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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060779
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】貯湯式給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/10 20220101AFI20230421BHJP
   F24H 15/212 20220101ALI20230421BHJP
【FI】
F24H1/18 503Q
F24H1/18 302M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170575
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富澤 祥伍
(72)【発明者】
【氏名】眞柄 隆志
(72)【発明者】
【氏名】上田 真典
(72)【発明者】
【氏名】赤木 伸行
(72)【発明者】
【氏名】姫野 竜佑
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA23
3L122AA54
3L122AA65
3L122AA76
3L122AB22
3L122BA02
3L122BA13
3L122BA32
3L122BB03
3L122BB13
3L122BB14
3L122BC03
3L122EA22
3L122GA09
(57)【要約】
【課題】不凍水栓使用状態での沸上運転時のキャビテーションの発生を未然に防止する。
【解決手段】ポンプ制御部410Fは、判定部410Fdにより所定状態でないと判定された場合には、加熱循環ポンプ19を所定の第1条件にて駆動して、加熱循環回路4内に湯水を循環させて当該加熱循環回路4の凍結防止運転を実行し、所定状態であると判定された場合には、加熱循環ポンプ19を所定の期間におけるの湯水循環量が第1条件よりも多くなる第2条件にて駆動して、加熱循環回路4内に湯水を循環させて貯湯タンク2内の湯水の温度を低下させる放熱運転を実行する。放熱運転では、凍結防止運転よりも高い頻度で加熱循環回路4内に湯水を循環させ貯湯タンク2内の湯水の温度を積極的に低下させる。この結果、沸上運転が開始されるまでの間に、前述の所定状態から逸脱させることができ、沸上運転開始時にキャビテーションが生じるのを防止する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、
冷媒を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により加熱された前記冷媒と前記貯湯タンク内の湯水との熱交換を行う熱交換器と、
前記貯湯タンクの下部から前記熱交換器に向かう往き管、及び、前記熱交換器から前記貯湯タンクの上部に戻る戻り管、を備えた湯水循環回路と、
前記湯水循環回路内に前記湯水を循環させる循環ポンプと、
前記循環ポンプを制御するポンプ制御手段と、
を有し、
前記ポンプ制御手段は、
前記加熱手段による加熱が行われている状態で前記循環ポンプを駆動することにより、前記往き管を介して前記熱交換器に導入され前記冷媒との熱交換により加熱された前記湯水を、前記戻り管を介して前記貯湯タンクを供給する沸上運転を実行する、貯湯式給湯装置において、
前記沸上運転時に前記湯水のキャビテーションが生じ得る所定状態となっているか否かを、当該沸上運転を実行する前の所定タイミングにおいて判定する判定手段を有し、
前記ポンプ制御手段は、
前記判定手段により前記所定状態となっていないと判定された場合には、前記加熱手段による加熱が行われない状態で前記循環ポンプを所定の第1条件にて駆動することにより、前記湯水循環回路内に前記湯水を循環させて当該湯水循環回路の凍結防止運転を実行し、
前記判定手段により前記所定状態となっていると判定された場合には、前記加熱手段による加熱が行われない状態で前記循環ポンプを所定の期間における前記湯水循環回路内の湯水循環量が前記第1条件よりも多くなる第2条件にて駆動することにより、前記湯水循環回路内に前記湯水を循環させて前記貯湯タンク内の湯水の温度を低下させる放熱運転を実行する
ことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記ポンプ制御手段は、
前記第1条件として、前記循環ポンプを所定の第1駆動頻度にて駆動することにより前記凍結防止運転を実行し、
前記第2条件として、前記循環ポンプを前記第1駆動頻度よりも高い第2駆動頻度にて駆動することにより前記放熱運転を実行する
ことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記ポンプ制御手段は、
前記第1条件として、前記循環ポンプを所定の第1駆動回転数にて駆動することにより前記凍結防止運転を実行し、
前記第2条件として、前記循環ポンプを前記第1駆動回転数よりも高い第2駆動回転数にて駆動することにより前記放熱運転を実行する
ことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項4】
外気温度を検出する外気温検出手段をさらに有し、
前記所定状態は、
少なくとも、前記外気温検出手段により検出される前記外気温度が所定の第1閾値以下で、かつ、所定の時間条件が満足されている状態である
ことを特徴とする請求項2又は3記載の貯湯式給湯装置。
【請求項5】
前記貯湯タンク内又は前記湯水循環回路内の前記湯水の温度を検出する湯温検出手段をさらに有し、
前記所定状態は、さらに、
前記湯温検出手段により検出される前記湯水の温度が所定の第2閾値以上である
