(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060844
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】新規なジアミン化合物、それを用いたポリイミド前駆体およびポリイミド、それを用いたポリイミドフィルム形成用組成物およびフィルム、並びにその用途
(51)【国際特許分類】
C07C 233/80 20060101AFI20230421BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20230421BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
C07C233/80 CSP
C08G73/10
C08J5/18 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166869
(22)【出願日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】10-2021-0138667
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】クァク ヒョ シン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒェ リ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒュン キュ
【テーマコード(参考)】
4F071
4H006
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AC12
4F071AE19
4F071AF20Y
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH16
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4H006AA01
4H006AB46
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM71
4H006BU46
4H006BV74
4J043PA06
4J043PA09
4J043PA18
4J043PA19
4J043PC145
4J043QB15
4J043QB23
4J043QB26
4J043RA06
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA42
4J043SA54
4J043SA71
4J043SB03
4J043TA26
4J043TA66
4J043TA70
4J043TA71
4J043TB04
4J043UA022
4J043UA032
4J043UA042
4J043UA082
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA141
4J043UA151
4J043UA152
4J043UA181
4J043UA232
4J043UA261
4J043UA262
4J043UA561
4J043UB021
4J043UB022
4J043UB061
4J043UB062
4J043UB121
4J043UB131
4J043UB132
4J043UB152
4J043UB231
4J043UB301
4J043UB302
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA011
4J043VA022
4J043VA041
4J043VA042
4J043VA051
4J043VA062
4J043VA081
4J043XA14
4J043XA15
4J043XA16
4J043XA18
4J043XA19
4J043YA08
4J043ZA32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた機械的物性および光学的物性を同時に実現可能なポリイミドフィルムを製造できる単量体である、新規な構造のジアミン化合物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】下記化学式で表されるジアミン化合物。
(R
1~R
3およびR
11~R
14は、各々独立に、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲン;a~cは、各々独立に、0または1;p~sは、各々独立に、0または1;nは、1~5の整数)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるジアミン化合物。
[化学式1]
【化1】
(前記化学式1中、
A~C環は、それぞれ独立して、(C6-C20)芳香族環であり、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、(C1-C10)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C10)シクロアルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルキルカルボニル、(C1-C10)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、-SiR
aR
bR
c、-NR
dR
e、-COOH、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
R
4~R
7は、それぞれ独立して、(C1-C10)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C10)シクロアルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルキルカルボニル、(C1-C10)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、(C1-C10)アルコキシ、-SiR
aR
bR
c、-NR
dR
e、-COOH、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
前記R
4~R
7のうち少なくとも1つは、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルキルカルボニル、(C1-C10)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、-SiR
aR
bR
c、ニトロ、またはシアノであり、
R
aは、(C1-C10)アルキルであり、
R
b~R
eは、それぞれ独立して、水素、(C1-C10)アルキル、または(C6-C20)アリールであり、
a~cは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
d~gは、それぞれ独立して、1~4の整数である。)
【請求項2】
前記化学式1で表されるジアミン化合物は、下記化学式2で表される、請求項1に記載のジアミン化合物。
[化学式2]
【化2】
(前記化学式2中、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C6-C12)アリール、(C3-C7)シクロアルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、-SiR
aR
bR
c、-NR
dR
e、-COOH、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
R
4~R
7は、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C6-C12)アリール、(C3-C7)シクロアルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、(C1-C7)アルコキシ、-SiR
aR
bR
c、-NR
dR
e、-COOH、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
前記R
4~R
7のうち少なくとも1つは、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、-SiR
aR
bR
c、ニトロ、またはシアノであり、
R
aは、(C1-C7)アルキルであり、
R
b~R
eは、それぞれ独立して、水素、(C1-C7)アルキル、または(C6-C12)アリールであり、
a~cは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
d~gは、それぞれ独立して、1~3の整数である。)
【請求項3】
前記化学式1で表されるジアミン化合物は、下記化学式3で表される、請求項1に記載のジアミン化合物。
[化学式3]
【化3】
(前記化学式3中、
R
1~R
3およびR
11~R
14は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲンであり、
a~cは、それぞれ独立して、0または1であり、
p~sは、それぞれ独立して、0または1であり、
nは、1~5の整数である。)
【請求項4】
前記化学式1で表されるジアミン化合物は、下記化学式4で表される、請求項1に記載のジアミン化合物。
[化学式4]
【化4】
(前記化学式4中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲンであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。)
【請求項5】
前記化学式1で表されるジアミン化合物は、下記から選択される、請求項1に記載のジアミン化合物。
【化5】
【化6】
【化7】
上記中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、フルオロまたはトリフルオロメチルであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。
【請求項6】
下記化学式11で表されるジアミン化合物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位を含む、ポリイミド前駆体。
[化学式11]
【化8】
(前記化学式11中、
A
1~C
1環は、それぞれ独立して、(C6-C20)芳香族環であり、
R
21~R
27は、それぞれ独立して、(C1-C10)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C10)シクロアルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルキルカルボニル、(C1-C10)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、(C1-C10)アルコキシ、-SiR
aR
bR
c、-NR
dR
e、-COOH、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
R
aは、(C1-C10)アルキルであり、
R
b~R
eは、それぞれ独立して、水素、(C1-C10)アルキル、または(C6-C20)アリールであり、
a~cは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
d~gは、それぞれ独立して、1~4の整数である。)
【請求項7】
前記化学式11で表されるジアミン化合物は、下記化学式12で表される、請求項6に記載のポリイミド前駆体。
