(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060949
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】冷媒組成物、冷凍サイクル作動媒体、及び、冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20230424BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
C09K5/04 F
C09K5/04 E
C09K5/04 B
F25B1/00 396Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170646
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯高 誠之
(72)【発明者】
【氏名】鶸田 晃
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トリフルオロエチレン(HFO-1123)及びジフルオロメタン(R32)を含み、R410Aに比べて、GWPが低く且つCOPが十分に高い冷媒組成物を提供する。
【解決手段】トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及びプロパンの総和を基準とする質量%を、それぞれx、y、及びzとするとき、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及びプロパンの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x、y、z)が、特定点A~点Hのうち、点Gと点Hとを結ぶ線分GH、点Hと点Cとを結ぶ線分HC、点Cと点Dとを結ぶ線分CD、点Dと点Eとを結ぶ線分DE、及び、点Eと点Gとを結ぶ線分EGで囲まれる図形の範囲内、又は、線分DE、線分EG、及び、線分GHのうちの少なくともいずれかの線分上にある(但し、点D、点E、及び点Gを除く)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロエチレン(HFO-1123)、ジフルオロメタン(R32)、及びプロパン(R290)を含み、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンの総和を基準とする質量%を、それぞれx、y、及び、zとするとき、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンの総和が、100質量%となる3成分組成図において、
座標(x、y、z)が、
点A(100.0、0.0、0.0)、
点B(0.0、100.0、0.0)、
点C(0.0、0.0、100.0)、
点D(74.5、0.0、25.5)、
点E(62.0、12.4、25.6)、
点F(91.2、0.0、8.8)、
点G(86.9、3.1、10.0)、
点H(0.0、90.0、10.0)、
のうち、前記点Gと前記点Hとを結ぶ線分GH、前記点Hと前記点Cとを結ぶ線分HC、前記点Cと前記点Dとを結ぶ線分CD、前記点Dと前記点Eとを結ぶ線分DE、及び、前記点Eと前記点Gとを結ぶ線分EGで囲まれる図形の範囲内、又は、前記線分DE、前記線分EG、及び、前記線分GHのうちの少なくともいずれかの線分上にあり(但し、前記点D、前記点E、及び、前記点Gを除く)、
前記線分DEは、座標(x、0.0266x2-4.6248x+196.8859、-0.0266x2+3.6248x-96.8859)で表され、
前記点Eと前記点Fとを結ぶ線分EFは、座標(0.1171z2-5.7627z+132.8115、-0.1171z2+4.7627z-32.8115、z)で表され、
且つ、前記線分GH、前記線分HC、及び、前記線分CDが、直線である、冷媒組成物。
【請求項2】
更に、ハロメタンを含む、請求項1に記載の冷媒組成物。
【請求項3】
トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンの総和を100質量%としたときのジフルオロメタンの質量比が、44.4質量%未満である、請求項1又は2に記載の冷媒組成物。
【請求項4】
前記ジフルオロメタンの質量比が、29.6質量%未満である、請求項3に記載の冷媒組成物。
【請求項5】
前記ジフルオロメタンの質量比が、22.2質量%未満である、請求項4に記載の冷媒組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の冷媒組成物を含む、冷凍サイクル用作動媒体。
【請求項7】
