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特開2023-61026ゲート・バルブ開度の計算装置、計算方法、および計算プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061026
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】ゲート・バルブ開度の計算装置、計算方法、および計算プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
E02B7/20 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170773
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】内澤 敏夫
【テーマコード(参考)】
2D019
【Fターム(参考)】
2D019AA54
(57)【要約】
【課題】放流設備1門ごとの目標放流量に的確に対応するゲート・バルブ開度を計算する。
【解決手段】ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段としての計測貯水位取得部31と、ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段としての目標放流量取得部32と、放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段としての開度決定部35Aと、を有し、開度決定部35Aが、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、ダム貯水池の貯水位および放流設備における流量を入力とするとともに放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデル282に、放流操作を行う際のダム貯水池の貯水位の計測値および放流設備の目標放流量を入力し、学習済みモデル282から出力される放流設備のゲート・バルブの操作後開度をゲート・バルブ目標開度とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段と、
前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段と、
前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段と、を有し、
前記ゲート・バルブ目標開度を決定する手段が、
同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位および前記放流設備における流量を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値および前記放流設備の前記目標放流量を入力し、
前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度を前記ゲート・バルブ目標開度とする、
ことを特徴とするゲート・バルブ開度の計算装置。
【請求項2】
ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段と、
前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段と、
前記放流設備における流量の計測値を取得する手段と、
前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段と、を有し、
前記ゲート・バルブ目標開度を決定する手段が、
同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位,前記放流設備の開閉の向き,および前記放流設備における流量を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値、前記放流設備の前記目標放流量と前記放流設備における前記流量の計測値とに基づいて決定される前記放流設備の開閉の向き、および、前記放流設備の前記目標放流量を入力し、
前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度を前記ゲート・バルブ目標開度とする、
ことを特徴とするゲート・バルブ開度の計算装置。
【請求項3】
ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段と、
前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段と、
前記放流設備のゲート・バルブの開度の計測値を取得する手段と、
前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段と、を有し、
前記ゲート・バルブ目標開度を決定する手段が、
同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位,前記放流設備における流量,および前記放流設備のゲート・バルブの操作前開度を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値,前記放流設備の前記目標放流量,および前記放流設備の前記ゲート・バルブの開度の計測値を入力し、
前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度を前記ゲート・バルブ目標開度とする、
ことを特徴とするゲート・バルブ開度の計算装置。
【請求項4】
ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する処理と、
前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する処理と、
前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する処理と、を有し、
前記ゲート・バルブ目標開度を決定する処理において、
同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位および前記放流設備における流量を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値および前記放流設備の前記目標放流量が入力され、
前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度が前記ゲート・バルブ目標開度とされる、
ことを特徴とするゲート・バルブ開度の計算方法。
【請求項5】
ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する処理と、
前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する処理と、
前記放流設備における流量の計測値を取得する処理と、
前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する処理と、を有し、
前記ゲート・バルブ目標開度を決定する処理において、
同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位,前記放流設備の開閉の向き,および前記放流設備における流量を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値、前記放流設備の前記目標放流量と前記放流設備における前記流量の計測値とに基づいて決定される前記放流設備の開閉の向き、および、前記放流設備の前記目標放流量が入力され、
前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度が前記ゲート・バルブ目標開度とされる、
ことを特徴とするゲート・バルブ開度の計算方法。
【請求項6】
ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する処理と、
前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する処理と、
前記放流設備のゲート・バルブの開度の計測値を取得する処理と、
前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する処理と、を有し、
前記ゲート・バルブ目標開度を決定する処理において、
