(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060825
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】ポリアミドイミド前駆体またはポリアミドイミドを含む組成物、およびそれを用いて製造されたポリアミドイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 73/14 20060101AFI20230421BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230421BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
C08G73/14
C08J5/18 CFG
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160243
(22)【出願日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0138243
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】パク ジン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒェ リ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スン ミン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J043
5G435
【Fターム(参考)】
4F071AA60X
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5G435GG43
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】本開示は、ポリアミドイミド前駆体および/またはポリアミドイミドを含む組成物、それを用いたポリアミドイミドフィルムおよびディスプレイ装置に関し、本発明に係る組成物を用いて製造されたポリアミドイミドフィルムおよびディスプレイ装置は、機械的物性に優れるとともに優れた光学的物性を有する。
【解決手段】芳香族ジアミンから誘導された単位、芳香族二無水物から誘導された単位、および芳香族二酸二塩化物から誘導された単位を含むポリアミドイミド前駆体またはポリアミドイミドと、溶媒と、を含む組成物であって、前記芳香族ジアミンは、下記式で表される化合物(AB-TFMB)を含み、前記芳香族二無水物は、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)を含み、前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド(TPC)を含む組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミンから誘導された単位、芳香族二無水物から誘導された単位、および芳香族二酸二塩化物から誘導された単位を含むポリアミドイミド前駆体またはポリアミドイミドと、溶媒と、を含む組成物であって、
前記芳香族ジアミンは、下記化学式1で表される化合物(AB-TFMB)を含み、
前記芳香族二無水物は、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)を含み、
前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド(TPC)を含む、組成物。
[化学式1]
【化1】
【請求項2】
前記芳香族ジアミンは、前記化学式1で表される化合物とは異なる第2芳香族ジアミンをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2芳香族ジアミンは、トリフルオロアルキル基で置換された芳香族環を含有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2芳香族ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリアミドイミド前駆体またはポリアミドイミドは、脂肪族環を含有した二無水物から誘導された単位をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記脂肪族環を含有した二無水物は、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記芳香族二酸二塩化物から誘導された単位および芳香族二無水物から誘導された単位の総モル数と、脂肪族環を含有した二無水物から誘導された単位のモル数の比は95:5~10:90である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物の硬化物を含むポリアミドイミドフィルム。
【請求項9】
前記ポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1003の規格に準じて、400nm~700nmで測定された全光線透過率が87.0%以上である、請求項8に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項10】
前記ポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1003の規格に準じて測定されたヘイズが2.0%以下である、請求項8に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項11】
前記ポリアミドイミドフィルムは、ASTM E313の規格に準じて測定された黄色度が7.0以下である、請求項8に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項12】
前記ポリアミドイミドフィルムは、1μm~500μmの厚さを有する、請求項8に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項13】