[化学式12]
【化9】
(前記化学式12中、
R
21~R
27は、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C6-C12)アリール、(C3-C7)シクロアルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、(C1-C7)アルコキシ、-SiR
aR
bR
c、-NR
dR
e、-COOH、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
R
aは、(C1-C7)アルキルであり、
R
b~R
eは、それぞれ独立して、水素、(C1-C7)アルキル、または(C6-C12)アリールであり、
a~cは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
d~gは、それぞれ独立して、1~3の整数である。)
【請求項8】
前記化学式11で表されるジアミン化合物は、下記化学式13-1または13-2で表される、請求項6に記載のポリイミド前駆体。
[化学式13-1]
【化10】
[化学式13-2]
【化11】
(前記化学式13-1および13-2中、
R
31~R
34は、それぞれ独立して、(C1-C5)アルキルであり、
R
21~R
23およびR
41~R
44は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲンであり、
a~cは、それぞれ独立して、0または1であり、
p~sは、それぞれ独立して、0または1であり、
nは、1~5の整数である。)
【請求項9】
前記化学式11で表されるジアミン化合物は、下記化学式14-1または14-2で表される、請求項6に記載のポリイミド前駆体。
[化学式14-1]
【化12】
[化学式14-2]
【化13】
(前記化学式14-1および14-2中、
R
21およびR
22は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲンであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。)
【請求項10】
前記化学式11で表されるジアミン化合物は、下記構造から選択される、請求項6に記載のポリイミド前駆体。
【化14】
【化15】
上記中、R
21およびR
22は、それぞれ独立して、フルオロまたはトリフルオロメチルであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。
【請求項11】
2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを含む芳香族ジアミン化合物から誘導された構造単位をさらに含む、請求項6に記載のポリイミド前駆体。
【請求項12】
前記二無水物は、芳香族二無水物、脂環族二無水物、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載のポリイミド前駆体。
【請求項13】
前記芳香族二無水物は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物を含み、前記脂環族二無水物は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含む、請求項12に記載のポリイミド前駆体。
【請求項14】
芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位をさらに含む、請求項6に記載のポリイミド前駆体。
【請求項15】
前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド、イソフタロイルジクロライド、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、および1,5-ナフタレンジカルボン酸ジクロライドからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上である、請求項14に記載のポリイミド前駆体。
【請求項16】
請求項6~15のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体から形成される、ポリイミド。
【請求項17】
請求項6~15のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体、前記ポリイミド前駆体から形成されたポリイミド、またはこれらの組み合わせを含む、ポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項18】
請求項17に記載のポリイミドフィルム形成用組成物から形成される、ポリイミドフィルム。
【請求項19】
ASTM D882に準じたモジュラスが6GPa以上である、請求項18に記載のポリイミドフィルム。
【請求項20】
請求項18に記載のフィルムを含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
新規なジアミン化合物、および前記ジアミン化合物から製造されるポリイミド前駆体とポリイミドに関する。
また、前記ポリイミド前駆体およびポリイミドを含むポリイミドフィルム形成用組成物、ポリイミドフィルム、並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
高度の耐熱性を有し、軽く、かつ、柔軟な素材としてポリイミド(polyimide、PI)が着目されている。ポリイミドは、合成しやすく、薄膜型フィルムに作製できるだけでなく、優れた物性を有する高分子物質として多様な産業分野で脚光を浴びている材料である。
【0003】
特に、近年、ディスプレイ装置の軽量化、スリム化、およびフレキシブル化が重要視されるにつれ、既存のディスプレイ装置に広く用いられてきたガラス基板、カバーガラスなどをポリイミドに代替するための研究が活発に行われている。次世代ディスプレイ装置に適用するためには、優れた光学的物性の確保はいうまでもなく、機械的物性の向上が伴わなければならないため、ディスプレイ装置用ポリイミドの要求性能は益々高度化している。
【0004】
このために、透明ポリイミド(Colorless polyimide、CPI)に直線性とリジッド性の強い単量体を組み合わせるかまたはアミド基を導入して機械的物性を向上させるための研究が行われている。しかし、ポリイミドの光学的物性と機械的物性はトレードオフ(trade-off)関係にあり、このような試みは、ポリイミドの機械的物性が向上しても光学的物性が劣化する限界がある。また、ポリイミドの溶液の取り扱い性を低下させる問題があるため、工程の難易度が上昇するかまたは樹脂を得ることが不可能で限界がある。
【0005】
そこで、無色透明な性能を有しながらも、向上した機械的物性、特に優れたモジュラスを実現することで、適用範囲をさらに広げることができるポリイミドの開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、優れた機械的物性および光学的物性を同時に実現可能なポリイミドフィルムを製造できる単量体である、新規な構造のジアミン化合物およびその製造方法を提供する。
【0007】
また、一実施形態は、前記新規なジアミン化合物から誘導された構造単位を含むポリイミド前駆体およびポリイミドを提供する。
また、一実施形態は、前記ポリイミド前駆体および/またはポリイミドを含むポリイミドフィルム形成用組成物を提供する。
【0008】
また、一実施形態は、前記ポリイミドフィルム形成用組成物を用いた高強度の無色透明なポリイミドフィルムを提供する。
また、一実施形態は、前記ポリイミドフィルムを含む多層構造体およびディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係るジアミン化合物は、下記化学式1で表されてもよい。
【0010】
【0011】
(前記化学式1中、
A~C環は、それぞれ独立して、(C6-C20)芳香族環であり、
R1~R3は、それぞれ独立して、(C1-C10)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C10)シクロアルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルキルカルボニル、(C1-C10)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、-SiRaRbRc、-NRdRe、-COOH、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
R4~R7は、それぞれ独立して、(C1-C10)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C10)シクロアルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルキルカルボニル、(C1-C10)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、(C1-C10)アルコキシ、-SiRaRbRc、-NRdRe、-COOH、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
前記R4~R7のうち少なくとも1つは、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルキルカルボニル、(C1-C10)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、-SiRaRbRc、ニトロ、またはシアノであり、
Raは、(C1-C10)アルキルであり、
Rb~Reは、それぞれ独立して、水素、(C1-C10)アルキル、または(C6-C20)アリールであり、
a~cは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
d~gは、それぞれ独立して、1~4の整数である。)
【0012】
一実施形態に係る前記化学式1で表されるジアミン化合物は、下記化学式2で表されてもよい。
【0013】
【0014】
(前記化学式2中、
R1~R3は、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C6-C12)アリール、(C3-C7)シクロアルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、-SiRaRbRc、-NRdRe、-COOH、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
R4~R7は、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C6-C12)アリール、(C3-C7)シクロアルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、(C1-C7)アルコキシ、-SiRaRbRc、-NRdRe、-COOH、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
前記R4~R7のうち少なくとも1つは、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、-SiRaRbRc、ニトロ、またはシアノであり、
Raは、(C1-C7)アルキルであり、
Rb~Reは、それぞれ独立して、水素、(C1-C7)アルキル、または(C6-C12)アリールであり、
a~cは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