同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位,前記放流設備における流量,および前記放流設備のゲート・バルブの操作前開度を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値,前記放流設備の前記目標放流量,および前記放流設備の前記ゲート・バルブの開度の計測値が入力され、
前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度が前記ゲート・バルブ目標開度とされる、
ことを特徴とするゲート・バルブ開度の計算方法。
【請求項7】
コンピュータを、
ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段、
前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段、および、
前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段、として機能させ、
前記ゲート・バルブ目標開度を決定する手段が、
同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位および前記放流設備における流量を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値および前記放流設備の前記目標放流量を入力し、
前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度を前記ゲート・バルブ目標開度とする、
ことを特徴とするゲート・バルブ開度の計算プログラム。
【請求項8】
コンピュータを、
ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段、
前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段、
前記放流設備における流量の計測値を取得する手段、および、
前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段、として機能させ、
前記ゲート・バルブ目標開度を決定する手段が、
同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位,前記放流設備の開閉の向き,および前記放流設備における流量を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値、前記放流設備の前記目標放流量と前記放流設備における前記流量の計測値とに基づいて決定される前記放流設備の開閉の向き、および、前記放流設備の前記目標放流量を入力し、
前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度を前記ゲート・バルブ目標開度とする、
ことを特徴とするゲート・バルブ開度の計算プログラム。
【請求項9】
コンピュータを、
ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段、
前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段、
前記放流設備のゲート・バルブの開度の計測値を取得する手段、および、
前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段、として機能させ、
前記ゲート・バルブ目標開度を決定する手段が、
同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位,前記放流設備における流量,および前記放流設備のゲート・バルブの操作前開度を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値,前記放流設備の前記目標放流量,および前記放流設備の前記ゲート・バルブの開度の計測値を入力し、
前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度を前記ゲート・バルブ目標開度とする、
ことを特徴とするゲート・バルブ開度の計算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゲート・バルブ開度の計算装置、計算方法、および計算プログラムに関し、例えばダム管理用制御処理設備へと組み込まれたりダム管理用制御処理設備と連携したりして用いられて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
放流設備を操作規則等に基づき確実かつ容易に操作するためにダムの流水管理に関わる演算処理や放流設備の操作ならびに操作の支援を行うための設備として、種々の計測機器などが収集した情報を用いてダム水文量の演算を行うダム管理用制御処理設備が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】国土交通省「ダム管理用制御処理設備 標準設計仕様書」,平成28年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のダム管理用制御処理設備は、ダムから放流すべき水量の目標値(「目標全放流量」と呼ぶ)を算出するとともに目標全放流量を各放流設備(具体的には、ゲートやバルブ)へと配分して放流設備1門ごとの目標放流量を算出したうえで、各ゲート・バルブに配分された放流設備1門ごとの目標放流量を現在の貯水位で放流するためのゲート・バルブ開度(「目標開度」と呼ぶ)に換算する際に、各ゲート・バルブの「貯水位~開度~放流量対応表」(図6参照)または「放流量算出式」の逆算により目標開度を算出するようにしている。このため、放流設備1門ごとの目標放流量(延いては、ダムから放流すべき水量)に適合した適切な放流操作を行うためには、実機における貯水位と開度と放流量との相互の対応関係を的確に把握する必要がある。
【0005】
そこでこの発明は、放流設備1門ごとの目標放流量に的確に対応するゲート・バルブ開度を計算することが可能な、ゲート・バルブ開度の計算装置、計算方法、および計算プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係るゲート・バルブ開度の計算装置は、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段と、前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段と、前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段と、を有し、前記ゲート・バルブ目標開度を決定する手段が、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位および前記放流設備における流量を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値および前記放流設備の前記目標放流量を入力し、前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度を前記ゲート・バルブ目標開度とする、ことを特徴とする。
【0007】
この発明に係るゲート・バルブ開度の計算装置は、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段と、前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段と、前記放流設備における流量の計測値を取得する手段と、前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段と、を有し、前記ゲート・バルブ目標開度を決定する手段が、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位,前記放流設備の開閉の向き,および前記放流設備における流量を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値、前記放流設備の前記目標放流量と前記放流設備における前記流量の計測値とに基づいて決定される前記放流設備の開閉の向き、および、前記放流設備の前記目標放流量を入力し、前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度を前記ゲート・バルブ目標開度とする、ようにしてもよい。
【0008】