請求項6に記載の冷凍サイクル用作動媒体を有する、冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トリフルオロエチレンを含有する冷媒組成物、この冷媒組成物を含む冷凍サイクル作動媒体、及び、冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル作動媒体に用いられる冷媒組成物として、ジフルオロメタン(R32)とペンタフルオロエタン(R125)とを含むR410A(アメリカ暖房冷凍空調学会(ASHRAE)のStandard 34(2016)規格に基づく冷媒番号)が知られている。R410Aは、GWP(地球温暖化係数。本開示で用いるGWPの値は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書の値に基づく地球温暖化係数を指す。)が比較的高い。このため、R410Aの代替冷媒として、特許文献1に開示されるように、ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及び、ジフルオロメタン(R32)を含み、GWPが比較的低い冷媒組成物も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/124402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷媒組成物には、例えば、GWPが低く、且つ、COP(成績係数、エネルギー消費効率とも称する。)が高いことが要求される。特許文献1に開示される冷媒組成物は、R410Aと比較すると、GWPは低いものの、COPは、それほど高くない。
【0005】
そこで本開示は、トリフルオロエチレン(HFO-1123)及びジフルオロメタン(R32)を含み、R410Aに比べて、GWPが低く且つCOPが十分に高い冷媒組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らの検討により、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、ジフルオロメタン(R32)、及び、プロパン(R290)を含み、且つ、これらの質量比を厳密に設定した冷媒組成物(冷媒又は熱媒体)は、R410Aに比べて、GWPが低く、且つ、COPが高くなることが確認された。本開示は、このような知見に基づくものである。
【0007】
即ち、本開示の一態様は、冷媒組成物であって、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、ジフルオロメタン(R32)、及びプロパン(R290)を含む。トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンの総和を基準とする質量%を、それぞれx、y、及び、zとするとき、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンの総和が、100質量%となる3成分組成図において、座標(x、y、z)が、点A(100.0、0.0、0.0)、点B(0.0、100.0、0.0)、点C(0.0、0.0、100.0)、点D(74.5、0.0、25.5)、点E(62.0、12.4、25.6)、点F(91.2、0.0、8.8)、点G(86.9、3.1、10.0)、点H(0.0、90.0、10.0)、のうち、前記点Gと前記点Hとを結ぶ線分GH、前記点Hと前記点Cとを結ぶ線分HC、前記点Cと前記点Dとを結ぶ線分CD、前記点Dと前記点Eとを結ぶ線分DE、及び、前記点Eと前記点Gとを結ぶ線分EGで囲まれる図形の範囲内、又は、前記線分DE、前記線分EG、及び、前記線分GHのうちの少なくともいずれかの線分上にある(但し、前記点D、前記点E、及び、前記点Gを除く)。前記線分DEは、座標(x、0.0266x2-4.6248x+196.8859、-0.0266x2+3.6248x-96.8859)で表される。前記点Eと前記点Fとを結ぶ線分EFは、座標(0.1171z2-5.7627z+132.8115、-0.1171z2+4.7627z-32.8115、z)で表される。且つ、前記線分GH、前記線分HC、及び、前記線分CDが、直線である。
【0008】
