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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060760
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】免震構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20230421BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20230421BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
E04H9/02 331A
F16F15/02 D
F16F15/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170543
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 麻由美
(72)【発明者】
【氏名】澤井 祥晃
(72)【発明者】
【氏名】二木 秀也
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB11
2E139AC19
2E139AC26
2E139AC33
2E139CA02
2E139CB04
2E139CC02
3J048AA02
3J048AD11
3J048CB07
3J048CB27
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】免震装置の破断を抑制しつつ、躯体の厚みを厚くする必要がない免震構造を提供する。
【解決手段】免震構造20は、下部構造体12と、下部構造体12に設けられ、免震装置14が固定された台座12Bと、免震装置14に支持された上部構造体16と、上部構造体16の梁材(梁16B)に固定されて下方へ突設されたストッパー30と、下部構造体12に設けられ、台座12Bに固定されてストッパー30と対面する荷重受け部40と、を有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造体と、
前記下部構造体に設けられ、免震装置が固定された台座と、
前記免震装置に支持された上部構造体と、
前記上部構造体の梁材に固定されて下方へ突設されたストッパーと、
前記下部構造体に設けられ、前記台座に固定されて前記ストッパーと対面する荷重受け部と、
を有する免震構造。
【請求項2】
前記ストッパーと荷重受け部とは、前記梁材の材軸方向で対面し、前記梁材の材軸方向と直交する方向で対面しない、請求項1に記載の免震構造。
【請求項3】
前記ストッパーの外周面には、緩衝材が取付けられている、請求項1又は2に記載の免震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、フェールセイフ機構付き免震構造が示されている。この免震構造では、免震建物の下部構造体に、変位規制本体部(ストッパー)を接合している。そして、下部構造体に対して上部構造体が相対変位した際に、上部構造体の当接部(荷重受け部)をストッパーに衝突させることで衝撃を緩和して、免震装置の破断や座屈を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-183495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のフェールセイフ機構付き免震構造では、上部構造体が下部構造体のストッパーに衝突した際、ストッパーには外力が作用する。そして、下部構造体においてストッパーが接合される部分には、曲げモーメントが作用する。下部構造体においてストッパーが接合される躯体は、この曲げモーメントに抵抗するため、例えば厚みを大きくする必要がある。
【0005】
しかしながら、地震時に短期的に作用する曲げモーメントに抵抗するために、躯体を厚くすることは合理的ではない。例えば上記特許文献1においては、ストッパーはスラブに接合されているが、スラブを厚くすると、コンクリートの使用量が多くなるうえ、施工時間も長く必要となる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、免震装置の破断を抑制しつつ、躯体の厚みを厚くする必要がない免震構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の免震構造は、下部構造体と、前記下部構造体に設けられ、免震装置が固定された台座と、前記免震装置に支持された上部構造体と、前記上部構造体の梁材に固定されて下方へ突設されたストッパーと、前記下部構造体に設けられ、前記台座に固定されて前記ストッパーと対面する荷重受け部と、
を有する。
【0008】
