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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060761
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】流体ダンパー
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/26 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
F16F9/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170544
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 史夫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光博
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA34
3J069AA58
3J069AA59
3J069CC15
(57)【要約】
【課題】複雑な内部機構をシリンダの内部に設ける必要がない流体ダンパーを提供する。
【解決手段】流体ダンパー30は、直列配置され床スラブ14に取り付けられた2つのシリンダ32、34と、シリンダ32、34の内部に設けられそれぞれ往復移動するピストン36と、両端部がピストン36に連結され、中間部が梁16のV型のブレース18に連結されたロッド40と、シリンダ32、34に連結され、ピストン36で区画されたロッド40側の第1室52A、54Aどうしを連通させる第1通路42と、シリンダ32、34に連結され、ピストン36で区画されたロッド40と反対側の第2室52B,54Bどうしを連通させる第2通路44と、第1通路42に設けられた第1抵抗力発生部46と、第2通路44に設けられた第2抵抗力発生部48と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対変位する一の部位と他の部位に取付けられる流体ダンパーであり、
直列配置され前記一の部位に取り付けられた2つのシリンダと、
前記シリンダの内部に設けられそれぞれ往復移動するピストンと、
両端部が前記ピストンに連結され、中間部が前記他の部位に連結されたロッドと、
前記シリンダに連結され、前記ピストンで区画された前記シリンダの前記ロッド側の第1室どうしを連通させる第1通路と、
前記シリンダに連結され、前記ピストンで区画された前記シリンダの前記ロッドと反対側の第2室どうしを連通させる第2通路と、
前記第1通路に設けられ、前記第1通路を流れる流体に抵抗力を付与する第1抵抗力発生部と、
前記第2通路に設けられ、前記第2通路を流れる流体に抵抗力を付与する第2抵抗力発生部と、
を有する流体ダンパー。
【請求項2】
柱梁架構内にV型のブレースを構成する第1ブレースと第2ブレースに取付けられる流体ダンパーであり、
前記第1ブレースを分断した一方の第1分断ブレースに接合された第1シリンダと、
前記第1シリンダの内部に設けられ往復移動する第1ピストンと、
一端部が前記第1ピストンに連結され、他端部が前記第1ブレースを分断した他方の第1分断ブレースに接合された第1ロッドと、
前記第2ブレースを分断した一方の第2分断ブレースに接合された第2シリンダと、
前記第2シリンダの内部に設けられ往復移動する第2ピストンと、
一端部が前記第2ピストンに連結され、他端部が前記第2ブレースを分断した他方の第2分断ブレースに接合された第2ロッドと、
前記第1シリンダに設けられ第1ピストンで区画された前記第1シリンダの前記第1ロッド側の第1室と、前記第2シリンダに設けられ第2ピストンで区画された前記第2シリンダの前記第2ロッド側の第2室と、を連通させる第1通路と、
前記第2シリンダに設けられ第2ピストンで区画された前記第2シリンダの前記第2ロッドと反対側の第3室と、前記第1シリンダに設けられ第1ピストンで区画された前記第1シリンダの前記第1ロッドと反対側の第4室と、を連通させる第2通路と、
前記第1通路に設けられ、前記第1通路を流れる流体に抵抗力を付与する第1抵抗力発生部と、
前記第2通路に設けられ、前記第2通路を流れる流体に抵抗力を付与する第2抵抗力発生部と、
を有する流体ダンパー。
【請求項3】
梁部材の中央に設けられた中央柱の両側に配置され、前記梁部材の端部をそれぞれ支持する第1柱と第2柱に取付けられる流体ダンパーであり、
前記第1柱を分断した一方の第1分断柱に接合された第1シリンダと、
前記第1シリンダの内部に設けられ往復移動する第1ピストンと、
一端部が前記第1ピストンに連結され、他端部が前記第1柱を分断した他方の第1分断柱に接合された第1ロッドと、
前記第2柱を分断した一方の第2分断柱に接合された第2シリンダと、
前記第2シリンダの内部に設けられ往復移動する第2ピストンと、
一端部が前記第2ピストンに連結され、他端部が前記第2柱を分断した他方の第2分断柱に接合された第2ロッドと、
前記第1シリンダに設けられ第1ピストンで区画された前記第1シリンダの前記第1ロッド側の第1室と、前記第2シリンダに設けられ第2ピストンで区画された前記第2シリンダの前記第2ロッド側の第2室と、を連通させる第1通路と、
前記第2シリンダに設けられ第2ピストンで区画された前記第2シリンダの前記第2ロッドと反対側の第3室と、前記第1シリンダに設けられ第1ピストンで区画された前記第1シリンダの前記第1ロッドと反対側の第4室と、を連通させる第2通路と、
前記第1通路に設けられ、前記第1通路を流れる流体に抵抗力を付与する第1抵抗力発生部と、
前記第2通路に設けられ、前記第2通路を流れる流体に抵抗力を付与する第2抵抗力発生部と、
