(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060938
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】携帯型野生動物撃退装置
(51)【国際特許分類】
A01M 29/06 20110101AFI20230424BHJP
A01M 29/16 20110101ALI20230424BHJP
A01M 29/10 20110101ALI20230424BHJP
【FI】
A01M29/06
A01M29/16
A01M29/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170628
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】521261304
【氏名又は名称】株式会社ウルフ・カムイ
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 修志
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 元博
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121DA16
2B121DA25
2B121DA31
2B121DA58
2B121DA59
2B121DA60
2B121DA62
2B121DA63
2B121EA21
2B121FA02
2B121FA05
2B121FA13
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】人間が携帯することが可能であり、かつ有効な威嚇及び撃退効果を有数する携帯型野生動物撃退装置を提供する。
【解決手段】携帯型野生動物撃退装置は、野生動物を威嚇する捕食動物の像を表示する像表示手段と、野生動物を威嚇する捕食動物の威嚇音及び/又は葉擦れ音を発生する音響発生手段とを備え、像表示手段の表示する像と音響発生手段の発生する音とを連携させて野生動物を威嚇し撃退するように構成されている。像表示手段が光又は像を投影する投影手段を備えており、この投影手段及び音響発生手段は人間が携帯可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生動物を威嚇する捕食動物の像を表示する像表示手段と、野生動物を威嚇する捕食動物の威嚇音及び/又は葉擦れ音を発生する音響発生手段とを備え、前記像表示手段の表示する像と前記音響発生手段の発生する音とを連携させて前記野生動物を威嚇し撃退するように構成されている携帯型野生動物撃退装置であり、
前記像表示手段が光又は像を投影する投影手段を備えており、該投影手段及び前記音響発生手段は人間が携帯可能に構成されていることを特徴とする携帯型野生動物撃退装置。
【請求項2】
前記投影手段は、人間が携帯可能な携帯機器に設けられ、被投影体に捕食動物の静止画又は動画の2次元映像を投影する2次元映像投影手段であることを特徴とする請求項1に記載の携帯型野生動物撃退装置。
【請求項3】
前記投影手段は、人間が携帯可能な携帯機器に設けられ、捕食動物の像が描かれているシートの該捕食動物の2次元の像、又は捕食動物の3次元の像に光を照射する光照射手段であることを特徴とする請求項1に記載の携帯型野生動物撃退装置。
【請求項4】
前記投影手段は、人間が携帯可能であり、捕食動物の静止状態又は動作状態の3次元ホログラム映像を投影する3次元映像投影手段であることを特徴とする請求項1に記載の携帯型野生動物撃退装置。
【請求項5】
前記2次元映像投影手段又は前記3次元映像投影手段は、2つの眼を有する頂点捕食者の映像を表示するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の携帯型野生動物撃退装置。
【請求項6】
前記投影手段は、光又は像を連続的に又は点滅させて投影するように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の携帯型野生動物撃退装置。
【請求項7】
前記音響発生手段は、人間が携帯可能な携帯機器に設けられた音響信号生成部と、該音響信号生成部からの音響信号を音響に変換して発するスピーカとを備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の携帯型野生動物撃退装置。
【請求項8】
前記スピーカは、前記携帯機器に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の携帯型野生動物撃退装置。
【請求項9】
前記音響発生手段は、単数又は複数の捕食動物の威嚇音と葉擦れ音とを発生するように構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の携帯型野生動物撃退装置。
【請求項10】
前記野生動物の接近を検知する赤外線センサからの検知信号を受信する受信手段をさらに備えており、前記受信手段によって前記検知信号を受信した場合に前記像表示手段及び前記音響発生手段を作動させるように構成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の携帯型野生動物撃退装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野生動物を威嚇して撃退するための携帯型の野生動物撃退装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、野生動物保護や人間の住環境拡大、農村の過疎化、猟師の減少等が要因となって、人間の生活圏や行動圏への野生動物(例えば、クマ等)の出没が多発している。農作業、山仕事、山歩き、又はキャンプ等において、このような野生動物に遭遇することは、非常に危険であり、深刻な事故に発展する可能性がある。
【0003】