d~gは、それぞれ独立して、1~3の整数である。)
【0015】
一実施形態に係る前記化学式1で表されるジアミン化合物は、下記化学式3で表されてもよい。
【0016】
【0017】
(前記化学式3中、
R1~R3およびR11~R14は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲンであり、
a~cは、それぞれ独立して、0または1であり、
p~sは、それぞれ独立して、0または1であり、
nは、1~5の整数である。)
【0018】
一実施形態に係る前記化学式1で表されるジアミン化合物は、下記化学式4で表されてもよい。
【0019】
【0020】
(前記化学式4中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲンであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。)
【0021】
一実施形態に係る前記化学式1で表されるジアミン化合物は、下記から選択されてもよい。
【化5】
【化6】
【化7】
【0022】
(上記中、R1およびR2は、それぞれ独立して、フルオロまたはトリフルオロメチルであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。)
【0023】
また、一実施形態は、下記化学式11で表されるジアミン化合物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位を含む、ポリイミド前駆体を提供する。
【0024】
【0025】
(前記化学式11中、
A1~C1環は、それぞれ独立して、(C6-C20)芳香族環であり、
R21~R27は、それぞれ独立して、(C1-C10)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C10)シクロアルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルキルカルボニル、(C1-C10)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、(C1-C10)アルコキシ、-SiRaRbRc、-NRdRe、-COOH、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
Raは、(C1-C10)アルキルであり、
Rb~Reは、それぞれ独立して、水素、(C1-C10)アルキル、または(C6-C20)アリールであり、
a~cは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
d~gは、それぞれ独立して、1~4の整数である。)
【0026】
一実施形態に係る前記化学式11で表されるジアミン化合物は、下記化学式12で表されてもよい。
【0027】
【0028】
(前記化学式12中、
R21~R27は、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C6-C12)アリール、(C3-C7)シクロアルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、(C1-C7)アルコキシ、-SiRaRbRc、-NRdRe、-COOH、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
Raは、(C1-C7)アルキルであり、
Rb~Reは、それぞれ独立して、水素、(C1-C7)アルキル、または(C6-C12)アリールであり、
a~cは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
d~gは、それぞれ独立して、1~3の整数である。)
【0029】
一実施形態に係る前記化学式11で表されるジアミン化合物は、下記化学式13-1または13-2で表されてもよい。
【0030】
【0031】
【0032】
(前記化学式13-1および13-2中、
R31~R34は、それぞれ独立して、(C1-C5)アルキルであり、
R21~R23およびR41~R44は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲンであり、
a~cは、それぞれ独立して、0または1であり、
p~sは、それぞれ独立して、0または1であり、
nは、1~5の整数である。)
【0033】
一実施形態に係る前記化学式11で表されるジアミン化合物は、下記化学式14-1または14-2で表されてもよい。
【0034】
【0035】
【0036】
(前記化学式14-1および14-2中、
R21およびR22は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲンであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。)
【0037】
一実施形態に係る前記化学式11で表されるジアミン化合物は、下記構造から選択されてもよい。
【化14】
【化15】
【0038】
(上記中、R21およびR22は、それぞれ独立して、フルオロまたはトリフルオロメチルであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。)
【0039】
一実施形態に係る前記ポリイミド前駆体は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを含む芳香族ジアミン化合物から誘導された構造単位をさらに含んでもよい。
【0040】
一実施形態に係る前記二無水物は、芳香族二無水物、脂環族二無水物、またはこれらの組み合わせから選択されてもよい。
一実施形態に係る前記芳香族二無水物は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物を含み、前記脂環族二無水物は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
【0041】
一実施形態に係る前記ポリイミド前駆体は、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位をさらに含んでもよい。
一実施形態に係る前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド、イソフタロイルジクロライド、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、および1,5-ナフタレンジカルボン酸ジクロライドからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上であってもよい。
【0042】
また、一実施形態は、前記ポリイミド前駆体から形成される、ポリイミドを提供する。
また、一実施形態は、前記ポリイミド前駆体、前記ポリイミド前駆体から形成されたポリイミド、またはこれらの組み合わせを含む、ポリイミドフィルム形成用組成物を提供する。
【0043】
また、一実施形態は、前記ポリイミドフィルム形成用組成物から形成される、ポリイミドフィルムを提供する。
一実施形態に係る前記ポリイミドフィルムは、ASTM D882に準じたモジュラスが6GPa以上であってもよい。
また、一実施形態は、前記フィルムを含む、ディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0044】
一実施形態に係る新規なジアミン化合物を用いて製造されたポリイミドフィルムは、優れた機械的物性および光学的物性を同時に実現することができる。
具体的に、一実施形態に係る新規なジアミン化合物は、機械的物性を向上できる単位と、電荷移動錯体(Charge Transfer Complex、CTC)効果を減少できる単位を同時に有する構造であり、ポリイミドフィルムの黄色度および透明度が低下することなく機械的強度をさらに効果的に向上させることができる。
【0045】
また、一実施形態に係るジアミン化合物は、溶液の取り扱い性に優れ、製造工程性を改善することができる。
すなわち、一実施形態に係るジアミン化合物は、無色透明でありながらも、モジュラスが高く、機械的強度に優れたポリイミドフィルムを提供できるだけでなく、製造工程性にも優れ、ディスプレイ装置を含む多様な産業分野に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、他に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本発明における説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限するためのものではない。
本明細書で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図し得る。
【0047】
本明細書の用語、「含む」とは、「備える」、「含有する」、「有する」、または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であって、追加的に列挙されていない要素、材料、または工程を排除するものではない。
本明細書の用語、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味してもよく、AおよびBの中から択一された態様を意味してもよい。
【0048】
本明細書の用語、「重合体」は、オリゴマーを含み、単独重合体および共重合体を含む。前記共重合体は、交互重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、分岐共重合体、架橋共重合体、またはこれらを全て含んでもよい。
【0049】
本明細書の用語、「ポリアミック酸」は、アミック酸(amic acid)モイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリイミド」は、イミドモイエティを有する構造単位を含む重合体を意味するものであって、ポリイミドまたはポリアミドイミドを含む意味として用いられてもよい。
【0050】
本明細書の用語、「ポリイミド系高分子」は、ポリイミドおよびポリイミド前駆体(すなわち、ポリアミック酸またはポリアミック酸エステル)を全て含むものを意味する。
本明細書の用語、「CA-CB」は、「炭素数がA以上B以下」であることを意味し、用語、「A~B」は、「A以上B以下」であることを意味する。
【0051】
本明細書の用語、「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)原子を意味し得る。
本明細書の用語、「アルキル」は、1つの水素除去により脂肪族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、直鎖状または分岐鎖状のいずれを含んでもよい。前記アルキルは、1~10個の炭素原子、具体的に1~7個の炭素原子、具体的に1~5個の炭素原子を有してもよい。前記アルキルは、一例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、エチルヘキシルなどを含むが、これに限定されない。
【0052】
本明細書の用語、「アルコキシ」は、*-O-アルキルで表され、ここで、アルキルは、上述した定義と同様である。
本明細書の用語、「ハロアルキル」は、前記アルキルにおいて、少なくとも1つの水素がハロゲンで置換されたものを意味し得る。
【0053】