を有する流体ダンパー。
【請求項4】
前記他の部位は、柱梁架構内に設けられたV型のブレースの結合部であり、
前記一の部位は、前記結合部と対面する前記柱梁架構の水平部材である、請求項1に記載の流体ダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物や免震装置に利用するダンパーが提案されている。
【0003】
下記特許文献1には、シリンダ内に直列に設けた2つの作動室内を伸側室と圧側室とに区画する2つのピストンと、シリンダ内に移動自在に挿入されて2つのピストンに連結されるロッドと、を備えたダンパーが開示されている。このダンパーでは、伸側室と圧側室とをシリンダ内で連通して通過する流体の流れに抵抗を与える複数の減衰通路が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-137716公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のダンパーでは、複数の減衰通路を形成するための複雑な内部機構をシリンダの内部に設ける必要がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、複雑な内部機構をシリンダの内部に設ける必要がない流体ダンパーを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に記載の流体ダンパーは、相対変位する一の部位と他の部位に取付けられる流体ダンパーであり、直列配置され前記一の部位に取り付けられた2つのシリンダと、前記シリンダの内部に設けられそれぞれ往復移動するピストンと、両端部が前記ピストンに連結され、中間部が前記他の部位に連結されたロッドと、前記シリンダに連結され、前記ピストンで区画された前記シリンダの前記ロッド側の第1室どうしを連通させる第1通路と、前記シリンダに連結され、前記ピストンで区画された前記シリンダの前記ロッドと反対側の第2室どうしを連通させる第2通路と、前記第1通路に設けられ、前記第1通路を流れる流体に抵抗力を付与する第1抵抗力発生部と、前記第2通路に設けられ、前記第2通路を流れる流体に抵抗力を付与する第2抵抗力発生部と、を有する。
【0008】
第1態様に記載の流体ダンパーによれば、一の部位と他の部位が相対変位すると、例えば、ロッドが一方向へ移動し、直列配置された一方のシリンダの内部のピストンが第2室を圧縮する方向へ移動し、他方のシリンダの内部のピストンが第1室を圧縮する方向へ移動する。このため、一方のシリンダの第2室から他方のシリンダの第2室へ第2通路を通じて流体が流れ第2抵抗力発生部で流体に抵抗力が付与される。また、他方のシリンダの第1室から一方のシリンダの第1室へ第1通路を通じて流体が流れ第1抵抗力発生部で流体に抵抗力が付与される。
これにより、ロッド及びシリンダを介して、一の部位と他の部位との相対変位を低減することができる。また、ロッドが一方向へ移動するとき、及び他方向へ移動するとき、2つのピストンが流体から受ける受圧面積が等しくなるので、バランスよく一の部位と他の部位との相対変位を低減できる。このため、ロッドの長さを、シリンダを貫通する長さにする必要がなく、コンパクトな流体ダンパーとすることができる。
また、第1と第2の抵抗力発生部が、シリンダの中でなく、シリンダの外に配置された第1通路と第2通路に設けられているので、複雑な内部機構をシリンダの内部に設ける必要がない。
【0009】
第2態様に記載の流体ダンパーは、柱梁架構内にV型のブレースを構成する第1ブレースと第2ブレースに取付けられる流体ダンパーであり、前記第1ブレースを分断した一方の第1分断ブレースに接合された第1シリンダと、前記第1シリンダの内部に設けられ往復移動する第1ピストンと、一端部が前記第1ピストンに連結され、他端部が前記第1ブレースを分断した他方の第1分断ブレースに接合された第1ロッドと、前記第2ブレースを分断した一方の第2分断ブレースに接合された第2シリンダと、前記第2シリンダの内部に設けられ往復移動する第2ピストンと、一端部が前記第2ピストンに連結され、他端部が前記第2ブレースを分断した他方の第2分断ブレースに接合された第2ロッドと、前記第1シリンダに設けられ第1ピストンで区画された前記第1シリンダの前記第1ロッド側の第1室と、前記第2シリンダに設けられ第2ピストンで区画された前記第2シリンダの前記第2ロッド側の第2室と、を連通させる第1通路と、前記第2シリンダに設けられ第2ピストンで区画された前記第2シリンダの前記第2ロッドと反対側の第3室と、前記第1シリンダに設けられ第1ピストンで区画された前記第1シリンダの前記第1ロッドと反対側の第4室と、を連通させる第2通路と、前記第1通路に設けられ、前記第1通路を流れる流体に抵抗力を付与する第1抵抗力発生部と、前記第2通路に設けられ、前記第2通路を流れる流体に抵抗力を付与する第2抵抗力発生部と、を有する。
【0010】
第2態様に記載の流体ダンパーによれば、柱梁架構が相対変位すると、例えば、V型のブレースを構成する第1ブレースの第1シリンダの第1ロッドが一方向へ移動し、第1シリンダの内部の第1ピストンが第1室を圧縮する方向へ移動する。すなわち、第1ピストンが引っ張り方向に移動する。これにより、第1シリンダの第1室から、V型のブレースを構成する第2ブレースの第2シリンダの第2室へ第1通路を通じて流体が流れ第1抵抗力発生部で流体に抵抗力が付与される。これと共に、第2シリンダの内部の第2ピストンが第3室を圧縮する方向へ移動する。すなわち、第2ピストンが圧縮方向に移動する。これにより、第2シリンダの第3室から第1シリンダの第4室へ第2通路を通じて流体が流れ第2抵抗力発生部で流体に抵抗力が付与される。