野生動物との遭遇することを避ける方法としてよく知られているのは、熊鈴やラジオ等の音源を携帯し、音を鳴らす方法である。これは人間が存在することを野生動物に予め知らせることによって遭遇を避ける方法であるが、野生動物と偶然に鉢合わせした場合は有効ではなく、また、実際に遭遇してしまった場合には、全く対応することができなかった。
【0004】
野生動物を威嚇して撃退する装置として、特許文献1には、複数の発光素子を有する発光手段と、野生動物を威嚇する威嚇音を発生する音声発生手段と、発光手段の発光動作及び音声発生手段の発音動作を制御する制御手段と、動物の風貌に似せた形状を有する外装手段とを備えた野生動物撃退装置が開示されている。
【0005】
また、野生動物を威嚇して撃退する装置として、特許文献2には、対象動物が恐れる動物に似せた姿態を有する像を移動手段に載置して移動させるように構成した動物撃退装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3220433号公報
【特許文献2】米国特許公開公報第2019/069535号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら特許文献1及び2に記載の野生動物撃退装置は、いずれも据え置き型の装置であり、多少の移動は可能であるが、人間が携帯して持ち歩くことは不可能である。従って、山歩きする人、山仕事する人、農作業する人、野営キャンパー等が据え置き型の野生動物撃退装置の設置領域より外の領域で作業したり移動したりする場合は、全く役に立たなかった。
【0008】
従って本発明の目的は、人間が携帯することが可能であり、かつ有効な威嚇及び撃退効果を有する携帯型野生動物撃退装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、携帯型野生動物撃退装置は、野生動物を威嚇する捕食動物の像を表示する像表示手段と、野生動物を威嚇する捕食動物の威嚇音及び/又は野生動物を威嚇する捕食動物の仲間が近くにいることを想像させる葉擦れ音を発生する音響発生手段とを備え、像表示手段の表示する像と音響発生手段の発生する音とを連携させて野生動物を威嚇して撃退するように構成されている。像表示手段が光又は像を投影する投影手段を備えており、この投影手段及び音響発生手段は人間が携帯可能に構成されている。
【0010】
光又は像を投影する投影手段及び音響発生手段は人間が携帯可能に構成されているため、この携帯型野生動物撃退装置によれば、野生動物が出現した場合には、その場で直ちに有効な威嚇及び撃退を行うことができる。また、野営キャンプや山林での作業時など、近くに設置して野生動物を遠ざける野生動物撃退装置として機能させることもできる。
【0011】
投影手段は、人間が携帯可能な携帯機器に設けられ、被投影体に捕食動物の静止画又は動画の2次元映像を投影する2次元映像投影手段であることが好ましい。この2次元映像は、カラー映像であることがより好ましい。その被投影体は、地面、葉っぱ、木の幹、煙、水蒸気、着衣又はバッグ等で、像が認識できる状態であれば問題ない。
【0012】
投影手段は、人間が携帯可能な携帯機器に設けられ、予め捕食動物の像が描かれているシート等に捕食動物の2次元の像に光を照射する光照射手段であることも好ましい。光を照射することで、その像が浮かび上がってよく認識できるようになる。特に夜間は、その認識の可能性が顕著に向上する。
【0013】
投影手段は、人間が携帯可能な携帯機器に設けられ、捕食動物の3次元の像に光を照射する光照射手段であることも好ましい。予め、捕食動物の3次元の像(例えば空気人形のように、中に空気を入れるビニール製立体像)を持参することで、近くに携帯可能な3次元の像を設置することができる。
【0014】
投影手段は、人間が携帯可能であり、捕食動物の静止状態又は動作状態の3次元ホログラム映像等を投影する3次元映像投影手段であることも好ましい。この3次元ホログラム映像は、カラー映像であることがより好ましい。このホログラム映像投影装置等の3次元映像投影装置は、リュックサックなどのバッグに装着しておくと、携帯が楽であり、非常時に直ぐに活用することが可能となる。
【0015】
2次元映像投影手段又は3次元映像投影手段は、主にオオカミなどの捕食動物を強く認識させるために、捕食動物の2つの眼を有する頂点捕食者の映像を表示するように構成されていることがより好ましい。このような2つの眼に睨まれている映像が表示されると、野生動物の緊張が高まり、威嚇、忌避及び撃退効果が著しく向上し、即座の退避行動につながる。
【0016】
投影手段は、光又は像を連続的に又は点滅させて投影するように構成されていることも好ましい。
【0017】
音響発生手段は、人間が携帯可能な携帯機器に設けられた音響信号生成部と、音響信号生成部からの音響信号を音響に変換して発するスピーカとを備えていることも好ましい。
【0018】
この場合、スピーカは、携帯機器に設けられていることがより好ましい。
【0019】
音響発生手段は、単数又は複数の捕食動物の威嚇音と、捕食動物の仲間が近くにいることを想像させる葉擦れ音とを発生するように構成されていることも好ましい。尚、発生する音響に関しては、近隣の騒音を考慮して、超音波音響に変更することも可能である。
【0020】
野生動物の接近を検知するパッシブ赤外線センサ又はアクティブ赤外線センサ等の検知信号を受信する受信手段をさらに備えており、受信手段によって検知信号を受信した場合に像表示手段及び音響発生手段を作動させるように構成されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、携帯型野生動物撃退装置は、光又は像を投影する投影手段及び音響発生手段が、人間が携帯可能に構成されているため、野生動物が出現した場合には、その場で直ちに有効な威嚇及び撃退を行うことができ、また作業や就寝する場所の近くに設置することが可能であり、携帯型野生動物威嚇装置として機能することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の携帯型野生動物撃退装置の一実施形態(スマートフォン活用像投影型)における全体構成を概略的に示す構成図である。