前記冷媒組成物は、更に、ハロメタンを含んでいてもよい。また、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンの総和を100質量%としたときのジフルオロメタンの質量比が、44.4質量%未満であってもよい。また、前記ジフルオロメタンの質量比が、29.6質量%未満であってもよい。また、前記ジフルオロメタンの質量比が、22.2質量%未満であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る各態様によれば、トリフルオロエチレン(HFO-1123)及びジフルオロメタン(R32)を含み、R410Aに比べて、GWPが低く且つCOPが十分に高い冷媒組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る冷媒組成物の3成分組成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る冷媒組成物の領域Tを示す3成分組成図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る冷媒組成物の領域Uを示す3成分組成図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る冷媒組成物の領域Vを示す3成分組成図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る冷凍サイクルシステムのブロック図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る冷凍サイクルシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示に係る冷媒組成物は、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、ジフルオロメタン(R32)、及びプロパン(R290)を含む。トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンの総和を基準とする質量%を、それぞれx、y、及び、zとするとき、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンの総和が、100質量%となる3成分組成図において、座標(x、y、z)が、点A(100.0、0.0、0.0)、点B(0.0、100.0、0.0)、点C(0.0、0.0、100.0)、点D(74.5、0.0、25.5)、点E(62.0、12.4、25.6)、点F(91.2、0.0、8.8)、点G(86.9、3.1、10.0)、点H(0.0、90.0、10.0)、のうち、前記点Gと前記点Hとを結ぶ線分GH、前記点Hと前記点Cとを結ぶ線分HC、前記点Cと前記点Dとを結ぶ線分CD、前記点Dと前記点Eとを結ぶ線分DE、及び、前記点Eと前記点Gとを結ぶ線分EGで囲まれる図形の範囲内、又は、前記線分DE、前記線分EG、及び、前記線分GHのうちの少なくともいずれかの線分上にある(但し、前記点D、前記点E、及び、前記点Gを除く)。前記線分DEは、座標(x、0.0266x2-4.6248x+196.8859、-0.0266x2+3.6248x-96.8859)で表される。前記点Eと前記点Fとを結ぶ線分EFは、座標(0.1171z2-5.7627z+132.8115、-0.1171z2+4.7627z-32.8115、z)で表される。且つ、前記線分GH、前記線分HC、及び、前記線分CDが、直線である。以下、これにより確定される冷媒組成物の3成分組成図内の領域を単に「組成領域」とも称する。
【0012】
上記構成によれば、トリフルオロエチレン(HFO-1123)及びジフルオロメタン(R32)、プロパン(R290)を上記した範囲の組成で含むことにより、R410Aと同等のCOPを有し、且つ、R410Aに比べてGWPが低い冷媒組成物が得られる。また、この冷媒組成物は、自然冷媒であるR290を1割以上含む。このため、冷媒組成物に含まれるフロン系化学物質を10質量%以上削減できる。よって、冷媒組成物中のフロン系化学物質が地球環境に及ぼす影響を低減できる。
【0013】
この冷媒組成物は、更にハロメタンを含んでいてもよい。これにより、冷媒組成物の特性をハロメタンにより調整できる。またトリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンの総和を100質量%としたときのジフルオロメタンの質量比は、冷媒組成物の組成が前記組成領域内となる範囲において、前記一例として44.4質量%未満であってもよい。これにより、冷媒組成物のGWPを300未満の値まで抑制できる。
【0014】
前記ジフルオロメタンの質量比は、29.6質量%未満であってもよい。これにより、冷媒組成物のGWPを200未満の値まで抑制できる。また、前記ジフルオロメタンの質量比は、22.2質量%未満であってもよい。これにより、冷媒組成物のGWPを150未満の値まで抑制できる。
【0015】