ことを特徴とする請求項4記載の貯湯式給湯装置。
【請求項6】
前記循環ポンプは、
前記熱交換器、前記戻り管、前記貯湯タンク、前記往き管、前記熱交換器の順で前記湯水が通過するように前記湯水循環回路内に当該湯水を循環させる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の貯湯式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯タンクに給湯する貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の貯湯式給湯装置においては、特許文献1記載のように、貯湯タンクに接続される給水管及び給湯管内の湯水を排水して凍結防止を図るための、不凍水栓を設けるものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5275172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のものでは、例えば夜間に凍結防止のために不凍水栓が使用された状態のまま、朝方に自動沸上運転が行われる場合、水抜きにより貯湯タンク内に給水圧がかからないため、湯水の温度が高い場合は水中に空気を溶解しにくくなってしまいキャビテーションが生じる恐れがあった。キャビテーションが発生すると、貯湯タンクへの湯水循環回路に設けた循環ポンプに湯水を引き込むことができず、沸上運転が困難となるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、湯水を貯湯する貯湯タンクと、冷媒を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱された前記冷媒と前記貯湯タンク内の湯水との熱交換を行う熱交換器と、前記貯湯タンクの下部から前記熱交換器に向かう往き管、及び、前記熱交換器から前記貯湯タンクの上部に戻る戻り管、を備えた湯水循環回路と、前記湯水循環回路内に前記湯水を循環させる循環ポンプと、前記循環ポンプを制御するポンプ制御手段と、を有し、前記ポンプ制御手段は、前記加熱手段による加熱が行われている状態で前記循環ポンプを駆動することにより、前記往き管を介して前記熱交換器に導入され前記冷媒との熱交換により加熱された前記湯水を、前記戻り管を介して前記貯湯タンクを供給する沸上運転を実行する、貯湯式給湯装置において、前記沸上運転時に前記湯水のキャビテーションが生じ得る所定状態となっているか否かを、当該沸上運転を実行する前の所定タイミングにおいて判定する判定手段を有し、前記ポンプ制御手段は、前記判定手段により前記所定状態となっていないと判定された場合には、前記加熱手段による加熱が行われない状態で前記循環ポンプを所定の第1条件にて駆動することにより、前記湯水循環回路内に前記湯水を循環させて当該湯水循環回路の凍結防止運転を実行し、前記判定手段により前記所定状態となっていると判定された場合には、前記加熱手段による加熱が行われない状態で前記循環ポンプを所定の期間における前記湯水循環回路内の湯水循環量が前記第1条件よりも多くなる第2条件にて駆動することにより、前記湯水循環回路内に前記湯水を循環させて前記貯湯タンク内の湯水の温度を低下させる放熱運転を実行するものである。
【0006】
また、請求項2では、前記ポンプ制御手段は、前記第1条件として、前記循環ポンプを所定の第1駆動頻度にて駆動することにより前記凍結防止運転を実行し、前記第2条件として、前記循環ポンプを前記第1駆動頻度よりも高い第2駆動頻度にて駆動することにより前記放熱運転を実行するものである。
【0007】
また、請求項3では、前記ポンプ制御手段は、前記第1条件として、前記循環ポンプを所定の第1駆動回転数にて駆動することにより前記凍結防止運転を実行し、前記第2条件として、前記循環ポンプを前記第1駆動回転数よりも高い第2駆動回転数にて駆動することにより前記放熱運転を実行するものである。
【0008】
また、請求項4では、外気温度を検出する外気温検出手段をさらに有し、前記所定状態は、少なくとも、前記外気温検出手段により検出される前記外気温度が所定の第1閾値以下で、かつ、所定の時間条件が満足されている状態である。
【0009】
また、請求項5では、前記貯湯タンク内又は前記湯水循環回路内の前記湯水の温度を検出する湯温検出手段をさらに有し、前記所定状態は、さらに、前記湯温検出手段により検出される前記湯水の温度が所定の第2閾値以上であるものである。
【0010】
また、請求項6では、前記循環ポンプは、前記熱交換器、前記戻り管、前記貯湯タンク、前記往き管、前記熱交換器の順で前記湯水が通過するように前記湯水循環回路内に当該湯水を循環させるものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の請求項1によれば、前述のような不凍水栓使用状態におけるキャビテーション発生を抑制するために、判定手段が設けられる。判定手段は、沸上運転を実行する前の所定タイミング(例えば深夜時間帯等)において、その後(例えば翌朝)の沸上運転時に湯水のキャビテーションが生じやすい又は生じる可能性が高い所定状態となっているか否かを、判定する。
【0012】
所定状態の一例としては、例えば外気温度が所定値(例えば-10℃)以下で、かつ、所定の時間条件が満足されている場合がある。また、貯湯タンク内又は湯水循環回路内の湯水の温度が所定値(例えば25℃)以上となっている場合もある。
【0013】
そして、判定手段による判定結果が、前記所定状態になっていると判定されたか否かに応じて、ポンプ制御手段が実行する運転態様が、凍結防止運転あるいは放熱運転のいずれかに切り替えられる。
【0014】