【
図2】
図1の携帯型野生動物撃退装置における携帯端末の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図1の携帯型野生動物撃退装置における携帯端末のコンピュータによる動作制御処理例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の携帯型野生動物撃退装置の他の実施形態(スマートフォン活用光照射型)における全体構成を概略的に示す構成図である。
【
図5】
図4の携帯型野生動物撃退装置における携帯端末の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【
図6】本発明の携帯型野生動物撃退装置のさらに他の実施形態(携帯ライト型)における全体構成を概略的に示す構成図である。
【
図7】本発明の携帯型野生動物撃退装置のまたさらに他の実施形態(3次元像投射型)における全体構成を概略的に示す構成図である。
【
図8】
図7の携帯型野生動物撃退装置における携帯端末の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明の携帯型野生動物撃退装置の一実施形態(スマートフォン活用像投影型)における全体の構成を概略的に示している。
【0024】
同図に示すように、本実施形態の携帯型野生動物撃退装置は、人間が携帯可能な携帯機器である例えばスマートフォン等の携帯端末10から主として構成されている。この携帯端末10は、強力な投影機能を有するプロジェクタ(本発明の投影手段に対応する)を内蔵又は外付けで備えており、被投影体である例えば地面、葉っぱ、木の幹、煙、水蒸気、着衣若しくはバッグ等や、テントのサイドシート、ルーフシート若しくはフライシート、又はタープ等のシート11に野生動物を威嚇する捕食動物(例えばオオカミ等の頂点捕食者)のカラー又はモノクロの静止画又は動画の2次元映像12を投影することができるように構成されている。2次元映像12の投影は、シート11の表側(テントの場合はテントの外部)から行っても良いし、シート11の裏側(テントの場合はテントの内部)から行っても良い。シート11が存在しない場合は、地面、葉っぱ、木の幹、煙、水蒸気、又は着衣、バッグ等を被投影体としても良い。2次元映像12を動画で投影すれば、動物の映像に動きがあり、また、異なる種類の動物、異なる姿、異なる動き、異なる色、異なる明るさ、異なる輝度の像を容易に表示できるため、野生動物は学習することが難しく、撃退効果を持続的に維持することが可能となる。投影される2次元映像12は、主にオオカミなどの捕食動物を強く認識させるために、捕食動物の2つの眼を有する頂点捕食者の映像を表示するように構成されていることが望ましい。このような2つの眼に睨まれている映像が表示されると、野生動物の緊張が高まり、威嚇、忌避及び撃退効果が著しく向上し、即座の退避行動につながる。
【0025】
携帯端末10は、さらに、野生動物を威嚇する捕食動物(例えばオオカミ等の頂点捕食者)の威嚇音及び/又は捕食動物の仲間が近くにいることを想像させる葉擦れ音を発生する音響信号生成部と、この音響信号生成部からの音響信号を音響に変換する内蔵又は外付けのスピーカとを備えている。スピーカは、野生動物を威嚇する威嚇音を、野生動物が可聴な周波数(人間が可聴な周波数及び/又は人間が可聴できない超音波周波数)で空中に放出するものである。本実施形態では携帯端末10に内蔵の又は外付けのスピーカを用いているが、携帯端末10とは別個に設置した単数又は複数のスピーカを設けても良い。複数のスピーカを設けることが望ましいが、スピーカの数は任意である。
【0026】
スピーカから発せられる威嚇音は、オオカミ等の捕食動物の肉声が望ましい。この場合、単数の捕食動物の威嚇音より複数の捕食動物の威嚇音の方がより威嚇効果が増大する。この威嚇音に葉擦れ音を伴わせて発生することがより望ましい。葉擦れ音を合わせて発生させることにより、実際には1頭しか見えていないが、仲間がいることを認識させることができるので、威嚇効果が大きく増大する。威嚇音は、80dB以上であることが望ましいがこれに限定されるものではない。また、コンピュータ10bによって、威嚇音及び葉擦れ音の種類(パターン)をランダムに切り替え、野生動物が嫌がり、かつ慣れないものとすることができる。
【0027】
本実施形態においては、携帯端末10とは別個に、野生動物の接近を検知してその検知信号を送信する機能を有する赤外線センサ13が設けられている。この赤外線センサ13は、単数又は複数の赤外線センサであり、野生動物が現れそうな位置に予め設置しておき、感知範囲内に侵入してきた野生動物を検知してこれを知らせる検知信号をブルートゥース(登録商標)等の無線機能を用いて携帯端末10へ送信するように構成されている。赤外線センサ13は野生動物の発する赤外線を検知する一般的なパッシブ赤外線センサであっても良いし、線状に発せられた赤外線ビームを野生動物によって遮断されたことを検知するアクティブ赤外線センサであっても良い。なお、赤外線センサ13の設置は必須ではなく、設けなくとも良い。
【0028】
図2は、本実施形態における携帯端末10の電気的構成を概略的に示している。
【0029】