これにより、V型のブレースを構成する第1ブレースと第2ブレースに設けられた第1シリンダ及び第2シリンダを介して、柱梁架構の変位を低減することができる。また、第1ロッドが一方向へ移動し、第2ロッドが第1ロッドの移動に対応して移動するとき、及び第1ロッドが他方向へ移動し、第2ロッドが第1ロッドの移動に対応して移動するとき、第1ピストン及び第2ピストンが流体から受ける受圧面積が等しくなるので、バランスよく柱梁架構の変位を低減できる。このため、第1ロッド又は第2ロッドの長さを、第1シリンダ又は第2シリンダを貫通する長さにする必要がなく、コンパクトな流体ダンパーとすることができる。
また、第1と第2の抵抗力発生部が、第1シリンダ及び第2シリンダの中でなく、第1シリンダ及び第2シリンダの外に配置された第1通路と第2通路に設けられているので、複雑な内部機構を第1シリンダ及び第2シリンダの内部に設ける必要がない。
【0011】
第3態様に記載の流体ダンパーは、梁部材の中央に設けられた中央柱の両側に配置され、前記梁部材の端部をそれぞれ支持する第1柱と第2柱に取付けられる流体ダンパーであり、前記第1柱を分断した一方の第1分断柱に接合された第1シリンダと、前記第1シリンダの内部に設けられ往復移動する第1ピストンと、一端部が前記第1ピストンに連結され、他端部が前記第1柱を分断した他方の第1分断柱に接合された第1ロッドと、前記第2柱を分断した一方の第2分断柱に接合された第2シリンダと、前記第2シリンダの内部に設けられ往復移動する第2ピストンと、一端部が前記第2ピストンに連結され、他端部が前記第2柱を分断した他方の第2分断柱に接合された第2ロッドと、前記第1シリンダに設けられ第1ピストンで区画された前記第1シリンダの前記第1ロッド側の第1室と、前記第2シリンダに設けられ第2ピストンで区画された前記第2シリンダの前記第2ロッド側の第2室と、を連通させる第1通路と、前記第2シリンダに設けられ第2ピストンで区画された前記第2シリンダの前記第2ロッドと反対側の第3室と、前記第1シリンダに設けられ第1ピストンで区画された前記第1シリンダの前記第1ロッドと反対側の第4室と、を連通させる第2通路と、前記第1通路に設けられ、前記第1通路を流れる流体に抵抗力を付与する第1抵抗力発生部と、前記第2通路に設けられ、前記第2通路を流れる流体に抵抗力を付与する第2抵抗力発生部と、を有する。
【0012】
第3態様に記載の流体ダンパーによれば、梁部材が対向する部材に対して相対変位すると、例えば、第1柱の第1シリンダの第1ロッドが一方向へ移動し、第1シリンダの内部の第1ピストンが第1室を圧縮する方向へ移動する。すなわち、第1ピストンが引っ張り方向に移動する。これにより、第1シリンダの第1室から、第2柱の第2シリンダの第2室へ第1通路を通じて流体が流れ第1抵抗力発生部で流体に抵抗力が付与される。これと共に、第2シリンダの内部の第2ピストンが第3室を圧縮する方向へ移動する。すなわち、第2ピストンが圧縮方向に移動する。これにより、第2シリンダの第3室から第1シリンダの第4室へ第2通路を通じて流体が流れ第2抵抗力発生部で流体に抵抗力が付与される。
これにより、第1柱と第2柱に設けられた第1シリンダ及び第2シリンダを介して、梁部材の変位を低減することができる。また、第1ロッドが一方向へ移動し、第2ロッドが第1ロッドの移動に対応して移動するとき、及び第1ロッドが他方向へ移動し、第2ロッドが第1ロッドの移動に対応して移動するとき、第1ピストン及び第2ピストンが流体から受ける受圧面積が等しくなるので、バランスよく梁部材の変位を低減できる。このため、第1ロッド又は第2ロッドの長さを、第1シリンダ又は第2シリンダを貫通する長さにする必要がなく、コンパクトな流体ダンパーとすることができる。
また、第1と第2の抵抗力発生部が、第1シリンダ及び第2シリンダの中でなく、第1シリンダ及び第2シリンダの外に配置された第1通路と第2通路に設けられているので、複雑な内部機構を第1シリンダ及び第2シリンダの内部に設ける必要がない。
【0013】
第4態様に記載の流体ダンパーは、第1態様に記載の流体ダンパーにおいて、前記他の部位は、柱梁架構内に設けられたV型のブレースの結合部であり、前記一の部位は、前記結合部と対面する前記柱梁架構の水平部材である。
【0014】
第4態様に記載の流体ダンパーによれば、V型のブレースの結合部にロッドの中間部を連結し、2つのシリンダを水平部材に取付けることで、柱梁架構の相対変位を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の流体ダンパーによれば、複雑な内部機構をシリンダの内部に設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の流体ダンパーを備えた構造物の一例を示す立面図である。
図2】第1実施形態の流体ダンパーを示す断面図である。
図3】第1実施形態の流体ダンパーに用いられる制御弁を示す断面図である。
図4】(A)は、制御弁の閉止時に状態を示す模式的な断面図であり、(B)は、制御弁の開放時の状態を示す模式的な断面図である。
図5】第2実施形態の流体ダンパーを備えた免震建物の一例を示す立面図である。
図6】第3実施形態の流体ダンパーを備えた構造物の一例を示す立面図である。
図7】第3実施形態の流体ダンパーを備えた構造物が変位したときの状態を説明する立面図である。
図8】第4実施形態の流体ダンパーを備えた構造物の一例を示す立面図である。
図9】第4実施形態の流体ダンパーを備えた構造物が変位したときの状態を説明する立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。各図面において、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。なお、各図面において適宜示される矢印UPで示す方向を鉛直方向の上方側とする。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1図4にしたがって、第1実施形態に係る流体ダンパーについて説明する。
