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特開2023-60754インクジェット記録システム、印字情報補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060754
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】インクジェット記録システム、印字情報補正方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230421BHJP
   B41J 2/06 20060101ALI20230421BHJP
   B41J 2/12 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/06
B41J2/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170524
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ムハマド イザット フィルダウス
(72)【発明者】
【氏名】盛合 拓也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
(72)【発明者】
【氏名】本柳 立太
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB13
2C056EB27
2C056EB37
2C056EC07
2C056EC26
2C056EC28
2C056EC77
2C056FA05
2C056HA58
2C057AF30
2C057DB02
2C057DC09
2C057DD10
2C057DE03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2次元コード評価に基づくフィードバック制御を可能とする。
【解決手段】印字された所定の情報を撮像するカメラと、所定の情報の印字領域を検出する検出部と、印字領域を所定のドット領域に分割し、分割したドット領域のそれぞれにドットの着弾位置を検査する基準位置グリッドを生成する基準位置グリッド化部と、印字領域と基準位置グリッドとを重ね合わせた重畳画像と、ドットの着弾位置のずれの度合いを判定する判定グレード基準テーブルとに基づき、ドットの着弾位置を検査する読み取り判定部と、検査の結果と、ずれの度合いに応じた印字領域を構成するドットの補正量を定めた補正データとに基づき、ドットの着弾位置を補正するフィードバック信号を生成するドット位置補正部とを有する処理装置とを有し、フィードバック信号から得られる補正されたドットの着弾位置に基づき印字対象にインクを吐出することにより、フィードバックを可能とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを印字対象に吐出し、当該吐出したインクにより形成されるドットから構成される所定の情報を前記印字対象に印字するインクジェットプリンタと、
前記印字対象に印字された前記所定の情報を撮像するカメラと、
前記所定の情報が撮像された画像から、前記所定の情報の印字領域を検出する検出部と、
検出された前記印字領域を所定のドット領域に分割し、分割したドット領域のそれぞれに、前記ドットの着弾位置を検査する基準となるドットを付与した基準位置グリッドを生成する基準位置グリッド化部と、
前記印字領域と前記基準位置グリッドとを重ね合わせた重畳画像と、前記基準となるドットの位置に対する前記ドットの着弾位置のずれの度合いを判定するための判定グレード基準テーブルとに基づいて、前記基準となるドットの位置に対するドットの着弾位置を検査する読み取り判定部と、
前記検査の結果と、前記ずれの度合いに応じて定められた前記印字領域を構成するドットの補正量を定めた補正データとに基づいて、前記ドットの着弾位置を補正するためのフィードバック信号を生成し、前記インクジェットプリンタに出力するドット位置補正部と、を有する処理装置と、を有し、
前記インクジェットプリンタは、前記フィードバック信号から得られる補正された前記ドットの着弾位置に基づいて、前記印字対象にインクを吐出する、
ことを特徴とするインクジェット記録システム。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録システムであって、
前記ドット位置補正部は、前記インクの粒子に対する帯電量を調整することにより前記ドットの補正量を定めた前記補正データを用いて前記フィードバック信号を生成し、
前記インクジェットプリンタは、前記帯電量が調整されたインクを前記印字対象に吐出する、
ことを特徴とするインクジェット記録システム。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェット記録システムであって、
前記読み取り判定部は、前記検出部が前記所定の情報の印字領域として2次元コードを検出した場合、前記印字対象に対する印字が所定の印字評価の基準を満たしているか否かを判定するための判定項目が、インクジェットプリンタにより補正可能な項目か否かを判定し、
前記ドット位置補正部は、前記補正可能な項目であると判定された場合、前記所定の印字評価の基準を満たす評価補正データを生成し、生成した前記評価補正データを用いて、前記ドットの着弾位置を補正するための評価フィードバック信号を生成し、当該評価フィードバック信号と前記フィードバック信号とを、前記インクジェットプリンタに出力する、
ことを特徴とするインクジェット記録システム。
【請求項4】
請求項2に記載のインクジェット記録システムであって、
前記インクジェットプリンタは、
印字に関する設定情報を入力する操作パネルを有し、
前記処理装置から出力された前記フィードバック信号に含まれる前記補正データに関する情報を前記操作パネルに表示し、ユーザから、前記補正データに含まれる前記インクの粒子に対する帯電量を調整するための値の入力を受け付け、当該値に基づいて前記帯電量が調整されたインクを前記印字対象に吐出する、
ことを特徴とするインクジェット記録システム。
【請求項5】
請求項4に記載のインクジェット記録システムであって、
前記インクジェット記録システムは、ネットワークを介して接続された端末を有し、
前記端末は、
表示部と、
入力部と、を有し、
前記インクジェットプリンタは、
前記操作パネルに表示した前記補正データに関する情報を前記端末に送信し、前記端末から受信した前記補正データに含まれる前記インクの粒子に対する帯電量を調整するための値に基づいて前記帯電量が調整されたインクを前記印字対象に吐出し、
前記端末は、
前記インクジェットプリンタから送信された前記補正データに関する情報を前記表示部に表示し、ユーザから、前記入力部が前記帯電量を調整するための値の入力を受け付け、当該値を前記インクジェットプリンタに送信する、
ことを特徴とするインクジェット記録システム。
【請求項6】
