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  • 特開-竹チップ燃料と肥料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060790
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】竹チップ燃料と肥料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20230421BHJP
   C05D 1/02 20060101ALI20230421BHJP
   C05G 5/23 20200101ALI20230421BHJP
【FI】
C10L5/44
C05D1/02
C05G5/23
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021185239
(22)【出願日】2021-10-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】521496548
【氏名又は名称】糸山 良徳
(72)【発明者】
【氏名】糸山 良徳
【テーマコード(参考)】
4H015
4H061
【Fターム(参考)】
4H015AA12
4H015AA15
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA09
4H015BB03
4H015BB10
4H015CB01
4H061AA03
4H061BB51
4H061CC41
4H061GG19
4H061GG21
(57)【要約】
【課題】竹チップを浸漬する水にグレープフルーツ種子抽出物を含む事を特徴とする竹チップ燃料と肥料の製造方法を提供する。
【解決手段】竹を燃料に適した100mm以下のサイズにチップ化したのち、その竹チップをグレープフルーツ種子抽出物を一定範囲の濃度で含んだ水溶液に大気圧条件下で浸漬し、その後自然乾燥で乾燥させて得る竹チップ燃料と、竹チップを浸漬した後の竹成分抽出液は肥料として利用することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹を燃料に適した100mm以下のサイズにチップ化し、その竹チップをグレープフルーツ種子抽出物を含んだ水溶液に大気圧条件下で浸漬し、その後竹チップは自然乾燥にて乾燥させ、竹チップを浸漬した水溶液は肥料として利用する竹チップ燃料と農業用肥料の製造方法。
【請求項2】
前記竹チップを浸漬するグレープフルーツ種子抽出物の濃度は0.01wt%~2.0wt%の範囲内とする請求項1の竹チップ燃料製造方法。
【請求項3】
前記竹チップをグレープフルーツ種子抽出物を含む水溶液に浸漬する時間は24時間以内で良く、自然乾燥の時間も24時間以内で良い請求項1の竹チップ燃料製造方法。
【請求項4】
前記竹チップをグレープフルーツ種子抽出物を含む水溶液に繰り返し浸漬する日数は8日間以内とする請求項1の竹チップ燃料製造方法。
【請求項5】
前記肥料は水とグレープフルーツ種子抽出物と竹から抽出した成分を含む事を特徴とする請求項1の肥料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、竹チップを浸漬する水にグレープフルーツ種子抽出物を含む事を特徴とする竹チップ燃料と肥料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現状では、竹を燃料として使用する時には、竹中に含まれるカリウムと塩素により燃焼時に問題が生じており、燃料としての使用には適さないとされている。
【0003】
特許文献1では、竹を燃料化する為には、竹を微粒化する装置を使用して微粒化し、微粒化した竹粉末を水または温水に浸漬して水溶性物質を溶出させる溶出装置と、溶出させた竹粉末を脱水する脱水装置と、脱水させた竹チップを貯留するサイロと、燃料に適したサイズに成型するペレット製造装置を必要としていた。(特許文献1参照)
【0004】
さらに、特許文献2ではカリウムの溶出について、温水を使用し、その上撹拌しながら陽イオン交換水を用いる事が、より好ましいとされている。(特許文献2参照)
【0005】
さらには、特許文献1では、溶出した水溶液を肥料として使用できる事が記されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-125030号公報
【特許文献2】特開2017ー105920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これには、次のような欠点があった。
竹の燃料化には従来の方法では、竹から水溶性物質を取り出す為には微粒化が必要であり、温水や乾燥に熱源を必要としていた。
