(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060905
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
G08G1/16 F
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038734
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2022528629の分割
【原出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康悟
(72)【発明者】
【氏名】相馬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】村田 一夫
(72)【発明者】
【氏名】柏尾 将太
(57)【要約】
【課題】疲労に関する情報の正確性の向上を実現すること。
【解決手段】
情報処理装置1は、車両の運転者が注意義務を負う場面を特定する特定部11と、特定部11により特定された場面における車両の走行情報を取得する取得部12と、取得部12により取得された車両の走行情報を蓄積する蓄積部13と、蓄積部13により蓄積された車両の走行情報に基づき、運転者の疲労に関する情報を出力する出力制御部17と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者が注意義務を負う場面を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記場面における前記車両の走行情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記車両の走行情報を蓄積する蓄積手段と、
前記蓄積手段により蓄積された前記車両の走行情報に基づき、前記運転者の疲労に関する情報を出力する出力制御手段と、
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の異常検知には、トリップや着座時間、運転時間、ストレスホルモン指標などといった情報が用いられる。この他、特許文献1に記載の情報提供装置では、ステアリング操作およびペダル操作に基づく指標、レバー類の操作頻度に基づく指標および加減速度に基づく指標から算出される不安定度が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を始めとする従来技術では、検知される異常がストレスであるのか、あるいは疲労であるのかを区別できない一面がある。それ故、上記の従来技術の場合、疲労に関する情報の正確性が低下するという問題が生じる。本発明が解決しようとする課題には、上記した問題が一例として挙げられる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、例えば、疲労に関する情報の正確性の向上を実現できる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の情報処理装置は、車両の運転者が注意義務を負う場面を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された前記場面における前記車両の走行情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記車両の走行情報を蓄積する蓄積手段と、前記蓄積手段により蓄積された前記車両の走行情報に基づき、前記運転者の疲労に関する情報を出力する出力制御手段と、を備える。
【0007】
請求項10に記載の出力制御方法は、情報処理装置が実施する出力制御方法であって、車両の運転者が注意義務を負う場面を特定し、特定された前記場面における前記車両の走行情報を取得し、取得された前記車両の走行情報を蓄積し、蓄積された前記車両の走行情報に基づき、前記運転者の疲労に関する情報を出力する、処理を前記情報処理装置が実行する。
【0008】
請求項11に記載の出力制御プログラムは、車両の運転者が注意義務を負う場面を特定し、特定された前記場面における前記車両の走行情報を取得し、取得された前記車両の走行情報を蓄積し、蓄積された前記車両の走行情報に基づき、前記運転者の疲労に関する情報を出力する、処理をコンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、疲労に関する情報の出力例を示す図である。
【
図3】
図3は、一時停止エリアの一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、走行情報の取得方法の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、第1の近似直線および第2の近似直線の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る出力制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、注意義務エリアの応用例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、注意義務エリアの応用例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、注意義務エリアの応用例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、注意義務エリアの応用例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、注意義務エリアの応用例を示す模式図である。
【
図12】
図12は、応用例に係るクライアントサーバシステムの機能構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0011】
<利用シーンの一例>
図1は、実施の形態に係る情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示す情報処理装置1は、あくまで一例として、ドライブレコーダやナビゲーション装置、AV(Audio Visual)機器を始め、スマートフォンやタブレット端末、ウェアラブル端末などの任意のコンピュータにより実現されてよい。
【0012】
1つの側面として、情報処理装置1は、車両に持ち込まれた状態で利用できる。これはあくまで例示であって利用シーンが車載専用であることを意味せず、情報処理装置1が車載以外の状態で利用されることを妨げない。以下、情報処理装置1が車両に持ち込まれた状態であることを指して「車両持込状態」と記載する場合がある。
【0013】
<提供される機能の一例>
情報処理装置1は、疲労に関する情報の出力制御を行う出力制御機能を提供できる。以下、あくまで一例として、車両持込状態の下で上記の出力制御機能が提供される例を挙げるが、情報処理装置1が車両持込状態およびそれ以外の状態で上記の出力制御機能やそれ以外の機能やサービスなどを提供することを妨げない。
【0014】
図2は、疲労に関する情報の出力例を示す図である。