同図に示すように、本実施形態の携帯端末10は、スマートフォンとしての通常の制御処理を行うスマートフォン回路10aと、コンピュータ10bと、このコンピュータ10bに図示しない入出力インタフェースを介して電気的に接続されているプロジェクタ駆動回路10c及びスピーカ駆動回路10dと、コンピュータ10bや上述したプロジェクタ駆動回路10c及びスピーカ駆動回路10d、並びに後述する受信回路10hに電力を供給する図示しない電源装置とを備えている。プロジェクタ駆動回路10cはプロジェクタ10eに電気的に接続されこれを駆動するように構成されており、スピーカ駆動回路10dはスピーカ10fに電気的に接続されこれを駆動するように構成されている。携帯端末10は、さらに、本実施形態の携帯型野生動物撃退装置の動作スイッチ10gと、赤外線センサ13から送信される検知信号の受信回路10hとを備えており、これらは図示しない入出力インタフェースを介してコンピュータ10bに電気的に接続されている。なお、コンピュータ10bは、図示されていないが、上述した入出力インタフェースの他に、CPU、ROM、RAM及びフラッシュメモリ等を備えている。コンピュータ10bがブルートゥース(登録商標)等の無線通信機能を備えている場合、上述した受信回路10hはこの無線通信機能を利用した回路となる。スイッチ10gは、携帯端末10に設けられたハードウェアによるスイッチであっても良いし、携帯端末10のディスプレイ上に設けられたソフトウェアによるスイッチであっても良い。
【0030】
コンピュータ10bの記憶部(ROM、RAM、フラッシュメモリなど)には、プロジェクタ10eによってシート11に投影する野生動物を威嚇する捕食動物(例えばオオカミ等の頂点捕食者)のカラーの静止画又は動画の2次元映像データが記憶されている。この映像データは、複数種類記憶されており、コンピュータ10bは、例えば、年、季節、月、週、日、時刻に応じて適宜選択して出力することができる。この映像データは、後から追加して記憶させることができる。コンピュータ10bは、この記憶部に記憶されている2次元映像データをプロジェクタ駆動回路10cへ出力し、これによってプロジェクタ10eは、野生動物を威嚇する捕食動物のカラーの静止画又は動画の2次元映像12をシート11に投影する。
【0031】
コンピュータ10bは、プロジェクタ10eによる静止画又は動画の2次元映像を予め定めた点滅パターンで点滅させることができ、これにより、野生動物が光の点滅に慣れることを防止でき、忌避効果を持続させることができる。
【0032】
コンピュータ10bの記憶部(ROM、RAM、フラッシュメモリなど)には、さらに、スピーカ10fから出力される、野生動物を威嚇するための捕食動物の威嚇音及び葉擦れ音の音声データが記憶されている。威嚇音として、例えば、単数又は複数の実際のオオカミの肉声(鳴き声)データが複数パターン記憶されている。葉擦れ音として、動物が草むらの中を進む葉擦れの際に生じる音声データも記憶されている。この記憶部に記憶される音声データは、予め記憶されているものに限られず、野生動物の種類に応じて効果的な音声データを後から追加して記憶させることができる。なお、音声データは、実際の音声(肉声)を録音したもの、又は人工的に作り出された音声を用いても良い。コンピュータ10bは、ソフトウェアで形成された音響信号生成部によって、この記憶部に記憶されている音声データから音響信号を形成し、スピーカ駆動回路10dへ出力する。これによってスピーカ10fは、野生動物を威嚇する捕食動物の威嚇音及び葉擦れ音を発生する。
【0033】
コンピュータ10bは、威嚇音及び葉擦れ音の発生方法を制御することができる。例えば、威嚇音に合わせて葉擦れ音を発生させるたり、上述の記憶部に記憶された威嚇音及び葉擦れ音をランダムに切り替え制御することができる。例えば、オオカミの鳴き声、鹿の警戒音、犬の鳴き声、人間の肉声、銃声の中から威嚇音をランダムに選択してスピーカ駆動回路10dを介してスピーカ10fに送り発生させることができる。また、コンピュータ10bは、設置時において80dB以上の威嚇音を15分以上の停止間隔で発生するように制御することができる。このように制御することにより、野生動物が威嚇音及び葉擦れ音に慣れることを防止でき、忌避効果を持続させることができる。なお、コンピュータ10bは、威嚇音及び葉擦れ音をランダムに切り替えるだけでなく、所定の威嚇音及び葉擦れ音に固定する制御を行うこともできる。
【0034】
電源装置は、携帯型野生動物撃退装置全体に電力を供給するためのものである。例えば、乾電池、蓄電池又は外部電源を用いることを主に想定するが、小型携帯用外付け太陽光パネルを設けて太陽光発電にて蓄えた蓄電池を使用しても良い。太陽光発電を行えば、電気がない場所で携帯型野生動物撃退装置を長時間作動させることができる。
【0035】
図3は携帯端末10のコンピュータ10bによって制御されるプロジェクタ10e及びスピーカ10fの動作制御処理の一例を示している。この動作制御処理は、例えばタイマ等により一定時間間隔で繰り返して実行される。
【0036】
まず、コンピュータ10bは、操作者によってスイッチ10gがオンとされたか、又は赤外線センサ13からの検知信号に応じて野生動物が検知されたか否かを判別する(ステップS1)。スイッチ10gがオンとされなかった場合及び野生動物を検知しなかった場合(NOの場合)は、この動作制御処理を終了する。
【0037】
スイッチ10gがオンとされた場合(手動による作動)、又は野生動物を検知した場合(自動による作動)、コンピュータ10bはステップS1においてYESと判別し、プロジェクタ駆動回路10c及びスピーカ駆動回路10dを介してプロジェクタ10e及びスピーカ10fをそれぞれ駆動して作動させる(ステップS2)。なお、赤外線センサ13からの検知信号により自動で作動した場合は、スイッチ10gがオン状態となったと解釈される。
【0038】
次いで、コンピュータ10bは、スイッチ10gがオフとなったか否かを判別し(ステップS3)、オフとなっていないと判別した場合(NOの場合)は、ステップS2へ戻ってプロジェクタ10e及びスピーカ10fの作動を継続する。
【0039】
ステップS3において、スイッチ10gがオフとなったと判別した場合(YESの場合)は、コンピュータ10bは、これらプロジェクタ10e及びスピーカ10fの作動を停止させ(ステップS4)、この動作制御処理を終了する。
【0040】
スイッチ10gがオン状態にあれば、以上の動作制御処理が実施され、携帯端末10によってプロジェクタ10eが駆動されてシート11に野生動物を威嚇する捕食動物のカラーの静止画又は動画の2次元映像12を投影され、スピーカ10fが駆動されて野生動物を威嚇する捕食動物の威嚇音及び葉擦れ音が発生する。