さらには、燃料として使用する際には微粒化したままでは燃料として適さない為、ペレット化する事がより好ましいとされ、微粒化や乾燥、ペレット化の設備を稼働させる為に電力が使用されており、燃料化を行う為に電力や熱源が必要となっている。
【0008】
また、肥料としての利用では、溶出した水溶液が肥料として使用できる事が記されているが、水と竹から抽出した成分が混ざっただけであり、利用できるに留まるものである。
本発明は以上のような欠点をなくす為になされたものである。
【0009】
この状況に発明者は独自の検討の結果、グレープフルーツ種子抽出物を一定範囲の濃度で含んだ水溶液は浸透性が高い事を見出し、竹の多孔質内部に水を送り込む事が可能であるという知見を得た。
【0010】
本発明は、以上の知見に基づくものであり、竹チップの燃料化については微粒化を必要とせずに燃料として適したサイズのまま大気圧状況下で水溶性物質を溶出させ、乾燥についても熱源等を使用せずに自然乾燥で乾燥できる為、電力源を必要とせず竹チップの燃料化と肥料の製造を可能とするものである。
【0011】
また、グレープフルーツ種子抽出物を一定範囲の濃度で含んだ竹抽出成分は、水と竹抽出成分のみと比較して浸透性が高く効率よく土壌に浸透していく事が可能であり、天然の成分でありながら竹成分抽出液をより肥料としての使用に適した状態で提供する事が可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
竹を燃料に適した100mm以下のサイズにチップ化したのち、その竹チップをグレープフルーツ種子抽出物を一定範囲の濃度で含んだ水溶液に大気圧条件下で浸漬し、その後自然乾燥で乾燥させて得る竹チップ燃料と、竹チップを浸漬した後の竹成分抽出液は肥料として利用する。
本発明は、以上の構成よりなる竹チップ燃料と肥料の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法であれば、電力や熱源を使用せず竹チップを原料とした燃料製造方法と肥料製造方法を提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の工程図である。
図2】竹チップの塩素とカリウム残留濃度である。
図3】竹チップの塩素とカリウム残留濃度を濃度別に示したものである。
図4】竹チップを連続して浸漬した時の塩素とカリウムの残留濃度である。
図5】竹チップの発熱量の変化である。
図6】竹成分抽出液の乾燥比較である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
現状、竹は西日本を中心に広く分布しているが、燃料化する際には塩素やカリウムが問題となり利用が進まず、また竹炭や竹細工などで利用はされているが、竹は成長速度が早く使用する量より成長が上回っている事により、放置竹林などの竹害が発生している。
【0016】
そこで、現在では竹から塩素やカリウムを抽出し、ペレット化する事などで燃料としての利用を促したり、燃料以外での利用方法について研究が進められている。
【0017】
次にあげる本発明の実施例は、竹を電力や熱源を使用せず、簡便に竹チップ燃料と肥料の製造を可能とする方法を供給できるようにするものである。
【0018】
以下に本発明の実施形態を記載する。
【実施例0019】
図2を用いて本発明の実施例1を説明する。
【0020】
竹を燃料として適する100mm以下の竹チップとし、未処理の竹チップ100g、竹チップ100gを沸騰させた温水200mlに大気圧条件下で24時間浸漬したもの、竹チップ100gをグレープフルーツ種子抽出物0.1wt%含んだ水溶液200mlに大気圧条件下で24時間浸漬したものを、浸漬後に24時間自然乾燥し塩素とカリウム残留濃度を測定した。
【0021】
実施例の竹チップの塩素とカリウムの残留濃度については、カリウムについては偏向ゼーマン原子吸光光度計((株)日立製作所製、Z-2010)にて行い、塩素についてはイオンクロマトグラフ(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製、DionexICS-5000)にて分析を行い含量を算出した為、計測方法については他実施例については記載を省略する。
【0022】
浸漬する容器については実施例全てにおいて、ポリエステル製の容器を使用した為、以後の実施例では容器の材質については記載を省略する。
【0023】
カリウム濃度は、未処理が0.37%、温水に24時間浸漬したものは0.25%、グレープフルーツ種子抽出物0.1wt%に24時間浸漬したものは0.12%となった。
【0024】
塩素濃度は、未処理が0.34%、温水に24時間浸漬したものは0.09%、グレープフルーツ種子抽出物0.1wt%に24時間浸漬したものは0.02%となった。
【0025】