この発明に係るゲート・バルブ開度の計算装置は、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段と、前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段と、前記放流設備のゲート・バルブの開度の計測値を取得する手段と、前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段と、を有し、前記ゲート・バルブ目標開度を決定する手段が、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位,前記放流設備における流量,および前記放流設備のゲート・バルブの操作前開度を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値,前記放流設備の前記目標放流量,および前記放流設備の前記ゲート・バルブの開度の計測値を入力し、前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度を前記ゲート・バルブ目標開度とする、ようにしてもよい。
【0009】
また、この発明に係るゲート・バルブ開度の計算方法は、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する処理と、前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する処理と、前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する処理と、を有し、前記ゲート・バルブ目標開度を決定する処理において、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位および前記放流設備における流量を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値および前記放流設備の前記目標放流量が入力され、前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度が前記ゲート・バルブ目標開度とされる、ことを特徴とする。
【0010】
この発明に係るゲート・バルブ開度の計算方法は、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する処理と、前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する処理と、前記放流設備における流量の計測値を取得する処理と、前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する処理と、を有し、前記ゲート・バルブ目標開度を決定する処理において、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位,前記放流設備の開閉の向き,および前記放流設備における流量を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値、前記放流設備の前記目標放流量と前記放流設備における前記流量の計測値とに基づいて決定される前記放流設備の開閉の向き、および、前記放流設備の前記目標放流量が入力され、前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度が前記ゲート・バルブ目標開度とされる、ようにしてもよい。
【0011】
この発明に係るゲート・バルブ開度の計算方法は、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する処理と、前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する処理と、前記放流設備のゲート・バルブの開度の計測値を取得する処理と、前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する処理と、を有し、前記ゲート・バルブ目標開度を決定する処理において、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位,前記放流設備における流量,および前記放流設備のゲート・バルブの操作前開度を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値,前記放流設備の前記目標放流量,および前記放流設備の前記ゲート・バルブの開度の計測値が入力され、前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度が前記ゲート・バルブ目標開度とされる、ようにしてもよい。
【0012】
また、この発明に係るゲート・バルブ開度の計算プログラムは、コンピュータを、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段、前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段、および、前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段、として機能させ、前記ゲート・バルブ目標開度を決定する手段が、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位および前記放流設備における流量を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値および前記放流設備の前記目標放流量を入力し、前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度を前記ゲート・バルブ目標開度とする、ことを特徴とする。
【0013】
この発明に係るゲート・バルブ開度の計算プログラムは、コンピュータを、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段、前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段、前記放流設備における流量の計測値を取得する手段、および、前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段、として機能させ、前記ゲート・バルブ目標開度を決定する手段が、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位,前記放流設備の開閉の向き,および前記放流設備における流量を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値、前記放流設備の前記目標放流量と前記放流設備における前記流量の計測値とに基づいて決定される前記放流設備の開閉の向き、および、前記放流設備の前記目標放流量を入力し、前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度を前記ゲート・バルブ目標開度とする、ようにしてもよい。
【0014】
この発明に係るゲート・バルブ開度の計算プログラムは、コンピュータを、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段、前記ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段、前記放流設備のゲート・バルブの開度の計測値を取得する手段、および、前記放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段、として機能させ、前記ゲート・バルブ目標開度を決定する手段が、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、前記ダム貯水池の貯水位,前記放流設備における流量,および前記放流設備のゲート・バルブの操作前開度を入力とするとともに前記放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデルに、放流操作を行う際の前記ダム貯水池の前記貯水位の計測値,前記放流設備の前記目標放流量,および前記放流設備の前記ゲート・バルブの開度の計測値を入力し、前記学習済みモデルから出力される前記放流設備の前記ゲート・バルブの操作後開度を前記ゲート・バルブ目標開度とする、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係るゲート・バルブ開度の計算装置,ゲート・バルブ開度の計算方法,ゲート・バルブ開度の計算プログラムによれば、過去の放流操作でのダム貯水池の貯水位および放流設備における流量に対応するゲート・バルブの操作後開度が計算されるようにしているので、放流設備の目標放流量に的確に対応するゲート・バルブ目標開度を計算することが可能となり、延いては、放流設備の目標放流量に適合した適切な放流操作を行うことが可能となる。
