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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061042
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】建築積算システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20230424BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20230424BHJP
   G06Q 30/0601 20230101ALI20230424BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20230424BHJP
【FI】
G06F30/13
G06T7/60 150D
G06T7/60 200G
G06Q30/06 310
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170795
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】515080663
【氏名又は名称】株式会社リヨ・デ・ホーム
(71)【出願人】
【識別番号】510103749
【氏名又は名称】株式会社理世化学
(74)【代理人】
【識別番号】100106954
【弁理士】
【氏名又は名称】岩城 全紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114638
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 寛也
(72)【発明者】
【氏名】大澤 正樹
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DA01
5B146DA02
5B146DA06
5B146DA07
5B146DE13
5B146DE16
5L049BB55
5L096BA12
5L096CA16
5L096FA03
5L096FA10
5L096FA12
5L096FA15
5L096FA69
5L096FA77
(57)【要約】
【課題】コンピュータ作業が人にもたらす負の側面の影響を緩和しつつ、コンピュータ処理により得られる利点を維持することができる建築積算システムを提供する。
【解決手段】設計図の紙面上に描かれた建築要素を示す線を蛍光ペンでなぞって形成された蛍光ペン指示部分を含む状態で設計図をスキャンして得られた画像データを読み込み、蛍光ペン指示部分から、建築要素を示す線との重畳部分を抽出することにより、蛍光ペンによる指示図形の座標データを得る指示図形抽出手段36と、指示図形の座標データから換算情報を得る換算情報設定手段40と、指示図形の座標データを用いて建築要素を配置する建築要素登録・配置手段50と、指示図形の座標データを用いて見積書や原価計算書等を作成する積算手段60とを設け、建築積算システム10を構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁、建具、基礎、屋根、およびその他の建築要素を備えた建築物についての見積書若しくはその一部、原価計算書若しくはその一部、またはその他の建築関連帳票若しくはその一部を作成するコンピュータにより構成された建築積算システムであって、
前記建築要素を構成する部材についての単価、および、当該部材の単体での長さ、面積、若しくは体積または当該部材が単体で構成することができる前記建築要素の長さ、面積、若しくは体積の最大値を示す部材単体仕様情報を、部材識別情報と関連付けて記憶する部材データ記憶手段と、
間取りを示す平面図またはその他の設計図の紙面上に描かれた前記建築要素を示す線を蛍光ペンでなぞって形成された蛍光ペン指示部分を含む状態で前記設計図をスキャンして得られた画像データを読み込み、前記蛍光ペン指示部分から、前記蛍光ペン指示部分と前記建築要素を示す線とが重なった重畳部分を抽出することにより、蛍光ペンによる指示図形の座標データを得る処理を実行する指示図形抽出手段と、
蛍光ペンによる前記指示図形としての換算情報取得用図形の座標データを、前記指示図形抽出手段から取得するとともに、この換算情報取得用図形の周辺に配置された数字をOCR処理で読み取り、取得した前記換算情報取得用図形の座標データおよび前記OCR処理による読取情報を用いて、前記設計図についての画像データの構成ドットの座標上の寸法と実際の寸法との換算情報を取得する換算情報自動取得処理を実行するか、または、前記設計図についての画像データを読み込んで前記設計図を画面表示するとともに、画面表示された前記設計図上でのユーザによる2点の座標位置の指定入力および指定された2点間の実際の寸法を示す数値の入力を受け付けることにより、前記設計図についての画面表示用の座標上の寸法と実際の寸法との換算情報の設定入力を受け付ける換算情報手動入力受付処理を実行する換算情報設定手段と、
前記部材データ記憶手段に記憶された部材の中からのユーザによる前記建築要素を構成するのに使用する部材の選択入力を受け付ける使用部材選択受付処理を実行し、さらに、蛍光ペンによる前記指示図形としての積算用図形の座標データを、前記指示図形抽出手段から取得する積算用図形取得処理を実行するか、またはこれらの使用部材選択受付処理および積算用図形取得処理に加え、この積算用図形取得処理で得られない非座標データとしてユーザによる前記建築要素に関する数値データの入力を受け付ける非座標データ受付処理を実行する建築要素登録・配置手段と、
この建築要素登録・配置手段により取得した前記積算用図形の座標データおよび前記換算情報設定手段により得られた前記換算情報を用いるか、または、これらの積算用図形の座標データおよび換算情報に加えて前記建築要素登録・配置手段により受け付けた前記非座標データを用いて、前記建築要素の実際の寸法による長さ、面積、若しくは体積を換算算出し、換算算出して得られた長さ、面積、若しくは体積を、使用する部材についての部材識別情報に関連付けられて前記部材データ記憶手段に記憶された前記部材単体仕様情報で除するかまたは除算と等価な演算を行うことにより、使用する部材についての数量を算出し、算出した数量に、前記部材データ記憶手段に記憶された単価を乗ずることにより、使用する部材についての金額を算出し、算出した数量および金額を用いて、前記見積書若しくはその一部、前記原価計算書若しくはその一部、またはその他の前記建築関連帳票若しくはその一部を作成する処理を実行する積算手段と
を備えたことを特徴とする建築積算システム。
【請求項2】
前記指示図形抽出手段は、
前記画像データから、蛍光ペンによる前記指示図形として、前記重畳部分を含む前記蛍光ペン指示部分を抽出する処理を実行する蛍光ペン指示部分抽出手段と、
この蛍光ペン指示部分抽出手段により抽出した前記指示図形としての前記蛍光ペン指示部分の屈折部を決定し、決定した屈折部で、前記重畳部分を含む前記蛍光ペン指示部分を分断することにより、複数の線分を形成する処理を実行する図形分断手段と、
この図形分断手段により形成した前記複数の線分の各々について、前記重畳部分を含む前記蛍光ペン指示部分の構成ドットの座標データを用いて、直線フィッティングを行うことにより、蛍光ペン指示部分フィット線を求めるとともに、前記重畳部分の構成ドットの座標データを用いて、直線フィッティングを行うことにより、重畳部分フィット線を求め、求めた前記蛍光ペン指示部分フィット線および前記重畳部分フィット線を用いて、前記複数の線分の各々についての最終的なフィット線を決定する処理を実行するフィッティング手段と、
このフィッティング手段により決定した前記最終的なフィット線どうしの交点を求めることにより、蛍光ペンによる前記指示図形としての積算用図形の座標データを決定する処理を実行する積算用図形決定手段と
を含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建築積算システム。
【請求項3】
前記指示図形抽出手段は、
蛍光ペンによる前記指示図形としての前記換算情報取得用図形について、前記フィッティング手段により決定した前記最終的なフィット線どうしの交点を求め、求めた交点の座標データを前記換算情報設定手段に渡す処理を実行する換算情報取得用図形決定手段と、
蛍光ペンによる前記指示図形としての位置合わせ用図形について、前記フィッティング手段により決定した前記最終的なフィット線どうしの交点を求め、求めた交点の座標データを、異なる内容の複数の前記設計図の各々に対応する複数の画像データどうし、または同じ内容の前記設計図について異なる内容の蛍光ペン作業を行った状態の複数の前記設計図の各々に対応する複数の画像データどうしの位置合わせ用の基準点の座標データとして、前記換算情報設定手段に渡す処理を実行する位置合わせ用図形決定手段と
を含んで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の建築積算システム。
【請求項4】
前記フィッティング手段は、
前記蛍光ペン指示部分フィット線または修正前の前記重畳部分フィット線と交差する方向に延びる切断線により、前記重畳部分を複数の区画に分割し、各区画に含まれる構成ドットの数が、予め定められた閾値以上または閾値を超える場合に、当該区画の構成ドットを取り除く間引き処理を行うか、または、前記蛍光ペン指示部分フィット線または修正前の前記重畳部分フィット線に沿う方向に移動する移動区画を形成し、この移動区画を移動させながら、移動区画に含まれる構成ドットの数が、予め定められた閾値以上または閾値を超えるか否かを判断し、閾値以上または閾値を超えた場合の移動位置における当該移動区画の構成ドットを取り除く間引き処理を行い、間引き処理後の前記重畳部分の構成ドットの座標データを用いて、直線フィッティングを行うことにより、修正後の前記重畳部分フィット線を求める処理を実行する構成とされている
ことを特徴とする請求項2または3に記載の建築積算システム。
【請求項5】
前記図形分断手段は、
蛍光ペンによる前記指示図形としての前記積算用図形についての前記蛍光ペン指示部分の構成ドットの座標データを、前記蛍光ペン指示部分の重心点またはその他の指示図形代表点を中心とする極座標に変換し、前記指示図形代表点から前記蛍光ペン指示部分の各構成ドットまでの距離を用いて前記蛍光ペン指示部分についての極大点若しくは極小点、または傾きの変化が閾値以上または閾値を超える勾配急変点の部分を求め、求めた極大点若しくは極小点または勾配急変点の部分の中から、前記蛍光ペン指示部分の屈折部を決定する処理を実行する構成とされている
ことを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の建築積算システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の建築積算システムとして、コンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁、建具、基礎、屋根、およびその他の建築要素を備えた建築物についての見積書若しくはその一部、原価計算書若しくはその一部、またはその他の建築関連帳票若しくはその一部を作成するコンピュータにより構成された建築積算システムおよびプログラムに係り、例えば、間取りを示す平面図等の設計図を作成してから建築される各種の建築物についての見積書、原価計算書、実行予算書、発注書、請求書等の建築関連帳票を作成する場合等に利用できる。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物の見積や原価計算等では、建築物が基礎や屋根等の幾つかの建築要素により構成され、さらに、それらの各建築要素が各種の部材を用いて構成されることから、必要な部材の調達およびそれらの部材を使用した各種の工事を行うのに必要な金額(単純化すると、使用する部材の単価×数量である。)を積算する作業が行われる。この作業は、全てを手作業で行うと、非常に多くの時間・労力を要するものである。
【0003】
そこで、本願出願人により、施工業者等の手間の軽減、作業時間の短縮等を図るべく、次のような建築積算システムが開発され、実用化されている(特許文献1参照)。この建築積算システムでは、画面表示された設計図上で、マウスやスタイラスペン等のポインティングデバイスを用いたユーザによる建築要素を示す線(例えば、基礎を示す線等)に沿った描画線の入力操作(クリック操作等を繰り返すことにより、建築要素を示す線をなぞるトレース作業)を受け付け、この入力操作で指定された座標データから、換算演算を行うことにより建築要素の実際の寸法による長さ、面積、若しくは体積を算出し、この換算算出して得られた長さ、面積、若しくは体積と、部材データ記憶手段に記憶された使用部材の部材単体仕様情報とを用いて、使用部材についての数量を算出する。従って、ユーザが、画面表示された設計図上で描画操作(トレース作業)を行うと、見積や原価計算等のための積算に必要な部材の数量が得られ、この数量と、部材データ記憶手段に記憶された単価とにより、使用部材についての金額が算出され、見積書や原価計算書等の建築関連帳票またはその一部が自動作成される。
【0004】
なお、設計図上で蛍光ペンを使った作業を行うことは、珍しいことではなく、一般的に行われているが(特許文献2,3参照)、従来の蛍光ペンの使い方は、本願のシステムを想起させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6293104号掲載公報
【特許文献2】特開2001-306631号公報
【特許文献3】特開2007-140736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に記載された本願出願人による建築積算システムでは、画面表示された設計図上で、マウスやスタイラスペン等のポインティングデバイスを用いて建築要素を示す線をなぞるだけで、積算が行われるので、非常に便利である。
【0007】
しかし、コンピュータの画面上で、設計図に引かれた線をなぞる描画作業は、コンピュータ操作に慣れていない人、コンピュータ操作が嫌いな人、コンピュータ操作で細かい作業を行うと、直ぐに目が疲れる人、肩が凝る人、うっとうしく感じる人、うっ積してくる人等にとっては、馴染めない作業であるともいえる。従って、これらの人が、嫌気を催さないような建築積算システムがあれば、より便利になる。
【0008】
本発明の目的は、コンピュータ作業が人にもたらす負の側面の影響を緩和しつつ、コンピュータ処理により得られる利点を維持することができる建築積算システムおよびプログラムを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、壁、建具、基礎、屋根、およびその他の建築要素を備えた建築物についての見積書若しくはその一部、原価計算書若しくはその一部、またはその他の建築関連帳票若しくはその一部を作成するコンピュータにより構成された建築積算システムであって、
建築要素を構成する部材についての単価、および、当該部材の単体での長さ、面積、若しくは体積または当該部材が単体で構成することができる建築要素の長さ、面積、若しくは体積の最大値を示す部材単体仕様情報を、部材識別情報と関連付けて記憶する部材データ記憶手段と、
間取りを示す平面図またはその他の設計図の紙面上に描かれた建築要素を示す線を蛍光ペンでなぞって形成された蛍光ペン指示部分を含む状態で設計図をスキャンして得られた画像データを読み込み、蛍光ペン指示部分から、蛍光ペン指示部分と建築要素を示す線とが重なった重畳部分を抽出することにより、蛍光ペンによる指示図形の座標データを得る処理を実行する指示図形抽出手段と、
蛍光ペンによる指示図形としての換算情報取得用図形の座標データを、指示図形抽出手段から取得するとともに、この換算情報取得用図形の周辺に配置された数字をOCR処理で読み取り、取得した換算情報取得用図形の座標データおよびOCR処理による読取情報を用いて、設計図についての画像データの構成ドットの座標上の寸法と実際の寸法との換算情報を取得する換算情報自動取得処理を実行するか、または、設計図についての画像データを読み込んで設計図を画面表示するとともに、画面表示された設計図上でのユーザによる2点の座標位置の指定入力および指定された2点間の実際の寸法を示す数値の入力を受け付けることにより、設計図についての画面表示用の座標上の寸法と実際の寸法との換算情報の設定入力を受け付ける換算情報手動入力受付処理を実行する換算情報設定手段と、
部材データ記憶手段に記憶された部材の中からのユーザによる建築要素を構成するのに使用する部材の選択入力を受け付ける使用部材選択受付処理を実行し、さらに、蛍光ペンによる指示図形としての積算用図形の座標データを、指示図形抽出手段から取得する積算用図形取得処理を実行するか、またはこれらの使用部材選択受付処理および積算用図形取得処理に加え、この積算用図形取得処理で得られない非座標データとしてユーザによる建築要素に関する数値データの入力を受け付ける非座標データ受付処理を実行する建築要素登録・配置手段と、
この建築要素登録・配置手段により取得した積算用図形の座標データおよび換算情報設定手段により得られた換算情報を用いるか、または、これらの積算用図形の座標データおよび換算情報に加えて建築要素登録・配置手段により受け付けた非座標データを用いて、建築要素の実際の寸法による長さ、面積、若しくは体積を換算算出し、換算算出して得られた長さ、面積、若しくは体積を、使用する部材についての部材識別情報に関連付けられて部材データ記憶手段に記憶された部材単体仕様情報で除するかまたは除算と等価な演算を行うことにより、使用する部材についての数量を算出し、算出した数量に、部材データ記憶手段に記憶された単価を乗ずることにより、使用する部材についての金額を算出し、算出した数量および金額を用いて、見積書若しくはその一部、原価計算書若しくはその一部、またはその他の建築関連帳票若しくはその一部を作成する処理を実行する積算手段と
を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
ここで、本発明における「建築要素」は、「壁、建具、基礎、屋根、およびその他の」ものとしているが、建築基準法第2条等の法律で定められた用語の定義に従って建築物を要素分割したものではなく、見積書や原価計算書等の建築関連帳票を作成するのに適するように建築物を要素分割したものであり、前述した特許文献1と同様である。
【0011】
