(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060782
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】画像箔転写シート、画像箔転写シートの製造方法、画像箔の転写方法
(51)【国際特許分類】
B44C 1/17 20060101AFI20230421BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
B44C1/17 N
B32B15/08 H
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170578
(22)【出願日】2021-10-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】516034359
【氏名又は名称】株式会社アイエヌジー
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(72)【発明者】
【氏名】森井 智子
(72)【発明者】
【氏名】相塲 雅満
【テーマコード(参考)】
3B005
4F100
【Fターム(参考)】
3B005EA04
3B005EA07
3B005EB01
3B005EB03
3B005EB05
3B005FB37
3B005FB52
3B005FE03
3B005FF04
3B005GA17
4F100AB33C
4F100AT00A
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB05B
4F100CB05E
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4F100HB31D
4F100JL10D
4F100JL13B
4F100JL13E
4F100JL14A
4F100JL14E
4F100JN01D
(57)【要約】
【課題】
箔シートと非接触型印刷機を用いて、複雑な図形や小さな文字など、プリンターで印刷可能な所望の画像の形状の画像箔を対象物に転写可能な画像箔転写シートをより簡易な構成で実現するとともに、従来技術よりもさらに簡略化した工程での製造方法と、該画像転写シートを用いた画像箔の転写方法を提供する。
【解決手段】
セパレーターの
片面に剥離可能な第1の糊層を設けた糊付き離型シートの前記第1の糊層の
全面に箔層が積層され、前記箔層の表面の一部にはクリアインクにより任意の形状の画像を印刷してなるクリア層を有し、
前記クリア層とクリア層のない部分の箔層の全面に第2の糊層、アプリケーションシートを順に積層して成る画像箔転写シートであって、前記第1の糊層は前記箔層に対して易接着性を有し、前記第2の糊層は前記箔層に対しては易接着性を有するとともに前記クリア層に対しては離型性を有することを特徴とする、画像箔転写シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレーターの上面に剥離可能な第1の糊層を設けた糊付き離型シートの前記第1の糊層の上面に箔層を有し、前記箔層の上面にクリアインクにより任意の形状の画像を印刷してなるクリア層を有し、前記クリア層を含む前記箔層の上面には下面に第2の糊層を有するアプリケーションシートを設けて成る画像箔転写シートであって、前記第1の糊層は前記箔層に対して易接着性を有し、前記第2の糊層は前記箔層に対しては易接着性を有するとともに前記クリア層に対しては離型性を有することを特徴とする、画像箔転写シート。
【請求項2】
前記クリア層と前記箔層との間の全部又は一部に有色インクからなるカラー層を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の画像箔転写シート。
【請求項3】
前記セパレーターの上面には微細な凸部を一面に設けてなり、前記第1の糊層の下面には前記凸部に対応した微細な凹部が一面に形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の画像箔転写シート。
【請求項4】
少なくとも、(1)セパレーターの上面に剥離可能な第1の糊層を設けた糊付き離型シートの前記第1の糊層の上面に箔を貼り付けて箔層を設ける箔貼付工程と、(2)前記箔層の上面に任意の形状の画像をクリアインクにより印刷してクリア層を設けるクリア印刷工程と、(3)前記クリア層を含む前記箔層の上面に、下面に第2の糊層を有するアプリケーションシートの該第2の糊層側を貼り付けるシート化工程とから成り、前記第1の糊層は前記箔層に対して易接着性を有し、前記アプリケーションシートの第2の糊層は前記箔層に対しては易接着性を有するとともに前記クリア層に対しては離型性を有することを特徴とする、画像箔転写シートの製造方法。
【請求項5】
前記箔貼付工程の後、前記クリア印刷工程の前に、前記クリア層による画像を設ける範囲内の箔層の全部又は一部に有色インクで任意の形状を印刷するカラー印刷工程を設けたことを特徴とする、請求項4に記載の画像箔転写シートの製造方法。
【請求項6】
前記セパレーターの上面には微細な凸部を一面に設けてなり、前記第1の糊層の下面には前記凸部に対応した微細な凹部が一面に形成されていることを特徴とする、請求項4または請求項5のいずれかに記載の画像箔転写シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像箔転写シートから前記セパレーターを剥離し、前記第1の糊層の露出した下面を転写対象物に圧着した上で前記アプリケーションシートを剥離除去することで、前記クリア層とその直下の少なくとも箔層とから成る画像のみを転写対象物に転写することを特徴とする、画像箔の転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写対象物の表面に任意の画像の形状の金属箔を転写するための画像箔転写シートと、該画像箔転写シートの製造方法、該画像箔転写シートを用いた転写対象物への画像箔の転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を転写対象物に転写する転写印刷としては、水転写、熱転写、昇華転写、乾式転写等の技術が知られている。中でも、基材シート上に仮着した画像層の裏面に接着剤を塗布した上で、押圧によって画像層を転写対象物の表面に移行させて接着する乾式転写は、転写時に画像に縁が残らないため、転写対象物に直接印刷したように見え、カッティングプロッター等による後処理も不要といった特徴を有する。
【0003】
本願発明者は、かかる乾式転写技術の簡便化に取り組み、非特許文献1に記載の製品「スマートペーパー(商品名)」を開発して製造販売してきた。これは、表面に離型可能処理を施したPET(ポリエチレンテレフタラート)製の基材シートであり、その表面にレーザープリンター等のトナー印刷によって鏡像の画像を印刷して画像層を形成し、該画像層上にアクリル系の糊を塗布して乾燥させた後、基材シートを転写対象物に密着させて押圧を加え、基材シートを剥離すると画像層のみが正像にて転写対象物に接着され転写が完了するものである。該スマートペーパーは、工程が極めて簡易であるだけでなく、溶剤等を使用しないため環境負荷の問題も生じない。また、転写に際して水を使用せず熱も加えないため、金属、ガラス、合成樹脂はもとより紙、木、皮革、繊維(布)、陶器まで適用可能な転写対象物の素材が幅広い。さらに、画像層を柔軟な基材シート上に仮着させた上で転写するため、直接プリンターを通せない立体物や曲面にも転写可能であるなど、乾式転写のコスト低減、適用範囲の拡大、作業の簡易化・効率化の効果を奏するものである。
【非特許文献1】「スマートペーパー」の説明(出願人ウェブサイトのページ)URL:https://ing-global.net/smartpaper/
【0004】
また、本願発明者は、特許文献1に示す如く、スマートペーパーをさらに発展させ、上層の転写フィルムと下層の糊層との間に画像層を設け、該転写フィルムを、画像層に対しては離型性を有するとともに糊層に対しては易接着性を有するものとしたことを特徴とする画像転写シートを開発、すでに特許権(特許第6260878号)を取得し、製造販売している。該画像転写シートは、スマートペーパーのように、転写対象物に糊を塗布して糊層を形成したり、転写後に画像からはみ出した糊を除去したりする必要がないため、転写作業のコストや作業負担を低減でき、仕上りも均質化できるという有利な効果を奏する。また、該画像転写シートはUV印刷に対応可能であり、画像転写シートを製造する際に、糊付き離型シートの糊層の上面に任意の画像を正像で、かつ、インクを印刷機の仕様上可能な範囲で所望の厚みで積層して画像層を形成できる。転写対象物に直接印刷したかのような仕上がりが得られ、特にUV印刷の特徴を活かして、パッケージ印刷等に好適な立体感の高い印刷が可能となった。そして、画像転写シートは、印刷機で直接印刷しにくい大きさや形状の平面や立体物に画像転写が可能であるから、印刷機の高度な設定や専用治具も不要となった。そのため、少量多品種製品やそのパッケージへの印刷、量産品のオリジナル化・カスタマイズ化、製品開発段階での試作品・サンプル品等への印刷等の大幅なコスト低減が可能となった。