【0016】
この発明に係るゲート・バルブ開度の計算装置,ゲート・バルブ開度の計算方法,ゲート・バルブ開度の計算プログラムによれば、過去の放流操作でのダム貯水池の貯水位および放流設備における流量に加えて放流設備の開閉の向きも考慮されてゲート・バルブの操作後開度が計算されるようにしているので、ゲート・バルブの開け過ぎや閉め過ぎを内包したゲート・バルブの操作後開度を計算することができ、放流設備の目標放流量に的確に対応するゲート・バルブ目標開度を計算することが可能となり、延いては、放流設備の目標放流量に適合した適切な放流操作を行うことが可能となる。
【0017】
この発明に係るゲート・バルブ開度の計算装置,ゲート・バルブ開度の計算方法,ゲート・バルブ開度の計算プログラムによれば、過去の放流操作でのダム貯水池の貯水位および放流設備における流量に加えて放流設備のゲート・バルブの開度も考慮されてゲート・バルブの操作後開度が計算されるようにしているので、ゲート・バルブの開け過ぎや閉め過ぎを内包したゲート・バルブの操作後開度を計算することができ、放流設備の目標放流量に的確に対応するゲート・バルブ目標開度を計算することが可能となり、延いては、放流設備の目標放流量に適合した適切な放流操作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施の形態に係るゲート・バルブ開度の計算装置を含むダム管理システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
図2図1のうちのゲート・バルブ開度の計算装置(方法1)の概略構成を示す機能ブロック図である。
図3】ニューラルネットワークの例を説明する図である。
図4図1のうちのゲート・バルブ開度の計算装置(方法2)の概略構成を示す機能ブロック図である。
図5図1のうちのゲート・バルブ開度の計算装置(方法3)の概略構成を示す機能ブロック図である。
図6】「貯水位~開度~放流量対応表」の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0020】
図1は、この発明の実施の形態に係るゲート・バルブ開度の計算装置3を含むダム管理システム1の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0021】
ダム制御設備2は、放流設備を操作する際のダムの流水管理に関わる演算処理や放流設備の操作ならびに操作の支援を行うためにダムに設置される機序であり、例えば、「ダム管理用制御処理設備 標準設計仕様書(国土交通省,平成28年8月)」および「ダム管理用制御処理設備 標準設計仕様書・同解説(国土交通省,平成28年8月)」(前記2つをまとめて「標準設計仕様書等」と呼ぶ)に規定されている設計仕様に従う構成や機能を備える機序である。
【0022】
ダム制御設備2は、例えば、FAパソコン(即ち、通常のパソコンを産業分野のオートメーション管理用に改造したコンピュータ)などのコンピュータに所定のプログラムがインストールされて実行されることによって実現される。ダム制御設備2は、複数のコンピュータが連携することによって構成され実現されるようにしてもよい。
【0023】
ダム制御設備2は、例えば標準設計仕様書等に規定されている設計仕様のうちこの発明に特に関係する構成として、放流操作装置21,貯水位計測装置22,入出力装置23,情報入力・提供装置24,表示装置25,制御系LAN26,および情報系LAN27を有する。
【0024】
放流操作装置21は、例えば下記の処理を行う。なお、放流設備5は、具体的には例えば、1つ若しくは複数のゲートやバルブである。
【0025】
1)ダム水文量演算処理
ダムに設置されている貯水位計4ならびに放流設備5の開度計51および流量計52などの計測値をもとに各種の演算処理を行い、貯水池諸量(別言すると、ダム諸量)として、貯水位,流入量(尚、ダム貯水池への全流入量を含む),および放流量に纏わる諸量を計算する。
【0026】
2)操作演算処理
ア)各ダムの操作規則等に従い、ダムから放流を行うための放流方式に基づいてダムから放流すべき水量の目標値(「目標全放流量」と呼ぶ)を算出する。
イ)目標全放流量を使用する放流設備に配分し、放流設備1門ごとの目標放流量を算出する。
ウ)各ゲート・バルブに配分された放流設備1門ごとの目標放流量を現在の貯水位で放流するためのゲート・バルブ開度(「ゲート・バルブ目標開度」と呼ぶ)を計算する。この発明では、ゲート・バルブ開度の計算装置3によってゲート・バルブ目標開度が計算される。
【0027】
放流操作装置21は、放流設備5の操作に関する処理として、ゲート・バルブ目標開度で放流設備5を操作するための起動指令(別言すると、開閉信号)を生成し、前記起動指令(開閉信号)を制御系LAN26を介して入出力装置23へと送信する。
【0028】
貯水位計測装置22は、貯水位計4によって計測される計測データ信号の入力を受け、必要に応じて所定の処理を施したうえで、前記計測データ信号に基づくダム貯水池の貯水位の計測値を制御系LAN26を介して放流操作装置21へと送信する。
【0029】
入出力装置23は、放流設備5の操作に関する処理として、放流操作装置21から送信される起動指令(開閉信号)の入力を受け、前記起動指令(開閉信号)を例えば光ケーブルを介して放流設備5へと送信する。
【0030】
入出力装置23は、また、放流設備5の開度計51および流量計52などによって計測/取得される計測データ信号や状態情報信号の入力を受け、必要に応じて所定の処理を施したうえで、前記計測データ信号や状態情報信号に基づく計測値や状態情報を制御系LAN26を介して放流操作装置21へと送信する。
【0031】
入出力装置23は、具体的には例えば、放流設備5の開度計51によって計測されるゲート・バルブの開度(具体的には、鉛直開度,円弧開度)の計測値、放流設備5の流量計52によって計測されるゲート・バルブにおける流量の計測値、放流設備5から出力されるゲート・バルブの状態信号、および、放流設備5から出力されるゲート・バルブが所定のゲート・バルブ目標開度に達したことを表す信号を制御系LAN26を介して放流操作装置21へと送信する。
【0032】
情報入力・提供装置24は、例えば下記の処理を行う。
【0033】
1)通信処理
関連設備6からの情報の入力を受け、また、関連設備6へと情報を出力する。情報入力・提供装置24が情報の入力を受ける元の関連設備6は、具体的にはテレメータ装置や種々の観測装置などである。また、情報入力・提供装置24が情報を出力する先の関連設備6は、具体的には上位局向け通信装置,電話応答通報装置,および種々の観測装置などである。
【0034】
2)流域水文量の演算処理
雨量・水位観測設備からテレメータで伝送される観測値をもとに各種の演算処理を行って雨量諸量(具体的には、局別雨量,流域平均雨量)および河川諸量(具体的には、局別河川水位,局別河川流量)を算出する。
【0035】
表示装置25は、一覧表,グラフ,および模式図などにより下記の情報を表示する。
1)ダム状況に関する情報
現在のダム状況を把握するための貯水位,流入量,および放流量などのダム水文量情報。
2)流域状況に関する情報
現在の流域状況を把握するための雨量,河川水位・流量などの流域水文量情報。
3)操作に関する情報
ゲート・バルブを操作するために必要となる現在の放流量および開度,目標放流量,ならびにゲート・バルブ目標開度の情報。
4)警報通報に関する情報
ダム状況が注意すべき状態であることを操作員に周知するための警報通報情報。
【0036】
制御系LAN26(LAN:Local Area Network の略)は、FL-netによって標準化されたオープンPLCネットワークとして構成される。放流操作装置21,貯水位計測装置22,および入出力装置23は、制御系LAN26を介して通信を行う。
【0037】
情報系LAN27は、TCP/IPに従った接続が可能なネットワークとして構成される。放流操作装置21,情報入力・提供装置24,および表示装置25は、情報系LAN27を介して通信を行う。
【0038】
そして、実施の形態では、ダム制御設備2に備えられているHDD(Hard Disk Drive の略)やメモリなどによって構成される記憶装置28に記憶されて格納されているゲート・バルブ開度の計算プログラム281が実行されることにより、ダム制御設備2の放流操作装置21内に、当該放流操作装置21の機能のうちの操作演算処理の1つとしてゲート・バルブ目標開度を計算する機能を含むものとしてゲート・バルブ開度の計算装置3が構成される。
【0039】
(方法1)