また、「指示図形抽出手段」における「蛍光ペン指示部分から、蛍光ペン指示部分と建築要素を示す線とが重なった重畳部分を抽出することにより、蛍光ペンによる指示図形の座標データを取得する」とは、蛍光ペン指示部分から重畳部分を抽出する処理を含んでいればよい趣旨であり、「蛍光ペンによる指示図形の座標データを取得する」にあたり、その他の処理を伴うことを排除するものではない。
【0012】
また、「換算情報設定手段」は、「換算情報自動取得処理」または「換算情報手動入力受付処理」を行う構成とされているが、これらの処理のうち一方だけを行う構成としてもよく、システムとして双方の処理を行うことができる構成としておき、ユーザの選択によるか、若しくは、状況に応じた(すなわち、蛍光ペンによる換算情報取得用図形の指示が行われているか否かに応じた)システムの自動選択により、いずれかの処理を行うようにしてもよい。なお、後者の「換算情報手動入力受付処理」は、前述した特許文献1と同様である。
【0013】
そして、前者の「換算情報自動取得処理」における「設計図についての画像データの構成ドットの座標上の寸法と実際の寸法との換算情報」の「画像データの構成ドットの座標上の寸法」は、設計図の紙面をスキャナでスキャンした際のドットで表した座標値に基づく寸法であり、「実際の寸法」は、設計図ではなく、実物の建築物の寸法である。
【0014】
また、後者の「換算情報手動入力受付処理」における「設計図についての画面表示用の座標上の寸法と実際の寸法との換算情報」の「画面表示用の座標上の寸法」は、画面上の座標データ(ピクセルまたは画素)に基づく寸法であり、「実際の寸法」は、設計図ではなく、実物の建築物の寸法である。なお、コンピュータ処理では、画像データを画面表示する際の倍率は、コンピュータ内部で認識されているため、「画面表示用の座標上の寸法」と「画像データの構成ドットの座標上の寸法」との関係は、コンピュータが認識していることから、結局、前者の「換算情報自動取得処理」と同様な換算情報を定めていることになる。
【0015】
さらに、使用する部材についての「数量」とは、見積書や原価計算書等の建築関連帳票に記載される部材点数や個数等をいう。
【0016】
そして、「部材単体仕様情報」は、本発明において「当該部材の単体での長さ、面積、若しくは体積」または「当該部材が単体で構成することができる建築要素の長さ、面積、若しくは体積の最大値」を示すものとして定義されているが、これは、上記の建築関連帳票に記載される「数量」を演算算出するために利用可能な数値のことである。後者の「当該部材が単体で構成することができる建築要素の…最大値」は、当該部材を集合させて建築要素を構成するにあたり(結果的に、1部材で構成することができる場合を含む。)、当該部材が単体(1部材)で受け持つことができる範囲の最大値という意味である。なお、全ての部材についての「部材単体仕様情報」が、これらの定義に該当するもの(サイズ情報)である必要はなく、少なくとも一部の部材についての「部材単体仕様情報」がサイズ情報に該当し、「数量」の演算算出に利用できるようになっていればよい。
【0017】
また、「建築要素登録・配置手段」における「積算用図形取得処理で得られない非座標データとしてユーザによる建築要素に関する数値データの入力を受け付ける非座標データ受付処理」については、非座標データが、数値入力された数値データ(高さ等)だけであることを意味するものではなく、非座標データとして、少なくとも数値データの入力を受け付けることができるようになっていればよい趣旨であり、システムで入力を受け付ける非座標データには、数値データの他に、テキストデータ(説明文等)や、選択情報等が含まれていてもよい。
【0018】
このような本発明の建築積算システムにおいては、指示図形抽出手段を備えているので、設計図の紙面上に描かれた建築要素を示す線を蛍光ペンでなぞって形成された蛍光ペン指示部分を含む状態で設計図をスキャンして得られた画像データを読み込み、蛍光ペン指示部分から、蛍光ペン指示部分と建築要素を示す線とが重なった重畳部分を抽出することにより、蛍光ペンによる指示図形の座標データを得ることが可能となる。
【0019】
従って、前述した特許文献1に記載した建築積算システムの場合とは異なり、コンピュータの画面上での描画操作を行わなくても、所望の図形を指示し、座標データを得ることが可能となる。このため、コンピュータ処理により得られる利点を損なうことなく、コンピュータ作業が人にもたらす負の側面の影響を緩和することが可能となり、これにより前記目的が達成される。
【0020】
<指示図形抽出手段により、蛍光ペン指示部分フィット線と、重畳部分フィット線とを用いて、最終的なフィット線を決定する構成>
【0021】
また、上述した本発明の建築積算システムにおいて、
指示図形抽出手段は、
画像データから、蛍光ペンによる指示図形として、重畳部分を含む蛍光ペン指示部分を抽出する処理を実行する蛍光ペン指示部分抽出手段と、
この蛍光ペン指示部分抽出手段により抽出した指示図形としての蛍光ペン指示部分の屈折部を決定し、決定した屈折部で、重畳部分を含む蛍光ペン指示部分を分断することにより、複数の線分を形成する処理を実行する図形分断手段と、
この図形分断手段により形成した複数の線分の各々について、重畳部分を含む蛍光ペン指示部分の構成ドットの座標データを用いて、直線フィッティングを行うことにより、蛍光ペン指示部分フィット線を求めるとともに、重畳部分の構成ドットの座標データを用いて、直線フィッティングを行うことにより、重畳部分フィット線を求め、求めた蛍光ペン指示部分フィット線および重畳部分フィット線を用いて、複数の線分の各々についての最終的なフィット線を決定する処理を実行するフィッティング手段と、
このフィッティング手段により決定した最終的なフィット線どうしの交点を求めることにより、蛍光ペンによる指示図形としての積算用図形の座標データを決定する処理を実行する積算用図形決定手段と
を含む構成とすることができる。
【0022】
このように指示図形抽出手段により、蛍光ペン指示部分フィット線と、重畳部分フィット線とを用いて、最終的なフィット線を決定する構成とした場合には、建築要素を示す線が描かれた設計図の性質に応じた指示図形の抽出処理を実現することが可能となる。すなわち、設計図では、各建築要素が個別に1つずつ描かれているわけではなく、通常、複数の建築要素が描かれているので、ユーザが、蛍光ペンを用いて自分の意図する図形(自分の意図する建築要素を示す線)をなぞったとしても、蛍光ペン指示部分の中には、不要な線(例えば、自分の意図する建築要素を示す線と交差する線や、自分の意図する建築要素を示す線を延長した線等)が、部分的に混在する状態となる。従って、蛍光ペン指示部分から抽出した重畳部分は、必ずしもユーザの意図する建築要素を示す線になるわけではない。この意味で、蛍光ペン指示部分は、重畳部分よりも太くなるものの、蛍光ペン指示部分の方が、重畳部分よりも、全体としてユーザの描画意図を反映しているともいえる。このため、蛍光ペン指示部分フィット線を用いることにより、ユーザの描画意図を確認しながら、最終的なフィット線を決定することが可能となる。
【0023】
<指示図形抽出手段が、換算情報取得用図形決定手段と、位置合わせ用図形決定手段とを備えた構成>
【0024】
さらに、上述した指示図形抽出手段により、蛍光ペン指示部分フィット線と、重畳部分フィット線とを用いて、最終的なフィット線を決定する構成において、
指示図形抽出手段は、
蛍光ペンによる指示図形としての換算情報取得用図形について、フィッティング手段により決定した最終的なフィット線どうしの交点を求め、求めた交点の座標データを換算情報設定手段に渡す処理を実行する換算情報取得用図形決定手段と、
蛍光ペンによる指示図形としての位置合わせ用図形について、フィッティング手段により決定した最終的なフィット線どうしの交点を求め、求めた交点の座標データを、異なる内容の複数の設計図の各々に対応する複数の画像データどうし、または同じ内容の設計図について異なる内容の蛍光ペン作業を行った状態の複数の設計図の各々に対応する複数の画像データどうしの位置合わせ用の基準点の座標データとして、換算情報設定手段に渡す処理を実行する位置合わせ用図形決定手段と
を含む構成としてもよい。
【0025】
このように指示図形抽出手段を、換算情報取得用図形決定手段と、位置合わせ用図形決定手段とを備えた構成とした場合には、積算用図形の場合と同様なアルゴリズムで、換算情報取得用図形および位置合わせ用図形を抽出し、換算情報となる座標データ、および位置合わせ用の基準点の座標データを得ることが可能となる。
【0026】
<フィッティング手段により、間引き処理を行う構成>
【0027】
そして、前述した指示図形抽出手段により、蛍光ペン指示部分フィット線と、重畳部分フィット線とを用いて、最終的なフィット線を決定する構成において、
フィッティング手段は、
蛍光ペン指示部分フィット線または修正前の重畳部分フィット線と交差する方向に延びる切断線により、重畳部分を複数の区画に分割し、各区画に含まれる構成ドットの数が、予め定められた閾値以上または閾値を超える場合に、当該区画の構成ドットを取り除く間引き処理を行うか、または、蛍光ペン指示部分フィット線または修正前の重畳部分フィット線に沿う方向に移動する移動区画を形成し、この移動区画を移動させながら、移動区画に含まれる構成ドットの数が、予め定められた閾値以上または閾値を超えるか否かを判断し、閾値以上または閾値を超えた場合の移動位置における当該移動区画の構成ドットを取り除く間引き処理を行い、間引き処理後の重畳部分の構成ドットの座標データを用いて、直線フィッティングを行うことにより、修正後の重畳部分フィット線を求める処理を実行する構成としてもよい。
【0028】
このようにフィッティング手段により間引き処理を行う構成とした場合には、重畳部分に含まれる不要な線を取り除いて、修正後の重畳部分フィット線を求めることができるので、より適切な重畳部分フィット線とすることができる。なお、フィッティングを行うので、間引き処理で構成ドットが減っても影響はない。また、重畳部分に含まれる不要な線には、ユーザの意図する建築要素を示す線を延長した線もあるが、延長した線は、残ったとしても、フィッティングに影響はない。
【0029】
<図形分断手段により、極座標を用いて蛍光ペン指示部分の屈折部を決定する構成>
【0030】
また、前述した指示図形抽出手段により、蛍光ペン指示部分フィット線と、重畳部分フィット線とを用いて、最終的なフィット線を決定する構成において、
図形分断手段は、
蛍光ペンによる指示図形としての積算用図形についての蛍光ペン指示部分の構成ドットの座標データを、蛍光ペン指示部分の重心点またはその他の指示図形代表点を中心とする極座標に変換し、指示図形代表点から蛍光ペン指示部分の各構成ドットまでの距離を用いて蛍光ペン指示部分についての極大点若しくは極小点、または傾きの変化が閾値以上または閾値を超える勾配急変点の部分を求め、求めた極大点若しくは極小点または勾配急変点の部分の中から、蛍光ペン指示部分の屈折部を決定する処理を実行する構成としてもよい。
【0031】
このように図形分断手段により極座標を用いて蛍光ペン指示部分の屈折部を決定する構成とした場合には、蛍光ペン指示部分が伸びる方向と交差する切断線により、適切に蛍光ペン指示部分を区切って処理単位を形成し、屈折部を決定することが可能となる。つまり、蛍光ペン指示部分抽出手段により蛍光ペン指示部分を抽出した段階では、どのような形状の指示図形であるのか(例えば、何角形の指示図形であるのか等)、あるいはどのような姿勢でその指示図形が存在するのかが不明であるため、適切な処理単位を形成しにくいが、重心点等の指示図形代表点を中心とする極座標を用いることにより、適切な処理単位を容易に形成することが可能となる。
【0032】
<プログラムの発明>
【0033】
本発明は、以上に述べた建築積算システムとして、コンピュータを機能させるためのものである。
【0034】
なお、上記のプログラムまたはその一部は、例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、USBメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)等の各種の記録媒体に記録して保存や流通等させることが可能であるとともに、例えば、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、メトロポリタン・エリア・ネットワーク(MAN)、ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネット、エクストラネット等の有線ネットワーク、あるいは無線通信ネットワーク、さらにはこれらの組合せ等の伝送媒体を用いて伝送することが可能であり、また、搬送波に載せて搬送することも可能である。さらに、上記のプログラムは、他のプログラムの一部分であってもよく、あるいは別個のプログラムと共に記録媒体に記録されていてもよい。
【発明の効果】
【0035】
以上に述べたように本発明によれば、蛍光ペン指示部分を含む状態で設計図をスキャンして得られた画像データを読み込み、蛍光ペン指示部分から、建築要素を示す線との重畳部分を抽出することにより、ユーザの指示図形を抽出するので、コンピュータの画面上での描画操作を行わなくても、所望の図形を指示し、座標データを得ることができるため、コンピュータ処理により得られる利点を損なうことなく、コンピュータ作業が人にもたらす負の側面の影響を緩和することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の第1実施形態の建築積算システムの全体構成図。
図2】第1実施形態の記憶手段の構成図。
図3】第1実施形態の指示図形抽出手段の構成図。
図4】第1実施形態の蛍光ペンによる指示図形の状態の説明図。
図5】第1実施形態の建築積算システムによる帳票作成処理の流れを示すフローチャートの図。
図6】第1実施形態の建築積算システムによる帳票作成処理の流れを示すフローチャートの続きの図。
図7】第1実施形態の蛍光ペン作業の説明図。
図8】第1実施形態の換算情報取得用図形の説明図。
図9】第1実施形態の位置合わせ用図形の説明図。
図10】第1実施形態の指示図形の抽出処理の説明図。
図11】第1実施形態の図形分断処理(屈折部の決定処理)の第1の説明図。
図12】第1実施形態の図形分断処理(屈折部の決定処理)の第2の説明図。
図13】第1実施形態の図形分断処理(屈折部の決定処理)の第3の説明図。
図14】第1実施形態の図形分断処理(屈折部の決定処理)の第4の説明図。
図15】第1実施形態の図形分断処理(屈折部の決定処理)の第5の説明図。
図16】第1実施形態の図形分断処理(屈折部の決定処理)の第6の説明図。
図17】第1実施形態の図形分断処理(屈折部の決定処理)の第7の説明図。
図18】第1実施形態のフィッティング処理および間引き処理の説明図。
図19】第1実施形態の特殊な処理のうちの微細な段差の処理の説明図。
図20】第1実施形態の特殊な処理のうちの180度に近い角度の屈折部の処理の説明図。
図21】第1実施形態の特殊な処理のうちの曲線部分のある指示図形の処理の説明図。
図22】第1実施形態の特殊な処理のうちの固定形状の建築要素を指示する処理の説明図。
図23】第1実施形態の特殊な処理のうちの配置位置の重なる建築要素を一括指示する処理の説明図。
図24】第1実施形態の各種の登録画面のうちの区画登録画面の例示図。
図25】第1実施形態の各種の配置画面のうちの区画配置画面の例示図。
図26】本発明の第2実施形態の図形分断処理(屈折部の決定処理)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。前述した特許文献1に記載された本願出願人による現行の建築積算システムでは、コンピュータの画面に表示された設計図上で、マウス等のポインティングデバイスを用いて建築要素を示す線をなぞる描画操作を行うことにより、その後の積算処理に必要な座標データを獲得していたが、本発明の各実施形態の建築積算システムでは、このようなコンピュータの画面上での描画操作に代えて、設計図の紙面上で、蛍光ペンを用いて建築要素を示す線をなぞる作業を行い、これをスキャンして得られた画像データについてコンピュータ処理を行うことにより、その後の積算処理に必要な座標データを獲得する点が異なる。従って、その他の機能は、前述した特許文献1に記載された現行の建築積算システムと同じでよい。
【0038】
[第1実施形態]
【0039】
図1には、第1実施形態の建築積算システム10の全体構成が示されている。図2には、記憶手段70の構成が示され、図3には、指示図形抽出手段36の構成が示され、図4には、蛍光ペンにより指示された図形の状態が示されている。また、図5および図6には、建築積算システム10による帳票作成処理の流れがフローチャートで示されている。さらに、図7には、蛍光ペン作業、図8には、換算情報取得用図形、図9には、位置合わせ用図形、図10には、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aによる指示図形の抽出処理、図11図17には、図形分断手段36Bによる屈折部の決定処理、図18には、フィッティング手段36Cによるフィッティング処理および間引き処理、図19図23には、特殊な処理についての各説明図が示されている。そして、図24には、登録画面の1つである区画登録画面290の一例が示され、図25には、配置画面の1つである区画配置画面300の一例が示されている。
【0040】
<建築積算システム10の全体構成>
【0041】
図1において、建築積算システム10は、コンピュータにより構成されたシステム本体20と、この周辺設備である液晶画面等を有する表示手段91、マウスやキーボード等の入力手段92、印刷装置93、およびスキャナ94とを備えて構成されている。なお、コンピュータには、タブレット端末やスマートフォン等の携帯機器も含まれる。
【0042】
システム本体20は、帳票作成に関する各種処理を実行する処理手段20Aと、この処理手段20Aに接続されて帳票作成処理に必要な各種のデータを記憶する記憶手段70とを備えて構成されている。
【0043】
処理手段20Aは、各物件(建築物)に共通の処理を行う手段として、部材データ登録手段21と、会社情報登録手段22と、ユーザ登録手段23と、データ管理手段24と、取引先登録手段25とを含むとともに、物件(建築物)毎の個別の処理を行う手段として、物件選択手段31と、発注先登録手段32と、部材データ入出力手段33と、建築概要入力手段34と、スキャン手段35と、指示図形抽出手段36と、換算情報設定手段40と、建築要素登録・配置手段50と、積算手段60とを含んで構成されている。このうち、前述した特許文献1に記載された現行システムと異なる機能を有するのは、スキャン手段35、指示図形抽出手段36、換算情報設定手段40、および建築要素登録・配置手段50である。
