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  • 特開-生分解性成形体およびその製造方法 図1
  • 特開-生分解性成形体およびその製造方法 図2
  • 特開-生分解性成形体およびその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060941
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】生分解性成形体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20230424BHJP
【FI】
A01G9/02 101U
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170631
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】521369208
【氏名又は名称】GF株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】王 志敏
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NC02
2B327NC21
2B327NC22
2B327NC25
2B327ND01
2B327NE05
(57)【要約】
【課題】低コストで製造することができるとともに、生分解性に富んだ生分解性成形体およびその製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】たとえば、カット野菜製造時に派生する端材や廃棄品をペースト化して得た野菜ペーストと、澱粉と、古紙パルプと発泡剤を混合して得た混合組成物10を下型2のキャビティ形成部21内に所定量注入し、上型3と下型2を閉合し加熱プレスして、上型3のキャビティ形成部31と下型2のキャビティ形成部21との間に形成されるキャビティ形状に成形して、発泡状態の成形体本体11を得たのち、この成形体本体11の表面に生分解性の耐水性コーティング剤を塗布して生分解性成形体1を得るようにした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも植物原料の粉砕物が、澱粉を介して結着状態に成形さていることを特徴とする生分解性成形体。
【請求項2】
発泡状態になっている請求項1に記載の生分解性成形体。
【請求項3】
植物系材料からなる強化繊維を含む請求項1または請求項2に記載の生分解性成形体。
【請求項4】
表面が耐水性コーティング剤で被覆されている請求項1~請求項3のいずれかに記載の生分解性成形体。
【請求項5】
前記植物原料が、野菜、草花、果実からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1~請求項4のいずれかに記載の生分解性成形体。
【請求項6】
植物原料をペースト化するペースト化工程と、このペースト化工程で得られた植物ペーストと、澱粉を少なくとも混合する材料混合工程と、この材料混合工程で得られた混合組成物を加熱プレス成形する成形工程を備えることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の生分解性成形体の製造方法。
【請求項7】
前記混合組成物中に発泡剤を加える請求項6に記載の生分解性成形体の製造方法。
【請求項8】
前記混合組成物が、植物系材料からなる強化繊維を含む請求項6または請求項7に記載の生分解性成形体の製造方法。
【請求項9】
前記成形工程後に成形体表面に耐水性コーティング剤を塗布する工程を備えている請求項6~請求項9のいずれかに記載の生分解性成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形体は、金属製品に比べ、軽量で成形性に優れるとともに、低コスト化できるという利点がある。
一方、不要となったプラスチックの処理方法としては、焼却処分、埋め立て処分、リサイクルなどがあるが、そのまま不法投棄されることもある。
【0003】
しかしながら、上記のような処理方法や不法投棄により、たとえば、以下のような問題が発生する。
【0004】
(1)焼却処分の場合、温室効果ガスとしての二酸化炭素が発生するとともに、ダイオキシン等の有害物質が発生するおそれがある。
(2)埋め立て処分の場合、プラスチックの自然分解が非常に困難であるため、広大な埋め立て処分場が必要である。
(3)リサイクルの場合、リサイクル樹脂は、バージンの樹脂に比べ、その強度が落ちるという問題があるので、リサイクル樹脂のみを用いるには限界がある。
(4)不法投棄されたプラスチック製品は、海洋汚染を招いたり、海などに流れ込んだプラスチック製品が紫外線による分解や波の影響によって形成されるマイクロプラスチックと呼ばれる小さなプラスチック粒子によって、海洋生物などの生態系に影響を及ぼしたり、このマイクロプラスチックから溶出するプラスチックの添加剤が、海洋生物を摂取した人間の健康に害を及ぼすという問題がある。