実施例1より、燃料に適した100mm以下のチップであれば、未処理や温水に浸漬したものは塩素とカリウム残留濃度は高いが、グレープフルーツ種子抽出物0.1wt%含む水溶液に24時間浸漬したものであれば、塩素とカリウムをより溶出させる事ができると分かる。
【実施例0026】
図3を用いて本発明の実施例2を説明する。
【0027】
竹を燃料として適する100mm以下のチップにし、グレープフルーツ種子抽出物の濃度を、0.01wt%、0.1wt%、2.0wt%の濃度に変え、各濃度の水溶液200mlに竹チップ100gを大気圧条件下で24時間浸漬した後に24時間自然乾燥し塩素とカリウムの残留濃度を測定した。
【0028】
カリウム濃度は、グレープフルーツ種子抽出物0.01wt%が0.25%、グレープフルーツ種子抽出物0.1wt%が0.12%、グレープフルーツ種子抽出物2.0wt%が0.12%となった。
【0029】
塩素濃度は、グレープフルーツ種子抽出物0.01wt%が0.03%、グレープフルーツ種子抽出物0.1wt%が0.02%、グレープフルーツ種子抽出物2.0wt%が0.08%となった。
【0030】
実施例2より、グレープフルーツ種子抽出物を0.01wt%~2.0wt%含んだ水溶液であれば、100mm以下の竹チップから塩素とカリウムを大気圧条件下で溶出させる事が可能であると示している。
【実施例0031】
図4を用いて本発明の実施例3を説明する。
【0032】
竹を燃料として適する100mm以下のチップにし、グレープフルーツ種子抽出物0.1wt%を含んだ水溶液2.0Lに、前述竹チップ100gを大気圧条件下で24時間浸漬し、24時間ごとに新しい竹チップ100gに変え繰り返し浸漬と24時間自然乾燥を行った時の、連続浸漬時の竹チップ中の塩素とカリウム残留濃度を測定した。
【0033】
カリウム濃度は、3日目0.23%、5日目0.22%、8日目0.24%となった。
【0034】
塩素濃度は、3日目0.06%、5日目0.11%、8日目0.08%となった。
【0035】
実施例3で連続浸漬を行った際に、9日目より抽出液の粘性が高まり24時間での自然乾燥が行えなくなった為、連続浸漬を行う際には8日以内で行う必要があると分かった。
【実施例0036】
図5を用いて本発明の実施例4を説明する。
【0037】
竹を燃料として適する100mm以下のチップにし、未処理の竹チップとグレープフルーツ種子抽出物0.1wt%に24時間浸漬後に24時間自然乾燥を行った竹チップの発熱量比較を測定した。
【0038】
尚、測定方法としては、竹チップをカーターミルで粉砕し,目開き1mmのふるいで分級した試料で測定を行った。
【0039】
未処理時の竹チップの発熱量が19,642j/gであったのに対して、塩素とカリウムを溶出した竹チップは発熱量が21,437j/gと、約9%程発熱量が上昇しており、グレープフルーツ種子抽出物0.1wt%水溶液で竹チップを浸漬したものの方が発熱量が高くなる事を確認できた。
【0040】
また、今回発熱量を計測した塩素とカリウムを溶出した竹チップの含水量は10%となっており、24時間の自然乾燥で乾燥出来ている事が示された。
【実施例0041】
図6を用いて本発明の実施例5を説明する。
【0042】
グレープフルーツ種子抽出物0.1wt%を含む水溶液2.0Lに竹チップ200gを大気圧条件下で24時間浸漬して得た竹成分抽出液と、水2.0Lに竹チップ200gを大気圧条件下で24時間浸漬して得た竹成分抽出液を、それぞれ20ml容器にとり、100mm角の不織布を容器内の竹成分抽出液に一部当たるようにして容器内に挿入した。
【0043】
その不織布を挿入した容器を風通しの無い冷暗所に置き、自然乾燥のみで乾燥速度を比較したところ、グレープフルーツ種子抽出物を含んだ竹成分抽出液が乾燥した時点で、水に浸漬して得た竹成分抽出液は3ml残っていた。
【0044】
この結果より、グレープフルーツ種子抽出物を含んだ竹成分抽出液の方がより不織布に浸透した事により、乾燥が早かった事が分かる。
【0045】
また、グレープフルーツ種子抽出物は天然原料であり、浸透性を高める為に別途加えるのではなく抽出時に含まれている成分により浸透性が高まるので、より竹成分抽出液の肥料製造に適していると言える。
【0046】
本実施例により、竹チップからの塩素とカリウムの溶出について一切の電力や熱源を使用せず、大気圧条件下での浸漬により塩素とカリウムの残量濃度を減らしつつ、自然乾燥のみで含水量を上げる事なく発熱量を向上させる事ができた結果より、燃料に適したサイズで電力や熱源を使用せずに竹チップ燃料の製造が可能であると言える。
【0047】
また、肥料としてもカリウム、窒素を含む事が確認できており、水または温水で抽出したものより浸透性が高く乾燥性も高い事により、より肥料としての使用に向いた竹成分抽出液の肥料製造が可能であると言える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6