【0044】
この処理手段20Aに含まれる各手段21~62は、システム本体20を構成するコンピュータの内部に設けられた中央演算処理装置(CPU)、およびこのCPUの動作手順を規定する1つまたは複数のプログラムにより実現される。各手段21~62の詳細は、後述する。
【0045】
また、記憶手段70は、部材データ記憶手段71と、会社情報記憶手段72と、ユーザ情報記憶手段73と、取引先情報記憶手段74と、発注先記憶手段75と、建築概要記憶手段76と、画像データ記憶手段77と、換算情報記憶手段78と、配置データ記憶手段79と、集計データ記憶手段80とを含んで構成されている。このうち、前述した特許文献1に記載された現行システムと異なる内容のデータを記憶するのは、画像データ記憶手段77、換算情報記憶手段78、および配置データ記憶手段79である。
【0046】
この記憶手段70は、データの保持形態としては、例えばCSVファイル等のファイルとしてもよく、データベースとしてもよい。また、この記憶手段70を構成する各記憶手段71~80は、1つのファイルや1つのデータベースにまとめてもよく、幾つかのファイルや幾つかのデータベースに分散させてもよい。ハードウェアとしては、例えばHDDやSSD等により好適に実現されるが、記憶容量やアクセス速度等に問題が生じない範囲であれば、例えば、USBメモリやDVD等の記録媒体を採用してもよい。各記憶手段71~80の詳細は、後述する。
【0047】
<部材データ登録手段21、会社情報登録手段22、ユーザ登録手段23、データ管理手段24、取引先登録手段25の構成>
【0048】
部材データ登録手段21は、部材登録画面(不図示)でユーザの操作を受け付け、ユーザにより入力された部材データ(帳票作成処理に使用され得る複数の部材についての部材データからなる部材データ群の全部または一部)を、部材データ記憶手段71(図2参照)に記憶させる部材登録処理を実行するものである。また、部材データ記憶手段71に記憶させる部材データは、この部材データ登録手段21により入力して登録する場合の他、別のコンピュータで作成したものを読み込んでもよい。
【0049】
ここで、部材データには、部材名称(部材識別情報)、見積単価、実行単価(原価)等の他に、部材単体仕様情報(部材単体での長さ、面積、体積等)が含まれる(図2参照)。また、部材データには、物体としての部材(建築要素を構成する部材)についての部材データの他、費用を発生させる作業を部材とみなすことにより定められた仮想部材(建築要素を構成しない部材)についての部材データもある。なお、部材データの詳細については、部材データ記憶手段71の説明で後述する。
【0050】
会社情報登録手段22は、会社情報登録画面(不図示)でユーザの操作を受け付け、ユーザにより入力された会社情報を、会社情報記憶手段72(図2参照)に記憶させる処理を実行するものである。なお、登録する会社情報の詳細については、会社情報記憶手段72の説明で後述する。
【0051】
ユーザ登録手段23は、ユーザ登録画面(不図示)でユーザの操作を受け付け、ユーザにより入力されたユーザの権限(入力操作しているユーザが他のユーザに付与する権限)に関する情報を、ユーザ情報記憶手段73(図2参照)に記憶させる処理を実行するものである。なお、登録するユーザ権限に関する情報の詳細については、ユーザ情報記憶手段73の説明で後述する。
【0052】
データ管理手段24は、データ管理画面(不図示)でユーザの操作を受け付け、作成中または作成済の各物件(各建築物)、あるいは新規物件に関するデータ(記憶手段70に記憶されたデータの一部)のバックアップ、削除、新規作成等の処理を実行するものである。各物件(各建築物)のデータが、ファイルに記憶されている場合には、ファイルのバックアップ、削除、新規作成等の処理を実行し、データベースに記憶されている場合には、該当するテーブルやレコードのバックアップ、削除、新規作成等の処理を実行する。
【0053】
取引先登録手段25は、取引先登録画面(不図示)でユーザの操作を受け付け、ユーザにより入力された取引先(仕入先)の業者の情報を、取引先情報記憶手段74(図2参照)に記憶させる処理を実行するものである。なお、登録する取引先(仕入先)の業者の情報の詳細については、取引先情報記憶手段74の説明で後述する。
【0054】
<物件選択手段31、発注先登録手段32、部材データ入出力手段33、建築概要入力手段34の構成>
【0055】
物件選択手段31は、物件選択画面(不図示)でユーザの操作を受け付け、これから帳票作成に関する作業を開始する物件(建築物)を選択する処理を実行するものである。具体的には、物件選択手段31は、記憶手段70に記憶されたデータのうちの各物件に関するデータが、物件毎のファイルに記憶されている場合には、選択されたファイルを読み込む処理、または選択されたファイルの名称およびその格納場所(パス)をメモリ(記憶手段70や主メモリ)に記憶させる処理を実行する。また、物件選択手段31は、記憶手段70に記憶されたデータのうちの各物件に関するデータが、データベースに記憶されている場合には、選択された物件(建築物)についての物件名(物件識別情報)をメモリ(記憶手段70や主メモリ)に記憶させる処理を実行する。
【0056】
発注先登録手段32は、発注先登録画面(不図示)でユーザの操作を受け付け、ユーザにより入力された工事(科目)別の発注先(各工事を発注する取引先(仕入先)の業者)の情報を、発注先記憶手段75(図2参照)に記憶させる処理を実行するものである。なお、登録する発注先に関する情報の詳細については、発注先記憶手段75の説明で後述する。
【0057】
部材データ入出力手段33は、部材データ入出力画面(不図示)でユーザの操作を受け付けて、部材データ群の入出力処理を実行するものである。具体的には、部材データ入出力手段33は、部材データ記憶手段71が例えばCSVファイル等のファイルである場合には、ファイルをUSBメモリやメモリカード等の外部記録媒体(通信回線で接続された別のコンピュータを含む。)からシステム本体20の所定の格納場所(本システムの構成プログラムが主にアクセスするフォルダ)に読み込む処理、外部記録媒体から別の格納場所(保存用、退避用のフォルダ)に読み込む処理、別の格納場所から所定の格納場所へ移動またはコピーする処理、所定の格納場所から別の格納場所へ移動またはコピーする処理、所定の格納場所から外部記録媒体へ書き込む処理、別の格納場所から外部記録媒体へ書き込む処理等を実行する。また、部材データ入出力手段33は、複数のファイル(複数の部材データ群)がある場合に、使用するファイル(部材データ群)を選択する処理も実行する。この際、所定の格納場所に複数のファイルがある場合に、そこから使用するファイルを選択する構成としてもよく、所定の格納場所や別の格納場所の区別なく、いずれかの格納場所に記憶されたファイルのパスを指定して、使用するファイルとする構成としてもよい。
【0058】
さらに、部材データ入出力手段33は、部材データ記憶手段71がデータベースの場合には、部材データ群を外部記録媒体(CSVファイル等のファイルに格納されている場合を含む。)から読み込んでデータベースに格納する処理、データベースから外部記録媒体に書き込んで保存(CSVファイル等のファイルに格納する場合を含む。)する処理等を実行する。また、部材データ入出力手段33は、データベースに複数の部材データ群が記憶されている場合に、使用する部材データ群を選択する処理も実行する。
【0059】
建築概要入力手段34は、建築概要入力画面(不図示)でユーザの操作を受け付け、ユーザにより入力された建築概要を、建築概要記憶手段76(図2参照)に記憶させる処理を実行するものである。なお、入力する建築概要の詳細については、建築概要記憶手段76の説明で後述する。入力する建築概要には、例えば、1階高さ、2階高さ、3階高さ、基礎高さ等が含まれる。これらの1階高さ等のデータを、本第1実施形態のように積算手段60による積算処理で使用する場合には、これらの1階高さ等のデータは、本発明の「建築要素登録・配置手段」(請求項に記載された「建築要素登録・配置手段」)における「非座標データ」に相当するものとなるので、本発明の「建築要素登録・配置手段」は、本第1実施形態における建築要素登録・配置手段50およびこの建築概要入力手段34の一部により構成されることになる。一方、これらの1階高さ等のデータの入力を、建築概要入力手段34ではなく、建築要素登録・配置手段50により、建築要素の登録や配置の際に受け付けてもよく、その場合には、本発明の「建築要素登録・配置手段」は、建築要素登録・配置手段50だけにより構成されることになる。また、建築要素登録・配置手段50、および建築概要入力手段34以外の手段により、本発明の「建築要素登録・配置手段」を構成してもよく、積算演算に必要な「非座標データ」の入力を、どのような名称を付した手段で受け付けるかは、本第1実施形態における各手段の命名上の問題に過ぎない。
【0060】
<スキャン手段35の構成:図4図7図8図9参照>
【0061】
スキャン手段35は、蛍光ペンによる指示図形を含む状態の設計図をカラースキャンし、カラースキャンして得られたカラーの画像データを、画像データ記憶手段77に記憶させる処理を実行するものである。
【0062】
このスキャンを行う前に、ユーザは、建築要素を示す線が描かれた設計図の紙面上で、蛍光ペンを用いて、自分が意図する建築要素を示す線をなぞることにより、自分が意図する図形を指示する作業を行う。自分が意図する図形とは、例えば、ユーザが、設計図の紙面上において、部屋(子供部屋、洋室、和室等)の区画を指示しようと思っているときは、その部屋の区画を示す図形であり、基礎を指示しようと思っているときは、その基礎を示す図形であり、それらを「指示図形」と呼ぶ。そして、本願では、蛍光ペンにより描かれた図形を「指示図形」と呼ぶ場合と、蛍光ペンによりなぞられた建築要素を示す線により形成された図形(蛍光ペン作業を行う前から描かれている図形)を「指示図形」と呼ぶ場合と、これらのいずれでもなく、線の太さが観念されない(限りなくゼロに近い)状態でそこに存在すべき真正な図形(建築要素を示す線には太さがあり、また、線のかすれ、曲がり、歪み等が生じ得るが、そのような太さ、かすれ、曲がり、歪み等を取り除いた、あるべき姿の図形)を「指示図形」と呼ぶ場合とがあるが、各処理を行う段階では、処理対象は定まっているので、いずれを指しているのかは処理毎に明確になっている。なお、3番目の真正な図形は、観念的なものではなく、データとして正確に捉えることができる図形を意味する。例えば、(100,100)→(200,100)→(200,200)→(100,200)→(100,100)という(x,y)座標を辿ると、正方形を描くことができるが、これを画面表示し、あるいは印刷すると、肉眼で見える線で正方形が表現されるので、線の太さという要素が入り込む。従って、このような線の太さという要素を排除し、座標データで捉えた図形についても、「指示図形」と呼ぶという意味である。フィッティングにより線を正確に捉える(線で表現されているものを捉える)処理を行うことから、それぞれの処理段階で、「指示図形」の意味するものが変わってくるということである。
【0063】
図4において、蛍光ペン100により、設計図上に描かれた建築要素を示す線101のうち、ユーザが意図する建築要素を示す線101Aをなぞる。蛍光ペン100により描かれる線の幅(太さ)W1は、建築要素を示す線101の幅(太さ)W2よりも太いので、ユーザが、建築要素を示す線101のうち、どの部分をなぞったのかは、肉眼でも、そしてコンピュータ処理でも把握することができるが、その代わりに、不要な線101Bまで蛍光ペン100でなぞってしまうことになる。従って、建築要素を示す線101には、ユーザが意図する建築要素を示す線101Aと、蛍光ペン100でなぞってしまった不要な線101Bと、それ以外の線である蛍光ペン100でなぞられなかった線101Cとが存在する状態となる。
【0064】
ここで、用語を定義すると、蛍光ペン100で描かれた線の部分は、蛍光ペン指示部分102である。この蛍光ペン指示部分102の中には、建築要素を示す線101との重畳部分103(正確に言えば、蛍光ペン指示部分102と、建築要素を示す線101との重畳部分103)が含まれている。この重畳部分103は、ユーザが意図する建築要素を示す線101Aと、蛍光ペン100でなぞってしまった不要な線101Bとにより構成される。そして、重畳部分103の外側に、蛍光色部分104がある。従って、蛍光ペン指示部分102は、重畳部分103と、蛍光色部分104とにより構成される。
【0065】
なお、300dpiでスキャンしたと仮定すると、1インチ=25.4mmなので、ドット密度は、300dpi=300/25.4=11.8ドット/mmであるから、蛍光ペン100により描かれる線の幅W1=2mmであると仮定すると、その幅W1は、24ドット程度となり、建築要素を示す線101(設計図の元の線)の幅W2=0.5mmであると仮定すると、その幅W2は、6ドット程度となる。
【0066】
図7において、蛍光ペン100によるユーザの指示作業(蛍光ペン作業)を行う際には、1つの紙の設計図110をコピーし、複数枚の紙の設計図110A,110B,110C,…を作成する。この際、コピーの倍率は、原則として全て同じである。つまり、設計図110A,110B,110C,…の全てを100%の倍率で作成するか、あるいは全てを例えば70%等の倍率で統一して作成する。
【0067】
また、コピーをする前に、建築要素を示す線101と同じ色(通常は、黒色)で、位置合わせ用図形112を描いておく。位置合わせ用図形の詳細は、図9を用いて後述する。この位置合わせ用図形112は、最初から設計図110に描かれている線を利用して用意してもよいが、設計図110の中に、位置合わせ用図形112として利用できる適切な線がない場合には、ユーザが自ら定規等を用いて位置合わせ用図形112を描いて用意する。前述した特許文献1では、1階の設計図と、2階の設計図との位置合わせに言及しているが、本発明では、1階の設計図がコピーされて複数枚になり(2階以上の階の設計図も同様)、それらのコピーされた設計図が、1枚ずつスキャンされるので、コピーされて複数枚になった設計図どうしの位置合わせも必要になるからである。
【0068】
さらに、コピーをする前に、設計図110の中に、換算情報取得用図形113およびその周辺に換算情報取得用の数字114が描かれていることを確認する。換算情報取得用図形の詳細は、図8を用いて後述する。設計図110の性質上、これらの換算情報取得用図形113および数字114がないことは、通常あり得ないが、適切な位置にない場合は、ユーザが、自ら定規等を用いて換算情報取得用図形113および数字114を描いて用意してもよい。なお、コピーをする前に、換算情報取得用図形113および換算情報取得用の数字114が描かれている必要があるのは、コピー後の全ての設計図110A,110B,110C,…にそれらが描かれている必要があるからであり、これは、各設計図110A,110B,110C,…のスキャンは個別に行われるので、換算情報設計手段40により回転補正する際の回転角度が、各設計図110A,110B,110C,…で異なるからである。
【0069】
それから、ユーザは、各設計図110A,110B,110C,…において、蛍光ペン作業を行う。図7の例では、設計図110Aには、ユーザが蛍光ペン100を用いて建築要素を示す線101(図4参照)をなぞることにより形成された指示図形として、位置合わせ用図形112Aと、換算情報取得用図形113Aと、2つの積算用図形115A,116Aとが描かれている。2つの積算用図形115A,116Aは、例えば、部屋の区画を示す図形である。また、換算情報取得用図形113Aの近傍には、蛍光ペン100で塗られた換算情報取得用の数字114が描かれている。本第1実施形態では、位置合わせ用図形112Aの色、換算情報取得用図形113Aの色、数字114Aを塗った色は、2つの積算用図形115A,116Aの色とは異なる色を使う取り決めとしている。なお、位置合わせ用図形112Aの色、換算情報取得用図形113Aの色、数字114Aを塗った色は、全部、同じ色でもよく、異なる色でもよい。また、2つの積算用図形115A,116Aどうしの色も、同じ色でもよく、異なる色でもよい。
【0070】
また、設計図110Bも同様であり、指示図形として、位置合わせ用図形112Bと、換算情報取得用図形113Bと、2つの積算用図形115B,116Bとが描かれ、また、換算情報取得用図形113Bの近傍には、蛍光ペン100で塗られた換算情報取得用の数字114Bが描かれている。2つの積算用図形115B,116Bは、例えば、部屋の区画を示す図形である。
【0071】
さらに、設計図110Cも同様であり、指示図形として、位置合わせ用図形112Cと、換算情報取得用図形113Cと、1つの積算用図形115Cとが描かれ、また、換算情報取得用図形113Cの近傍には、蛍光ペン100で塗られた換算情報取得用の数字114Cが描かれている。積算用図形115Cは、例えば、基礎を示す図形である。
【0072】
なお、位置合わせ用図形112A,112B,112C、換算情報取得用図形113A,113B,113Cおよび換算情報取得用の数字114A,114B,114Cについての蛍光ペン100による着色作業は、コピーしてから行ってもよいが、コピーする前の設計図110において着色作業を行っておき、それをカラーコピーして複数枚の設計図110A,110B,110C,…を作成してもよく、後者の場合には、蛍光ペン作業の手間が軽減される。
【0073】
図8において、重畳部分を含む蛍光ペン指示部分で形成された換算情報取得用図形120は、スキャン後の設計図を画面表示した際に水平に配置されるべき建築要素を示す線121と、この水平に配置されるべき線121に交差する2本の線122,123とを、蛍光ペン100でなぞって形成されたコの字型の指示図形である。この場合の建築要素を示す線121は、建築要素自体を示す線でもよく、建築要素の寸法を示すための寸法線でもよく、後者の寸法線の場合は、矢印の線でもよい。また、交差する2本の線122,123も、建築要素自体を示す線でもよく、建築要素の寸法を示すための寸法補助線でもよく、通常は、線121に直交するが、後者の寸法補助線の場合は、斜めに引き出す寸法補助線もあるため、直角以外の角度で交差していてもよい。そして、水平に配置されるべき線121と、これに交差する2本の線122,123の各々との交点124,125の座標データが、換算情報を得るためのデータ、および回転補正(水平に配置されるべき線を水平にする回転補正)を行うためのデータとして使用される。
【0074】
