(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060991
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】スプール弁
(51)【国際特許分類】
F16K 11/07 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
F16K11/07 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170713
(22)【出願日】2021-10-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 恒輝
(72)【発明者】
【氏名】江川 祐弘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武
(72)【発明者】
【氏名】吉田 説与
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA17
3H067CC39
3H067CC45
3H067DD05
3H067FF11
3H067GG22
(57)【要約】
【課題】スプール弁の作動を安定させる。
【解決手段】スプール弁100のスプール20は、タンク通路15A,15B及びブリッジ通路14に対するロッド側通路12及びボトム側通路13の連通がそれぞれ遮断される中立ポジションにおいて、その一部がタンク通路15Aに臨む第1ランド部21及び第2ランド部22を有し、中立ポジションにおいてタンク通路15Aに臨む第1ランド部21及び第2ランド部22は、収容孔11に対して所定の第1クリアランスR1をもって摺動する第1大径部21A及び第2大径部22Aと、中立ポジションにおいて少なくとも一部がタンク通路15Aに臨み、第1大径部21A及び第2大径部22Aよりも大きい第2クリアランスR2によって収容孔11内と移動する第1小径部21B及び第2小径部22Bと、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに形成される収容孔に移動自在に挿入されるスプールと、
前記収容孔に開口し、作動流体を貯留するタンクに連通するタンク通路と、
前記収容孔に開口し、ポンプから吐出される作動流体を導くポンプ通路と、
前記収容孔に開口し、流体圧アクチュエータに給排される作動流体を導くアクチュエータ通路と、を備え、
前記スプールは、前記収容孔に対して摺動する複数のランド部と、隣接する前記ランド部の間に形成される環状溝と、を有し、
複数の前記ランド部には、前記タンク通路及び前記ポンプ通路に対する前記アクチュエータ通路の連通がそれぞれ遮断される中立ポジションにおいて、その一部が前記タンク通路に臨む前記ランド部が含まれており、
前記中立ポジションにおいて前記タンク通路に臨む前記ランド部は、
前記収容孔に対して所定の摺動クリアランスをもって摺動する摺動部と、
前記中立ポジションにおいて少なくとも一部が前記タンク通路に臨む対面部と、を有し、
前記収容孔と前記対面部との間のクリアランスは、前記収容孔と前記摺動部との間の前記摺動クリアランスよりも大きく、前記収容孔と前記環状溝との間のクリアランスよりも小さいことを特徴とするスプール弁。
【請求項2】
請求項1に記載のスプール弁であって、
前記収容孔は、前記ハウジングの端面に開口し、
前記スプールは、前記タンク通路に臨む前記ランド部として、前記スプールの移動に伴いその一部が前記収容孔の開口を通じて前記収容孔から外部に突出する端部ランド部を有し、
前記端部ランド部の前記摺動部は、前記端部ランド部の前記対面部よりも前記スプールの移動方向において前記ハウジングの前記端面側に設けられて、前記収容孔の開口を通じて前記収容孔から外部に突出し、
前記スプールの移動方向における前記端部ランド部の前記摺動部の長さは、前記端部ランド部の前記摺動部の一部が、前記スプールの移動に関わらず常に前記収容孔に摺動するように設定されることを特徴とするスプール弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスプール弁であって、
前記収容孔と前記対面部との間のクリアランスの大きさは、100μm未満に設定されることを特徴とするスプール弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スプール摺動穴およびスプール摺動穴に連通する複数の油通路が設けられた弁ハウジングと、弁ハウジングのスプール摺動穴内に挿嵌され複数の油通路の間を連通,遮断するスプールと、を備えるスプール弁が開示されている。このスプール弁では、タンク側の油通路、ポンプ側の油通路、及びアクチュエータ側の油通路を構成する油溝がそれぞれスプール摺動穴に連通するように弁ハウジングに形成される。また、スプールの外周側には、各油通路の間を連通、遮断するためのランドが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるスプール弁では、中立位置にある状態では、アクチュエータ側の油通路は、スプールのランドによって、タンク側の油通路及びポンプ側の油通路のいずれに対しても遮断される。よって、中立位置にある状態では、スプールの一部のランドは、その一部がタンク側の油通路に臨んでいる。
【0005】
ここで、複数のアクチュエータを駆動する流体圧制御装置では、アクチュエータに給排される作動流体を制御するスプール弁がアクチュエータごとに設けられることがある。この場合、各アクチュエータから排出された作動流体を貯留するタンクは、共通に使用されることが一般的である。このため、タンクに排出される作動流体を導くタンク通路は、流体圧制御装置に含まれるスプール弁のそれぞれを通るように構成されることがある。つまり、あるアクチュエータから排出された作動流体が、他のアクチュエータの作動を制御するスプール弁のタンク通路を通じて通過してタンクに排出されることがある。
【0006】