請求項3に記載のインクジェット記録システムであって、
前記読み取り判定部は、ISO15415判定項目に含まれる項目のうち、(a)変位幅、(b)反射マージン、(c)未使用誤り訂正、(d)位置検出パターンの損傷、の各項目を前記補正可能な項目であると判定し、
前記ドット位置補正部は、前記(a)~(d)の各項目について、前記評価補正データを生成し、生成した前記評価補正データを用いて、前記評価フィードバック信号を生成する、
ことを特徴とするインクジェット記録システム。
【請求項7】
請求項3に記載のインクジェット記録システムであって、
前記読み取り判定部は、ISO15415判定項目に含まれる項目のうち、(e)シンボルコントラスト(SC)、(f)シンボル軸の非均一性、(g)モジュール配置の非均一性、の各項目を前記補正可能でない項目であると判定し、前記(e)~(g)の各項目について、管理者の注意を喚起するための警告情報を出力する、
ことを特徴とするインクジェット記録システム。
【請求項8】
インクジェットプリンタが印字対象に印字した、インクにより形成されるドットから構成される所定の情報を補正する印字情報補正方法であって、
カメラが、前記印字対象に印字された前記所定の情報を撮像し、
検出部が、前記所定の情報が撮像された画像から、前記所定の情報の印字領域を検出し、
基準位置グリッド化部が、検出された前記印字領域を所定のドット領域に分割し、分割したドット領域のそれぞれに、前記ドットの着弾位置を検査する基準となるドットを付与した基準位置グリッドを生成し、
読み取り判定部が、前記印字領域と前記基準位置グリッドとを重ね合わせた重畳画像と、前記基準となるドットの位置に対する前記ドットの着弾位置のずれの度合いを判定するための判定グレード基準テーブルとに基づいて、前記基準となるドットの位置に対するドットの着弾位置を検査し、
ドット位置補正部が、前記検査の結果と、前記ずれの度合いに応じて定められた前記印字領域を構成するドットの補正量を定めた補正データとに基づいて、前記ドットの着弾位置を補正するためのフィードバック信号を生成し、前記インクジェットプリンタに出力し、
前記インクジェットプリンタが、前記フィードバック信号から得られる補正された前記ドットの着弾位置に基づいて、前記印字対象にインクを吐出する、
ことを特徴とする印字情報補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インクジェット記録システム、印字情報補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や薬品の包装容器には、製造年月日や賞味期限、製造ロットなどの表示が法律上義務づけられており、それを実現するのがインクジェット記録装置等の印字装置である。インクジェット記録装置は、搬送ライン(包装ラインを含む)に設置され、次々に搬送されてくる包装容器への印字を行う。
【0003】
印字装置による印字が正しく行われているかは、包装容器の印字を読み取る印字検査装置によってなされる。さらに、最近では、文字印字だけではなく、製造履歴管理に必要な様々な情報等を記録するため、多くの情報を記録できる2次元コードの印字を同時に行うことが増加しており、この2次元コードの情報が正しく印字されているかも検査する必要がある。
【0004】
この印字検査装置の背景技術として、例えば、特許文献1がある。該コード読み取り装置が読み取るコードを前記対象物の表面に形成するコード刻印装置と備えたダイレクトマーキングシステムにおいて、前記コード読み取り装置とコード刻印装置とは、相互に通信可能に接続され、前記信号処理部は、前記対象物の表面に形成されている刻印品位の評価結果を前記コード刻印装置にフィードバックすることを特徴とするダイレクトマーキングシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-187065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェット記録装置はノズルからある周波数で連続的に噴出するインク粒子を帯電させる。帯電したインク粒子は偏向電極の偏向電極間の電界によって飛行軌道を変えられ印字対象物に着弾する。連続的に噴出する一つ一つのインク粒子に帯電させる帯電量を変え、偏向電界により帯電させたインク粒子を偏向させ、印字対象物に着弾したドットによって文字を形成する。
【0007】
帯電は、帯電電極とよばれる電極に電圧を印加することで行う。インク粒子が着弾する位置は帯電量によって変化する。ライン速度、インク粘度の変化、印字対象物とインクジェット記録装置の印字ヘッドのインク粒子噴出口の間の距離、つまり、印字距離が変化することによって、印字歪及びインク粒子の基準着弾する位置を変化する。印字歪発生することより2次元コード等の読み取り精度を悪化させる一因となっていた。
【0008】
特許文献1では、コード読み取り装置が読み取るコードを対象物の表面に形成するコード刻印装置と備えたダイレクトマーキングシステムにおいて、コード読み取り装置とコード刻印装置とは、相互に通信可能に接続され、信号処理部が、対象物の表面に形成されている刻印品位の評価結果をコード刻印装置にフィードバックするものである。しかし、上記特許文献1に開示された制御は、レーザーマーカー専用の制御であり、明確なフィードバック制御が記載されていない。例えば、特許文献1では、段落0016において、コード刻印装置がインクジェット方式である場合、プリントヘッドの出力や位置を制御する旨が記載されているが、具体的な制御についての開示がなく、当該技術をそのままインクジェット記録装置に適用することはできない。すなわち、インクジェット記録装置が印字した2次元コードを読み取って評価し、その評価結果をフィードバックする場合に、どのような制御を行うのかが開示されていない。そのため、インクジェット記録装置の場合、必ずしも適切に2次元コードの評価や、当該評価に基づくフィードバック制御がなされているとはいえない。このことは、2次元コードに限らず、文字列、記号、数字、符号など、インクジェット記録装置から着弾するドットにより構成される様々な印字情報についても同様である。
【0009】