また、水平に配置されるべき線121の近傍には、建築物の実際の寸法を示す数字126(図8の例では「12740」)が記載されているので、その数字126の上部および周辺部分を蛍光ペン100で塗って形成された換算情報取得用の数字の部分127が描かれている。
【0075】
図9において、重畳部分を含む蛍光ペン指示部分で形成された位置合わせ用図形130(130A,130B,130C)は、図9の(A)の場合には、L字状に交差する2本の線131A,132Aを、蛍光ペン100でなぞって形成されたL字型の指示図形であり、図9の(B)の場合には、十字状に交差する2本の線131B,132Bを、蛍光ペン100でなぞって形成されたL字型の指示図形であり、図9の(C)の場合には、T字状に交差する2本の線131C,132Cを、蛍光ペン100でなぞって形成されたL字型の指示図形である。そして、2本の線の交点133が、位置合わせ用の基準点となり、図9の(A)の場合には、2本の線131A,132Aの交点133A、図9の(B)の場合には、2本の線131B,132Bの交点133B、図9の(C)の場合には、2本の線131C,132Cの交点133Cの座標データが、位置合わせ用の基準点の座標データとして用いられる。なお、図9の(A)、(B)、(C)は、いずれでもよいという趣旨で記載しているので、これらを混在させてよいという趣旨ではなく、位置合わせ用図形130は、コピー元の設計図に描いておき、それをコピーして複数枚の設計図を作成することから、当然、全ての設計図において、同じ位置合わせ用図形130が描かれていることになる。
【0076】
<指示図形抽出手段36の構成:図3参照>
【0077】
指示図形抽出手段36は、設計図(間取りを示す平面図、立面図等)の紙面上に描かれた建築要素を示す線101を蛍光ペン100でなぞって形成された蛍光ペン指示部分102を含む状態で設計図をスキャンして得られた画像データを読み込み、蛍光ペン指示部分102から、蛍光ペン指示部分102と建築要素を示す線101とが重なった重畳部分103を抽出することにより、蛍光ペン100による指示図形の座標データを取得する処理を実行するものである。
【0078】
図3において、指示図形抽出手段36は、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aと、図形分断手段36Bと、フィッティング手段36Cと、積算用図形決定手段36Dと、換算情報取得用図形決定手段36Eと、位置合わせ用図形決定手段36Fとを含んで構成されている。
【0079】
<指示図形抽出手段36/蛍光ペン指示部分抽出手段36Aの構成:図10参照>
【0080】
蛍光ペン指示部分抽出手段36Aは、画像データから、蛍光ペン100による指示図形として、重畳部分103を含む蛍光ペン指示部分102(図4参照)を抽出する処理を実行するものである。ここで、指示図形には、積算用図形と、換算情報取得用図形と、位置合わせ用図形とがある。このうち、換算情報取得用図形および位置合わせ用図形は、前述したように予め取り決められた形状であるが(図8図9参照)、積算用図形は、任意の形状であり、例えば、正方形、長方形、台形、凹形状、凸形状等の閉鎖型の形状、コの字形状、L字形状、V字形状、Z字形状等の開放型の形状、1本の直線(但し、有限の長さの線分)等が含まれる。
【0081】
また、換算情報取得用図形の近傍にある換算情報取得用の数字を蛍光ペン100で塗った部分は、指示図形ではないが、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aは、この換算情報取得用の数字を蛍光ペン100で塗った部分も抽出する。従って、データの整理・保存を行うときには、この換算情報取得用の数字の部分にも、指示図形とみなして、図形識別情報(画像ファイル内の通番)および図形種別識別情報(積算用図形、換算情報取得用図形、位置合わせ用図形、換算情報取得用の数字の部分の別)を付与する。なお、本願の説明では、指示図形と、換算情報取得用の数字の部分とを合わせて「指示図形等」と呼ぶことがある。
【0082】
本第1実施形態では、前述したように、積算用図形の色と、換算情報取得用図形およびその近傍の換算情報取得用の数字の部分並びに位置合わせ用図形の色とは、異なる色とする取り決めとされているが、同じ色とすることを許容してもよく、その場合には、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aにより、抽出した指示図形や数字の部分についての形状や大きさから、換算情報取得用図形、換算情報取得用の数字の部分、位置合わせ用図形であることを自動認識するようにしてもよく、あるいは、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aにより抽出した複数の指示図形や数字の部分の中から、ユーザが、換算情報取得用図形、位置合わせ用図形、数字の部分を選択するようにしてもよい。このユーザ選択では、例えば、抽出した各指示図形や数字の部分を、画面上で1つずつ順番に赤色等で色付け表示(この色付け表示の色は、蛍光ペン100の色とは異なる。)または点滅表示し、該当する指示図形や数字の部分に対して色付け表示または点滅表示が行われたときに、ユーザが、色付け表示中または点滅表示中の対象が換算情報取得用図形である、位置合わせ用図形である、あるいは換算情報取得用の数字の部分であるという選択を行うようにする。図7の設計図110Aをスキャンして画面表示した場合であれば、ユーザは、例えば、位置合わせ用図形112A、換算情報取得用図形113A、換算情報取得用の数字114の部分、積算用図形115A、積算用図形116Aの順に、色付け表示または点滅表示の対象を送っていく操作を行うことができ、色付け表示中または点滅表示中の対象が、何であるかという選択を行うことができる。
【0083】
蛍光ペン指示部分抽出手段36Aは、先ず、画像データに含まれる蛍光ペン指示部分102、すなわち重畳部分103および蛍光色部分104(図4参照)を、画像データの各構成ドットの色のデータを用いて抽出する。蛍光ペン100の色には、黄色、水色、緑色、茶色、紫色、橙色等があるので、蛍光色部分104として、それらの全ての色の構成ドットを抽出する。
【0084】
この際、重畳部分103の色と、建築要素を示す線101(蛍光ペン100でなぞられなかった線101C)の色との区別が付く場合には、重畳部分103の抽出では、重畳部分103の色のデータを有する構成ドットを抽出すればよい。一方、重畳部分103の色と、建築要素を示す線101(蛍光ペン100でなぞられなかった線101C)の色との区別が付かない場合、すなわち、重畳部分103の色が、元々描かれていた建築要素を示す線101の色(設計図の元の線の色)と同じであるか、または同じとみなされる場合には、重畳部分103の抽出では、建築要素を示す線101の色の部分(101A,101B,101Cの全部)のうち、蛍光色部分104に挟まれている部分を抽出する。
【0085】
なお、後者のように区別が付かない場合に、建築要素を示す線101の色の部分のうち、蛍光色部分104に挟まれている部分を抽出するのではなく、建築要素を示す線101の色の部分(101A,101B,101Cの全部)のうち、蛍光色部分104の近傍部分を抽出してもよい。近傍部分とは、建築要素を示す線101の幅W2(図4参照)を考慮し、蛍光色部分104の各構成ドットから、例えば0.5mm相当の距離以内(300dpiでスキャンしたと仮定すると、例えば6ドット以内)に存在する構成ドット(建築要素を示す線101の色のデータを有する構成ドット)等とすることができる。
【0086】
また、ユーザによる判定用補助情報の入力を受け付けることにより、1つの画像データの中に、積算用図形が1つしかないことが判明している場合、または、積算用図形は複数存在するが、全て異なる色の積算用図形であること(同じ色の積算用図形は1つしかないこと)が判明している場合には、次の図10の処理は行う必要はないが、これらの判定用補助情報の入力がない場合は、1つの画像データの中に、何色の積算用図形が幾つ存在するのかが不明であるため、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aは、次の図10の処理を実行する。なお、積算用図形の色と、換算情報取得用図形およびその近傍の換算情報取得用の数字の部分並びに位置合わせ用図形の色とを、同じ色とすることを許容する場合も、次の図10の処理を実行する。
【0087】
蛍光ペン指示部分抽出手段36Aは、画像データから蛍光ペン指示部分102(図4参照)を抽出した段階では、抽出した蛍光ペン指示部分102が、幾つの指示図形を構成しているのかが不明であるため、図10に示す処理を実行する。先ず、抽出した蛍光ペン指示部分102の各構成ドットの色のデータを用いて、同じ色の構成ドットの集合に分ける。この際、蛍光ペン指示部分102には、重畳部分103も含まれるので、蛍光色部分104の色のデータを用いて各構成ドットの帰属する集合を決めるとともに、同じ色の蛍光色部分104に挟まれている重畳部分103(同じ色の蛍光色部分104の近傍の重畳部分103でもよい)の構成ドットは、その同じ色の蛍光色部分104と同じ集合に帰属させる。このようにして各構成ドットの色のデータを用いて、構成ドットの集合分けを終えた段階でも、ある色の集合に帰属する構成ドットが、その色の蛍光ペン100で描かれた幾つの指示図形を構成しているのかは不明であるため、同じ色の集合に帰属する構成ドットの中で、次の図10の処理を実行する。つまり、例えば、水色の蛍光ペン100で描かれた指示図形は、2以上あるかもしれないので、水色の集合(重畳部分103も含まれるので、通常は、黒色も含まれている。)に帰属する構成ドットの中で、次の図10の処理を実行する。
【0088】
図10において、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aは、処理対象の色(例えば、水色)の集合に帰属する構成ドットの中から、互いに隣接している2以上のドットからなるスタート部141を適当に選び、このスタート部141の構成ドットを、処理対象の色(例えば、水色)についての第1の指示図形に帰属させる。スタート部141の形状は任意であり、例えば、図10の例のような4角形でもよく、円形でもよい。スタート部141の大きさも任意であるが、少なくとも蛍光ペン指示部分140の幅(図4の蛍光ペン指示部分102の幅W1に相当)の範囲内に収まる大きさである。
【0089】
続いて、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aは、スタート部141の周辺部分142に存在する構成ドットを、処理対象の色(例えば、水色)についての第1の指示図形に新たに帰属させる。周辺部分142は、スタート部141に隣接(斜め方向の隣接を含む。)する1ドットの範囲内としてもよく、予め定められた設計図上での距離(mm)の範囲内またはそれに対応するドット数の範囲内としてもよい。
【0090】
さらに、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aは、周辺部分142に対する周辺部分143に存在する構成ドットを、処理対象の色(例えば、水色)についての第1の指示図形に新たに帰属させる。周辺部分143は、周辺部分142に隣接(斜め方向の隣接を含む。)する1ドットの範囲内としてもよく、予め定められた設計図上での距離(mm)の範囲内またはそれに対応するドット数の範囲内としてもよい。なお、周辺部分142に対する周辺部分には、スタート部141も含まれるが、スタート部141の構成ドットは、既に処理対象の色(例えば、水色)についての第1の指示図形に帰属しているので、新たに認識された周辺部分143の構成ドットだけを追加して帰属させる。
【0091】
同様に、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aは、周辺部分143に対する周辺部分144に存在する構成ドットを、処理対象の色(例えば、水色)についての第1の指示図形に新たに帰属させる。そして、このような処理を、第1の指示図形に新たに帰属させる構成ドットが無くなるまで継続する。その後、第1の指示図形に新たに帰属させる構成ドットが無くなった時点で、処理対象の色(例えば、水色)を有する構成ドットが未だ残っている場合には、処理対象の色(例えば、水色)についての第2の指示図形の抽出に移り、上記のような処理を、第2の指示図形に新たに帰属させる構成ドットが無くなるまで継続する。さらに、第2の指示図形に新たに帰属させる構成ドットが無くなった時点で、処理対象の色(例えば、水色)を有する構成ドットが未だ残っている場合には、処理対象の色(例えば、水色)についての第3の指示図形の抽出に移り、処理対象の色(例えば、水色)を有する構成ドットが無くなるまで、第4以降の指示図形の抽出も同様に行う。それから、処理対象の色(例えば、水色)を有する構成ドットが無くなった時点で、別の色(例えば、黄色)を有する構成ドットを処理対象として、その色(例えば、黄色)についての第1、第2、第3、…の指示図形の抽出を行う。そして、このような処理を、全ての色について行う。
【0092】
そして、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aは、抽出した蛍光ペン指示部分のデータ(各指示図形の構成ドットや、換算情報取得用の数字の部分の構成ドットについての座標データ)は、例えば、次のように整理し、主メモリに記憶させておくか、または、不揮発性メモリである蛍光ペン指示部分抽出結果記憶手段(不図示)に記憶させておく。
【0093】
すなわち、抽出した指示図形等の各々についての蛍光ペン指示部分のデータに対し、画像識別情報(ファイル名等の画像ファイルの識別情報)と、色識別情報(黄色、水色、青色、茶色、橙色等の蛍光色の別)と、図形識別情報(1つの画像ファイル内に含まれる指示図形等の通番)と、図形種別識別情報(積算用図形、換算情報取得用図形、位置合わせ用図形、換算情報取得用の数字の部分の別)と、回転補正済・未済情報とを付与する。回転補正済・未済情報を付与するのは、次のように、一連の処理(図3参照)の過程で、データが、回転補正前の状態である場合と、回転補正後の状態である場合とがあるからである。
【0094】
本第1実施形態では、積算用図形の色と、それ以外の指示図形等(換算情報取得用図形およびその近傍の換算情報取得用の数字の部分、並びに位置合わせ用図形)の色とを、異なる色とする取り決めとしているので、積算用図形であるのか、それ以外の指示図形等であるのかは、色のデータで判断することができる。このため、先ず、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aにより、色のデータに基づき、積算用図形以外の指示図形等についての蛍光ペン指示部分を抽出し、指示図形抽出手段36による全ての処理(図形分断手段36Bによる処理以降の処理:図3参照)を済ませ、この処理で得られたデータを換算情報設定手段40に渡し、換算情報設定手段40により回転角度を求めてから画像データの全体を回転補正し、次に、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aにより、回転補正した状態の画像データの中から、積算用図形についての蛍光ペン指示部分を抽出し、指示図形抽出手段36による全ての処理を済ませ、この処理で得られたデータを建築要素登録・配置手段50に渡すことができる。また、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aにより、回転補正をしていない状態の画像データの中から、積算用図形についての蛍光ペン指示部分を抽出し、指示図形抽出手段36による全ての処理(図形分断手段36Bによる処理以降の処理:図3参照)を済ませ、この処理で得られたデータを、指示図形抽出手段36(積算用図形決定手段36D)により、換算情報設定手段40で算出されて換算情報記憶手段78に記憶されている回転角度を用いて回転補正し、回転補正後のデータを、建築要素登録・配置手段50に渡すようにしてもよい。
【0095】
従って、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aによる積算用図形についての蛍光ペン指示部分の抽出処理は、回転補正した状態の画像データの中から行ってもよく、回転補正をしていない状態の画像データの中から行ってもよい。これに対し、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aによる積算用図形以外の指示図形等についての蛍光ペン指示部分の抽出処理は、未だ換算情報設定手段40による回転角度の算出処理が行われていない段階であるから、回転補正をしていない状態の画像データの中から行うことになる。
【0096】
なお、積算用図形の色と、それ以外の指示図形等(換算情報取得用図形およびその近傍の換算情報取得用の数字の部分、並びに位置合わせ用図形)の色とを、同じ色とすることを許容する場合には、少なくとも蛍光ペン指示部分抽出手段36Aによる処理を行った後でなければ、画像データに含まれる指示図形等が、積算用図形であるのか、それ以外の指示図形等であるのかの区別が付かないので、少なくとも蛍光ペン指示部分抽出手段36Aによる処理は、換算情報設定手段40による回転角度の算出処理が行われていない段階での処理となるため、回転補正をしていない状態の画像データの中からの抽出処理となる。
【0097】
<指示図形抽出手段36/図形分断手段36Bの構成:図11図17参照>
【0098】
図形分断手段36Bは、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aにより抽出した指示図形(積算用図形、換算情報取得用図形、位置合わせ用図形を含む。)としての蛍光ペン指示部分の屈折部を決定し、決定した屈折部で、重畳部分を含む蛍光ペン指示部分を分断することにより、複数の線分を形成する処理を実行するものである。
【0099】
前述した蛍光ペン指示部分抽出手段36Aによる指示図形の抽出処理が済んだ段階では、抽出された各指示図形が、どのような形状(例えば、四角形、三角形、凹型、凸型等のいずれの形状)の図形なのかは不明であり、その姿勢(例えば、上向き凸型なのか、下向き凸型なのか等)も不明であるため、図形分断手段36Bは、各指示図形のどこに、幾つの屈折部が存在するのかを認識するために、次の図11のような処理を行う。
【0100】