また、例えば、アクチュエータが作動することなどにより、タンク通路を通じてタンクに排出される作動流体の温度が上がることがある。よって、流体圧制御装置の複数のスプール弁のうち中立位置にあるスプール弁では、スプールに設けられたランドが、タンク通路を通じて排出される温度上昇した作動流体の流れに晒されことになる。これにより、スプールのランドが、熱膨張してスプール摺動孔に引っかかり、スプールがスプール摺動孔内で摺動できずに、スプール弁の作動不良を起こすおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、スプール弁の作動の安定性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スプール弁であって、ハウジングに形成される収容孔に移動自在に挿入されるスプールと、収容孔に開口し、作動流体を貯留するタンクに連通するタンク通路と、収容孔に開口し、ポンプから吐出される作動流体を導くポンプ通路と、収容孔に開口し、流体圧アクチュエータに給排される作動流体を導くアクチュエータ通路と、を備え、スプールは、収容孔に対して摺動する複数のランド部と、隣接するランド部の間に形成される環状溝と、を有し、複数のランド部には、タンク通路及びポンプ通路に対するアクチュエータ通路の連通がそれぞれ遮断される中立ポジションにおいて、その一部がタンク通路に臨むランド部が含まれており、中立ポジションにおいてタンク通路に臨むランド部は、収容孔に対して所定の摺動クリアランスをもって摺動する摺動部と、中立ポジションにおいて少なくとも一部がタンク通路に面し、摺動部よりも大きいクリアランスをもって収容孔内を移動する対面部と、を有し、収容孔と対面部との間のクリアランスは、収容孔と摺動部との間の摺動クリアランスよりも大きく、収容孔と環状溝との間のクリアランスよりも小さいことを特徴とする。
【0009】
この発明では、タンク通路に臨むランド部では、中立ポジションにおいてタンク通路に面する対面部のクリアランスが摺動部の摺動クリアランスよりも大きい。つまり、中立ポジションにおいてタンク通路を流れる作動流体に晒される対面部は、相対的にクリアランスが大きい。このため、対面部がタンク通路を流れる作動流体によって温度上昇し膨張しても、スプールが収容孔の内周に引っかかることが抑制される。これにより、収容孔に対してスプールが摺動できなくなる作動不良の発生が抑制される。
【0010】
また、本発明は、収容孔が、ハウジングの端面に開口し、スプールが、タンク通路に臨むランド部として、スプールの移動に伴いその一部が収容孔の開口を通じて収容孔から外部に突出する端部ランド部を有し、端部ランド部の摺動部は、端部ランド部の対面部よりもスプールの移動方向においてハウジングの端面側に設けられて、収容孔の開口を通じて収容孔から外部に突出し、スプールの移動方向における端部ランド部の摺動部の長さは、端部ランド部の摺動部の一部が、スプールの移動に関わらず常に収容孔に摺動するように設定されることを特徴とする。
【0011】
この発明では、スプールが移動しても、端部ランド部が対面部のみによって収容孔に摺接することがなく、相対的に摺動クリアランスが小さい摺動部でも収容孔に摺接するため、端部ランド部の外周を通じた作動油の漏れを抑制することができる。
【0012】
また、本発明は、収容孔と対面部との間のクリアランスの大きさは、100μm未満に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スプール弁の作動の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るスプール弁の断面図であって、スプール弁が中立ポジションにある状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るスプール弁における第1ランド部及び第2ランド部周辺を示す拡大断面図であって、スプール弁が中立ポジションにある状態を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るスプール弁の第1変形例を示す拡大断面図であって、
図2に対応する状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るスプール弁100について説明する。スプール弁100は、流体圧アクチュエータに対する作動流体の給排を切り換え、流体圧アクチュエータの動作を制御する。以下では、流体圧アクチュエータとしての油圧シリンダ1に給排される作動流体としての作動油の流れを制御するスプール弁100について説明する。
【0016】
油圧シリンダ1は、
図1に示すように、シリンダチューブ2の内部を第1流体圧室としてのロッド側室5と第2流体圧室としてのボトム側室6とに区画するピストン4を有する複動形シリンダである。ピストン4にはピストンロッド3が連結される。ピストンロッド3の先端には、駆動対象である負荷(図示省略)が連結される。
【0017】
油圧シリンダ1のロッド側室5には、第1給排通路7を通じて作動油が給排される。油圧シリンダ1のボトム側室6には、第2給排通路8を通じて作動油が給排される。
【0018】
ボトム側室6に作動油が供給されロッド側室5から作動油が排出されることにより、油圧シリンダ1は伸長作動する。反対に、ロッド側室5に作動油が供給されボトム側室6から作動油が排出されることにより、油圧シリンダ1は収縮作動する。
【0019】
スプール弁100は、ハウジング10と、ハウジング10に形成される収容孔11に移動自在に挿入されるスプール20と、ハウジング10に取り付けられる第1及び第2キャップ30,40と、第1キャップ30の内側に設けられスプール20を軸方向に付勢する付勢部材としてのセンタリングスプリング50と、を備える。
【0020】
収容孔11は、ハウジング10の両側面(端面)10A,10Bに開口する貫通孔である。収容孔11は、軸方向に沿って内径が略一定の孔である。第1及び第2キャップ30,40は、それぞれ収容孔11の開口11A,11Bを封止するように、ハウジング10の両側面10A,10Bに取り付けられる。
【0021】
ハウジング10には、それぞれ収容孔11に開口するアクチュエータ通路としてのロッド側通路12及びボトム側通路13、ポンプ通路としてのブリッジ通路14、及び一対のタンク通路15A,15Bが形成される。
【0022】
ロッド側通路12は、油圧シリンダ1のロッド側室5に連通し、ロッド側室5に給排される作動油を導く。ボトム側通路13は、油圧シリンダ1のボトム側室6に連通し、ボトム側室6に給排される作動油を導く。
【0023】
ブリッジ通路14は、その両端が収容孔11に開口して形成される。ブリッジ通路14には、ポンプPから吐出される作動油がポンプポート16を通じて導かれる。ポンプポート16とブリッジ通路14の間には、ポンプポート16からブリッジ通路14へ向かう作動油の流れのみを許容するロードチェック弁55が設けられる。