この方法のゲート・バルブ開度の計算装置3Aは、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段としての計測貯水位取得部31と、ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段としての目標放流量取得部32と、放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段としての開度決定部35Aと、を有し、開度決定部35Aが、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、ダム貯水池の貯水位および放流設備における流量を入力とするとともに放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデル282に、放流操作を行う際のダム貯水池の貯水位の計測値および放流設備の目標放流量を入力し、学習済みモデル282から出力される放流設備のゲート・バルブの操作後開度をゲート・バルブ目標開度とする、ようにしている(図2参照)。
【0040】
また、ゲート・バルブ開度の計算方法は、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する処理と、ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する処理と、放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する処理と、を有し、ゲート・バルブ目標開度を決定する処理において、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、ダム貯水池の貯水位および放流設備における流量を入力とするとともに放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデル282に、放流操作を行う際のダム貯水池の貯水位の計測値および放流設備の目標放流量が入力され、学習済みモデル282から出力される放流設備のゲート・バルブの操作後開度がゲート・バルブ目標開度とされる、ようにしている。
【0041】
また、ゲート・バルブ開度の計算プログラム281は、コンピュータを、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段としての計測貯水位取得部31、ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段としての目標放流量取得部32、および、放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段としての開度決定部35A、として機能させ、開度決定部35Aが、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、ダム貯水池の貯水位および放流設備における流量を入力とするとともに放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデル282に、放流操作を行う際のダム貯水池の貯水位の計測値および放流設備の目標放流量を入力し、学習済みモデル282から出力される放流設備のゲート・バルブの操作後開度をゲート・バルブ目標開度とする、ようにしている。
【0042】
計測貯水位取得部31は、貯水位計測装置22から制御系LAN26を介して放流操作装置21へと送信されるダム貯水池の貯水位の計測値の入力を受ける(言い換えると、取得する)。
【0043】
目標放流量取得部32は、放流操作装置21の機能のうちの操作演算処理によって算出される放流設備1門ごとの目標放流量の入力を受ける(言い換えると、取得する)。
【0044】
開度決定部35Aは、計測貯水位取得部31へと入力されるダム貯水池の貯水位の計測値と、目標放流量取得部32へと入力される放流設備1門ごとの目標放流量とを用いて、放流設備5の放流操作を制御するための放流設備5のゲート・バルブ目標開度を計算する。
【0045】
開度決定部35Aは、ダム貯水池の貯水位と放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量との組み合わせが入力されるとゲート・バルブの操作後開度を出力するように過去の実績データに基づいて機械学習された学習済みモデル282を用いて放流設備5のゲート・バルブ目標開度を計算する。学習済みモデル282は、学習装置7によって作成されて、記憶装置28に記憶される。
【0046】
学習装置7は、記憶装置28に記憶されて格納されているゲート・バルブ開度の計算プログラム281が実行されることにより、放流操作装置21内に構成される。
【0047】
学習装置7は、実績データベース283に記録・蓄積されている過去の実績データを用いて、ニューラルネットワークなどの公知の機械学習アルゴリズムによって学習済みモデル282を作成する。
【0048】
実績データベース283は、入力情報として、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する(言い換えると、過去の放流操作において収集された)ダム貯水池の貯水位の計測値,ゲート・バルブの開度の計測値,および放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値の組み合わせを含む実績データが記録・蓄積されているデータベースである。実績データベース283は、記憶装置28に格納される。
【0049】
なお、ダム貯水池の貯水位の計測値は貯水位計4によって計測されて貯水位計測装置22を介して収集され、ゲート・バルブの開度の計測値は開度計51によって計測されて入出力装置23を介して収集され、放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値は流量計52によって計測されて入出力装置23を介して収集される。
【0050】
実績データベース283は、複数時点のそれぞれにおける(言い換えると、過去の放流操作ごとの)ダム貯水池の貯水位の計測値,ゲート・バルブの開度の計測値,および放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値の組み合わせを含む実績データの集合であり、つまり、ダム貯水池の貯水位の計測値,ゲート・バルブの開度の計測値,および放流設備5における流量の計測値が時系列的に対応づけられている時系列データとして構成される。
【0051】
学習装置7は、例えば、ニューラルネットワークを利用した機械学習・深層学習によってモデルの作成を行い、これにより、学習済みモデル282は、ニューラルネットワークによって構成される。
【0052】
ニューラルネットワークNは、図3に示すように、入力層X,中間層Y(「隠れ層」とも呼ばれる),および出力層Zを有する。入力層Xは複数個のノードx1,x2,x3,・・・を有し、中間層Yは複数個のノードy1,y2,y3,・・・を有し、出力層Zは複数個のノードz1,z2,z3,・・・(または、1個のノード)を有する。なお、図3に示す例では1つの中間層Yを有するようにしているが、ニューラルネットワークNは、複数の中間層を有するように構成されてもよい。
【0053】
入力層Xと中間層Yとの間にあるノード間の結合は各々が重みを持っており、また、中間層Yと出力層Zとの間にあるノード間の結合は各々が重みを持っている。
【0054】
学習装置7は、例えば、ダム貯水池の貯水位の計測値および放流設備5における流量の計測値を入力層Xとするとともにゲート・バルブの開度の計測値を出力層Zとし、実績データベース283に記録・蓄積されている実績データを学習データとして用いて中間層Yに関する各種パラメータ(尚、ノード間の結合それぞれの重みを含む)について学習を行ってニューラルネットワークNを作成する。学習装置7は、すなわち、ダム貯水池の貯水位と放流設備5における流量との組み合わせから精度よくゲート・バルブの操作後開度が計算されるように中間層Yに関する各種パラメータの学習を行って学習済みモデル282を作成する。
【0055】
開度決定部35Aは、計測貯水位取得部31へと入力されるダム貯水池の貯水位の計測値と、目標放流量取得部32へと入力される放流設備1門ごとの目標放流量(尚、学習済みモデル282における、放流設備5における流量に対応する)とを用いるとともに、記憶装置28に記憶されている学習済みモデル282を用いてゲート・バルブの操作後開度を計算する。
【0056】
そして、開度決定部35Aは、上記で計算されるゲート・バルブの操作後開度を当該の放流操作(言い換えると、新たに行う放流操作)における放流設備5のゲート・バルブ目標開度とし、前記ゲート・バルブ目標開度で放流設備5を操作するための起動指令(別言すると、開閉信号)を生成して入出力装置23へと送信する。