図11において、図形分断手段36Bは、処理対象とされている、ある1つの指示図形150を形成する蛍光ペン指示部分(重畳部分を含む)の構成ドットの座標データを、(x,y)座標から、(r,θ)座標(極座標)に変換する。なお、コンピュータ処理では、(x,y)座標の原点(0,0)は、左上の位置であるが、ここでは、説明の便宜上、通常の数学で用いる(x,y)座標の上下関係とする。また、極座標のθは、反時計まわりでも、時計回りでもよいが、ここでは、通常の数学の極座標と同様に、反時計まわりとする。この際、最初は、処理対象の指示図形150を形成する蛍光ペン指示部分(重畳部分を含む)の構成ドットの重心点を求め、この重心点を指示図形代表点151として、そこを極座標の中心とする(r,θ)の座標データを算出する。
【0101】
図11の例では、指示図形150を形成する蛍光ペン指示部分(重畳部分を含む)の各構成ドットの座標データを、極座標に変換すると、横軸にθをとり、縦軸に指示図形代表点151からの距離rをとって描いたr-θグラフ152が得られる。θ=θ2は、指示図形150の屈折部に該当するため、グラフ152は、極大点となっている。θ=θ3は、指示図形150の屈折部ではなく、直線部分に該当するが、グラフ152は、なだらかな極小点となっている。θ=θ4は、指示図形150の屈折部に該当するため、グラフ152は、勾配が急激に変化する勾配急変点となっている。勾配急変点では、グラフ152の勾配が、プラスからプラスに、または、マイナスからマイナスに変化するので、極大点や極小点ではない。急激な変化であるか否かは、閾値を設けて判断する。θ=θ5は、指示図形150の直線部分に該当し、極大点、極小点、勾配急変点のいずれでもない。
【0102】
θ=θ6は、指示図形150の屈折部に該当するため、グラフ152は、極大点となっている。θ=θ7は、指示図形150の屈折部ではなく、直線部分に該当するが、グラフ152は、なだらかな極小点となっている。θ=θ8は、指示図形150の屈折部に該当するため、グラフ152は、極大点となっている。θ=θ9は、指示図形150の屈折部ではなく、直線部分に該当するが、グラフ152は、なだらかな極小点となっている。θ=θ10は、指示図形150の屈折部に該当するため、グラフ152は、極大点となっている。
【0103】
図12に示すように、指示図形160に対し、指示図形代表点161から引いた線を見れば判る通り、指示図形160の屈折部162は、r-θグラフの極大点に対応し、指示図形160の屈折部163は、r-θグラフの極小点に対応するので、屈折部が、r-θグラフの極大点にも極小点にもなり得ることがわかる。また、指示図形160の直線部分の中間位置164は、r-θグラフの極小点に対応するので、極小点であっても、屈折部に該当しない場合があることがわかる。
【0104】
図13に示すように、図形分断手段36Bは、r-θグラフ170における極大点、極小点、勾配急変点を捉えるために、r-θグラフ170の各構成ドットを、横軸(θ軸)に直交する切断線により、Δθの角度幅で刻んでいく。この角度幅Δθは、一定の角度としてもよく、あるいは、Δθで刻まれた区画Pの中に、予め定められた数の構成ドットが入るようにしてもよく、後者の場合は、r-θグラフ170における区画P(n-3)、P(n-2)、P(n-1)、P(n)、P(n+1)、P(n+2)、P(n+3)についての角度幅を、それぞれΔθ(n-3)、Δθ(n-2)、Δθ(n-1)、Δθ(n)、Δθ(n+1)、Δθ(n+2)、Δθ(n+3)と表すことができる。角度幅Δθの各区画Pは、図13の例のように、重なっていることが好ましいが、重なっていなくてもよい。
【0105】
図形分断手段36Bは、r-θグラフ170における上記の各区画Pについて、それぞれの区画Pに帰属する構成ドットの極座標の重心点(r,θ)を求める。そして、区画P(n)については、1つ前の区画P(n-1)の重心点から、区画P(n)の重心点までの勾配と、区画P(n)の重心点から、1つ後の区画P(n+1)の重心点までの勾配とを比較し、それらの勾配が、プラスからマイナスに変化していれば、区画P(n)が極大点と判断し、マイナスからプラスに変化していれば、区画P(n)が極小点と判断し、プラスからプラスに変化するか、またはマイナスからマイナスに変化していて、その変化量が予め定められた閾値以上若しくは閾値を超えた場合には、区画P(n)が勾配急変点と判断する。そして、図形分断手段36Bは、このような極大点、極小点、勾配急変点を捉える処理だけでは、指示図形の屈折部に該当するか否かを判断することができないので、次の図14に示すような処理を併せて実行する。
【0106】
図14において、蛍光ペン指示部分(重畳部分を含む)により形成された指示図形180は、(x,y)座標で表現されており、この指示図形180を区切って形成された各区画Q(n-3)、Q(n-2)、Q(n-1)、Q(n)、Q(n+1)、Q(n+2)、Q(n+3)は、前述した図13のr-θグラフ170における各区画P(n-3)、P(n-2)、P(n-1)、P(n)、P(n+1)、P(n+2)、P(n+3)に対応している。すなわち、図13の各区画Pに帰属する構成ドットの極座標の(r,θ)を、(x,y)座標に変換した(戻した)ものが、図14の各区画Qに帰属する構成ドットである。
【0107】
図形分断手段36Bは、図14の各区画Qに帰属する構成ドットの(x,y)座標の重心点を求める。そして、区画Q(n)については、区画Q(n)の重心点から、1つ前の区画Q(n-1)の重心点に至るベクトルと、区画Q(n)の重心点から、2つ前の区画Q(n-2)の重心点に至るベクトルと、区画Q(n)の重心点から、3つ前の区画Q(n-3)の重心点に至るベクトルとの平均ベクトルを求め、これを前方平均ベクトルと呼ぶ。また、区画Q(n)の重心点から、1つ後の区画Q(n+1)の重心点に至るベクトルと、区画Q(n)の重心点から、2つ後の区画Q(n+2)の重心点に至るベクトルと、区画Q(n)の重心点から、3つ後の区画Q(n+3)の重心点に至るベクトルとの平均ベクトルを求め、これを後方平均ベクトルと呼ぶ。なお、これらの前方平均ベクトルおよび後方平均ベクトルは、3つのベクトルの平均ではなく、2つ、または4つ以上のベクトルの平均としてもよい。
【0108】
続いて、図形分断手段36Bは、前方平均ベクトルと、後方平均ベクトルとの成す角が、180度に近い場合は、指示図形180の直線部分であると判断し、それ以外の場合は、指示図形180の屈折部であると判断する。180度に近いか否かの判断は、予め閾値(例えば、175度~185度の範囲等)を設定しておく。また、図形分断手段36Bが、図14に示した区画Q(n)について180度に近いか否かの判断処理を実行するのは、前述した図13の対応する区画P(n)について、極大点、極小点、または勾配急変点であると判断された場合である。
【0109】
なお、図14に示した(x,y)座標による処理だけで、屈折部であるか否かの判断を行うことができるようにも感じられるが、そもそも図14の各区画Qは、図13の対応する各区画Pが適切に形成されることにより成立する。しかし、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aにより抽出された指示図形は、どのような形状なのか(幾つの屈折部を有するのか、単純な四角形なのか、そうでないのか等)が不明であり、複雑な形状であることもあり得るため、図13に示したr-θグラフ170における各区画Pを適切に形成するには、以下のような処理が必要になる場合がある。
【0110】
図15において、蛍光ペン指示部分(重畳部分を含む)により形成された指示図形190は、部分的に複雑な形状を有している。このため、指示図形代表点191から放射状に線を引くと判る通り、r-θグラフ193では、θ=θ13までは、交差する蛍光ペン指示部分は、1箇所であるが、θ=θ14では、2箇所になり、θ=θ15~θ17では、3箇所になり、θ=θ18では、2箇所になり、θ=θ19で、1箇所に戻っている。
【0111】
このような場合には、交差する蛍光ペン指示部分が1箇所となるθの区間だけを使用する方法、あるいは、交差する蛍光ペン指示部分のうち、それまでの蛍光ペン指示部分(交差する蛍光ペン指示部分が1箇所であったときの蛍光ペン指示部分)と連続している蛍光ペン指示部分を選択して使用するという方法がある。図15の例では、θ=θ14を過ぎてからは、2箇所以上で蛍光ペン指示部分と交差しているが、そのうちrが最も小さい蛍光ペン指示部分を選択して使用すれば、それまでの蛍光ペン指示部分(交差する蛍光ペン指示部分が1箇所であったときの蛍光ペン指示部分)と連続することになり、θ=θ18まで使用することができる。
【0112】
また、図16に示すように、指示図形200に対し、指示図形代表点201から放射状に線を引くと判る通り、r-θグラフ202では、θ=θ2までは、交差する蛍光ペン指示部分は、1箇所であるが、θ=θ3では、2箇所になり、θ=θ4では、3箇所になり、θ=θ5では、2箇所になり、θ=θ6で、1箇所に戻っている。従って、この例では、θ=θ3を過ぎてからは、2箇所以上で蛍光ペン指示部分と交差しているが、そのうちrが最も大きい蛍光ペン指示部分を選択して使用すれば、それまでの蛍光ペン指示部分(交差する蛍光ペン指示部分が1箇所であったときの蛍光ペン指示部分)と連続することになり、θ=θ5まで使用することができる。
【0113】
なお、図15のr-θグラフ193や、図16のr-θグラフ202のような状態であっても、全部の蛍光ペン指示部分を使用するという方法もあり、その場合には、一部のθの区間(図15の例では、θ=θ18からθ14に戻る区間、図16の例では、θ=θ5からθ3に戻る区間)で、θを逆向きに変化させる必要がある。
【0114】
図形分断手段36Bは、各θの位置において、その位置のΔθ(図13のΔθ(n)等を参照)に含まれる各構成ドットについてのrの分散または標準偏差が、予め定められた閾値未満または以下であれば、そのθの位置において交差する蛍光ペン指示部分は1箇所であると判断することができる。一方、rの分散または標準偏差が、予め定められた閾値以上または閾値を超えていれば、そのθの位置において交差する蛍光ペン指示部分は2箇所以上であると判断することができる。
【0115】
図形分断手段36Bは、交差する蛍光ペン指示部分が2箇所以上であると判断した場合には、その位置のΔθ(図13のΔθ(n)等を参照)に含まれる各構成ドットについて、クラスタの数=2としてクラスタリング(例えばk-means法)を行い、各クラスタに属する構成ドットについてのrの分散または標準偏差を求め、求めた分散または標準偏差が、予め定められた閾値未満または以下であれば、そのθの位置において交差する蛍光ペン指示部分は2箇所であると判断することができる。一方、求めた分散または標準偏差が、予め定められた閾値以上または閾値を超えていれば、そのθの位置において交差する蛍光ペン指示部分は3箇所以上であると判断することができる。そして、交差する蛍光ペン指示部分が3箇所以上であると判断した場合には、クラスタの数=3としてクラスタリング(例えばk-means法)を行い、各クラスタに属する構成ドットについてのrの分散または標準偏差を求め、求めた分散または標準偏差が、予め定められた閾値未満または以下であれば、そのθの位置において交差する蛍光ペン指示部分は3箇所であると判断することができる。一方、求めた分散または標準偏差が、予め定められた閾値以上または閾値を超えていれば、そのθの位置において交差する蛍光ペン指示部分は4箇所以上であると判断することができる。このようにクラスタの数を1つずつ増やしていき、交差する蛍光ペン指示部分の数を認識することができる。
【0116】
また、図形分断手段36Bは、交差する蛍光ペン指示部分が2箇所以上になった場合に、それまでの蛍光ペン指示部分(交差する蛍光ペン指示部分が1箇所であったときの蛍光ペン指示部分)と連続する蛍光ペン指示部分を選択して使用する方法を採用するときは、図17のような方法で、連続する蛍光ペン指示部分を認識するようにしてもよい。
【0117】
図17において、連続する蛍光ペン指示部分は、rが最も小さい蛍光ペン指示部分であるか(図15の場合)、または、rが最も大きい蛍光ペン指示部分であるので(図16の場合)、図形分断手段36Bは、交差する蛍光ペン指示部分が2箇所以上になった場合に、その位置のΔθに含まれる各構成ドットについてのrの最小値rminと、最大値rmaxとを求める。続いて、最小値rminに、蛍光ペン指示部分の幅(図4のW1)を考慮して予め定められたΔrを加えて(rmin+Δr)を求め、rminから(rmin+Δr)までの範囲内の構成ドットを、rが最も小さい蛍光ペン指示部分の構成ドットと判断する。また、最大値rmaxからΔrを減じて(rmax-Δr)を求め、(rmax-Δr)からrmaxまでの範囲内の構成ドットを、rが最も大きい蛍光ペン指示部分の構成ドットと判断する。このようにすれば、クラスタリングにより、例えば、第1のクラスタ211、第2のクラスタ212、第3のクラスタ213に分けなくても、rが最も小さい蛍光ペン指示部分に相当する第1のクラスタ211と、rが最も大きい蛍光ペン指示部分に相当する第3のクラスタ213とを認識することができる。そして、rが最も小さい蛍光ペン指示部分と、rが最も大きい蛍光ペン指示部分とのうち、それまでの蛍光ペン指示部分(交差する蛍光ペン指示部分が1箇所であったときの蛍光ペン指示部分)のrに近い方を選択して使用する。
【0118】
以上のように、連続する蛍光ペン指示部分を使用したとしても、1つの指示図形を形成する蛍光ペン指示部分の全部の処理を行うことはできないので、図形分断手段36Bは、指示図形代表点を移動させる処理を実行する。つまり、最初の指示図形代表点である指示図形全体の重心点を使用し続けることは困難であるため、別の指示図形代表点を探す。前述した図15の例では、指示図形代表点191から指示図形代表点192に移動することにより、図15の点線の如く、θ=θ21からθ24まで、交差する蛍光ペン指示部分が1箇所になる。移動前の指示図形代表点191では、θ=θ18まで処理を実行できているので、移動後の指示図形代表点192によるθ=θ21からの処理と途切れなく連結することができる。なお、移動後の指示図形代表点192は、指示図形190の全体の重心点ではなく、指示図形190の局部的な重心点としてもよく、あるいは、移動前の指示図形代表点191を、上下左右に、予め定めた方法で適当な量だけずらした点としてもよい。
【0119】
さらに、図形分断手段36Bは、屈折部の決定後に、指示図形を屈折部で分断し、複数の線分を形成する。これらの複数の線分は、(x,y)座標で表された線分である。この際、形成する各線分の各端部には、屈折部と決定された区画(図14の区画Q)を含めてもよく、含めなくてもよい。含めないと、線分の端部付近の構成ドットが減ることになるが、フィッティングを行うので影響はない。
【0120】
また、指示図形代表点の移動を行った場合には、それぞれの指示図形代表点による処理で屈折部が決定されるが、図形分断手段36Bは、同じ屈折部を複数の指示図形代表点による処理で捉えた場合は、重複のないように、1つの屈折部を選択する。同じ屈折部であるか否かは、それらの屈折部に帰属する各構成ドットの(x,y)座標の重心点が近いか否か、あるいは、それらの屈折部に帰属する各構成ドットに重なりがあるか否かで判断することができる。なお、指示図形代表点が異なれば、指示図形代表点を中心とする放射線で蛍光ペン指示部分を切って形成される区画の形状(図14の区画Qの形状)は異なるので、同じ屈折部を複数の指示図形代表点による処理で捉えた場合であっても、それらの屈折部の形状(区画の形状)は、指示図形代表点毎に異なるものとなる。
【0121】
また、指示図形代表点の移動を行った場合には、それぞれの指示図形代表点による処理で屈折部が決定されるので、1つの指示図形における屈折部の並び順が崩れる場合があり得ることから、図形分断手段36Bは、屈折部の並び順を確認する必要がある。隣接する屈折部であるか否かは、2つの屈折部の重心点どうしを結んだ線分の周辺に、多くの構成ドットが存在するか否かで確認することができる。例えば、2つの屈折部の重心点どうしを結んだ線分の長さが100mm(300dpiでスキャンした場合は、1180ドット相当)であり、蛍光ペン指示部分の幅(図4のW1)が2mm(300dpiでスキャンした場合は、23.6ドット相当)であるとすると、1180×23.6=27848ドットが、周辺に存在するはずである。従って、この数値に対し、著しく少ないドットしか存在しない場合には、隣接する屈折部ではないと判断することができる。例えば、長方形の対角位置にある屈折部どうしを結んだ状態では、それらの屈折部の重心点どうしを結んだ線分の周辺には、構成ドットが殆ど存在しないので、そのような状態になっていないことを確認していることになる。
【0122】
<指示図形抽出手段36/フィッティング手段36Cの構成:図18参照>
【0123】
フィッティング手段36Cは、図18に示すように、図形分断手段36Bにより形成した複数の線分の各々について、重畳部分221を含む蛍光ペン指示部分220の構成ドットの座標データを用いて、直線フィッティングを行うことにより、蛍光ペン指示部分フィット線222を求めるとともに、重畳部分221の構成ドットの座標データを用いて、直線フィッティングを行うことにより、重畳部分フィット線223を求め、求めた蛍光ペン指示部分フィット線222および重畳部分フィット線223を用いて、複数の線分の各々についての最終的なフィット線を決定する処理を実行するものである。
【0124】
ここで、直線フィッティングは、最小二乗法により、線分の各構成ドットの(x,y)座標の位置に対し、直線(y=ax+b)をフィッティングさせるものである。すなわち、i番目の構成ドットの座標データを(x(i),y(i))とすると、yの値についての差分の2乗の和Σi{y(i)-(a×x(i)+b)}を最小にする直線を求める。また、y軸と平行に近い直線の場合には、直線(x=cy+d)をフィッティングさせる。すなわち、xの値についての差分の2乗の和Σi{x(i)-(c×y(i)+d)}を最小にする直線を求める。なお、例えばx,yが偶数値の構成ドットだけを使用する等により、構成ドットの数を間引いて直線フィッティングを行ってもよい。
【0125】
具体的には、フィッティング手段36Cは、最小二乗法による直線フィッティングで求めた蛍光ペン指示部分フィット線222と、重畳部分フィット線223とを比較し、双方の線が近似していると判断した場合には、重畳部分フィット線223を最終的なフィット線として決定する。なお、双方の線が近似しているか否かは、傾きの値の差、および切片の値の差が、予め定められた閾値以下または未満であるか否かで判断する。なお、双方の線が近似していると判断した場合は、例えば、蛍光ペン指示部分フィット線222と、重畳部分フィット線223との平均線または加重平均線(傾きの値および切片の値を平均または加重平均した線)を最終的なフィット線としてもよく、蛍光ペン指示部分フィット線222を最終的なフィット線としてもよく、いずれを採用しても、殆ど差は出ないので、積算には影響しない。