【特許文献1】特開2017-209931号公報
【0005】
一方、転写画像に高級感を付与したり、より多彩な表現を実現するために、金箔や銀箔などの金属箔を所望の画像として転写対象物に転写することへの要望が以前から存在したが、上述の先行技術では困難であった。一般的な内装用・装飾用の金属箔は、プラスティックフィルム等の基材の表面に金属を蒸着し、裏面に粘着剤層(一般的にはホットメルト接着剤)を設けた「箔シート」と呼ばれるものが普及している。これらは、カッティングシートのように必要な形状にカットして対象物に直接貼り付けて加熱することで基材ごと金属箔を転写対象物に接着するものであるが、複雑な図形や小さな文字をカットすることは難しく、手間も掛かる。また、基材ごと対象物に貼り付けるため、特に繊細な図形などの場合には、基材の厚みが仕上りの品質を低下させるという問題もあった。
【0006】
他の箔押しの手段としては、受治具に固定した対象物に箔を載せて、その上から金属板の表面に画像を凸版として設けてなる版板を加熱して押し付けることで、凸版部分の箔を対象物の表面に融着させるホットスタンプと呼ばれる技術も知られている。しかし、版板の製作にコストがかかるため、対象物が少量の場合や多数の画像を箔押し加工する場合には、経済性に問題があった。また、対象物に応じた治具を用意しなければならず、対象物の形状によってはホットスタンプが適用しにくい場合もあった。もちろん、対象物が熱に弱い樹脂製である場合には、そもそも適用できなかった。
【0007】
ここで、プリンターによって対象物にインクで印刷するように金属箔で所望の形状の画像層を形成し、画像転写シートを用いて対象物に転写することができれば転写画像の質感の向上や表現力の向上に極めて有効である。その点、スマートペーパー等の先行技術に係る画像転写シートは糊層に直接画像を印刷してシールのように対象物に貼り付け、画像のみを転写することができる。しかし、表面全体に糊層を設けているため、箔シートを貼り付けると全面が画像転写シートに接着されてしまい、所望の画像部分だけを転写することはできないという問題があった。
【0008】
そこで、本願発明者は、特許文献2に示す如く、インクジェットプリンターで印刷した上層の第一のクリア層と下層の第二のクリア層との間に金属箔を挟んでなる画像層を、転写対象物に糊層によって接着する方法で転写する技術を開発し、すでに特許権(特許第6353616号)を取得し、製造販売している。本発明によれば、箔シートはあらかじめ2つのクリア層に挟まれた画像部分のみが抜き出された状態で糊層上に残されて転写され、不要な箔はあらかじめ除去されるので、前記の問題は解決する。これにより、印刷データどおりの所望の画像を金属箔として物品の表面に容易かつ自在に転写可能となるため、従来は製版の費用や多大な手間・時間を要していた「箔押し」や「箔付け」を極めて低コストかつ効率的に実現できる。特に、少量多品種製品やそのパッケージへの転写、量産品のオリジナル化・カスタマイズ化、製品開発段階での試作品・サンプル品等への「箔押し」や「箔付け」への利用可能性が大きく、また、建築の内装や装飾にも利用可能となっている。
【特許文献2】特開2018―011356号公報
【0009】
しかし、この発明に係る画像箔転写シートは、対象物への画像箔の転写自体は極めて簡便であるものの、その製造には多段に渡る複雑な工程が必要であった。具体的には、(1)離型シートの表面にクリアインク又はプライマーで所望の画像を正像印刷して第二のクリア層を形成する第一印刷工程、(2)箔シートの箔面側を離型シートの表面に圧着後、箔シートを剥離して第二のクリア層にのみ箔を転写する箔転写工程、(3)転写された箔の表面にクリアインク又はプライマーで第一のクリア層を印刷して画像層を形成する第二印刷工程、(4)アプリケーションシートを離型シートの表面に圧着してアプリケーションシートに画像層を転写後、離型シートを剥離除去する画像転写工程、(5)片面に糊層を剥離可能に設けたセパレーターの糊層側にアプリケーションシートの画像層を有する面を貼り付けることで画像箔転写シートを得るセパレーター貼付工程、といった5段階の行程が必要であり、製造工程の簡略化による製造のさらなる効率化・コストダウンが求められていた。
【0010】
なお、同様に基材を用いずに画像箔のみを転写対象物に転写する先行技術としては、特許文献3に係る「金属箔の転写方法」や特許文献4に係るラテックスインク、これを用いた箔画像形成方法、積層体、壁紙」が知られている。しかし、特許文献3に係る発明は、基体上の金属箔の表面にホットメルト接着層が形成された積層体のホットメルト接着層の表面に硬化型インクを印刷してマスク画像を形成して転写材とし、該転写材のホットメルト接着層を転写対象物に重ねて熱プレスした上で基体を引き離すことでマスク画像の鏡像で金属箔を転写するものである。この発明では転写時に必ず熱プレスを要するため、熱による転写対象物の変性のおそれがあるだけでなく、熱プレスを与えにくい立体物や凹凸面への適用は困難である。また、特許文献4に係る発明は、基材上にラテックスインクでパターン状に形成された接着層に転写箔を加熱圧着し、前記接着層上に箔転写層を形成して箔画像を形成するものである。この発明では画像箔を形成する際に加熱を要するため、箔の種類によっては箔自体が変性するおそれがあるだけでなく、ラテックスインクで画像を接着層として形成することは、インクによる画像の印刷に比べてどうしても精度が劣らざるを得ず、壁紙のパターン形成には適用できても高精細な画像の形成には不向きである。また、ラテックスインクの調製やノズル詰まりの防止等の難易度も高く、コスト高とならざるを得ない。
【特許文献3】特開2012-210715号公報
【特許文献4】特許第6424894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、かかる従来技術の問題を解決するべく考案されたものであり、本願発明者の発明による特許文献2に係る画像箔転写シートの構成及びその製造方法の工程を抜本的に見直すことにより、普及している箔シートとインクジェットプリンター等の非接触型印刷機を用いて、複雑な図形や小さな文字など、プリンターで印刷可能な所望の画像の形状の金属箔(以下、「画像箔」という)を対象物に転写可能な画像箔転写シートをより簡易な構成で実現するとともに、従来技術よりもさらに簡略化した工程での製造方法と、該画像転写シートを用いた画像箔の転写方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る画像箔転写シートは、セパレーターの上面に剥離可能な第1の糊層を設けた糊付き離型シートの前記第1の糊層の上面に箔層を有し、前記箔層の上面にクリアインクにより任意の形状の画像を印刷してなるクリア層を有し、前記クリア層を含む前記箔層の上面には、下面に第2の糊層を有するアプリケーションシートを設けて成る画像箔転写シートであって、前記第1の糊層は前記箔層に対して易接着性を有し、前記第2の糊層は前記箔層に対しては易接着性を有するとともに前記クリア層に対しては離型性を有することを特徴とする。
【0013】
前記セパレーターとしては、表面に剥離層としてシリコン被膜を形成したシリコン処理紙、あるいはPET等を基材とするシリコン処理樹脂フィルムのほか、剥離層にシリコンを含まない非シリコン系離型紙・離型フィルムが適用可能である。一方、前記アプリケーションシートは、前述のとおりその片面に第1の糊層が強固に接着されてなるため、アプリケーションシートと第1の糊層とは剥離不能である。ちなみに、アプリケーションシートとしては、前述の本願発明者による発明である「スマートペーパー」がそのまま適用可能である。
【0014】
第1の糊層、第2の糊層には、感圧接着剤(PSA)を用いている。感圧接着剤としてはアクリル系、シリコン系、ウレタン系、ゴム系などが適用可能であるが、転写対象物の種類や使用環境により適宜選択することが望ましい。本願発明の糊層には、内部強度やUV(紫外線)への耐性が高く、比較的低コストで一般的な粘着テープの糊料として多く用いられているアクリル系感圧接着剤が好適である。ただし、アクリル系接着剤の多くは高い耐久性を維持する温度領域が15~30℃程度であるため、高温や冷蔵といった使用環境により、第1の糊層の糊料としてシリコン系感圧接着剤を選択することが望ましい。シリコン系接着剤は高コストであるが-40~260℃といった幅広い温度領域でも耐久性を発揮する。また、ウレタン系・ゴム系接着剤の多くは、低コストだが耐久性(特に日光や酸化による老化への耐性)でやや劣るほか、本願出願人による試験では、インク(本願発明ではクリア層)に対する離型性が不十分な場合があることが確認されたが、今後の改良によっては選択肢となり得る。
【0015】