【0041】
本実施形態では、人間が携帯可能な携帯端末10の例としてスマートフォンを用いているが、2次元映像を投影可能な投影手段と威嚇音及び葉擦れ音を発生可能な音響発生手段とを備えていれば、スマートフォン以外に種々の携帯端末を使用可能であることはもちろんである。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、人間が携帯可能な携帯端末10によって、シート11に野生動物を威嚇する捕食動物のカラーの静止画又は動画の2次元映像12を投影すると共に、スピーカから捕食動物の威嚇音及び葉擦れ音を発生するように構成されているので、野生動物が出現した場合には、その場で直ちに有効な威嚇及び撃退を行うことができる。
【0043】
図4は本発明の携帯型野生動物撃退装置の他の実施形態(スマートフォン活用光投影型)における全体構成を概略的に示している。
【0044】
同図に示すように、本実施形態の携帯型野生動物撃退装置は、人間が携帯可能な携帯機器である例えばスマートフォン等の携帯端末110から主として構成されている。この携帯端末110は、強力な光照射機能を有する高輝度LED等を用いた光照射機(本発明の光照射手段に対応する)を内蔵又は外付けで備えており、被照射体である例えば着衣、リュックサック、帽子若しくは旗等や、テントのサイドシート、ルーフシート若しくはフライシート、又はタープ等のシート111に予め描かれている野生動物を威嚇する捕食動物(例えばオオカミ等の頂点捕食者)の2次元の像112に強力な光ビーム114を照射することができるように構成されている。光ビーム114の照射は、シート111の表側(テントの場合はテントの外部)から行っても良いし、シート111の裏側(テントの場合はテントの内部)から行っても良い。また、被照射体は、例えばシート111等に描かれた捕食動物の2次元の像であっても、捕食動物の3次元の像(立体像)であっても同様の効果が期待される。
【0045】
携帯端末110は、さらに、野生動物を威嚇する捕食動物(例えばオオカミ等の頂点捕食者)の威嚇音及び/又は頂点捕食者の葉擦れ音を発生する音響信号生成部と、この音響信号生成部からの音響信号を音響に変換する内蔵又は外付けのスピーカとを備えている。スピーカは、野生動物を威嚇する威嚇音を、野生動物が可聴な周波数(人間が可聴な周波数及び人間が可聴できない超音波周波数)で空中に放出するものである。本実施形態では携帯端末110に内蔵の又は外付けのスピーカを用いているが、携帯端末110とは別個に設置した単数又は複数のスピーカを設けても良い。複数のスピーカを設けることが望ましいが、スピーカの数は任意である。
【0046】
スピーカから発せられる威嚇音は、オオカミ等の捕食動物の肉声が望ましい。この場合、単数の捕食動物の威嚇音より複数の捕食動物の威嚇音の方がより威嚇効果が増大する。この威嚇音に葉擦れ音を伴わせて発生することがより望ましい。葉擦れ音を合わせて発生させることにより、実際には1頭しか見えていないが、仲間がいることを認識させることができるので、威嚇効果が大きく増大する。威嚇音は、設置時において80dB以上であることが望ましいがこれに限定されるものではない。また、コンピュータ110bによって、威嚇音及び葉擦れ音の種類(パターン)をランダムに切り替え、野生動物が嫌がり、かつ慣れないものとすることができる。
【0047】
本実施形態においては、携帯端末110とは別個に、野生動物の接近を検知してその検知信号を送信する機能を有する赤外線センサ113が設けられている。この赤外線センサ113は、単数又は複数の赤外線センサであり、野生動物が現れそうな位置に予め設置しておき、感知範囲内に侵入してきた野生動物を検知してこれを知らせる検知信号をブルートゥース(登録商標)等の無線機能を用いて携帯端末110へ送信するように構成されている。赤外線センサ113は野生動物の発する赤外線を検知する一般的なパッシブ赤外線センサであっても良いし、線状に発せられた赤外線ビームを野生動物によって遮断されたことを検知するアクティブ赤外線センサであっても良い。なお、赤外線センサ113の設置は必須ではなく、設けなくとも良い。
【0048】
図5は、本実施形態における携帯端末110の電気的構成を概略的に示している。
【0049】
同図に示すように、本実施形態の携帯端末110は、スマートフォンとしての通常の制御処理を行うスマートフォン回路110aと、コンピュータ110bと、このコンピュータ110bに図示しない入出力インタフェースを介して電気的に接続されている光照射機駆動回路110c及びスピーカ駆動回路110dと、コンピュータ110bや上述した光照射機駆動回路110c及びスピーカ駆動回路110d、並びに後述する受信回路110hに電力を供給する図示しない電源装置とを備えている。光照射機駆動回路110cは光照射機110eに電気的に接続されこれを駆動するように構成されており、スピーカ駆動回路110dはスピーカ110fに電気的に接続されこれを駆動するように構成されている。携帯端末110は、さらに、本実施形態の携帯型野生動物撃退装置の動作スイッチ110gと、赤外線センサ113から送信される検知信号の受信回路110hとを備えており、これらは図示しない入出力インタフェースを介してコンピュータ110bに電気的に接続されている。なお、コンピュータ110bは、図示されていないが、上述した入出力インタフェースの他に、CPU、ROM、RAM及びフラッシュメモリ等を備えている。コンピュータ110bがブルートゥース(登録商標)等の無線通信機能を備えている場合、上述した受信回路110hはこの無線通信機能を利用した回路となる。スイッチ110gは、携帯端末110に設けられたハードウェアによるスイッチであっても良いし、携帯端末110のディスプレイ上に設けられたソフトウェアによるスイッチであっても良い。
【0050】
コンピュータ110bは、光照射機110eによる光ビーム114を予め定めた点滅パターンで点滅させることができ、これにより、野生動物が光の点滅に慣れることを防止でき、忌避効果を持続させることができる。