図2には、車両持込状態の下で情報処理装置1が提供する出力制御機能により出力部2に出力される情報の一例として、通知2A~2Cが示されている。
【0015】
図2の通知2Aに示す通り、出力制御機能は、疲労上昇等のイベントの発生時にメッセージ「疲労に注意!一度休憩しませんか」および休憩を促すアイコンを含むアラートを出力部2に表示させることができる。
【0016】
このようなイベントの発生時に限らず、出力制御機能は、
図2の通知2Bや通知2Cに例示される通り、疲労に関する情報の常時出力または定期出力を実現することもできる。
【0017】
例えば、
図2の通知2Bに示す通り、出力制御機能は、運転者の疲労の上昇度合いを通知するメッセージとして、「疲労度がXポイント上昇」などを出力部2に表示させることができる。
【0018】
また、
図2の通知2Cに示す通り、出力制御機能は、メッセージ「あなたの疲労がたまるまでの平均所要時間は86分です。あと20分が経過するまでに一度休憩しましょう」などを出力部2に表示させることができる。このように、エンジン始動から疲労上昇のアラートが出力されるまでの所要時間の統計値やアラートが出力されるまでの猶予時間を通知こともできる。
【0019】
以下、あくまで一例として、通知2A~通知2Cのうち通知Aが上記の出力制御機能により実行される場合の処理や動作を例に挙げて説明するが、これに限定されない。すなわち、上記の出力制御機能は、通知2A、通知2B、通知2C、その他の通知またはこれらの組合せのうち少なくともいずれか1つを実行することができる点をあらかじめ付言しておく。
【0020】
<課題の一例>
上記の課題の欄で説明した通り、上記の従来技術では、検知される異常がストレスであるのか、あるいは疲労であるのかを区別できない一面がある。それ故、上記の従来技術の場合、疲労に関する情報の正確性が低下するという問題が生じる。このことから、本実施の形態に係る出力制御機能が解決しようとする課題には、上記した問題が一例として挙げられる。
【0021】
<課題解決アプローチの一例>
そこで、本実施の形態に係る出力制御機能では、疲労の蓄積度合いの評価に用いる走行情報を運転者が注意義務を負う場面における走行情報に絞り込む課題解決アプローチが採用され得る。以下、運転者が注意義務を負う場面のことを指して「注意義務エリア」と記載する場合がある。
【0022】
このような課題解決アプローチを採用するモチベーションは、以下に説明する技術的知見があって始めて得られる。
【0023】
一時停止時での不連続運転挙動には、下記(イ)~下記(ハ)の通り、運転者側に過失がある。ここで言う「不連続運転挙動」とは、1つの側面として、なめらかでない運転を指す。
(イ)危険予測が十分にできていれば、自分ペースでの運転行動となり、停止するにしても、比較的なめらかな運転になるはず
(ロ)不連続運転挙動は、予測できなかった突発的な外乱、あるいは自分の危険予測に誤りが生じたと考えられる
(ハ)一時停止は非優先道路側の車両が優先道路に入る際、必ず履行される交通ルール(法規)であるため、急ブレーキなどが発生した場合は、相手よりも自分に過失がある
【0024】
仮に、疲労の蓄積度合いを評価するエリアを注意義務エリアに絞らない場合のデメリットとして、下記(ニ)~下記(ヌ)が挙げられる。
(ニ)運転者自身に非があるのか、相手にあるのか判別できない
(ホ)相手に非があった場合、疲労よりも怒りの感情が芽生える
(ヘ)直進だとすると、非のある相手がずっと前後にいる場面になる
(ト)あおり運転につながりやすい(過剰なまでのストレス発散)
(チ)また単なる信号停止なども、不連続運転挙動の要因の一つ
(リ)必ずしも不連続だからと言って、ストレスや疲労には繋がらない
(ヌ)『肉体的疲労+精神的疲労』という観点からは、自身に非があるもののみで評価されるべき
【0025】
上記(ニ)~上記(ヌ)の通り、疲労の蓄積度合いの評価が注意義務エリアに絞り込まれない場合、運転者の責任に依らない外乱やストレス、感情などが疲労と混同されて評価されてしまう。
【0026】
上記(ニ)~上記(ヌ)を補強する側面から、注意義務エリア以外の場面で不連続運転挙動が発生する事例と対比する。
【0027】
1つ目として、「相手が強引に割り込んできた!」という事例を挙げる。ストレスは感じるが、疲労につながるストレスである可能性は低い。むしろ怒りにつながるストレスと言え、あおり運転等の過度なストレス発散に発展する可能性が高い。
【0028】
2つ目として、「一方通行を走行中に、相手車両が逆走してきた!」という事例を挙げる。この場合も、急ブレーキなど、不連続運転挙動につながるが、当該不連続運転挙動が必ずしも疲労の蓄積につながると限らない。すなわち、一瞬、ヒヤッとする、あるいは、一瞬、ストレスは感じるかもしれないが、疲労につながるとは限らない。また、不連続運転挙動は、自分に疲労の蓄積があったから、結果的に急ブレーキになったとも限らない。
【0029】
これら2つの事例から、相手に非があり、かつ相手が注意義務を怠った場合、運転者側がヒヤリハットや事故などを避けるために、たとえ、急ブレーキなど、不連続運転挙動があったとしても、疲労に至るとは限らないと言える。加えて、運転者側の疲労によって覚せいレベルが下がったため、結果的に、急ブレーキを踏んだのではなく、危険回避のため、やもえず、急ブレーキとなった可能性が依然として残る。
【0030】
以上のことから、下記(ヲ)~下記(カ)の技術的知見が得られる。
(ヲ)不連続運転挙動は、運転者にストレスや疲労を与えるが、両者が混同されがちである
(ワ)運転者が注意義務を負う場面だからこそ、疲労(肉体的疲労+精神的疲労)が蓄積していきやすい
(カ)一時停止エリアの運転挙動に注目して、疲労の蓄積度合いをレベリングする
【0031】
上記(ヲ)~上記(カ)の技術的知見に基づき、疲労の蓄積度合いの評価が注意義務エリアに絞り込まれる場合、下記(ヨ)~下記(レ)の通り、運転者の責任に依らない外乱やストレスと区別して疲労の蓄積度合いを評価できる。
(ヨ)注意義務エリアで発生する不連続運転挙動は、危険予測に基づいた自分の意思によるものではなく、外乱や、危険予測読み間違えである可能性が高い
(タ)たとえ相手に非があったとしても、非優先道路から優先道路への進入のため、運転者自身に過失がある
(レ)注意義務エリアに多く遭遇することによって、疲労につながるストレスや疲労の蓄積につながってくる
【0032】
したがって、本実施の形態に係る出力制御機能によれば、疲労に関する情報の正確性の向上を実現できる。
【0033】
<情報処理装置1の構成>
次に、本実施の形態に係る情報処理装置1の機能的構成の一例について説明する。
図1には、情報処理装置1が有する機能に対応するブロックが模式化されている。
図1に示すように、情報処理装置1は、出力部2と、ジャイロ加速度センサ3と、記憶部4と、制御部10とを有する。なお、
図1には、上記の出力制御機能に関連する機能部が抜粋して示されているに過ぎず、図示以外の機能部、例えば既存のコンピュータがデフォルトまたはオプションで装備する機能部、例えば通信制御部などが情報処理装置1に備わることとしてもよい。
【0034】