前記クリアインクは、グロスインクとも呼ばれ、顔料等の色素を含有しない無色透明のインクである。顔料を含まないクリアインクは、乾燥硬化時における塗膜の体積収縮による内部応力が小さいために接着力が大きく、金属である箔に対しても高い易接着性を示す。特に、紫外線照射により硬化するUVインクは架橋構造を取るため、溶剤インクに比べて高い接着力を発揮する。そのため、クリア層自体が接着剤の役割を果たし、箔層と強固に一体化する。
【0016】
なお、UVプリンターによるクリアインクの印刷においては、UV-LEDランプの照射の制御により塗膜表面が光沢調又はマット調になるよう設定可能な場合があるが、マット調に設定した場合、クリア層の表面の凹凸が極薄厚の箔に反映して美観を損なうため、光沢調に設定することが望ましい。
【0017】
次に、請求項2に記載した画像箔転写シートは、請求項1に記載した画像箔転写シートであって、前記クリア層と前記箔層との間の全部又は一部に有色インクからなるカラー層を設けたことを特徴とする。ここで、「全部」とは、クリア層と箔層との間の全面にカラー層が存在することを意味する。また、「一部」とはクリア層と箔層との間の一部にカラー層が存在し、カラー層のない部分ではクリア層と箔層とが直接に接していることを意味する。
【0018】
次に、請求項3に係る画像箔転写シートは、請求項1または請求項2のいずれかに記載の画像箔転写シートであって、前記セパレーターの上面には微細な凸部を一面に設けてなり、前記第1の糊層の下面には前記凸部に対応した微細な凹部が一面に形成されていることを特徴とする。
【0019】
本願出願人の発明である前記特許文献1、2に係る画像転写シートは、当初は主に各種物品の表面に比較的小さな画像を転写するために用いられていたが、建築物の壁面やガラス面、さらには床面や舗装道路の路面等への大判の画像やサイン表示などの転写へのニーズが高まった。しかし、大きな画像を一度に転写する場合、転写対象物と糊層との間に空気が残存して気泡を生じるという未解決の問題が残っていた。本願出願人はこれを解決すべく、特許文献5に示す如く、剥離紙(本願発明の「セパレーター」に相当)の表面に多数の微細な凸部を設けることで糊層(本願発明の「第1の糊層」に相当)に凸部に対応する凹部を形成した画像転写シートを開発し、すでに特許権(特許第6454048号)を取得して製造販売している。この画像転写シートは、剥離紙を除去して露出させた凹部を有する糊層を転写対象物の表面に密着させて転写フィルムの表面に押圧を加えることにより、糊層と転写対象物との間に残存する空気の大部分は凸部の間を通って画像層のない部分へと移動し、あるいは画像転写シートの端から外部へと排出され、排出されずに僅かに残存した空気も凸部の隙間の空間に分散するため、肉眼で視認できる大きさの気泡を生じない。
【特許文献5】特許第6454048号公報
【0020】
請求項1に係る画像箔転写シートにおいても前述の気泡発生の問題は生じる。しかし、前記セパレーターの上面に微細な凸部を一面に設けることにより、前記第1の糊層の下面には凸部に対応した微細な凹部が一面に形成されるため、特許文献5に係る画像転写シートと同様の気泡の排出・分散の効果を付加することができる。
【0021】
次に、請求項4に記載した画像箔転写シートの製造方法は、少なくとも、(1)セパレーターの上面に剥離可能な第1の糊層を設けた糊付き離型シートの前記第1の糊層の上面に箔を貼り付けて箔層を設ける箔貼付工程と、(2)前記箔層の上面に任意の形状の画像をクリアインクにより印刷してクリア層を設けるクリア印刷工程と、(3)前記クリア層を含む前記箔層の上面に、下面に第2の糊層を有するアプリケーションシートの該第2の糊層側を貼り付けるシート化工程とから成り、前記第1の糊層は前記箔層に対して易接着性を有し、前記アプリケーションシートの第2の糊層は前記箔層に対しては易接着性を有するとともに前記クリア層に対しては離型性を有することを特徴とする。
【0022】
次に、請求項5に記載した画像箔転写シートの製造方法は、請求項4に記載した画像箔転写シートの製造方法であって、前記箔貼付工程の後、前記クリア印刷工程の前に、前記クリア層による画像を設ける範囲内の箔層の全部又は一部に有色インクで任意の形状を印刷するカラー印刷工程を設けたことを特徴とする。
【0023】
次に、請求項6に記載した画像箔転写シートの製造方法は、請求項4または請求項5のいずれかに記載した画像箔転写シートの製造方法であって、前記セパレーターの上面には微細な凸部を一面に設けてなり、前記第1の糊層の下面には前記凸部に対応した微細な凹部が一面に形成されていることを特徴とする。
【0024】
最後に、請求項7に記載した画像箔の転写方法は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像箔転写シートから前記セパレーターを剥離し、前記第1の糊層の露出した下面を転写対象物に圧着した上で前記アプリケーションシートを剥離除去することで、前記クリア層とその直下の少なくとも箔層とから成る画像のみを転写対象物に転写することを特徴とする
【0025】
請求項7に記載した画像箔の転写方法は、具体的には次のように行われる。まず、画像箔転写シートのセパレーターを剥離除去して第1の糊層を露出させ、これを転写対象物の所定の表面に圧着した上で、クリア層による画像が存在する範囲のみに上方からローラー等で押圧を加えた後、アプリケーションシートを剥離する。この際、クリア層による画像が存在する部分では、第2の糊層がクリア層に対して離型性を有するため、クリア層はアプリケーションシートから剥離し、クリア層とその直下の箔層が第1の糊層によって転写対象物の表面に接着された状態で転写される。一方、クリア層がない画像外の部分では、アプリケーションシートの第2の糊層が第1の糊層に対して易接着性を有するためこれと一体化しており、第2の糊層はアプリケーションシートからは剥離不可能である一方、第1の糊層はセパレーターから剥離可能であるため、クリア層の直下以外の部分における第1の糊層と箔層、及び、第2の糊層のすべてがアプリケーションシートとともにセパレーターから剥離除去される。
【0026】
なお、請求項1及び請求項2に係る画像箔転写シートを用いて転写した画像箔は、その全面がクリア層によって覆われており、透明なクリア層を通して金属箔の表面が視認できる。一方、請求項3に係る画像箔転写シートを用いて転写した画像箔は、クリア層と箔層との間の全部にカラー層を設けていた場合は、箔層は直接視認できないが、画像の形状のカラー層にメタリック調の風合いを付加する演出効果が生じる。また、クリア層と箔層との間の一部にカラー層を設けていた場合には、カラー層のない部分では箔層が直接視認できる。
【発明の効果】
【0027】
特許文献2に係る画像箔転写シートは、その製造において、(1)第一印刷工程、(2)箔転写工程、(3)第二印刷工程、(4)画像転写工程、(5)セパレーター貼付工程、という5段階の行程を要していたのに対し、本願発明にかかる画像箔転写シートは、(1)箔貼付工程、(2)クリア印刷工程、(3)シート化工程という3段階の行程で製造可能となり、製造が大幅に効率化される。また、クリア層を二層から一層に減らせることで印刷工程が一回で済み、クリアインクの使用量も半減するので大幅なコストダウンが図れるだけでなく、箔画像全体の厚みを薄くできるために他の物品との摩擦や引っ掛かりも抑制できる。さらに、カラー層を設けることで、カラー画像にメタリック調の演出を付加した画像を転写したり、単なる箔画像に任意の模様や色彩を重ねて画像の表現力を高めることができる。
【0028】
そして、本願発明は、特許文献2の従来技術に係る画像箔転写シートが有する下記の優れた効果も継承している。
(イ)クリアインクを使用可能なインクジェットプリンター等の非接触型印刷機により、印刷した画像の通りに箔を画像層として形成可能であるため、複雑な図形や小さな文字などの繊細な画像であっても正確に箔として対象物に転写できる。これにより、従来の手作業による「箔押し」や「箔付け」では困難だった表現が可能となる。また、箔の上にインクで画像を重ね描きした複合的な画像も一回で対象物に転写することも可能である。
(ロ)同じ画像箔転写シートを印刷の方法により連続的に大量製造できる。これにより、カッティングシートのように箔シートから1点づつ画像を切り出す方法に比べて作業効率が大幅に向上する。
(ハ)製版を必要とせず、画像データごとに少量多品種製造が可能である。そのため、少量多品種製品やそのパッケージへの転写、量産品のオリジナル化・カスタマイズ化、製品開発段階での試作品・サンプル品等への「箔押し」や「箔付け」が大幅に低コスト化できる。
(ニ)転写には特段の器具や治具も必要とせず、画像箔転写シートを転写対象物に貼り付けて押圧し、アプリケーションシートを剥がすだけで完了するため、作業は極めて容易であり、専門的技術や熟練を要しない。しかも、転写作業自体には熱やプレス機等の加圧装置を必要としないので、樹脂製等の熱に弱い対象物や加圧装置を適用しにくい立体物、曲面にも自在に転写が可能である。
(ホ)アプリケーションシートを剥離するだけで画像箔以外の部分の糊層(粘着剤層)が剥離除去されるため、作業効率が向上し、仕上りも美しくなる。