請求項1の免震構造では、地震時に上部構造体が下部構造体に対して相対変位した際に、上部構造体に固定されたストッパーが荷重受け部に当接する。荷重受け部は台座に固定されているため、荷重受け部及び台座が抵抗力を発揮する。これにより、免震装置の破断を抑制できる。また、荷重受け部を台座に固定せず単独で設ける場合と比較して、荷重受け部の体積を小さくできる。
【0009】
また、上部構造体の梁材に固定されたストッパーには、荷重受け部から反力が作用する。そして、梁材においてストッパーが接合される部分には、曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントに対しては、梁材が抵抗力を発揮できる。一般的に、梁材は、一般的な厚さのスラブと比較して、曲げモーメントに対する耐力が高い。このため、ストッパーがスラブに固定されている場合と比較して、曲げモーメントに抵抗し易い。これにより、地震時に短期的に作用する曲げモーメントに抵抗するために、躯体の厚みを大きくする必要がない。
【0010】
請求項2の免震構造は、請求項1に記載の免震構造において、前記ストッパーと前記荷重受け部とは、前記梁材の材軸方向で対面し、前記梁材の材軸方向と直交する方向で対面しない。
【0011】
請求項2の免震構造では、荷重受け部とストッパーとが、梁材の材軸方向で対面する。このため、梁材の軸方向の軸耐力及び曲げ耐力を発揮することができる。また、荷重受け部とストッパーとが、梁材の材軸方向と直交する方向で対面しない。このため、梁材に弱軸方向の力が作用することを抑制できる。
【0012】
請求項3の免震構造は、請求項1又は2に記載の免震構造において、前記ストッパーの外周面には、緩衝材が取付けられている。
【0013】
請求項3の免震構造では、ストッパーの外周面には、緩衝材が取付けられている。これにより、ストッパーと荷重受け部が衝突したときの衝撃力が緩和される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、免震装置の破断を抑制しつつ、躯体の厚みを厚くする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の実施形態に係る免震構造を示す立断面図である。
図1B図1AにおけるB-B線断面図である。
図2】実施形態に係る免震構造を示す平面図である。
図3】実施形態に係る免震構造において緩衝材の配置の変形例を示す平断面図である。
図4A】実施形態に係る免震構造において柱脚部の構成の変形例を示す立断面図である。
図4B】実施形態に係る免震構造において柱脚部の構成の別の変形例を示す立断面図である。
図5】実施形態に係る免震構造の平面配置の変形例を示す平面図である。
図6】実施形態に係る免震構造の平面配置の別の変形例を示す平面図である。
図7】実施形態に係る免震構造の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る免震構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0017】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0019】
<免震構造>
図1A図1Bには、本発明の実施形態に係る免震構造20が示されている。免震構造20は、下部構造体12と、下部構造体12に固定された免震装置14と、免震装置14に支持された上部構造体16と、を備えた建物10に適用される構造である。また、免震構造20は、後述する衝突緩衝機構22によって、免震装置14の破断を抑制する。
【0020】
(建物)
建物10における下部構造体12は、建物10の基礎であり、基礎梁12Aの交点には台座12Bが設けられている。台座12Bは、免震装置14を固定する構造体である。
【0021】
免震装置14は、上部構造体16を下部構造体12に対して免震支持する免震支承であり、上下のフランジ14Aの間に積層ゴム14Bが配置されて構成されている。免震装置14における下方のフランジ14Aは、台座12Bにボルト固定されている。また、上方のフランジ14Aは、上部構造体16における柱16Aに設けられたベースプレート16Cにボルト固定されている。
【0022】
上部構造体16は、鉄骨造とされた柱梁架構の構造体であり、柱16Aに梁16Bが接合されて構成されている。柱16Aの下端部は、最下部に配置された梁16Bの下端面より下方に突出して配置されている。このため、ベースプレート16Cは梁16Bの下端面より下方に配置されている。なお、上部構造体16は鉄筋コンクリート造としてもよい。
【0023】
<衝突緩衝機構>
免震構造20は、免震装置14の破断を抑制するための衝突緩衝機構22を備えている。衝突緩衝機構22は、ストッパー30と、荷重受け部40、42と、緩衝材50と、を備えて構成される。
【0024】
(ストッパー)
ストッパー30は、上部構造体16の梁16Bに固定されて下方へ突設された鉄骨製の突出部材である。ストッパー30の下端部は、図1Bに示すように平面視で略八角形状とされ、八角形状の辺に沿うプレート30A、30B及び30Cが接合されている。
【0025】