請求項8に記載のポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリアミドイミド前駆体またはポリアミドイミドを含む組成物、およびそれを用いて製造されたポリアミドイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリイミド系樹脂は、機械的、熱的特性に優れており、回路およびデバイス形成用の絶縁基材分野をはじめとする多様な分野に適用されている。近年、このような特性を用いて、ディスプレイ装置用カバーガラスを高分子素材に代替するための研究開発が進行中である。
【0003】
ポリイミド系樹脂をディスプレイ装置に用いるために求められる主要物性は、光学的特性および機械的特性である。優れた光学的、機械的特性を有するポリイミドを製造するための方法として、透明ポリイミドにジカルボニル化合物を共重合し、この際、ポリイミドの機械的強度を向上させるために、直線性とリジッド性の強い単量体およびジカルボニル化合物の割合を高める方法が報告されている。しかし、直線性とリジッド性の強い単量体の導入割合が高い場合、溶液の取り扱い性が悪くなることにより工程の難易度が上昇するかまたは不可能であるという問題があり、分子間の間隔が密集することになってポリイミド中の電荷移動錯体(Charge Transfer Complex、CTC)の形成増加を引き起こし、光学的特性の劣化が発現されるという問題がある。電荷移動錯体が形成される場合、褐色または黄色に着色され、それによる可視光線領域での透過率が低くなるため、ディスプレイ素材に適用し難いという点がある。また、リジッド性の強い単量体の導入は、高温乾燥工程で白濁化が加速して光学的物性の劣化が発生し、これは、乾燥工程温度の下降が必要であって、十分な生産性の確保が不可能であるかまたは工程適用の難易度を上昇させるという問題がある。
【0004】
また、ポリイミドを無色透明化する方法として、ジアミン成分として脂環族ジアミンや脂肪族ジアミンを用いることで、分子内電荷移動錯体の形成を抑制する方法が知られている。日本公開特許第2002-161136号には、ピロメリット酸二無水物などの芳香族酸二無水物とトランス-1,4-ジアミノシクロヘキサンとからなるポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドが開示されているが、これは、高い透明度を示すものの機械的物性が低下するという問題がある。
【0005】
また、ポリイミドの黄色の色を無色透明な色に転換するための方法として多様な官能性単量体を用いることが試みられているが、重合時に粘度が急激に上昇するかまたは精製が難しいなど、製造工程上の問題により接近が難しいという点があり、透明性を確保する代わりにポリイミド固有の優れた機械的物性が低下するのを解決するには不十分である。
【0006】
そこで、カバーガラス代替素材を含む多様なディスプレイ素材分野に適用できるように、卓越した光学的特性を有しながらも、固有の優れた機械的物性が低下せず、特に高いモジュラスを実現することで、適用範囲をさらに広げられるようにするポリイミドに対する技術開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第10-2018-0018307号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一実施形態は、従来のポリアミドイミドに比べてさらに向上した機械的、光学的物性を有するようにするポリアミドイミド前駆体またはポリアミドイミドを含む組成物を提供する。
【0009】
他の一実施形態は、前記組成物の硬化物を含むポリアミドイミドフィルムおよびそれを含むディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態は、芳香族ジアミンから誘導された単位、芳香族二無水物から誘導された単位、および芳香族二酸二塩化物から誘導された単位を含むポリアミドイミド前駆体またはポリアミドイミドと、溶媒と、を含む組成物であって、
前記芳香族ジアミンは、下記化学式1で表される化合物(以下、AB-TFMBと称する)を含み、前記芳香族二無水物は、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)を含み、前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド(TPC)を含む、組成物を提供する。
【0011】
【0012】
他の一実施形態は、前記組成物の硬化物を含むポリアミドイミドフィルムおよびそれを含むディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
一実施形態に係るポリアミドイミド前駆体および/またはポリアミドイミドを含む組成物、およびそれを用いたポリアミドイミドフィルムは、機械的物性に優れるとともに優れた光学的物性を有するため、ディスプレイ装置に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載された実施の形態は種々の異なる形態に変形されてもよいため、一実施形態に係る技術が以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。さらに、明細書の全体にわたって、ある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0015】
また、本明細書で用いられる技術用語および科学用語は、他の定義がなければ、本明細書に開示された技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有してもよい。
【0016】