前記所定状態になっていないと判定された場合には、前述の沸上運転時においてキャビテーションが発生する可能性は低いとみなされ、湯水循環回路の凍結防止運転が実行される。すなわち、加熱手段による加熱が行われない状態で、循環ポンプが所定の第1条件にて駆動されることで湯水循環回路内に湯水が循環される。凍結防止運転においては、このような湯水循環回路内の湯水の循環によって、夜間における凍結を防止することができる。
【0015】
一方、前記所定状態になっていると判定された場合は、前述の沸上運転時においてキャビテーションが発生する可能性が高いとみなされ、湯水循環回路の放熱運転が実行される。すなわち、加熱手段による加熱が行われない状態で、循環ポンプが所定の期間における湯水循環回路内の湯水循環量が前記第1条件よりも多くなる第2条件にて駆動される。このように、放熱運転においては、前述の凍結防止運転よりも多い循環量となるように湯水循環回路内に湯水を循環させることにより、貯湯タンク内の湯水の温度を積極的に低下させる。この結果、沸上運転が開始されるまでの間に、前述の所定状態から逸脱させることができるので、沸上運転開始時にキャビテーションが生じるのを未然に防止し、循環ポンプに確実に湯水を引き込めるようにして沸上運転を実行することができる。
【0016】
また、請求項2によれば、凍結防止運転時の前記第1条件として、循環ポンプが所定の第1駆動頻度にて駆動されて湯水循環回路内に湯水を循環させる。そして、放熱運転時の前記第2条件として、循環ポンプが前記第1駆動頻度よりも高い第2駆動頻度にて駆動される。すなわち、放熱運転においては、前述の凍結防止運転よりも高い頻度で湯水循環回路内に湯水を循環させることで、貯湯タンク内の湯水の温度を積極的に低下させ、沸上運転開始時にキャビテーションが生じるのを未然に防止することができる。
【0017】
また、請求項3によれば、凍結防止運転時の前記第1条件として、循環ポンプが所定の第1駆動回転数にて駆動されて湯水循環回路内に湯水を循環させる。そして、放熱運転時の前記第2条件として、循環ポンプが前記第1駆動回転数よりも高い第2駆動回転数にて駆動される。すなわち、放熱運転においては、前述の凍結防止運転よりも高い駆動回転数で湯水循環回路内に湯水を循環させることで、貯湯タンク内の湯水の温度を積極的に低下させ、沸上運転開始時にキャビテーションが生じるのを未然に防止することができる。
【0018】
また、請求項4によれば、判定手段が、予め定められた外気温度範囲や時間条件に基づき、湯水のキャビテーションが生じ得る前記所定状態となっているか否かを判定することができる。これにより、キャビテーション発生予測を精度よく行うことができる。
【0019】
また、請求項5によれば、判定手段が、さらに、予め定められた湯水温度範囲に基づき、湯水のキャビテーションが生じ得る前記所定状態となっているか否かを判定することができる。これにより、キャビテーション発生予測をさらに精度よく行うことができる。
【0020】
また、請求項6によれば、循環ポンプの駆動により、前記熱交換器→前記戻り管→前記貯湯タンク→前記往き管→前記熱交換器→・・の順で湯水を通過させつつ、湯水循環回路内での湯水の循環が行われる。このように、貯湯タンクを含む循環経路で湯水を循環させることにより、前記放熱運転の実行時において、貯湯タンク内の湯水の温度を確実に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態の貯湯式給湯装置の概略構成図
図2】加熱制御装置の機能的構成を表す機能ブロック図
図3】ポンプ制御部が実行する制御手順を表すフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
【0023】
<概略回路構成>
図1に示すように、本実施形態に係わる貯湯式給湯装置100は、湯水を貯湯する貯湯タンク2を有したタンクユニット1と、ヒートポンプユニット3と、を有している。
【0024】
前記ヒートポンプユニット3は、前記貯湯タンク2内の湯水を加熱するために水冷媒熱交換器15(熱交換器に相当)と、加熱循環ポンプ19(循環ポンプに相当)と、を備えている。水冷媒熱交換器15は、冷媒を流通させる冷媒側の流路15bと水側の流路15aとを有し、高温高圧の冷媒と貯湯タンク2内の湯水とを熱交換する。すなわち、前記水冷媒熱交換器15の前記水側の流路15aと前記貯湯タンク2とが湯水配管としての加熱往き管5(往き管に相当)及び加熱戻り管6(戻り管に相当)によって環状に接続され、前記タンクユニット1と前記ヒートポンプユニット3とにわたる湯水循環回路としての加熱循環回路4が形成されている。
【0025】
加熱往き管5は、前記貯湯タンク2の下部に接続され、加熱戻り管6は、前記貯湯タンク2の上部に接続されている。前記加熱循環ポンプ19は、前記加熱往き管5の途中に設けられ、前記水側の流路15aを介し前記加熱往き管5からの湯水を前記加熱戻り管6へ流通させつつ、貯湯タンク2の湯水を循環させる。なお、前記加熱往き管5には、前記水冷媒熱交換器15の前記水側の流路15aに流入する入水温度T1を検出する入水温度センサ23が設けられ、前記加熱戻り管6には、前記水側の流路15aから前記貯湯タンク2に向かって流出する沸上温度Tbを検出する沸上温度センサ24が設けられている。
【0026】
前記タンクユニット1において、貯湯タンク2の側面には、貯湯タンク2内の湯の温度Twを検出する貯湯温度センサ12が上下にわたり複数設けられている。貯湯温度センサ12及び前記入水温度センサ23が湯温検出手段に相当している。
前記貯湯タンク2の下部にはまた、貯湯タンク2に水を給水する給水管7が接続され、前記貯湯タンク2の上部にはまた、貯湯されている高温水を出湯する出湯管8が接続され、出湯管8には、貯湯タンク2内が負圧になった場合に開弁して貯湯タンク2内に空気を導入する負圧吸気弁119が設けられ、給水管7からは給水バイパス管9が分岐して設けられている。