(ヘ)転写された画像箔の表面がクリアインクによって保護された状態となるため、擦過や経年劣化への耐久性が高く、箔画像の風合いにも深みが増す。
(ト)完成した画像箔転写シートは、対象物への接着面がセパレーターによって保護された状態であるため、従来の基材有りの印刷画像シールと同様に取扱いや保管が容易である。
【0029】
さらに、本願発明の請求項3に係る発明によれば、大判の箔画像を建築物の壁面やガラス面、床面や舗装道路の路面等へ転写する場合にも、糊層と転写対象物との間に残存する空気の大部分を箔画像の外へと排出し、排出されずに僅かに残存した空気も凸部の隙間の空間に分散させて、肉眼で視認できる大きさの気泡を生じないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第一実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。第一実施形態は、請求項1に記載した画像箔転写シートと、その製造方法、並びに該画像箔転写シートを用いた画像箔の転写方法に係るものである。
【0031】
図1は、本発明の第一実施形態に係る画像箔転写シート1の一例を示す断面図である。画像箔転写シート1は、セパレーターSの上面に第1の糊層N1を設けてなる糊付き離型シート10の第1の糊層N1の上面に箔層Fを有し、箔層Fの上面にはクリアインクにより任意の形状の画像を印刷してなるクリア層Cを有し、クリア層Cを含む前記箔層Fの上面には第2の糊層N2、その上面にアプリケーションシートAを積層してなる。なお、クリア層Cは、インクジェットプリンターあるいはUVプリンター等の非接触型印刷機により箔層F層の上面に直接印刷されており、インクジェットプリンターの場合はくリアインクの層であり、UVプリンターの場合は印刷時のUV照射により光重合反応を起こして薄膜状に乾燥硬化せしめられたクリアUVインクの層である。
【0032】
セパレーターSは上面が離型処理されているため第1の糊層N1とは容易に剥離可能である。第1の糊層は箔層Fに対して易接着性を有しているため、箔層Fは第1の糊層N1に剥離不能に接着されている。クリア層Cは、前述のとおりそれ自体が接着剤の役割を果たし、箔層Fとやはり剥離不能に接着されている。第2の糊層N2は、クリア層Cに対しては離型性を有するが、第1の糊層N1と同様に箔層Fに対しては易接着性を有し、アプリケーションシートAに対しても易接着性を有するため、第2の糊層N2とアプリケーションシートAと剥離不能に一体化している。なお、アプリケーションシートAとしては、前述の本願発明者による発明である「スマートペーパー」が適用可能である。
【0033】
図2から
図6は、画像箔転写シート1の製造工程を段階的に示した断面図である。
図2及び
図3は、糊付き離型シート10上面の第1の糊層N1に箔層Fを貼り付ける箔貼付工程を示す。箔シート20は、基材フィルムfの下面に金属を蒸着して箔層Fを設けており、箔シート20を第1の糊層N1の上面に圧着し(
図2)、基材フィルムfを剥離すると箔層Fのみが第1の糊層N1に貼り付けられる(
図3)。箔層Fに用いる金属としては、純金、純銀、銅、錫、アルミ等が一般的だが、銀を燻すことによって色調を変化させた赤銀箔、青銀箔や、真鍮に黄色の着色をして金に似せた洋金なども使用できる。また、金属箔の製造工程にエンボス工程を追加することで箔に干渉縞を生じさせて三次元模様を浮かび上がらせるホログラム箔を使用すれば、画像箔をさらに表情豊かなものとできる。
【0034】
図4は、クリア印刷工程を示す。箔層Fの上面にインクジェットプリンターHによりクリアインクで所望の画像を正像印刷してクリア層Cを形成する。
図5及び
図6は、シート化工程を示す。クリア層Cを設けた箔層Fの上面に、下面に第2の糊層N2を設けたアプリケーションシートAからなる糊付きアプリケーションシート30の第2の糊層N2側を圧着し(
図5)、さらにクリア層Cが存在する部分のみにローラーやバレン等を用いて追加的に押圧を加えることにより(
図6)画像箔転写シート1が完成する。
【0035】
図7~
図10は、第一実施形態に係る画像箔転写シート1による画像箔転写の工程を示す。まず、画像箔転写シート1からセパレーターSを剥離し(
図7)、露出した第1の糊層N1を転写対象物Oに圧着して(
図8)、改めてクリア層Cが存在する部分のみにローラーやバレン等を用いて追加的に押圧を加える(
図9)。その後画像箔転写シート1を剥離すると、転写対象物Oの表面に、箔層Fとクリア層Cが一体化した箔画像のみが第1の糊層N1により接着されて転写が完了する(
図10)
【0036】
(第二実施形態)
図11は、本発明の第二実施形態に係る画像箔転写シート2aの断面図である。第二実施形態は、請求項2に記載した画像箔転写シートのうち、クリア層Cと箔層Fとの間の全部に有色インクからなるカラー層NCを設けている。カラー層NCは、箔貼付工程の後、クリア印刷工程の前に、クリア層Cと同じ画像をインクジェットプリンターにより有色インクを印刷するカラー印刷工程を追加することで形成するが、それ以外の工程は第一実施形態と同様である。カラー層NCの有色インクの色彩や厚みは任意であるが、淡色にするほど、また、厚みを小さくするほど、当然に直下の箔層Fによるメタリック調となる効果が大きくなる。カラー層NCは単色での印刷に限られず、任意の色彩や線から成る画像であってもよい。
【0037】
(第三実施形態)
図12は、本発明の第三実施形態に係る画像箔転写シート2bの断面図である。第三実施形態は、請求項2に記載した画像箔転写シートのうち、クリア層Cと箔層Fとの間の一部に有色インクからなるカラー層NCを設けている。第二実施形態と同じくカラー印刷工程を追加する以外の工程は第一実施形態と同様である。なお、
図12では、箔層F上の画像の範囲の一部にカラー層NCを、残余の部分にクリア層C1をそれぞれ同じ厚みで印刷し、その上にクリア層C2を印刷しているため、画像の範囲のクリア層C1の表面は平滑となる。ここで、残余の部分にクリア層C1を印刷せずにクリア層C2を印刷してもよく、その場合は転写された画像のカラー層NCの厚みだけ残余の部分との間に段差が生じ、画像の内部に立体感を付加することができる。さらに、図示していないが、カラー印刷工程において、クリアインクでクリア層C1のみで任意の図形や模様を印刷し、その上にクリア層C2を設けることで、箔層Fの画像に凹凸の立体感のみを付加することもできる。
【0038】
(第四実施形態)
図13は、本発明の第四実施形態に係る画像箔転写シート1bの断面図である。本実施形態に係る糊付き離型シート10は、セパレーターS2の少なくとも上面に多数の微細な凸部c1を設けており、第1の糊層N1の下面には前記凸部c1に対応した微細な凹部c2が一面に形成されている。凸部c1の形状はドット状でも線状であってもよいが、隣接する凸部c1は互いに独立し、第1の糊層N1が転写対象物に当接した際に、前記凹部c2がクリア層Cにより形成された画像の直下で閉鎖されて孤立せず、必ず画像外へ開放される形状とすることが望ましい。
【0039】
なお、前記第四実施形態は第一実施形態に係る画像箔転写シート1の糊付き離型シート10のセパレーターSを凸部c1を設けたセパレーターS2に代えて第1の糊層N1の下面に凹部c2を形成したものであるが、第一実施形態に限らず、第二、第三実施形態の画像箔転写シート2a、2bの糊付き離型シート10についてもセパレーターS2を適用して第1の糊層に凹部c2を形成することが可能であることはいうまでもない。
【0040】
以上、本発明に係る画像転写方法の具体的な構成について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において改良または改変が可能であり、それらは本発明の技術的範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、印刷データどおりの所望の画像を金属箔として物品の表面に容易かつ自在に転写可能であるため、従来は製版の費用や多大な手間・時間を要していた「箔押し」や「箔付け」を、従来技術に比べてより効率的に、かつ低コストで実現できる。特に、少量多品種製品やそのパッケージへの転写、量産品のオリジナル化・カスタマイズ化、製品開発段階での試作品・サンプル品等への「箔押し」や「箔付け」への利用可能性が大きく、また、建築の内装や装飾にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図2】箔貼付工程(糊付き離型シートへの箔シートの貼付)を示す断面図(第一実施形態)
【
図3】箔貼付工程(基材フィルムの剥離)を示す断面図(第一実施形態)
【
図4】クリア印刷工程を示す断面図(第一実施形態)
【
図5】シート化工程(糊付きアプリケーションシートの貼付け)を示す断面図(第一実施形態)
【
図6】シート化工程(糊付きアプリケーションシートの圧着)を示す断面図(第一実施形態)
【
図7】画像箔転写の工程(セパレーターの剥離)を示す断面図(第一実施形態)
【