【0126】
一方、蛍光ペン指示部分フィット線222と、重畳部分フィット線223とを比較し、双方の線が近似していないと判断した場合には、重畳部分221について、図18の最下部に示すような間引き処理を実行する。双方の線が近似していない場合は、蛍光ペン100による作業が適切ではなく、重畳部分221に対し、蛍光色部分(図4の104に相当)が著しく片方の側に偏っている場合であるか、または、重畳部分221の中に、不要な線224(図4の101Bに相当)が多く、かつ、片方の側に偏っている場合である。このうち、後者の場合の状態を解消するために、次のような間引き処理を実行する。
【0127】
図18の最下部に示すように、フィッティング手段36Cは、蛍光ペン指示部分フィット線222または修正前の重畳部分フィット線223と交差(図18の例では、直交)する方向に延びる切断線225により、重畳部分221を複数の区画に分割する。なお、図18では、説明の便宜上、区画を四角形で図示しているが、左右の切断線225を示すことを意図した図示であるので、上下の線に意味はない。そして、各区画に含まれる構成ドットの数が、予め定められた閾値以上または閾値を超える場合に、当該区画の構成ドットを取り除く間引き処理を実行する。閾値は、重畳部分221の幅(図4のW2に相当)および区画の幅(切断線225の間隔)に応じて設定することができる。例えば、重畳部分221の幅=0.5mm(300dpiでスキャンした場合には、6ドット程度に相当)、区画の幅=2mm(300dpiでスキャンした場合には、24ドット程度に相当)とすると、1つの区画内には、6×24=144程度の構成ドットが存在する状態が好ましいので、この144という数値よりも少し大きい数値を、閾値として設定しておけばよい。これにより、図18の最下部において★印で示された区画、すなわち不要な線224が存在する区画を取り除くことができる。
【0128】
また、図18の最下部に示すように、フィッティング手段36Cは、蛍光ペン指示部分フィット線222または修正前の重畳部分フィット線223に沿う方向に移動する移動区画(つまり、移動する2本の切断線225)を形成し、この移動区画を移動させながら、移動区画に含まれる構成ドットの数が、予め定められた閾値以上または閾値を超えるか否かを判断し、閾値以上または閾値を超えた場合の移動位置における当該移動区画の構成ドットを取り除く間引き処理を実行してもよい。
【0129】
その後、フィッティング手段36Cは、間引き処理後の重畳部分221の構成ドットの座標データを用いて、直線フィッティングを行うことにより、修正後の重畳部分フィット線223を求める処理を実行する。
【0130】
それから、フィッティング手段36Cは、蛍光ペン指示部分フィット線222と、修正後の重畳部分フィット線223とを比較し、双方の線が近似していると判断した場合には、修正後の重畳部分フィット線223を最終的なフィット線として決定する。なお、前述したように、双方の線が近似していると判断した場合は、蛍光ペン指示部分フィット線222と、修正後の重畳部分フィット線223との平均線または加重平均線を最終的なフィット線としてもよく、蛍光ペン指示部分フィット線222を最終的なフィット線としてもよく、いずれを採用しても、殆ど差は出ないので、積算には影響しない。
【0131】
一方、蛍光ペン指示部分フィット線222と、修正後の重畳部分フィット線223とを比較し、双方の線が近似していないと判断した場合には、蛍光ペン指示部分フィット線222と、修正後の重畳部分フィット線223との平均線または加重平均線を最終的なフィット線として決定する。
【0132】
なお、図18の最下部に示す間引き処理を行い、修正後の重畳部分フィット線223を求めた場合には、蛍光ペン指示部分フィット線222と、修正後の重畳部分フィット線223との比較処理を行うことなく、修正後の重畳部分フィット線223を最終的なフィット線として決定してもよい。
【0133】
<指示図形抽出手段36/積算用図形決定手段36Dの構成:図3参照>
【0134】
積算用図形決定手段36Dは、フィッティング手段36Cにより決定した最終的なフィット線どうしの交点を求めることにより、指示図形としての積算用図形の座標データを決定する処理を実行するものである。この交点は、前述した特許文献1に記載された現行システムにおけるマウス等のポインティングデバイスで指示した点に相当するものである。
【0135】
この際、交点を求めるのは、図形分断手段36Bにより決定した屈折部に対応する交点だけであり、フィッティング手段36Cにより決定した全ての最終的なフィット線どうしの交点を総当たりで求めるわけではない。すなわち、指示図形は、図形分断手段36Bにより決定した屈折部で分断されて複数の線分になるので、指示図形の分断位置である屈折部に繋がる2つの線分に対応する最終的なフィット線どうしの交点を求める。1つの指示図形における屈折部の並び順は、図形分断手段36Bにより認識され、確認されているので、1つの指示図形における線分の並び順も当然に認識されている。
【0136】
具体的には、1つの指示図形において、第1の線分、第1の屈折部、第2の線分、第2の屈折部、第3の線分、第3の屈折部、第4の線分、…という並び順は、図形分断手段36Bにより認識されているので、積算用図形決定手段36Dは、第1の屈折部に繋がる第1の線分と第2の線分との最終的なフィット線どうしの交点を求め、第2の屈折部に繋がる第2の線分と第3の線分との最終的なフィット線どうしの交点を求め、第3の屈折部に繋がる第3の線分と第4の線分との最終的なフィット線どうしの交点を求め、…という処理を実行する。後述する換算情報取得用図形決定手段36Eおよび位置合わせ用図形決定手段36Fによる処理も同様である。
【0137】
また、積算用図形決定手段36Dは、回転補正をしていない状態の画像データの中から抽出した積算用図形(蛍光ペン指示部分)の各構成ドットの座標データを用いて、回転補正をしないままで、図形分断手段36Bおよびフィッティング手段36Cによる処理を実行し、最終的なフィット線どうしの交点を求め、積算用図形の座標データを決定した場合には、換算情報設定手段40により算出されて換算情報記憶手段78に記憶されている回転角度を用いて、決定した積算用図形の座標データを回転補正する処理を行う。一方、回転補正をした状態の画像データの中から抽出した積算用図形(蛍光ペン指示部分)の各構成ドットの座標データを用いて、図形分断手段36Bおよびフィッティング手段36Cによる処理を実行した場合には、この回転補正の処理は必要ない。
【0138】
<指示図形抽出手段36/換算情報取得用図形決定手段36Eの構成:図3図8参照>
【0139】
換算情報取得用図形決定手段36Eは、蛍光ペンによる指示図形としての換算情報取得用図形120(図8参照)について、フィッティング手段36Cにより決定した最終的なフィット線どうしの交点を求め、求めた交点の座標データを換算情報設定手段40に渡す処理を実行するものである。
【0140】
図8を用いて既に詳述したように、換算情報取得用図形120は、コの字型の指示図形であり、図形分断手段36Bは、線122に沿って描かれた蛍光ペン指示部分の線分、第1の屈折部、線121に沿って描かれた蛍光ペン指示部分の線分、第2の屈折部、線123に沿って描かれた蛍光ペン指示部分の線分という並び順を認識している。なお、逆順で認識していてもよい。
【0141】
従って、換算情報取得用図形決定手段36Eは、第1の屈折部に繋がる2つの線122,121に沿って描かれた2つの蛍光ペン指示部分の線分についての最終的なフィット線どうしの交点124を求めるとともに、第2の屈折部に繋がる2つの線121,123に沿って描かれた2つの蛍光ペン指示部分の線分についての最終的なフィット線どうしの交点125を求める。そして、これらの2つの交点124,125の座標データを、換算情報設定手段40に渡す。
【0142】
<指示図形抽出手段36/位置合わせ用図形決定手段36Fの構成:図3図9参照>
【0143】
位置合わせ用図形決定手段36Fは、蛍光ペンによる指示図形としての位置合わせ用図形130A,130B,130C(図9参照)について、フィッティング手段36Cにより決定した最終的なフィット線どうしの交点を求め、求めた交点の座標データを、位置合わせ用の基準点の座標データとして、換算情報設定手段40に渡す処理を実行するものである。
【0144】
ここで、位置合わせ用の基準点は、異なる内容の複数の設計図(例えば、1階の平面図と2階の平面図)の各々に対応する複数の画像データどうしの位置合わせ、または同じ内容の設計図(図7の設計図110参照)について異なる内容の蛍光ペン作業を行った状態の複数の設計図(図7の設計図110A,110B,110C参照)の各々に対応する複数の画像データどうしの位置合わせに用いられる。
【0145】
図9を用いて既に詳述したように、位置合わせ用図形130A,130B,130Cは、L字型の指示図形であり、図形分断手段36Bは、図9(A)の場合には、線131Aに沿って描かれた蛍光ペン指示部分の線分、屈折部、線132Aに沿って描かれた蛍光ペン指示部分の線分という並び順を認識し、図9(B)の場合には、線131Bに沿って描かれた蛍光ペン指示部分の線分、屈折部、線132Bに沿って描かれた蛍光ペン指示部分の線分という並び順を認識し、図9(C)の場合には、線131Cに沿って描かれた蛍光ペン指示部分の線分、屈折部、線132Cに沿って描かれた蛍光ペン指示部分の線分という並び順を認識している。なお、逆順で認識していてもよい。
【0146】
従って、位置合わせ用図形決定手段36Fは、図9(A)の場合には、屈折部に繋がる2つの線131A,132Aに沿って描かれた2つの蛍光ペン指示部分の線分についての最終的なフィット線どうしの交点133Aを求め、図9(B)の場合には、屈折部に繋がる2つの線131B,132Bに沿って描かれた2つの蛍光ペン指示部分の線分についての最終的なフィット線どうしの交点133Bを求め、図9(C)の場合には、屈折部に繋がる2つの線131C,132Cに沿って描かれた2つの蛍光ペン指示部分の線分についての最終的なフィット線どうしの交点133Cを求める。そして、交点133A,133B,133Cの座標データを、換算情報設定手段40に渡す。
【0147】
<指示図形抽出手段36による特殊な処理:図19参照>
【0148】
図19には、蛍光ペン指示部分230に吸収されてしまう程度の微細な段差231(例えば、1~2mm程度の段差)の処理について記載されている。
【0149】
このような微細な段差231がある場合に、図19(A)に示すように、その微細な段差231があることを無視して蛍光ペン100による指示作業を行い、微細な段差231を含むような状態で蛍光ペン指示部分230を描くと、この微細な段差231は、1本の線とみなされて処理される。段差の部分の線分の長さが、周辺部分の長さに対して比較的短ければ、フィッティング手段36Cにより、ほぼ周辺部分の重畳部分に沿うような重畳部分フィット線が得られることになる。
【0150】
また、微細な段差231を反映させて処理を行う場合には、図19(B)に示すように、微細な段差231を、段差の部分231Aと、その周辺部分231B,231Cとに分け、2色の蛍光ペン100を用いて、段差の部分231Aをなぞった蛍光ペン指示部分230Aと、その周辺部分231B,231Cをなぞった蛍光ペン指示部分230B,230Cとを異なる色にする。この2色は、予め取り決められた2色でもよく、ユーザがその都度指定する2色としてもよい。
【0151】
このように2色の指示を行った場合には、段差の部分231Aをなぞった蛍光ペン指示部分230Aについては、通常の処理ではなく、特殊な処理が行われる。すなわち、蛍光ペン指示部分230Aについては、重畳部分の構成ドットだけを用いて、図形分断手段36Bにより、屈折部を決定し、重畳部分を分断する。そして、フィッティング手段36Cの処理では、重畳部分フィット線のみを求める。これにより、段差の部分231Aは、5つの線分231A1,231A2,231A3,231A4,231A5に分かれる。
【0152】
この際、段差の部分231Aの屈折部は、4箇所あるが、そのうちの2箇所が、線分231A1と線分231A2との交点、線分231A1と線分231A4との交点として決定される。一方、残りの2箇所は、周辺部分230B,230Cとの接続を考慮して決定される。従って、線分231A2と線分231A3との交点の代わりに、線分231A2と、周辺部分230Bについての最終的なフィット線との交点が屈折部となる。また、線分231A4と線分231A5との交点の代わりに、線分231A4と、周辺部分230Cについての最終的なフィット線との交点が屈折部となる。
【0153】
さらに、微細な段差231を反映させて処理を行う場合には、図19(C)に示すような2色の指示としてもよい。すなわち、微細な段差231を、段差に挟まれた部分231Dと、左側の段差の部分231Eと、その周辺部分231Fと、右側の段差の部分231Gと、その周辺部分231Hとに分け、2色の蛍光ペン100を用いて、左右の段差の部分231E,231Gをなぞった蛍光ペン指示部分と、それ以外の部分をなぞった蛍光ペン指示部分とを異なる色にする。
【0154】
このように2色の指示を行った場合には、左右の段差の部分231E,231Gをなぞった蛍光ペン指示部分については、通常の処理ではなく、特殊な処理が行われる。すなわち、重畳部分の構成ドットだけを用いて、図形分断手段36Bにより、屈折部を決定し、重畳部分を分断する。そして、フィッティング手段36Cの処理では、重畳部分フィット線のみを求める。これにより、左側の段差の部分231Eは、3つの線分231E1,231E2,231E3に分かれ、右側の段差の部分231Gは、3つの線分231G1,231G2,231G3に分かれる。
【0155】
そして、屈折部は、段差に挟まれた部分231Dおよび周辺部分231F,231Hとの接続を考慮して決定される。すなわち、線分231E1と線分231E2との交点の代わりに、段差に挟まれた部分231Dについての最終的なフィット線と、線分231E2との交点が屈折部となる。また、線分231G1と線分231G2との交点の代わりに、段差に挟まれた部分231Dについての最終的なフィット線と、線分231G2との交点が屈折部となる。同様に、線分231E2と線分231E3との交点の代わりに、線分231E2と、周辺部分231Fについての最終的なフィット線との交点が屈折部となる。また、線分231G2と線分231G3との交点の代わりに、線分231G2と、周辺部分231Hについての最終的なフィット線との交点が屈折部となる。
【0156】
また、図19(D)に示すように、設計図の一部の拡大コピーをとり、拡大された蛍光ペン指示部分240および段差241を作成してもよい。なお、拡大コピーをとる前に、拡大コピーされた設計図と、拡大コピーされていない設計図との位置合わせを行うための位置合わせ用図形242を描いておく。また、図示は省略されているが、換算情報取得用図形および換算情報取得用の数字も描いておく。
【0157】
<指示図形抽出手段36による特殊な処理:図20参照>
【0158】
図20には、蛍光ペン指示部分250に吸収されてしまう程度の180度に近い角度の屈折部251(例えば、175度程度の屈折部)の処理について記載されている。
【0159】
このような180度に近い角度の屈折部251がある場合に、図20(A)に示すように、その屈折部251があることを無視して蛍光ペン100による指示作業を行い、屈折部251を含むような状態で蛍光ペン指示部分250を描くと、この屈折部251は、1本の線とみなされて処理される。
【0160】
また、180度に近い角度の屈折部251を反映させて処理を行う場合には、図20(B)に示すように、180度に近い角度の屈折部251を、屈折部の中心的な部分251Aと、その周辺部分251B,251Cとに分け、2色の蛍光ペン100を用いて、屈折部の中心的な部分251Aをなぞった蛍光ペン指示部分250Aと、その周辺部分251B,251Cをなぞった蛍光ペン指示部分250B,250Cとを異なる色にする。この2色は、予め取り決められた2色でもよく、ユーザがその都度指定する2色としてもよい。
【0161】
このように2色の指示を行った場合には、屈折部の中心的な部分251Aをなぞった蛍光ペン指示部分250Aについては、通常の処理ではなく、特殊な処理が行われる。すなわち、蛍光ペン指示部分250Aについては、重畳部分の構成ドットだけを用いて、図形分断手段36Bにより、屈折部を決定し、重畳部分を分断する。そして、フィッティング手段36Cの処理では、重畳部分フィット線のみを求める。これにより、屈折部の中心的な部分251Aは、4つの線分251A1,251A2,251A3,251A4に分かれる。
【0162】
この際、屈折部の中心的な部分251Aの屈折部は、3箇所あるが、そのうちの1箇所が、線分251A1と線分251A2との交点として決定される。一方、残りの2箇所は、周辺部分250B,250Cとの接続を考慮して決定される。従って、線分251A1と線分251A3との交点の代わりに、線分251A1と、周辺部分250Bについての最終的なフィット線との交点が屈折部となる。また、線分251A2と線分251A4との交点の代わりに、線分251A2と、周辺部分250Cについての最終的なフィット線との交点が屈折部となる。
【0163】
また、図示は省略されているが、前述した微細な段差231の処理の場合(図19(D)参照)と同様に、拡大コピーをとった処理としてもよい。
【0164】
<指示図形抽出手段36による特殊な処理:図21参照>
【0165】
図21には、曲線部分のある指示図形の処理について記載されている。なお、曲線部分の端部の接線と、それに連結される周辺の直線部分とは、一致していなくてもよい。すなわち、曲線部分とその周辺の直線部分との接続は、滑らかでなくてもよい。
【0166】
図21のような曲線部分のある指示図形の処理では、2色の蛍光ペン100を用いて、曲線部分261をなぞった蛍光ペン指示部分260と、その周辺の直線部分263,265をなぞった蛍光ペン指示部分262,264とを異なる色にする。このうち、曲線部分261をなぞった蛍光ペン指示部分260の色は、予め取り決められた色でもよく、ユーザがその都度指定する色としてもよい。
【0167】
そして、曲線部分261をなぞった蛍光ペン指示部分260については、その途中には屈折部はないので、図形分断手段36Bによる処理は行わず、フィッティング手段36Cにより、直線フィッティングではなく、ベジエ曲線等による曲線フィッティングを行う。また、異なる種類の曲線部分を連結する場合は、異なる色を用いる。