本明細書の用語、「アリール」は、1つの水素除去により芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、各環に適切には4~7個、好ましくは5または6個の環原子を含む単環または縮合環系を含み、複数のアリールが単結合で連結されている形態まで含んでもよい。一例として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニルなどを含むが、これに限定されない。
【0054】
本明細書の用語、「アリーレン」は、アレーン(arene)に由来した2価の官能基であり、これらが2価の官能基であることを除いては、上述したアリールの説明が適用されることができる。例えば、フェニレン、ビフェニレン、テルフェニレン、ナフタレン、フルオレニレン、ピレニレン、フェナントレニレン、ペリレン、アントラセニレンなどであってもよい。
【0055】
本明細書の用語、「アルキルカルボニル」は、*-C(=O)アルキルラジカルを意味し、ここで、アルキルは、上述した定義と同様である。一例として、アルキルカルボニルラジカルの例としては、メチルカルボニル、エチルカルボニル、イソプロピルカルボニル、プロピルカルボニル、ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、t-ブチルカルボニルなどを含むが、これに限定されない。
【0056】
本明細書の用語、「アルコキシカルボニル」は、*-C(=O)アルコキシラジカルを意味し、ここで、アルコキシは、上述した定義と同様である。一例として、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニルなどを含むが、これに限定されない。
【0057】
本明細書の用語、「アリールカルボニル」は、*-C(=O)アリールラジカルを意味し、ここで、アリールは、上述した定義と同様である。一例として、フェニルカルボニル、ナフチルカルボニル、アントリルカルボニルなどを含むが、これに限定されない。
本明細書の用語、「シアノ」は-CNを意味し、「ニトロ」は-NO2を意味し、「ヒドロキシ」は-OHを意味し、「アミン」は-NH2を意味し得る。
【0058】
ポリイミドフィルムをディスプレイ装置に応用するためには、ポリイミドフィルム固有の黄色度特性を改善し、無色透明な性能を確保するとともに、機械的物性の向上が伴わなければならない。しかし、機械的物性を改善するためにリジッド(rigid)な構造の化合物を用いるかまたはアミド構造を導入した重合体をフィルムに製造する場合、機械的物性は向上しても、光学的物性が劣化する限界がある。そこで、透明ポリイミドフィルムの無色透明な性質を維持しながらも、機械的物性を顕著に向上させることができる新規なジアミン化合物が必要である。
【0059】
一実施形態に係る新規なジアミン化合物は、複数の芳香族環を含んでフィルムの機械的強度を向上できるとともに、複数のアミド結合を有してπ-共役(π-conjugation)が減少することで電荷移動錯体(Charge Transfer Complex、CTC)効果を減少させることができる。すなわち、一実施形態に係る新規なジアミン化合物は、光学的物性が低下することなく機械的物性が顕著に向上したポリイミドフィルムを提供することができる。
【0060】
前記芳香族環は、単環;2個以上の芳香族環が単結合、置換もしくは非置換のC1~C5アルキレン基、O、またはC(=O)により連結された非縮合環;またはこれらの組み合わせを含んでもよい。具体的に、前記芳香族環は、ベンゼン、ビフェニル、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0061】
一例として、前記新規なジアミン化合物において、前記芳香族環は、少なくとも1つのベンゼンおよび少なくとも1つのビフェニルを含んでもよく、前記芳香族環は、互いにアミド基により連結されていてもよく、具体的に、前記新規なジアミン化合物は、下記化学式1で表されてもよい。
【0062】
【0063】
(前記化学式1中、
A~C環は、それぞれ独立して、(C6-C20)芳香族環であり、
R1~R3は、それぞれ独立して、(C1-C10)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C10)シクロアルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルキルカルボニル、(C1-C10)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、-SiRaRbRc、-NRdRe、-COOH、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
R4~R7は、それぞれ独立して、(C1-C10)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C10)シクロアルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルキルカルボニル、(C1-C10)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、(C1-C10)アルコキシ、-SiRaRbRc、-NRdRe、-COOH、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
前記R4~R7のうち少なくとも1つは、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルキルカルボニル、(C1-C10)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、-SiRaRbRc、ニトロ、またはシアノであり、
Raは、(C1-C10)アルキルであり、
Rb~Reは、それぞれ独立して、水素、(C1-C10)アルキル、または(C6-C20)アリールであり、
a~cは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
d~gは、それぞれ独立して、1~4の整数である。)
【0064】
一実施形態において、前記化学式1のa~cが2以上の定数である場合、各R1、R2、およびR3は、互いに同一でも異なっていてもよく、前記d~gが2以上の整数である場合、各R4、R5、R6、およびR7は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0065】
一実施形態に係る前記A~C環は、例えば、ベンゼンまたはナフタレンであってもよく、具体的に、前記ジアミン化合物は、下記化学式2で表されてもよい。
【0066】
【0067】
(前記化学式2中、
R1~R3は、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C6-C12)アリール、(C3-C7)シクロアルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、-SiRaRbRc、-NRdRe、-COOH、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
R4~R7は、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C6-C12)アリール、(C3-C7)シクロアルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、(C1-C7)アルコキシ、-SiRaRbRc、-NRdRe、-COOH、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
前記R4~R7のうち少なくとも1つは、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、-SiRaRbRc、ニトロ、またはシアノであり、
Raは、(C1-C7)アルキルであり、
Rb~Reは、それぞれ独立して、水素、(C1-C7)アルキル、または(C6-C12)アリールであり、
a~cは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
d~gは、それぞれ独立して、1~3の整数である。)
【0068】
一実施形態において、前記化学式2のa~cが2以上の整数である場合、各R1、R2、およびR3は、互いに同一でも異なっていてもよく、前記d~gが2以上の整数である場合、各R4、R5、R6、およびR7は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0069】
一実施形態において、前記化学式1および2中、R4~R7のうち少なくとも1つは、ハロ(C1-C7)アルキルであってもよく、例えば、前記R4のうち少なくとも1つは、ハロ(C1-C7)アルキルであり、前記R5のうち少なくとも1つは、ハロ(C1-C7)アルキルであり、前記R6のうち少なくとも1つは、ハロ(C1-C7)アルキルであり、前記R7のうち少なくとも1つは、ハロ(C1-C7)アルキルであってもよい。これにより、フィルムの光学的特性が低下する現象をさらに効果的に改善することができる。ここで、ハロ(C1-C7)アルキルは、パーフルオロ(C1-C7)アルキルであってもよく、より具体的に、-CF3、-C2F5、-C3F7、-C4F9、C5F11であってもよいが、これに限定されない。
【0070】
また、前記化学式1および2中、a~cは、それぞれ独立して、0または1の整数であり、前記d~gは、それぞれ独立して、1または2の整数であってもよい。
【0071】
前記ビフェニル基に電荷移動錯体(Charge Transfer Complex、CTC)効果を減少できるフルオロが置換されたアルキル基を導入することで、フィルムの機械的物性が向上するとともに、光学的特性が低下する現象をさらに効果的に改善することができる。ここで、前記フルオロが置換されたアルキル基は、前述したとおりである。より具体的に、前記ジアミン化合物は、下記化学式3で表されてもよい。
【0072】
【0073】
(前記化学式3中、
R1~R3およびR11~R14は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲンであり、
a~cは、それぞれ独立して、0または1であり、
p~sは、それぞれ独立して、0または1であり、
nは、1~5の整数である。)
【0074】
一例として、前記化学式3中、R1~R3およびR11~R14は、互いに同一でも異なっていてもよく、例えば、R1およびR2は、互いに同一であってもよく、R11~R14は、互いに同一であってもよく、例えば、R1およびR2とR11~R14は、互いに同一でも異なっていてもよい。
一例として、前記nは、1~3の整数であってもよく、具体的に、1または2であってもよい。
【0075】
より具体的に、前記ジアミン化合物は、下記化学式4で表されてもよい。
【0076】
【0077】
(前記化学式4中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲンであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。)
【0078】
より具体的に、前記フルオロが置換されたアルキル基(CF3)は、前記ビフェニル基のオルト位に置換されていてもよい。特定の理論に拘るものではないが、フルオロが置換されたアルキル基がビフェニル基のオルト位に置換されることで、ビフェニル中の2つのアリール基の捩れた構造を誘導することができ、立体障害効果によりポリイミド構造内または鎖間のパッキング密度およびCTC効果を減少させることができる。これにより、ポリイミドフィルムの光学的物性、例えば、さらに優れた黄色度およびヘイズを示すことができる。
【0079】