【0005】
そこで、昨今は、生分解性を備えたポリ乳酸などの生分解性プラスチックが着目されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5074959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ポリ乳酸は、他のプラスチックに比べると結晶化速度が遅く加水分解しやすいのですが、分解速度はまだまだ遅く、改良が進められているとともに、他の汎用のプラスチックに比べ、製造コストの点でも問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて、低コストで製造することができるとともに、生分解性に富んだ生分解性成形体およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の生分解性成形体は、少なくとも植物の粉砕物が、澱粉を介して結着状態に成形されていることを特徴としている。
【0010】
本発明において、植物としては、ペースト装置を用いて容易にペースト化できる野菜、草木の葉、果実などで、木材などは含まない。
また、上記植物材料としては、廃棄コストを削減できるとともに、廃棄焼却時の環境汚染を防止することができることから、加工野菜の端材、剪定した草木の葉、加工果物の端材、野菜や果物の規格外品等などの廃棄処分されるものを用いることが好ましい。
【0011】
上記野菜としては、特に限定されないが、たとえば、キャベツ、玉ねぎ、人参、セロリ、大根、胡瓜、カボチャ、トウモロコシなどが挙げられ、これらの皮や芯でも構わない。
果物としては、たとえば、メロン、スイカなどの皮部分が挙げられる。
草木の葉としては、たとえば、ヨモギ、シソなどが挙げられる。
【0012】
上記澱粉としては、たとえば、馬鈴薯澱粉、甘蔗澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、小麦粉澱粉などが挙げられ、価格や入手容易性の観点からコーンスターチが好ましい。
【0013】
本発明の生分解性成形体は、植物系材料からなる強化繊維を含むことが好ましい。
上記植物系材料としては、パルプ、セルロース繊維などが挙げられ、古紙パルプが好ましい。
【0014】
本発明の生分解性成形体は、緩衝作用を発揮させたり、軽量化したりするために発泡状態としても構わない。
【0015】
本発明の生分解性成形体は、耐水性付与のため、表面が耐水性コーティング剤でコートされていていてもよい。
上記耐水性コーティング剤としては、ポリヒドロキシ酸系のポリL-乳酸などの生分解性を備えているものを用いることが好ましい。
【0016】
一方、本発明の生分解性成形体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と記す)は、植物原料をペースト化するペースト化工程と、このペースト化工程で得られた植物ペーストと、澱粉を少なくとも混合する材料混合工程と、この材料混合工程で得られた混合組成物を加熱プレス成形する成形工程を備えることを特徴としている。
【0017】
本発明の製造方法において、上記植物ペーストは、特に限定されないが、たとえば、植物材料を、必要に応じてダイス状や小片状にカットしたのち、汎用のペースト機に投入して得ることができる。
【0018】
上記混合組成物には、必要に応じて、発泡剤、グリセリンやソルビトールなどの増粘剤、水、植物系材料からなる強化繊維、食紅などの食用可能な着色剤を添加しても構わない。
【0019】
すなわち、発泡剤を添加すれば、得られる成形体を発泡状態にでき、成形体に緩衝作用を持たせたり、成形体を軽量化したりすることができる。
上記発泡剤としては、特に限定されないが、たとえば、炭酸ガス、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、ジアゾアミノベンゼン、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、食品用気泡剤などが挙げられる。
【0020】
一方、増粘剤や水を添加すれば、、混合組成物の粘度調整を行うことができる。
また、植物系材料からなる強化繊維を添加すれば、成形体の強度を上げることができる。
【0021】
なお、上記混合組成物中の、各成分の配合比は、成形体の用途や、求められる強度等によって、適宜決定されるが、たとえば、野菜ペーストを用いる場合、野菜ペーストと澱粉の混合比は、重量比で
野菜ペースト:澱粉=55~70:43~28が一般的である。
また、発泡剤は、混合組成物全体の1~2重量%とすることが好ましい。