図8】画像箔転写の工程(転写対象物への貼付け)を示す断面図(第一実施形態)
【
図9】画像箔転写の工程(転写対象物への圧着)を示す断面図(第一実施形態)
【
図10】画像箔転写の工程(画像箔転写シートの剥離)を示す断面図(第一実施形態)
【
図11】画像箔転写シートの断面図(第二実施形態)
【
図12】画像箔転写シートの断面図(第三実施形態)
【
図13】画像箔転写シートの断面図(第四実施形態)
【符号の説明】
【0043】
1 画像箔転写シート(第一実施形態)
1b 画像箔転写シート(第四実施形態)
2a 画像箔転写シート(第二実施形態)
2b 画像箔転写シート(第三実施形態)
10 糊付き離型シート
20 箔シート
30 糊付きアプリケーションシート
A アプリケーションシート
S セパレーター(第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態)
S2 セパレーター(第四実施形態)
F 箔層
f 基材フィルム
N1 第1の糊層
N2 第2の糊層
C クリア層(第一実施形態)
NC カラー層(第二実施形態、第三実施形態)
C1 第一のクリア層(第三実施形態)
C2 第二のクリア層(第三実施形態)
c1 凸部(第四実施形態)
c2 凹部(第四実施形態)
N 糊層(第一実施形態、第三実施形態)
P 非接触型印刷機
O 転写対象物
【手続補正書】
【提出日】2022-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレーターの片面に剥離可能な第1の糊層を設けた糊付き離型シートの前記第1の糊層の全面に箔層が積層され、前記箔層の表面の一部にはクリアインクにより任意の形状の画像を印刷してなるクリア層を有し、前記クリア層とクリア層のない部分の箔層の全面に第2の糊層、アプリケーションシートを順に積層してなる画像箔転写シートであって、前記第1の糊層は前記箔層に対して易接着性を有し、前記第2の糊層は前記箔層に対しては易接着性を有するとともに前記クリア層に対しては離型性を有することを特徴とする、画像箔転写シート。
【請求項2】
前記クリア層と前記箔層との間の全部又は一部に有色インクからなるカラー層を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の画像箔転写シート。
【請求項3】
前記セパレーターの片面には微細な凸部を全面に設けてなり、前記第1の糊層の前記セパレーターの片面に接する面には前記凸部に対応した微細な凹部が全面に形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の画像箔転写シート。
【請求項4】
少なくとも、(1)セパレーターの片面に剥離可能な第1の糊層を設けた糊付き離型シートの前記第1の糊層の表面に箔を貼り付けて箔層を積層する箔貼付工程と、(2)前記箔層の表面の一部に任意の形状の画像をクリアインクにより印刷してクリア層を設けるクリア印刷工程と、(3)前記クリア層とクリア層のない部分の箔層の表面に、裏面に第2の糊層を有するアプリケーションシートの前記第2の糊層を貼り付けるシート化工程とから成り、前記第1の糊層は前記箔層に対して易接着性を有し、前記アプリケーションシートの第2の糊層は前記箔層に対しては易接着性を有するとともに前記クリア層に対しては離型性を有することを特徴とする、画像箔転写シートの製造方法。
【請求項5】
前記箔貼付工程の後、前記クリア印刷工程の前に、前記クリア層による画像を設ける範囲内の箔層の全部又は一部に有色インクで任意の形状を印刷するカラー印刷工程を設けたことを特徴とする、請求項4に記載の画像箔転写シートの製造方法。
【請求項6】
前記セパレーターの片面には微細な凸部を全面に設けてなり、前記第1の糊層の前記セパレーターの片面に接する面には前記凸部に対応した微細な凹部が全面に形成されていることを特徴とする、請求項4または請求項5のいずれかに記載の画像箔転写シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像箔転写シートから前記セパレーターを剥離し、露出した前記第1の糊層を転写対象物に圧着した上で前記アプリケーションシートを剥離除去することで、前記クリア層とその直下の少なくとも箔層とから成る画像のみを転写対象物に転写することを特徴とする、画像箔の転写方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写対象物の表面に任意の画像の形状の金属箔を転写するための画像箔転写シートと、該画像箔転写シートの製造方法、該画像箔転写シートを用いた転写対象物への画像箔の転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を転写対象物に転写する転写印刷としては、水転写、熱転写、昇華転写、乾式転写等の技術が知られている。中でも、基材シート上に仮着した画像層の裏面に接着剤を塗布した上で、押圧によって画像層を転写対象物の表面に移行させて接着する乾式転写は、転写時に画像に縁が残らないため、転写対象物に直接印刷したように見え、カッティングプロッター等による後処理も不要といった特徴を有する。
【0003】
本願発明者は、かかる乾式転写技術の簡便化に取り組み、非特許文献1に記載の製品「スマートペーパー(商品名)」を開発して製造販売してきた。これは、表面に離型可能処理を施したPET(ポリエチレンテレフタラート)製の基材シートであり、その表面にレーザープリンター等のトナー印刷によって鏡像の画像を印刷して画像層を形成し、該画像層上にアクリル系の糊を塗布して乾燥させた後、基材シートを転写対象物に密着させて押圧を加え、基材シートを剥離すると画像層のみが正像にて転写対象物に接着され転写が完了するものである。該スマートペーパーは、工程が極めて簡易であるだけでなく、溶剤等を使用しないため環境負荷の問題も生じない。また、転写に際して水を使用せず熱も加えないため、金属、ガラス、合成樹脂はもとより紙、木、皮革、繊維(布)、陶器まで適用可能な転写対象物の素材が幅広い。さらに、画像層を柔軟な基材シート上に仮着させた上で転写するため、直接プリンターを通せない立体物や曲面にも転写可能であるなど、乾式転写のコスト低減、適用範囲の拡大、作業の簡易化・効率化の効果を奏するものである。
【非特許文献1】「スマートペーパー」の説明(出願人ウェブサイトのページ)URL:https://ing-global.net/smartpaper/
【0004】
また、本願発明者は、特許文献1に示す如く、スマートペーパーをさらに発展させ、上層の転写フィルムと下層の糊層との間に画像層を設け、該転写フィルムを、画像層に対しては離型性を有するとともに糊層に対しては易接着性を有するものとしたことを特徴とする画像転写シートを開発、すでに特許権(特許第6260878号)を取得し、製造販売している。該画像転写シートは、スマートペーパーのように、転写対象物に糊を塗布して糊層を形成したり、転写後に画像からはみ出した糊を除去したりする必要がないため、転写作業のコストや作業負担を低減でき、仕上りも均質化できるという有利な効果を奏する。また、該画像転写シートはUV印刷に対応可能であり、画像転写シートを製造する際に、糊付き離型シートの糊層の上面に任意の画像を正像で、かつ、インクを印刷機の仕様上可能な範囲で所望の厚みで積層して画像層を形成できる。転写対象物に直接印刷したかのような仕上がりが得られ、特にUV印刷の特徴を活かして、パッケージ印刷等に好適な立体感の高い印刷が可能となった。そして、画像転写シートは、印刷機で直接印刷しにくい大きさや形状の平面や立体物に画像転写が可能であるから、印刷機の高度な設定や専用治具も不要となった。そのため、少量多品種製品やそのパッケージへの印刷、量産品のオリジナル化・カスタマイズ化、製品開発段階での試作品・サンプル品等への印刷等の大幅なコスト低減が可能となった。
【特許文献1】特開2017-209931号公報
【0005】
一方、転写画像に高級感を付与したり、より多彩な表現を実現するために、金箔や銀箔などの金属箔を所望の画像として転写対象物に転写することへの要望が以前から存在したが、上述の先行技術では困難であった。一般的な内装用・装飾用の金属箔は、プラスティックフィルム等の基材の表面に金属を蒸着し、裏面に粘着剤層(一般的にはホットメルト接着剤)を設けた「箔シート」と呼ばれるものが普及している。これらは、カッティングシートのように必要な形状にカットして対象物に直接貼り付けて加熱することで基材ごと金属箔を転写対象物に接着するものであるが、複雑な図形や小さな文字をカットすることは難しく、手間も掛かる。また、基材ごと対象物に貼り付けるため、特に繊細な図形などの場合には、基材の厚みが仕上りの品質を低下させるという問題もあった。
【0006】
他の箔押しの手段としては、受治具に固定した対象物に箔を載せて、その上から金属板の表面に画像を凸版として設けてなる版板を加熱して押し付けることで、凸版部分の箔を対象物の表面に融着させるホットスタンプと呼ばれる技術も知られている。しかし、版板の製作にコストがかかるため、対象物が少量の場合や多数の画像を箔押し加工する場合には、経済性に問題があった。また、対象物に応じた治具を用意しなければならず、対象物の形状によってはホットスタンプが適用しにくい場合もあった。もちろん、対象物が熱に弱い樹脂製である場合には、そもそも適用できなかった。