プレート30Aは、梁16Bの軸方向に面して配置されたプレート(換言すると、梁16Bの軸方向と直交する方向に沿って配置されたプレート)である。プレート30Aは、下部構造体12の台座12B側及び台座12Bと反対側の双方に設けられている。
【0026】
プレート30Bは、梁16Bの軸方向に沿って配置されたプレート(換言すると、梁16Bの軸方向と直交する方向に面して配置されたプレート)である。プレート30Bは、梁16Bの一方の側面側及び他方の側面側の双方に設けられている。
【0027】
プレート30Cは、梁16Bの軸方向と交わる方向に面して配置されたプレートである。プレート30Cは、平面視でプレート30Aの端部とプレート30Bの端部とに亘って配置されている。
【0028】
すなわち、平面視で八角形状に形成されたストッパー30において、梁16Bの軸方向において対向する2辺にプレート30Aが配置され、梁16Bの軸方向と直交する方向において対向する2辺にプレート30Bが配置され、残りの4辺にプレート30Cが配置されている。
【0029】
このうち、プレート30A及び30Cの幅(水平方向に沿う寸法)はほぼ等しく形成され、プレート30Bの幅は、プレート30A及び30Cの幅より小さく形成されている。
【0030】
(荷重受け部)
下部構造体には、ストッパー30と対向する荷重受け部40、42が形成されている。荷重受け部40は、台座12Bに固定されたコンクリート部材であり、荷重受け部42は、基礎梁12Aに固定されたコンクリート部材である。
【0031】
荷重受け部40は、台座12Bにおいてストッパー30側の部分に固定されている。荷重受け部40は、平面視でストッパー30を部分的に取り囲んで配置されている。具体的には、荷重受け部40には、ストッパー30のプレート30Aと対向する対向部40Aと、ストッパー30のプレート30Cと対向する対向部40Cと、が形成されている。
【0032】
対向部40Aの厚みT1と、対向部40Cとの厚みT2とを比較すると、厚みT2のほうが大きく形成されている。ここで、「厚み」とは、プレート30A、30Cとの対向方向に沿う方向の寸法である。
【0033】
また、対向部40Aとプレート30Aとの離間距離を距離L1、対向部40Cとプレート30Cとの離間距離を距離L2とすると、距離L1と距離L2とは等しく形成されている。なお、この距離L1及び距離L2は、免震装置14の積層ゴム14Bが地震時にせん断変形した際に、塑性変形し始める変形寸法以下とされている。
【0034】
すなわち、地震時に上部構造体16が下部構造体12に対して相対変位した際に、ストッパー30におけるプレート30A又は30Cが、荷重受け部40の対向部40A又は40Cに衝突しても、積層ゴム14Bは弾性域で変形しているため破断しない。
【0035】
荷重受け部40に配筋された鉄筋(例えば鉄筋B1、B2、B3(鉄筋B3は図1Aに図示))の端部は、ストッパー30から作用する外力を台座12Bに伝達するために、台座12Bに挿入されている。
【0036】
荷重受け部42は、図1Aに示すように、ストッパー30を挟んで台座12Bと反対側の部分において、基礎梁12Aに固定されている。図1Aに示すように、荷重受け部42は、平面視でストッパー30を部分的に取り囲んで配置されている。
【0037】
具体的には、荷重受け部42には、ストッパー30のプレート30Aと対向する対向部42Aと、ストッパー30のプレート30Cと対向する対向部42Cと、が形成されている。
【0038】
なお、本例において、荷重受け部42側に配置された2枚のプレート30Cのうち、一方(図1Bでは上方)のプレート30Cと対向する側に対向部42Cが設けられ、他方(図1Bでは下方)のプレート30Cと対向する側には、対向部42Cが設けられていない。
【0039】
これにより、荷重受け部40及び42の配筋作業やコンクリート打設作業、後述する緩衝材50の設置作業の作業スペースを確保し易く、施工性が向上する。なお、図1Bに破線で示したように、他方のプレート30Cと対向する側にも、対向部42Cを設けてもよい。
【0040】
対向部42Cの厚みは、対向部40Cの厚みと等しく、厚みT2とされている。対向部42Aの厚みT3は、対向部42Cの厚みT2と同等程度とすることが好ましいが、本例では、厚みT3のほうが大きく形成されている。
【0041】
また、対向部42Aとプレート30Aとの離間距離は、上述した距離L1と等しい。さらに、対向部42Cとプレート30Cとの離間距離は、上述した距離L2と等しい。
【0042】
図1Aに示すように、荷重受け部42に配筋された鉄筋(例えば鉄筋B4)の端部は、ストッパー30から作用する外力を基礎梁12Aに伝達するために、基礎梁12Aに挿入されている。
【0043】
(緩衝材)
緩衝材50は、ゴムなどの弾性部材を用いて形成され、プレート30A、30Cの表面に固定されている。緩衝材50は、ストッパー30と、荷重受け部40又は42とが衝突した際の衝撃を低減する。また、緩衝材50は、塑性変形することで衝突エネルギーを吸収するものとしてもよい。
【0044】
なお、緩衝材50は、荷重受け部42と対向しないプレート、例えば上述した他方のプレート30Cには設ける必要はない。
【0045】