さらに、出湯管8からの湯と給水バイパス管9からの水とを混合して給湯設定温度の湯とする混合弁10と、混合弁10で混合された湯を給湯端末125に給湯するための給湯管108aと、給湯管108a内の給湯温度を検出する給湯温度センサ11と、が設けられている。
給水管7の途中には、市水を一定の給水圧(例えば設定圧力値380kPa)に減圧するとともに貯湯タンク2内の湯水を上流側へ逆流させない機能を備えた逆止弁117が設けられている。
【0027】
なお、前記タンクユニット1外における給湯管108aの給湯端末125側には給湯管108bが設けられており、これら給湯管108a,108bの間には混合弁10で混合された湯を加熱可能なガス熱源機130が設けられている。また、前記タンクユニット1外における逆止弁117の一次側配管121、及び、給湯管108bから分岐した分岐配管123、における凍結深度以下の地中には、給水を止水すると共に一次側配管121及び給湯管108bの水抜きを行うための不凍水栓120が埋設されている。不凍水栓120は、操作ハンドル120aと、排水口120bと、排湯口120cと、を備えている。
【0028】
前記ヒートポンプユニット3はまた、冷媒を圧縮する圧縮機14と、四方弁31と、前記水冷媒熱交換器15通過後の冷媒を減圧させる減圧器としての電子膨張弁16と、熱源としての空気と冷媒との熱交換を行う熱源側熱交換器としての空気熱交換器17と、空気熱交換器17に外気を送り込む室外ファン67と、を備えている。そして、前記圧縮機14と、前記四方弁31と、前記圧縮機14から吐出された冷媒が流通する前記水冷媒熱交換器15の前記冷媒側の流路15bと、前記電子膨張弁16と、前記空気熱交換器17とが冷媒配管18で環状に接続されることにより冷媒循環回路30が形成されている。
【0029】
前記四方弁31は4つのポートを備える弁であり、前記冷媒配管18のうち(冷媒主経路を構成する)配管部18b,18d用の2つのポートのそれぞれに対して、残りの配管部18a,18c用の2つのポートのいずれを接続するかを切り替える。前記配管部18a,18c用の2つのポートどうしは、ループ状に配置された前記配管部18a,18cからなる冷媒副経路によって接続されており、この冷媒副経路上に前記圧縮機14が設けられている。例えば四方弁31は、図1の状態に切り替えられた場合は、前記圧縮機14の吐出側である前記配管部18aを前記水冷媒熱交換器15の入口側である前記配管部18bに連通させることで空気熱交換器17を電子膨張弁16からの低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器として機能させ、水冷媒熱交換器15において冷媒配管18内の冷媒から放熱して熱を放出し加熱循環回路4内に温水を生成する。生成された温水は、加熱循環ポンプ19が誘起する加熱循環回路4内の温水の流れによって加熱戻り管6を介し貯湯タンク2内に供給され、これによって貯湯タンク2内の湯水の温度を上昇させることができる(=沸上運転)。また四方弁31が別の状態へ切り替えられた場合は、前記配管部18aを前記空気熱交換器17側である前記配管部18dに連通させ、空気熱交換器17を凝縮器として機能させ、空気熱交換器17に生成される霜を溶かすことができる(=除霜運転)。
なお、冷媒循環回路30及びこれに接続された圧縮機14、四方弁31、空気熱交換器17、電子膨張弁16が、加熱手段に相当している。
【0030】
冷媒循環回路30内には、冷媒として例えばR32冷媒が用いられ、ヒートポンプサイクルを構成している。前記圧縮機14と前記水冷媒熱交換器15の冷媒側の流路15bとの間の冷媒配管18には、圧縮機14から吐出される冷媒の冷媒吐出温度Toutを検出する吐出温度センサ20が設けられ、前記空気熱交換器17の空気入口側には、外気温度Tairを検出する外気温度センサ22(外気温検出手段に相当)が設けられている。
【0031】
そして、前記タンクユニット1には、前記した各センサ12,11の検出結果が入力される貯湯制御装置40が設けられている。同様に、前記ヒートポンプユニット3には、前記した各センサ20,22,23,24の検出結果が入力される加熱制御装置50が設けられている。加熱制御装置50及び貯湯制御装置40は、互いに通信可能に接続されており、前記各センサ23,24,12,11,20,22の検出結果等に基づき、相互に連携しつつ、前記タンクユニット1及び前記ヒートポンプユニット3内の各機器の動作を制御する。
【0032】
なお、加熱制御装置50と貯湯制御装置40との間に制御上の主従関係があり、例えばセンサ12,11の検出結果に基づく運転指令を貯湯制御装置40が加熱制御装置50へ出力し、加熱制御装置50はこの運転指令と各センサ20,22,23,24の検出結果とに基づきヒートポンプユニット3内の各機器の動作を制御するようにしてもよい。以下、本明細書においては、このような場合を例にとって説明する。
【0033】
<加熱制御装置>
次に、前記ヒートポンプユニット3に備えられた前記加熱制御装置50について説明する。加熱制御装置50は、詳細な図示を省略するが、各種のデータやプログラムを記憶する記憶部と、演算・制御処理を行う制御部とを備えている。この加熱制御装置50の機能的構成を図2により説明する。
【0034】
図2に示すように、前記加熱制御装置50は、四方弁制御部410Aと、圧縮機制御部410Bと、膨張弁制御部410Cと、室外ファン制御部410Dと、ポンプ制御部410F(ポンプ制御手段に相当)と、を機能的に備えている。
【0035】