【0024】
タンク通路15A,15Bは、それぞれ作動油を貯留するタンクTに連通する。
【0025】
スプール20は、収容孔11に対して摺動する複数のランド部としての第1ランド部21、第2ランド部22、第3ランド部23、第4ランド部24、及び第5ランド部25と、隣接する第1ランド部21と第2ランド部22との間に形成される第1環状溝26Aと、隣接する第2ランド部22及び第3ランド部23との間に形成される第2環状溝27Aと、隣接する第3ランド部23及び第4ランド部24との間に形成される第3環状溝28Aと、隣接する第4ランド部24及び第5ランド部25との間に形成される第4環状溝29Aと、を有する。
【0026】
第1環状溝26A、第2環状溝27A、第3環状溝28A、及び第4環状溝29Aは、それぞれスプール20の外周面に形成される。これらの複数の環状溝は、収容孔11に開口するポートや通路どうしをスプール20の移動に伴って連通させるためのものである。第1環状溝26A、第2環状溝27A、第3環状溝28A、及び第4環状溝29Aが形成されることにより、スプール20には、第1ランド部21と第2ランド部22とを接続し第1ランド部21及び第2ランド部22よりも外径が小さい第1接続部26と、第2ランド部22と第3ランド部23とを接続し第2ランド部22及び第3ランド部23よりも外径が小さい第2接続部27と、第3ランド部23と第4ランド部24とを接続し第3ランド部23及び第4ランド部24よりも外径が小さい第3接続部28と、第4ランド部24と第5ランド部25とを接続し第4ランド部24及び第5ランド部25よりも外径が小さい第4接続部29と、が形成される。スプール20では、第1ランド部21、第1接続部26(第1環状溝26A)、第2ランド部22、第2接続部27(第2環状溝27A)、第3ランド部23、第3接続部28(第3環状溝28A)、第4ランド部24、第4接続部29(第4環状溝29A)、及び第5ランド部25の順で、スプール20の軸方向における一端側(
図1中右側)から他端側(
図1中右側)に向かって並んで設けられる。
【0027】
本実施形態では、第1環状溝26A、第2環状溝27A、第3環状溝28A、及び第4環状溝29Aは、スプール20の外周面からの深さが互いに同一である。言い換えると、第1接続部26、第2接続部27、第3接続部28、及び第4接続部29の外径は、互いに同一である。
【0028】
第1キャップ30は、スプール20の一端部である第1ランド部21が進入可能な第1大径穴31と、第1大径穴31に連通し第1大径穴31よりも内径が小さい第1小径穴32と、第1小径穴32に連通する第1パイロットポート33と、第1大径穴31と第1小径穴32との間に設けられる環状の第1段差面34と、を有する。第1大径穴31及び第1小径穴32により、第1パイロット圧室35が形成される。第1パイロット圧室35には、第1パイロットポート33を通じてパイロット圧が導かれる。
【0029】
第2キャップ40は、スプール20の他端部である第5ランド部25が進入可能な第2大径穴41と、第2大径穴41に連通し第2大径穴41よりも内径が小さい第2小径穴42と、第2小径穴42に連通する第2パイロットポート43と、第2大径穴41と第2小径穴42との間に設けられる環状の第2段差面44と、を有する。第2大径穴41と第2小径穴42によって、第2パイロット圧室45が形成される。第2パイロット圧室45には、第2パイロットポート43を通じてパイロット圧が導かれる。
【0030】
スプール20の第1ランド部21は、スプール20の移動に伴い、ハウジング10に対する収容孔11の一方の開口11Aを通じて収容孔11から突出し、第1キャップ30内に進入する。スプール20の第5ランド部25は、スプール20の移動に伴い、ハウジング10に対する収容孔11の他方の開口11Bを通じて収容孔11から突出し、第2キャップ40内に進入する。
【0031】
スプール20の一方の端部である第1ランド部21には、スプール20と同軸の支持部材60が設けられる。支持部材60は、スプール20の第1ランド部21に固定される軸部61と、軸部61よりも大きな外径を有するヘッド部62と、を有する。
【0032】
センタリングスプリング50は、スプール20(第1ランド部21)の端面と支持部材60のヘッド部62との間であって、支持部材60の軸部61の外周に設けられる。センタリングスプリング50の両端は、スプール弁100が後述の中立ポジション(
図1に示す状態)である際、それぞればね座65,66を介して、ハウジング10の端面10Aと、第1キャップ30における第1段差面34と、に着座する。
【0033】
スプール弁100は、スプール20のポジションに応じて、タンク通路15A,15B及びブリッジ通路14に対するロッド側通路12及びボトム側通路13の連通状態を切り換え、油圧シリンダ1に対する作動油の給排を制御する。
【0034】
具体的には、スプール弁100は、油圧シリンダ1への作動油の給排を遮断する中立ポジション(
図1参照)と、ブリッジ通路14とボトム側通路13とを連通すると共に一方のタンク通路15Aとロッド側通路12とを連通する伸長ポジションと、ブリッジ通路14とロッド側通路12とを連通すると共に他方のタンク通路15Bとボトム側通路13とを連通する収縮ポジションと、を有する。
【0035】
第1パイロット圧室35及び第2パイロット圧室45の両方にパイロット圧が導かれない状態では、
図1に示すように、スプール20はセンタリングスプリング50の付勢力によって中立ポジションとなるように保持される。スプール弁100が中立ポジションの状態では、ロッド側通路12及びボトム側通路13は、それぞれタンク通路15A,15B及びブリッジ通路14のいずれに対しても連通が遮断される。より具体的には、ロッド側通路12は、スプール20の第2ランド部22によってタンク通路15Aとの連通が遮断され、第3ランド部23によってブリッジ通路14との連通が遮断される。ボトム側通路13は、スプール20の第4ランド部24によってタンク通路15Bとの連通が遮断され、第3ランド部23によってブリッジ通路14との連通が遮断される。
【0036】
これにより、油圧シリンダ1への作動油の給排が遮断され、油圧シリンダ1は負荷保持状態となる。中立ポジションでは、ポンプPから吐出された作動油は、ハウジング10に形成される図示しない中立通路を通じてタンクTに導かれる。
【0037】