本明細書で用いられる数値範囲は、下限値と上限値、その範囲内での全ての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、そのうち限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。一例として、組成の含量が10%~80%または20%~50%に限定された場合、10%~50%または50%~80%の数値範囲も本明細書に記載されたものと解釈しなければならない。本明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生し得る数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0017】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味してもよく、AおよびBの中から択一された態様を意味してもよい。
【0018】
本明細書において、他に定義しない限り、「重合体」は、相対的に高分子量の分子をいい、その構造は、低分子量の分子から誘導された単位の多重繰り返しを含んでもよい。一態様において、重合体は、交互(alternating)共重合体、ブロック(block)共重合体、ランダム(random)共重合体、グラフト(graft)共重合体、グラジエント(gradient)共重合体、分岐(branched)共重合体、架橋(crosslinked)共重合体、またはこれらを全て含む共重合体(例えば、1種よりも多い単量体を含む重合体)であってもよい。他の態様において、重合体は、単独重合体(homopolymer)(例えば、1種の単量体を含む重合体)であってもよい。
【0019】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ポリアミック酸」は、アミック酸(amic acid)モイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリアミドイミド」は、アミドモイエティおよびイミドモイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し得る。
【0020】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、ポリアミドイミドフィルムは、ポリアミドイミドを含むフィルムであってもよく、具体的に、ジアミン化合物溶液に二無水物化合物と二酸二塩化物を溶液重合してポリアミック酸を製造した後、イミド化することで製造される高耐熱性フィルムであってもよい。
【0021】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含む。
【0022】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「置換された」とは、化合物中の水素原子が置換基で置換されたことを意味し、例えば、前記置換基は、重水素、ハロゲン原子(F、Br、Cl、またはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、C2-30アルキニル基、C6-30アリール基、C7-30アリールアルキル基、C1-30アルコキシ基、C1-20ヘテロアルキル基、C3-20ヘテロアリールアルキル基、C3-30シクロアルキル基、C3-15シクロアルケニル基、C6-15シクロアルキニル基、C2-30ヘテロ環基、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0023】
以下、一実施形態に係る組成物を説明する。
一実施形態に係る組成物は、芳香族ジアミンから誘導された単位、芳香族二無水物から誘導された単位、および芳香族二酸二塩化物から誘導された単位を含むポリアミドイミド前駆体および/またはポリアミドイミドと、溶媒と、を含む組成物であって、
前記芳香族ジアミンは、下記化学式1で表される化合物(AB-TFMB)を含んでもよく、前記芳香族二無水物は、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)を含んでもよく、前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド(TPC)を含んでもよい。
【0024】
【0025】
一実施形態において、前記組成物は、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物であってもよい。
一例として、芳香族ジアミンであるAB-TFMBおよび芳香族二酸二塩化物であるTPCと、立体的にかさ高い(bulky)構造のフルオレン(fluorene)を有する芳香族二無水物であるBPAFを組み合わせて用いることで、機械的、光学的物性のいずれにも優れたポリアミドイミドフィルムを提供することができる。具体的に、前記AB-TFMBおよびTPCを用いることは同一であるが、この際、立体的にかさ高いフルオレン構造を含むBPAFの代わりに、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物(4,4’-(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、以下、6FDAと称する)を組み合わせて用いる場合、高温乾燥工程で白濁化が加速し、透明性を確保することができない。これに対し、一実施形態に係る組成物は、AB-TFMB、BPAF、およびTPCを全て含むことで、高温で乾燥する場合にも、光透過率および透明性に顕著に優れ、黄色度が低いため、光学的特性に優れるだけでなく、機械的強度にも顕著に優れたポリアミドイミドフィルムを提供することができる。
【0026】
この際、特定の理論に拘るものではないが、前記AB-TFMBは、分子内に複数のアミド結合を含んでもよく、前記AB-TFMBとTPCの反応によりアミド基がさらに誘導されてもよい。これにより、前記組成物から製造されるポリアミドイミド樹脂中に複数のアミド結合が含まれることで、アミド結合の分子内相互作用および/または分子間相互作用が増加し、機械的物性が大幅に向上することができる。
【0027】
また、特定の理論に拘るものではないが、前記AB-TFMB、TPC、およびBPAFが全て芳香族環を含むことで、ポリアミドイミド樹脂の炭素含量が増加することができる。これにより、さらに優れた機械的物性を有しながらも十分な光学的物性を有するフィルムを提供することができる。
【0028】