【0057】
ここで、ゲート・バルブ開度の計算装置3は、制御設備2に組み込まれて、日々の放流操作において利用されるようにしてよい。この場合、日々の放流操作ごとのダム貯水池の貯水位の計測値,ゲート・バルブの開度の計測値,および放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値の組み合わせが実績データとして実績データベース283へと追加されて、実績データが追加/更新された実績データベース283を用いて学習装置7が学習済みモデル282を定期的・継続的に更新するようにしてもよい。
【0058】
また、ゲート・バルブ開度の計算装置3,ゲート・バルブ開度の計算方法,ゲート・バルブ開度の計算プログラム281によれば、学習済みモデル282により、ダム貯水池の貯水位と放流設備5における流量との組み合わせからゲート・バルブの操作後開度が計算されるので、ダム貯水池の貯水位と放流設備5における流量とを与えて出力されるゲート・バルブの開度に基づいて貯水位と流量と開度との組み合わせデータを複数生成して整理して、当該の放流設備5についての「貯水位~開度~放流量対応表」が作成されるようにしてもよい。
【0059】
(方法2)
この方法のゲート・バルブ開度の計算装置3Bは、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段としての計測貯水位取得部31と、ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段としての目標放流量取得部32と、放流設備における流量の計測値を取得する手段としての計測放流量取得部33と、放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段としての開度決定部35Bと、を有し、開度決定部35Bが、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、ダム貯水池の貯水位,放流設備の開閉の向き,および放流設備における流量を入力とするとともに放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデル282に、放流操作を行う際のダム貯水池の貯水位の計測値、放流設備の目標放流量と放流設備における流量の計測値とに基づいて決定される放流設備の開閉の向き、および、放流設備の目標放流量を入力し、学習済みモデル282から出力される放流設備のゲート・バルブの操作後開度をゲート・バルブ目標開度とする、ようにしている(図4参照)。
【0060】
また、ゲート・バルブ開度の計算方法は、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する処理と、ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する処理と、放流設備における流量の計測値を取得する処理と、放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する処理と、を有し、ゲート・バルブ目標開度を決定する処理において、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、ダム貯水池の貯水位,放流設備の開閉の向き,および放流設備における流量を入力とするとともに放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデル282に、放流操作を行う際のダム貯水池の貯水位の計測値、放流設備の目標放流量と放流設備における流量の計測値とに基づいて決定される放流設備の開閉の向き、および、放流設備の目標放流量が入力され、学習済みモデル282から出力される放流設備のゲート・バルブの操作後開度がゲート・バルブ目標開度とされる、ようにしている。
【0061】
また、ゲート・バルブ開度の計算プログラム281は、コンピュータを、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段としての計測貯水位取得部31、ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段としての目標放流量取得部32、放流設備における流量の計測値を取得する手段としての計測放流量取得部33、および、放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段としての開度決定部35B、として機能させ、開度決定部35Bが、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、ダム貯水池の貯水位,放流設備の開閉の向き,および放流設備における流量を入力とするとともに放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデル282に、放流操作を行う際のダム貯水池の貯水位の計測値、放流設備の目標放流量と放流設備における流量の計測値とに基づいて決定される放流設備の開閉の向き、および、放流設備の目標放流量を入力し、学習済みモデル282から出力される放流設備のゲート・バルブの操作後開度をゲート・バルブ目標開度とする、ようにしている。
【0062】
計測貯水位取得部31は、貯水位計測装置22から制御系LAN26を介して放流操作装置21へと送信されるダム貯水池の貯水位の計測値の入力を受ける(言い換えると、取得する)。
【0063】
目標放流量取得部32は、放流操作装置21の機能のうちの操作演算処理によって算出される放流設備1門ごとの目標放流量の入力を受ける(言い換えると、取得する)。
【0064】
計測放流量取得部33は、入出力装置23から制御系LAN26を介して放流操作装置21へと送信される放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値の入力を受ける(言い換えると、取得する)。
【0065】
開度決定部35Bは、計測貯水位取得部31へと入力されるダム貯水池の貯水位の計測値と、目標放流量取得部32へと入力される放流設備1門ごとの目標放流量と、放流設備5の開閉の向きとを用いて、放流設備5の放流操作を制御するための放流設備5のゲート・バルブ目標開度を計算する。
【0066】
開度決定部35Bは、ダム貯水池の貯水位と放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量と放流設備5の開閉の向きとの組み合わせが入力されるとゲート・バルブの操作後開度を出力するように過去の実績データに基づいて機械学習された学習済みモデル282を用いて放流設備5のゲート・バルブ目標開度を計算する。学習済みモデル282は、学習装置7によって作成されて、記憶装置28に記憶される。
【0067】
学習装置7は、記憶装置28に記憶されて格納されているゲート・バルブ開度の計算プログラム281が実行されることにより、放流操作装置21内に構成される。
【0068】
学習装置7は、実績データベース283に記録・蓄積されている過去の実績データを用いて、ニューラルネットワークなどの公知の機械学習アルゴリズムによって学習済みモデル282を作成する。
【0069】
実績データベース283は、入力情報として、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する(言い換えると、過去の放流操作において収集された)ダム貯水池の貯水位の計測値,ゲート・バルブの開度の設定値,放流設備5の開閉の向き,および放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値の組み合わせを含む実績データが記録・蓄積されているデータベースである。実績データベース283は、記憶装置28に格納される。
【0070】
なお、ダム貯水池の貯水位の計測値は貯水位計4によって計測されて貯水位計測装置22を介して収集され、放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値は流量計52によって計測されて入出力装置23を介して収集される。
【0071】
また、ゲート・バルブの開度の設定値として、放流操作装置21の機能のうちの操作演算処理によって計算されるゲート・バルブ目標開度が収集される。
【0072】
さらに、放流設備5の開閉の向きは、流量計52によって計測されて入出力装置23を介して収集される放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値と放流操作装置21の機能のうちの操作演算処理によって算出される放流設備1門ごとの目標放流量とに基づいて決定される。具体的には、放流設備5における流量の計測値よりも放流設備1門ごとの目標放流量が小さい場合には放流設備5を閉める向きになり、放流設備5における流量の計測値よりも放流設備1門ごとの目標放流量が大きい場合には放流設備5を開ける向きになる。
