(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060962
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】調理済み家鴨皮加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/20 20160101AFI20230424BHJP
A23L 13/50 20160101ALI20230424BHJP
【FI】
A23L13/20
A23L13/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170666
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】503379140
【氏名又は名称】株式会社藤屋
(74)【代理人】
【識別番号】100111419
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 宏一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115314
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】藤木 守
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC03
4B042AC05
4B042AC09
4B042AD08
4B042AD24
4B042AE05
4B042AG08
4B042AH04
4B042AP04
4B042AP18
4B042AP21
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】常温保存、かつ風味・食感の維持が可能であり、衛生面でも優れた、調理済み家鴨皮加工品の製造方法を提供すること。
【解決手段】第1ステップとして、表面へのタレの塗布と焼き上げが実施された調理済み家鴨皮を加熱して焼き上げる。具体的には、調理済み家鴨皮を加熱し、90~110℃で45~55分間焼き上げ、その後、さらに加熱し、130~150℃で5~15分間焼き上げた後、予熱で25~35分間維持させる。第2ステップとして、ロースト後調理済み家鴨皮を冷却し、5~10℃で55~65分間維持させる。第3ステップとして、ロースト・冷却後調理済み家鴨皮を、例えば一人前サイズなどにカットする。この順序で工程を経ることにより、調理済み家鴨皮加工品が得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面へのタレの塗布と焼き上げが実施された調理済み家鴨皮を加熱して焼き上げるロースト工程と、ロースト後調理済み家鴨皮を冷却する冷却工程と、ロースト・冷却後調理済み家鴨皮をカットする切断工程と、を含む調理済み家鴨皮加工品を製造する方法であって、
ロースト工程は、調理済み家鴨皮を加熱し、90~110℃で45~55分間焼き上げる低温ロースト工程と、低温ロースト後調理済み家鴨皮を加熱し、130~150℃で5~15分間焼き上げた後、予熱で25~35分間維持させる高温ロースト工程と、を含み、
冷却工程は、ロースト後調理済み家鴨皮を冷却し、5~10℃で55~65分間維持させることを含む、調理済み家鴨皮加工品の製造方法。
【請求項2】
切断工程は、ロースト・冷却後調理済み家鴨皮を一人前サイズにカットすることを含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
その包装を一袋に所定枚づつなすことを特徴とする、請求項1また2記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理済み家鴨(あひる)皮加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中華料理の高級料理の一つとして有名な北京ダック料理の、我が国における特徴は、家鴨の丸焼きを皮に肉質部分が付属した小片としてカットして提供するのが常の中国とは異なり、肉質部分を削ぎ取った皮のみをカットして提供する点にある。すなわち、我が国で調理に使用するのは、肉質部分を取り除いた皮のみである。このため、調理済み家鴨(原料となる中国原産の家鴨を所定の体裁に整えた状態(ホール)で体表の皮に糖蜜を主成分とするタレを塗布して丸焼き(ロースト)し、その後に冷凍したもの)の供給を受けた料理提供者(料理店やホテルなど)は、注文を受けた場合、解凍した上で、熱した油を回しかけるなどして調理済み家鴨をホールごと再加熱した後、皮を剥ぎ、カットして提供していた。