【0019】
(構造物の構成)
図1には、第1実施形態に係る流体ダンパー30を備えた構造物10の一例が示されている。図1に示されるように、構造物10は、上下方向に沿って配置された複数の柱12と、複数の柱12の下側に水平方向に沿って配置された床スラブ14と、複数の柱12の上側に水平方向に沿って掛け渡された梁16と、を備えている。構造物10は、複数の柱12と床スラブ14と梁16により柱梁架構を構成している。床スラブ14は、一の部位の一例、かつ柱梁架構の水平部材の一例である。梁16は、他の部位の一例である。梁16は、床スラブ14に対して上階に設けられている。
【0020】
梁16の長手方向の両側(柱12との接合部の側)には、床スラブ14側に向かって延びたV型のブレース18が設けられている。ブレース18は、梁16と一体的に構成されている。ブレース18は、柱梁架構内に設けられており、他の部位の一例である。ブレース18は、梁16の一端部から斜め方向に配置された第1ブレース18Aと、梁16の他端部から第1ブレース18Aと交差する方向に配置された第2ブレース18Bと、第1ブレース18Aの下端部と第2ブレース18Bの下端部とが結合された結合部18Cと、を備えている。
【0021】
構造物10は、床スラブ14と梁16とが相対変位する構成である。床スラブ14と梁16には、流体ダンパー30が取り付けられている。
【0022】
(流体ダンパーの構成)
図1及び図2に示されるように、流体ダンパー30は、床スラブ14の上部に取り付けられた2つのシリンダ32、34と、シリンダ32、34の内部にそれぞれ設けられたピストン36と、2つのピストン36に連結されたロッド40と、を備えている。また、流体ダンパー30は、シリンダ32、34に連結された第1通路42及び第2通路44と、第1通路42に設けられた第1抵抗力発生部46と、第2通路44に設けられた第2抵抗力発生部48と、を備えている。
【0023】
図2に示されるように、シリンダ32は、筒状部32Aと、筒状部32Aの一端側を塞ぐ壁32Bと、筒状部32Aの他端側を塞ぐ壁32Cと、を備えている。シリンダ34は、筒状部34Aと、筒状部34Aの一端側を塞ぐ壁34Bと、筒状部34Aの他端側を塞ぐ壁34Cと、を備えている。シリンダ32、34は、床スラブ14上に直列に配置されている。すなわち、シリンダ32、34は、筒状部32A、32Bの方向が直列となるように配置されている。本実施形態では、シリンダ32、34は、ほぼ同じ形成とされている。
【0024】
ピストン36は、シリンダ32、34の内部でそれぞれ往復移動する。ピストン36の外径は、シリンダ32、34の内径よりも僅かに小さく、ピストン36がシリンダ32、34の内壁に摺動しながら往復移動する。
【0025】
ロッド40は、シリンダ32、34の対向配置された壁32B及び壁34Cを貫通した状態で、軸方向に移動可能である。ロッド40の両端部40Aは、シリンダ32の内部のピストン36と、シリンダ34の内部のピストン36とに連結されている。床スラブ14に取り付けられた2つのシリンダ32、34のロッド40は、梁16に設けられたブレース18の結合部18Cと対面している。ロッド40の中間部40Bは、ブレース18の結合部18C(図1参照)に連結部41により連結されている。
【0026】
シリンダ32の内部には、ピストン36で区画されたロッド40側の第1室52Aと、ピストン36で区画されたロッド40と反対側の第2室52Bとが設けられている。シリンダ34の内部には、ピストン36で区画されたロッド40側の第1室54Aと、ピストン36で区画されたロッド40と反対側の第2室54Bとが設けられている。
【0027】
第1通路42は、シリンダ32、34のロッド40側の第1室52A、54Aどうしを連通する。第2通路44は、シリンダ32、34のロッド40と反対側の第2室52B、54Bどうしを連通する。第1室52A、54A及び第1通路42には、流体の一例としてのオイルO1が充填されている。第2室52B、54B及び第2通路44には、流体の一例としてのオイルO2が充填されている。一例として、オイルO1とオイルO2は、同じ粘性のオイルであるが、異なる粘性のオイルであってもよい。
【0028】
第1抵抗力発生部46は、第1通路42を流れるオイルO1に抵抗力を付与する。第2抵抗力発生部48は、第2通路44を流れるオイルO2に抵抗力を付与する。第1抵抗力発生部46及び第2抵抗力発生部48は、ほぼ同じ構成であり、複数の制御弁60(図3参照)を備えている。一例として、第1抵抗力発生部46は、第1通路42の一方向にオイルO1が流れるように制御する制御弁60と、第1通路42の他方向にオイルO1が流れるように制御する制御弁60と、を備えている。同様に、第2抵抗力発生部48は、第2通路44の一方向にオイルO2が流れるように制御する制御弁60と、第2通路44の他方向にオイルO2が流れるように制御する制御弁60と、を備えている。
【0029】
図3に示されるように、制御弁60は、筒状部62と、筒状部62の流入側に設けられると共に筒状部62の内径よりも内径が小さい流入路64と、流入路64の壁64Aを閉塞可能な球状ポペット66と、球状ポペット66に接触する壁部68と、を備えている。また、制御弁60は、筒状部62の流出側に設けられると共に筒状部62の内径よりも内径が小さい流出路70と、球状ポペット66を流入路64の壁64Aを閉止する方向に付勢するばね72と、を備えている。ばね72は、壁部68と流出路70側の段差部71との間に配置されている。図示を省略するが、壁部68には、オイルが流れる開口が設けられている。
【0030】