一実施形態に係る前記ジアミン化合物は、例えば、下記から選択されてもよいが、これに限定されない。
【化20】
【化21】
【化22】
【0080】
(上記中、R1およびR2は、それぞれ独立して、フルオロまたはトリフルオロメチルであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。)
【0081】
より具体的に、前記ジアミン化合物は、下記構造から選択されてもよいが、これに限定されない。
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【0082】
また、一実施形態は、前記ジアミン化合物の製造方法を提供する。
一実施形態に係る前記ジアミン化合物の製造方法は、下記化学式Cの化合物を下記化学式B-1および化学式B-2の化合物と順次反応させ、化学式Aのジニトロ化合物を製造するステップと、化学式Aのジニトロ化合物を還元触媒下で還元させ、下記化学式1で表されるジアミン化合物を製造するステップと、を含んでもよい。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
(前記化学式1、A、B-1、B-2、およびC中、
R1~R7、A~C環、およびa~gは、前記化学式1における定義と同様である。)
【0089】
一実施形態に係る前記還元触媒は、Zn、Cu、Ag、Au、Cd、Hg、Fe、K4[Fe(CN)6]、NaBH4、またはこれらの組み合わせから選択されてもよい。また、前記還元触媒は、NH4Cl、H2CO3、H3PO4、HCl、CH3COOH、またはこれらの組み合わせから選択される助触媒をさらに含んでもよく、具体的に、FeおよびNH4Clを共に用いて行われてもよい。
一実施形態において、前記還元反応は、40~80℃で1~10時間、具体的に、50~70℃で4~8時間行われてもよい。
【0090】
また、一実施形態は、下記化学式11で表される新規なジアミン化合物を含む、ポリイミド系高分子形成用組成物を提供する。
【0091】
【0092】
(前記化学式11中、
A1~C1環は、それぞれ独立して、(C6-C20)芳香族環であり、
R21~R27は、それぞれ独立して、(C1-C10)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C10)シクロアルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルキルカルボニル、(C1-C10)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、(C1-C10)アルコキシ、-SiRaRbRc、-NRdRe、-COOH、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
Raは、(C1-C10)アルキルであり、
Rb~Reは、それぞれ独立して、水素、(C1-C10)アルキル、または(C6-C20)アリールであり、
a~cは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
d~gは、それぞれ独立して、1~4の整数である。)
【0093】
一実施形態において、前記化学式11中、a~cが2以上の整数である場合、各R21、R22、およびR23は、互いに同一でも異なっていてもよく、前記d~gが2以上の整数である場合、各R24、R25、R26、およびR27は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0094】
具体的に、一実施形態に係るジアミン化合物は、二無水物と反応させてポリイミド前駆体(すなわち、ポリアミック酸またはポリアミック酸エステル)を合成し、ポリイミド前駆体のイミド化によりポリイミドを合成することができる。
【0095】
すなわち、一実施形態に係るジアミン化合物は、ポリイミド系高分子合成用単量体として適用することができる。この際、前記ポリイミド系高分子とは、ポリイミドおよびポリイミド前駆体(すなわち、ポリアミック酸またはポリアミック酸エステル)を全て含むものを意味する。
【0096】
また、一実施形態は、下記化学式11で表されるジアミン化合物を単量体として用いて製造される、ポリイミド前駆体を提供する。
【0097】
【0098】
(ここで、R21~R27、A1~C1環、およびa~gは、前記化学式11における定義と同様である。)
【0099】
一実施形態に係るポリイミド前駆体は、前記化学式11のジアミン化合物に由来する構造単位、および二無水物に由来する構造単位を含んでもよい。より具体的に、一実施形態に係るポリイミド前駆体は、前記ジアミン化合物の末端アミノ基(-NH2)と二無水物化合物の末端無水物基(-OC-O-CO-)の反応により、アミノ基の窒素原子と無水物基の炭素原子との間の結合が形成された繰り返し単位を含んでもよい。
【0100】
一実施形態に係る前記ジアミン化合物は、上述した構造的特徴、例えば、ビフェニル基構造およびアミド結合を有することにより、それを単量体として適用することで、優れた光学的物性を維持しながらも、機械的物性、例えば、モジュラスが顕著に向上したポリイミドフィルムを製造することができる。
【0101】
一実施形態に係る前記A1~C1環は、例えば、ベンゼンまたはナフタレンであってもよく、具体的に、前記ジアミン化合物は、下記化学式12で表されてもよい。
【0102】
【0103】
(前記化学式12中、
R21~R27は、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C6-C12)アリール、(C3-C7)シクロアルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、(C1-C7)アルコキシ、-SiRaRbRc、-NRdRe、-COOH、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
Raは、(C1-C7)アルキルであり、
Rb~Reは、それぞれ独立して、水素、(C1-C7)アルキル、または(C6-C12)アリールであり、
a~cは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
d~gは、それぞれ独立して、1~3の整数である。)
【0104】
一実施形態において、前記化学式12中、a~cが2以上の整数である場合、各R21、R22、およびR23は、互いに同一でも異なっていてもよく、前記d~gが2以上の整数である場合、各R24、R25、R26、およびR27は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0105】
一実施形態において、前記化学式11および12のR24~R27のうち少なくとも1つは、(C1-C7)アルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、またはハロゲンであってもよく、具体的に、前記R24~R27のうち少なくとも1つは、(C1-C7)アルキル、パーフルオロ(C1-C7)アルキル、またはフルオロであってもよく、より具体的に、(C1-C7)アルキルまたはパーフルオロ(C1-C7)アルキルであってもよい。例えば、前記R24のうち少なくとも1つは、(C1-C7)アルキルまたはパーフルオロ(C1-C7)アルキルであり、前記R25のうち少なくとも1つは、(C1-C7)アルキルまたはパーフルオロ(C1-C7)アルキルであり、前記R26のうち少なくとも1つは、(C1-C7)アルキルまたはパーフルオロ(C1-C7)アルキルであり、前記R27のうち少なくとも1つは、(C1-C7)アルキルまたはパーフルオロ(C1-C7)アルキルであってもよい。
また、前記a~cは、それぞれ独立して、0または1の整数であり、前記d~gは、それぞれ独立して、1または2の整数であってもよい。
【0106】
より具体的に、前記ジアミン化合物は、下記化学式13-1または13-2で表されてもよい。
【0107】
【0108】
【0109】
(前記化学式13-1および13-2中、
R31~R34は、それぞれ独立して、(C1-C5)アルキルであり、
R21~R23およびR41~R44は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲンであり、
a~cは、それぞれ独立して、0または1であり、
p~sは、それぞれ独立して、0または1であり、
nは、1~5の整数である。)
【0110】
一実施形態において、前記nは、1~3の整数であってもよく、具体的に、1または2であってもよい。
一例として、前記R31~R34は、互いに同一であってもよく、(C1-C3)アルキルであってもよく、より具体的に、メチルまたはエチルであってもよく、例えば、メチルであってもよい。
【0111】
一例として、前記R21~R23およびR41~R44は、互いに同一でも異なっていてもよく、例えば、R21およびR22は、互いに同一であってもよく、R41~R44は、互いに同一であってもよく、例えば、R21およびR22とR41~R44は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0112】
より具体的に、前記ジアミン化合物は、下記化学式14-1または14-2で表されてもよい。
【0113】
【0114】
【0115】
(前記化学式14-1および14-2中、
R21およびR22は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C5)アルキルまたはハロゲンであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。)
一例として、前記R21およびR22は、互いに同一であってもよく、パーフルオロ(C1-C5)アルキルまたはフルオロであってもよい。
【0116】
より具体的に、前記ビフェニル基に置換されたCF3とCH3は、ビフェニル基のオルト位に置換されていてもよい。特定の理論に拘るものではないが、前記置換基がビフェニル基のオルト位に置換されることで、ビフェニル中の2つのアリール基の捩れた構造を誘導することができ、立体障害効果によりポリイミド構造内または鎖間のパッキング密度およびCTC効果を減少させることができる。これにより、ポリイミドフィルムの光学的物性、例えば、さらに優れた黄色度およびヘイズを示すことができる。
【0117】
一実施形態に係る前記ジアミン化合物は、例えば、下記から選択されてもよいが、これに限定されない。
【化44】
【化45】
【0118】
(上記中、R21およびR22は、それぞれ独立して、フルオロまたはトリフルオロメチルであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。)
【0119】
より具体的に、前記ジアミン化合物は、下記構造から選択されてもよいが、これに限定されない。
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【化54】
【化55】
【0120】
一実施形態に係る前記ジアミン化合物は、上記のような構造的特徴、ビフェニル基およびアミド結合を有することで、ポリイミドフィルムの光学的物性が低下することなく機械的物性を顕著に向上させることができる。特に、前記ビフェニル基にフルオロ基および/またはフルオロが置換されたアルキル基を導入することで、フィルムの光学的特性が低下する現象をさらに効果的に改善することができる。
【0121】
一実施形態に係るポリイミド前駆体は、前記化学式11で表されるジアミン化合物から誘導された構造単位の他に、公知のジアミン化合物から誘導された構造単位をさらに含んでもよい。
【0122】