また本開示は、上記した冷媒組成物を含む冷凍サイクル用作動媒体である。これにより、R410Aと同等のCOPを有し、且つ、R410Aに比べてGWPが低い冷媒サイクル用作動媒体が得られる。よって例えば、冷凍サイクルシステム中の作動媒体流路内を冷媒サイクル用作動媒体が循環する過程において、作動媒体が外部から与えられるエネルギーにより仕事を行うと共に、周囲の熱を効率よく奪うことができる。
【0016】
また本開示は、上記した冷凍サイクル用作動媒体を有する冷凍サイクルシステムである。これにより、地球温暖化への影響を抑制しながら対象物を効率よく冷凍できる冷凍サイクルシステムを実現できる。
【0017】
以下、各実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
[冷凍サイクル作動媒体]
第1実施形態に係る冷凍サイクル作動媒体は、冷媒組成物、及び、これと併用しうるその他の成分を含む。
図1は、第1実施形態に係る冷媒組成物の3成分組成図である。冷媒組成物は、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、ジフルオロメタン(R32)、及びプロパン(R290)を含む。このトリフルオロエチレン(HFO-1123)、ジフルオロメタン(R32)、及びプロパン(R290)の質量比(%)は、
図1中の領域Sとして表される前記組成領域により確定される。冷媒組成物がトリフルオロエチレン(HFO-1123)を含むことで、冷媒組成物のGWPを低く、COPを高くすることができる。また、冷媒組成物がジフルオロメタン(R32)を含むことで、更に冷媒組成物のGWPを低くできると共に、微燃性を有するように冷媒組成物を調整し易くできる。ここで言う「微燃性」とは、例えば、アメリカ暖房冷凍空調学会(ASHRAE)のStandard 34(2016)規格に従い、「A2L」と判断する際に用いる、一部又は全ての指標を満たす燃性を指す。
【0018】
また冷媒組成物は、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、ジフルオロメタン(R32)に加えてプロパン(R290)を含み、且つ、これら3成分の質量比が前記組成領域により確定されるように厳密に設定されることで、R410Aに比べてGWPが低く、且つ、R410Aに比べて十分にCOPが高い性能を有する。例えば、トリフルオロエチレン(HFO-1123)のみを含む冷媒組成物を空調装置に用いた場合、当該冷媒組成物のCOPは、R410AのCOPの約90%程度に留まる。これに対して本実施形態の冷媒組成物のCOPは、当該冷媒組成物が前記組成領域により確定される組成を有することで、R410AのCOPの92.5%以上にまで向上している。このように、本実施形態の冷媒組成物は、COP及びGWPの両方において優れた性能を有する。
【0019】
ここで
図2は、第1実施形態に係る冷媒組成物の領域Tを示す3成分組成図である。
図2に示すように、別の例として、前記組成領域のうち、より望ましい領域は、座標(x、y、z)が、(0.0、47.0、53.0)の点Iと、(65.0、0.0、35.0)の点Jとを結ぶ線分IJにより、領域Sを2つの領域に分割したときの点H側の領域Tである。領域T内では、例えば、本実施形態の冷媒組成物のR410に対する体積能力(吸込体積当たりの能力)比を100%に設定することができる。
【0020】
図3は、第1実施形態に係る冷媒組成物の領域Uを示す3成分組成図である。
図3に示すように、別の例として、前記組成領域のうち、より望ましい領域は、座標(x、y、z)が、(0.0、50.0、50.0)の点Kと、(50.0、0.0、50.0)の点Lとを結ぶ線分KLにより、領域Sを2つの領域に分割したときの点C側の領域Uである。領域U内では、例えば、本実施形態の冷媒組成物の冷凍機油(エーテル油やエステル油等)に対する溶解性を良好に高めることができる。
【0021】
図4は、第1実施形態に係る冷媒組成物の領域Vを示す3成分組成図である。
図4に示すように、別の例として、前記組成領域のうち、より望ましい領域は、座標(x、y、z)が、(0.0、20.0、80.0)の点Mと、(60.0、40.0、0.0)の点Nとを結ぶ線分MNにより、領域Sを2つの領域に分割したときの点C側の領域Vである。領域V内では、例えば、冷媒圧縮機から吐出された直後の冷媒組成物の温度(吐出温度)と、R410の吐出温度との差を5K以内に収めることができる。
【0022】
トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンの総和を100質量%としたときのジフルオロメタンの質量比は、冷媒組成物の組成が前記組成領域内となる範囲において、前記一例として44.4質量%未満である。これにより、冷媒組成物のGWPを300未満の値まで抑制できる。
【0023】
