる。なお、上記による判定の精度は、同じ種類であっても建設機械の型式の類似性や色の類似性などに起因して変動する。
計算部12は、判定部11によって個別に識別できた重機に対しては式1を用いて二酸化炭素の排出量を計算でき、個別に識別できない重機に対しては式2を用いて二酸化炭素の排出量を計算できる。また、計算部12は、判定部11によって個別に識別できた運搬車両に対しては式3を用いて二酸化炭素の排出量を計算でき、個別に識別できない運搬車両に対しては式4を用いて二酸化炭素の排出量を計算できる。
【0022】
[処理]
(判定処理)
本実施形態の処理装置1が行う処理について説明する。処理装置1が行う処理は、判定処理と、第1集計処理と、第2集計処理であり、以下、各処理について説明する。
図5は、判定処理のフローチャートである。例えば、判定処理は、1日の作業終了後、カメラ2が撮影した1日分の画像データを対象にして開始する。まず、判定部11は、カメラ2の撮影画像に表示されている建設機械の入退場の判定をする(ステップA1)。具体的には、判定部11は、物体検出技術を用いて入退場ゲート3を通過する建設機械を検出し、追跡することで、入場または退場を判定する。入場したことを示す入場フラグおよび退場したことを示す退場フラグのいずれかと、入場または退場があった日時は、入退場DB15の入退場情報に更新登録される。次に、判定部11は、学習器を用いて、検出された建設機械の種類を判定する(ステップS2)。判定された建設機械の種類は、入退場情報に更新登録される。対象となる1日分画像データに表示されたすべての建設機械について、図5の判定処理が行われる。また、建設工事の全期間に対して図5の判定処理が繰り返される。
【0023】
(第1集計処理)
図6は、第1集計処理のフローチャートである。第1集計処理は、重機と判定された建設機械について行われ、例えば、1カ月分の入退場情報を対象にして開始する。まず、計算部12は、重機の種類ごとにステップB1~B4のループ処理を実行する。ループ処理において、計算部12は、重機の滞在日数を特定する(ステップB2)。具体的には、計算部12は、入退場DB15の入退場情報を参照して、対象の重機の入場のタイミングと退場のタイミングを読み出し、両タイミングの間隔を特定することで、滞在日数を特定できる。次に、計算部12は、重機の二酸化炭素の排出量を計算する(ステップB3)。具体的には、計算部12は、建設機械DB14の建設機械情報を参照して、対象の重機の燃費とCO2排出係数を取得する。また、計算部12は、式1を用いることで対象の重機のCO2排出量を計算できる。同じ種類の重機が複数存在する場合には、同じ種類の重機の各々についてステップB2,B3を繰り返し、CO2排出量を計算する。なお、同じ種類の複数の種類の重機の各々を識別できない場合には、式2を用いてCO2排出量を計算できる。結果的には、ループ処理によって重機の種類ごとの二酸化炭素の排出量を計算できる。次に、計算部12は、種類ごとの重機の二酸化炭素の排出量を足し合わせることにより、二酸化炭素の排出量の総量を計算する(ステップB4)。また、建設工事の全期間のうち未計算の他の期間に対して図6の第1集計処理を繰り返し適用することで、建設工事の全期間に排出された二酸化炭素の総量を計算できる。
【0024】
(第2集計処理)
図7は、第2集計処理のフローチャートである。第2集計処理は、運搬車両と判定された建設機械について行われ、例えば、1カ月分の入退場情報を対象にして開始する。まず、計算部12は、運搬車両の種類ごとにステップC1~C4のループ処理を実行する。ループ処理において、計算部12は、運搬車両の走行距離を特定する(ステップC2)。具体的には、計算部12は、入退場DB15の入退場情報を参照して、対象の運搬車両の入場のタイミングと退場のタイミングを読み出し、両タイミングによる往復回数を特定することで、走行距離を特定できる。次に、計算部12は、運搬車両の二酸化炭素の排出量を計算する(ステップC3)。具体的には、計算部12は、建設機械DB14の建設機械情報を参照して、対象の運搬車両の燃費とCO2排出係数を取得する。また、計算部12は、式3を用いることで対象の運搬車両のCO2排出量を計算できる。同じ種類の運搬車両が複数存在する場合には、同じ種類の運搬車両の各々についてステップC2,C3を繰り返し、CO2排出量を計算する。なお、同じ種類の複数の種類の運搬車両の各々を識別できない場合には、式4を用いてCO2排出量を計算できる。結果的には、ループ処理によって運搬車両の種類ごとの二酸化炭素の排出量を計算できる。次に、計算部12は、種類ごとの運搬車両の二酸化炭素の排出量を足し合わせることにより、二酸化炭素の排出量の総量を計算する(ステップC4)。また、建設工事の全期間のうち未計算の他の期間に対して図7の第2集計処理を繰り返し適用することで、建設工事の全期間に排出された二酸化炭素の総量を計算できる。
【0025】
本実施形態によれば、カメラ2の画像から建設機械の入退場を判定部11が自動で判定するため、建設機械の稼働状況の調査に対する人的負担はほとんどない。また、カメラ2常時稼働すれば、建設工事の全作業所の全期間を調査対象にすることが容易となる。また、画像による判定で済むため、建設機械に計測機器を取り付ける必要がない。よって、各建設機械の二酸化炭素の排出量を容易に計算できる。
特に、建設機械が重機である場合、重機の滞在期間(滞在日数など)を特定することで、計算部12が建設現場で稼働した重機の二酸化炭素の排出量を容易に計算できる。また、滞在日数と、重機の種類ごとの二酸化炭素の平均排出量とに基づいて、重機の二酸化炭素の排出量の総量を計算することで、建設現場で稼働した全種類の重機の二酸化炭素の排出量を確実に計算できる。
また、建設機械が運搬車両である場合、運搬車両の走行距離を特定することで、計算部12が建設現場と搬出先との間を往復した運搬車両の二酸化炭素の排出量を容易に計算できる。