本発明は、インクジェット記録装置が印字した印字情報を適切に評価し、当該評価に基づくフィードバック制御が可能なインクジェット記録システム、印字情報補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるインクジェット記録システムは、インクを印字対象に吐出し、当該吐出したインクにより形成されるドットから構成される所定の情報を前記印字対象に印字するインクジェットプリンタと、前記印字対象に印字された前記所定の情報を撮像するカメラと、前記所定の情報が撮像された画像から、前記所定の情報の印字領域を検出する検出部と、検出された前記印字領域を所定のドット領域に分割し、分割したドット領域のそれぞれに、前記ドットの着弾位置を検査する基準となるドットを付与した基準位置グリッドを生成する基準位置グリッド化部と、前記印字領域と前記基準位置グリッドとを重ね合わせた重畳画像と、前記基準となるドットの位置に対する前記ドットの着弾位置のずれの度合いを判定するための判定グレード基準テーブルとに基づいて、前記基準となるドットの位置に対するドットの着弾位置を検査する読み取り判定部と、前記検査の結果と、前記ずれの度合いに応じて定められた前記印字領域を構成するドットの補正量を定めた補正データとに基づいて、前記ドットの着弾位置を補正するためのフィードバック信号を生成し、前記インクジェットプリンタに出力するドット位置補正部と、を有する処理装置と、を有し、前記インクジェットプリンタは、前記フィードバック信号から得られる補正された前記ドットの着弾位置に基づいて、前記印字対象にインクを吐出する、ことを特徴とするインクジェット記録システムとして構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクジェット記録装置が印字した印字情報を適切に評価し、当該評価に基づくフィードバック制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態を示すインクジェット自動補正システムの一例を示す図である。
図2】本実施例のインクジェット記録装置と印字検査装置のブロック図の一例を示す図である。
図3】コンピュータ概略図の一例を示す図である。
図4】ISO15415に基づく評価基準を示す判定項目テーブルの一例を示す図である。
図5】自動補正フィードバック処理の処理手順を説明するフローチャートの一例を示す図である。
図6】画像処理された2次元コード、当該2次元コードを構成するドットの着弾位置を検査するための基準となる基準位置グリッド、2次元コードと基準位置グリッドとを重ね合わせた重畳画像との関係を説明するための図である。
図7】判定グレード基準テーブルの一例を示す図である。
図8A】シンボルコントラスト(SC)についての警告を示す情報の一例を示す図である。
図8B】正常な2次元コードの一例を示す図である。
図8C】不具合印字の一例を示す図である。
図8D】不具合印字の一例を示す図である。
図8E】不具合印字の一例を示す図である。
図8F】不具合印字の一例を示す図である。
図9】インクジェット記録装置の印字品質低下要因の一例を説明するための図である。
図10】本システムを適用したワイヤレスランシステムの一例を示す図である。
図11】ドットの帯電量を調整するための補正値を定めた補正データテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0014】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0015】
以下の説明では、「データベース」、「テーブル」、「リスト」等の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、これら以外のデータ構造で表現されていてもよい。データ構造に依存しないことを示すために「XXテーブル」、「XXリスト」等を「XX情報」と呼ぶことがある。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いた場合、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0016】
同一あるいは同様な機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0017】
また、以下の説明では、プログラムを実行して行う処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit))によって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶資源(例えばメモリ)および/またはインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら行うため、処理の主体がプロセッサとされてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit))を含んでいてもよい。
【0018】
プログラムは、プログラムソースから計算機のような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0019】
図1は、本実施形態を示すインクジェットインクジェット記録システム1000の一例を示す図である。図1において、印字検査装置4は、インクジェットプリンタ1等の印字装置によって印字を行った印字物2に対する印字検査を行う装置である。カメラ5は、検査対象となる文字列や2次元コードを含む画像を読取る撮像手段である。モニタ6は、読み取った画像を表示のほか、印字検査の条件設定や、検査結果の表示を行う。カメラ5で読み取った画像から印字画像を抽出する等の加工を行い、照明の光量やタイミング等のコントロールを行い、検査対象文字の合否判定を行なう画像処理部26や、印字検査装置4本体内の画像処理部26に画像処理等の各種指示を与える入出力部32等からなる。なお、以下では、検査対象として、文字列、2次元コードを含む画像を例示しているが、これに限らず、記号、数字、符号などの様々な情報を含む画像を検査対象としてもよい。すなわち、撮像された画像中に含まれる文字列や2次元コードを構成するドットだけでなく、上述した各種情報を構成するドットを検査対象としてもよい。
【0020】
このように、インクジェット記録システム1000は、インクジェットプリンタ1、印字検査装置4、カメラ5、モニタ6を有して構成される。印字検査装置4は、例えば、インクジェット記録装置等で印字された製造年月日、製造番号等の文字や記号、製造履歴管理に必要な情報等が記録された2次元コードをカメラで読み取り、印字の良否を判別する。
【0021】
図2に、本実施例のインクジェット記録装置と印字検査装置のブロック図の一例を示す。図2において、インクジェット記録装置1は、インクジェット記録装置全体を制御するMPU7(マイクロプロセッシングユニット)と、インクジェット記録装置内で一時的にデータを記憶しておくRAM9(ランダムアクセスメモリ)と、プログラム、補正データ等をあらかじめ記憶するフラッシュメモリROM10と、印字する内容等を表示する表示装置11と、印字内容、印字パラメータの設定値を入力する操作パネル12と、印刷対象物を検出するための印字対象物検出回路25と、インクジェット記録装置1の印字速度に関する制御を行う印字速度回路8と、印字速度以外のインクジェット記録装置1の印字に関する全般的な制御を行う印字制御回路13と、インク粒子18bに帯電させるビデオデータを記憶しておくビデオRAM14と、インク粒子18bを帯電する帯電電圧を発生させる文字信号発生回路16と、印字検査装置4と電気的に接続するための印字検査装置インタフェース15と、データ等を送るバスライン17で接続されている。
【0022】