本実施形態の第1変形例は、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンの総和を100質量%としたときのジフルオロメタンの質量比が、29.6質量%未満である。これにより、冷媒組成物のGWPを200未満の値まで抑制できる。また本実施形態の第2変形例は、前記ジフルオロメタンの質量比が、22.2質量%未満である。これにより、冷媒組成物のGWPを150未満の値まで抑制できる。
【0024】
冷凍サイクル作動媒体が含むその他の成分には、例えば、炭素数2~5の飽和炭化水素以外の化合物であって、不均化反応を抑制可能な化合物を併用することもできる。このような他の不均化抑制剤としては、次に示す式1の構造を有するハロメタン(ハロゲン化メタン)を挙げることができる。
【0025】
[式1] CHmXn
但し、式(1)におけるXは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群より選択されるハロゲン原子であり、mは0以上の整数であると共に、nは1以上の整数であり、更に、n及びmの和は4であり、nが2以上のときXは同一又は異なる種類のハロゲン原子である。
【0026】
このようなハロメタンとしては、具体的には、例えば、(モノ)ヨードメタン(CH3I)、ジヨードメタン(CH2I2)、ジブロモメタン(CH2Br2)、ブロモメタン(CH3Br )、ジクロロメタン(CH2Cl2)、クロロヨードメタン(CH2ClI)、ジブロモクロロメタン(CHBr2Cl)、四ヨウ化メタン(CI4)、四臭化炭素(CBr4)、ブロモトリクロロメタン(CBrCl3)、ジブロモジクロロメタン(CBr2Cl2)、トリブロモフルオロメタン(CBr3F)、フルオロヨードメタン(CHFI2)、ジフルオロジヨードメタン(CF2I2)、ジブロモジフルオロメタン(CBr2F2)、トリフルオロヨードメタン(CF3I)のうちの1種以上を例示できるが、これに限定されない。本実施形態の冷媒組成物において、ハロメタンは必須成分ではなく、必要に応じて適宜添加される。
【0027】
冷凍サイクル用作動媒体には、上記したハロメタン等が、トリフルオロエチレン(HFO-1123)の不均化反応を抑制する不均化抑制剤として含まれていてもよい。この不均化反応は、例えば、トリフルオロエチレン(HFO-1123)分子が分解する自己分解反応と、この自己分解反応により生じた炭素が重合して煤となる重合反応とを含む。冷凍サイクル用作動媒体における不均化抑制剤の含有量は、適宜設定可能である。
【0028】
冷凍サイクル用作動媒体は、冷凍サイクルシステムにおいて用いられる。冷凍サイクル作動媒体は、例えば、冷凍サイクルシステムが備える圧縮機を潤滑する潤滑油(冷凍機油)と併用できる。冷凍サイクル用作動媒体を潤滑油と併用する場合、冷媒組成物、不均化抑制剤、潤滑油成分、及び、必要に応じて添加される他の成分により、作動媒体含有組成物が構成される。なお作動媒体含有組成物では、不均化抑制剤は、冷凍サイクル用作動媒体及び潤滑油成分のいずれに混合されていてもよい。
【0029】
潤滑油としては、例えば、冷凍サイクルシステムで利用される公知の各種潤滑油を例示できる。具体的な潤滑油としては、エステル系潤滑油、エーテル系潤滑油、グリコール系潤滑油、アルキルベンゼン系潤滑油、フッ素系潤滑油、鉱物油、炭化水素系合成油等のうちの少なくとも1種を例示できる。冷凍サイクル用作動媒体の潤滑油の含有量は、適宜設定可能であるが、一例として、0質量%よりも大きく且つ300質量%以下の範囲の値である。
【0030】
また冷凍サイクル用作動媒体は、その他の成分として、不均化抑制剤以外の公知の各種添加剤を含有していてもよい。具体的な添加剤としては、酸化防止剤、水分捕捉剤、金属不活性化剤、摩耗防止剤、消泡剤、紫外線蛍光染料、安定剤、重合禁止剤、トレーサー等のうちの少なくとも1種以上を例示できるが、特に限定されない。
【0031】
酸化防止剤は、冷媒組成物又は潤滑油の熱安定性、耐酸化性、化学的安定性等を改善する。水分捕捉剤は、冷凍サイクルシステム内に浸入した水分を除去することで、例えば潤滑油の性質変化を抑制する。金属不活性化剤は、冷媒サイクルシステム中の金属成分の触媒作用による化学反応を抑制又は防止する。摩耗防止剤は、冷凍サイクルシステム中の圧縮機内の摺動部分等における摩耗を軽減する。消泡剤は、例えば、潤滑油中の気泡の発生を抑制する。各種添加剤は、冷凍サイクル用作動媒体、又は、これを含有する作動媒体含有組成物の性質を損なわない範囲内で利用できる。
【0032】
以上の構成を有する本実施形態の冷媒組成物、冷媒組成物を含む冷凍サイクル作動媒体、及び、作動媒体含有組成物によれば、冷凍サイクルシステム内の冷凍回路内を循環する過程において、地球温暖化への影響を抑制しながら、外部から与えられるエネルギーにより、対象物を効率よく冷却できる。