<衝突緩衝機構の平面配置>
図2には、建物10における衝突緩衝機構22の平面配置の例が示されている。このうち、X方向に沿う梁16Bに固定されているストッパー30を備えた衝突緩衝機構22を、衝突緩衝機構22Xと称す。同様に、Y方向に沿う梁16Bに固定されているストッパー30を備えた衝突緩衝機構22を、衝突緩衝機構22Yと称す。
【0046】
矢印X1に示されるように、衝突緩衝機構22Xにおいては、ストッパー30と荷重受け部40及び42とは、梁16Bの材軸方向であるX方向において対面し、梁16Bの材軸方向と直交する方向であるY方向において対面しない。
【0047】
また、ストッパー30は、X方向における両側で、荷重受け部と対向して配置されている。すなわち、ストッパー30は一方側が荷重受け部40と対向し、他方側が荷重受け部42と対向している。
【0048】
同様に、矢印Y1に示されるように、衝突緩衝機構22Yにおいては、ストッパー30と荷重受け部40及び42とは、梁16Bの材軸方向であるY方向において対面し、梁16Bの材軸方向と直交する方向であるX方向において対面しない。
【0049】
また、ストッパー30は、Y方向における両側で、荷重受け部と対向して配置されている。すなわち、ストッパー30は一方側が荷重受け部40と対向し、他方側が重受け部42と対向している。
【0050】
ここで、下部構造体12には、X方向に沿う基礎梁12A(図1A参照)とY方向に沿う基礎梁12Aの交点のそれぞれに台座12Bが形成されるが、衝突緩衝機構22は、全ての台座12Bに設けなくてもよい。図2に示すように、衝突緩衝機構22は一部の台座12Bに形成すればよい。
【0051】
なお、図2には建物10の一部のみが示されているが、衝突緩衝機構22X、22Yの数は、建物10を平面視した際に、それぞれ等しい数量だけ設けられていることが好ましい。
【0052】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る免震構造20では、地震時に、図1Aに示す上部構造体16が下部構造体12に対して相対変位した際に、上部構造体16に固定されたストッパー30(より厳密には、ストッパー30に固定された緩衝材50)が荷重受け部40又は42に当接する。荷重受け部40は台座12Bに固定されているため、荷重受け部40及び台座12Bが抵抗力を発揮する。
【0053】
これにより、免震装置14における積層ゴム14Bの破断を抑制できる。また、荷重受け部を台座12Bに固定せず単独で設ける場合と比較して、荷重受け部の体積を小さくできる。
【0054】
本実施形態においては、例えば荷重受け部40における対向部40Aの厚みT1は、荷重受け部42における対向部42Aの厚みT3より小さい。このため、対向部40Aの体積は、荷重受け部42における対向部42Aの体積より小さい。なお、ここでの「体積」とは、対向部40A、42Aにおいて、ストッパー30と対向する面の単位面積あたりの体積である。この対向部40Aのように、体積が小さければ、荷重受け部40を形成するコンクリートの使用量が少なくなるうえ、施工時間も短くできる。
【0055】
また、上部構造体16の梁16Bに固定されたストッパー30には、荷重受け部40、42から反力が作用する。そして、梁16Bにおいてストッパー30が接合された部分には、図1Aに示すように、曲げモーメントM1が作用する。この曲げモーメントM1に対しては、梁16Bが抵抗力を発揮できる。
【0056】
梁16Bは、梁16Bに架け渡される一般的な厚み(例えば200mm程度)の鉄筋コクリート製のスラブ(不図示)と比較して、曲げモーメントに対する耐力が高く設計されている。このため、ストッパー30がスラブに固定されている場合等と比較して、曲げモーメントM1に抵抗し易い。これにより、地震時に短期的に作用する曲げモーメントM1に抵抗するために、躯体(スラブ)の厚みを大きくする必要がない。
【0057】
なお、ストッパー32から荷重受け部42に外力が作用した際も、下部構造体12において荷重受け部42が接合された部分には、曲げモーメントM2が作用する。この曲げモーメントM2に対しては、基礎梁12Aが抵抗力を発揮できる。
【0058】
また、免震構造20では、図2に示すように、荷重受け部40、42とストッパー30とが、梁16Bの材軸方向で対面する。このため、梁16Bの軸方向の軸耐力及び曲げ耐力を発揮することができる。また、荷重受け部40、42とストッパー30とが、梁16Bの材軸方向と直交する方向で対面しない。このため、梁16Bに弱軸方向の力が作用することを抑制できる。
【0059】
また、免震構造20では、図1Bに示すように、ストッパー30の外周面には、緩衝材50が取付けられている。これにより、ストッパー30と荷重受け部40、42が衝突したときの衝撃力が緩和される。また、緩衝材50を塑性変形させれば、衝突エネルギーを吸収することができる。
【0060】
なお、緩衝材50は、図3に示すように、荷重受け部40における対向部40A、40C、荷重受け部42における対向部42A及び42Cに取付けてもよい。