前記公知のジアミン化合物は、特に制限されるものではないが、例えば、p-PDA(p-フェニレンジアミン)、m-PDA(m-フェニレンジアミン)、4,4’-ODA(4,4’-オキシジアニリン)、3,4’-ODA(3,4’-オキシジアニリン)、BAPP(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]-フェニル)プロパン)、TPE-Q(1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、TPE-R(1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、BAPB(4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル)、BAPS(ビス(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、m-BAPS(ビス(4-[3-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、HAB(3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル)、TB(3,3-ジメチルベンジジン)、m-TB(2,2’-ジメチルベンジジン)、TFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、APB(1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン)、1,4-ND(1,4-ナフタレンジアミン)、1,5-ND(1,5-ナフタレンジアミン)、DABA(4,4’-ジアミノベンズアニリド)、6-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、および5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾールから選択される1つまたは2つ以上を用いてもよいが、これに制限されない。
【0123】
具体的に、前記ジアミン化合物は、フッ素置換基が導入されたフッ素系芳香族ジアミン化合物であってもよく、例えば、TFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、またはこれらの組み合わせから選択されてもよく、より具体的に、TFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)を用いてもよい。
【0124】
上記のようなフッ素系芳香族ジアミン化合物から誘導された構造単位をさらに含むことで、フィルムにさらに優れた光学的物性を付与することができる。
具体的に、前記化学式11のジアミン化合物と前記公知のジアミン化合物を共に用いる場合、前記化学式11のジアミン化合物と前記公知のジアミン化合物は1:1~1:10のモル比で用いられてもよく、具体的には1:2~1:9のモル比、より具体的には1:4~1:9のモル比で用いられてもよいが、これに限定されない。上述した範囲を満たすことで、ポリイミドフィルムのさらに優れた機械的物性を示すことができる。
【0125】
一実施形態に係る前記二無水物は、酸二無水物官能基を有する化合物であればいずれも可能であるが、例えば、芳香族二無水物、脂環族二無水物、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0126】
前記芳香族二無水物は、例えば、BPAF(9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物)、6FDA(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物)、BPDA(ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、ODPA(オキシジフタル酸二無水物)、SO2DPA(スルホニルジフタル酸無水物)、6HDBA(イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物))、TDA(4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物)、PMDA(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物)、およびBTDA(ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)から選択される1つまたは2つ以上を用いてもよいが、これに限定されない。
【0127】
具体的に、前記芳香族二無水物は、BPAF(9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物)、6FDA(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物)、またはこれらの組み合わせであってもよく、より具体的に、フッ素系芳香族二無水物、例えば、6FDA(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物)を用いてもよい。上記のようなフッ素系芳香族二無水物を用いることで、ポリイミドフィルムの光学的物性の向上だけでなく、機械的強度、特にモジュラスをさらに効果的に改善させることができる。
【0128】
前記脂環族二無水物は、少なくとも1つの脂肪族環を含む二無水物を意味し、前記脂肪族環は、単環であるか、2個以上の脂肪族環が縮合した縮合環であるか、または2個以上の脂肪族環が単結合、置換もしくは非置換の(C1-C5)アルキレン基、O、またはC(=O)により連結された非縮合環であってもよい。例えば、前記脂環族二無水物は、CBDA(1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物)、DOCDA(5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物)、BTA(ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物)、BODA(ビシクロオクテン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物)、CPDA(1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物)、CHDA(1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物)、TMDA(1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタン二無水物)、TCDA(1,2,3,4-テトラカルボキシシクロペンタン二無水物)、およびこれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を用いてもよいが、これに限定されない。具体的に、前記脂環族二無水物は、CBDA(1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物)であってもよい。
【0129】
より具体的に、一実施形態に係る前記二無水物は、芳香族二無水物と脂環族二無水物の組み合わせを用いてもよく、例えば、フッ素系芳香族二無水物と脂環族二無水物の組み合わせを用いてもよく、例えば、6FDA(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物)とCBDA(1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物)の組み合わせを用いてもよい。
【0130】
また、一実施形態に係るポリイミド前駆体を製造する際に、ジアミン化合物と芳香族二酸二無水物および脂環族二無水物の混合物との当量比は、特に制限されるものではないが、1:0.9~1.1であってもよく、具体的には1:0.95~1.05であってもよい。前記範囲を満たすことで、製膜特性を含むフィルムの物性がさらに向上することができる。
【0131】
また、一実施形態に係る前記ポリイミド前駆体は、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位をさらに含んでもよい。前記芳香族二酸二塩化物は、高分子鎖中にアミド構造を形成するものであり、フィルムの光学特性を低下させない範囲で、モジュラスを含むさらに優れた機械的物性を示すことができる。
【0132】
前記芳香族二酸二塩化物は、例えば、IPC(イソフタロイルジクロライド)、TPC(テレフタロイルジクロライド)、BPC(1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド)、NPC(1,4-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド)、NTC(2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(2,6-naphthalene dicarboxylic dichloride)、およびNEC(1,5-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(1,5-naphthalene dicarboxylic dichloride)などからなる群から選択される1つまたは2つ以上を用いてもよいが、これに限定されない。
【0133】
具体的に、前記芳香族二酸二塩化物としてTPC(テレフタロイルジクロライド)を用いてもよい。一例として、前記テレフタロイルジクロライドの含量が芳香族ジアミン100モルに対して50モル以上用いられる場合、モジュラスなどのフィルムの機械的物性が大幅に向上することができる。しかし、分子間密集度が増加することになり、黄色度およびヘイズなどの光学的物性が劣化する問題が発生し得る。これに対し、一実施形態に係る前記化学式11のジアミン化合物を単量体として用いることで、ポリイミドフィルムの光学的物性が低下する現象を改善できることを見出し、目的のとおり、優れた光学的および機械的物性を同時に満たすフィルムを提供することができる。
【0134】
一実施形態に係るポリイミド前駆体が芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位をさらに含む場合、前記芳香族二酸二塩化物は、ジアミン化合物100モルに対して50モル以上、または55モル以上、より具体的には55モル~80モルを用いてもよいが、これに限定されない。上述した範囲の芳香族二酸二塩化物を用いる場合、ポリイミドフィルムの機械的物性をさらに向上させることができる。
【0135】
また、一実施形態は、前記ポリイミド前駆体から製造される、ポリイミドを提供する。
また、一実施形態は、前記ポリイミド前駆体および/またはポリイミドを含む、ポリイミドフィルム形成用組成物を提供する。
【0136】
具体的に、前記ポリイミドフィルム形成用組成物は、前記化学式11のジアミン化合物から誘導された構造単位を含むポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの混合物と、有機溶媒と、を含んでもよい。
【0137】
一実施形態に係る前記組成物は、上述したポリイミド前駆体および/またはポリイミドを含むことで、顕著に向上した機械的物性を有するポリイミドフィルムを提供することができる。特に、一実施形態に係る前記組成物は、無色透明な性質を維持しながらも、モジュラス値が顕著に向上したポリイミドフィルムを提供することができる。
【0138】