前記芳香族ジアミンは、前記AB-TFMBを単独で用いるか、または必要に応じて当該分野で通常用いられる芳香族ジアミンを混合して用いてもよい。例えば、AB-TFMBの他に、AB-TFMBとは異なる第2芳香族ジアミンをさらに含んでもよい。前記第2芳香族ジアミンは、例えば、置換もしくは非置換のC6-30芳香族環を含んでもよく、ここで、芳香族環は、単環であるか;2個以上の芳香族環が縮合した縮合環であるか;または2個以上の芳香族環が単結合、C1-5アルキレン基、O、またはC(=O)により連結された非縮合環であってもよい。または、前記第2芳香族ジアミンは、フッ素置換基が導入されてもよく、フッ素置換基が導入された芳香族ジアミンの使用は、一実施形態に係る組成物から製造された樹脂の光学的特性の向上に役立つことができる。具体的に、前記第2芳香族ジアミンは、1つまたは2つ以上のトリフルオロアルキル基で置換された芳香族環を含んでもよく、前記トリフルオロアルキル基で置換された芳香族環は、トリフルオロアルキル基以外の他の置換基でさらに置換されていても置換されていなくてもよい。
【0029】
前記第2芳香族ジアミンは、具体的に例を挙げると、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン(6FAP)、3,4-オキシジアニリン(ODA)、p-フェニレンジアミン(pPDA)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、p-メチレンジアニリン(pMDA)、m-メチレンジアニリン(mMDA)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(144APB)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4DDS)、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3DDS)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(6HMDA)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の芳香族ジアミンまたはこれらの混合物であってもよく、必ずしもこれに制限されるものではない。より具体的に、前記第2芳香族ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を含んでもよい。
【0030】
前記芳香族ジアミンは、AB-TFMBを単独で用いるか、またはAB-TFMBと第2芳香族ジアミンを混合して用いてもよい。AB-TFMBと第2芳香族ジアミンを混合して用いる場合、これらの混合割合は制限されるものではないが、芳香族ジアミン(から誘導された単位)の総モル数を基準として、AB-TFMB(から誘導された単位)は、例えば、1モル%以上、2モル%以上、5モル%以上、10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、55モル%以上、60モル%以上、または70モル%以上で含まれてもよく、例えば、99モル%以下、98モル%以下、95モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、70モル%以下、65モル%以下、60モル%以下、または50モル%以下で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0031】
前記ポリアミドイミド前駆体および/またはポリアミドイミドは、脂肪族環を含有した二無水物から誘導された単位をさらに含んでもよい。前記脂肪族環を含有した二無水物としては、当該分野で通常用いられる脂肪族環含有二無水物を用いてもよく、必ずしも種類に限定されるものではない。前記脂肪族環含有二無水物は、少なくとも1つの脂肪族環を含む二無水物を意味し、前記脂肪族環は、単環であるか、2個以上の脂肪族環が縮合した縮合環であるか、または2個以上の脂肪族環が単結合、置換もしくは非置換のC1-5アルキレン基、O、またはC(=O)により連結された非縮合環であってもよい。例えば、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CPDA)、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CHDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物(DOCDA)、ビシクロ[2.2.2]-7-オクテン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BTA)、1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタン二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(DM-CBDA)、1,3-ジエチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(DE-CBDA)、1,3-ジフェニル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(DPh-CBDA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物(TDA)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の脂肪族環含有二無水物またはこれらの混合物であってもよい。より具体的に、前記脂肪族環を含有した二無水物は、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)を含んでもよい。
【0032】