図4(A)に示されるように、流入路64に流れるオイルの量が少ない状態では、ばね72の付勢力により、球状ポペット66が流入路64の壁64Aに押し付けられ、流入路64が閉止されている。図4(B)に示されるように、流入路64に流れるオイルの量が多くなると、球状ポペット66がばね72の付勢力に抗して流入路64の壁64Aから離れる方向に移動し、流入路64が開放される。これにより、流入路64から筒状部62を通って流出路70にオイルが流れる。
【0031】
第1抵抗力発生部46及び第2抵抗力発生部48(図2参照)は、一方向と他方向にオイルが流れる複数の制御弁60を備えているため、第1通路42を流れるオイルO1、第2通路44を流れるオイルO2に抵抗力を付与することが可能となる。
【0032】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
流体ダンパー30では、床スラブ14と梁16が相対変位すると、例えば、ロッド40が一方向へ移動し、直列配置された一方のシリンダ32の内部のピストン36が第2室52Bを圧縮する方向へ移動し、他方のシリンダ34の内部のピストン36が第1室54Aを圧縮する方向へ移動する。このため、一方のシリンダ32の第2室52Bから他方のシリンダ34の第2室54Bへ第2通路44を通じてオイルO2が流れ、第2抵抗力発生部48でオイルO2に抵抗力が付与される。また、他方のシリンダ34の第1室54Aから一方のシリンダ32の第1室52Aへ第1通路42を通じてオイルO1が流れ、第1抵抗力発生部46でオイルO1に抵抗力が付与される。
【0034】
これにより、流体ダンパー30では、ロッド40及びシリンダ32、34を介して、床スラブ14と梁16との相対変位を低減することができる。例えば、地震時の床スラブ14と梁16との相対変位(層間変位)に対してエネルギーを吸収することができる。また、ロッド40が一方向へ移動するとき、及び他方向へ移動するとき、2つのピストン36がオイルO1、O2から受ける受圧面積が等しくなるので、バランスよく床スラブ14と梁16との相対変位を低減することができる。このため、ロッド40の長さを、シリンダ32、34を貫通する長さにする必要がなく、コンパクトな流体ダンパー30とすることができる。
【0035】
また、第1抵抗力発生部46と第2抵抗力発生部48が、シリンダ32、34の中でなく、シリンダ32、34の外に配置された第1通路42と第2通路44に設けられているので、複雑な内部機構をシリンダ32、34の内部に設ける必要がない。
【0036】
また、流体ダンパー30では、柱梁架構内の梁16に設けられたV型のブレース18の結合部18Cに、柱梁架構の床スラブ14の側が対面している。このため、流体ダンパー30では、V型のブレース18の結合部18Cに、ロッド40の中間部40Bを連結し、2つのシリンダ32、34を床スラブ14に取付けることで、柱梁架構の床スラブ14と梁16の相対変位を低減することができる。
【0037】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態の流体ダンパーについて説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0038】
図5には、第2実施形態の流体ダンパー90を備えた免震建物80の一例が示されている。図5に示されるように、免震建物80は、下部躯体82と、上部躯体84と、下部躯体82と上部躯体84との間に配置される免震層86と、を備えている。さらに、免震建物80は、下部躯体82と上部躯体84に取り付けられる流体ダンパー90を備えている。下部躯体82は、一の部位の一例であり、上部躯体84は、他の部位の一例である。
【0039】
下部躯体82と上部躯体84は、上下に間隔をおいて配置されており、相対変位する構成である。一例として、下部躯体82は、基礎であり、上部躯体84は、建物本体である。
【0040】
免震層86は、複数の積層ゴム86Aを備えている。積層ゴム86Aは、下部躯体82から上側に突出する突出部82Aと、上部躯体84から下側に突出する突出部84Aとに接触するように配置されている。
【0041】
流体ダンパー90は、第1実施形態の流体ダンパー30と同様の構成である。流体ダンパー90に設けられた2つのシリンダ32、34は、下部躯体82の上部に取り付けられている。
【0042】
上部躯体84は、上部躯体84から下側に突出する突出部92と、突出部92から下側に延びた支持部93と、を備えている。支持部93の下端部は、流体ダンパー90に設けられたロッド40の中間部に連結部94により連結されている。突出部92及び支持部93は、上部躯体84と一体的に構成されており、他の部位の一例である。
【0043】
流体ダンパー90では、第1実施形態の流体ダンパー30と同様の構成により、同様の作用及び効果を得ることができる。すなわち、流体ダンパー90では、ロッド40及びシリンダ32、34を介して、下部躯体82と上部躯体84との相対変位を低減することができる。本実施形態では、流体ダンパー90により、地震時の免震層86の変位に対してエネルギーを吸収することができる。
【0044】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態の流体ダンパーについて説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0045】
(構造物の構成)
図6には、第3実施形態の流体ダンパー110を備えた構造物100の一例が示されている。図6に示されるように、構造物100では、複数の柱12と床スラブ14と梁16により柱梁架構が構成されている。構造物100は、梁16の長手方向の両側から床スラブ14側に向かって延びたV型のブレース102を備えている。
【0046】