一実施形態に係る前記組成物に含まれる有機溶媒は、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトールなどのアルコール類;N,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、N,N-ジエチルプロピオンアミド(DEPA)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルメトキシアセトアミドなどのアミド類;などから選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよいが、これに限定されない。
【0139】
具体的に、前記有機溶媒は、上述したアミド類から選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。一例として、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、N,N-ジエチルプロピオンアミド(DEPA)、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0140】
一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、その後のフィルム形成工程時の塗布性などを考慮して、前記組成物が適した粘度を有するようにする量に固形分含量を調節することができる。一例として、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、組成物の総重量を基準として固形分含量が5~20重量%、10~20重量%、または10~15重量%であってもよい。ここで、固形分は、ポリイミド前駆体および/またはポリイミドを意味する。
【0141】
具体的に、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、粘度が5,000~100,000cpsまたは15,000~50,000cpsを満たしてもよい。上述した粘度範囲を満たす場合、ポリイミドフィルムの加工時、脱泡の効率性にさらに優れ、工程上の利点を提供することができる。そこで、より均一な表面を実現することができる。この際、前記粘度は、ブルックフィールド(Brookfield RVDV-III)粘度計スピンドル(Spindle)No.52を用いて、常温(25℃)で試料を載せ、トルク値が80%となった時点で安定化作業を経て測定した値を意味する。
【0142】
以下、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法について具体的に説明する。
一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、(A)有機溶媒にジアミン化合物を溶解させた後に二無水物を反応させてポリイミド前駆体溶液を製造するステップと、(B)固形分含量を調節してポリイミドフィルム形成用組成物を製造するステップと、を含んでもよい。
【0143】
具体的に、前記ステップ(A)は、ジアミンと二無水物を1:0.9~1:1.1の当量比で混合してポリイミド前駆体を重合するものであり、この際、重合条件は、特に制限されるものではないが、不活性気体雰囲気下で重合反応を行うことがより好ましく、一例として、窒素またはアルゴンガスを反応器内に還流させつつ行ってもよい。また、反応温度は10℃~50℃、または20℃~40℃で行ってもよく、反応時間は10時間~40時間、または15時間~30時間行ってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0144】
また、一実施形態において、前記ステップ(A)は、芳香族二酸二塩化物を投入するステップをさらに含んでもよい。この場合、ジアミン、二無水物、および芳香族二酸二塩化物を同時に投入して重合してもよく、またはジアミンと芳香族二酸二塩化物を反応させてアミン末端を有するオリゴマーを製造した後、前記オリゴマーと追加のジアミンおよび二無水物を反応させて製造してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。アミン末端を有するオリゴマーを製造した後、追加のジアミンおよび二無水物を反応させる場合には、ブロック型ポリアミドイミドが製造されることができ、フィルムの機械的物性がさらに向上することができる。
【0145】
例えば、アミン末端を有するオリゴマーを製造する場合、前記(A)ステップは、(A-1)ジアミンと芳香族二酸二塩化物を反応させるステップと、(A-2)得られたオリゴマーを精製し乾燥するステップと、(A-3)精製されたオリゴマー、ジアミン化合物、および二無水物を反応させてポリイミド前駆体溶液を製造するステップと、を含んでもよい。この場合、ジアミン化合物を芳香族二酸二塩化物に対して1.01~2のモル比で投入してアミン末端ポリアミドオリゴマーを製造することができる。前記オリゴマーの分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、重量平均分子量が1,000~3,000g/molであってもよい。
【0146】
また、前記ステップ(B)は、前記ステップ(A)で製造されたポリイミド前駆体をイミド化するステップをさらに含んでもよい。この際、化学的イミド化により行われてもよく、イミド化触媒および脱水剤の中から選択されたいずれか1つまたは2つ以上をさらに含んでイミド化してもよい。前記イミド化触媒としては、ピリジン(pyridine)、イソキノリン(isoquinoline)、およびβ-キノリン(β-quinoline)などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を用いてもよい。また、脱水剤としては、酢酸無水物(acetic anhydride)、フタル酸無水物(phthalic anhydride)、およびマレイン酸無水物(maleic anhydride)などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を用いてもよく、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0147】
一実施形態において、上述したような化学的イミド化を行わない場合、一実施形態に係るフィルム形成用組成物は、イミド化触媒および脱水剤の中から選択されたいずれか1つまたは2つ以上をさらに含まなくてもよい。
【0148】
この際、ポリイミド前駆体のイミド化を行った後、溶媒に沈殿し精製して固形分(ポリアミドイミドパウダー)を得るステップをさらに含んでもよく、それを有機溶媒に溶解させて固形分含量を調節してポリイミドフィルム形成用組成物を得ることができる。
【0149】
一実施形態に係る前記ポリイミドの分子量は、特に限定されるものではないが、例えば50,000~1,000,000g/mol、具体的には50,000~800,000g/mol、より具体的には50,000~500,000g/molであってもよい。
【0150】
また、一実施形態は、前記ポリイミドフィルム形成用組成物を用いて製造される、ポリイミドフィルムを提供する。
一実施形態に係るポリイミドフィルムは、前記化学式11のジアミン化合物から誘導された構造単位を含むことで、黄色度が低く、透明性に優れるとともに、モジュラスが高く、機械的強度に優れることができる。
【0151】
一実施形態に係るポリイミドフィルムは、厚さが20~500 μm、例えば30~300 μm、例えば40~100 μmであってもよい。
また、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、ASTM D882に準じたモジュラスが6GPa以上、7GPa以上、または7.2GPa以上であってもよい。
【0152】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、ASTM E313に準じたYIが20以下、15以下、または10以下であってもよく、ASTM D1003に準じたヘイズが5.0以下、4.0以下、または3.0以下であってもよく、ASTM D1003に準じた全光線透過率が80%以上、85%以上、または87%以上であってもよい。
【0153】
すなわち、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、40~100 μmの厚さ範囲においても、無色透明な性質を維持するとともに、優れた機械的強度を実現することができる。
【0154】
一実施形態に係るポリイミドフィルムは、特定の構造のジアミン化合物を単量体として用いることで、上記のような優れた光学的物性および機械的物性を実現することができる。具体的に、一実施形態は、前記化学式11で表されるジアミン化合物から誘導された構造単位を含むことで、光学性、機械的強度、および柔軟性の全てに優れたポリイミドフィルムを提供することができる。したがって、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、素子用基板、ディスプレイ用カバー基材、光学フィルム、IC(integrated circuit)パッケージ、粘着フィルム、多層FPC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどのような多様な分野に適用することができる。
【0155】
以下、一実施形態に係るポリイミドフィルムの製造方法について具体的に説明する。
一実施形態に係るフィルムは、前記一実施形態に係る重合体および溶媒を含むポリイミドフィルム形成用組成物を基材上に塗布した後、乾燥および/または延伸して製造されてもよい。
【0156】
具体的に、一実施形態に係るフィルムは、化学的硬化または熱硬化により製造されてもよい。
前記化学的硬化は、一実施形態に係るポリイミド前駆体溶液をイミド化してポリイミド系樹脂を製造するステップと、前記ポリイミド系樹脂を有機溶媒に溶解させた樹脂組成物(ポリイミドフィルム形成用組成物)を塗布して製膜するステップと、を含んで製造されてもよい。
前記イミド化は、上述したとおりであるので省略する。
【0157】
前記製膜ステップは、フィルム形成用組成物を基材に塗布した後、熱処理を介した乾燥によりフィルムを成形するステップである。基材は、例えば、ガラス、ステンレス、またはフィルムなどを用いてもよく、塗布は、ダイコータ、エアナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、スピンコーティングなどにより行われてもよい。
【0158】
前記熱処理は、例えば、段階的に行われてもよい。例えば、70℃~160℃で1分~2時間一次乾燥し、150℃~350℃で1分~2時間二次乾燥して段階的な熱処理をして行われてもよい。しかし、必ずしも前記温度および時間条件に制限されるものではなく、例えば、前記一次乾燥は、80℃~150℃、70℃~110℃、130℃~150℃、90℃、120℃、または140℃で、10分~90分、10分~60分、20分~50分、または30分間行われてもよく、前記二次乾燥は、200℃~300℃、220℃~300℃、または250℃~300℃で、10分~90分、30分~90分、または40分~80分間行われてもよい。この際、段階的な熱処理は、各段階に移動時、好ましくは、1~20℃/minの範囲で昇温させてもよい。また、熱処理は、別の真空オーブンまたは不活性気体で充填されたオーブンなどで行われてもよく、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0159】