【0003】
しかしながら、一度ローストした調理済み家鴨のホールから皮のみを削ぐように切り取るには、熟練を要し、時間や手間がかかり、これを料理提供者の厨房で行うのは煩雑であった。また、我が国で調理に使用するのはホールのうち皮部分のみであるので、それ以外の部分(肉や骨など)が廃棄物として残り、その処理に苦慮していた。さらに、調理に使用するのが皮部分のみであるのにもかかわらず、多くの容積と重量を占める廃棄予定部分(肉や骨など)を含めて輸送や保管を強いられ、特に大きな保管スペースを持てない料理提供者にとって切実な問題でもあった。
【0004】
そこで、原料となる食用家鴨から採取した一続きの皮をシート状に保持した状態でタレを塗布し、その後に焼き上げる(ローストする)ことによって、ロースト後の家鴨の皮部分のみを得る技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術によると、ロースト後の家鴨のホールから皮のみを採取する面倒な手間は不要であり、カットのみを行えばよく、供給を受けた料理提供者の調理効率が飛躍的に向上する。また、供給を受ける料理提供者は、調理に必要なロースト後の家鴨の皮部分のみを入手できるので、料理提供者サイドにおいて、家鴨をホールの状態で保存することにより冷凍庫のスペースを占領していた事態と、廃棄が必要な皮以外の大部分(肉や骨など)の処理問題が解消される。さらに、得られる皮部分は、ホールの状態と比較して、容積と重量が劇的に小さくなるので、輸送コストの低減にも寄与し得る。すなわち特許文献1の技術によれば、こうしたメリットが享受される。
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術により得られる、ロースト後の家鴨の皮部分は生ものであるため常温雰囲気では傷みやすく、その結果、痛むのを防止すべく冷凍・冷蔵保存しなければならず、少なからず冷凍・冷蔵庫の保管スペースを確保する必要があった。また、カット後の全てを提供できなかった場合、残り部分を再び冷凍・冷蔵しなければならず、風味・食感を維持する点で課題を有していた。さらに、残り部分のカット端から腐敗などが進みやすく、衛生面での課題も有していた。
【0008】
本発明は、上記点に鑑みなされたものであって、その目的は、常温保存、かつ風味・食感の維持が可能であり、衛生面でも優れた、調理済み家鴨皮加工品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る調理済み家鴨皮加工品の製造方法は、少なくとも第1ステップ、第2ステップ及び第3ステップを有する。
【0010】
第1ステップは、表面へのタレの塗布と焼き上げが実施された調理済み家鴨皮を加熱して焼き上げるロースト工程であり、調理済み家鴨皮を加熱し、90~110℃で45~55分間焼き上げる低温ロースト工程と、低温ロースト後調理済み家鴨皮を加熱し、130~150℃で5~15分間焼き上げた後、予熱で25~35分間維持させる高温ロースト工程と、を含む。
【0011】
第2ステップは、ロースト後調理済み家鴨皮を冷却する冷却工程であり、ロースト後調理済み家鴨皮を冷却し、5~10℃で55~65分間維持させることを含む。
【0012】
第3ステップは、ロースト・冷却後調理済み家鴨皮を、例えば一人前サイズなどにカットする切断工程である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、調理済み家鴨皮を加熱して焼き上げる特定のロースト工程(2段階ロースト)と所定の冷却工程を含み、これにより常温保存が可能なパリパリとした食感のロースト物が得られるため、冷凍・冷蔵庫の保管スペースを確保する必要はなく、供給を受ける料理提供者(料理店やレストラン、ホテルなど)の利便性が向上する。また、所定の切断工程を含むので、カット物の供給を受ける料理提供者は、注文に応じた調理に必要な分だけ使用すればよく、残り分の風味・食感を維持することができる。また別途、カットする必要がないため、従来生じていたカット端からの腐敗を心配する必要がなく、衛生面でも有利である。