V型のブレース102は、梁16の長手方向の一端部(柱12との接合部の側)から斜め方向に配置された第1ブレース104と、梁16の長手方向の他端部(柱12との接合部の側)から第1ブレース104と交差する方向に配置された第2ブレース106と、を備えている。第1ブレース104と第2ブレース106には、流体ダンパー110が取り付けられている。
【0047】
第1ブレース104は、2つに分断されており、第1分断ブレース104Aと第1分断ブレース104Bとを備えている。第1分断ブレース104Aは、一方の第1分断ブレースの一例であり、第1分断ブレース104Bは、他方の第1分断ブレースの一例である。本実施形態では、第1分断ブレース104Aは、第1分断ブレース104Bよりも斜め方向の上側に配置されている。一例として、第1分断ブレース104Bの下端部は、床スラブ14に取り付けられた取付部107Aに接合されており、第1分断ブレース104Aの上端部は、梁16に取り付けられた取付部108Aに接合されている。
【0048】
第2ブレース106は、2つに分断されており、第2分断ブレース106Aと第2分断ブレース106Bとを備えている。第2分断ブレース106Aは、一方の第2分断ブレースの一例であり、第2分断ブレース106Bは、他方の第1分断ブレースの一例である。本実施形態では、第2分断ブレース106Aは、第2分断ブレース106Bよりも斜め方向の上側に配置されている。一例として、第2分断ブレース106Bの下端部は、床スラブ14に取り付けられた取付部107Bに接合されており、第2分断ブレース106Aの上端部は、梁16に取り付けられた取付部108Bに接合されている。
【0049】
(流体ダンパーの構成)
流体ダンパー110は、第1分断ブレース104Aに接合された第1シリンダ112と、第1シリンダ112の内部に設けられると共に往復移動する第1ピストン114と、を備えている。また、流体ダンパー110は、一端部が第1ピストン114に連結され、他端部が第1分断ブレース104Bに接合された第1ロッド116を備えている。第1ロッド116は、第1シリンダ112における第1分断ブレース104B側の壁を貫通し、軸方向に移動可能とされている。一例として、第1シリンダ112は第1分断ブレース104Aにピン接合されており、第1ロッド116は第1分断ブレース104Bにピン接合されている。
【0050】
流体ダンパー110は、第2分断ブレース106Aに接合された第2シリンダ122と、第2シリンダ122の内部に設けられると共に往復移動する第2ピストン124と、を備えている。また、流体ダンパー110は、一端部が第2ピストン124に連結され、他端部が第2分断ブレース106Bに接合された第2ロッド126を備えている。第2ロッド126は、第2シリンダ122における第2分断ブレース106B側の壁を貫通し、軸方向に移動可能とされている。一例として、第2シリンダ122は第2分断ブレース106Aにピン接合されており、第2ロッド126は第2分断ブレース106Bにピン接合されている。
【0051】
第1シリンダ112の内部には、第1ピストン114で区画された第1ロッド116側の第1室118Aと、第1ピストン114で区画された第1ロッド116と反対側の第4室118Bとが設けられている。
【0052】
第2シリンダ122の内部には、第2ピストン124で区画された第2ロッド126側の第2室128Aと、第2ピストン124で区画された第2ロッド126と反対側の第3室128Bとが設けられている。
【0053】
流体ダンパー110は、第1シリンダ112の第1室118Aと第2シリンダ122の第2室128Aとを連通させる第1通路130と、第2シリンダ122の第3室128Bと第1シリンダ112の第4室118Bとを連通させる第2通路132と、を備えている。第1室118A、第2室128A及び第1通路130には、流体の一例としてのオイルO3が充填されている。第3室128B、第4室118B及び第2通路132には、流体の一例としてのオイルO4が充填されている。
【0054】
さらに、流体ダンパー110は、第1通路130に設けられた第1抵抗力発生部134と、第2通路132に設けられた第2抵抗力発生部136と、を備えている。第1抵抗力発生部134は、第1通路130を流れるオイルO3に抵抗力を付与する。第2抵抗力発生部136は、第2通路132を流れるオイルO4に抵抗力を付与する。
【0055】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0056】
図7に示されるように、流体ダンパー110では、柱梁架構が相対変位すると、例えば、V型のブレース102を構成する第1ブレース104の第1シリンダ112の第1ロッド116が第1シリンダ112に対して一方向(例えば、矢印A方向)へ移動し、第1シリンダ112の内部の第1ピストン114が第1室118Aを圧縮する方向へ移動する。すなわち、第1ピストン114が引っ張り方向に移動する(矢印A及び矢印B方向を参照)。これにより、第1シリンダ112の第1室118Aから、V型のブレース102を構成する第2ブレース106の第2シリンダ122の第2室128Aへ第1通路130を通じてオイルO3が流れ、第1抵抗力発生部134でオイルO3に抵抗力が付与される。これと共に、第2シリンダ122の内部の第2ピストン124が第3室128Bを圧縮する方向(例えば、矢印C方向)へ移動する。すなわち、第2ピストン124が圧縮方向に移動する(矢印C及び矢印D方向)。本実施形態では、第1ピストン114と第2ピストン124の移動方向は逆であり、第1ピストン114と第2ピストン124の移動量は同等である。これにより、第2シリンダ122の第3室128Bから第1シリンダ112の第4室118Bへ第2通路132を通じてオイルO4が流れ第2抵抗力発生部136でオイルO4に抵抗力が付与される(図6参照)。
【0057】