また、一実施形態に係る前記熱硬化は、100~450℃、120~450℃、または150~450℃で行われてもよい。より具体的に、前記熱硬化は、80~100℃で1分~2時間、100超過~200℃で1分~20時間、または200超過~450℃で1分~2時間行われてもよく、この中から選択される2以上の温度条件下で段階的な熱硬化が行われてもよい。また、熱硬化は、別の真空オーブンまたは不活性気体で充填されたオーブンなどで行われてもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。また、前記熱硬化ステップ以前に、必要に応じて乾燥ステップをさらに行ってもよい。前記乾燥ステップは、50℃~150℃、50℃~130℃、60℃~100℃、または約80℃の温度で行われてもよいが、必ずしも前記範囲に制限されるものではない。
【0160】
また、前記ポリイミド前駆体溶液に難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤、および可塑剤などから選択される1つまたは2つ以上の添加剤をさらに混合してポリイミドフィルムを製造してもよい。
【0161】
また、一実施形態に係る前記ポリイミドフィルムは、2以上の層を有する多層構造体(multilayer structure)として提供されてもよい。
具体的に、前記多層構造体は、必要に応じて、ポリイミドフィルムまたは基板の少なくとも1つの他面に機能性コーティング層をさらに含んでもよい。前記機能性コーティング層の非限定的な一例としては、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、および衝撃吸収層などが挙げられ、少なくとも1つまたは2つ以上の機能性コーティング層を備えてもよい。
【0162】
また、一実施形態は、前記ポリイミドフィルムを用いて多様な形態の成形品を製造することができる。前記成形品の一例としては、フィルム、保護膜、または絶縁膜を含むプリント配線板、フレキシブル回路基板などに適用可能であり、これに制限されない。具体的には、カバーガラスを代替できる保護フィルムに適用することができ、ディスプレイ装置を含めて多様な産業分野にその応用の幅が広いという長所がある。
より具体的に、フレキシブルディスプレイ装置などのウィンドウカバーフィルムとして用いることができる。
【0163】
一実施形態に係るポリイミドフィルムは、前記化学式11で表されるジアミン化合物から誘導された構造単位を含むことで、高い透明度と低い黄色度のような優れた光学的物性および優れたモジュラスを実現することができる。これにより、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、フレキシブルディスプレイパネルなどのウィンドウカバーフィルムとして用いることができる。一実施形態に係るポリイミドフィルムを含むウィンドウカバーは、さらに優れた光学的物性を有し、視認性に優れるだけでなく、モジュラスが高く、機械的強度に優れるため、強化ガラスの代替素材として用いることができる。
【0164】
以下、本発明の具体的な説明のために一実施形態を挙げて説明するが、本発明が下記の実施形態に限定されるものではない。
下記実験において、物性は次のように測定した。
【0165】
<重量平均分子量>
0.05MのLiClを含有するDMAc溶離液にフィルムを溶解して測定した。GPCはWaters GPC system、Waters 1515 isocratic HPLC Pump、Waters 2414 Refractive Index detectorを用い、ColumnはOlexis、Polypore、およびmixed Dカラムを連結し、標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA STD)を用いた。この際、35℃、1mL/minのフローレート(flow rate)で分析した。
【0166】
<モジュラス(Modulus)>
ASTM D882の規格に準じて、長さ50mmおよび幅10mmのポリアミドイミドフィルムを25℃で50mm/minで引っ張る条件で、Instron社のUTM 3365を用いて測定した。フィルムの厚さを測定し、その値を機器に入力した。モジュラスの単位はGPaである。
【0167】
【0168】
化合物Aの製造
反応器に、2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)30gをテトラヒドロフラン(THF)300mlに溶かし、トリエチルアミン(TEA)14.22gを常温(25℃)で投入した。前記反応溶液に4-ニトロベンゾイルクロライド(4-nitrobenzoyl chloride)17.3gをTHF 150mlに溶かして投入した後、常温で4時間撹拌した。その後、エチルアセテート(Ethyl Acetate)400mlと蒸留水400mlを追加して層分離した後、水層を除去した。有機層を蒸留水300mlで1回洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し濾過した。有機層を減圧濃縮し、ヘキサン(Hexane)とEAを用いたカラムクロマトグラフィーで分離し、化合物Aを得た(8.92g)。
【0169】
1H-NMR (DMSO-d6, 500MHz, ppm): 10.82 (s, 1H), 8.37~8.16 (m, 6H), 7.27(d, 1H), 6.91 (m, 2H), 6.74 (d, 1H), 5.63 (s, 2H).
【0170】
化合物A-1の製造
上記で得られた化合物A 8.92gをTHF 160mlに溶かし、TEA 3.85gを常温で投入した後、テレフタロイルクロライド(terephtaloyl chloride)1.93gを投入し、常温で4時間撹拌した。その後、EA 150mlと蒸留水150mlを追加して層分離した後、水層を除去した。有機層を蒸留水150mlで1回洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し濾過した。固体が析出されるまで有機層を減圧濃縮し、ヘキサン150mlを投入し、生成された固体を濾過および乾燥し、化合物A-1を得た(9.88g)。
【0171】
1H-NMR (DMSO-d6, 500MHz, ppm): 10.90 (s, 2H), 10.77 (s, 2H), 8.37 (m, 8H), 8.18 (d, 4H), 8.08(m, 8H), 7.38 (m, 4H).
【0172】
ジアミン化合物1の製造
上記で得られた化合物A-1 9.88gをTHF 100ml、メタノール(MeOH)50ml、蒸留水50mlに溶かし、常温でFeパウダー7.22gと塩化アンモニウム(NH4Cl)6.92gを添加した。60℃に昇温し、8時間撹拌した。反応液に存在する固体物質をCeliteおよびEA 200mlを用いて濾過した後、蒸留水200mlを追加して層分離し、水層を除去した。有機層を蒸留水150mlで1回洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し濾過した。固体が析出されるまで有機層を減圧濃縮し、ジクロロメタン(DCM)100mlおよびヘキサン100mlを順次投入し、生成された固体を濾過および乾燥し、ジアミン化合物1(8.90g)を得た。
【0173】
1H-NMR (DMSO-d6, 500MHz, ppm): 10.75 (s, 2H), 10.11 (s, 2H), 8.30 (s, 2H), 8.13 (s, 4H), 8.06 (dd, 4H), 7.72 (d, 4H), 7.32 (dd, 4H), 6.58 (d, 4H), 5.79 (s, 4H).
【0174】
[実施例1]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素雰囲気下で、反応器に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)290gおよび2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)26gを入れて十分に撹拌させた後、テレフタロイルジクロライド(TPC)11.8gを入れ、6時間撹拌して溶解および反応させた。その後、過量の水を用いて沈殿および濾過させて得た反応生成物を90℃で6時間以上真空乾燥し、オリゴマー32gを得た。
【0175】
再び窒素雰囲気下で、反応器に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、前記オリゴマー9.9g、前記製造例1で得られたジアミン化合物1を3.1gと、追加の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)1.3gを入れ、芳香族ジアミンを100モルとなるようにし、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)を下記表1のようなモル比となるように順次投入し、40℃で12時間撹拌して溶解および反応させ、ポリイミド前駆体を製造した。この際、各単量体の総投入量は下記表1の組成比のとおりであり、固形分含量が10重量%となるように調節し、反応器の温度は40℃に維持した。
【0176】
次いで、前記ポリイミド前駆体溶液にピリジン(Pyridine)と酢酸無水物(Acetic Anhydride)をそれぞれ総二無水物の含量に対して2.5倍モルで順次投入し、60℃で12時間撹拌し、ポリアミドイミド樹脂を含む組成物(ポリイミドフィルム形成用組成物1)を製造した。製造された組成物の粘度は40,000cpsであり、最終的な固形分含量は9.1重量%であった。
【0177】
ポリイミドフィルムの製造
前記実施例1のポリイミドフィルム形成用組成物をガラス基板上にアプリケータ(applicator)を用いて溶液キャスティングを行った。その後、対流オーブンを用いて90℃の温度で30分間一次乾燥した後、窒素気流条件下で280℃の温度で1時間さらに熱処理後に常温に冷却させた。その後、ガラス基板上に形成されたフィルムを基板から分離し、厚さが約50μmである実施例1のポリイミドフィルムを得た。
【0178】
[実施例2]
下記表1に記載された組成を用いたことを除いては前記実施例1と同様に行い、ポリイミドフィルム形成用組成物および厚さが約50μmであるポリイミドフィルムを得た。製造された組成物の粘度は31,000cpsであり、最終的な固形分含量は9.1重量%であった。
【0179】
[比較例1]
下記表1に記載されたように、前記実施例1において、TFMB:ジアミン化合物1=90:10モル比のジアミン化合物の代わりにTFMB 100モルを用いたことを除いては同様に行い、ポリイミドフィルム形成用組成物および厚さが約50μmであるポリイミドフィルムを得た。製造された組成物の粘度は31,000cpsであり、最終的な固形分含量は9.0重量%であった。
【0180】
【0181】
表1を参照すると、実施例1および2のポリイミドフィルムは、一実施形態に係る新規なジアミン化合物から誘導された構造単位を含むことで、7.0GPa以上の非常に高いモジュラスを有し、比較例1のポリイミドフィルムに比べても高いモジュラスを有することを確認することができる。
【0182】
すなわち、一実施形態に係る新規なジアミン化合物から、優れた光学的特性を維持しながらも、高いモジュラスおよび機械的物性を有するポリイミドフィルムを製造することができる。
【0183】
以上、特定の事項と限定された実施例により本発明を説明したが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されない。本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0184】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本発明の思想の範囲に属するといえる。