また、印字機構である印字ヘッド33は、インク18aを保持するインク容器19と、インクを噴出するノズル20と、ノズル20から噴出したインク18aが分離してインク粒子18bになる領域に帯電電界を発生して、インク粒子18bが帯電するように設置した帯電電極21と、インク粒子18bの飛行通路に偏向電界を発生して帯電したインク18bを偏向するマイナス偏向電極22aと、プラス偏向電極22bに偏向電圧を印加する偏向電源23と、印字に使用しなかったインク粒子18bを回収するガター24と、を有する。印字ヘッド33は、インク容器19内のインク18aを汲み上げ加圧して前記ノズル20に供給する。印字ヘッド33内部では、噴出経路に目的の圧力に加圧したインクを供給する。また、印字ヘッド33内部では電圧により圧電振動子を振動させてインクを加振させ、粒子化する。粒子化されたインク18bは、帯電電極21のオリフィス部から噴出する。帯電電極21で帯電されたインク粒子18bは、プラス偏向電極22a、マイナス偏向電極22bの間の電界中を飛翔している間に帯電量に比例した力を受けて偏向し、印字対象物2に向かって飛翔して印字対象物2に着弾する。その際に、インク粒子18bは帯電量に応じて偏向方向の着弾位置が変化し、複数の着弾粒子によって文字や図形が印字対象物に印字されることになる。以下では、インク粒子18bは帯電量に応じて偏向方向の着弾位置が変化する場合を例示するが、ノズル内の圧電素子の周波数に応じて上記着弾位置を変化させてもよい。
【0023】
印字検査装置4は、インクジェット記録装置1により印字された文字列や2次元コードを検査するための装置である。図2に示すように、印字検査装置4は、カメラ5から入力された画像をスキャンする等して読み取る画像入力部41と、画像入力部41が読み取った画像をHDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体に記憶させる画像記憶部42と、画像記憶部42が記憶した画像を処理する画像処理部26と、画像処理部26の機能を実現するためのプログラムや、本システムで用いる各種データを記憶するROM31と、インクジェット記録装置1との間の上記各種データの受け渡し、モニタ6に情報を出力するための入出力部32を有する。画像処理部26は、画像処理回路261、2次元コード検出部262、基準位置グリッド化部263、読み取り判定部264、ドット位置補正部265を有する。これらの機能はフローチャートを用いて後述する。
【0024】
図1に示した印字検査装置4は、例えば、図3(コンピュータ概略図)に示すような、CPU1601と、メモリ1602と、HDD等の外部記憶装置1603と、CD(Compact Disk)やUSBメモリ等の可搬性を有する記憶媒体1608に対して情報を読み書きする読書装置1607と、スキャナ、キーボード、マウスといった入力装置1606と、ディスプレイ等の出力装置1605と、通信ネットワークに接続するためのNIC(Network Interface Card)等の通信装置1604と、これらを連結するシステムバス等の内部通信線(システムバスという)1609と、を備えた一般的なコンピュータ1600により実現できる。
【0025】
印字検査装置4に記憶され、あるいは処理に用いられる様々なデータは、CPU1601がメモリ1602または外部記憶装置1603から読み出して利用することにより実現可能である。また、各システムや装置が有する各機能部(例えば、画像入力部41、画像記憶部42、入出力部32、画像処理部26、画像処理回路261、2次元コード検出部262、基準位置グリッド化部263、読み取り判定部264、ドット位置補正部265)は、CPU1601が外部記憶装置1603に記憶されている所定のプログラムをメモリ1602にロードして実行することにより実現可能である。
【0026】
上述した所定のプログラムは、読書装置1607を介して記憶媒体1608から、あるいは、通信装置1604を介してネットワークから、外部記憶装置1603に記憶(ダウンロード)され、それから、メモリ1602上にロードされて、CPU1601により実行されるようにしてもよい。また、読書装置1607を介して、記憶媒体1608から、あるいは通信装置1604を介してネットワークから、メモリ1602上に直接ロードされ、CPU1601により実行されるようにしてもよい。
【0027】
以下では、印字検査装置4が、ある1つのコンピュータにより構成される場合を例示するが、これらの機能の全部または一部が、クラウドのような1または複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して互いに通信することにより同様の機能を実現してもよい。また、印字検査装置4とインクジェット記録装置1とが1つの装置として構成されていてもよい。この場合、モニタ装置6とインクジェット記録装置1の操作パネルとを共用のものとしてもよい。印字検査装置4を構成する各部が行う具体的な処理については、フローチャートを用いて後述する。
【0028】
2次元コードの印字評価は、ISO15415に基づく評価基準を示す7項目について、印字検査装置4が得た画像データを用いて行われる。図4は、当該評価基準を示す判定項目テーブルの一例を示す図である。7項目の内訳は、図4に示すように、判定項目テーブル401は、「変位幅」、「反射マージン」、「未使用誤り訂正」、「位置検出パターンの損傷」、「シンボルコントラスト(SC)」、「シンボル軸の非均一性」、「モジュール配置の非均一性」、の7つの項目を有し、各項目について、A、B、C、D、Fの5段階に評価される。印字品質の合計基準ではB判定以上が合格となる。
【0029】
「変位幅」と「反射マージン」は、2次元コード画像における各セルの輝度値の偏差を評価するための項目である。「シンボルコントラスト(SC)」は、2次元コード画像の最大コントラスト値を評価するための項目である。「未使用誤り訂正」は、2次元コードの読み取り時における誤り訂正の不使用率を評価するための項目である。「位置検出パターンの損傷」は、コードの固定されたパターンの評価項目である。「シンボル軸の非均一性」とは、2次元コード画像の歪み具合を評価するための項目である。「モジュール配置の非均一性」とは、2次元コード画像におけるセルのずれ量を評価するための項目である。総合評価は、各項目の中で最も低い評価レベルをその評価とする。例えば、「変位幅」が評価A、「反射マージン」が評価A、「未使用誤り訂正」が評価A、「位置検出パターンの損傷」が評価B、「シンボルコントラスト(SC)」が評価B、「シンボル軸の非均一性」が評価B、「モジュール配置の非均一性」が評価Bである場合、2次元コード画像の総合的な評価は評価Bとなる。
【0030】
判定項目1~4(「変位幅」、「反射マージン」、「未使用誤り訂正」、「位置検出パターンの損傷」)は、インクジェット記録装置が補正可能なパラメータである。判定項目5~7(「シンボルコントラスト(SC)」、「シンボル軸の非均一性」、「モジュール配置の非均一性」)は、インクジェット記録装置が補正不可のパラメータである。
【0031】