【0033】
[冷凍サイクルシステム]
以下、本実施形態の冷凍サイクル用作動媒体を用いた冷凍サイクルシステムについて説明する。冷凍サイクルシステムの具体的な構成及び用途は、特に限定されない。冷凍サイクルシステムは、例えば、圧縮機、凝縮器、膨張手段、及び、蒸発器等の構成要素が、配管により接続された構成を備える。冷凍サイクルシステムとしては、空気調和装置(エアーコンディショナー)、冷蔵庫(家庭用、業務用)、除湿器、ショーケース、製氷機、ヒートポンプ式給湯機、ヒートポンプ式洗濯乾燥機、又は、自動販売機等を例示できるが、これに限定されない。
【0034】
図5は、第1実施形態に係る冷凍サイクルシステム10のブロック図である。冷凍サイクルシステム10は、一例として空気調和装置である。
図5に示すように、冷凍サイクルシステム10は、室内機11、室外機12、及び、これらを接続する配管13を備える。室内機11は、室内側熱交換器14を備える。室外機12は、室外側熱交換器15、圧縮機16、及び、減圧装置17を備える。
【0035】
室内側熱交換器14と、室外側熱交換器15とは、配管13により接続される。具体的構成として、室内側熱交換器14、圧縮機16、室外側熱交換器15、及び、減圧装置17は、同順に、配管13により環状に接続され、冷凍サイクル用作動媒体が循環する。また、室内側熱交換器14、圧縮機16、及び室外側熱交換器15を接続する配管13の途中には、冷暖房切換用の四方弁18が設けられる。室内機11は、送風ファン、温度センサ、操作部等を更に備える。室外機12は、送風機、アキュームレータ等を更に備える。配管13の途中には、必要に応じて四方弁18以外の各種弁装置やストレーナ等が設けられる。
【0036】
室内側熱交換器14は、送風ファンにより室内機11の内部に導入される室内空気と、室内側熱交換器14の内部を流れる冷凍サイクル用作動媒体とを熱交換する。室内機11は、暖房時には熱交換により暖められた空気を室内に送風し、冷房時には熱交換により冷却された空気を室内に送風する。室内側熱交換器14を通過した冷凍サイクル用作動媒体は、室外側熱交換器15に送られる。室外側熱交換器15は、送風機により室外機12の内部に導入される外気と、室外側熱交換器15の内部を流れる冷凍サイクル用作動媒体とを熱交換する。室外側熱交換器15を通過した冷凍サイクル用作動媒体は、室内側熱交換器14に再び送られる。
【0037】
なお室内機11及び室外機12の具体的な構成、或いは、室内側熱交換器14又は室外側熱交換器15、圧縮機16、減圧装置17、四方弁18、送風ファン、温度センサ、操作部、送風機、アキュームレータ、その他の弁装置、ストレーナ等の具体的な構成は、特に限定されない。
【0038】
空気調和装置である冷凍サイクルシステム10の冷房運転時、又は、除湿運転時には、室外機12の圧縮機16が、気化した冷凍サイクル用作動媒体を圧縮して配管13に吐出する。気化した冷凍サイクル用作動媒体は、四方弁18を介して室外側熱交換器15に送出される。室外側熱交換器15は、気化した冷凍サイクル用作動媒体を外気と熱交換する。この熱交換に伴い、冷凍サイクル用作動媒体は、凝縮されて液化する。液化した冷凍サイクル用作動媒体は、配管13を流通し、減圧装置17により減圧されて室内側熱交換器14に送出される。室内側熱交換器14は、液化した冷凍サイクル用作動媒体を室内空気と熱交換する。この熱交換に伴い、冷凍サイクル用作動媒体は蒸発して気化する。気化した冷凍サイクル用作動媒体は、配管13を流通し、四方弁18を介して圧縮機16に戻る。
【0039】
また、空気調和装置である冷凍サイクルシステム10の暖房運転時には、室外機12の圧縮機16が、気化した冷凍サイクル用作動媒体を圧縮して配管13に吐出する。気化した冷凍サイクル用作動媒体は、四方弁18を介して室内側熱交換器14に送出される。室内側熱交換器14は、気化した冷凍サイクル用作動媒体を室内空気と熱交換する。この熱交換に伴い、冷凍サイクル用作動媒体は、凝縮されて液化する。液化した冷凍サイクル用作動媒体は、配管13を流通し、減圧装置17により減圧されて気液二相となり、室外側熱交換器15に送出される。室外側熱交換器15は、気液二相の冷凍サイクル用作動媒体を外気と熱交換する。この熱交換に伴い、気液二相の冷凍サイクル用作動媒体は、蒸発して気化する。気化した冷凍サイクル用作動媒体は、配管13を流通し、四方弁18を介して圧縮機16に戻る。
【0040】