出力部2は、各種の情報を出力する機能部である。あくまで一例として、出力部2は、各種の表示デバイス、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどにより実現されてよい。また、出力部2は、図示しない入力部と一体化された表示入力部としてタッチパネル等により実現されることとしてもよい。なお、表示は、発光により実現される場合に限らず、投影により実現されることとしてもよい。他の一例として、出力部2は、各種の音声出力デバイス、例えばスピーカなどにより実現されてよい。
【0035】
ジャイロ加速度センサ3は、加速度検出部および角速度検出部の一例に対応する。角速度検出部の他の一例として、地磁気センサを利用することもできる。例えば、ジャイロ加速度センサ3は、3つの軸、例えばX軸、Y軸及びZ軸の加速度および3つの軸回り、例えばロール、ピッチ及びヨーの角速度を検出することができる。なお、ここでは、3軸の加速度および3軸の角速度が検出される例を挙げたが、加速度および角速度の検出対象とする軸の数は3つに限定されない。また、ここでは、加速度および角速度の両方が検出される例を挙げるが、2つのうちいずれか一方だけが検出されることを妨げない。
【0036】
記憶部4は、各種のデータを記憶する機能部である。あくまで一例として、記憶部4は、情報処理装置1の内部、外部または補助のストレージやその記憶領域の一部により実現され得る。
【0037】
例えば、記憶部4には、後述の取得部12により注意義務エリアごとに取得される走行情報が後述の蓄積部13により所定数のピース、例えば50ピースまで蓄積される度に1つの走行情報群にパッケージ化された上で当該走行情報群が追加して保存される。このような追加が繰り返される結果、記憶部4には、所定数のピースの走行情報が1つにパッケージされた走行情報群の集合が走行情報履歴5として記憶されることになる。
【0038】
以下では、あくまで一例として、後述の取得部12により車両のエンジンが始動されてから取得が開始される走行情報がエンジンの停止まで累積される走行情報履歴5を例に挙げる。これはあくまで例示であって、ユーザ設定またはシステム設定によりリセットが行われるまで走行情報を累積し続けることができるのは言うまでもない。
【0039】
上記の走行情報には、注意義務エリアで測定される進行方向の加速度の時系列データ、あるいは進行方向の加速度の時系列データから求まる加速度の分散値が含まれ得る。さらに、上記の走行情報には、注意義務エリアで測定される進行方向の速度の時系列データ、あるいは進行方向の速度の時系列データから求まる平均速度が含まれてもよい。
【0040】
以下、上記の走行情報の一例として、注意義務エリアで取得される進行方向の加速度の分散値および注意義務エリアで取得される進行方向の平均速度の組で表される運転挙動データを例に挙げて説明を続ける。これに従えば、記憶部4には、注意義務エリアごとに取得される運転挙動データが所定数のピース、例えば50ピースまで蓄積される度に1つの運転挙動データ群にパッケージ化された上で当該運転挙動データ群が追加して保存される。このため、所定数のピースの運転挙動データが1つにパッケージされた運転挙動データ群の集合が走行情報履歴5と言い換えることもできる。
【0041】
このような走行情報履歴5のうち、車両のエンジンが始動された時点から1番目に蓄積される走行情報群、すなわち運転挙動データ群は、車両の走行開始後に比べて運転者の疲労度が相対的に低いとみなすことができる側面がある。このため、車両のエンジンが始動された時点から1番目に蓄積される運転挙動データ群が運転挙動データの第1の分布5Aとして他の運転挙動データ群と区別される。これは、後続して取得される運転挙動データ群を運転挙動データの第2の分布としてその上昇トレンドを評価する側面から、第1の分布5Aを第2の分布の比較対象として用いるためである。
【0042】
なお、記憶部4に記憶される情報は、上記の走行情報履歴5に限定されない。当然のことながら、記憶部4には、他のデータも記憶されることを妨げない。例えば、記憶部4には、上記の出力制御機能により用いられる情報として、疲労の上昇度合いや上昇度合いの推移、疲労上昇までの所要時間の統計値などが記憶されることとしてもよい。この他、記憶部4には、車両のナビゲーションに用いられる地図データや記録用に撮像される画像データなどが記憶されることとしてもよい。
【0043】
制御部10は、情報処理装置1の全体制御を行う処理部である。
図1に示すように、制御部10は、特定部11と、取得部12と、蓄積部13と、出力制御部17とを有する。
【0044】
特定部11は、車両の運転者が注意義務を負う場面を特定する処理部である。例えば、特定部11は、特定手段の一例に相当する。あくまで一例として、特定部11は、図示しない位置情報測定部により測定される情報処理装置1の位置情報と、記憶部4に記憶される地図データ上に設定された注意義務エリアとのマップマッチングを実行する。なお、上記の位置情報測定部は、GPS(Global Positioning System)受信機等により実現され得る。
【0045】
例えば、注意義務エリアは、地図データに含まれる道路標識の情報を用いて設定することができる。以下、あくまで一例として、車両の運転者に一時停止の義務が課される注意義務エリアが設定される例を挙げる。この場合、注意義務エリアは、道路標識のうち一時停止の道路標識が存在するノード、例えば交差点を始め、合流点や結節点などの道路上の構造変化点に基づいて設定される。
【0046】
図3は、一時停止エリアの一例を示す模式図である。
図3には、一例として、一時停止の道路標識Rs1が存在するT字路の交差点に一時停止エリアE1が設定される例が示されている。
図3に示すように、一時停止エリアE1には、交差点(濃いハッチング部分)および交差点の境界から所定の距離、例えば3m以内の範囲(薄いハッチング部分)が設定される。なお、
図3には、T字路の交差点に一時停止エリアが設定される例を挙げたが、T字路以外の交差点にも一時停止エリアを同様に設定できるのは言うまでもない。
【0047】
このような一時停止エリアの設定の下、特定部11は、情報処理装置1の位置情報と、一時停止エリアとのマップマッチングを実行することにより、一時停止エリアの通過を特定する。このとき、特定部11は、一時停止エリアの通過が特定された場合、一時停止エリアの通過方向が非優先道路から優先道路への通行に対応するか否かをさらに判定する。
【0048】
取得部12は、一時停止エリアにおける車両の走行情報を取得する処理部である。例えば、取得部12は、取得手段の一例に相当する。あくまで一例として、取得部12は、一時停止エリアの通過方向が非優先道路から優先道路への通行に対応する場合、一時停止エリアにおける走行情報を取得する。
【0049】
図4は、走行情報の取得方法の一例を示す模式図である。
図4には、一例として、
図3に示された一時停止エリアE1が濃いハッチングおよび薄いハッチングで示されると共に、車両の位置情報の軌跡が時間経過に対応する向きの矢印で示されている。さらに、
図4には、矢印の線のうち一時停止エリアE1に含まれる部分が実線で示される一方で、一時停止エリアE1に含まれない部分が破線で示されている。
図4に示すように、取得部12は、一時停止エリアE1への進入が開始された時刻t
sと、一時停止エリアE1からの離脱が終了した時刻t
eとを識別する。その後、取得部12は、ジャイロ加速度センサ3のログ等から時刻t
sおよび時刻t
eの区間に対応する3軸加速度の時系列データを取得する。