次に、本システムで行われる処理(自動補正フィードバック処理)の概要を、図5を参照して説明する。図5は、自動補正フィードバック処理の処理手順を説明するフローチャートの一例を示す図である。
【0032】
ステップ1で、インクジェット記録装置1のMPU7は、操作パネル12を介してユーザから入力された印字に関する内容の設定を行い、設定した内容で印字ヘッド33の動作を制御して、印字物2に対して文字列や2次元コード34(図6)を印字する。以下では、2次元コードを印字した場合について説明するが、文字列やその他の情報についても同様に考えることができる。
【0033】
ステップ2で、印字検査装置4は、インクジェット記録装置1によって印字物2に印字された2次元コード34を、カメラ5により撮像し、当該撮像された2次元コード34(図6)を含む画像を、画像入力部41が読み取る。画像記憶部42は、画像入力部41が読み取った画像をHDD等の記憶媒体に記憶させる。
【0034】
ステップ3では、画像処理部26は、画像記憶部42により記憶された2次元コードの画像をモニタ6上に表示し、画像処理回路261で二値化等の画像処理を行う。2次元コード検出部262は、画像処理された後の画像から2次元コードを検出する。例えば、2次元コード検出部262は、検出した2次元コードの画像に含まれる位置検出パターンの位置から、2次元コードの領域を検出する。
【0035】
ステップ4では、基準位置グリッド化部263が、検出された2次元コードの領域を所定のドット領域に分割した基準位置グリッド35(図6)を生成する。図6は、画像処理された2次元コード、当該2次元コードを構成するドットの着弾位置を検査するための基準となる基準位置グリッド、2次元コードと基準位置グリッドとを重ね合わせた重畳画像との関係を説明するための図である。より具体的には、基準位置グリッド化部263は、図6に示す2次元コード34を構成するドット341の数に応じて画像をドット領域351に分割する。図6では、上記2次元コードの寸法を示す縦方向の上限値と下限値に最大限含まれるドットの数である24個と同じ数のドット領域351に分割される。同様に、上記2次元コードの寸法を示す横方向の上限値と下限値に最大限含まれるドットの数である24個と同じ数のドット領域351に分割される。このように、基準位置グリッド化部263は、2次元コード34を構成するドットのそれぞれに対応する、24×24のドット領域351を有する基準位置グリッド35の元となるグリッド領域を生成する。基準位置グリッド化部263は、さらに、当該グリッド領域を構成するそれぞれのドット領域351の中心位置に基準となるドット352を付与する。これにより、2次元コード34を構成するドットのそれぞれに対応するドット領域351の中心位置に、基準となるドット352を含む、基準位置グリッド35が生成される。
【0036】
そして、読み取り判定部264は、2次元コード34と、当該2次元コード34のサイズに応じて生成された基準位置グリッド35とを重ね合わせた重畳画像36と、図7に示す判定グレード基準テーブルとを用いて、基準位置に対するドットの着弾位置の検査を行う。
【0037】
図7は、判定グレード基準テーブルの一例を示す図である。判定グレード基準テーブル701は、基準位置に対するドットの着弾位置のずれの度合いを判定するためのテーブルである。図7に示すように、判定グレード基準テーブル701は、基準位置に対するドットの着弾位置についての判定グレード(A~Fの5段階)と、各グレードにおける粒子間距離とそのイメージが対応付けられている。判定グレード基準テーブル701は、あらかじめROM31に記憶しておけばよい。
【0038】
例えば、グレードAと判定されるためには、隣接するドット領域にドットが存在する場合、ドット間の距離である粒子間距離が、0~0.05mm以内でなければならないことを示している。これは、イメージ図に示すように、2次元コード34を構成するドット341のうち、互いに隣接するドット341aとドット341bとにおいて、最も近い部位の間の距離として粒子間距離rが0~0.05mm以内でなければならないことを意味する。このとき、互いに隣接する基準となるドット352aおよびドット352bは、それぞれに対応するドット341に内包された状態となっている。
【0039】
また、例えば、グレードBと判定されるためには、隣接するドット領域にドットが存在する場合、ドット間の距離である粒子間距離が、0.06~0.15mm以内でなければならないことを示している。これは、上述した最も近い部位の間の距離として粒子間距離rが0.06~0.15mm以内でなければならないことを意味する。このとき、互いに隣接する基準となるドット352aおよびドット352bは、それぞれに対応するドット341に内包され、かつドット341と基準となるドット352とが接線を共有した状態となっている。つまり、この状態のドット341aおよびドット341bは、グレードAの場合よりも、互いに離間した状態となっている。
【0040】
また、例えば、グレードCと判定されるためには、隣接するドット領域にドットが存在する場合、ドット間の距離である粒子間距離が、0.16~0.20mm以内でなければならないことを示している。これは、上述した最も近い部位の間の距離として粒子間距離rが0.16~0.20mm以内でなければならないことを意味する。このとき、互いに隣接する基準となるドット352aおよびドット352bは、それぞれに対応するドット341に内包されず、ドット341aおよびドット341bは、グレードBの場合よりも、さらに離間した状態となっている。
【0041】
また、例えば、グレードDと判定されるためには、隣接するドット領域にドットが存在する場合、ドット間の距離である粒子間距離が、0.21~0.25mm以内でなければならないことを示している。これは、上述した最も近い部位の間の距離として粒子間距離rが0.21~0.25mm以内でなければならないことを意味する。このとき、互いに隣接する基準となるドット352aおよびドット352bは、それぞれに対応するドット341に内包されず、ドット341aおよびドット341bは、グレードCの場合よりも、さらに離間した状態となっている。
【0042】
また、例えば、グレードFと判定されるためには、隣接するドット領域にドットが存在する場合、ドット間の距離である粒子間距離が、0.26mm以上でなければならないことを示している。これは、上述した最も近い部位の間の距離として粒子間距離rが0.26mm以上でなければならないことを意味する。このとき、互いに隣接する基準となるドット352aおよびドット352b全体が、それぞれに対応するドット341に内包されず、ドット341aおよびドット341bは、グレードDの場合よりも、さらに離間した状態となっている。
【0043】
このように、読み取り判定部264は、重畳画像36と判定グレード基準テーブル701とを用いて、基準位置に対するドットの着弾位置のずれに基づく検査を行う。そして、2次元コード検出部262は、上記検査した2次元コード34のデータを読み取り、2次元コードをデコードする。
【0044】