【0073】
実績データベース283は、複数時点のそれぞれにおける(言い換えると、過去の放流操作ごとの)ダム貯水池の貯水位の計測値,ゲート・バルブの開度の設定値(具体的には、放流操作後のゲート・バルブの開度として設定される値であり、放流操作装置21において計算されるゲート・バルブ目標開度),放流設備5の開閉の向き,および放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値の組み合わせを含む実績データの集合であり、つまり、ダム貯水池の貯水位の計測値,ゲート・バルブの開度の設定値,放流設備5の開閉の向き,および放流設備5における流量の計測値が時系列的に対応づけられている時系列データとして構成される。
【0074】
学習装置7は、例えば、ニューラルネットワークを利用した機械学習・深層学習によってモデルの作成を行い、これにより、学習済みモデル282は、ニューラルネットワークによって構成される(上述の説明および図3参照)。
【0075】
学習装置7は、例えば、ダム貯水池の貯水位の計測値,放流設備5の開閉の向き,および放流設備5における流量の計測値を入力層Xとするとともにゲート・バルブの開度の設定値を出力層Zとし、実績データベース283に記録・蓄積されている実績データを学習データとして用いて中間層Yに関する各種パラメータ(尚、ノード間の結合それぞれの重みを含む)について学習を行ってニューラルネットワークNを作成する。学習装置7は、すなわち、ダム貯水池の貯水位と放流設備5の開閉の向きと放流設備5における流量との組み合わせから精度よくゲート・バルブの操作後開度が計算されるように中間層Yに関する各種パラメータの学習を行って学習済みモデル282を作成する。
【0076】
開度決定部35Bは、計測貯水位取得部31へと入力されるダム貯水池の貯水位の計測値と、目標放流量取得部32へと入力される放流設備1門ごとの目標放流量(尚、学習済みモデル282における、放流設備5における流量に対応する)と、計測放流量取得部33へと入力される放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値とを用いるとともに、記憶装置28に記憶されている学習済みモデル282を用いてゲート・バルブの操作後開度を計算する。
【0077】
この際、開度決定部35Bは、目標放流量取得部32へと入力される放流設備1門ごとの目標放流量と計測放流量取得部33へと入力される放流設備5における流量の計測値とに基づいて、当該の放流操作(言い換えると、新たに行う放流操作)における放流設備5の開閉の向きを決定する。具体的には、放流設備5における流量の計測値よりも放流設備1門ごとの目標放流量が小さい場合には放流設備5を閉める向きになり、放流設備5における流量の計測値よりも放流設備1門ごとの目標放流量が大きい場合には放流設備5を開ける向きになる。
【0078】
そして、開度決定部35Bは、上記で計算されるゲート・バルブの操作後開度を当該の放流操作(言い換えると、新たに行う放流操作)における放流設備5のゲート・バルブ目標開度とし、前記ゲート・バルブ目標開度で放流設備5を操作するための起動指令(別言すると、開閉信号)を生成して入出力装置23へと送信する。
【0079】
(方法3)
この方法のゲート・バルブ開度の計算装置3Cは、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段としての計測貯水位取得部31と、ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段としての目標放流量取得部32と、放流設備のゲート・バルブの開度の計測値を取得する手段としての計測開度取得部34と、放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段としての開度決定部35Cと、を有し、開度決定部35Cが、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、ダム貯水池の貯水位,放流設備における流量,および放流設備のゲート・バルブの操作前開度を入力とするとともに放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデル282に、放流操作を行う際のダム貯水池の貯水位の計測値,放流設備の目標放流量,および放流設備のゲート・バルブの開度の計測値を入力し、学習済みモデル282から出力される放流設備のゲート・バルブの操作後開度をゲート・バルブ目標開度とする、ようにしている(図5参照)。
【0080】
また、ゲート・バルブ開度の計算方法は、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する処理と、ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する処理と、放流設備のゲート・バルブの開度の計測値を取得する処理と、放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する処理と、を有し、ゲート・バルブ目標開度を決定する処理において、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、ダム貯水池の貯水位,放流設備における流量,および放流設備のゲート・バルブの操作前開度を入力とするとともに放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデル282に、放流操作を行う際のダム貯水池の貯水位の計測値,放流設備の目標放流量,および放流設備のゲート・バルブの開度の計測値が入力され、学習済みモデル282から出力される放流設備のゲート・バルブの操作後開度がゲート・バルブ目標開度とされる、ようにしている。
【0081】
また、ゲート・バルブ開度の計算プログラム281は、コンピュータを、ダム貯水池の貯水位の計測値を取得する手段としての計測貯水位取得部31、ダム貯水池の放流設備の目標放流量を取得する手段としての目標放流量取得部32、放流設備のゲート・バルブの開度の計測値を取得する手段としての計測開度取得部34、および、放流設備に対して設定するゲート・バルブ目標開度を決定する手段としての開度決定部35C、として機能させ、開度決定部35Cが、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する実績データが用いられて機械学習された、ダム貯水池の貯水位,放流設備における流量,および放流設備のゲート・バルブの操作前開度を入力とするとともに放流設備のゲート・バルブの操作後開度を出力とする学習済みモデル282に、放流操作を行う際のダム貯水池の貯水位の計測値,放流設備の目標放流量,および放流設備のゲート・バルブの開度の計測値を入力し、学習済みモデル282から出力される放流設備のゲート・バルブの操作後開度をゲート・バルブ目標開度とする、ようにしている。
【0082】
計測貯水位取得部31は、貯水位計測装置22から制御系LAN26を介して放流操作装置21へと送信されるダム貯水池の貯水位の計測値の入力を受ける(言い換えると、取得する)。
【0083】
目標放流量取得部32は、放流操作装置21の機能のうちの操作演算処理によって算出される放流設備1門ごとの目標放流量の入力を受ける(言い換えると、取得する)。
【0084】
計測開度取得部34は、入出力装置23から制御系LAN26を介して放流操作装置21へと送信されるゲート・バルブの開度の計測値の入力を受ける(言い換えると、取得する)。
【0085】
開度決定部35Cは、計測貯水位取得部31へと入力されるダム貯水池の貯水位の計測値と、目標放流量取得部32へと入力される放流設備1門ごとの目標放流量と、計測開度取得部34へと入力されるゲート・バルブの開度の計測値とを用いて、放流設備5の放流操作を制御するための放流設備5のゲート・バルブ目標開度を計算する。
【0086】
開度決定部35Cは、ダム貯水池の貯水位と放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量とゲート・バルブの開度(具体的には、当該の放流操作前のゲート・バルブの開度であり、当該の放流操作を行おうとする時のゲート・バルブの開度)との組み合わせが入力されるとゲート・バルブの操作後開度を出力するように過去の実績データに基づいて機械学習された学習済みモデル282を用いて放流設備5のゲート・バルブ目標開度を計算する。学習済みモデル282は、学習装置7によって作成されて、記憶装置28に記憶される。