【0050】
このように加速度が取得された後、取得部12は、3軸加速度の時系列データのうちジャイロ加速度センサ3のサンプリング周波数に対応する全ての3軸加速度又は所定間隔、例えば1秒間おきにリサンプリングされた3軸加速度ごとに次のような処理を実行する。
【0051】
すなわち、取得部12は、X軸の加速度、Y軸の加速度およびZ軸の加速度の3軸加速度から進行方向を分析する。具体的には、取得部12は、3軸加速度が合成された合成加速度から重力加速度を除去する。その上で、取得部12は、重力加速度が除去された合成加速度のベクトルを水平面へ投影する。例えば、水平面は、情報処理装置1の静止時、例えば起動直後等の3軸加速度を用いてキャリブレーションすることによりあらかじめ算出しておくことができる。そして、取得部12は、水平面へ投影された合成加速度のベクトルから進行方向を分析することができる。
【0052】
このような進行方向の分析により、一時停止エリアで測定される進行方向の加速度の時系列データが得られる。さらに、進行方向の加速度の時系列データを積分することにより、進行方向の速度の時系列データが得られる。なお、ここでは、加速度の積分により速度を算出する例を挙げたが、他の方法により速度を取得することもできる。例えば、車両の車速信号線から車速パルスを取得したり、あるいはOBD(On-Board Diagnostics)2の機能を用いて車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)経由で車速信号を取得したりすることにより速度を取得することとしてもよい。
【0053】
その上で、取得部12は、加速度の時系列データから分散を算出することにより、加速度の分散値を取得する。さらに、取得部12は、速度の時系列データから平均を算出することにより、平均速度を取得する。このようにして注意義務エリアで取得される進行方向の加速度の分散値および注意義務エリアで取得される進行方向の平均速度の組で表される運転挙動データが取得される。
【0054】
蓄積部13は、取得部12により取得された車両の走行情報を蓄積する処理部である。例えば、蓄積部13は、蓄積手段の一例に相当する。あくまで一例として、蓄積部13は、車両のエンジンが始動されてからエンジンが停止されるまで、次のような処理を繰り返す。例えば、エンジンの始動および停止は、車両のアクセサリソケット、あるいはシガーソケットへの着脱に対応する給電の有無、あるいは長期間停止、例えば1時間以上の停止などの判定により検知できる。エンジンの始動の検知後、蓄積部13は、取得部12により一時停止エリアの運転挙動データが取得される度に当該運転挙動データをメモリ上の所定の記憶領域に蓄積する。このようにメモリに蓄積される一時停止エリアの運転挙動データが所定数のピース、例えば50ピースに達することにより、運転挙動データの第2の分布15が得られる。なお、運転挙動データの第2の分布15は、後述の出力制御部17により参照された後に記憶部4に記憶される走行情報履歴5へ追加して保存される。
【0055】
出力制御部17は、蓄積部13により蓄積された車両の走行情報に基づき、運転者の疲労に関する情報を出力する処理部である。例えば、出力制御部17は、出力制御手段の一例に相当する。
【0056】
あくまで一例として、出力制御部17は、記憶部4に記憶された運転挙動データの第1の分布5Aが近似された第1の近似直線に対する、蓄積部13により蓄積された運転挙動データの第2の分布15が近似された第2の近似直線の上昇トレンドに基づき、運転者の疲労に関する情報を出力するか否かを制御する。
【0057】
例えば、第1の近似直線および第2の近似直線は、運転挙動データの第1の分布5Aまたは運転挙動データの第2の分布15に重回帰等の回帰分析を実行することにより算出できる。なお、第1の近似直線の偏回帰係数は、1ラウンド目に算出された後にメモリ、あるいは記憶部4に保存しておき、2ラウンド目以降の重回帰の計算をスキップできる。
【0058】
図5は、第1の近似直線および第2の近似直線の一例を示す図である。
図5には、縦軸を加速度の分散とし、横軸を平均速度とするグラフが示されている。さらに、
図5には、第1の分布5Aに対応する運転挙動データ群が円によりプロットされる一方で、第2の分布15に対応する運転挙動データ群がひし形によりプロットされている。さらに、
図5には、運転挙動データの第1の分布5Aが近似された第1の近似直線L1が破線で示される一方で、運転挙動データの第2の分布15が近似された第2の近似直線L2が実線で示されている。
【0059】
図5に示すように、第1の近似直線L1は、速度が大きい程、ブレーキを踏んだ時の急ブレーキ度合や分散値が大きくなるため、右肩上がりの直線に近似される。第2の近似直線L2は、右肩上がりのグラフとなる点は共通する。その一方で、第2の近似直線L2に現れる加速度の分散値のレンジは、第1の近似直線L1に現れる加速度の分散値のレンジよりも狭い。さらに、平均速度が低速度域である場合、第1の近似直線L1および第2の近似直線L2の間で観測される加速度の分散値のギャップが顕著に現れる。つまり、第1の近似直線L1では、低速度域における不連続運転挙動が観測されにくい一方で、第2の近似直線L2では、低速度域における不連続運転挙動が観測され易い。これは、平均速度が大きければ(交差点規模が大きければ)信号機によって統制がなされるため、疲労が蓄積してきても平均速度が大きい領域においてL2はL1よりも分散値は少し上がる程度となるが、平均速度が小さい(交差点規模が小さい)ほど子どもや自転車の飛び出しの危険性が高まるため、低速ほど疲労度の蓄積具合に影響されやすいという事を示している。このことから、第1の近似直線L1に対する第2の近似直線L2の上昇トレンド、すなわち疲労の蓄積度合いを判定するには、第1の近似直線L1の切片b1および第2の近似直線L2の切片b2を比較することが有効であることが明らかである。
【0060】
したがって、出力制御部17は、第2の近似直線L2の切片b2が、第1の近似直線L1の切片b1に基づいて設定される閾値Th1以上であるか否かを判定する。このような閾値Th1には、切片b1よりも大きい値、例えば切片b1+マージンαを設定することができる。そして、第2の近似直線L2の切片b2が閾値Th1以上である場合、疲労の蓄積度合いが上昇していると推定できる。この場合、出力制御部17は、運転者の疲労に関する情報を出力する。例えば、
図2の通知2Aに例示した通り、出力制御部17は、メッセージ「疲労に注意!一度休憩しませんか」および休憩を促すアイコンを含むアラートを出力部2に表示させることができる。なお、アラートは、表示出力に限らず、音声出力により実現されてもよい。例えば、警告音、例えばビープ音を鳴動させたり、メッセージに対応するテキストを自動音声で読み上げさせたりすることができる。
【0061】
このように、出力制御部17は、第1の近似直線に対する第2の近似直線の上昇トレンドを判定する。このため、運転挙動データを統計的に定まる閾値と比較して疲労の蓄積度合いを評価するのではく、運転挙動データの自己相関により疲労の蓄積度合いを評価できる。したがって、運転者の疲労の蓄積度合いに個人差がある場合でも、疲労の蓄積度合いを適切に評価することが可能である。この結果、疲労していない運転者にアナウンスを行うことで精神的疲労を与えることを抑制したり、疲労している運転者の検知漏れを抑制したりすることができる。