ステップ5では、読み取り判定部264は、上記ずれに基づく検査の結果が判定グレード「B」以上であるか否かを判定する。読み取り判定部264は、上記ずれに基づく検査の結果が判定グレード「B」以上であると判定した場合(ステップ5;Yes)、位置ずれについての検査結果が合格であるため、当該検査の結果をモニタ6に表示する。そして、ドット位置補正部265は、ステップ6において、位置ずれについてのフィードバック信号(例えば、着弾するドットが基準のドットと同心円となるような、帯電量等を調整して定めた補正データを含む信号)を生成し、インクジェット記録装置1に送信する。フィードバック信号を受信したインクジェット記録装置1は、位置ずれについての補正データを含むフィードバック信号をパラメータに反映して、印字を継続する。この場合は、図4に示した2次元コード品質に関する評価項目についての補正は行われない。一方、読み取り判定部264が、上記ずれに基づく検査の結果が判定グレード「B」以上でないと判定した場合(ステップ5;No)、ステップ7に進む。
【0045】
ステップ7では、ステップ4でデコードした2次元コードを、図4に示した2次元コード品質に関する評価項目(ISO15415に基づく7項目のパラメータ)で評価し、当該評価の結果、B判定未満となった判定項目を確認する。各項目の評価方法については、ISO15415に準拠した方法で行えばよい。
【0046】
ステップ8では、読み取り判定部264は、B判定未満となった判定項目が、判定項目1~4であるか否かを判定する。読み取り判定部264は、B判定未満となった判定項目が、判定項目1~4であると判定した場合(ステップ7;Yes)、インクジェット記録装置で補正可能なパラメータの判定項目(「変位幅」、「反射マージン」、「未使用誤り訂正」、「位置検出パターンの損傷」)であるため、ステップ9に進む。一方、読み取り判定部264は、B判定未満となった判定項目が、判定項目1~4でないと判定した場合(ステップ7;No)、インクジェット記録装置で補正可能ではないパラメータの判定項目(「シンボルコントラスト(SC)」、「シンボル軸の非均一性」、「モジュール配置の非均一性」)であるため、ステップ11に進む。
【0047】
ステップ9では、読み取り判定部264は、ステップ4で検査した2次元コードがステップ5で判定されたときのイメージ図(図7)をモニタ6に表示する。これにより、ユーザは、2次元コードの判定グレードを一見して把握することができる。このとき、後述する警告を示す情報のように、実際に読み取られた2次元コードを表示してもよい。これにより、実際にどのような2次元コードが読み取られたのかを容易に確認することができる。
【0048】
ステップ10では、位置ずれについての検査結果が不合格であるため、モニタ6に表示した判定グレードが高くなるような(例えば、グレード「C」からグレード「A」となるような)位置ずれについてのフィードバック信号(例えば、着弾するドットが基準のドットと同心円となるような、帯電量等を調整して定めた補正データを含む信号)を生成するとともに、不合格となった図4に示した2次元コード品質に関する評価項目1~4を合格にするための評価フィードバック信号(例えば、ISO15415の品質基準を満たすように帯電量等を調整して定めた補正データを含む信号)を生成し、インクジェット記録装置1に送信する。これらのフィードバック信号を受信したインクジェット記録装置1は、位置ずれについての補正データを含むフィードバック信号および評価項目1~4を合格にするための評価フィードバック信号をパラメータに反映して、印字を継続する。ステップ10における補正データについては後述する。
【0049】
ステップ11では、インクジェット記録装置で補正可能ではないパラメータの判定項目(「シンボルコントラスト(SC)」、「シンボル軸の非均一性」、「モジュール配置の非均一性」)が不合格であるため、読み取り判定部264は、警告情報を操作パネル12上に表示し、管理者の注意を喚起する。警告情報の例については後述する。
【0050】
図8A~8Fは、警告情報の一例を説明するための図である。図8Aは、シンボルコントラスト(SC)についての警告を示す情報の一例を示す図である。図8Aに示すように、シンボルコントラスト(SC)についての評価では、インクのコントラスト薄くなるにつれて判定結果が低くなってしまうが、上述したように、インクジェット記録装置ではインクのコントラストが調整出来ない。このため、シンボルコントラストについての評価が所定の評価以上(例えば、B以上)でないと判定された場合でも、評価されたSCグレードに対応する2次元コードのイメージ(DM12)が、当該SCグレードとともに、警告を示す情報として操作パネル12の画面上に表示されることとなる。
【0051】
また、2次元コードが正常であることの印字評価の一つとして、2次元コードの横の長さ38と縦の長さ37との比率が、図8Bに示すように1:1となることが挙げられる。しかし、コンベア3が印字物2を搬送するスピード、あるいは印字ヘッドと印字物の印字距離や印字ヘッド33の設定、インク粘度の影響などの影響により、不具合印字(図8C、8E、8F)が発生し、評価が低くなってしまう。例えば、図8Cに示すように、コンベア3のスピードが不安定となる影響により、2次元コード39(a)や2次元コード40(b)のように、設定された基準長さ(点線で囲われた枠の長さ)より横方向に長いまたは短くなってしまう。同様の理由により、例えば、図8Eに示すように、2次元コード41(a)や2次元コード42(b)のように、設定された基準長さ(点線で囲われた枠の長さ)より縦方向に長いまたは短くなってしまったり、図8Fに示す2次元コード43のように、設定された基準長さ(点線で囲われた枠の長さ)に対してずれや歪みが生じてしまう。このように、「シンボル軸の非均一性」における評価が、所定の評価以上(例えば、B以上)でないと判定された場合でも、評価された2次元コードが、警告を示す情報として操作パネル12の画面上に表示されることとなる。
【0052】
また、インクジェット記録装置では、帯電量を調整することよりドットの上下の位置を微調整できるが、図8Dに示すように、横ずれ831a~831dが発生する場合は、補正不可能であると判断し、図8A、8B、8C、8E、8Fの場合と同様に、横ずれが発生した2次元コードを、警告を示す情報として、操作パネル12の画面上に表示する。
【0053】
ステップ10では、ドット位置補正部265は、ステップ9で表示された着弾粒子のずれを示す判定グレードのイメージ図に基づいて、ステップ5で上記ずれに基づく検査の結果が判定グレード「B」以上でないと判定された2次元コードの補正データを読み出す。当該補正データは、判定グレードに対応付けて、2次元コードを構成するドットの補正量(例えば、ISO15415の品質基準を満たすようなドットの帯電量に調整するための補正値)を記憶したデータである。
【0054】