【0014】
すなわち本発明によれば、常温保存、かつ風味・食感の維持が可能であり、衛生面でも優れた、調理済み家鴨皮加工品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明方法の原料準備のために用いる皮固定枠具の一例としての串枠体を示す平面図である。
【
図4A】本発明方法の原料準備のための一工程で準備する処理対象の一例を示す図である。
【
図4B】本発明方法の原料準備のための一工程で採取される一続きの皮を示す図である。
【
図4C】本発明方法の原料準備のための一工程の作業例を説明する図である。
【
図4D】本発明方法の原料準備のための一工程の作業例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(1)調理済み家鴨皮
まずは、
図1に示す原料の準備である(S1)。
原料とする調理済み家鴨皮は、食用家鴨から採取した一続きの皮の表面にタレを塗布して乾燥させ、焼き上げたものであればよい。
調理済み家鴨皮は、例えば、「
図4Aに示す調理前の食用家鴨20から、
図4Bに示す一続きの皮22を採取し、次に、
図4Dに示すように、採取した一続きの皮22を、
図2及び
図3に示す串枠体10に対して、中心から周縁Eへ向かう方向に伸ばしながら、該皮22の周縁Eの近傍を裏面22bから表面22aに向けて、串枠体10を構成する各串部材12それぞれの両先端に当接させ、皮22の周縁Eの近傍に各串部材12を貫通させることによってシート状に保持し、そのシート状に保持した状態で、一続きの皮22の表全面にムラなくタレを塗布して乾燥させ、焼き上げたもの」を含む。ただし、この方法により得られたものに限定する趣旨ではない。
調理済み家鴨皮は、焼き上げ後に常温保管されたものの他、輸送に供するため、真空パックなどされた後、冷凍されたものを含む。冷凍されたものである場合、後述のロースト工程に先立ち、解凍工程に付してもよい。
【0018】
食用家鴨20としては、例えば、食材となる生きた家鴨を屠殺した後に毛をむしり、内臓を取り出して血が抜かれ、舌、手羽先、足の部分が取り除かれた後、95℃前後程度の熱湯で殺菌したもの(例えば
図4A参照)が用いられる。
利用可能な食用家鴨20としては、例えば、北京ダックと呼ばれる中国原産の家鴨やチェリバレー種の家鴨などが挙げられる。北京ダックとは、家鴨の一種であるが、極めて特別なものである。清朝の終わり頃、中国在来種の中から一部が英国に渡り、品種改良の後に再度移入されたもので、普通の家鴨に比べて、体が大きく、肉付きが良く、成長が早く、又、病気に強く、環境に対する適応性に富んでいる。普通の家鴨の標準体重(と殺・中抜き後)が2.0kg程度であるのに対し、北京ダックは2.5~3.0kg程度もあり、普通の家鴨は約40日ほどかかるのに対し、約60日間で雛から成熟(食用)となる。
【0019】
食用家鴨20から一続きの皮22を採取するに際し、皮22の裏面の肉が削ぎ落とされた状態となるように作業することが好ましい。皮22の裏面に肉部分が多く残っていると、焼き上げた後の風味や食感などが劣化しやすいが、若干量(数グラム程度)であれば問題はない。
皮22の採取方法は、特に限定されず、例えば
図4Cに示すように手作業にて慎重に行ってもよいし、また専用のピーラー(皮剥離採取装置、不図示)を用いてもよい。なお、一続きの皮22が採取された後の食用家鴨20の残りの肉及び骨部分24(
図4C参照)は、このタイミングで廃棄処分に処することができる。
【0020】
食用家鴨20から採取した一続きの皮22をシート状に保持するために皮固定枠具として用いるす串枠体10は、
図2及び
図3に示すように、両端が鋭利な複数(図例では11本)の串部材12を、縦横それぞれに間隔をあけて配列し、すべての串部材12について、それぞれの交差部分を連結した略矩形状の構造を有していてもよい。交差部分では、例えば一方の串部材12に他方の串部材12を貫通させること(
図3参照)によって両者を連結することができる。
串枠体10は、その外縁が、食用家鴨20から採取した一続きの皮22を平面シート状に拡げたものと略同一サイズであることが好ましい。