本実施形態のヒートポンプユニット3は、貯湯制御装置40から出力される運転指令に基づき各種制御を行う。すなわち、四方弁制御部410Aには、前記貯湯制御装置40により出力された運転指令が入力される。四方弁制御部410Aは、前記運転指令に応じて、実際にヒートポンプユニット3を、空気熱交換器17を蒸発器として機能させるか又は凝縮器として機能させるか、を決定する。四方弁制御部410Aは、前記運転指令が表す運転態様に対応する開閉信号を四方弁31へ出力し、四方弁31を切り替える。
また、四方弁制御部410Aは、その決定結果に対応する運転情報を、前記圧縮機制御部410B、膨張弁制御部410C、室外ファン制御部410D、及び、ポンプ制御部410Fに出力する。なおこの運転情報には、前記貯湯温度センサ12により検出された貯湯タンク2内の湯の温度Tw、及び、適宜に決定された目標沸上温度Tbo、等が含まれる。
【0036】
圧縮機制御部410Bには、この例では、前記外気温度センサ22により検出された前記外気温度Tairと、前記沸上温度センサ24により検出された前記沸上温度Tbと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力される(直接入力される場合のほか、間接的に入力するようにしてもよい。以下同様)。圧縮機制御部410Bは、この例では、入力された前記外気温度Tair及び前記沸上温度Tbに基づき、前記圧縮機14の目標回転数を設定し、この目標回転数となるように圧縮機14の回転数を増減制御する。
【0037】
膨張弁制御部410Cには、前記吐出温度センサ20により検出された前記冷媒吐出温度Toutと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力される。この例では、膨張弁制御部410Cは、前記冷媒吐出温度Toutが制御上の所望の目標温度となるように、電子膨張弁16の開度を増減制御する。
【0038】
室外ファン制御部410Dには、前記外気温度センサ22により検出された前記外気温度Tairと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力される。
【0039】
室外ファン制御部410Dは、入力された前記運転情報及び前記外気温度Tairと、に基づき前記室外ファン67の目標回転数を設定し、室外ファン67の回転数がその目標回転数となるように増減制御する。
【0040】
ポンプ制御部410Fには、前記沸上温度センサ24により検出された前記沸上温度Tbと、前記外気温度センサ22により検出された前記外気温度Tairと、前記入水温度センサ23により検出された前記入水温度T1と、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力され、これらに基づき、前記加熱循環ポンプ19の回転数を制御する。ポンプ制御部410Fは、目標回転数設定部410Faと、駆動信号出力部410Fbと、頻度設定部410Fcと、判定部410Fdと、を備える。これらの詳細については後述する。
【0041】
<実施形態の背景及び特徴>
前記したように、本実施形態では、不凍水栓120が設けられることにより、貯湯タンク2に接続される給水管7及び給湯管108a,108b内の湯水を排水して凍結防止を図ることができる。このような構成において、例えば、夜間に凍結防止のために不凍水栓120が使用された状態のまま朝方に沸上運転が行われる場合、不凍水栓120の使用による水抜き状態により貯湯タンク2内に給水圧がかからないため、湯水の温度が高い場合に水中に空気を溶解しにくくなってしまいキャビテーションが生じる恐れがある。もし湯水中にキャビテーションが発生すると、貯湯タンク2への加熱循環回路4に設けた加熱循環ポンプ19に湯水を引き込むことができず(=いわゆるエア噛みの発生)、沸上運転が困難となるおそれがある。
【0042】
本実施形態の特徴は、上記に対応し、沸上運転の実行前の所定タイミングにおいて、その後の沸上運転実行時にキャビテーションが生じ得る(又は生じやすい)状態にあった場合には、貯湯タンク2内の湯水の温度を低下させる放熱運転を行うことにある。そのために本実施形態の加熱制御装置50のポンプ制御部410Fが実行する制御手法を、図3のフローチャートにより説明する。
【0043】
図3において、まずS10で、ポンプ制御部410Fにより、このフローが実行される日(以下適宜、単に「当日」と称する。図示も同様)におけるすべての前記沸上運転が終了したか否かが判定される。この判定は、予めスケジューリングされていた当日の沸上運転予定のうち一番最後の自動沸上が終わったか否かによって判定したり、一番最後の自動沸上が終了した後の所定期間内にユーザの手動による沸上運転が行われないことを確認してから判定したり、予め定めた夜間時刻から所定期間内に沸上運転が一切なされないことによって判定したり、深夜時間帯中の適宜の所定時刻(例えば固定時刻の3:00)になったか否かによって判定したり等、の適宜の手法で行えば足りる。このS10の判断は、前記当日の次の日(以下適宜、単に「翌日」と称する)において実行される沸上運転より前の予め定められた適宜のタイミングで行われる。ここでは、一番最後の自動沸上が終了したタイミングでS10の判断が行われる例で説明する。
当日のすべての沸上運転が終了するまでは判定が満たされず(S10:No)ループ待機し、当日のすべての沸上運転が終了したら判定が満たされ(S10;Yes)、S20へ移行する。
【0044】
S20では、ポンプ制御部410Fの前記判定部410Fdにより、沸上運転の実行時に前記キャビテーションが生じ得る(又は生じやすい)かどうかを判定するための判定材料となる各種パラメータの取得が行われる。パラメータの例としては、外気温度センサ22により検出される前記外気温度Tair、貯湯温度センサ12により検出される貯湯タンク2内の湯水の温度Tw、入水温度センサ23により検出される前記入水温度T1、前記沸上運転が停止された後(又は給湯端末125からの出湯が停止された後)の経過時間、現在時刻、等がある。その後、S30へ移行する。