これにより、V型のブレース102を構成する第1ブレース104と第2ブレース106に設けられた第1シリンダ112及び第2シリンダ122を介して、構造物100の柱梁架構の変位を低減することができる。また、第1ロッド116が一方向(例えば、矢印A方向)へ移動し、第2ロッド126が第1ロッド116の移動に対応して移動するとき、及び第1ロッド116が他方向(例えば、矢印Aと反対方向)へ移動し、第2ロッド126が第1ロッド116の移動に対応して移動するとき、第1ピストン114及び第2ピストン124がオイルO3、O4から受ける受圧面積が等しくなるので、バランスよく柱梁架構の変位を低減できる。このため、第1ロッド116又は第2ロッド126の長さを、第1シリンダ112又は第2シリンダ122を貫通する長さにする必要がなく、コンパクトな流体ダンパー110とすることができる。
【0058】
また、第1抵抗力発生部134と第2抵抗力発生部136が、第1シリンダ112及び第2シリンダ122の中でなく、第1シリンダ112及び第2シリンダ122の外に配置された第1通路130と第2通路132に設けられているので、複雑な内部機構を第1シリンダ112及び第2シリンダ122の内部に設ける必要がない。
【0059】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態の流体ダンパーについて説明する。なお、前述した第1~第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0060】
(構造物の構成)
図8には、第4実施形態の流体ダンパー170を備えた構造物150の一例が示されている。図7に示されるように、構造物150は、上下方向に間隔をおいて配置された梁152、154と、梁152、154の中央に設けられた中央柱156と、中央柱156の両側に配置された第1柱158及び第2柱160と、を備えている。梁152、154は、梁部材の一例である。第1柱158と第2柱160は、上側の梁154の長手方向の端部をそれぞれ支持している。第1柱158と第2柱160には、流体ダンパー170が取り付けられている。
【0061】
第1柱158は、2つに分断されており、第1分断柱158Aと第1分断柱158Bとを備えている。第1分断柱158Aは、一方の第1分断柱の一例であり、第1分断柱158Bは、他方の第1分断柱の一例である。本実施形態では、第1分断柱158Bは、第1分断柱158Aよりも上下方向上側に配置されている。第1分断柱158Aの下端部は、梁152に接合されており、第1分断柱158Bの上端部は、梁154に接合されている。
【0062】
第2柱160は、2つに分断されており、第2分断柱160Aと第2分断柱160Bとを備えている。第2分断柱160Aは、一方の第2分断柱の一例であり、第2分断柱160Bは、他方の第2分断柱の一例である。本実施形態では、第2分断柱160Bは、第2分断柱160Aよりも上下方向上側に配置されている。第2分断柱160Aの下端部は、梁152に接合されており、第2分断柱160Bの上端部は、梁154に接合されている。
【0063】
流体ダンパー170は、第1分断柱158Aに接合(例えば、ピン接合)された第1シリンダ112と、第1シリンダ112の内部で往復移動する第1ピストン114と、を備えている。また、流体ダンパー170は、一端部が第1ピストン114に連結され、他端部が第1分断柱158Bに接合(例えば、ピン接合)された第1ロッド116を備えている。
【0064】
流体ダンパー170は、第2分断柱160Aに接合(例えば、ピン接合)された第2シリンダ122と、第2シリンダ122の内部で往復移動する第2ピストン124と、を備えている。さらに、流体ダンパー170は、一端部が第2ピストン124に連結され、他端部が第2分断柱160Bに接合(例えば、ピン接合)された第2ロッド126を備えている。
【0065】
第1シリンダ112の内部には、第1ピストン114で区画された第1ロッド116側の第1室118Aと、第1ロッド116と反対側の第4室118Bとが設けられている。第2シリンダ122の内部には、第2ピストン124で区画された第2ロッド126側の第2室128Aと、第2ロッド126と反対側の第3室128Bとが設けられている。
【0066】
流体ダンパー170は、第1シリンダ112の第1室118Aと第2シリンダ122の第2室128Aとを連通させる第1通路172と、第2シリンダ122の第3室128Bと第1シリンダ112の第4室118Bとを連通させる第2通路174と、を備えている。第1室118A、第2室128A及び第1通路172には、流体の一例としてのオイルO5が充填されている。第3室128B、の第4室118B及び第2通路174には、流体の一例としてのオイルO6が充填されている。
【0067】
さらに、流体ダンパー110は、第1通路172に設けられた第1抵抗力発生部134と、第2通路174に設けられた第2抵抗力発生部136と、を備えている。
【0068】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0069】
図9に示されるように、流体ダンパー170では、梁152と梁154が相対変位すると、例えば、第1柱158の第1シリンダ112の第1ロッド116が一方向(例えば、矢印E方向)へ移動し、第1シリンダ112の内部の第1ピストン114が第1シリンダ112に対して第1室118Aを圧縮する方向へ移動する。すなわち、第1ピストン114が引っ張り方向に移動する(矢印E及び矢印Fを参照)。これにより、第1シリンダ112の第1室118Aから、第2柱160の第2シリンダ122の第2室128Aへ第1通路172を通じてオイルO5が流れ、第1抵抗力発生部134でオイルO5に抵抗力が付与される(図8参照)。これと共に、第2シリンダ122の内部の第2ピストン124が第3室128Bを圧縮する方向(矢印G方向)へ移動する。すなわち、第2ピストンが圧縮方向に移動する(矢印G及び矢印Hを参照)。これにより、第2シリンダ122の第3室128Bから第1シリンダ112の第4室118Bへ第2通路174を通じてオイルO6が流れ、第2抵抗力発生部136でオイルO6に抵抗力が付与される(図8参照)。