上記のように動作する冷凍サイクルシステム10は、前述した冷凍サイクル用作動媒体を含む。この冷凍サイクル作動媒体は、本実施形態の冷媒組成物を含む。これにより本実施形態では、GWP及びCOPに優れる冷媒組成物を用いることにより、地球温暖化への影響を抑制しながら対象物を効率よく冷凍できる冷凍サイクルシステム10を実現できる。以下、第2実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0041】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る冷凍サイクルシステム20のブロック図である。本実施形態の冷凍サイクルシステム20は、一例として冷蔵庫である。
図6に示すように、冷凍サイクルシステム20は、圧縮機21、凝縮器22、減圧装置23、蒸発器24、及び、これらを接続する配管25等を備える。また冷凍サイクルシステム20は、不図示の筐体、送風機、操作部、及び制御部等を備える。冷凍サイクルシステム20は、第1実施形態の冷凍サイクル作動媒体を含む。
【0042】
圧縮機21は、冷凍サイクル用作動媒体を圧縮して、高温高圧の気化した冷凍サイクル用作動媒体を生成する。凝縮器22は、気化した冷凍サイクル用作動媒体を冷却して液化する。減圧装置23は、液化した冷凍サイクル用作動媒体を減圧する。減圧装置23は、例えばキャピラリーチューブを有する。蒸発器24は、冷凍サイクル用作動媒体を蒸発させて低温低圧の気化した冷凍サイクル用作動媒体を生成する。圧縮機21、凝縮器22、減圧装置23、及び、蒸発器24は、配管25により、この順で環状に接続され、冷凍サイクル用作動媒体が循環する。なお、圧縮機21、凝縮器22、減圧装置23、蒸発器24、配管25、本体筐体、送風機、操作部、制御部等の具体的な構成は特に限定されない。
【0043】
冷蔵庫である冷凍サイクルシステム20の駆動時には、圧縮機21が、気化した冷凍サイクル用作動媒体を圧縮して凝縮器22に吐出する。凝縮器22は、気化した冷凍サイクル用作動媒体を冷却して、液化した冷凍サイクル用作動媒体を生成する。液化した冷凍サイクル用作動媒体は、減圧装置23により減圧されて蒸発器24に送られる。蒸発器24では、液化した冷凍サイクル用作動媒体は、周囲から熱を奪うことにより気化する。気化した冷凍サイクル用作動媒体は、圧縮機21に戻る。このような冷凍サイクルシステム20においても、冷凍サイクルシステム10と同様の効果が得られる。
【0044】
(確認試験)
次に、本開示の冷媒組成物の性能を確認する確認試験について説明するが、本開示は、以下に示す実施例に限定されない。当業者は、本開示の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、及び改変を行うことができる。
【0045】
以下の表1に示すように、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンを、これらの総和を100質量%としたときの所定の質量比(%)で含む実施例1~5の冷媒組成物を作成した。また、以下の表2に示すように、ように、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、及び、プロパンを、これらの総和を100質量%としたときの所定の質量比(%)で含む比較例1~5の冷媒組成物を作成した。これらの実施例1~5、及び比較例1~5の冷媒組成物のCOPを、R410AのCOPを100%としたときの相対値として、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が作成する冷媒熱物性データベースソフトウェアである「REFPROP Ver.10」の物性データにより算出した。このときの計算条件は、以下の通りとした。
蒸発温度:5℃
凝縮温度:45℃
過熱度:3K
過冷却度:5K
上記計算条件に基づく各計算結果を、表1及び表2に併せて示す。
【0046】
【0047】
【0048】
表1に示すように、
図1に示す3成分組成図中の前記組成領域内に位置する組成を有する実施例1~5の冷媒組成物は、COPが、R410AのCOPの92.5%となることが確認された。これに対して表2に示すように、前記組成領域外となる組成を有する比較例1~5の冷媒組成物は、COPが、実施例1~5よりも劣ることが確認された。
【0049】
(組成例)
次に、本開示の冷媒組成物のCOPが、R410AのCOPの92.5%となる前記組成領域中の線分DE上(点D、Eを除く)の組成例を表3に示す。
【0050】
【0051】
また、本開示の冷媒組成物のCOPが、R410AのCOPの92.5%となる前記組成領域中の線分EG上(点E、Gを除く)の組成例を表4に示す。
【0052】
【0053】
本開示は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成を変更、追加、又は削除できる。
【符号の説明】
【0054】
10 空気調和装置(冷凍サイクルシステム)
20 冷蔵庫(冷凍サイクルシステム)