【0045】
S30では、ポンプ制御部410Fの前記判定部410Fd(判定手段に相当)により、S20で取得された各パラメータの値に基づき、次回の沸上運転の実行時に前記キャビテーションが生じ得る(又は生じやすい)所定状態となっているか否かが判定される。このS30を実行するこの例では、前記所定状態とは、以下(A)(B)(C)の3つの条件がすべて満たされる場合をいう。
【0046】
(A)外気温度条件
前記外気温度Tairが低温となっていることである。具体的には、例えばTair≦-10[℃](第1閾値に相当)の条件である。
【0047】
(B)湯水温度条件
前記湯水温度Tw又は貯湯タンク2内の湯水の温度としての入水温度センサ23で検出した前記入水温度T1が比較的高温となっていることである。具体的には、例えばTw≧25[℃](第2閾値に相当)、若しくは、T1≧25[℃](第2閾値に相当)、の条件である。
【0048】
(C)時間条件
前記S10のタイミングで、現在時刻(実時刻)が所定時間範囲(例えば前記翌日の1:00~5:00)内であること、あるいは予めスケジューリングされていた前記翌日の沸上運転予定のうち一番最初の自動沸上の開始時刻までの時間が所定の時間(例えば3時間)以上であること、の条件である。
また、前記S10のタイミングを所定時刻とした別実施形態では、この所定時刻のタイミングにおいて、前記沸上運転が停止された後(又は給湯端末125からの出湯が停止された後)の経過時間が所定時間範囲(例えば2時間)以内であること、の条件である。なお、この所定時刻は、予めスケジューリングされていた前記翌日の沸上運転予定のうち一番最初の自動沸上の開始時刻から決定するようにしてもよい。
【0049】
上記(A)(B)(C)の3つの条件がすべて満たされた前記所定状態であると判定された場合(S30:Yes)は、不凍水栓120の使用により水抜き状態となっている可能性が高く次回沸上運転時に前記エア噛みが発生する可能性が高いとみなされ、後述のS70へ移行する。上記(A)(B)(C)のいずれか1つの条件でも満たされずに前記所定状態ではないと判定された場合(S30:No)は、次回沸上運転時に前記エア噛みが発生する可能性は低いとみなされ、S40へ移行する。
なお、前記(A)(B)の条件を満たしていても(C)の条件を満たさない場合は、次回沸上運転までの間に十分な放熱時間があり、凍結防止運転によって前記エア噛みが発生する可能性の高い状態が解消される可能性が高いとみなされ、S40へ移行するようにしている。
【0050】
S40では、夜間における管路内の凍結防止を図るための凍結防止運転が行われる。具体的には、目標回転数設定部410Faにより、前記外気温度Tairに応じ、加熱循環ポンプ19の目標回転数Nが設定される。一例としては、Tair=-3[℃]である場合にはN=4500[rpm]に設定される。
【0051】
また、頻度設定部410Fcにより、前記外気温度Tairに応じ、加熱循環ポンプ19が駆動されるときの駆動頻度(第1駆動頻度)が決定される。なお、前記第1駆動頻度が各請求項記載の第1条件に相当している。この例では、加熱循環ポンプ19が、駆動と非駆動とを交互に繰り返すときの、その駆動時間tdと非駆動時間tsとの比率が決定される。一例としては、td=1[分]、ts=9[分]、すなわちtd:ts=1:9に設定される。すなわちこの場合、加熱循環ポンプ19は、1分駆動+9分停止というサイクル(この例では10分間を1単位とするが、10分間以外を1単位としてもよい)が繰り返されることとなる。なお、このサイクルが、各請求項記載の所定の期間に相当している。なお、前記外気温度Tairに応じて駆動時間tdと非駆動時間tsとの比率を変更してもよい。
【0052】
そして、駆動信号出力部410Fbにより、前記目標回転数設定部410Faにより設定された目標回転数Nの回転を、前記頻度設定部410Fcで決定された駆動頻度で実行するようなするための駆動信号(制御値)が生成されて加熱循環ポンプ19へと出力される。これにより、前記した態様で加熱循環ポンプ19が駆動されることで、水冷媒熱交換器15→加熱戻り管6→貯湯タンク2→加熱往き管5→水冷媒熱交換器15→・・の順で湯水を通過させつつ、加熱循環回路4内での湯水の循環が行われる。この湯水の循環は、前記ヒートポンプユニット3の圧縮機14が運転されず冷媒循環回路30内での冷媒の循環が行われない状態、すなわち冷媒側からの加熱が行われない状態で行われ、これによって湯水の循環のみによる加熱循環回路4内での凍結防止が図られる。
【0053】
その後、S50で、前記凍結防止運転を終了すべきタイミングが到来したか否かが判定される。この判定は、予め定められた運転期間(例えば6時間)が経過したか否かにより判定したり、予め定められた運転終了時刻(例えば5:30)が到来したか否かにより判定したり、予めスケジューリングされていた前記翌日の沸上運転予定のうち一番最初の自動沸上の開始時間近くになったか否か、によって判定したり等の、適宜の手法で行えば足りる。
終了タイミングが到来していなければ判定が満たされず(S50:N0)S40に戻って凍結防止運転が継続され、終了タイミングが到来したら判定が満たされ(S50:Yes)、S60へ移行する。
【0054】
S60では、S40で開始された凍結防止運転が終了される。具体的には、駆動信号出力部410Fbにより、加熱循環ポンプ19への前記駆動信号の出力が停止される。あるいは、出力する駆動信号の内容を加熱循環ポンプ19の駆動停止に対応するものとしてもよい(例えば目標回転数N=0[rpm]あるいは駆動時間td=0の駆動信号を出力する等)。
その後、このフローを終了する。
【0055】