第2パイロット圧室45にパイロット圧が導かれると、スプール20は、センタリングスプリング50の付勢力に抗して図中右方向に移動する。より具体的には、スプール20は、第1キャップ30において第1パイロットポート33が開口する第1小径穴32の底面32aに対してヘッド部62が当接するまで、図中右方向に移動する。これにより、スプール弁100は、伸長ポジションに切り換わる。
【0038】
スプール弁100が伸長ポジションに切り換わることにより、ボトム側通路13が、第3環状溝28Aを通じてブリッジ通路14に連通する。また、ロッド側通路12は、第2環状溝27Aを通じてタンク通路15Aに連通する。これにより、ポンプPから吐出される作動油が、ブリッジ通路14、第3環状溝28A、及びボトム側通路13を通じてボトム側室6に導かれる。また、ロッド側室5の作動油は、ロッド側通路12、第2環状溝27A、及びタンク通路15Aを通じてタンクTに排出される。したがって、油圧シリンダ1は、伸長作動する。
【0039】
第1パイロット圧室35にパイロット圧が導かれると、スプール20は、センタリングスプリング50の付勢力に抗して図中左方向に移動する。より具体的には、スプール20は、第2キャップ40において第2パイロットポート43が開口する第2小径穴42の底面42aに対してスプール20の端部(第5ランド部25)が当接するまで、図中左方向に移動する。これにより、スプール弁100は、収縮ポジションに切り換わる。
【0040】
スプール弁100が収縮ポジションに切り換わることにより、ロッド側通路12が、第2環状溝27Aを通じてブリッジ通路14に連通する。また、ボトム側通路13は、第3環状溝28Aを通じて他方のタンク通路15Bに連通する。これにより、ポンプPから吐出される作動油が、ブリッジ通路14、第2環状溝27A、及びロッド側通路12を通じてロッド側室5に導かれる。また、ボトム側室6の作動油は、ボトム側通路13、第3環状溝28A、及びタンク通路15Bを通じてタンクTに排出される。したがって、油圧シリンダ1は、収縮作動する。
【0041】
なお、伸長ポジション及び収縮ポジションでは、中立通路はスプール20によって遮断される。これにより、伸長ポジション及び収縮ポジションでは、ポンプPから吐出される作動油は、中立通路を通じてタンクTには導かれずに、ブリッジ通路14を通じてロッド側室5又はボトム側室6に導かれる。
【0042】
次に、
図1及び
図2を参照して、スプール20の構成について、詳細に説明する。本実施形態では、第1ランド部21、第2ランド部22、及び第1環状溝26Aが、中立ポジションにおいて一方のタンク通路15Aに臨んで設けられる。また、第4ランド部24、第5ランド部25、及び第4環状溝29Aが、中立ポジションにおいて他方のタンク通路15Bに臨んで設けられる。このように、スプール20に形成される複数(5つ)のランド部のうちの一部である4つのランド部が、中立ポジションにおいて、その一部がタンク通路15A,15Bに臨むように構成される。
【0043】
本実施形態では、第1ランド部21と第5ランド部25とは、油圧シリンダ1の動作方向(スプール弁100が切り換わる方向)に応じて互いの機能が入れ替わるように、互いに対応する機能を有する。同様に、第2ランド部22と第4ランド部24とは互いに対応する機能を有し、第2環状溝27Aと第4環状溝29Aとは互いに対応する機能を有する。よって、以下では、第1ランド部21、第2ランド部22、及び第1環状溝26Aに関する構成を主に説明し、第5ランド部25、第4ランド部24、及び第4環状溝29Aに関する構成は適宜説明を省略する。
【0044】
図2に示すように、第1ランド部21は、収容孔11に対して所定の摺動クリアランス(以下、「第1クリアランスR1」と称する。)をもって摺動する第1大径部21Aと、収容孔11に対して当該第1大径部21Aよりも大きいクリアランス(以下、「第2クリアランスR2」と称する。)をもって収容孔11内を移動する第1小径部21Bと、を有する。第1ランド部21の第1小径部21Bは、第1大径部21Aよりも外径が小さく、中立ポジションにおいて、その一部がタンク通路15Aに臨む(面する)ように設けられる。第1小径部21Bは、第1大径部21Aよりも外径が小さいため、通常は収容孔11の内周面に対して摺接しない。第1大径部21Aは、中立ポジションにおいては、タンク通路15Aには臨まず、収容孔11の内周面に臨む。
【0045】
また、収容孔11の内周面と各環状溝の底部(接続部の外周面)との間のクリアランスを第3クリアランスR3とする。第2クリアランスR2は、第1クリアランスR1よりも大きく、第3クリアランスR3よりも小さい(R1>R2>R3)。
【0046】
なお、
図2は、説明の便宜上、第1クリアランスR1及び第2クリアランスR2を大きく図示するものであり、スプール20や収容孔11、第3クリアランスR3などに対する比は、厳密なものではない。例えば、第1クリアランスR1及び第2クリアランスR2は、実際には、第1環状溝26Aなどの環状溝の第3クリアランスR3と比較して、相当程度小さいものである。一例として、第1クリアランスR1は数μm程度の大きさを有し、第2クリアランスR2は、第1クリアランスR1より大きく、100[μm]未満に設定されることが好ましい。つまり、第2クリアランスR2は、ポートや通路どうしを積極的に連通させるものではない。スプール20と収容孔11との間のクリアランスが100[μm]以上となると、当該クリアランスを通じた作動油の漏れ流量が多くなり、油圧シリンダ1が誤作動する恐れが生じる。これに対し、第2クリアランスR2は、100[μm]未満に設定されるため、第2クリアランスR2を通じた作動油の漏れの流量を少なくし、油圧シリンダ1の誤作動のおそれを低減することができる。
【0047】
第1ランド部21の第1大径部21Aは、中立ポジションから伸長ポジションに移動すると、収容孔11の開口11Aを通じて収容孔11の外部に突出する。つまり、第1大径部21Aは、スプール20の移動方向(軸方向)において、第1ランド部21の第1小径部21Bよりも、当該第1大径部21Aが通過する収容孔11の開口11Aが形成される端面10A側に位置するように設けられる。このように、第1ランド部21は、収容孔11の開口11Aを通じて収容孔11から外部に突出する「端部ランド部」に相当する。また、第1大径部21Aが「摺動部」に相当し、第1小径部21Bは「対面部」に相当する。
【0048】