植物系材料の強化繊維は、求められる強度によって、適宜選択されるが、混合組成物全体の4~6重量%が好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の生分解性成形体は、少なくとも植物の粉砕物が澱粉に分散混合されるとともに、澱粉を介して結着状態に成形されているので、容易に生分解される。
また、食性の天然材からなるので、使用後、そのままあるいは破砕して、家畜、鑑賞用魚類、養殖用魚類などの飼料として用いたり、既存の飼料に混合したりすることもできる。
【0023】
本発明の製造方法は、植物原料をペースト化するペースト化工程と、このペースト化工程で得られた植物ペーストと、澱粉を少なくとも混合する材料混合工程と、この材料混合工程で得られた混合組成物を加熱プレス成形する成形工程を備えるので、植物ペーストの粘性によって澱粉がうまく分散混合される。
そして、加熱プレス成形することで植物ペーストトの水分によって澱粉が流動性のあるβ澱粉化(糊化)して型に沿う形状となったのち、水分が蒸発し、澱粉がα澱粉化(老化)した状態で植物の粉砕物が澱粉中に分散された成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の生分解性成形体の第1の実施の形態である小分け容器をあらわしている。
図2】本発明の製造方法をその工程順に模式的あらわす図である。
図3】本発明の生分解性成形体の第2の実施の形態である果物用緩衝材をあらわしている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明を、その実施の形態を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明の生分解性成形体の第1の実施の形態をあらわしている。
【0026】
図1に示すように、この生分解性成形体1は、たとえば、略逆四角錘台形をしていて、複数の副食が弁当容器内で混ざり合わないように、各副食を小分けする場合などに使用されるようになっていて、野菜の粉砕粒と、強化繊維としての古紙パルプが分散された状態で、澱粉によって結着され、発泡した状態になっているとともに、表面が生分解性の耐水性コーティング剤でコーティングされている。
【0027】
そして、この生分解性成形体1の製造方法を、図2を参照しつつ、以下に詳しく説明する。
(1)カット野菜を製造する際などに生じるキャベツやトウモロコシの芯や、カボチャの皮、へたなどの野菜の端材や廃棄品をペースト機(図示せず)に合う大きさのカット片にカットしたのち、このカット片をペースト機に投入し野菜ぺーストを得る。
(2)上記野菜ペーストと、澱粉としてのコーンスターチと、発泡剤と、植物系材料からなる強化繊維としての古紙パルプとの混合組成物を得る。
また、必要に応じて、粘度調整のために、水あるいは増粘剤を混合組成物に添加する。
(3)図2(a)の下型2の各キャビティ形成部21に、図2(b)に示すように所定量の混合組成物10を注入する。
(4)図2(c)に示すように、上型3と、下型2を閉合し、混合組成物10を加熱プレス成形し、上型3のキャビティ形成部31と下型2のキャビティ形成部21とによって形成されるキャビティ形状の成形体本体11を得る。
(5)成形体本体11の表面に生分解性の耐水性コーティング剤(図示せず)を塗布し、図1に示す生分解性成形体1を得る。
【0028】
この生分解性成形体1は、上記のように、野菜、澱粉、古紙パルプなどの天然植物由来材料と、生分解性の耐水性コーティング剤からなるので、生分解性に優れている。
しかも、ほとんどが、天然植物由来材料からなるので、使用済みにならば、家畜、鑑賞用魚類、養殖用魚類などの飼料として用いたり、既存の飼料に混合したりすることもできる。
また、廃棄にコストのかかる野菜の端材や廃棄品を用いているので、野菜の端材や廃棄品廃棄コストが削減できるとともに、原料コストも低コスト化できる。
そして、発泡しているので、緩衝性も備えたものとなっている。
【0029】
図3は、本発明の生分解性成形体の第2の実施の形態をあらわしている。
図3に示すように、この生分解性成形体4は、りんごやなしなどの果実をダンボール等の箱に収容して搬送する際に、箱の底に敷く果物用緩衝材であって、凹部41のそれぞれ果実の下部を嵌め込むようになっている。
【0030】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、発泡させていたが、発泡させなくても構わない。
上記の実施の形態では、成形体の形状が容器あるいは容器部分を備えた形状であったが、仕切り板形状や、ネット形状にしても構わない。
【0031】
上記の実施の形態では、耐水性コーティング剤を表面に塗布するようにしていたが、水濡れ等が生じない用途に用いる場合、コーティング剤を塗布する必要はない。
【符号の説明】
【0032】
1 生分解性成形体(小分け容器)
2 下型
21 キャビティ形成部(下型2)
3 上型
31 キャビティ形成部(上型3)
4 生分解性成形体(果物用緩衝材)
図1
図2
図3