【0168】
<指示図形抽出手段36による特殊な処理:図22参照>
【0169】
図22には、開き戸等の建具のような固定形状の建築要素を示す線について、蛍光ペン100による指示作業を行う場合の処理が記載されている。この例では、建築要素を示す線の全部を、蛍光ペン100でなぞるのではなく、蛍光ペン指示部分270は、直交する直線部分271,272だけをなぞって形成され、扇形の円弧部分273はなぞられていない。この蛍光ペン作業の状態で、指示図形抽出手段36により蛍光ペン指示部分270を抽出し、L字状の指示図形(積算用図形)の座標データを得た場合において、その指示図形に対して固定形状(扇形)の建具を配置すると、円弧部分273には、建築要素登録・配置手段50により、自動的に円弧が描かれる。
【0170】
<指示図形抽出手段36による特殊な処理:図23参照>
【0171】
図23には、配置位置が重なる建築要素を一括指示する場合の処理が記載されている。例えば、大きい方の建築要素である壁と、小さい方の建築要素である建具のように、配置位置が重なる建築要素がある。これらの大小の建築要素について蛍光ペン100による指示作業を行う際には、コピーして得られた別々の設計図の紙面上で、蛍光ペン100により、それぞれの建築要素を示す線をなぞる作業を行えばよい。このような作業は、前述した特許文献1に記載された現行システムと同様である。
【0172】
すなわち、前述した特許文献1では、コンピュータの画面上で、マウス等のポインティングデバイスを用いて、大小の建築要素の各々をなぞる描画操作を行い、本システムでは、設計図の紙面上で、蛍光ペン100により、大小の建築要素の各々をなぞる指示作業を行うという相違はあるが、大小の建築要素について、別々に図形の特定を行い、別々に配置するという点では、前述した特許文献1の場合と同様である。
【0173】
このように別々の指示作業を行ってもよいが、本システムでは、図23に示すような一括指示の作業を行うこともできる。すなわち、蛍光ペン100により建築要素を示す線282をなぞる際に、2色を用いて塗り分け、異なる色の蛍光ペン指示部分280,281を描くようにする。この2色は、予め取り決められた2色でもよく、ユーザがその都度指定する2色としてもよいが、いずれの場合でも、配置位置が重なる大小の建築要素を示す線を一括指示するという特定の指示作業を行っていることを示す2色である。
【0174】
従って、蛍光ペン指示部分280,281は、異なる色であるが、大きい方の建築要素の指示図形(積算用図形)を抽出する際には、同じ色とみなして指示図形抽出手段36による処理を実行し、小さい方の建築要素の指示図形(積算用図形)を抽出する際には、蛍光ペン指示部分280だけを抽出する。
【0175】
このような一括指示を行うことにより、コピーして得られた別々の設計図の紙面上で、大きい方の建築要素を示す線284をなぞった蛍光ペン指示部分283と、小さい方の建築要素を示す線286をなぞった蛍光ペン指示部分285とを描くことに相当する作業を、1枚の設計図の紙面上で実現することができる。
【0176】
<換算情報設定手段40の構成:図3図8図9参照>
【0177】
換算情報設定手段40は、換算情報を自動で取得する換算情報自動取得処理と、ユーザによる換算情報の入力を受け付ける換算情報手動入力受付処理と、位置合わせ用情報を自動で取得する位置合わせ用情報自動取得処理と、ユーザによる位置合わせ用情報の入力を受け付ける位置合わせ用情報手動入力受付処理とを実行するものである。
【0178】
なお、換算情報自動取得処理および換算情報手動入力受付処理については、いずれか一方の処理しかできない構成としてもよい。また、位置合わせ用情報自動取得処理および位置合わせ用情報手動入力受付処理についても、いずれか一方の処理しかできない構成としてもよい。
【0179】
換算情報自動取得処理では、図3に示すように、換算情報設定手段40は、指示図形抽出手段36に対し、蛍光ペン100による指示図形としての換算情報取得用図形120(図8参照)の処理(換算情報取得用の数字の部分127の抽出処理も含む)の実行指令を送り、指示図形抽出手段36の換算情報取得用図形決定手段36Eから、換算情報取得用図形120の座標データ(図8の交点124,125の座標データ)および換算情報取得用の数字の部分127の抽出データを取得するとともに、取得した換算情報取得用の数字の部分127の抽出データを用いて、換算情報取得用図形120の周辺に配置された数字(蛍光ペン100により塗られている数字)をOCR処理で読み取る。それから、取得した換算情報取得用図形120の座標データおよびOCR処理による読取情報を用いて、設計図についての画像データの構成ドットの座標上の寸法と実際の寸法との換算情報を算出する。また、換算情報設定手段40は、図8の交点124,125についての構成ドットの座標上の距離を保ちながら回転させてこれらの2点が画面上で水平(真横)になるように画像全体を回転させる補正を行う。そして、換算情報設定手段40は、得られた換算情報(図8の交点124,125の座標データ、OCR処理で読み取った2点間の実際の寸法の数値、換算比、回転角度)を、換算情報記憶手段78(図2参照)に記憶させる。
【0180】
具体的には、例えば、換算情報取得用図形120の座標データ(図8の交点124,125の座標データ)から得られる2点間の距離が、3,822ドット(300dpiのスキャンであれば、設計図の紙面上で約324mmに相当)であり、OCR処理で読み取った数字が「12740」であるとすると、3,822ドットという構成ドットの座標上の寸法と、建物の実寸法=12,740(mm)とが対応することになるので、換算情報記憶手段78には、換算情報として、換算比K=実際の寸法/構成ドットの座標上の寸法=12,740(mm)/3,822(ドット)=3.333(mm/ドット)が記憶される。なお、換算比Kの定義はこの逆数でもよく、あるいは、比の値(分数を数値化した状態)ではなく、12,740(mm):3,822(ドット)という比のままの状態の換算情報を記憶してもよい。
【0181】
換算情報手動入力受付処理では、換算情報設定手段40は、設計図をスキャンして得られた画像データを読み込んで設計図を表示装置91に画面表示するとともに、画面表示された設計図上でのユーザによるマウス等のポインティングデバイスを用いた2点の座標位置の指定入力および指定された2点間の実際の寸法を示す数値の入力を受け付けることにより、設計図についての画面表示用の座標上の寸法と実際の寸法との換算情報の設定入力を受け付け、受け付けた換算情報を、換算情報記憶手段78に記憶させる。この際、画面表示用の座標上の寸法(ピクセルまたは画素で表される寸法)は、換算情報設定手段40により、画像データの構成ドットの座標上の寸法(スキャナ94によるスキャンのドットで表される寸法)に自動換算されるので、結局、画像データの構成ドットの座標上の寸法と実際の寸法との換算情報も設定することになる。また、換算情報設定手段40は、指定された2点を座標上の距離を保ちながら回転させてこれらの2点が画面上で水平(真横)になるように画像全体を回転させる補正を行う。そして、換算情報設定手段40は、得られた換算情報(入力指定された2点の座標データ、指定された2点間の実際の寸法を示す数値、換算比、回転角度)を、換算情報記憶手段78(図2参照)に記憶させる。
【0182】
具体的には、例えば、マウス等のポインティングデバイスでクリックした2点間の距離が、1,274(ピクセル)であり、建物の実寸法=12,740(mm)と入力したとすると、換算情報記憶手段78には、換算情報として、換算比κ=実際の寸法/画面表示用の座標上の寸法=12,740(mm)/1,274(ピクセル)=10(mm/ピクセル)が記憶され、これは、前述した特許文献1に記載された現行システムの場合と同じである。さらに、画面上の1ピクセルが、スキャンの3ドットに相当するとすれば、画面上の1,274(ピクセル)というのは、スキャナ94によるスキャンのドットでは、3,822ドットに相当(300dpiのスキャンであれば、設計図の紙面上で約324mmに相当)するので、換算情報記憶手段78には、換算情報として、換算比K=実際の寸法/構成ドットの座標上の寸法=12,740(mm)/3,822(ドット)=3.333(mm/ドット)が記憶される。
【0183】
換算情報手動入力受付処理は、前述した特許文献1に記載された現行システムの処理と同じであり、ユーザが、換算情報自動取得処理ではなく、換算情報手動入力受付処理を意図的に選択した場合、ユーザが、蛍光ペン100による換算情報取得用図形120(図8参照)の指示作業を行わなかった場合(指示作業を行うのを忘れたか、または、あえて行わなかった場合)、あるいは、ユーザによる換算情報取得用図形120の指示作業が不適切であった等の理由により換算情報取得用図形120の処理を行うことができなかった場合に実行される。
【0184】
位置合わせ用情報自動取得処理では、図3に示すように、換算情報設定手段40は、指示図形抽出手段36に対し、蛍光ペン100による指示図形としての位置合わせ用図形130(図9参照)の処理の実行指令を送り、指示図形抽出手段36の位置合わせ用図形決定手段36Fから、位置合わせ用図形130の座標データ(図9の交点133の座標データ)を取得し、これを基準点の座標データとして、換算情報記憶手段78(図2参照)に記憶させる。
【0185】
位置合わせ用情報手動入力受付処理では、換算情報設定手段40は、ユーザによるマウス等のポインティングデバイスを用いた基準点の設定入力を受け付け、受け付けた基準点の座標データを、位置合わせ用情報として、換算情報記憶手段78(図2参照)に記憶させる。
【0186】
位置合わせ用情報手動入力受付処理は、前述した特許文献1に記載された現行システムの処理と同じであり、ユーザが、位置合わせ用情報自動取得処理ではなく、位置合わせ用情報手動入力受付処理を意図的に選択した場合、ユーザが、蛍光ペン100による位置合わせ用図形130(図9参照)の指示作業を行わなかった場合(指示作業を行うのを忘れたか、または、あえて行わなかった場合)、あるいは、ユーザによる位置合わせ用図形130の指示作業が不適切であった等の理由により位置合わせ用図形130の処理を行うことができなかった場合に実行される。
【0187】
<建築要素登録・配置手段50の構成>
【0188】
建築要素登録・配置手段50は、建築要素登録手段51と、建築要素配置手段52とを備えて構成されている。
【0189】
建築要素登録手段51は、区画登録画面290等の各種の登録画面および部材選択画面291(図24参照)において、部材データ記憶手段71(図2参照)に記憶された部材の中からのユーザによる各建築要素(区画、壁、建具、基礎、屋根、備品、その他)を構成するのに使用する部材の選択入力を受け付ける使用部材選択受付処理を実行するとともに、この際に、各建築要素またはその構成部材に関して積算演算に必要な数値データ(例えば、構成部材を配置するピッチ、基礎の断面の各寸法等)や選択情報(例えば、構成部材の配置方法、基礎の種類等)、あるいはテキストデータ(説明文等)がある場合には、それらの入力を受け付ける非座標データ受付処理も実行し、受け付けた各データを、配置データ記憶手段79(図2参照)に記憶させる処理を実行するものである。なお、この建築要素登録手段51による処理内容の詳細は、図5および図6を用いた帳票作成処理の流れの説明とともに後述する。
【0190】
建築要素配置手段52は、区画配置画面300等の各種の配置画面(図25参照)において、画像データ記憶手段77から読み込んだ蛍光ペン作業後の設計図をスキャンした画像データ(回転補正後の状態のもの)を画面表示するとともに(ここでは、設計図の画像表示を合わせて配置画面と呼んでいる。)、図3に示すように、指示図形抽出手段36に対し、蛍光ペン100による指示図形としての積算用図形(図7の例では、処理対象の画像データとして、設計図110Aをスキャンした画像データが選択されている場合には、積算用図形115A,116Aであり、設計図110Bをスキャンした画像データが選択されている場合には、積算用図形115B,116Bであり、設計図110Cをスキャンした画像データが選択されている場合には、積算用図形115Cである。)の処理の実行指令を送り、[1]指示図形抽出手段36の蛍光ペン指示部分抽出手段36Aから、積算用図形(蛍光ペン指示部分抽出手段36Aにより図形単位で抽出された蛍光ペン指示部分)の各構成ドットの座標データを取得するか、または、[2]指示図形抽出手段36の積算用図形決定手段36Dから、積算用図形(積算用図形決定手段36Dまでの処理を終えた積算用図形)の座標データを取得し、[1]で取得した積算用図形(図形単位の蛍光ペン指示部分)の各構成ドットの座標データ、または[2]で取得した積算用図形の座標データ(積算用図形決定手段36Dまでの処理を終えて得られた座標データ)を用いて、画面表示した設計図に、積算用図形を重ねて表示し(例えば、赤色等で色付け表示をするか、または点滅表示し)、1つの画像データの中に複数の積算用図形が含まれている場合には、それらの積算用図形の中から配置対象の積算用図形を選択するユーザの操作を受け付け、さらに[1]の場合には、指示図形抽出手段36に対し、積算用図形決定手段36Dまでの処理を終えるための実行指令を送り、積算用図形決定手段36Dから、積算用図形(積算用図形決定手段36Dまでの処理を終えた積算用図形)の座標データを取得する積算用図形取得処理を実行し、この際に、各建築要素またはその構成部材に関して積算演算に必要な数値データ(例えば屋根の勾配等)や選択情報(例えば、基礎の種類等)、あるいはテキストデータ(説明文等)がある場合には、それらの入力を受け付ける非座標データ受付処理も実行し、受け付けた各データ(配置対象の積算用図形の座標データ、積算演算に必要な数値データや選択情報、テキストデータ)を、配置データ記憶手段79(図2参照)に記憶させる処理を実行するものである。
【0191】
ここで、建築要素配置手段52は、図25に示すように、複数の積算用図形115A,116Aの中から配置対象の積算用図形を選択するユーザの操作を受け付ける際には、複数の積算用図形115A,116Aを、ユーザの送りボタン301,302の操作に合わせて、画面上で1つずつ順番に赤色等で色付け表示(この色付け表示の色は、蛍光ペン100の色とは異なる。)または点滅表示する。そして、ユーザは、色付け表示または点滅表示が、所望の配置対象の積算用図形の位置に来たときに、図形選択ボタン303を押下操作するので、そのときに色付け表示または点滅表示されていた積算用図形が、配置対象の積算用図形となる。なお、この建築要素配置手段52による処理内容の詳細は、図5および図6を用いた帳票作成処理の流れの説明とともに後述する。
【0192】
上記の赤色等の色付け表示または点滅表示についての[1]と[2]の相違は、指示図形抽出手段36による処理(図3参照)が、どこまで進んだ段階で、ユーザによる配置対象の積算用図形の選択操作を受け付けるかの相違である。
【0193】
[1]の場合は、指示図形抽出手段36の処理が、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aの処理まで終了し、処理対象の画像データの中に含まれる蛍光ペン指示部分が図形単位で分けられて積算用図形毎の区別が付くようになっている段階で、建築要素配置手段52が、それぞれの積算用図形の蛍光ペン指示部分の各構成ドットの座標データを取得し、それらの座標データを用いて、蛍光ペン指示部分について、色付け表示または点滅表示を行うことになる。勿論、ユーザの選択操作を受け付けるという目的を達成することができればよいので、全ての構成ドットの座標データを用いるのではなく、間引き処理を行って一部の構成ドットの座標データを用いて色付け表示または点滅表示を行ってもよい。そして、ユーザの選択操作を受け付けた段階では、図形分断手段36B、フィッティング手段36C、および積算用図形決定手段36Dの処理が未だ済んでいないので、ユーザの選択操作後に、配置対象として選択された積算用図形についてだけ、図形分断手段36B、フィッティング手段36C、および積算用図形決定手段36Dの処理を行い、その処理結果を、建築要素配置手段52が受け取り、配置データ記憶手段79(図2参照)に記憶させる。
【0194】
[2]の場合は、指示図形抽出手段36の処理が、積算用図形決定手段36Dの処理まで終了し、処理対象の画像データの中に含まれる全ての積算用図形の座標データが得られている段階で、建築要素配置手段52が、それぞれの積算用図形の座標データを取得し、それらの座標データを用いて、フィッティングで得られた線上の線分について、色付け表示または点滅表示を行うことになる。つまり、[1]の場合のように蛍光ペン指示部分について色付け表示または点滅表示を行うわけではない。そして、ユーザの選択操作を受け付けた段階では、図形分断手段36B、フィッティング手段36C、および積算用図形決定手段36Dの処理は既に済んでいるので、建築要素配置手段52は、必要なデータ(配置データ記憶手段79(図2参照)に記憶させるデータ)を、既に積算用図形決定手段36Dから受け取っていることになる。
【0195】
また、これらの建築要素登録手段51や建築要素配置手段52により入力を受け付ける数値データは、蛍光ペン100による積算用図形の座標データとともに、見積や原価計算等のための積算に用いられるデータであり、積算用図形の座標データではない非座標データである。例えば、積算用図形の座標データで面積が得られる場合に、非座標データとして高さ等の数値を入力すれば、体積が得られるという具合に、積算用図形の座標データから得られるデータの次元を増やすこと等ができる。
【0196】
<積算手段60の構成>
【0197】
積算手段60は、集計手段61と、帳票作成手段62とを備えて構成されている。
【0198】