第1大径部21Aは、スプール弁100が伸長ポジションとなっても、言い換えると、スプール20の移動に関わらず、常に一部が収容孔11の内周面に摺接するように形成される。具体的には、中立ポジションにおいて収容孔11に摺接する第1大径部21Aの軸方向の寸法L1は、スプール弁100が中立ポジションから伸長ポジションに切り換わる際のスプール20の最大ストローク量よりも大きくなるように設定される。
【0049】
なお、中立ポジションにおいて収容孔11に摺接する第1大径部21Aの寸法L1とは、スプール20の軸方向において、スプール弁100が中立ポジションの状態における第1大径部21Aと第1小径部21Bとの境界部から第1大径部21Aが通過する収容孔11の開口11Aが設けられるハウジング10の端面10Aまでの寸法である。また、スプール弁100が中立ポジションから伸長ポジションに切り換わる際のスプール20の最大ストローク量とは、中立ポジションでの支持部材60のヘッド部62と第1キャップ30の第1小径穴32の底面32aとの間の寸法L3(
図1参照)に相当する。つまり、第1大径部21Aの寸法L1は、ヘッド部62と第1小径穴32の底面32aとの間の寸法L3よりも大きい(L1>L3)。
【0050】
これにより、スプール弁100が伸長ポジションに切り換わっても、第1大径部21Aの全体が収容孔11から外部に突出せず、第1ランド部21において第1小径部21Bのみが収容孔11の内周面に臨む状態にはならない。第1小径部21Bの第2クリアランスR2は、相対的に第1大径部21Aの第1クリアランスR1よりも大きいため(R2>R1)、第1大径部21Aの第1クリアランスR1と比較すると作動油が導かれやすい。第1ランド部21において第1小径部21Bのみが収容孔11の内周面に臨む状態となると、第2クリアランスR2を通じた作動油の流れが生じやすくなる。これに対し、伸長ポジションに切り換わっても、第1小径部21Bのみが収容孔11の内周面に臨むのではなく第1大径部21Aが収容孔11に摺接するように構成することで、第1ランド部21と収容孔11との間を通じたタンク通路15Aと第1パイロット圧室35との間での作動油の漏れを抑制することができる。
【0051】
第2ランド部22は、収容孔11に対して所定の摺動クリアランスである第1クリアランスR1をもって摺動する第2大径部22Aと、当該第2大径部22Aの第1クリアランスR1よりも大きい第2クリアランスR2をもって収容孔11内を移動する第2小径部22Bと、を有する。
【0052】
第1ランド部21の第1大径部21Aと第2ランド部22の第2大径部22Aとは、略同一の外径に形成される。また、第1ランド部21の第1小径部21Bと第2ランド部22の第2小径部22Bとは、略同一の外径に形成される。第2ランド部22の第2小径部22Bは、第2大径部22Aよりも外径が小さく、中立ポジションにおいて、その一部がタンク通路15Aに臨むように設けられる。第2大径部22Aが「摺動部」に相当し、第2小径部22Bは「対面部」に相当する。
【0053】
第2ランド部22の第2小径部22Bは、中立ポジションにおいて、その一部がタンク通路15Aに臨むように設けられる。第2大径部22Aは、中立ポジションにおいては、タンク通路15Aには臨まず、少なくとも一部が収容孔11の内周面、より具体的には、ロッド側通路12とタンク通路15Aとの間の収容孔11の内周面に摺接する。つまり、中立ポジションにおいて、スプール20の外周と収容孔11との間のクリアランスを通じたロッド側室5とタンク通路15Aとの連通が、第2小径部22Bの外周の第2クリアランスR2のみとならないように構成される。具体的には、第2小径部22Bの軸方向の寸法L2は、スプール20の外周と収容孔11との間のクリアランスを通じたロッド側通路12からタンク通路15Aへの漏れが許容される範囲内において、最大限長くすることが望ましい。
【0054】
ここで、一般に、複数のアクチュエータを駆動する流体圧制御装置では、アクチュエータに給排される作動流体を制御するスプール弁がアクチュエータごとに設けられる。この場合、各流体圧アクチュエータから排出された作動流体を貯留するタンクは、共通に使用されることが一般的である。このため、タンクに排出される作動流体を導くタンク通路は、流体圧制御装置に含まれるスプール弁のそれぞれを通るように構成されることがある。つまり、あるアクチュエータから排出された作動流体が、他のアクチュエータの作動を制御するスプール弁をタンク通路を通じて通過してタンクに排出されることがある。このため、スプール弁では、中立ポジションにある状態であっても、タンク通路に導かれる作動流体が収容孔を通過することがある。
【0055】
また、例えば、アクチュエータが作動したり、ポンプからスプール弁を通じてアクチュエータに導かれる作動油の流れがリリーフ弁によってタンクにリリーフされたりすると、タンク通路を通じてタンクに排出される作動流体の温度が上がることがある。よって、流体圧制御装置の複数のスプール弁のうち中立位置にあるスプール弁では、スプールに設けられたランドが、タンク通路を通じて排出される温度上昇した作動流体の流れに晒されことになる。これにより、スプールのランド部が、熱膨張して収容孔に引っかかり、スプールが収容孔内で摺動できずに、スプール弁の作動不良を起こすおそれがある。
【0056】
これに対し、本実施形態では、中立ポジションにおいて、タンク通路15Aには、第1ランド部21の第1小径部21Bと第2ランド部22の第2小径部22Bとが臨んでいる。第1小径部21B及び第2小径部22Bは、それぞれ第1ランド部21の第1大径部21A及び第2ランド部22の第2大径部22Aよりも大きな第2クリアランスR2をもって収容孔11内を移動するため、熱膨張しても収容孔11に対する引っ掛かりが生じにくい。このため、スプール20が収容孔11内で摺動できなくなるスプール弁100の作動不良の発生が抑制される。言い換えると、第1小径部21B及び第2小径部22Bの第2クリアランスR2は、熱膨張しても収容孔11に対して引っ掛かることがないような大きさに設定される。
【0057】
詳細な図示及び説明は省略するが、第5ランド部25は、第1ランド部21と同様、摺動部としての第5大径部と、対面部としての第5小径部と、を有する。第5ランド部25は、収容孔11の他方側の開口を通じて収容孔11の外部に突出する「端部ランド部」に相当する。
【0058】
また、第4ランド部24は、第2ランド部22と同様、摺動部としての第4大径部と、対面部としての第4小径部と、を有する。
【0059】