【0051】
コンピュータ110bの記憶部(ROM、RAM、フラッシュメモリなど)には、スピーカ110fから出力される、野生動物を威嚇するための捕食動物の威嚇音及び葉擦れ音の音声データが記憶されている。威嚇音として、例えば、単数又は複数の実際のオオカミの肉声(鳴き声)データが複数パターン記憶されている。葉擦れ音として、動物の葉擦れの際に生じる音声データも記憶されている。この記憶部に記憶される音声データは、予め記憶されているものに限られず、野生動物の種類に応じて効果的な音声データを後から追加して記憶させることができる。なお、音声データは、実際の音声(肉声)を録音したもの、又は人工的に作り出された音声を用いても良い。コンピュータ110bは、ソフトウェアで形成された音響信号生成部によって、この記憶部に記憶されている音声データから音響信号を形成し、スピーカ駆動回路110dへ出力する。これによってスピーカ110fは、野生動物を威嚇する捕食動物の威嚇音及び葉擦れ音を発生する。
【0052】
コンピュータ110bは、威嚇音及び葉擦れ音の発生方法を制御することができる。例えば、威嚇音に合わせて葉擦れ音を発生させるたり、上述の記憶部に記憶された威嚇音及び葉擦れ音をランダムに切り替え制御することができる。例えば、オオカミの鳴き声、鹿の警戒音、犬の鳴き声、人間の肉声、銃声の中から威嚇音をランダムに選択してスピーカ駆動回路110dを介してスピーカ110fに送り発生させることができる。また、コンピュータ110bは、80dB以上の威嚇音を15分以上の停止間隔で発生するように制御することができる。このように制御することにより、野生動物が威嚇音及び葉擦れ音に慣れることを防止でき、忌避効果を持続させることができる。なお、コンピュータ110bは、威嚇音及び葉擦れ音をランダムに切り替えるだけでなく、所定の威嚇音及び葉擦れ音に固定する制御を行うこともできる。
【0053】
電源装置は、携帯型野生動物撃退装置全体に電力を供給するためのものである。例えば、乾電池、蓄電池又は外部電源を用いることを主に想定するが、小型携帯用外付け太陽光パネルを設けて太陽光発電にて蓄えた蓄電池を使用しても良い。太陽光発電を行えば、電気がない場所で携帯型野生動物撃退装置を長時間作動させることができる。
【0054】
本実施形態の携帯端末110のコンピュータ110bによって制御される光照射機110e及びスピーカ110fの動作制御処理は、プロジェクタ10eに代えて光照射機110eを用いる点を除いて、
図3に示した動作制御処理と基本的に同様であるため、説明を省略する。
【0055】
本実施形態では、人間が携帯可能な携帯端末110の例としてスマートフォンを用いているが、光ビーム114を照射可能な光照射手段と威嚇音及び葉擦れ音を発生可能な音響発生手段とを備えていれば、スマートフォン以外に種々の携帯端末を使用可能であることはもちろんである。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、人間が携帯可能な携帯端末110によって、シート111に描かれている野生動物を威嚇する捕食動物の像112に光ビーム114を照射すると共に、スピーカから捕食動物の威嚇音及び葉擦れ音を発生するように構成されているので、野生動物が出現した場合には、その場で直ちに有効な威嚇及び撃退を行うことができる。
【0057】
図6は本発明の携帯型野生動物撃退装置のさらに他の実施形態(携帯ライト型)における全体構成を概略的に示している。
【0058】
同図に示すように、本実施形態の携帯型野生動物撃退装置は、人間が携帯可能な携帯機器である例えば携帯ライト等の携帯端末210から主として構成されている。この携帯端末210は、強力な光照射機能を有する高輝度LED等を用いた光照射機(本発明の光照射手段に対応する)を内蔵又は外付けで備えており、被照射体である例えば着衣、リュックサック、帽子若しくは旗等や、テントのサイドシート、ルーフシート若しくはフライシート、又はタープ等のシート211に予め描かれている野生動物を威嚇する捕食動物(例えばオオカミ等の頂点捕食者)の2次元の像212に強力な光ビーム214を照射することができるように構成されている。光ビーム214の照射は、シート211の表側(テントの場合はテントの外部)から行っても良いし、シート211の裏側(テントの場合はテントの内部)から行っても良い。また、被照射体は、例えばシート111等に描かれた捕食動物の2次元の像であっても、捕食動物の3次元の像(立体像)であっても同様の効果が期待される。また、携帯端末210とは別個に、野生動物の接近を検知してその検知信号を送信する機能を有する赤外線センサ213が設けられている。
【0059】
この携帯端末210は、また、強力な投影機能を有するプロジェクタ(本発明の投影手段に対応する)も内蔵又は外付けで備えることが可能であり、被投影体である例えば地面、葉っぱ、木の幹、煙、水蒸気、着衣若しくはバッグ等や、テントのサイドシート、ルーフシート若しくはフライシート、又はタープ等のシートに野生動物を威嚇する捕食動物(例えばオオカミ等の頂点捕食者)のカラー又はモノクロの静止画又は動画の2次元の像を映像投影することができるように構成されている。
【0060】
携帯端末210は、さらに、野生動物を威嚇する捕食動物(例えばオオカミ等の頂点捕食者)の威嚇音及び/又は頂点捕食者の葉擦れ音を発生する音響信号生成部と、この音響信号生成部からの音響信号を音響に変換する内蔵又は外付けのスピーカとを備えている。スピーカは、野生動物を威嚇する威嚇音を、野生動物が可聴な周波数(人間が可聴な周波数及び人間が可聴できない超音波周波数)で空中に放出するものである。本実施形態では携帯端末210に内蔵の又は外付けのスピーカを用いているが、携帯端末210とは別個に設置した単数又は複数のスピーカを設けても良い。複数のスピーカを設けることが望ましいが、スピーカの数は任意である。
【0061】