【0007】
ここで、プリンターによって対象物にインクで印刷するように金属箔で所望の形状の画像層を形成し、画像転写シートを用いて対象物に転写することができれば転写画像の質感の向上や表現力の向上に極めて有効である。その点、スマートペーパー等の先行技術に係る画像転写シートは糊層に直接画像を印刷してシールのように対象物に貼り付け、画像のみを転写することができる。しかし、表面全体に糊層を設けているため、箔シートを貼り付けると全面が画像転写シートに接着されてしまい、所望の画像部分だけを転写することはできないという問題があった。
【0008】
そこで、本願発明者は、特許文献2に示す如く、インクジェットプリンターで印刷した上層の第一のクリア層と下層の第二のクリア層との間に金属箔を挟んでなる画像層を、転写対象物に糊層によって接着する方法で転写する技術を開発し、すでに特許権(特許第6353616号)を取得し、製造販売している。本発明によれば、箔シートはあらかじめ2つのクリア層に挟まれた画像部分のみが抜き出された状態で糊層上に残されて転写され、不要な箔はあらかじめ除去されるので、前記の問題は解決する。これにより、印刷データどおりの所望の画像を金属箔として物品の表面に容易かつ自在に転写可能となるため、従来は製版の費用や多大な手間・時間を要していた「箔押し」や「箔付け」を極めて低コストかつ効率的に実現できる。特に、少量多品種製品やそのパッケージへの転写、量産品のオリジナル化・カスタマイズ化、製品開発段階での試作品・サンプル品等への「箔押し」や「箔付け」への利用可能性が大きく、また、建築の内装や装飾にも利用可能となっている。
【特許文献2】特開2018―011356号公報
【0009】
しかし、この発明に係る画像箔転写シートは、対象物への画像箔の転写自体は極めて簡便であるものの、その製造には多段に渡る複雑な工程が必要であった。具体的には、(1)離型シートの表面にクリアインク又はプライマーで所望の画像を正像印刷して第二のクリア層を形成する第一印刷工程、(2)箔シートの箔面側を離型シートの表面に圧着後、箔シートを剥離して第二のクリア層にのみ箔を転写する箔転写工程、(3)転写された箔の表面にクリアインク又はプライマーで第一のクリア層を印刷して画像層を形成する第二印刷工程、(4)アプリケーションシートを離型シートの表面に圧着してアプリケーションシートに画像層を転写後、離型シートを剥離除去する画像転写工程、(5)片面に糊層を剥離可能に設けたセパレーターの糊層側にアプリケーションシートの画像層を有する面を貼り付けることで画像箔転写シートを得るセパレーター貼付工程、といった5段階の行程が必要であり、製造工程の簡略化による製造のさらなる効率化・コストダウンが求められていた。
【0010】
なお、同様に基材を用いずに画像箔のみを転写対象物に転写する先行技術としては、特許文献3に係る「金属箔の転写方法」や特許文献4に係るラテックスインク、これを用いた箔画像形成方法、積層体、壁紙」が知られている。しかし、特許文献3に係る発明は、基体上の金属箔の表面にホットメルト接着層が形成された積層体のホットメルト接着層の表面に硬化型インクを印刷してマスク画像を形成して転写材とし、該転写材のホットメルト接着層を転写対象物に重ねて熱プレスした上で基体を引き離すことでマスク画像の鏡像で金属箔を転写するものである。この発明では転写時に必ず熱プレスを要するため、熱による転写対象物の変性のおそれがあるだけでなく、熱プレスを与えにくい立体物や凹凸面への適用は困難である。また、特許文献4に係る発明は、基材上にラテックスインクでパターン状に形成された接着層に転写箔を加熱圧着し、前記接着層上に箔転写層を形成して箔画像を形成するものである。この発明では画像箔を形成する際に加熱を要するため、箔の種類によっては箔自体が変性するおそれがあるだけでなく、ラテックスインクで画像を接着層として形成することは、インクによる画像の印刷に比べてどうしても精度が劣らざるを得ず、壁紙のパターン形成には適用できても高精細な画像の形成には不向きである。また、ラテックスインクの調製やノズル詰まりの防止等の難易度も高く、コスト高とならざるを得ない。
【特許文献3】特開2012-210715号公報
【特許文献4】特許第6424894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、かかる従来技術の問題を解決するべく考案されたものであり、本願発明者の発明による特許文献2に係る画像箔転写シートの構成及びその製造方法の工程を抜本的に見直すことにより、普及している箔シートとインクジェットプリンター等の非接触型印刷機を用いて、複雑な図形や小さな文字など、プリンターで印刷可能な所望の画像の形状の金属箔(以下、「画像箔」という)を対象物に転写可能な画像箔転写シートをより簡易な構成で実現するとともに、従来技術よりもさらに簡略化した工程での製造方法と、該画像転写シートを用いた画像箔の転写方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る画像箔転写シートは、セパレーターの片面に剥離可能な第1の糊層を設けた糊付き離型シートの前記第1の糊層の全面に箔層が積層され、前記箔層の表面の一部にはクリアインクにより任意の形状の画像を印刷してなるクリア層を有し、前記クリア層とクリア層のない部分の箔層の全面に第2の糊層、アプリケーションシートを順に積層して成る画像箔転写シートであって、前記第1の糊層は前記箔層に対して易接着性を有し、前記第2の糊層は前記箔層に対しては易接着性を有するとともに前記クリア層に対しては離型性を有することを特徴とする。
【0013】
前記セパレーターとしては、表面に剥離層としてシリコン被膜を形成したシリコン処理紙、あるいはPET等を基材とするシリコン処理樹脂フィルムのほか、剥離層にシリコンを含まない非シリコン系離型紙・離型フィルムが適用可能である。一方、前記アプリケーションシートは、前述のとおりその片面に第1の糊層が強固に接着されてなるため、アプリケーションシートと第1の糊層とは剥離不能である。ちなみに、アプリケーションシートとしては、前述の本願発明者による発明である「スマートペーパー」がそのまま適用可能である。
【0014】
第1の糊層、第2の糊層には、感圧接着剤(PSA)を用いている。感圧接着剤としてはアクリル系、シリコン系、ウレタン系、ゴム系などが適用可能であるが、転写対象物の種類や使用環境により適宜選択することが望ましい。本願発明の糊層には、内部強度やUV(紫外線)への耐性が高く、比較的低コストで一般的な粘着テープの糊料として多く用いられているアクリル系感圧接着剤が好適である。ただし、アクリル系接着剤の多くは高い耐久性を維持する温度領域が15~30℃程度であるため、高温や冷蔵といった使用環境により、第1の糊層の糊料としてシリコン系感圧接着剤を選択することが望ましい。シリコン系接着剤は高コストであるが-40~260℃といった幅広い温度領域でも耐久性を発揮する。また、ウレタン系・ゴム系接着剤の多くは、低コストだが耐久性(特に日光や酸化による老化への耐性)でやや劣るほか、本願出願人による試験では、インク(本願発明ではクリア層)に対する離型性が不十分な場合があることが確認されたが、今後の改良によっては選択肢となり得る。
【0015】
前記クリアインクは、グロスインクとも呼ばれ、顔料等の色素を含有しない無色透明のインクである。顔料を含まないクリアインクは、乾燥硬化時における塗膜の体積収縮による内部応力が小さいために接着力が大きく、金属である箔に対しても高い易接着性を示す。特に、紫外線照射により硬化するUVインクは架橋構造を取るため、溶剤インクに比べて高い接着力を発揮する。そのため、クリア層自体が接着剤の役割を果たし、箔層と強固に一体化する。
【0016】
なお、UVプリンターによるクリアインクの印刷においては、UV-LEDランプの照射の制御により塗膜表面が光沢調又はマット調になるよう設定可能な場合があるが、マット調に設定した場合、クリア層の表面の凹凸が極薄厚の箔に反映して美観を損なうため、光沢調に設定することが望ましい。
【0017】
次に、請求項2に記載した画像箔転写シートは、請求項1に記載した画像箔転写シートであって、前記クリア層と前記箔層との間の全部又は一部に有色インクからなるカラー層を設けたことを特徴とする。ここで、「全部」とは、クリア層と箔層との間の全面にカラー層が存在することを意味する。また、「一部」とはクリア層と箔層との間の一部にカラー層が存在し、カラー層のない部分ではクリア層と箔層とが直接に接していることを意味する。
【0018】
次に、請求項3に係る画像箔転写シートは、請求項1または請求項2のいずれかに記載の画像箔転写シートであって、前記セパレーターの片面には微細な凸部を全面に設けてなり、前記第1の糊層の前記セパレーターの片面に接する面には前記凸部に対応した微細な凹部が全面に形成されていることを特徴とする。