よって、第4ランド部24及び第5ランド部25においても、収容孔11に対するスプール20の引っ掛かりが抑制される。
【0060】
また、上述のように、スプール弁100が中立ポジションにある状態であっても、タンク通路15A,15Bの作動油が収容孔11を通過して導かれることがある。このため、中立ポジションにおいてタンク通路15A,15Bに臨む第1環状溝26A及び第4環状溝29Aをスプール20に形成することで、作動油の流路面積を確保することができる。これにより、タンク通路15A,15Bにおいて収容孔11を通過する作動油の流れを阻害せず、スムーズに作動油を導くことができる。
【0061】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0062】
本実施形態では、中立ポジションにおいて、一方のタンク通路15Aには、第1ランド部21の第1小径部21Bと第2ランド部22の第2小径部22Bとが臨み、他方のタンク通路15Bには第4ランド部24の第4小径部と第5ランド部25の第5小径部が臨む。第1小径部21B、第2小径部22B、第4小径部、及び第5小径部は、熱膨張しても収容孔11に対する引っ掛かりが生じにくい。このため、スプール20が収容孔11内で摺動できなくなるスプール弁100の作動不良の発生が抑制される。
【0063】
また、本実施形態では、スプール20の移動に関わらず、第1ランド部21の第1大径部21Aの一部が収容孔11の内周面に常に摺接し、第5ランド部25の第5大径部の一部が収容孔11の内周面に常に摺接する。これにより、スプール弁100が伸長ポジション又は収縮ポジションに切り換わっても、相対的に小さい第1クリアランスR1で収容孔11に摺動する第1大径部21Aの全体又は第5外径部の全体が収容孔11から外部に突出することがない。よって、スプール20の外周を通じたタンク通路15Aと第1パイロット圧室35との間の連通及びタンク通路15Bと第2パイロット圧室45との連通は、相対的に小さい第1クリアランスR1で収容孔11に摺動する第1大径部21A及び第5大径部によって遮断される。これにより、第1ランド部21と収容孔11との間及び第5ランド部25と収容孔11との間を通じた作動油の漏れを抑制することができる。
【0064】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0065】
<第1変形例>
上記実施形態では、スプール弁100が中立ポジションにある状態で収容孔11を通過するタンク通路15A,15Bでの作動油の流れに対する流路面積を確保するために、スプール20には第1環状溝26A及び第4環状溝29Aが形成される。このため、中立ポジションにおいては、第1環状溝26Aに加えて、第1環状溝26Aによって隔てられる第1ランド部21及び第2ランド部22も一方のタンク通路15Aに臨む。同様に、中立ポジションにおいては、第4環状溝29Aに加えて、第4環状溝29Aによって隔てられる第4ランド部24及び第5ランド部25も他方のタンク通路15Bに臨む。つまり、上記実施形態では、中立ポジションにおいて、それぞれのタンク通路15A,15Bには2つのランド部が臨んでいる。これに対し、第1環状溝26A又は第4環状溝29Aは必須の構成ではなく、スプール20に形成されなくてもよい。
【0066】
以下、第1環状溝26Aを形成しない場合を例に説明する。
図3に示すように、第1変形例では、スプール弁100が中立ポジションの状態では、一つのランド部(以下、「タンクランド部121」と称する。)のみが一方のタンク通路15Aに臨んで設けられる。タンクランド部121は、ロッド側通路12とタンク通路15A又はブリッジ通路14とを連通するための第2環状溝27Aが形成されることで、スプール20に区画される。タンクランド部121は、伸長ポジションに切り換わることによって、収容孔11の一方の開口11Aから収容孔11の外部に突出する端部ランド部である。
【0067】
タンクランド部121は、摺動部としての一対の大径部121A,121Cと、対面部としての小径部121Bと、を有する。一対の大径部121A,121Cは、小径部121Bの軸方向の両端部に設けられる。小径部121Bは、中立ポジションにおいて、収容孔11に対するタンク通路15Aの開口を軸方向にわたって覆うように設けられる。つまり、中立ポジションにおいて、収容孔11に対するタンク通路15Aの開口は、全体が小径部121Bに臨むように設けられる。
【0068】
小径部121Bよりもハウジング10の端面10A側(第2環状溝27Aとは反対側)の大径部121Aの軸方向の長さL1は、上記実施形態の第1大径部21Aと同様に、伸長ポジションとなった状態であっても、大径部121Aの一部が収容孔11の内周面に摺接するように形成される。つまり、大径部121Aの軸方向に沿った寸法L1、より具体的には、スプール弁100が中立ポジションにある状態におけるハウジング10の端面10Aから大径部121Aと小径部121Bとの境界部までの軸方向に沿った寸法は、中立ポジションから伸長ポジションに切り換わるスプール20の最大ストローク量L3(
図1参照)よりも大きくなるように設定される。
【0069】
このような第1変形例であっても、上記実施形態と同様、中立ポジションにおいてタンク通路15Aにはタンクランド部121の小径部121Bが臨むため、収容孔11に対するスプール20の引っ掛かりが抑制される。
【0070】
以下、その他の変形例について説明する。
【0071】
上記実施形態では、収容孔11の内径は軸方向に沿って一定である。また、第1ランド部21の第1大径部21A及び第1小径部21B、第2ランド部22の第2大径部22A及び第2小径部22B、第4ランド部24の第4大径部及び第4小径部、第5ランド部25の第5大径部及び第5小径部、もそれぞれ外径が軸方向に沿って一定であり、外周面はそれぞれ円筒面である。よって、各大径部の第1クリアランスR1の大きさは一定であり、各小径部の第2クリアランスR2の大きさは一定である。これに対し、小径部の第2クリアランスR2は、大径部の第1クリアランスR1よりも小さくならない限り、軸方向において一定でなくてもよい。
【0072】
例えば、図示は省略するが、小径部は、軸方向において大径部に近づくにつれて外径が大きくなるような円錐面(テーパ面)状の外周面を有して形成されてもよい。この場合であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。また、テーパ角を調整することで、設計のパラメータが増えるため、小径部の第2クリアランスR2を通じた作動油の漏れと熱膨張による引っ掛かりの防止とを両立させやすくなる。