前記脂肪族環を含有する二無水物をさらに含む場合、その混合割合は、必ずしも制限されるものではないが、例えば、前記芳香族二酸二塩化物(から誘導された単位)、芳香族二無水物(から誘導された単位)、および脂肪族環含有二無水物(から誘導された単位)の総モル数を基準として、脂肪族環含有二無水物(から誘導された単位)は、1モル%以上、2モル%以上、5モル%以上、10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、55モル%以上、60モル%以上、または70モル%以上で含まれてもよく、99モル%以下、98モル%以下、95モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、70モル%以下、65モル%以下、60モル%以下、または50モル%以下で含まれてもよい。ただし、必ずしも前記範囲に限定されるものではない。
【0033】
前記芳香族二酸二塩化物は、TPC単独、またはTPCと当該分野で通常用いられる芳香族二酸二塩化物を混合して用いてもよい。例えば、イソフタロイルジクロライド(IPC)、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド(BPC)、1,4-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(NPC)、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(NTC)、1,5-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(NEC)、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロライド)(DEDC)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上またはこれらの混合物を用いてもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。前記芳香族二酸二塩化物により高分子鎖中にアミド構造が形成される場合、光学的物性の向上だけでなく、特にモジュラスなどの機械的強度をさらに改善させることができる。
【0034】
前記TPC(から誘導された単位)は、一実施形態に係る組成物に、芳香族二無水物(から誘導された単位)および芳香族二酸二塩化物(から誘導された単位)の総モル数を基準として、例えば、1モル%以上、2モル%以上、5モル%以上、10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、55モル%以上、60モル%以上、または70モル%以上で含まれてもよく、例えば、99モル%以下、95モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、または70モル%以下で含まれてもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。一実施形態に係る組成物は、TPCを含むことで、ポリアミドイミドフィルムのモジュラスなどの機械的物性がさらに増加するだけでなく、厚さ方向のレターデーション増加や、光学的物性の劣化を減少させることができるため、それをディスプレイ装置などに適用しても画面歪みを減少させることができる。
【0035】
一実施形態において、前記BPAFは、立体的にかさ高いフルオレン構造を有することで、リジッド性の強い前駆体の組成が高温工程においても光学的劣化(白濁化)を抑制できるようにする。この際、BPAFは、単独で用いるか、または当該分野で通常用いられる芳香族二無水物を混合して用いてもよい。この際、前記芳香族二無水物は、少なくとも1つの芳香族環を含む二無水物を意味し、前記芳香族環は、単環であるか、2個以上の芳香族環が縮合した縮合環であるか、または2個以上の芳香族環が単結合、置換もしくは非置換のC1-5アルキレン基、O、またはC(=O)により連結された非縮合環であってもよい。例えば、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、(イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(6HDBA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物(TDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(カルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)、またはこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の脂肪族環含有二無水物またはこれらの混合物であってもよい。
【0036】
前記BPAF(から誘導された単位)は、一実施形態に係る組成物に、芳香族二無水物(から誘導された単位)および芳香族二酸二塩化物(から誘導された単位)の総モル数を基準として、1モル%以上、2モル%以上、5モル%以上、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、55モル%以上、60モル%以上、または70モル%以上で含まれてもよく、例えば、99モル%以下、95モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、70モル%以下、60モル%以下、50モル%以下、45モル%以下、または40モル%以下で含まれてもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0037】
一実施形態に係る組成物に、前記脂肪族環を含有する二無水物がさらに含まれる場合には、前記芳香族二酸二塩化物(から誘導された単位)および芳香族二無水物(から誘導された単位)の総モル数と、脂肪族環を含有する二無水物(から誘導された単位)のモル数の比は99:1~1:99、95:5~10:90、95:5~30:70、95:5~40:60、90:10~30:70、80:20~30:70、80:20~45:55、80:20~40:60、または75:25~45:65であってもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。この際、前記モル比は、芳香族ジアミン(から誘導された単位)のモル数を100とする際のモル比であってもよい。