【0026】
[他の実施形態]
建設機械が運搬車両である場合、運搬車両を個別に識別して管理することで、運搬車両の二酸化炭素の排出量を計算してもよい。具体的には、運搬車両自身を識別する識別標識を付したボードを運転車両の各々に用意する。運転車両が入退場ゲート3を通過する際にカメラ2が識別標識を読み取り可能となるように、ボードを適切な位置(運搬車両のダッシュボードなど)に配置しておくことが好ましい。識別標識は、例えば、バーコード、カラーバーコード、QRコード(登録商標)、AR(Augmented Reality)マーカでよいが、これらに限定されない。識別標識には、運搬車両を個別に識別する識別番号の情報を持たせることができる。また、識別標識には、運搬車両の搬出先(目的地)、走行距離などの情報を持たせてもよい。
識別標識を有する運搬車両が入退場ゲート3を通過する場合、カメラ2が運搬車両を撮影する際に運転車両のボードに付した識別標識を読み取り、識別番号や走行距離等の情報を取得できる。判定部11は、運搬車両の種類や入退場を判定するだけでなく、運搬車両の個別に識別できたり、走行距離を把握できたりする。よって、計算部12は、識別された運搬車両の実際の走行距離を取得でき、CO2排出量を計算できる。
【0027】
ダンプトラックによる残土処理において、ダンプトラックは1日の作業で建設現場と搬出先との間を複数回往復する。ダンプトラックの走行距離は、建設現場と搬出先との往復に基づいて決定することが通常である。しかし、1日の最後の土砂搬出をするダンプトラックは、基本的には建設現場に戻らないので、最後の搬出に対して復路の走行距離はカウントしないという考え方がある。このような考え方に従った場合、運搬車両を個別に識別して管理すると、対象となる複数のダンプトラックの走行距離の合計をより正確に求めることができる。その結果、二酸化炭素の排出量の総量をより正確に求めることができる。
【0028】
例えば、5台のダンプトラックが片道10kmの走行距離を3往復する場合について説明する。判定部11が5台のダンプトラックを個別に識別しないで入退場の判定をする場合、5台のダンプトラックの走行距離の合計は、(3搬出×5台×2-1)×10km=290kmと求められる。5台のダンプトラックのいずれが最後の搬出を行うかが不明なため、復路の走行距離をカウントしない処理は、搬出が最後となる1台のダンプトラックにしか適用できない。
一方、5台のダンプトラックに識別標識を持たせることで、判定部11が5台のダンプトラックを個別に識別して入退場の判定をする場合、5台のダンプトラックの走行距離の合計は、(3搬出×2-1)×5台×10km=250kmと求められる。判定部11は、5台のダンプトラックの各々を識別可能であるため、5台のダンプトラック各々の最後の搬出を特定できる。このため、復路の走行距離をカウントしない処理は、5台のダンプトラック各々に適用できる。
上記によれば、建設機械が、識別標識を有する運搬車両である場合、判定部11が運搬車両を個別に識別して管理できるため、最後の搬出に対して復路の走行距離はカウントしないという考え方に即した、対象の複数の運搬車両の走行距離の合計をより正確に求めることができる。
【0029】
[特許請求の範囲との関係]
処理装置1は、特許請求の範囲に記載の「計算手段」の具体例である。
カメラ2は、特許請求の範囲に記載の「撮影手段」の具体例である。
重機4と運搬車両は、特許請求の範囲に記載の「建設機械」の具体例である。
【0030】
[変形例]
(a):判定部11は、機械学習によって、建設機械の入退場を判定することができる。具体的には、システム開発者は、カメラ2が撮影した画像のうち、入退場ゲート3を退場する建設機械が撮影された画像に対して「退場」のアノテーションを付し、入退場ゲート3を入場する建設機械が撮影された画像に対して「入場」のアノテーションを付しておく。また、システム開発者は、建設機械の外観を捉える方向や姿勢を適宜変更した画像群に、上記のアノテーションが付されたものを読み込ませた学習器を用意する。判定部11は、用意した学習器を用いて、カメラ2から検出された建設機械の入退場を判定できる。
(b):1つの建設現場に対して、入退場ゲートが複数存在する場合であっても本発明を適用できる。この場合、入退場DB15の入退場情報に、入退場ゲートの識別子を含めるように設計変更ことが好ましい。このような設計変更により、建設機械が入場する入退場ゲートを特定したり、退場する入退場ゲートを特定したりできる。
(c):建設機械が運搬車両である場合、当該運搬車両の搬送先が複数存在する場合であっても本発明を適用できる。この場合、建設計画DB13の建設計画情報に、運搬車両の搬出先(目的地)を複数含めたり、搬出先の順番などを加味した搬送経路を含めたりするように設計変更することが好ましい。搬送経路が決まれば、運搬車両の走行距離が決まり、式3、式4により運搬車両の二酸化炭素の排出量を計算できる。
【0031】
(d):本実施形態で説明した種々の技術を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
(e):本実施形態で説明したソフトウェアをハードウェアとして実現することもでき、ハードウェアをソフトウェアとして実現することもできる。
(f):その他、本発明の構成要素について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
100 CO排出量計算システム
1 処理装置(計算手段)
11 判定部
12 計算部
13 建設計画DB
14 建設機械DB
15 入退場DB
2 カメラ(撮影手段)
3 入退場ゲート
4 重機(建設機械)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7