【0062】
なお、
図5には、グラフの縦軸が加速度の分散値である例を挙げたが、加速度の分散値の代わりに加速度の分散値と類似する急ブレーキ、例えば減速の度合いを縦軸とすることもできる。また、
図5には、グラフの横軸が平均速度である例を挙げたが、平均速度の代わりに平均速度と類似する速度の中央値や最頻値、あるいは交差点規模を横軸とすることもできる。ここで挙げた「交差点規模」は、地図データに含まれる道路ネットワークのリンクのうち一時停止エリアのノードに接続されるリンク関連付けられた幅員やレーン数などの情報から一時停止エリアのノードの規模をレベル分けできる。
【0063】
また、ここでは、閾値Th1の一例として、切片b1+マージンαを用いる例を挙げたが、これに限定されない。例えば、事故発生時の運転挙動データの分布を取得し、これに基づいて閾値Th1を設定することができる。この他、走行情報履歴5に含まれる運転挙動データ群の集合から近似直線の切片を運転挙動データ群ごとに算出することにより得られた切片の推移に基づいて閾値Th1を設定することができる。
【0064】
<処理の流れ>
次に、本実施の形態に係る情報処理装置1の処理の流れについて説明する。
図6は、実施の形態に係る出力制御処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、あくまで一例として、情報処理装置1の電源がON状態されてからOFF状態にされるまで、あるいはエンジンの始動が検知されてから停止が検知されるまで繰り返すことができる。
【0065】
図6に示すように、特定部11は、情報処理装置1の位置情報と、一時停止エリアとのマップマッチングを実行することにより、一時停止エリアの通過を特定する(ステップS101)。
【0066】
そして、一時停止エリアの通過が特定された場合(ステップS101Yes)、特定部11は、一時停止エリアの通過方向が非優先道路から優先道路への通行に対応するか否かをさらに判定する(ステップS102)。
【0067】
このとき、一時停止エリアの通過方向が非優先道路から優先道路への通行に対応する場合(ステップS102Yes)、取得部12は、次のような処理を実行する。すなわち、取得部12は、一時停止エリアで取得される進行方向の加速度の分散値および注意義務エリアで取得される進行方向の平均速度の組で表される運転挙動データを取得する(ステップS103)。続いて、蓄積部13は、ステップS103で取得された一時停止エリアの運転挙動データをメモリ上の所定の記憶領域に蓄積する(ステップS104)。
【0068】
このとき、メモリに蓄積された一時停止エリアの運転挙動データが所定数のピース、例えば50ピースに達する場合(ステップS105Yes)、出力制御部17は、次のような処理を実行する。すなわち、出力制御部17は、記憶部4に記憶された運転挙動データの第1の分布5Aが近似された第1の近似直線を算出する(ステップS106)。なお、S106の分布及び近似線は過去の履歴や実験データ等から固定の値を用いてもよい。
【0069】
さらに、出力制御部17は、蓄積部13により蓄積された運転挙動データの第2の分布15が近似された第2の近似直線を算出する(ステップS107)。続いて、出力制御部17は、第1の近似直線L1の切片b1および第2の近似直線L2の切片b2を比較する(ステップS108)。
【0070】
ここで、第2の近似直線L2の切片b2が第1の近似直線L1の切片b1に基づいて設定される閾値Th1以上である場合(ステップS109Yes)、疲労の蓄積度合いが上昇していると推定できる。この場合、出力制御部17は、運転者の疲労に関する情報を出力し(ステップS110)、ステップS101へ移行する。
【0071】
なお、ステップS101No、ステップS102No、ステップS105NoまたはステップS109Noの分岐に進む場合、ステップS101へ移行する。
【0072】
<実施形態の効果の一例>
上述してきたように、本実施の形態に係る情報処理装置1は、疲労の蓄積度合いの評価に用いる走行情報を運転者が注意義務を負う場面における走行情報に絞り込む。これにより、運転者の責任に依らない外乱やストレスと区別して疲労の蓄積度合いを評価できる。したがって、本実施の形態に係る情報処理装置1によれば、疲労に関する情報の正確性の向上を実現できる。
【0073】
また、本実施の形態の情報処理装置1は、運転挙動データの第1の分布が近似された第1の近似直線に対する、運転挙動データの第2の分布が近似された第2の近似直線の上昇トレンドに基づき、運転者の疲労に関する情報を出力するか否かを制御する。このため、運転挙動データを統計的に定まる閾値と比較して疲労の蓄積度合いを評価するのではく、運転挙動データの自己相関により疲労の蓄積度合いを評価できる。したがって、本実施の形態の情報処理装置1によれば、運転者の疲労の蓄積度合いに個人差がある場合でも、疲労していない運転者に情報提供を行って精神的疲労を与えたり、疲労している運転者に対する情報提供に漏れが生じるのを抑制したりすることができる。
【0074】
さらに、本実施の形態の情報処理装置1は、第2の近似直線の切片が、第1の近似直線の切片により定められた閾値以上であるか否かに基づき、運転者の疲労に関する情報を出力するか否かを制御する。これにより、第1の近似直線および第2の近似直線の間で運転挙動にギャップが顕著に現れる切片をターゲットにして疲労の蓄積度合いの上昇を判定できる。それ故、本実施の形態の情報処理装置1によれば、疲労している時とそうでない時の間で運転挙動のギャップが他の運転者に比べて少ない運転者が対象とされても、疲労の蓄積度合いの上昇の誤検知や検知漏れを抑制して疲労に関する情報を提供できる。
【0075】
また、本実施の形態の情報処理装置1は、車両のエンジンが始動された時点から1番目に蓄積された運転挙動データの分布を第1の分布として選択する。このため、車両の走行開始後に比べて運転者の疲労度が相対的に低い第1の近似直線が選択される。よって、本実施の形態の情報処理装置1によれば、第2の近似直線との間で運転挙動にギャップが現れ易い第1の近似直線を比較対象として疲労の蓄積度合いの上昇を判定できる。
【0076】
さらに、本実施の形態の情報処理装置1は、一時停止エリアを特定し、一時停止エリアにおける走行情報を取得し、取得された一時停止エリアにおける走行情報を蓄積し、蓄積された一時停止エリアの走行情報に基づき、運転者の疲労に関する情報を実行する。これにより、運転者に課される注意義務の中でもより過失の割合が高い一時停止の義務が課される際の疲労の蓄積度合いを評価できる。したがって、本実施の形態に係る情報処理装置1によれば、疲労に関する情報の正確性をより効果的に向上させることができる。
【0077】
また、本実施の形態の情報処理装置1は、運転者の疲労に関する情報として、運転者の疲労の上昇度合い、上昇度合いの推移、運転者への疲労に関するアラート、車両のエンジンが始動された時点からアラートが出力されるまでの所要時間の統計値を出力する。したがって、本実施の形態に係る情報処理装置1によれば、疲労の蓄積度合いの上昇を多面的にアナウンスできる。
【0078】
<応用例>
上記の実施の形態は一例を示したものであり、種々の応用が可能である。