【0061】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、図1Bに示すように、上部構造体16の柱16Aの下端部が梁16Bの下方に突出して形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図4Aに示すように、柱16Aの下端部に配置されたベースプレート16Cの下端面と、梁16Bの下端面と、を同じ高さにしてもよい。
【0062】
また、図1B及び図4Aに示した例では、柱16Aの下端面にベースプレート16Cを設け、このベースプレート16Cを免震装置14のフランジ14Aに固定しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0063】
例えば図4Bに示すように、柱16Aの下端面のベースプレートを、外ダイヤフラム程度の大きさとして、梁16Bの端部をフランジ14Aに固定又は載せる構成としてもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、図1Bに示すように、ストッパー30に、梁16Bの軸方向と交わる方向に面してプレート30B及び30Cを配置しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0065】
例えば図7に示すように、ストッパー30に設けるプレートとしては、ストッパー30が設置された梁16Bの軸方向に面したプレート30Aを設ければよく、プレート30B及び30Cは省略してもよい。
【0066】
プレート30Cを省略した場合は、荷重受け部40における対向部40Cや、荷重受け部42における対向部42Cを省略してもよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、図2に示すように、ストッパー30を挟んで台座12Bと反対側の部分に、荷重受け部42を設けて衝突緩衝機構22を形成しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図5に示す衝突緩衝機構24のように、荷重受け部42は省略してもよい。
【0068】
衝突緩衝機構24のうち、X方向に沿う梁16Bに固定されているストッパー30を備えたものを、衝突緩衝機構24XA、24XBと称す。衝突緩衝機構24XAは、ストッパー30の一方側(図5では右側)に荷重受け部40を備えている。一方、衝突緩衝機構24XBは、ストッパー30の他方側(図5では左側)に荷重受け部40を備えている。
【0069】
同様に、衝突緩衝機構24のうち、Y方向に沿う梁16Bに固定されているストッパー30を備えたものを、衝突緩衝機構24YA、24YBと称す。衝突緩衝機構24YAは、ストッパー30の一方側(図5では下側)に荷重受け部40を備えている。一方、衝突緩衝機構24YBは、ストッパー30の他方側(図5では上側)に荷重受け部40を備えている。
【0070】
このように、複数の衝突緩衝機構24を組み合わせ、それぞれのストッパー30と荷重受け部40とが、X方向に沿う両方向、Y方向に沿う両方向に対向するように構成することで、上部構造体16が下部構造体12に対してどの方向に変位しても、ストッパー30と荷重受け部40とを当接させて、免震装置の破断を抑制できる。
【0071】
また、図2図5で示した実施形態においては、何れも複数の衝突緩衝機構を組み合わせて、全ての方向の変位に対応しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図6に示す衝突緩衝機構26のように、1つの衝突緩衝機構のみで、全ての方向の変位に対応することもできる。
【0072】
衝突緩衝機構26では、1つの台座12Bの4方向に、荷重受け部40を形成している。また、台座12BのX方向両方向において、梁16Bにストッパー30を固定している。同様に、台座12BのY方向両方向において、梁16Bにストッパー30を固定している。
【0073】
この構成により、上部構造体16が下部構造体12に対してどの方向に変位しても、ストッパー30と荷重受け部40とを当接させて、免震装置の破断を抑制できる。
【0074】
なお、衝突緩衝機構26においては、ストッパー30を挟んで台座12Bと反対側の部分に、荷重受け部42は設けても設けなくてもよい。
【0075】
荷重受け部42を設けた場合、上部構造体16が下部構造体12に対して変位した際、何れかのストッパー30が荷重受け部40に当接し、別の何れかのストッパー30が、荷重受け部42に当接する。一方、荷重受け部42を設けない場合、何れかのストッパー30が荷重受け部40に当接する。何れの場合においても、ストッパー30と荷重受け部40又は42とを当接させて、免震装置の破断を抑制できる。
【符号の説明】
【0076】
10 建物
12 下部構造体
12B 台座
14 免震装置
16B 梁(梁材)
16 上部構造体
20 免震構造
30 ストッパー
40 荷重受け部
42 荷重受け部
50 緩衝材
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7