【0073】
また、上記実施形態では、収容孔11に対する第1環状溝26A、第2環状溝27A、第3環状溝28A、及び第4環状溝29Aのクリアランスは、第3クリアランスR3で同一である。第1ランド部21の第1小径部21B、第2ランド部22の第2小径部22B、第4ランド部24の第4小径部、及び第5ランド部25の第5小径部も、それぞれ収容孔11に対するクリアランスが第2クリアランスR2で同一である。そして、第2クリアランスR2は、第3クリアランスR3よりも小さい。これに対し、収容孔11に対する複数の環状溝の第3クリアランスR3が同一ではない場合には、第2クリアランスR2は、最も小さい第3クリアランスR3よりも小さく構成すればよい。
【0074】
また、上記実施形態では、第1ランド部21の第1小径部21B及び第2ランド部22の第2小径部22Bは、中立ポジションにおいて、それぞれタンク通路15Aにその一部が臨むと共に、その他の部分はタンク通路15Aが開口しない部分の収容孔11の内周面に臨んでいる。収容孔11に対するスプール20の引っ掛かりを防止するには、このように構成して第1小径部21B及び第2小径部22Bの軸方向の寸法を大きく確保することが望ましいが、この限りではない。少なくとも、中立ポジションにおいて、収容孔11に対してタンク通路15Aが開口する軸方向の範囲(開口の径方向の内側)に第1小径部21B及び第2小径部22Bが位置するように構成され、収容孔11に対するタンク通路15Aの開口が第1大径部21A及び第2大径部22Aに臨まないように構成されていればよい。第2ランド部22、第4ランド部24、第5ランド部25についても同様である。
【0075】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0076】
スプール弁100は、ハウジング10と、ハウジング10に形成される収容孔11に移動自在に挿入されるスプール20と、収容孔11に開口し、作動油を貯留するタンクTに連通するタンク通路15A,15Bと、収容孔11に開口し、ポンプPから吐出される作動油を導くブリッジ通路14と、収容孔11に開口し、油圧シリンダ1に給排される作動油を導くアクチュエータ通路(ロッド側通路12、ボトム側通路13)と、を備え、スプール20は、収容孔11に対して摺動する複数のランド部(第1ランド部21、第2ランド部22、第3ランド部23、第4ランド部24、第5ランド部25)と、隣接するランド部の間に形成される環状溝(第1環状溝26A、第2環状溝27A、第3環状溝28A、第4環状溝29A)と、を有し、複数のランド部には、タンク通路15A,15B及びブリッジ通路14に対するアクチュエータ通路の連通がそれぞれ遮断される中立ポジションにおいて、その一部がタンク通路15A,15Bに臨むランド部(第1ランド部21、第2ランド部22、第4ランド部24、第5ランド部25)が含まれており、中立ポジションにおいてタンク通路15A,15Bに臨むランド部は、収容孔11に対して所定の第1クリアランスR1をもって摺動する摺動部(第1大径部21A、第2大径部22A、第4大径部、第5大径部)と、中立ポジションにおいて少なくとも一部がタンク通路15A,15Bに臨む対面部(第1小径部21B、第2小径部22B、第4小径部、第5小径部)と、を有し、収容孔11と対面部との間の第2クリアランスR2は、収容孔11と摺動部との間の第1クリアランスR1よりも大きく、収容孔11と環状溝との間の第3クリアランスR3よりも小さい。
【0077】
この構成では、タンク通路15A,15Bに臨むランド部では、中立ポジションにおいてタンク通路15A,15Bに面する対面部の第2クリアランスR2が摺動部の第1クリアランスR1よりも大きい。つまり、中立ポジションにおいてタンク通路15A,15Bを流れる作動油に晒される対面部は、相対的にクリアランスが大きい。このため、対面部がタンク通路15A,15Bを流れる作動油によって温度上昇し膨張しても、スプール20が収容孔11の内周に引っかかることが抑制される。これにより、収容孔11に対してスプール20が摺動できなくなる作動不良の発生が抑制される。したがって、スプール弁100の作動の安定性が向上する。
【0078】
また、スプール弁100では、収容孔11は、ハウジング10の端面10A,10Bに開口し、スプール20は、タンク通路15A,15Bに臨むランド部として、スプール20の移動に伴いその一部が収容孔11の開口を通じて収容孔11から外部に突出する端部ランド部(第1ランド部21、第5ランド部25)を有し、ランド部の摺動部は、端部ランド部の対面部よりもスプール20の移動方向においてハウジング10の端面10A、10B側に設けられて、収容孔11の開口11A,11Bを通じて収容孔11から外部に突出し、スプール20の移動方向における端部ランド部の摺動部の長さは、端部ランド部の摺動部の一部が、スプール20の移動に関わらず常に収容孔11に摺動するように設定される。
【0079】
この構成では、スプール20が移動しても、端部ランド部が対面部のみによって収容孔11の内周面に臨むことがなく、相対的に摺動クリアランスが小さい摺動部が収容孔11に摺接するため、端部ランド部の外周を通じた作動油の漏れを抑制することができる。
【0080】
また、スプール弁100では、収容孔11と対面部との間の第2クリアランスR2の大きさは、100[μm]未満に設定される。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0082】
100…スプール弁、1…油圧シリンダ(流体圧アクチュエータ)、10…ハウジング、10A,10B…端面、11…収容孔、11A、11B…開口、12…ロッド側通路(アクチュエータ通路)、13…ボトム側通路(アクチュエータ通路)、14…ブリッジ通路(ポンプ通路)、15A,5B…タンク通路、20…スプール、21…第1ランド部(端部ランド部)、21A…第1大径部(摺動部)、21B…第1小径部(対面部)、22…第2ランド部、22A…第2大径部(摺動部)、22B…第2小径部(対面部)、23…第3ランド部、24…第4ランド部、25…第5ランド部(端部ランド部)26A…第1環状溝、27A…第2環状溝、28A…第3環状溝、29A…第4環状溝、121…タンクランド部(ランド部、端部ランド部)、121A…大径部(摺動部)、121B…小径部(対面部)、121C…大径部(摺動部)
【手続補正書】