【0079】
(1)注意義務エリアの特定方法の応用例
上記の実施の形態では、注意義務エリアの通過がマップマッチングにより特定される例を挙げたが、他の方法により注意義務エリアの通過が特定されてもよい。例えば、マップマッチングの代わりに、情報処理装置1が搭載する撮像部により撮像される画像に対する画像認識により注意義務エリアの通過を特定してもよいし、マップマッチングおよび画像認識を組み合わせて注意義務エリアの通過を特定してもよい。
【0080】
(2)一時停止エリア以外の注意義務エリア
上記の実施の形態では、注意義務エリアの一例として、一時停止エリアを挙げたが、これに限定されず、一時停止エリア以外の他の注意義務エリアにも出力制御機能を適用できる。
【0081】
図7は、注意義務エリアの応用例を示す模式図である。
図7には、一例として、点滅信号を表示する信号機Sg1が設置された十字路の交差点に点滅信号エリアE2が設定される例が示されている。さらに、
図7には、十字路の交差点に設置されている信号機のうち非優先道路に設定されている黄点滅の信号機Sg1が抜粋して図示されている。
図7に示すように、点滅信号エリアE2には、
図3に示された一時停止エリアE1の場合と同様、交差点(濃いハッチング部分)および交差点の境界から所定の距離、例えば3m以内の範囲(濃いハッチング部分)が設定される。なお、
図7には、十字路の交差点に点滅信号エリアが設定される例を挙げたが、十字路以外の交差点にも点滅信号エリアを同様に設定できるのは言うまでもない。
【0082】
図8は、注意義務エリアの応用例を示す模式図である。
図8には、一例として、センターラインが白線である片側1車線の道路で車両C1が車両C2を追い越す場合に設定される追い越し注意エリアE3が示されている。この場合、車両C1がセンターラインをはみ出して車両C2を追い越す構図が画像認識された場合、車両C2の位置情報を用いて追い越し注意エリアE3が設定される。
図8に示す例で言えば、車両C2の位置情報から所定の距離、例えば5m以内の範囲、すなわち破線の円の内側が追い越し注意エリアE3に設定される。このような追い越し注意エリアE3における走行情報を取得する場合、車両C1がセンターラインをはみ出して車両C2を追い越す構図が画像認識されてから車両C1が車両C2の前を走行する構図が画像認識されるまでの区間の走行情報を取得すればよい。この他、右折の方向指示器の操作が検出されてから方向指示器が元に戻されるまでの区間の走行情報を取得することとしてもよい。なお、
図8には、センターラインが白線である例を挙げたが、センターラインは破線であっても黄色の線であっても同様に設定できるのは言うまでもない。
【0083】
図9は、注意義務エリアの応用例を示す模式図である。
図9には、一例として、点灯信号を表示する信号機Sg21~信号機Sg24が設置された十字路の交差点の右折時に設定される右折注意エリアE4が例示されている。
図9に示すように、右折注意エリアE4には、
図3に示された一時停止エリアE1の場合と同様、交差点(濃いハッチング部分)および交差点の境界から所定の距離、例えば3m以内の範囲(濃いハッチング部分)が設定される。このような右折注意エリアE4では、信号機Sg21が青信号である車両C3の右折時に信号機Sg22が青信号である直進車B1への注意義務が車両C3の運転者に課される。このため、右折の方向指示器が操作された場合、あるいはナビゲーションルートに交差点の右折ルートが設定される場合に絞って右折注意エリアE4の通過が特定される。なお、
図9には、十字路の交差点に右折注意エリアが設定される例を挙げたが、十字路以外の交差点にも右折注意エリアを同様に設定できるのは言うまでもない。
【0084】
図10は、注意義務エリアの応用例を示す模式図である。
図10には、一例として、遮断機R11および遮断機R12を含む踏切R1が設置された片側1車線の道路上に設定される踏切注意エリアE5が例示されている。
図10に示すように、踏切注意エリアE5には、遮断機R11および遮断機R12の範囲と、踏切R1の手前側に位置する遮断機R11からさらに手前側へ向かって所定の距離、例えば3m以内である範囲とが設定される。なお、
図10には、片側1車線の道路に踏切注意エリアが設定される例を挙げたが、踏切が設置された対面通行の道路などにも踏切注意エリアを同様に設定できるのは言うまでもない。
【0085】
図11は、注意義務エリアの応用例を示す模式図である。
図11には、一例として、スクールゾーンの道路標識Rs2が存在する道路上に歩行者注意エリアE6が設定される例が示されている。
図11に示すように、歩行者注意エリアE6には、スクールゾーンの道路標識Rs2により規定された範囲と、スクールゾーンの道路標識Rs2からさらに手前側へ向かって所定の距離、例えば5m以内である範囲とが設定される。
【0086】
以上のように、
図7~
図11を用いて説明した注意義務エリア以外の他の注意義務エリアにも出力制御機能を適用できる。例えば、信号機のない交差点で左方が優先される場合、レーンをまたいで前方車両(駐車車両)を追い越す場合、左折時に左後続バイクを先行させる場合、ガソリンスタンド、コンビニエンスストアなどの歩道と交差する場合などにも出力制御機能を適用できる。
【0087】
なお、上記の実施の形態では、看板状の道路標識により注意義務エリアの特定が行われる例を挙げたが、ペイント式の道路標識により注意義務エリアの特定が行われることとしてもよい。
【0088】
(3)走行情報の応用例
上記の実施の形態では、走行情報として、注意義務エリアで取得される進行方向の加速度の分散値および注意義務エリアで取得される進行方向の平均速度の組で表される運転挙動データを用いる例を挙げたが、必ずしも2つ項目が含まれずともよい。
【0089】
例えば、出力制御部17は、蓄積部13により蓄積された加速度の分散値の第1の分布に対する、蓄積部13により第1の分布よりも後に蓄積された加速度の分散値の第2の分布の上昇トレンドに基づき、運転者の疲労に関する情報を出力するか否かを制御できる。
【0090】
より詳細には、出力制御部17は、第1の分布に含まれる加速度の分散値に所定の統計処理、例えば平均や中央値、最頻値の算出などを実行することにより第1の分布の代表値を算出する。また、出力制御部17は、第2の分布に含まれる加速度の分散値に第1の分布に適用した統計処理と同様の統計処理を実行することにより第2の分布の代表値を算出する。その上で、出力制御部17は、第2の分布の代表値が、第1の分布の代表値に基づいて設定される閾値Th2以上であるか否かを判定する。このような閾値Th2には、第1の分布の代表値よりも大きい値、例えば第1の分布の代表値+マージンβを設定することができる。そして、第2の分布の代表値が閾値Th2以上である場合、疲労の蓄積度合いが上昇していると推定できる。この場合、出力制御部17は、運転者の疲労に関する情報を出力する。これにより、運転者の疲労の蓄積度合いに個人差がある場合でも、疲労していない運転者に情報提供を行って精神的疲労を与えたり、疲労している運転者に対する情報提供に漏れが生じるのを抑制したりすることができる。
【0091】