図11は、ドットの帯電量を調整するための補正値を定めた補正データテーブルの一例を示す図である。図11に示すように、補正データテーブル1101は、判定グレードと、ドットの帯電量の補正値(判定項目による評価前後の補正値)とが対応付けて記憶されている。一例を説明すると、基準位置に対するドットの着弾位置のずれが判定グレード「C」と判定された2次元コードの場合、各ドットを基準位置とするための補正値「XC」は、判定グレード「D」と判定された2次元コードの場合の各ドットを基準位置とするための補正値「XD」よりも小さい値が記憶されている。すなわち、判定グレードが高いほど、ドットの帯電量の補正値が小さくなるように、補正データテーブル1101が作成されている。
【0055】
また、例えば、基準位置に対するドットの着弾位置のずれが判定グレード「C」と判定された2次元コードの場合、さらに、図4に示した2次元コード品質に関する評価項目(ISO15415に基づく7項目のパラメータ)で評価されるが、当該評価の結果に応じ定められた、各ドットを基準位置とするための補正値「Xc」は、判定グレード「D」と判定された2次元コードの場合の各ドットを基準位置とするための補正値「Xd」よりも小さい値が記憶されている。すなわち、上記評価の結果が高いほど、ドットの帯電量の補正値が小さくなるように、補正データテーブル1101が作成されている。この例では、グレード判定の結果に基づく補正値と評価の結果に基づく補正値とを異なるものとしたが、同じ補正値を用いてもよい。なお、当該補正データは、あらかじめROM31に記憶しておけばよい。
【0056】
ドット位置補正部265は、このような補正データをROM31から読み出すと、グレードが判定された2次元コードを、判定されたグレードに対応する補正値で補正する。補正の方法については、従来から知られている様々な技術を用いることができるが、例えば、図7に示した判定グレード基準テーブル701に示すように、ドットの位置が基準位置より高い場合、基準となるドットの位置となるように帯電電圧を低くするように帯電電圧データを調整すればよい。また、ドットの位置が基準位置より低い場合、基準となるドットの位置となるように帯電電圧を高くするように帯電電圧データを調整すればよい。そして、ドット位置補正部265は、このような補正データを含む評価フィードバック信号を、通信手段(ケーブル、無線など)、印字検査装置インタフェース15、バス17を介して、インクジェット記録装置1のROM10に反映させる。その後、ステップ1に戻り、インクジェット記録装置1のMPU7は、設定した内容で印字ヘッド33の動作を制御して、印字物2に対して補正データを反映した2次元コードを印字することとなる。なお、本実施例では2次元コードを検査対象とした場合について説明したが、上述の通り、英字数字など様々な文字パターンが含まれてもよい。
【0057】
図9は、インクジェット記録装置の印字品質低下要因の一例を説明するための図である。粒子使用率とは、生成された粒子に対し帯電する粒子の割合を表わす。粒子使用率1/1とは生成された全ての粒子に帯電可能であることを表す。この場合、全ての粒子が印字に使用可能となるため、印字速度は速くなる。しかし、帯電する粒子間の距離Lが短くなるため、クーロン反発力44が大きく働き、印字品質が悪い問題点がある。この場合には、クーロン反発力44によりクーロン力が大きく働くため、その影響により図6に示した判定グレードのうち、合格基準となるグレードBの条件(ドット間の距離である着弾粒子間の距離が、0.06~0.15mm以内)を満たすことが難しいケースもある。
【0058】
一方、粒子使用率1/2の場合、生成された全粒子の半数の粒子が帯電するため、クーロン反発力44も低減する。したがって、この場合には、帯電粒子間距離が大きく、印字速度が低減されてしまうが、印字品質は良くなる。しかし、上述した補正データを用いてドットの帯電量を調整する帯電アルゴリズムの一部のアルゴリズムでは、帯電量が一定以上多い位置で印字歪が発生しやすく、粒子使用率1/2以上(1/3~1/8)でも、判定グレードがB以上となるような補正や、ISO15415の品質基準を満たすような補正が出来ないケースもある。具体的には、図5に示した自動補正フィードバック処理のステップ5において所定回数を超えて判定グレードがB以上とならず、繰り返しステップ9、ステップ10を行う状況が継続する場合には、その2次元コードをROM31に保存する、またはステップ11のように警告を示す情報を操作パネル12上に表示してもよい。
【0059】
図10は、本システムを適用したワイヤレスランシステムの一例を示す図である。図10に示すように、ワイヤレスランシステム9000では、インクジェット記録装置1に表示された検査結果を、無線LANアクセスポイント45を介して送信し、ハードウェアとしては一般的な構成を有した端末デバイスのディスプレイやタッチパネルに表示することも可能である。検査結果は、例えば、図5に示した自動補正フィードバック処理のステップ5における基準位置に対するドットの着弾位置のずれに基づく検査の結果、ステップ7における2次元コード品質に関する評価項目(ISO15415に基づく7項目のパラメータ)による評価の結果などである。端末デバイスは、スマートフォン46、PC(Personal Computer)47、タブレット端末48などの、ハードウェアとしては一般的な構成を有した通信可能な端末や機器などを用いることができる。
【0060】
なお、このような検査や評価の結果の表示に限らず、例えば、上述した補正データを上記端末デバイスの画面に表示し、入力装置(例えば、キーボードやタッチパネル)がユーザからの操作を受け付けて、判定グレードの応じたドットの帯電量を調整可能としてもよい。上記端末デバイスが、調整後の補正データをインクジェット記録装置1のROM10に送信し、図5のステップ10で用いる補正データに反映し、印字してもよい。これにより、印字不良によりの警告を示す情報が表示された場合でも、ユーザがドットの帯電量等を調整した補正データを反映して、リアルタイムに印字を継続することができる。
【0061】
このように、本実施例では、インクを印字対象(例えば、印字物2)に吐出し、当該吐出したインクにより形成されるドットから構成される所定の情報(例えば、2次元コード)を上記印字対象に印字するインクジェットプリンタ1と、上記印字対象に印字された上記所定の情報を撮像するカメラ5と、上記所定の情報が撮像された画像から、上記所定の情報の印字領域(例えば、2次元コード34が印字された領域)を検出する検出部(例えば、2次元コード検出部262)と、検出された上記印字領域を所定のドット領域351に分割し、分割したドット領域351のそれぞれに、上記ドットの着弾位置を検査する基準となるドット352を付与した基準位置グリッド35を生成する基準位置グリッド化部(例えば、基準位置グリッド化部263)と、上記印字領域と上記基準位置グリッドとを重ね合わせた重畳画像36と、上記基準となるドットの位置に対する上記ドットの着弾位置のずれの度合いを判定するための判定グレード基準テーブル701とに基づいて、上記基準となるドットの位置に対するドットの着弾位置を検査する読み取り判定部(例えば、読み取り判定部264)と、上記検査の結果と、上記ずれの度合いに応じて定められた上記印字領域を構成するドットの補正量を定めた補正データ(例えば、補正データテーブル1101で定められた評価前の補正値)とに基づいて、上記ドットの着弾位置を補正するためのフィードバック信号を生成し、上記インクジェットプリンタに出力するドット位置補正部(例えば、ドット位置補正部265)と、を有する処理装置(例えば、印字検査装置4)と、を有し、上記インクジェットプリンタは、上記フィードバック信号から得られる補正された上記ドットの着弾位置に基づいて、上記印字対象にインクを吐出する。