前記含量範囲は、目的とする物性を満たすために例示する一例であって、単量体の組成に応じて変更可能であり、これに制限されない。
【0038】
前記組成物は、通常用いられる溶媒を含んでもよい。前記溶媒は、有機溶媒であってもよく、具体的に、極性溶媒であってもよく、より具体的に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルスルホキシド(DMSO)、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、アセトン、エチルアセテート、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン(GBL)、およびこれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上であってもよいが、これに限定されない。
【0039】
前記組成物は、前述した構成の他に、必要に応じて添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤は、膜の形成、接着性、光学的物性、機械的物性、難燃性などを向上させるためのものであってもよく、例えば、難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤、および/または可塑剤であってもよいが、これに限定されない。
【0040】
前記組成物は、芳香族ジアミン、芳香族二無水物、および芳香族二酸二塩化物を含む全ての単量体を添加完了した後、沈殿させる方法で製造されてもよく、芳香族ジアミンおよび芳香族二酸二塩化物を混合した後に先に沈殿させた後、残りの単量体を混合する方法で製造されてもよい。
【0041】
他の一実施形態は、前記一実施形態に係る組成物の硬化物を含むポリアミドイミドフィルムを提供する。
この際、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1003の規格に準じて、400nm~700nmで測定された全光線透過率が87.0%以上であるか、または87.5%以上、88.0%以上、88.3%以上、88.5%以上、89.0%以上、89.5%以上、または90.0%以上であってもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0042】
また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1003の規格に準じて測定されたヘイズが2.0%以下であるか、または1.5%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.0以下%、0.9以下%、0.8以下%、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、または0.4%以下であってもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0043】
また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、ASTM E313の規格に準じて測定された黄色度が7.0以下、6.5以下、6.0以下、5.8以下、5.5以下、5.0以下、4.5以下、または4.0以下であってもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0044】
また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、ASTM D882の規格に準じて測定されたモジュラスが6.0GPa以上であるか、または6.5GPa以上、6.8GPa以上、7.0GPa以上、7.5GPa以上、8.0GPa以上、または9.5GPa以上であってもよい。
【0045】
前記ポリアミドイミドの物性値は、80℃~100℃、85℃~95℃、または約90℃で乾燥工程を経たポリアミドイミドフィルムを測定して導出した値であってもよく、または110℃~160℃、120℃~160℃、130℃~150℃、または約140℃の高温で乾燥工程を経たポリアミドイミドフィルムを測定して導出した値であってもよい。
【0046】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、一実施形態に係るAB-TFMBから誘導された単位、BPAFから誘導された単位、およびTPCから誘導された単位の組み合わせを含むポリアミドイミド前駆体および/またはポリアミドイミドを含む組成物を用いて製造することで、目的のとおり、光透過率が87.0%以上であり、ヘイズが2.0%以下であり、黄色度が7.0以下であり、モジュラスが6.0GPa以上である物性を同時に満たすフィルムを提供することができる。
【0047】
前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さが1μm~500μm、10μm~250μm、10μm~100μm、20μm~100μm、または20μm~80μmであってもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0048】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、前記一実施形態に係るポリアミドイミド前駆体および/またはポリアミドイミドおよび溶媒を含む組成物を基材上に塗布した後、乾燥および/または延伸して製造されるか、または溶液キャスティング方法で製造されてもよい。
【0049】
より具体的に、前記一実施形態に係るポリアミドイミド前駆体および/またはポリアミドイミドおよび溶媒をイミド化してポリアミドイミド樹脂を製造するステップと、前記ポリアミドイミド樹脂を有機溶媒に溶解させた樹脂組成物を基材上に塗布して製膜するステップと、を含んで製造されてもよい。
【0050】