【0070】
これにより、第1柱158と第2柱160に設けられた第1シリンダ112及び第2シリンダ122を介して、梁152、154の変位を低減することができる。また、第1ロッド116が一方向(例えば、矢印E方向)へ移動し、第2ロッド126が第1ロッド116の移動に対応して移動するとき、及び第1ロッド116が他方向(例えば、矢印Eと反対方向)へ移動し、第2ロッド126が第1ロッド116の移動に対応して移動するとき、第1ピストン114及び第2ピストン124がオイルO5、O6から受ける受圧面積が等しくなるので、バランスよく梁152、154の変位を低減できる。このため、第1ロッド116又は第2ロッド126の長さを、第1シリンダ112又は第2シリンダ122を貫通する長さにする必要がなく、コンパクトな流体ダンパー170とすることができる。
【0071】
また、第1抵抗力発生部134と第2抵抗力発生部136が、第1シリンダ112及び第2シリンダ122の中でなく、第1シリンダ112及び第2シリンダ122の外に配置された第1通路172と第2通路174に設けられているので、複雑な内部機構を第1シリンダ112及び第2シリンダ122の内部に設ける必要がない。
【0072】
〔補足説明〕
第1実施形態では、梁16から下方側に延びたV型のブレース18が設けられているが、本開示は、この構成に限定されるものではない。例えば、床スラブ14から上方側に延びたV型のブレースを設け、梁16に2つのシリンダを取り付けると共に、2つのシリンダのピストンに連結されるロッドをV型のブレースに連結する構成でもよい。
【0073】
第2実施形態では、下部躯体82に流体ダンパー90の2つのシリンダ32、34が取り付けられているが、本開示は、この構成に限定されるものではない。例えば、流体ダンパー90の上下方向の配置を逆にし、上部躯体84に2つのシリンダが取り付けられる構成でもよい。
【0074】
第3実施形態では、第1シリンダ112と第2シリンダ122を備えた流体ダンパー110が設けられているが、本開示は、流体ダンパー110の配置に限定されるものではない。例えば、流体ダンパー110の上下方向の配置(例えば、それぞれのシリンダとロッドの上下方向の配置)を逆にしてもよい。
【0075】
また、第3実施形態では、梁16から下方側に延びたV型のブレース102が設けられているが、本開示は、この構成に限定されるものではない。例えば、床スラブ14から上方側に延びたV型のブレースを設け、V型のブレースを構成する第1ブレースと第2ブレースに流体ダンパー110を設ける構成でもよい。
【0076】
第4実施形態では、第1シリンダ112と第2シリンダ122を備えた流体ダンパー170が設けられているが、本開示は、流体ダンパー170の配置に限定されるものではない。例えば、流体ダンパー170の上下方向の配置(例えば、それぞれのシリンダとロッドの上下方向の配置)を逆にしてもよい。
【0077】
第1~第4実施形態では、流体として、オイルが用いられているが、本開示は、この構成に限定されるものではない。例えば、流体として、オイル以外の液体又は気体を用いてもよい。また、第1通路の側及び第2通路の側を流れる流体の一方を、液体(オイルなど)とし、第1通路の側及び第2通路の側を流れる流体の他方を、気体で構成してもよい。流体ダンパーにおける第1通路の側を流れる流体と第2通路の側を流れる流体の種類を変えることで、要求される流体ダンパーの減衰抵抗力に対応可能となる。例えば、第1通路の側を流れる流体と第2通路の側を流れる流体の種類を変えることで、既設の建物において、用途変更に伴い建物重量が変化した場合などに容易に対応可能である。
【0078】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0079】
14 床スラブ(一の部位、水平部材)
16 梁(他の部位)
18 V型のブレース(他の部位)
18A 第1ブレース
18B 第2ブレース
18C 結合部
30 流体ダンパー
32 シリンダ
34 シリンダ
36 ピストン
40 ロッド
40A 両端部
40B 中間部
42 第1通路
44 第2通路
46 第1抵抗力発生部
48 第2抵抗力発生部
52A 第1室
52B 第2室
54A 第1室
54B 第2室
82 下部躯体(一の部位)
84 上部躯体(他の部位)
90 流体ダンパー
92 突出部(他の部位)
93 支持部(他の部位)
102 V型のブレース
104 第1ブレース
104A 第1分断ブレース(一方の第1分断ブレース)
104B 第1分断ブレース(他方の第1分断ブレース)
106 第2ブレース
106A 第2分断ブレース(一方の第2分断ブレース)
106B 第2分断ブレース(他方の第2分断ブレース)
110 流体ダンパー
112 第1シリンダ
114 第1ピストン
116 第1ロッド
118A 第1室
118B 第4室
122 第2シリンダ
124 第2ピストン
126 第2ロッド
128A 第2室
128B 第3室
130 第1通路
132 第2通路
134 第1抵抗力発生部
136 第2抵抗力発生部
152 梁(梁部材の一例)
154 梁(梁部材の一例)
156 中央柱
158 第1柱
158A 第1分断柱(一方の第1分断柱)
158B 第1分断柱(他方の第1分断柱)
160 第2柱
160A 第2分断柱(一方の第2分断柱)
160B 第2分断柱(他方の第2分断柱)
170 流体ダンパー
172 第1通路
174 第2通路
O1、O2、O3、O4、O5、O6 オイル(流体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9