【0019】
本願出願人の発明である前記特許文献1、2に係る画像転写シートは、当初は主に各種物品の表面に比較的小さな画像を転写するために用いられていたが、建築物の壁面やガラス面、さらには床面や舗装道路の路面等への大判の画像やサイン表示などの転写へのニーズが高まった。しかし、大きな画像を一度に転写する場合、転写対象物と糊層との間に空気が残存して気泡を生じるという未解決の問題が残っていた。本願出願人はこれを解決すべく、特許文献5に示す如く、剥離紙(本願発明の「セパレーター」に相当)の表面に多数の微細な凸部を設けることで糊層(本願発明の「第1の糊層」に相当)に凸部に対応する凹部を形成した画像転写シートを開発し、すでに特許権(特許第6454048号)を取得して製造販売している。この画像転写シートは、剥離紙を除去して露出させた凹部を有する糊層を転写対象物の表面に密着させて転写フィルムの表面に押圧を加えることにより、糊層と転写対象物との間に残存する空気の大部分は凸部の間を通って画像層のない部分へと移動し、あるいは画像転写シートの端から外部へと排出され、排出されずに僅かに残存した空気も凸部の隙間の空間に分散するため、肉眼で視認できる大きさの気泡を生じない。
【特許文献5】特許第6454048号公報
【0020】
請求項1に係る画像箔転写シートにおいても前述の気泡発生の問題は生じる。しかし、前記セパレーターの上面に微細な凸部を一面に設けることにより、前記第1の糊層の下面には凸部に対応した微細な凹部が一面に形成されるため、特許文献5に係る画像転写シートと同様の気泡の排出・分散の効果を付加することができる。
【0021】
次に、請求項4に記載した画像箔転写シートの製造方法は、少なくとも、(1)セパレーターの片面に剥離可能な第1の糊層を設けた糊付き離型シートの前記第1の糊層の表面に箔を貼り付けて箔層を積層する箔貼付工程と、(2)前記箔層の表面の一部に任意の形状の画像をクリアインクにより印刷してクリア層を設けるクリア印刷工程と、(3)前記クリア層とクリア層のない部分の箔層の表面に、裏面に第2の糊層を有するアプリケーションシートの前記第2の糊層を貼り付けるシート化工程とから成り、前記第1の糊層は前記箔層に対して易接着性を有し、前記アプリケーションシートの第2の糊層は前記箔層に対しては易接着性を有するとともに前記クリア層に対しては離型性を有することを特徴とする。
【0022】
次に、請求項5に記載した画像箔転写シートの製造方法は、請求項4に記載した画像箔転写シートの製造方法であって、前記箔貼付工程の後、前記クリア印刷工程の前に、前記クリア層による画像を設ける範囲内の箔層の全部又は一部に有色インクで任意の形状を印刷するカラー印刷工程を設けたことを特徴とする。
【0023】
次に、請求項6に記載した画像箔転写シートの製造方法は、請求項4または請求項5のいずれかに記載した画像箔転写シートの製造方法であって、前記セパレーターの片面には微細な凸部を全面に設けてなり、前記第1の糊層の前記セパレーターの片面に接する面には前記凸部に対応した微細な凹部が全面に形成されていることを特徴とする。
【0024】
最後に、請求項7に記載した画像箔の転写方法は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像箔転写シートから前記セパレーターを剥離し、露出した前記第1の糊層を転写対象物に圧着した上で前記アプリケーションシートを剥離除去することで、前記クリア層とその直下の少なくとも箔層とから成る画像のみを転写対象物に転写することを特徴とする。
【0025】
請求項7に記載した画像箔の転写方法は、具体的には次のように行われる。まず、画像箔転写シートのセパレーターを剥離除去して第1の糊層を露出させ、これを転写対象物の所定の表面に圧着した上で、クリア層による画像が存在する範囲のみに上方からローラー等で押圧を加えた後、アプリケーションシートを剥離する。この際、クリア層による画像が存在する部分では、第2の糊層がクリア層に対して離型性を有するため、クリア層はアプリケーションシートから剥離し、クリア層とその直下の箔層が第1の糊層によって転写対象物の表面に接着された状態で転写される。一方、クリア層がない画像外の部分では、アプリケーションシートの第2の糊層が第1の糊層に対して易接着性を有するためこれと一体化しており、第2の糊層はアプリケーションシートからは剥離不可能である一方、第1の糊層はセパレーターから剥離可能であるため、クリア層の直下以外の部分における第1の糊層と箔層、及び、第2の糊層のすべてがアプリケーションシートとともにセパレーターから剥離除去される。
【0026】
なお、請求項1及び請求項2に係る画像箔転写シートを用いて転写した画像箔は、その全面がクリア層によって覆われており、透明なクリア層を通して金属箔の表面が視認できる。一方、請求項3に係る画像箔転写シートを用いて転写した画像箔は、クリア層と箔層との間の全部にカラー層を設けていた場合は、箔層は直接視認できないが、画像の形状のカラー層にメタリック調の風合いを付加する演出効果が生じる。また、クリア層と箔層との間の一部にカラー層を設けていた場合には、カラー層のない部分では箔層が直接視認できる。
【発明の効果】
【0027】
特許文献2に係る画像箔転写シートは、その製造において、(1)第一印刷工程、(2)箔転写工程、(3)第二印刷工程、(4)画像転写工程、(5)セパレーター貼付工程、という5段階の行程を要していたのに対し、本願発明にかかる画像箔転写シートは、(1)箔貼付工程、(2)クリア印刷工程、(3)シート化工程という3段階の行程で製造可能となり、製造が大幅に効率化される。また、クリア層を二層から一層に減らせることで印刷工程が一回で済み、クリアインクの使用量も半減するので大幅なコストダウンが図れるだけでなく、箔画像全体の厚みを薄くできるために他の物品との摩擦や引っ掛かりも抑制できる。さらに、カラー層を設けることで、カラー画像にメタリック調の演出を付加した画像を転写したり、単なる箔画像に任意の模様や色彩を重ねて画像の表現力を高めることができる。
【0028】
そして、本願発明は、特許文献2の従来技術に係る画像箔転写シートが有する下記の優れた効果も継承している。
(イ)クリアインクを使用可能なインクジェットプリンター等の非接触型印刷機により、印刷した画像の通りに箔を画像層として形成可能であるため、複雑な図形や小さな文字などの繊細な画像であっても正確に箔として対象物に転写できる。これにより、従来の手作業による「箔押し」や「箔付け」では困難だった表現が可能となる。また、箔の上にインクで画像を重ね描きした複合的な画像も一回で対象物に転写することも可能である。
(ロ)同じ画像箔転写シートを印刷の方法により連続的に大量製造できる。これにより、カッティングシートのように箔シートから1点づつ画像を切り出す方法に比べて作業効率が大幅に向上する。
(ハ)製版を必要とせず、画像データごとに少量多品種製造が可能である。そのため、少量多品種製品やそのパッケージへの転写、量産品のオリジナル化・カスタマイズ化、製品開発段階での試作品・サンプル品等への「箔押し」や「箔付け」が大幅に低コスト化できる。
(ニ)転写には特段の器具や治具も必要とせず、画像箔転写シートを転写対象物に貼り付けて押圧し、アプリケーションシートを剥がすだけで完了するため、作業は極めて容易であり、専門的技術や熟練を要しない。しかも、転写作業自体には熱やプレス機等の加圧装置を必要としないので、樹脂製等の熱に弱い対象物や加圧装置を適用しにくい立体物、曲面にも自在に転写が可能である。
(ホ)アプリケーションシートを剥離するだけで画像箔以外の部分の糊層(粘着剤層)が剥離除去されるため、作業効率が向上し、仕上りも美しくなる。
(ヘ)転写された画像箔の表面がクリアインクによって保護された状態となるため、擦過や経年劣化への耐久性が高く、箔画像の風合いにも深みが増す。
(ト)完成した画像箔転写シートは、対象物への接着面がセパレーターによって保護された状態であるため、従来の基材有りの印刷画像シールと同様に取扱いや保管が容易である。
【0029】
さらに、本願発明の請求項3に係る発明によれば、大判の箔画像を建築物の壁面やガラス面、床面や舗装道路の路面等へ転写する場合にも、糊層と転写対象物との間に残存する空気の大部分を箔画像の外へと排出し、排出されずに僅かに残存した空気も凸部の隙間の空間に分散させて、肉眼で視認できる大きさの気泡を生じないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第一実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。第一実施形態は、請求項1に記載した画像箔転写シートと、その製造方法、並びに該画像箔転写シートを用いた画像箔の転写方法に係るものである。
【0031】