スピーカから発せられる威嚇音は、オオカミ等の捕食動物の肉声が望ましい。この場合、単数の捕食動物の威嚇音より複数の捕食動物の威嚇音の方がより威嚇効果が増大する。この威嚇音に葉擦れ音を伴わせて発生することがより望ましい。葉擦れ音を合わせて発生させることにより、実際には1頭しか見えていないが、仲間がいることを認識させることができるので、威嚇効果が大きく増大する。威嚇音は、設置時において80dB以上であることが望ましいがこれに限定されるものではない。また、コンピュータによって、威嚇音及び葉擦れ音の種類(パターン)をランダムに切り替え、野生動物が嫌がり、かつ慣れないものとすることができる。
【0062】
本実施形態においては、携帯端末210とは別個に、野生動物の接近を検知してその検知信号を送信する機能を有する赤外線センサ213が設けられている。この赤外線センサ213は、単数又は複数の赤外線センサであり、野生動物が現れそうな位置に予め設置しておき、感知範囲内に侵入してきた野生動物を検知してこれを知らせる検知信号をブルートゥース(登録商標)等の無線機能を用いて携帯端末210へ送信するように構成されている。赤外線センサ213は野生動物の発する赤外線を検知する一般的なパッシブ赤外線センサであっても良いし、線状に発せられた赤外線ビームを野生動物によって遮断されたことを検知するアクティブ赤外線センサであっても良い。なお、赤外線センサ113の設置は必須ではなく、設けなくとも良い。
【0063】
本実施形態では、人間が携帯可能な携帯端末210の例として携帯ライトを用いているが、光ビーム214を照射可能な光照射手段、及び/又は投影機能を有し、威嚇音及び葉擦れ音を発生可能な音響発生手段とを備えていれば、携帯ライト以外に種々の携帯端末を使用可能であることはもちろんである。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、人間が携帯可能な携帯端末210によって、野生動物を威嚇する捕食動物の2次元若しくは3次元の像212に光ビーム214を照射するか、又は2次元の像を映像投影すると共に、スピーカから捕食動物の威嚇音及び葉擦れ音を発生するように構成されているので、野生動物が出現した場合には、その場で直ちに有効な威嚇及び撃退を行うことができる。
【0065】
図7は本発明の携帯型野生動物撃退装置のまたさらに他の実施形態(3次元像投射型)における全体構成を概略的に示している。
【0066】
同図に示すように、本実施形態の携帯型野生動物撃退装置は、人間が携帯可能な携帯機器である例えばスマートフォン等の携帯端末310と、リュックサック等の携帯バックを用いて人間が携帯可能な3次元ホログラフィックプロジェクタ315(本発明の3次元映像投影手段に対応する)とから主として構成されている。3次元ホログラフィックプロジェクタ315は、複数のLEDファンブレードを有する市販品であり、携帯バック等に固定設置することができる。携帯端末310から無線で送られた、捕食動物のカラー又はモノクロの静止画又は動画の3次元ホログラム映像312を空中に投影するように構成されている。3次元ホログラム映像312を動画で投影すれば、動物の映像に動きがあり、また、異なる種類の動物、異なる姿、異なる動き、異なる色、異なる明るさ、異なる輝度の像を容易に表示できるため、野生動物は学習することが難しく、撃退効果を持続的に維持することが可能となる。投影される3次元ホログラム映像312は、2つの眼を有する頂点捕食者の映像を表示するように構成されていることが望ましい。このような2つの眼に睨まれている映像が表示されると、野生動物の緊張が高まり、威嚇、忌避及び撃退効果が著しく向上し、即座の退避行動につながる。
【0067】
携帯端末310は、さらに、野生動物を威嚇する捕食動物(例えばオオカミ等の頂点捕食者)の威嚇音及び/又は頂点捕食者の葉擦れ音を発生する音響信号生成部と、この音響信号生成部からの音響信号を音響に変換する内蔵又は外付けのスピーカとを備えている。スピーカは、野生動物を威嚇する威嚇音を、野生動物が可聴な周波数(人間が可聴な周波数及び人間が可聴できない超音波周波数)で空中に放出するものである。本実施形態では携帯端末310に内蔵の又は外付けのスピーカを用いているが、携帯端末310とは別個に設置した単数又は複数のスピーカを設けても良い。複数のスピーカを設けることが望ましいが、スピーカの数は任意である。
【0068】
スピーカから発せられる威嚇音は、オオカミ等の捕食動物の肉声が望ましい。この場合、単数の捕食動物の威嚇音より複数の捕食動物の威嚇音の方がより威嚇効果が増大する。この威嚇音に葉擦れ音を伴わせて発生することがより望ましい。葉擦れ音を合わせて発生させることにより、実際には1頭しか見えていないが、仲間がいることを認識させることができるので、威嚇効果が大きく増大する。威嚇音は、据え置き設置する場合は、80dB以上であることが望ましいがこれに限定されるものではない。また、コンピュータ310bによって、威嚇音及び葉擦れ音の種類(パターン)をランダムに切り替え、野生動物が嫌がり、かつ慣れないものとすることができる。
【0069】
本実施形態においては、携帯端末310とは別個に、野生動物の接近を検知してその検知信号を送信する機能を有する赤外線センサ313が設けられている。この赤外線センサ313は、単数又は複数の赤外線センサであり、野生動物が現れそうな位置に予め設置しておき、感知範囲内に侵入してきた野生動物を検知してこれを知らせる検知信号をブルートゥース(登録商標)等の無線機能を用いて携帯端末310へ送信するように構成されている。赤外線センサ313は野生動物の発する赤外線を検知する一般的なパッシブ赤外線センサであっても良いし、線状に発せられた赤外線ビームを野生動物によって遮断されたことを検知するアクティブ赤外線センサであっても良い。なお、赤外線センサ313の設置は必須ではなく、設けなくとも良い。
【0070】
図8は、本実施形態における携帯端末310の電気的構成を概略的に示している。
【0071】