また、上記の実施の形態では、加速度の分散値の分布を用いて上昇トレンドを判定する例を挙げたが、必ずしも加速度の分散値の分布を用いずともよい。例えば、出力制御部17は、蓄積部13により注意義務エリアの走行中に蓄積される加速度の分散値の変化に基づき、運転者の疲労に関する情報を出力することもできる。あくまで一例として、出力制御部17は、蓄積部13により注意義務エリアにおける加速度の分散値が新たに蓄積された場合、その時点から遡って所定の期間内に閾値Th3以上である加速度の分散値が観測される頻度が閾値Th4以上であるか否かを判定する。そして、所定の期間内に閾値Th3以上である加速度の分散値が観測される頻度が閾値Th4以上である場合、疲労の蓄積度合いが上昇していると推定できる。この場合、出力制御部17は、運転者の疲労に関する情報を出力する。これにより、疲労につながる不連続運転挙動を評価できる。したがって、疲労に関する情報の正確性を効果的に向上させることができる。
【0092】
(4)疲労回復の通知
上記の実施の形態では、疲労の蓄積度合いを判定する例を挙げたが、疲労の回復度合いを判定することもできる。あくまで一例として、出力制御部17は、蓄積部13により注意義務エリアにおける加速度の分散値が新たに蓄積された場合、その時点から遡って所定の期間内に閾値Th5未満である加速度の分散値が観測される頻度が閾値Th6以上であるか否かを判定できる。そして、所定の期間内に閾値Th5未満である加速度の分散値が観測される頻度が閾値Th6以上である場合、疲労の蓄積度合いが下降している、言い換えれば疲労が回復していると推定できる。他の一例として、出力制御部17は、第2の分布の代表値が第1の分布の代表値以下であるか否かを判定する。そして、第2の分布の代表値が第1の分布の代表値以下である場合、疲労の蓄積度合いが下降している、言い換えれば疲労が回復していると推定できる。更なる一例として、出力制御部17は、第2の近似直線L2の切片b2が第1の近似直線L1の切片b1以下である場合、疲労の蓄積度合いが下降している、言い換えれば疲労が回復していると推定できる。この場合、出力制御部17は、運転者の疲労回復に関する情報、例えば疲労回復を通知するメッセージなどを出力する。
【0093】
(5)第1の分布の応用例
上記の実施の形態では、車両のエンジンが始動された時点から1番目に蓄積された運転挙動データの分布を第1の分布として選択する例を挙げたが、これに限定されない。例えば、記憶部4に記憶された走行情報履歴5のうち運転挙動データの複数の分布の各々が近似された複数の近似直線のうち切片が最小である運転挙動データの分布を第1の分布として選択することもできる。これにより、第2の近似直線との間で運転挙動にギャップが現れ易い第1の近似直線を比較対象として疲労の蓄積度合いの上昇を判定できる。
【0094】
また、上記の実施の形態では、運転挙動データの第2の分布が蓄積される直前に蓄積された運転挙動データの分布を第1の分布として参照することもできる。これにより、直近の運転挙動の変化を細やかに反映して疲労の蓄積度合い、あるいは疲労の回復度合いを評価できる。
【0095】
(6)情報の通知の応用例
例えば、
図2に示す通知2Bを行う場合、第1の近似直線L1の切片b1と第2の近似直線L2の切片b2とのギャップ、例えば差の絶対値や二乗値を疲労度の上昇ポイント、または、疲労度の下降ポイント、言い換えれば疲労回復のポイントを算出できる。あくまで一例として、出力制御部17は、切片b2から切片b1が減算された減算値の符号が正である場合、減算値が所定の数値範囲、例えば0~10の範囲に正規化された疲労度の上昇ポイントの表示または音声を出力する。他の一例として、出力制御部17は、切片b2から切片b1が減算された減算値の符号が負である場合、減算値が所定の数値範囲、例えば0~10の範囲に正規化された疲労度の下降ポイント、言い換えれば疲労回復のポイントの表示または音声を出力する。更なる一例として、出力制御部17は、時系列に算出される疲労度の上昇ポイント、および/または、疲労度の下降ポイントの推移を表示出力または音声出力できる。
【0096】
(7)疲労+ストレス
上述の通り、ストレスは、必ずしも疲労につながるとは限らないが、ある一定程度の精神的ダメージを及ぼす可能性がある。このことから、情報処理装置1は、走行情報として取得される加速度の分散値をストレスの度合いに応じて補正することもできる。あくまで一例として、情報処理装置1は、加速度の分散値の補正にヒヤリハットの大きさおよび頻度のうち少なくとも1つを用いることができる。
【0097】
ここで、ヒヤリハットの大きさとは、負の値をとる重力加速度、すなわち鉛直上向きに作用する加速度の大きさを指す。例えば、鉛直上向きに作用する加速度が大きいほど加速度の分散値に乗じる補正係数を大きくする一方で、鉛直上向きに作用する加速度が小さいほど加速度の分散値に乗じる補正係数を大きくする。あくまで一例として、鉛直上向きに作用する加速度が0以上である場合、1以上の補正係数を加速度の分散値に乗算する一方で、鉛直上向きに作用する加速度が0未満である場合、0以上1未満の補正係数を加速度の分散値に乗算する。また、ヒヤリハットの頻度が高いほど加速度の分散値に乗じる補正係数を大きくする一方で、ヒヤリハットの頻度が低いほど加速度の分散値に乗じる補正係数を大きくする。あくまで一例として、ヒヤリハットの頻度が閾値Th7以上である場合、1以上の補正係数を加速度の分散値に乗算する一方で、ヒヤリハットの頻度が閾値Th7未満である場合、0以上1未満の補正係数を加速度の分散値に乗算する。
【0098】
この他、情報処理装置1は、情報処理装置1の位置情報が夜間、通学時間帯、通行道路の道幅などの高危険度状況に対応する場合、1以上の補正係数を加速度の分散値に乗算することもできる。その一方で、情報処理装置1の位置情報が夜間、通学時間帯、通行道路の道幅などの高危険度状況に対応しない場合、0以上1未満の補正係数を加速度の分散値に乗算することもできる。
【0099】
(8)クライアントサーバシステム
上記の実施の形態では、情報処理装置1が上記の出力制御機能を提供する例を挙げたが、上記の出力制御機能は、クライアントサーバシステムにより出力制御サービスとして提供されることとしてもよい。
【0100】
図12は、応用例に係るクライアントサーバシステムの機能構成例を示す図である。
図12に示すクライアントサーバシステム6では、1つの側面として、サーバ装置8からクライアント端末7へ上記の出力制御サービスが提供される。なお、
図12には、
図1に示された機能部と同一の機能を発揮する機能部には同一の符号が付与されており、同一の符号が付与された機能部についてはその詳細な説明を省略する。
【0101】
図12に示すように、クライアントサーバシステム6には、クライアント端末7と、サーバ装置8とが含まれ得る。クライアント端末7及びサーバ装置8は、ネットワークNWを介して通信可能に接続される。例えば、ネットワークNWは、有線または無線を問わず、インターネットやLAN(Local Area Network)などの任意の種類の通信網であってよい。
【0102】
ここで、
図12には、説明の便宜上、1つのサーバ装置8につき1つのクライアント端末7が接続されている例を挙げたが、当然のことながら、1つのサーバ装置8には、1つのクライアント端末7が接続されてよい。
【0103】
クライアント端末7は、上記の出力制御サービスの提供を受ける端末装置の一例である。クライアント端末7は、任意のコンピュータにより実現されてよく、あくまで一例として、