前記有機溶媒は、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルスルホキシド(DMSO)、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、アセトン、エチルアセテート、m-クレゾール、γーブチロラクトン(GBL)、およびこれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の極性溶媒であってもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0051】
前記イミド化は、イミド化触媒および脱水剤の中から選択されたいずれか1つまたは2つ以上用いて化学的イミド化により行われてもよい。前記イミド化触媒としては、ピリジン(pyridine)、イソキノリン(isoquinoline)、およびβ-キノリン(β-quinoline)などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を用いてもよい。また、脱水剤としては、酢酸無水物(acetic anhydride)、フタル酸無水物(phthalic anhydride)、およびマレイン酸無水物(maleic anhydride)などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を用いてもよい。ただし、前記イミド化触媒および脱水剤としては、通常用いられるものを選択して用いてもよく、必ずしも前記種類に制限されるものではない。
【0052】
また、前記ポリアミドイミド樹脂を製造するステップは、前記ポリアミック酸溶液に難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤、および可塑剤などの添加剤を混合してポリアミドイミド樹脂を製造してもよい。また、イミド化後、溶媒を用いて樹脂を精製して固形分を得、それを溶媒に溶解させてポリアミドイミド樹脂組成物を得ることができる。この際、溶媒は、例えば、DMAcなどを含んでもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0053】
前記製膜ステップは、ポリアミドイミド樹脂組成物を基材に塗布した後、熱処理してフィルムを成形するステップである。基材は、例えば、ガラス、ステンレス、またはフィルムなどを用いてもよく、塗布は、ダイコータ、エアナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、スピンコーティングなどにより行われてもよい。
【0054】
前記熱処理は、例えば、段階的に行われてもよい。例えば、70℃~160℃で1分~2時間一次乾燥し、150℃~450℃で1分~2時間二次乾燥して段階的な熱処理をして行われてもよい。しかし、必ずしも前記温度および時間条件に制限されるものではなく、例えば、前記一次乾燥は、25℃~220℃、80℃~150℃、70℃~110℃、130℃~150℃、90℃、120℃、または140℃で、1分~300分、10分~150分、10分~90分、20分~60分、または30分間行ってもよく、前記二次乾燥は、200℃~500℃、200℃~300℃、220℃~300℃、または250℃~300℃で、1分~300分、10分~150分、10分~90分、30分~90分、または40分~80分間行ってもよい。この際、段階的な熱処理は、各段階に移動時、好ましくは、1~20℃/minの範囲で昇温させてもよい。また、熱処理は、別の真空オーブンまたは不活性気体で充填されたオーブンなどで行ってもよく、必ずしもこれに制限されるものではない。また、塗布は、アプリケータ(applicator)を用いて、支持体上にフィルムに成形してもよい。
【0055】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、前記一次乾燥時、約140℃の高温下で乾燥工程を行っても光学的劣化(白濁化)が抑制される効果を有するため、量産に十分な生産性の確保が可能である。
【0056】
他の一実施形態は、前記一実施形態が提供するポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置を提供する。また、一実施形態に係るポリアミドイミドを用いて多様な形態の成形品を製造することができる。例えば、保護膜または絶縁膜を含むプリント配線板、フレキシブル回路基板、カバーガラスを代替可能な保護フィルムに適用することができ、ウィンドウカバーフィルム、フレキシブルディスプレイパネルを含めて多様な産業分野におけるその応用の幅が広いという長所がある。
【0057】
前記ウィンドウカバーフィルムは、フレキシブルディスプレイ装置の最外面ウィンドウ基板として用いることができる。フレキシブルディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置であってもよい。一実施形態が提供するウィンドウカバーフィルムを含むディスプレイ装置は、表示される表示品質に優れるだけでなく、光による歪み現象が顕著に低減されることで、優れた視認性によりユーザの目の疲労感を最小化させることができる。
【0058】
以下、実施例および実験例を下記に具体的に例示して説明する。ただし、後述する実施例および実験例は、一実施態様の一部を例示するものにすぎないため、本明細書に記載された技術がこれに限定されるものと解釈してはならない。
【0059】
<測定方法>
1.光透過率(Total Transmittance、Tt)
実施例および比較例で製造されたフィルムを、ASTM D1003の規格に準じて、光透過率測定器(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いて、400nm~700nmの波長領域の全体で全光線透過率(%)を測定した。
【0060】
2.ヘイズ(Haze)
実施例および比較例で製造されたフィルムの透明性を測定するために、ASTM D1003の規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いてヘイズ(%)値を測定した。
【0061】
3.黄色度(Yellow Index、YI)
実施例および比較例で製造されたフィルムを、ASTM E313の規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いて黄色度を測定した。