一方、S30がYes判定されて移行したS70では、前記凍結防止運転に代わり、前記エア噛み防止のために貯湯タンク2内の湯水の温度を低下させるための放熱運転が行われる。具体的には、目標回転数設定部410Faにより、前記外気温度Tairに応じ、加熱循環ポンプ19の目標回転数Nが設定される。一例としては、Tair=-3[℃]である場合にはN=4500[rpm]に設定される。なお、このときの目標回転数は、前記凍結防止運転のときの目標回転数とは異なる値、例えば、それよりも高い値であってもよい。
【0056】
また、頻度設定部410Fcにより、前記外気温度Tairに応じ、加熱循環ポンプ19が駆動されるときの駆動頻度(第2駆動頻度)が、前記S40での駆動頻度(第1駆動頻度)よりも高い頻度となるように決定される。なお、前記第2駆動頻度が各請求項記載の第2条件に相当している。前記S40と同様、加熱循環ポンプ19の駆動時間tdと非駆動時間tsとの比率が決定される。一例としては、td=9[分]、ts=1[分]、すなわちtd:ts=9:1に設定される。すなわちこの場合、加熱循環ポンプ19は、9分駆動+1分停止というサイクル(10分間のうち9分間だけ駆動)が繰り返されることとなる。なお、前記第1駆動頻度が外気温度によって変動する場合であっても、同じ外気温度で比較した場合に前記第2駆動頻度の方が高い頻度となっていればよい。
【0057】
そして、前記S40と同様、駆動信号出力部410Fbにより、前記目標回転数設定部410Faにより設定された目標回転数Nの回転を、前記頻度設定部410Fcで決定された駆動頻度で実行するようなするための駆動信号(制御値)が生成されて加熱循環ポンプ19へと出力される。これにより、前記した態様で加熱循環ポンプ19が駆動されることで、水冷媒熱交換器15→加熱戻り管6→貯湯タンク2→加熱往き管5→水冷媒熱交換器15→・・の順で湯水を通過させつつ、加熱循環回路4内での湯水の循環が行われる。この湯水の循環は、前記ヒートポンプユニット3の圧縮機14が運転されず冷媒循環回路30内での冷媒の循環が行われない状態、すなわち冷媒側からの加熱が行われない状態で行われる。
【0058】
このとき、上記のように湯水の循環経路の中に貯湯タンク2が含まれることで、循環によって貯湯タンク2内の湯水のもつ熱の放熱が徐々に、かつ前記凍結防止運転よりも急速に行われる。すなわち、例えば貯湯タンク2外において加熱戻り管6と加熱往き管5との間を接続するバイパス回路B(図1中の2点鎖線参照)を設け、水冷媒熱交換器15→加熱戻り管6→バイパス回路B→加熱往き管5→水冷媒熱交換器15→・・の順で湯水を通過させて循環させる場合には貯湯タンク2内の湯水の放熱は困難である。これに対し、本実施形態では上記のように湯水の循環経路の中に貯湯タンク2が含まれることで、湯水の循環のみによる貯湯タンク2内の湯水の温度の低下を確実に図ることができる。
なお、仮にバイパス回路Bを設けた場合であっても、当該バイパス回路Bと加熱戻り管6との接続部位B1や当該バイパス回路Bと加熱往き管5との接続部位B2にそれぞれ開閉弁を設け、この放熱運転の際には当該開閉弁を閉じてバイパス回路Bへの湯水の流通を抑制又は防止するようにすることで湯水の循環経路の中に貯湯タンク2が含まれるようにしてもよい。
【0059】
その後、S80で、前記放熱運転を終了すべきタイミングが到来したか否かが判定される。この判定は、前記S50と同様、予め定められた運転期間(例えば4時間)が経過したか否かにより判定したり、予め定められた運転終了時刻(例えば6:00)が到来したか否かにより判定したり、予めスケジューリングされていた前記翌日の沸上運転予定のうち一番最初の自動沸上の開始時間近くになったか否かによって判定したり、貯湯タンク2内の湯水の温度が前記第2閾値より低い所定温度まで低下したか否かによって判定したり等の、適宜の手法で行えば足りる。
終了タイミングが到来していなければ判定が満たされず(S80:N0)S70に戻って放熱運転が継続され、終了タイミングが到来したら判定が満たされ(S80:Yes)、S90へ移行する。なお、前記S80でYESの場合に、前記S40へ移行して凍結防止運転を行ってもよい。
【0060】
S90では、S70で開始された放熱運転が終了される。具体的には、駆動信号出力部410Fbにより、加熱循環ポンプ19への前記駆動信号の出力が停止される。あるいは、出力する駆動信号の内容を加熱循環ポンプ19の駆動停止に対応するものとしてもよい(例えば目標回転数N=0[rpm]あるいは駆動時間td=0の駆動信号を出力する等)。
その後、このフローを終了する。
【0061】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態においては、不凍水栓120の使用状態におけるキャビテーション発生を抑制するために、ポンプ制御部410Fに判定部410Fdが設けられる。判定部410Fdは、沸上運転を実行する前の所定タイミング(前記の例では前記当日の沸上運転の終了時)において、その後(前記の例では翌日)の沸上運転時に湯水のキャビテーションが生じやすい又は生じる可能性が高い所定状態となっているか否かを、判定する。そして、判定部410Fdによる判定結果が、前記所定状態になっていると判定されたか否かに応じて、ポンプ制御部410Fが実行する運転態様が、凍結防止運転あるいは放熱運転のいずれかに切り替えられる。
前記所定状態になっていないと判定された場合(S30:No)には、前述の沸上運転時においてキャビテーションが発生する可能性は低いとみなされ、加熱循環回路4の凍結防止運転が実行される。すなわち、圧縮機14が駆動された状態の冷媒循環回路30側からの加熱が行われない状態で、加熱循環ポンプ19が所定の第1駆動頻度(前記の例ではtd:ts=1:9)にて駆動されることで加熱循環回路4内に湯水が循環される。凍結防止運転においては、このような加熱循環回路4内の湯水の循環によって、例えば夜間における凍結を防止することができる。