図1は、本発明の第一実施形態に係る画像箔転写シート1の一例を示す断面図である。画像箔転写シート1は、セパレーターSの上面に第1の糊層N1を設けてなる糊付き離型シート10の第1の糊層N1の上面に箔層Fを有し、箔層Fの上面にはクリアインクにより任意の形状の画像を印刷してなるクリア層Cを有し、クリア層Cを含む前記箔層Fの上面には第2の糊層N2、その上面にアプリケーションシートAを積層してなる。なお、クリア層Cは、インクジェットプリンターあるいはUVプリンター等の非接触型印刷機により箔層F層の上面に直接印刷されており、インクジェットプリンターの場合はくリアインクの層であり、UVプリンターの場合は印刷時のUV照射により光重合反応を起こして薄膜状に乾燥硬化せしめられたクリアUVインクの層である。
【0032】
セパレーターSは上面が離型処理されているため第1の糊層N1とは容易に剥離可能である。第1の糊層は箔層Fに対して易接着性を有しているため、箔層Fは第1の糊層N1に剥離不能に接着されている。クリア層Cは、前述のとおりそれ自体が接着剤の役割を果たし、箔層Fとやはり剥離不能に接着されている。第2の糊層N2は、クリア層Cに対しては離型性を有するが、第1の糊層N1と同様に箔層Fに対しては易接着性を有し、アプリケーションシートAに対しても易接着性を有するため、第2の糊層N2とアプリケーションシートAと剥離不能に一体化している。なお、アプリケーションシートAとしては、前述の本願発明者による発明である「スマートペーパー」が適用可能である。
【0033】
図2から
図6は、画像箔転写シート1の製造工程を段階的に示した断面図である。
図2及び
図3は、糊付き離型シート10上面の第1の糊層N1に箔層Fを貼り付ける箔貼付工程を示す。箔シート20は、基材フィルムfの下面に金属を蒸着して箔層Fを設けており、箔シート20を第1の糊層N1の上面に圧着し(
図2)、基材フィルムfを剥離すると箔層Fのみが第1の糊層N1に貼り付けられる(
図3)。箔層Fに用いる金属としては、純金、純銀、銅、錫、アルミ等が一般的だが、銀を燻すことによって色調を変化させた赤銀箔、青銀箔や、真鍮に黄色の着色をして金に似せた洋金なども使用できる。また、金属箔の製造工程にエンボス工程を追加することで箔に干渉縞を生じさせて三次元模様を浮かび上がらせるホログラム箔を使用すれば、画像箔をさらに表情豊かなものとできる。
【0034】
図4は、クリア印刷工程を示す。箔層Fの上面にインクジェットプリンターHによりクリアインクで所望の画像を正像印刷してクリア層Cを形成する。
図5及び
図6は、シート化工程を示す。クリア層Cを設けた箔層Fの上面に、下面に第2の糊層N2を設けたアプリケーションシートAからなる糊付きアプリケーションシート30の第2の糊層N2側を圧着し(
図5)、さらにクリア層Cが存在する部分のみにローラーやバレン等を用いて追加的に押圧を加えることにより(
図6)画像箔転写シート1が完成する。
【0035】
図7~
図10は、第一実施形態に係る画像箔転写シート1による画像箔転写の工程を示す。まず、画像箔転写シート1からセパレーターSを剥離し(
図7)、露出した第1の糊層N1を転写対象物Oに圧着して(
図8)、改めてクリア層Cが存在する部分のみにローラーやバレン等を用いて追加的に押圧を加える(
図9)。その後画像箔転写シート1を剥離すると、転写対象物Oの表面に、箔層Fとクリア層Cが一体化した箔画像のみが第1の糊層N1により接着されて転写が完了する(
図10)
【0036】
(第二実施形態)
図11は、本発明の第二実施形態に係る画像箔転写シート2aの断面図である。第二実施形態は、請求項2に記載した画像箔転写シートのうち、クリア層Cと箔層Fとの間の全部に有色インクからなるカラー層NCを設けている。カラー層NCは、箔貼付工程の後、クリア印刷工程の前に、クリア層Cと同じ画像をインクジェットプリンターにより有色インクを印刷するカラー印刷工程を追加することで形成するが、それ以外の工程は第一実施形態と同様である。カラー層NCの有色インクの色彩や厚みは任意であるが、淡色にするほど、また、厚みを小さくするほど、当然に直下の箔層Fによるメタリック調となる効果が大きくなる。カラー層NCは単色での印刷に限られず、任意の色彩や線から成る画像であってもよい。
【0037】
(第三実施形態)
図12は、本発明の第三実施形態に係る画像箔転写シート2bの断面図である。第三実施形態は、請求項2に記載した画像箔転写シートのうち、クリア層Cと箔層Fとの間の一部に有色インクからなるカラー層NCを設けている。第二実施形態と同じくカラー印刷工程を追加する以外の工程は第一実施形態と同様である。なお、
図12では、箔層F上の画像の範囲の一部にカラー層NCを、残余の部分にクリア層C1をそれぞれ同じ厚みで印刷し、その上にクリア層C2を印刷しているため、画像の範囲のクリア層C1の表面は平滑となる。ここで、残余の部分にクリア層C1を印刷せずにクリア層C2を印刷してもよく、その場合は転写された画像のカラー層NCの厚みだけ残余の部分との間に段差が生じ、画像の内部に立体感を付加することができる。さらに、図示していないが、カラー印刷工程において、クリアインクでクリア層C1のみで任意の図形や模様を印刷し、その上にクリア層C2を設けることで、箔層Fの画像に凹凸の立体感のみを付加することもできる。
【0038】
(第四実施形態)
図13は、本発明の第四実施形態に係る画像箔転写シート1bの断面図である。本実施形態に係る糊付き離型シート10は、セパレーターS2の少なくとも上面に多数の微細な凸部c1を設けており、第1の糊層N1の下面には前記凸部c1に対応した微細な凹部c2が一面に形成されている。凸部c1の形状はドット状でも線状であってもよいが、隣接する凸部c1は互いに独立し、第1の糊層N1が転写対象物に当接した際に、前記凹部c2がクリア層Cにより形成された画像の直下で閉鎖されて孤立せず、必ず画像外へ開放される形状とすることが望ましい。
【0039】
なお、前記第四実施形態は第一実施形態に係る画像箔転写シート1の糊付き離型シート10のセパレーターSを凸部c1を設けたセパレーターS2に代えて第1の糊層N1の下面に凹部c2を形成したものであるが、第一実施形態に限らず、第二、第三実施形態の画像箔転写シート2a、2bの糊付き離型シート10についてもセパレーターS2を適用して第1の糊層に凹部c2を形成することが可能であることはいうまでもない。
【0040】
以上、本発明に係る画像転写方法の具体的な構成について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において改良または改変が可能であり、それらは本発明の技術的範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、印刷データどおりの所望の画像を金属箔として物品の表面に容易かつ自在に転写可能であるため、従来は製版の費用や多大な手間・時間を要していた「箔押し」や「箔付け」を、従来技術に比べてより効率的に、かつ低コストで実現できる。特に、少量多品種製品やそのパッケージへの転写、量産品のオリジナル化・カスタマイズ化、製品開発段階での試作品・サンプル品等への「箔押し」や「箔付け」への利用可能性が大きく、また、建築の内装や装飾にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図2】箔貼付工程(糊付き離型シートへの箔シートの貼付)を示す断面図(第一実施形態)
【
図3】箔貼付工程(基材フィルムの剥離)を示す断面図(第一実施形態)
【
図4】クリア印刷工程を示す断面図(第一実施形態)
【
図5】シート化工程(糊付きアプリケーションシートの貼付け)を示す断面図(第一実施形態)
【
図6】シート化工程(糊付きアプリケーションシートの圧着)を示す断面図(第一実施形態)
【
図7】画像箔転写の工程(セパレーターの剥離)を示す断面図(第一実施形態)
【
図8】画像箔転写の工程(転写対象物への貼付け)を示す断面図(第一実施形態)
【
図9】画像箔転写の工程(転写対象物への圧着)を示す断面図(第一実施形態)
【
図10】画像箔転写の工程(画像箔転写シートの剥離)を示す断面図(第一実施形態)
【
図11】画像箔転写シートの断面図(第二実施形態)
【
図12】画像箔転写シートの断面図(第三実施形態)
【
図13】画像箔転写シートの断面図(第四実施形態)
【符号の説明】
【0043】
1 画像箔転写シート(第一実施形態)
1b 画像箔転写シート(第四実施形態)
2a 画像箔転写シート(第二実施形態)
2b 画像箔転写シート(第三実施形態)
10 糊付き離型シート
20 箔シート
30 糊付きアプリケーションシート
A アプリケーションシート
S セパレーター(第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態)
S2 セパレーター(第四実施形態)
F 箔層
f 基材フィルム
N1 第1の糊層
N2 第2の糊層
C クリア層(第一実施形態)
NC カラー層(第二実施形態、第三実施形態)
C1 第一のクリア層(第三実施形態)
C2 第二のクリア層(第三実施形態)
c1 凸部(第四実施形態)
c2 凹部(第四実施形態)
N 糊層(第一実施形態、第三実施形態)
P 非接触型印刷機
O 転写対象物