【0062】
4.モジュラス(Modulus)
実施例および比較例で製造された長さ50mmおよび幅10mmのポリアミドイミドフィルムを25℃で50mm/minで引っ張る条件で、Instron社のUTM 3365を用いて、ASTM D882の規格に準じてモジュラス(GPa)を測定した。
【0063】
<実施例1>
窒素雰囲気下で、反応器にDMAc、TFMB、およびAB-TFMBを入れて十分に撹拌させた後、CBDAを入れ、溶解するまで十分に撹拌した。その次に、BPAFおよびTPCを入れ、6時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、ジアミン単量体TFMB:AB-TFMBのモル比は50:50とし、その他の単量体TPC:BPAF:CBDAのモル比は35:15:50とした。また、固形分含量は11.0重量%となるように調節し、反応器の温度は40℃に維持した。
【0064】
次いで、溶液にピリジンと酢酸無水物をそれぞれCBDAとBPAFの2.5倍モルで投入し、60℃で6時間撹拌した。その後、溶液を過量のメタノールに沈殿させ、濾過して得られた固形分を80℃で6時間以上真空乾燥し、ポリアミドイミドパウダーを得た。得られたポリアミドイミドパウダー12gをDMAc 88gに溶かし、ガラス基板上にアプリケータ(applicator)を用いて溶液キャスティングを行った。最終溶液の粘度は、25℃で、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計を用いて測定した結果、25,000cpsであった。その後、対流オーブンを用いて、90℃、140℃の温度でそれぞれ30分間一次乾燥した後、窒素条件下で、280℃の温度で1時間さらに熱処理した後に常温に冷却させ、ガラス基板上に形成されたフィルムを基板から分離し、ポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0065】
<実施例2~実施例7>
前記実施例1と同様の方法で実施例2~実施例7のポリアミドイミドフィルムを製造するが、単量体TFMB:AB-TFMB、TPC:BPAF:CBDAのモル比を下記表1に記載されたモル比にしてポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0066】
<実施例8>
前記実施例1と同様の方法でポリアミドイミドフィルムを製造するが、
窒素雰囲気下で、反応器にDMAcおよびAB-TFMBを入れて十分に撹拌させた後、BPAFおよびTPCを入れ、6時間撹拌して溶解および反応させてポリアミック酸樹脂組成物を製造し、この際、単量体TPC:BPAFのモル比を55:45にしてポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0067】
<実施例9>
前記実施例1と同様の方法でポリアミドイミドフィルムを製造するが、
窒素雰囲気下で、反応器にDMAcおよびAB-TFMBを入れて十分に撹拌させた後、CBDAを入れ、溶解するまで十分に撹拌した。その次に、BPAFおよびTPCを入れ、6時間撹拌して溶解および反応させてポリアミック酸樹脂組成物を製造し、この際、単量体TPC:BPAF:CBDAのモル比を55:15:30にしてポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0068】
<比較例1~比較例4>
前記実施例1と同様の方法で比較例1~比較例4のポリアミドイミドフィルムを製造するが、芳香族二無水物としてBPAFの代わりに6FDAを用い、単量体TFMB:AB-TFMB、TPC:6FDA:CBDAのモル比を下記表1に記載されたモル比にしてポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0069】
<実験例1>膜形成性の評価
前記実施例および比較例で製造されたポリアミドイミドフィルムの厚さを薄膜厚さ測定器(TESA社のμ-hite)でそれぞれ3回ずつ測定し、その平均値を下記表1に記載した。測定の結果、実施例1~実施例9のポリアミドイミドフィルムは、フレキシブルウィンドウカバーフィルムとして用いるのに十分な厚さを有する膜を形成可能であることを確認することができた。
【0070】
【0071】
<実験例2>ポリアミドイミドフィルムの物性分析
前記実施例および比較例で製造されたポリアミドイミドフィルムの一次乾燥温度(90℃、140℃)に応じた物性を確認するために、前記測定方法により光透過率、ヘイズ、黄色度、およびモジュラスを測定し、その結果を下記表2に示した。
【0072】
【0073】
前記表2を参照すると、実施例によるポリアミドイミド前駆体組成物および/またはポリアミドイミドを含む組成物を用いたポリアミドイミドフィルムは、フレキシブルウィンドウカバーフィルムとして用いるのに十分な厚さを有するポリアミドイミドフィルムを形成することができ、90℃の温度で乾燥工程を行った場合だけでなく、140℃の高温で乾燥工程を行った場合にも、光透過率(Tt)が全て88%以上と優れ、高温で白濁化が効果的に抑制されたことが分かる。それのみならず、ヘイズが1.5%以下と透明性に非常に優れ、黄色度も140℃で全て7以下であった。すなわち、実施例によるポリアミドイミド前駆体組成物および/またはポリアミドイミドを含む組成物を用いたフィルムは、90℃で乾燥した場合と比べる際に、140℃で乾燥しても、光学的、機械的物性に大きい差を示さず、十分な厚さを有しながらも、優れた光学的特性および機械的特性が全て維持され、フレキシブルウィンドウカバーフィルムとして用いるのに好適であることを確認することができる。
【0074】
これに対し、比較例1~比較例4は、140℃の高温で乾燥工程を行った場合、光透過率が全て89%以下であって、実施例のフィルムよりも光透過率が低く、ヘイズが2.0以上と透明性が非常に低く、さらには、黄色度も比較例3を除いては全て6以上と光学的劣化が加速化されたことが分かる。
【0075】
以上、一実施形態を実施例および実験例により詳しく説明したが、一実施形態の範囲は、特定の実施例に限定されるものではなく、後述の特許請求の範囲により解釈されなければならない。