【提出日】2021-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに形成される収容孔に移動自在に挿入されるスプールと、
前記収容孔に開口し、作動流体を貯留するタンクに連通するタンク通路と、
前記収容孔に開口し、ポンプから吐出される作動流体を導くポンプ通路と、
前記収容孔に開口し、流体圧アクチュエータに給排される作動流体を導くアクチュエータ通路と、を備え、
前記スプールは、前記収容孔に対して摺動する複数のランド部と、隣接する前記ランド部の間に形成される環状溝と、を有し、
複数の前記ランド部には、前記タンク通路及び前記ポンプ通路に対する前記アクチュエータ通路の連通がそれぞれ遮断される中立ポジションにおいて、その一部が前記タンク通路に臨む前記ランド部が含まれており、
前記中立ポジションにおいて前記タンク通路に臨む前記ランド部は、
前記収容孔に対して所定の摺動クリアランスをもって摺動する摺動部と、
前記中立ポジションにおいて少なくとも一部が前記タンク通路に臨む対面部と、を有し、
前記収容孔と前記対面部との間のクリアランスは、前記収容孔と前記摺動部との間の前記摺動クリアランスよりも大きく、前記収容孔と前記環状溝との間のクリアランスよりも小さいことを特徴とするスプール弁。
【請求項2】
請求項1に記載のスプール弁であって、
前記収容孔は、前記ハウジングの端面に開口し、
前記スプールは、前記タンク通路に臨む前記ランド部として、前記スプールの移動に伴いその一部が前記収容孔の開口を通じて前記収容孔から外部に突出する端部ランド部を有し、
前記端部ランド部の前記摺動部は、前記端部ランド部の前記対面部よりも前記スプールの移動方向において前記ハウジングの前記端面側に設けられて、前記収容孔の開口を通じて前記収容孔から外部に突出し、
前記スプールの移動方向における前記端部ランド部の前記摺動部の長さは、前記端部ランド部の前記摺動部の一部が、前記スプールの移動に関わらず常に前記収容孔に摺動するように設定されることを特徴とするスプール弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスプール弁であって、
前記収容孔と前記対面部との間のクリアランスの大きさは、100μm未満に設定されることを特徴とするスプール弁。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のスプール弁であって、
前記ランド部のうち前記中立ポジションにおいて少なくとも前記タンク通路に臨む部分は、前記対面部として形成されることを特徴とするスプール弁。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに形成される収容孔に移動自在に挿入されるスプールと、
前記収容孔に開口し、作動流体を貯留するタンクに連通するタンク通路と、
前記収容孔に開口し、ポンプから吐出される作動流体を導くポンプ通路と、
前記収容孔に開口し、流体圧アクチュエータに給排される作動流体を導くアクチュエータ通路と、を備え、
前記スプールは、前記収容孔に対して摺動する複数のランド部と、隣接する前記ランド部の間に形成される環状溝と、を有し、
複数の前記ランド部のうちの一部の前記ランド部は、
前記収容孔に対して所定の摺動クリアランスをもって摺動する摺動部と、
前記タンク通路及び前記ポンプ通路に対する前記アクチュエータ通路の連通がそれぞれ遮断される中立ポジションにおいて少なくとも一部が前記タンク通路に臨む対面部と、を有し、
前記収容孔と前記対面部との間のクリアランスは、前記収容孔と前記摺動部との間の前記摺動クリアランスよりも大きく、前記収容孔と前記環状溝との間のクリアランスよりも小さいことを特徴とするスプール弁。
【請求項2】
請求項1に記載のスプール弁であって、
前記収容孔は、前記ハウジングの端面に開口し、
前記スプールは、前記摺動部及び前記対面部を有する前記ランド部として、前記スプールの移動に伴いその一部が前記収容孔の開口を通じて前記収容孔から外部に突出する端部ランド部を有し、
前記端部ランド部の前記摺動部は、前記端部ランド部の前記対面部よりも前記スプールの移動方向において前記ハウジングの前記端面側に設けられて、前記収容孔の開口を通じて前記収容孔から外部に突出し、
前記スプールの移動方向における前記端部ランド部の前記摺動部の長さは、前記端部ランド部の前記摺動部の一部が、前記スプールの移動に関わらず常に前記収容孔に摺動するように設定されることを特徴とするスプール弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスプール弁であって、
前記収容孔と前記対面部との間のクリアランスの大きさは、100μm未満に設定されることを特徴とするスプール弁。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のスプール弁であって、
前記スプールでは、前記中立ポジションにおいて前記タンク通路に臨む部分は、前記対面部として形成されることを特徴とするスプール弁。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明は、スプール弁であって、ハウジングに形成される収容孔に移動自在に挿入されるスプールと、収容孔に開口し、作動流体を貯留するタンクに連通するタンク通路と、収容孔に開口し、ポンプから吐出される作動流体を導くポンプ通路と、収容孔に開口し、流体圧アクチュエータに給排される作動流体を導くアクチュエータ通路と、を備え、スプールは、収容孔に対して摺動する複数のランド部と、隣接するランド部の間に形成される環状溝と、を有し、複数のランド部のうちの一部のランド部は、収容孔に対して所定の摺動クリアランスをもって摺動する摺動部と、タンク通路及びポンプ通路に対するアクチュエータ通路の連通がそれぞれ遮断される中立ポジションにおいて少なくとも一部がタンク通路に臨む対面部と、を有し、収容孔と対面部との間のクリアランスは、収容孔と摺動部との間の摺動クリアランスよりも大きく、収容孔と環状溝との間のクリアランスよりも小さいことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、本発明は、収容孔と対面部との間のクリアランスの大きさは、100μm未満に設定されることを特徴とする。
また、本発明は、スプールでは、中立ポジションにおいてタンク通路に臨む部分は、対面部として形成されることを特徴とする。