一方、前記所定状態になっていると判定された場合は、前述の沸上運転時においてキャビテーションが発生する可能性が高いとみなされ、加熱循環回路4の放熱運転が実行される。すなわち、前記凍結防止運転と同様に冷媒循環回路30側からの加熱が行われない状態で、加熱循環ポンプ19が前記第1駆動頻度よりも高い所定の第2駆動頻度(前記の例ではtd:ts=9:1)にて駆動される。このように、放熱運転においては、前述の凍結防止運転よりも高い頻度で加熱循環回路4内に湯水を循環させることにより、貯湯タンク2内の湯水の温度を積極的に低下させる。この結果、沸上運転が開始されるまでの間に、前述の所定状態から逸脱させることができるので、沸上運転開始時にキャビテーションが生じるのを未然に防止し、加熱循環ポンプ19に確実に湯水を引き込めるようにして沸上運転を実行することができる。
【0062】
また、本実施形態では特に、前記所定状態は、少なくとも、前記外気温度Tairが所定の第1閾値(前記の例では-10[℃])以下で、かつ、所定の時間条件(前記の(C)参照)が満足されている状態である。すなわち、ポンプ制御部410Fの判定部410Fdは、予め定められた外気温度範囲や時間条件に基づき、湯水のキャビテーションが生じ得る前記所定状態となっているか否かを判定することができる。これにより、キャビテーション発生予測を精度よく行うことができる。
また、前記(C)の条件を満たさない場合は、次回沸上運転までの間に十分な放熱時間があり、通常の凍結防止運転によって前記エア噛みが発生する可能性の高い状態が解消される可能性が高い。そのため、(C)の条件を満たさない場合は、不要な放熱運転の実行を回避することができる。
【0063】
また、本実施形態では特に、前記所定状態は、さらに、前記湯水温度Tw又は前記入水温度T1が所定の第2閾値(前記の例では25[℃])以上の状態である。すなわち、ポンプ制御部410Fの判定部410Fdが、さらに、予め定められた湯水温度範囲に基づき、湯水のキャビテーションが生じ得る前記所定状態となっているか否かを判定することができる。これにより、キャビテーション発生予測をさらに精度よく行うことができる。
【0064】
また、本実施形態では特に、加熱循環ポンプ19の駆動により、前記水冷媒熱交換器15→前記加熱戻り管6→前記貯湯タンク2→前記加熱往き管5→前記水冷媒熱交換器15→・・の順で湯水を通過させつつ、加熱循環回路4内での湯水の循環が行われる。このように、貯湯タンク2を含む循環経路で湯水を循環させることにより、前記放熱運転の実行時において、貯湯タンク2内の湯水の温度を確実に低下させることができる。
【0065】
なお、本発明は以上の態様に限定されることなく、その趣旨を変更しない範囲で適用可能なものである。
【0066】
例えば、上記実施形態では、図3のS70の放熱運転時において、前記加熱循環ポンプ19を、S40の凍結防止運転時よりも高頻度で駆動したが、これに限られない。すなわち、上記に代えて、S70の放熱運転時における前記加熱循環ポンプ19の駆動回転数(第2駆動回転数)を、S40の凍結防止運転時の駆動回転数(第1駆動回転数)よりも高くするようにしてもよい。なお、この場合、前記第1駆動回転数が各請求項記載の第1条件に相当し、前記第2駆動回転数が第2条件に相当している。
要は、前記放熱運転の運転態様が、前記凍結防止運転時に比べて前記サイクル(所定の期間)における加熱循環回路4内を循環する湯水量を多くし、放熱を促進する運転態様であれば足りるものである。
【0067】
また例えば、前記ヒートポンプサイクルとしては、減圧器としてエジェクターを用いたエジェクターサイクルでもよいものである。
【0068】
また、上記実施形態では、熱源機として、熱源側熱交換器としての空気熱交換器17に冷媒を通じる一方で外気を送風する室外ファン67を有し、熱源としての外気と前記冷媒とが熱交換される、空気熱源式のヒートポンプである場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、熱源機を、熱源側熱交換器に対して水や不凍液が供給されそれらの液体と冷媒とが当該熱源側熱交換器において熱交換する構成のものとしてもよい。
また、地中又は比較的大容量の水源中に熱源側熱交換器を設け、この熱源側熱交換器で前記地中又は前記水源と冷媒とが熱交換する構成のものとしてもよい。さらには、前記地中又は前記水源の熱を用いたヒートポンプ回路と空気熱を用いた別のヒートポンプ回路とを備えた複合熱源型の構成としてもよい。
さらには、熱源側熱交換器において前記冷媒と熱交換できるものであれば、前記液体や前記外気や前記水源に代えて、それ以外のもの(例えば、発煙、排煙、各種高温ガス等を含む気体や、熱砂、塵埃、各種粒子等を含む流動固体)を熱源側熱交換器に通じたり、太陽光、反射光、その他輻射等による熱を熱源側熱交換器に供給して用いる構成としても良い。
【符号の説明】
【0069】
1 タンクユニット
2 貯湯タンク
3 ヒートポンプユニット
4 加熱循環回路(湯水循環回路)
5 加熱往き管(往き管、湯水配管)
6 加熱戻り管(戻り管、湯水配管)
12 貯湯温度センサ(湯温検出手段)
12 入水温度センサ(湯温検出手段)
14 圧縮機(加熱手段)
15 水冷媒熱交換器(滅交換機)
16 電子膨張弁(加熱手段)
17 空気熱交換器(加熱手段)
19 加熱循環ポンプ(循環ポンプ)
22 外気温度センサ(外気温検出手段)
30 冷媒循環回路(加熱手段)
31 四方弁(加熱手段)
40 貯湯制御装置
50 加熱制御装置
410F ポンプ制御部(ポンプ制御手段)
410Fd 判定部(判定手段)
T1 入水温度
Tair 外気温度
Tb 沸上温度
Tout 冷媒吐出温度
図1
図2
図3