同図に示すように、本実施形態の携帯端末310は、スマートフォンとしての通常の制御処理を行うスマートフォン回路310aと、コンピュータ310bと、このコンピュータ310bに図示しない入出力インタフェースを介して電気的に接続されている送信回路310c及びスピーカ駆動回路310dと、コンピュータ310bや上述した送信回路310c及びスピーカ駆動回路310d、並びに後述する受信回路310hに電力を供給する図示しない電源装置とを備えている。送信回路310cは3次元ホログラム映像312のデータを例えばWiFi等の無線で3次元ホログラフィックプロジェクタ315に送るように構成されており、スピーカ駆動回路310dはスピーカ310fに電気的に接続されこれを駆動するように構成されている。携帯端末310は、さらに、本実施形態の携帯型野生動物撃退装置の動作スイッチ310gと、赤外線センサ313から送信される検知信号の受信回路310hとを備えており、これらは図示しない入出力インタフェースを介してコンピュータ310bに電気的に接続されている。なお、コンピュータ310bは、図示されていないが、上述した入出力インタフェースの他に、CPU、ROM、RAM及びフラッシュメモリ等を備えている。コンピュータ310bがブルートゥース(登録商標)等の無線通信機能を備えている場合、上述した受信回路310hはこの無線通信機能を利用した回路となる。スイッチ310gは、携帯端末310に設けられたハードウェアによるスイッチであっても良いし、携帯端末310のディスプレイ上に設けられたソフトウェアによるスイッチであっても良い。
【0072】
コンピュータ310bは、3次元ホログラフィックプロジェクタ315による3次元ホログラム映像312を予め定めた点滅パターンで点滅させることができ、これにより、野生動物が光の点滅に慣れることを防止でき、忌避効果を持続させることができる。
【0073】
コンピュータ310bの記憶部(ROM、RAM、フラッシュメモリなど)には、スピーカ310fから出力される、野生動物を威嚇するための捕食動物の威嚇音及び葉擦れ音の音声データが記憶されている。威嚇音として、例えば、単数又は複数の実際のオオカミの肉声(鳴き声)データが複数パターン記憶されている。葉擦れ音として、動物の葉擦れの際に生じる音声データも記憶されている。この記憶部に記憶される音声データは、予め記憶されているものに限られず、野生動物の種類に応じて効果的な音声データを後から追加して記憶させることができる。なお、音声データは、実際の音声(肉声)を録音したもの、又は人工的に作り出された音声を用いても良い。コンピュータ310bは、ソフトウェアで形成された音響信号生成部によって、この記憶部に記憶されている音声データから音響信号を形成し、スピーカ駆動回路310dへ出力する。これによってスピーカ310fは、野生動物を威嚇する捕食動物の威嚇音及び葉擦れ音を発生する。
【0074】
コンピュータ310bは、威嚇音及び葉擦れ音の発生方法を制御することができる。例えば、威嚇音に合わせて葉擦れ音を発生させるたり、上述の記憶部に記憶された威嚇音及び葉擦れ音をランダムに切り替え制御することができる。例えば、オオカミの鳴き声、鹿の警戒音、犬の鳴き声、人間の肉声、銃声の中から威嚇音をランダムに選択してスピーカ駆動回路310dを介してスピーカ310fに送り発生させることができる。また、コンピュータ310bは、80dB以上の威嚇音を15分以上の停止間隔で発生するように制御することができる。このように制御することにより、野生動物が威嚇音及び葉擦れ音に慣れることを防止でき、忌避効果を持続させることができる。なお、コンピュータ310bは、威嚇音及び葉擦れ音をランダムに切り替えるだけでなく、所定の威嚇音及び葉擦れ音に固定する制御を行うこともできる。
【0075】
電源装置は、携帯型野生動物撃退装置全体に電力を供給するためのものである。例えば、乾電池、蓄電池又は外部電源を用いることを主に想定するが、小型携帯用外付け太陽光パネルを設けて太陽光発電にて蓄えた蓄電池を使用しても良い。太陽光発電を行えば、電気がない場所で携帯型野生動物撃退装置を長時間作動させることができる。
【0076】
本実施形態の携帯端末310のコンピュータ310bによって制御される3次元ホログラフィックプロジェクタ315及びスピーカ310fの動作制御処理は、プロジェクタ10eに代えて3次元ホログラフィックプロジェクタ315を用いる点を除いて、
図3に示した動作制御処理と基本的に同様であるため、説明を省略する。
【0077】
本実施形態では、人間が携帯可能な携帯端末310の例としてのスマートフォンと、3次元ホログラム映像312を投影可能な人間が携帯可能な3次元映像投影手段とを用いているが、3次元ホログラム映像312を投影可能な3次元映像投影手段と威嚇音及び葉擦れ音を発生可能な音響発生手段とを備えていれば、スマートフォン以外に種々の携帯端末をも使用可能であることはもちろんである。
【0078】
以上説明したように、本実施形態によれば、人間が携帯可能な携帯端末310及び3次元ホログラフィックプロジェクタ315によって、野生動物を威嚇する捕食動物の3次元ホログラム映像312を投影すると共に、スピーカから捕食動物の威嚇音及び葉擦れ音を発生するように構成されているので、野生動物が出現した場合には、その場で直ちに有効な威嚇及び撃退を行うことができる。
【0079】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0080】
10、110、210、310 携帯端末
11、111、211 シート
12 2次元映像
13、113、213、313 赤外線センサ
10a、110a、310a スマートフォン回路
10b、110b、310b コンピュータ
10c プロジェクタ駆動回路
10d、110d、310d スピーカ駆動回路
10e プロジェクタ
10f、110f、310f スピーカ
10g、110g、310g スイッチ
10h、110h、310h 受信回路
110c 光照射機駆動回路
110e 光照射機
112、212 像
114、214 光ビーム
310c 送信回路
312 3次元ホログラム映像
315 3次元ホログラフィックプロジェクタ