図1に示された情報処理装置1により実現されてよい。
【0104】
ここで、サーバ装置8により上記の出力制御サービスが提供される側面から、クライアント端末7には、
図1に示された特定部11、取得部12、蓄積部13および出力制御部17が備わらずともよい。その代わりに、クライアント端末7は、運転者の疲労に関する情報を出力する側面から、
図1に示された情報処理装置1と同様の機能を発揮する出力部2を有する。さらに、クライアント端末7は、走行情報をサーバ装置8へアップロードする側面から、
図1に示された情報処理装置1と同様の機能を発揮するジャイロ加速度センサ3を有する。
【0105】
なお、サーバ装置8が上記の注意義務エリアの通過を特定する際、任意の方法により特定されてよいが、マップマッチングを使用する場合、位置情報をアップロードする側面から位置情報測定部を有してよい。また、画像認識が使用される場合、画像をアップロードする側面から撮像部を有してよい。
【0106】
一方、サーバ装置8は、上記の出力制御サービスを提供するコンピュータの一例である。あくまで一例として、サーバ装置8は、上記の出力制御サービスをオンプレミスに提供するサーバとして実現できる。この他、サーバ装置8は、SaaS(Software as a Service)型のアプリケーションとして実現することで、上記の出力制御サービスをクラウドサービスとして提供してもよい。
【0107】
上記の出力制御サービスを提供するサーバ装置8の機能的構成について説明する。
図12には、サーバ装置8が有する機能に対応するブロックが模式化されている。
図8に示すように、サーバ装置8は、通信インタフェイス部81と、記憶部83と、制御部85とを有する。なお、
図1には、上記の出力制御サービスに関連する機能部が抜粋して示されているに過ぎず、図示以外の機能部、例えば既存のコンピュータがデフォルトまたはオプションで装備する機能部がサーバ装置8に備わることとしてもよい。
【0108】
通信インタフェイス部81は、他の装置、例えばクライアント端末7との間で通信制御を行う通信制御部の一例に対応する。あくまで一例として、通信インタフェイス部81は、LANカードなどのネットワークインターフェイスカードにより実現される。例えば、通信インタフェイス部81は、クライアント端末7から走行情報の他、位置情報や画像を受け付けてよい。また、通信インタフェイス部81は、運転者の疲労に関する情報などをクライアント端末7へ出力してよい。
【0109】
記憶部83は、各種のデータを記憶する機能部である。あくまで一例として、記憶部18は、サーバ装置8の内部、外部または補助のストレージにより実現される。例えば、記憶部83は、
図1に示された走行情報履歴5と一致してよい走行情報履歴5を記憶する。
【0110】
制御部85は、サーバ装置8の全体制御を行う処理部である。例えば、制御部85は、ハードウェアプロセッサにより実現される。
図12に示すように、制御部85は、特定部85Aと、取得部85Bと、蓄積部85Cと、出力制御部85Dとを有する。
【0111】
これら特定部85A、取得部85B、蓄積部85Cおよび出力制御部85Dは、
図1に示された特定部11、取得部12、蓄積部13および出力制御部17に対応し得る。例えば、下記3点を除き、特定部85A、取得部85B、蓄積部85Cおよび出力制御部85Dは、特定部11、取得部12、蓄積部13および出力制御部17と発揮する機能に差がなくともよい。1つ目として、特定部85Aが位置情報や画像などのセンサ情報をネットワークNW経由で取得し得る。2つ目として、取得部85BがネットワークNW経由で走行情報を取得し得る。3つ目として、出力制御部85Dが運転者の疲労に関する情報をネットワークNW経由で伝送し得る。
【0112】
以上のように構成された応用例に係るクライアントサーバシステム6によれば、
図1に示された情報処理装置1と同様、疲労に関する情報の正確性の向上を実現できる。
【0113】
<システム>
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0114】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0115】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0116】
<ハードウェア>
次に、本実施の形態で説明した情報処理装置と同様の機能を有する情報処理プログラムを実行するコンピュータのハードウェア構成例について説明する。
図13は、ハードウェア構成例を説明する図である。
図13に示すように、コンピュータ100は、通信装置100a、HDD(Hard Disk Drive)100b、メモリ100c、プロセッサ100dを有する。また、
図13に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0117】
通信装置100aは、ネットワークインタインタフェイスカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD100bは、
図1や
図12等に示した機能を動作させるプログラムやDB(DataBase)を記憶する。
【0118】
プロセッサ100dは、
図1や
図12等に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD100b等から読み出してメモリ100cに展開することで、
図1や
図12等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、プロセスは、コンピュータ100が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ100dは、特定部11、取得部12、蓄積部13および出力制御部17等と同様の機能を有するプログラムをHDD100b等から読み出す。そして、プロセッサ100dは、特定部11、取得部12、蓄積部13および出力制御部17等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0119】
このように、コンピュータ100は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する情報処理装置として動作する。また、コンピュータ100は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施例と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施の形態でいうプログラムは、コンピュータ100によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本実施の形態で説明した情報処理装置が有する機能を同様に実現することができる。
【0120】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 情報処理装置
2 出力部
3 ジャイロ加速度センサ
4 記憶部
5 走行情報履歴
5A 第1の分布
10 制御部
11 特定部
12 取得部
13 蓄積部
15 第2の分布
17 出力制御部