【0087】
学習装置7は、記憶装置28に記憶されて格納されているゲート・バルブ開度の計算プログラム281が実行されることにより、放流操作装置21内に構成される。
【0088】
学習装置7は、実績データベース283に記録・蓄積されている過去の実績データを用いて、ニューラルネットワークなどの公知の機械学習アルゴリズムによって学習済みモデル282を作成する。
【0089】
実績データベース283は、入力情報として、同一のまたは同じ種別の放流設備での過去の放流操作に関する(言い換えると、過去の放流操作において収集された)ダム貯水池の貯水位の計測値,ゲート・バルブの開度の設定値,放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値,およびゲート・バルブの開度の計測値の組み合わせを含む実績データが記録・蓄積されているデータベースである。実績データベース283は、記憶装置28に格納される。
【0090】
なお、ダム貯水池の貯水位の計測値は貯水位計4によって計測されて貯水位計測装置22を介して収集され、放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値は流量計52によって計測されて入出力装置23を介して収集され、ゲート・バルブの開度の計測値は開度計51によって計測されて入出力装置23を介して収集される。
【0091】
また、ゲート・バルブの開度の設定値として、放流操作装置21の機能のうちの操作演算処理によって計算されるゲート・バルブ目標開度が収集される。
【0092】
実績データベース283は、複数時点のそれぞれにおける(言い換えると、過去の放流操作ごとの)ダム貯水池の貯水位の計測値,ゲート・バルブの開度の設定値(具体的には、放流操作後のゲート・バルブの開度として設定される値であり、放流操作装置21において計算されるゲート・バルブ目標開度),放流設備5(具体的には、ゲート・バルブ)における流量の計測値,およびゲート・バルブの開度の計測値(具体的には、放流操作前のゲート・バルブの開度であり、放流操作を行おうとする時のゲート・バルブの開度)の組み合わせを含む実績データの集合であり、つまり、ダム貯水池の貯水位の計測値,ゲート・バルブの開度の設定値,放流設備5における流量の計測値,およびゲート・バルブの開度の計測値が時系列的に対応づけられている時系列データとして構成される。
【0093】
学習装置7は、例えば、ニューラルネットワークを利用した機械学習・深層学習によってモデルの作成を行い、これにより、学習済みモデル282は、ニューラルネットワークによって構成される(上述の説明および図3参照)。
【0094】
学習装置7は、例えば、ダム貯水池の貯水位の計測値,放流設備5における流量の計測値,およびゲート・バルブの開度の計測値を入力層Xとするとともにゲート・バルブの開度の設定値を出力層Zとし、実績データベース283に記録・蓄積されている実績データを学習データとして用いて中間層Yに関する各種パラメータ(尚、ノード間の結合それぞれの重みを含む)について学習を行ってニューラルネットワークNを作成する。学習装置7は、すなわち、ダム貯水池の貯水位と放流設備5における流量とゲート・バルブの操作前開度との組み合わせから精度よくゲート・バルブの操作後開度が計算されるように中間層Yに関する各種パラメータの学習を行って学習済みモデル282を作成する。
【0095】
開度決定部35Cは、計測貯水位取得部31へと入力されるダム貯水池の貯水位の計測値と、目標放流量取得部32へと入力される放流設備1門ごとの目標放流量(尚、学習済みモデル282における、放流設備5における流量に対応する)と、計測開度取得部34へと入力されるゲート・バルブの開度の計測値(即ち、放流操作前のゲート・バルブの開度)とを用いるとともに、記憶装置28に記憶されている学習済みモデル282を用いてゲート・バルブの操作後開度を計算する。
【0096】
そして、開度決定部35Cは、上記で計算されるゲート・バルブの操作後開度を当該の放流操作(言い換えると、新たに行う放流操作)における放流設備5のゲート・バルブ目標開度とし、前記ゲート・バルブ目標開度で放流設備5を操作するための起動指令(別言すると、開閉信号)を生成して入出力装置23へと送信する。
【0097】
実施の形態に係るゲート・バルブ開度の計算装置3,ゲート・バルブ開度の計算方法,ゲート・バルブ開度の計算プログラム281によれば、過去の放流操作でのダム貯水池の貯水位および放流設備5における流量に対応するゲート・バルブの操作後開度が計算されるようにしているので、放流設備1門ごとの目標放流量に的確に対応するゲート・バルブ目標開度を計算することが可能となり、延いては、放流設備1門ごとの目標放流量に適合した適切な放流操作を行うことが可能となる。
【0098】
ここで、所望の操作後開度で放流設備5を操作するために放流操作装置21から入出力装置23を介して放流設備5へと送信される起動指令(開閉信号)に従って放流設備5が作動した際に、信号伝送のタイムラグや機械動作の惰性などにより、前記所望の操作後開度に対してゲート・バルブの開け過ぎや閉め過ぎが生じることがある。すなわち、放流操作装置21において計算されるゲート・バルブ目標開度と放流設備5の実際の作動結果とが一致しないことがあり、結果として、放流設備1門ごとの目標放流量(延いては、ダムから放流すべき水量)に適合した適切な放流操作を行うことができない、という問題がある。
【0099】
上記の問題に対し、実施の形態に係るゲート・バルブ開度の計算装置3B,ゲート・バルブ開度の計算方法,ゲート・バルブ開度の計算プログラム281によれば、過去の放流操作でのダム貯水池の貯水位および放流設備5における流量に加えて放流設備5の開閉の向きも考慮されてゲート・バルブの操作後開度が計算されるようにしているので(即ち、上記の方法2)、ゲート・バルブの開け過ぎや閉め過ぎを内包したゲート・バルブの操作後開度を計算することができ、放流設備1門ごとの目標放流量に的確に対応するゲート・バルブ目標開度を計算することが可能となり、延いては、放流設備1門ごとの目標放流量に適合した適切な放流操作を行うことが可能となる。
【0100】
また、実施の形態に係るゲート・バルブ開度の計算装置3C,ゲート・バルブ開度の計算方法,ゲート・バルブ開度の計算プログラム281によれば、過去の放流操作でのダム貯水池の貯水位および放流設備5における流量に加えて放流設備5のゲート・バルブの開度も考慮されてゲート・バルブの操作後開度が計算されるようにしているので(即ち、上記の方法3)、ゲート・バルブの開け過ぎや閉め過ぎを内包したゲート・バルブの操作後開度を計算することができ、放流設備1門ごとの目標放流量に的確に対応するゲート・バルブ目標開度を計算することが可能となり、延いては、放流設備1門ごとの目標放流量に適合した適切な放流操作を行うことが可能となる。
【0101】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0102】
具体的には、上記の実施の形態では図1に概略構成を示すダム制御設備2(特に、標準設計仕様書等に規定されている設計仕様に従う構成や機能を備える機序であり、具体的には例えば、ダム管理用制御処理設備)に対してこの発明に係るゲート・バルブ開度の計算装置3が組み込まれるようにしているが、この発明に係るゲート・バルブ開度の計算装置3が組み込まれるダム制御設備は図1に概略構成を示すダム制御設備2に限定されるものではなく、他の構成を備えるダム制御設備に対してこの発明に係るゲート・バルブ開度の計算装置3が組み込まれるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 ダム管理システム
2 ダム制御設備
21 放流操作装置
22 貯水位計測装置
23 入出力装置
24 情報入力・提供装置
25 表示装置
26 制御系LAN
27 情報系LAN
28 記憶装置
281 ゲート・バルブ開度の計算プログラム
282 学習済みモデル
283 実績データベース
3 ゲート・バルブ開度の計算装置
3A ゲート・バルブ開度の計算装置(方法1)
3B ゲート・バルブ開度の計算装置(方法2)
3C ゲート・バルブ開度の計算装置(方法3)
31 計測貯水位取得部
32 目標放流量取得部
33 計測放流量取得部
34 計測開度取得部
35 開度決定部
35A 開度決定部(方法1)
35B 開度決定部(方法2)
35C 開度決定部(方法3)
4 貯水位計
5 放流設備
51 開度計
52 流量計
6 関連設備
7 学習装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6