【0062】
したがって、インクジェットプリンタが印字した印字情報(例えば、2次元コード)を適切に評価し、当該評価に基づくフィードバック制御が可能となる。例えば、印字処理の際に、着弾粒子の基準位置をグリッド化し、実際に印字した印字イメージの位置ずれの検査を行うことで、基準となる基準文字パターンを登録する必要がなくなり、良否の判別と自動補正が可能なシステムを提供することができる。
【0063】
また、上述した補正データを含むフィードバック信号や評価フィードバック信号を自動的に反映して印字を継続するので、印字品質が安定した正確な印字が可能となる。
【0064】
また、図5のステップ6やステップ10で説明したように、上記ドット位置補正部は、上記インクの粒子に対する帯電量を調整することにより上記ドットの補正量を定めた上記補正データを用いて上記フィードバック信号を生成し、上記インクジェットプリンタは、上記帯電量が調整されたインクを上記印字対象に吐出する。したがって、ドットが基準位置となるように調整されたインクによる高品質な印字が可能となる。
【0065】
また、図5のステップ7やステップ8で説明したように、上記読み取り判定部は、上記検出部が上記所定の情報の印字領域として2次元コードを検出した場合、上記印字対象に対する印字が所定の印字評価の基準を満たしているか否かを判定するための判定項目(例えば、ISO15415による評価基準を定めた判定項目テーブル401)が、インクジェットプリンタにより補正可能な項目か否かを判定し、上記ドット位置補正部は、上記補正可能な項目であると判定された場合、ステップ10で説明したように、上記所定の印字評価の基準を満たす評価補正データ(例えば、補正データテーブル1101で定められた評価後の補正値)を生成し、生成した上記評価補正データを用いて、上記ドットの着弾位置を補正するための評価フィードバック信号を生成し、当該評価フィードバック信号と上記フィードバック信号とを、上記インクジェットプリンタに出力する。したがって、判定グレードおよび評価基準の双方の条件を満たすようにドット位置が調整されたインクによる高品質な印字が可能となる。
【0066】
また、上記インクジェットプリンタは、印字に関する設定情報を入力する操作パネル12を有し、上記処理装置から出力された上記フィードバック信号に含まれる上記補正データに関する情報(例えば、図11に示したH補正値)を上記操作パネルに表示し、ユーザから、上記補正データに含まれる上記インクの粒子に対する帯電量を調整するための値(例えば、ユーザ所望の任意の値)の入力を受け付け、当該値に基づいて上記帯電量が調整されたインクを上記印字対象に吐出する。これにより、自動的に調整される補正値がユーザの意図しない値であった場合でも、手動でその値をユーザ所望の値に設定することができる。
【0067】
また、上記インクジェット記録システムが、ネットワークを介して接続された端末(例えば、図10に示した各種の端末デバイス)を有し、上記端末が、ディスプレイやタッチパネルのような表示部と、キーボードやタッチパネルのような入力部と、を有している場合、上記インクジェットプリンタは、上記操作パネルに表示した上記補正データに関する情報を上記端末に送信し、上記端末から受信した上記補正データに含まれる上記インクの粒子に対する帯電量を調整するための値に基づいて上記帯電量が調整されたインクを上記印字対象に吐出し、上記端末は、上記インクジェットプリンタから送信された上記補正データに関する情報を上記表示部に表示し、ユーザから、上記入力部が上記帯電量を調整するための値の入力を受け付け、当該値を上記インクジェットプリンタに送信してもよい。これにより、遠隔操作により、上記補正値を手動でユーザ所望の値に設定することができる。
【0068】
また、上記読み取り判定部は、ISO15415判定項目に含まれる項目のうち、(a)変位幅、(b)反射マージン、(c)未使用誤り訂正、(d)位置検出パターンの損傷、の各項目を上記補正可能な項目であると判定した場合、上記ドット位置補正部は、上記(a)~(d)の各項目について、上記評価補正データを生成し、生成した上記評価補正データを用いて、上記評価フィードバック信号を生成する。これにより、ISO15415判定項目に含まれる上記項目について、基準を満たすような補正が可能となり高品質な印字が可能となる。
【0069】
また、上記読み取り判定部は、ISO15415判定項目に含まれる項目のうち、(e)シンボルコントラスト(SC)、(f)シンボル軸の非均一性、(g)モジュール配置の非均一性、の各項目を上記補正可能でない項目であると判定した場合、上記(e)~(g)の各項目について、管理者の注意を喚起するための警告情報(例えば、図8A~8Fに示したような警告を示す情報)を画面に表示する等して出力する。これにより、ユーザは、ISO15415判定項目のうち補正ができない項目について評価された上記ドットから構成される所定の情報(例えば、2次元コード)がどのような状態であるのかを一見して把握することができる。
【0070】
以上、実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
1…インクジェット記録装置 22a…マイナス偏向電極
2…印字対象物 22b…プラス偏向電極
3…コンベア 23…偏向電源
4…印字検査装置 24…ガター
5…カメラ 25…印字対象物検出回路
6…印字検査装置モニタ 26…画像処理部
7…MPU(マイクロプロセッシングユニット) 261…画像処理回路
8…印字制御回路 262…2次元コード検出部
9…RAM(ランダムアクセスメモリ) 263…基準位置グリッド化部
10…ROM(リードオンリーメモリ) 264…読み取り判定部
11…表示装置 31…検査装置のROM
12…操作パネル 32…入出力部
13…印字制御回路 33…印字ヘッド
14…ビデオRAM 34…2次元コード(DM)例
15…印字検査装置インタフェース 35… 基準位置のグリッド化
16…帯電電圧発生回路 36…ドット着弾位置と比較
17…バスライン 37…基準縦長さ
18a…インク 38…基準横長さ
18b…帯電したインク粒子 39~43…印字不具合例
19…インク容器 44…クーロン反発歪
20…ノズル 45…無線LANアクセス
21…帯電電極 46~48…端末デバイス
265…ドット位置補正部
1000…インクジェット記録システム
1101…補正データテーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10
図11