串部材12は、両先端が鋭利な円筒状または角柱状の棒体で構成することができる。その材質は特に限定されず、例えば竹、金属、樹脂などが挙げられる。太さは、材質に応じて強度を保持できるものであればよく、例えば、材質が竹である場合、3~10mm程度あればよい。
【0021】
一続きの皮22に塗布するタレの構成は、特に限定されず、例えば、糖蜜を主成分とするもの、水あめなどが挙げられる。焼き上げ(ロースト)は、例えば、一続きの皮22を略平面シート状に保持させた状態で釜(炉)に入れ、炉内温度120℃~130℃程度で、皮22の表裏全面を、20分~25分程度焼くことにより行われる。
【0022】
(2)ロースト工程
原料である調理済み家鴨皮は、
図1に示すように、特定のロースト工程(S21、S22)に供される。本発明では、調理済み家鴨皮を加熱して焼き上げるロースト工程を2段階で行う点に特徴がある。これにより、常温保存が可能なパリパリとした食感のロースト物が得られることが本発明者により見出された。ロースト方法は、特に限定されるものではなく、直火式、熱風式、半熱風式、炭火式、遠赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式等の周知の方法を適宜に選択することができる。
【0023】
低温ロースト
本発明では、第1段階として、調理済み家鴨皮の割れ等を生じさせない程度の温度及び雰囲気で、調理済み家鴨皮を加熱して焼き上げる(低温ロースト工程、S21)。低温ロースト工程は、空気中で行われ、少なくとも昇温工程及び温度保持工程を有し、その後の余熱保持工程を有してもよい。
昇温工程は、釜(炉)内の温度を保持温度まで所定の昇温速度で加熱する工程である。
温度保持工程は、前記保持温度で保持する工程である。温度保持工程では、前記雰囲気を変更せずに、空気中で保持温度を一定時間保持することが好ましい。保持温度は、好ましくは90~110℃、より好ましくは95~105℃、とする。保持温度が高すぎると、調理済み家鴨皮の割れ等の不都合を生じうる。保持温度の保持時間は、好ましくは45~55分、より好ましくは50分前後、とする。
【0024】
低温ロースト工程では、前記昇温工程及び温度保持工程の後に、予熱保持工程を有してもよい。なお、前記温度保持工程の後に、後述の高温ロースト工程に移行してもよい。
予熱保持工程は、炉内の加熱を停止し、予熱保持する工程である。積極的に所定の温度(たとえば室温:25℃)にまで所定の降温速度で降温させる降温工程ではない。予熱保持工程では、前記温度保持工程での雰囲気を変更せずに、空気中で行う。
【0025】
高温ロースト
本発明では、第2段階として、低温ロースト後調理済み家鴨皮の焦げ付き等を生じさせない程度の温度及び雰囲気で、低温ロースト後調理済み家鴨皮を加熱して焼き上げる(高温ロースト工程、S22)。高温ロースト工程も低温ロースト工程と同様、空気中で行われるが、低温ロースト工程とは異なり、昇温工程、温度保持工程、及び予熱保持工程を有する。すなわち高温ロースト工程は、必ず、予熱保持工程を有する。
【0026】
昇温工程では、低温ロースト工程と同様、空気中で、炉内温度を保持温度まで所定の昇温速度で加熱する。
温度保持工程も低温ロースト工程と同様、前記雰囲気を変更せずに、空気中で保持温度を一定時間保持することが好ましい。保持温度は、好ましくは130~150℃、より好ましくは135~145℃、とする。保持温度が高すぎると、低温ロースト後調理済み家鴨皮の焦げ付き等の不都合を生じうる。保持温度の保持時間は、好ましくは5~15分、より好ましくは10分前後、と短時間であることが望ましい。
【0027】
予熱保持工程は、前記温度保持工程での雰囲気を変更せずに、空気中で行う。保持時間は、好ましくは25~35分、より好ましくは30分前後、とする。これにより、高温ロースト後調理済み家鴨皮に残存する余分な脂が完全に除去される等のメリットが得られる。
【0028】
(3)冷却工程
次に、上記ロースト後調理済み家鴨皮を冷却する(冷却工程、S3)。冷却工程は、ロースト後調理済み家鴨皮を、5℃~15℃(好ましくは10℃前後)程度で、55分~65分(好ましくは60分前後)程度冷却することにより行うことが好ましい。これにより、上記ロースト後調理済み家鴨皮について細菌の増殖が抑制される等のメリットが得られる。
【0029】
(4)切断工程
次に、上記ロースト・冷却後調理済み家鴨皮をカットする(切断工程、S4)。これにより、カット物の供給を受ける料理提供者は、調理に必要な分だけ使用することにより残り分の風味・食感を維持することができる。また別途、カットする必要がないため、従来生じていたカット端からの腐敗を心配する必要がなく、衛生面でも有利である。
カットするサイズや形状は特に限定されない。カットするサイズは、例えば、一人前サイズ(一人で食するのに適度な大きさ。形状が直方体である場合、例えば、約(20mm×60mm)程度)、一口サイズ(そのまま口の中に入る大きさ。形状が直方体である場合、例えば、約(40mm×40mm)程度)などでよい。カットする形状としては、例えば、立方体形状、直方体形状、円柱状形状、扇形形状などが挙げられる。
以上の工程によって、本発明の調理済み家鴨皮加工品が完成する(最終製品)。
【0030】
切断後の最終製品としての調理済み家鴨皮加工品の包装は、一袋に所定枚(例えば10枚)づつなしてもよいが、一袋に一枚づつ個別になすこともできる。一枚づつ個別になすことで、上記工程までの成果により風味・食感を損なわないで完成した製品を、できるだけそのままの風味・食感を保持した状態にしておくことができる。また、一枚づつ包装された製品をさらに所定数ずつの単位で二重に包装すれば、この風味・食感保持はより徹底されることになる。
【0031】
本例の製造方法によると、常温保存が可能なパリパリとした食感のロースト物が得られるため、冷凍・冷蔵庫の保管スペースを確保する必要はなく、供給を受ける料理提供者の利便性が向上する。また、切断後のカット物の供給を受ける料理提供者は、注文に応じた調理に必要な分だけ使用すればよく、残り分の風味・食感を維持することができる。また別途、カットする必要がないため、従来生じていたカット端からの腐敗を心配する必要がなく、衛生的である。
すなわち本例によれば、常温保存、かつ風味・食感の維持が可能であり、衛生面でも優れた、調理済み家鴨皮加工品の製造方法が提供される。
【0032】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0033】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
まず、原料である調理済み家鴨皮として、食用家鴨から採取した一続きの皮の表面にタレを塗布して乾燥させ、焼き上げたものを準備した。
次に、準備した調理済み家鴨皮に、低温ロースト工程、高温ロースト工程、冷却工程、及び切断工程を行って、所定枚数の、完成製品であるピースカット品(調理済み家鴨皮加工品)を得た。
【0034】
低温ロースト工程
保持温度:100℃、
保持時間:50分、
雰囲気:空気中。
【0035】
高温ロースト工程
保持温度:140℃、
保持時間:10分、
雰囲気:空気中、
予熱時間:30分。
【0036】
冷却工程
保持温度:10℃、
保持時間:60分、
雰囲気:空気中。
【0037】
切断工程
ロースト・冷却後調理済み家鴨皮に対し、1枚あたり、サイズ:約(20mm×60mm)程度の直方体にカットして、完成製品を得る。
【0038】
その後完成製品を一袋に一枚ずつ個別に包装し、さらに、一枚ずつ包装したものを10袋ずつの単位で二重包装した。
上記各工程を経ることにより得た完成製品は、袋を開封すると途端に家鴨皮加工品が有する独自の香りが漂い、また、食すると風味が良く、パリパリとした食感を有するものとなる。
【0039】
また、上記実施例に基づいて製造した本願発明に係る完成製品のアンケート調査を、(1)香り(調理済み家鴨皮独自の香りがあるか)、(2)風味・食感(家鴨皮のうま味が生かされていて食べやすいか)、(3)総合、の各項目について行い、その結果を表1に示した。
評価方法は、前記各項目について、非常に良い、良い、普通、悪い、を選択してもらうこととした。なお、本比較評価は、20歳以上の男女計30名(男性16名、女性14名)を対象として行った。
【0040】
【0041】
上記比較評価より、(1)の香りについては、圧倒的に非常に良いとする者が多く、普通もしくは悪いとする者は無かった。また、(2)の風味・食感についても、1名だけ普通とする者があったが、その者を除く残りの全員は非常に良いとする者であった。さらに、(3)の総合についても、良いとする1名だけを除いて残りの全員は非常に良いとする者であった。このように、完成製品は、香り、風味・食感、総合の何れの項目においても好ましいという結果を得た。