集計手段61は、建築要素登録・配置手段50により受け付けられて配置データ記憶手段79(図2参照)に記憶されている座標データおよび換算情報設定手段40により取得されて換算情報記憶手段78(図2参照)に記憶されている換算情報(換算比)を用いるか、または、これらの座標データおよび換算情報(換算比)に加えて建築要素登録・配置手段50により受け付けられて配置データ記憶手段79(図2参照)に記憶されている非座標データ(部材の配置方法等の選択情報や、数値入力されたデータ)若しくは建築概要入力手段34により受け付けられて建築概要記憶手段76(図2参照)に記憶されている非座標データ(階高等)を用いて、建築要素の実際の寸法による長さ、面積、若しくは体積を換算算出するとともに、指定された配置方法に従って当該建築要素の構成部材の長さ、面積、若しくは体積を算出または決定し、換算算出して得られた長さ、面積、若しくは体積、あるいは配置方法に従って算出または決定された長さ、面積、若しくは体積を、使用する部材についての部材名称(部材識別情報)に関連付けられて部材データ記憶手段71(図2参照)に記憶された部材単体仕様情報で除するかまたは除算と等価な演算を行うことにより、使用する部材についての数量(個数)を算出し、算出した数量(個数)に、部材データ記憶手段71(図2参照)に記憶された見積単価や実行単価(原価)を乗ずることにより、使用する部材についての見積金額や実行金額を算出し、さらに、見積金額および実行金額から粗利率を算出し、部材データ記憶手段71から取得したデータ(見積単価、実行単価、単位等)および算出したデータ(数量、見積金額、実行金額、粗利率)を、集計データ記憶手段80(図2参照)に記憶させる処理を実行するものである。
【0199】
また、集計手段61は、壁の配置位置とこの壁に設けられる建具(建具設置用の開口部)の配置位置とが重なる場合のように、大小の建築要素の配置位置が重なる場合には、大きい方の建築要素について建築要素登録・配置手段50により得られた座標データを用いて換算算出して得られた長さ、面積、若しくは体積から、小さい方の建築要素について建築要素登録・配置手段50により得られた座標データを用いて換算算出して得られた長さ、面積、若しくは体積を減じることにより、小さい方の建築要素の占有部分を除いた状態での大きい方の建築要素の実際の寸法による長さ、面積、若しくは体積を算出し、算出した長さ、面積、若しくは体積を、使用する部材についての部材識別情報に関連付けられて部材データ記憶手段71(図2参照)に記憶された部材単体仕様情報で除するかまたは除算と等価な演算を行うことにより、使用する部材についての数量を算出する。
【0200】
この際、大小の建築要素の関連付け、例えば、建築要素である壁と、建築要素である建具との関連付けは、集計手段61を構成するプログラムの内部に記述しておいてもよく、あるいは、建築要素登録・配置手段50による大きい方の建築要素の登録や配置の際に、小さい方の建築要素(既に配置した建築要素、またはこれから配置する予定の建築要素)をユーザが指定して関連付けてもよく、逆に、建築要素登録・配置手段50による小さい方の建築要素の登録や配置の際に、大きい方の建築要素(既に配置した建築要素、またはこれから配置する予定の建築要素)をユーザが指定して関連付けてもよい。また、大小の建築要素の配置位置が重なるか否かについては、上記のようなプログラムの内部の記述またはユーザの指定による建築要素同士の関連付けに従って一律に重なるものとみなして処理(大きい方のサイズ情報から小さい方のサイズ情報を減じる処理)を行ってもよく、あるいは、大小の建築要素のそれぞれについての積算用図形の座標データを用いて、実際に積算用図形が重なっているか否かを判定し(ある程度のドットのずれ量は許容する。)、処理(大きい方のサイズ情報から小さい方のサイズ情報を減じる処理)を行ってもよい。
【0201】
例えば、集計手段61は、建具用の開口部を設けた状態の壁の実寸の長さや面積を算出する場合には、大きい方の建築要素である壁についての積算用図形の座標データを用いて換算算出して得られた長さや面積から、小さい方の建築要素である建具(またはその建具用の開口部)についての積算用図形の座標データを用いて換算算出して得られた長さや面積を減じることにより、建具用の開口部を設けた状態の壁の実際の寸法による長さや面積を算出することができる。
【0202】
さらに、集計手段61は、仮想部材(例えば「荷揚げ費」等)については、部材データ記憶手段71(図2参照)に記憶されている当該仮想部材についての積算根拠を取得し、その積算根拠に従って、積算根拠に係る長さ、面積、体積等(例えば、2F以上施工面積、掘削体積、ベランダ面積等)を算出または取得し、算出または取得した積算根拠に係る長さ、面積、体積等に、部材データ記憶手段71(図2参照)に記憶されている当該仮想部材についての作業の見積単価や実行単価(例えば、単位長さ当たりの価格、単位面積当たりの価格、単位体積当たりの価格等)を乗じることにより、当該仮想部材に係る作業の費用(見積金額や実行金額)を算出する。この際、積算根拠に係る長さ、面積、体積等(例えば、2F以上施工面積、掘削体積、ベランダ面積等)の算出または取得処理は、建築要素登録・配置手段50により得られて配置データ記憶手段79(図2参照)に記憶されている座標データや非座標データ若しくは建築概要入力手段34により受け付けられて建築概要記憶手段76(図2参照)に記憶されている非座標データ(階高等)を用いた算出処理、またはこれらの記憶手段79,76からのデータ取得処理により実現される。
【0203】
帳票作成手段62は、集計データ記憶手段80(図2参照)に記憶されたデータ(金額等のデータ)、並びに、会社情報記憶手段72、取引先情報記憶手段74、および発注先記憶手段75(図2参照)に記憶されたデータ(住所、名前等の宛名や差出人に関するデータ)を用いて、見積書若しくはその一部、原価計算書若しくはその一部、またはその他の建築関連帳票若しくはその一部を作成する処理を実行するものである。
【0204】
<記憶手段70の構成:図2参照>
【0205】
部材データ記憶手段71は、図2に示すように、工事(科目)別番号(工事識別情報)と、部材名称(部材識別情報)と、見積単価と、実行単価(原価)と、積算根拠と、ロット単位と、部材単体仕様情報(部材単体での長さ、面積、体積等)と、単位(m、平米、立米、kg等)とを対応させて記憶するものである。
【0206】
ここで、本実施形態では、部材名称(部材識別情報)、見積単価、実行単価(原価)等の部材データは、「工事(科目)別番号(工事識別情報)」と関連付けて記憶されているが、「取引先(仕入先)の会社名(取引先識別情報)」とは関連付けられていない。従って、工事(科目)の種別が決まると、その部材名称(部材識別情報)を有する部材の見積単価や実行単価(原価)は決まることになるので、発注先登録手段32により、工事(科目)といずれの取引先(仕入先)の業者とが対応付けられても、見積単価や実行単価(原価)は変わらないことになる。つまり、取引先(仕入先)の業者によらずに、一律に各部材の見積単価や実行単価(原価)が定まっていることになり、標準価格(標準的な単価)が登録されていることになる。このため、システム構成の複雑化を避け、登録作業の容易化が図られている。但し、部材データを「取引先(仕入先)の会社名(取引先識別情報)」と関連付けて記憶させ、同じ部材でも、取引先(仕入先)の業者が異なれば、異なる見積単価や実行単価(原価)となるようにしてもよい。
【0207】
また、「ロット単位」とは、売買単位(取引単位)となる数量(個数)、すなわち売買(取引)できる最小の数量(個数)である。例えば、ある部材が箱単位でしか売買(取引)することができず、1箱が10個であるときに、積算演算により建築要素を構成するのにその部材が15個必要であると算出された場合には、2箱=20個の売買(取引)となる。
【0208】
また、「積算根拠」とは、積算手段60による積算処理を行う際に、(1)建築要素登録・配置手段50によりユーザからの選択入力を受け付けて指定された部材の配置方法に従って積算処理を行うか、または、(2)建築要素登録・配置手段50による配置方法の選択受付処理を経ることなく、システムで予め定められた方法に従って積算処理を行うかを区分するとともに、後者の(2)の場合に、幾つかの予め定められた方法のうち、いずれの方法に従うのかを定めるための情報である。
【0209】
より具体的には、前者の(1)の場合は、部材データ記憶手段71に、例えば積算根拠=「0(配置時の根拠に基づく)」というデータが記憶されている。この積算根拠=「0」となっている部材は、物体としての通常の部材であり、建築要素登録・配置手段50によりユーザの配置方法の選択入力を受け付けてから、積算処理の方法が定まることになる。
【0210】
一方、後者の(2)の場合は、部材データ記憶手段71に、例えば積算根拠=「1(施工面積)」、「2(床面積)」、「3(2F以上施工面積)」、「4(外壁面積(2階軒上含まず))」、「5(足場用外壁面積)」等のデータが記憶されている。この積算根拠=「1」以降のデータ(「0」以外のデータ)となっている部材は、物体としての部材ではなく、費用の発生する作業(作業に要する費用)を、部材とみなしているものであり、仮想部材である。これらの仮想部材に関する費用、すなわち作業に要する費用は、システムで予め定められた方法で、例えば、積算根拠=「1(施工面積)」の場合には、施工面積を用いて、積算手段60により算出される。
【0211】
会社情報記憶手段72は、図2に示すように、会社名、郵便番号、住所、TEL番号、FAX番号、代表者名、口座情報(銀行名、支店名、当座預金・普通預金の別、口座番号)等を対応付けて記憶するものである。これらの会社情報は、本システムのユーザとなる会社(本システムを操作するユーザが所属する会社)の情報であり、見積書、請求書、発注書等に発行元として記載される会社の情報である。
【0212】
ユーザ情報記憶手段73は、図2に示すように、ユーザ名、パスワード、入力等の操作項目毎の権限の有無情報(例えば、建築概要を入力できるか否か、見積書を作成できるか否か、発注先登録を行うことができるか否か、ユーザ登録を行うことができるか否か等)、確定データ解除(例えば、一旦確定させた見積書の金額を変更するための確定データ解除)の許否情報等を対応付けて記憶するものである。なお、システム管理者から、ユーザ登録を行う権限を付与されたユーザは、システム管理者と同様に、他のユーザの権限の登録を行うことができる。
【0213】
取引先情報記憶手段74は、図2に示すように、取引先(仕入先)の会社名(取引先識別情報)、郵便番号、住所、TEL番号、FAX番号、担当者等を対応付けて記憶するものである。これらの取引先(仕入先)情報は、各工事を請け負う業者の情報であり、発注書に宛先として記載される業者の情報である。
【0214】
発注先記憶手段75は、図2に示すように、物件名(物件識別情報)と、工事(科目)別番号(工事識別情報)と、取引先(仕入先)の会社名(取引先識別情報)とを対応付けて記憶するものである。但し、物件毎のファイルを作成する場合は、ファイル自体あるいはそのファイルの名称が物件識別情報となるので、物件名を対応付けて記憶する必要はない。取引先(仕入先)の会社名(取引先識別情報)は、取引先情報記憶手段74に記憶されている取引先(仕入先)の中からユーザにより選択された取引先(仕入先)の会社名である。従って、ある物件(建築物)について、仮設工事は、取引先Aが行い、足場工事は、取引先Bが行い、基礎工事は、取引先Cが行う等のような工事毎の発注先登録情報が記憶されている。
【0215】
建築概要記憶手段76は、図2に示すように、物件名(物件識別情報)、施主名、建築場所、工法(木造軸組金物工法等)、基礎の種別(布基礎、ベタ基礎、土間コンの別)、基礎高さ、建築物の階数、1階高さ、2階高さ、3階高さ、大工工事様式等を対応付けて記憶するものである。ここに記憶されるデータの一部は、本発明における「非座標データ」(請求項に記載された「非座標データ」)に該当するものとしてもよい。なお、ここでは、一例として、建築概要入力手段34により3階高さまでを入力して記憶することにしているが、4階以上の高さを入力して記憶するようにしてもよく、あるいは2階高さまでとしてもよい。
【0216】
画像データ記憶手段77は、図2に示すように、建築物の設計図の画像データ(イメージデータ)を記憶するものである。この画像データは、蛍光ペン作業を行った状態の紙の設計図をスキャナ94で読み込んで生成された画像データである。例えば、2階建ての建築物であれば、1階の間取りを示す平面図(設計図)をコピーして作成された複数枚の設計図(同じ1階平面図において、異なる蛍光ペン作業が行われている状態の複数枚の設計図)、および2階の間取りを示す平面図(設計図)をコピーして作成された複数枚の設計図(同じ2階平面図において、異なる蛍光ペン作業が行われている状態の複数枚の設計図)の各画像データである。
【0217】
換算情報記憶手段78は、図2に示すように、物件名(物件識別情報)、各画像データについての指定された2点の座標データ(コピー前の設計図が同じであっても、コピー後の複数枚の設計図のスキャンは個別に行われるので、各画像データ間で異なっている。)、各画像データについての2点間の実際の寸法(原則として、各画像データ間で共通である。)、各画像データの基準点の座標データ、各画像データの換算比(原則として、各画像データ間で共通である。)、各画像データの回転角度(指定された2点の座標データが、各画像データ間で異なっているので、回転角度も異なっている。)等を対応付けて記憶するものである。但し、物件毎のファイルを作成する場合は、ファイル自体あるいはそのファイルの名称が物件識別情報となるので、物件名を対応付けて記憶する必要はない。
【0218】
配置データ記憶手段79は、図2に示すように、物件名(物件識別情報)、建築要素種別情報(壁、基礎、屋根等のいずれの建築要素であるかの別)、建築要素識別情報(登録した外壁、布基礎等の建築要素の個別名称)、配置する部材(1つの建築要素に複数の部材を配置する場合には、それらの各部材)についての部材名称(部材識別情報)、積算用図形の座標データ(蛍光ペン100による指示図形を抽出して得られたデータ)、非座標データ(数値入力されたデータ、部材の配置方法等の選択情報、説明文等のテキストデータ)等を対応付けて記憶するものである。但し、物件毎のファイルを作成する場合は、ファイル自体あるいはそのファイルの名称が物件識別情報となるので、物件名を対応付けて記憶する必要はない。なお、非座標データについては、建築要素に付随するデータの場合には、建築要素識別情報に関連付けて記憶され、建築要素を構成するために配置される各部材に付随するデータの場合には、建築要素識別情報および各部材についての部材識別情報に関連付けて記憶される。
【0219】
集計データ記憶手段80は、図2に示すように、物件名(物件識別情報)、部材名称(部材識別情報)、規格、単位、見積数量(個数)、見積単価、見積金額、実行数量(個数)、実行単価、実行金額、粗利率等を対応付けて記憶するものである。但し、物件毎のファイルを作成する場合は、ファイル自体あるいはそのファイルの名称が物件識別情報となるので、物件名を対応付けて記憶する必要はない。
【0220】
<第1実施形態の建築積算システム10による帳票作成処理の流れ:図5図6参照>
【0221】
このような第1実施形態においては、以下のようにして建築積算システム10により帳票作成処理が行われる。
【0222】
図5において、先ず、各物件(各建築物)に共通の作業として、ユーザは、入力手段92を操作して各部材データ(部材データ群)の登録のための入力を行い、部材データ登録手段21は、この入力を受け付けて、各部材データ(部材データ群)を部材データ記憶手段71(図2参照)に記憶させる(ステップS1)。
【0223】
次に、ユーザは、入力手段92を操作して自分の会社に関する情報の登録のための入力を行い、会社情報登録手段22は、この入力を受け付けて、会社情報を会社情報記憶手段72(図2参照)に記憶させる(ステップS2)。
【0224】
それから、ユーザ(最初はシステム管理者)は、入力手段92を操作して本システムを操作することができるユーザの権限(入力操作しているユーザが他のユーザに付与する権限)に関する情報の登録のための入力を行い、ユーザ登録手段23は、この入力を受け付けて、ユーザの権限に関する情報をユーザ情報記憶手段73(図2参照)に記憶させる(ステップS3)。但し、この権限の登録処理は、作業を行うユーザを追加する必要が生じたときに行えばよいので、このタイミングで行う必要はなく、説明の便宜上、ここで記載しているだけである。
【0225】
続いて、ユーザは、入力手段92を操作して自分の会社の取引先(仕入先)の業者の情報の登録のための入力を行い、取引先登録手段25は、この入力を受け付けて、取引先(仕入先)の業者の情報を取引先情報記憶手段74(図2参照)に記憶させる(ステップS4)。
【0226】
その後、対象物件についての帳票作成処理を開始する。先ず、ユーザは、帳票の作成中または作成済の既存物件が複数ある場合には、それらの中から、これから帳票を作成する対象物件を選択し、物件選択手段31は、この対象物件の選択を受け付ける。一方、既存物件がなく、新規物件についての帳票作成を行う場合には、物件選択手段31により、その物件用のファイルが新規に作成されるか、またはデータベースにその物件用のデータの格納領域が作成される(ステップS5)。
【0227】
次に、発注先登録手段32により、各工事(科目)について、取引先情報記憶手段74(図2参照)に記憶された幾つかの取引先(仕入先)の会社名が表示装置91に画面表示されるので、ユーザは、入力手段92を操作し、それらの中から、対象物件(建築物)についての工事毎の発注先(各工事を発注する取引先(仕入先)の業者)を登録するための選択入力を行い、発注先登録手段32は、この選択入力を受け付けて、工事(科目)毎の取引先(仕入先)の会社名(取引先識別情報)を発注先記憶手段75(図2参照)に記憶させる(ステップS6)。これにより、対象物件(建築物)について、仮設工事は、取引先Aが行い、足場工事は、取引先Bが行い、基礎工事は、取引先Cが行う等のようなユーザによる選択情報が登録される。
【0228】
それから、部材データ記憶手段71(図2参照)に複数の部材データ群(複数のファイル)が記憶されている場合には、部材データ入出力手段33により、それらの複数の部材データ群(複数のファイル)の名称やアイコン等が表示装置91に画面表示されるので、ユーザは、入力手段92を操作し、それらの中から、使用する部材データ群(使用するファイル)を選択する(ステップS7)。
【0229】
続いて、ユーザは、入力手段92を操作して建築概要の入力を行い、建築概要入力手段34は、この入力を受け付けて、建築概要を建築概要記憶手段76(図2参照)に記憶させる(ステップS8)。
【0230】
ここまでのステップS1~S8の処理は、前述した特許文献1に記載された現行システムの場合と同様である。
【0231】
その後、ユーザは、蛍光ペン100を用いて設計図の紙面上の所望の線(建築要素を示す線、寸法線、寸法補助線等)をなぞる指示作業(蛍光ペン作業)を行い、蛍光ペン作業後の設計図をスキャナ94によりカラースキャンし、カラースキャンして得られた各画像データを画像データ記憶手段77に記憶させる(ステップS9)。
【0232】
この際、ユーザは、図7に示すように、先ず、1枚の紙の設計図110に、建築要素を示す線と同じ色(通常は、黒色)で、位置合わせ用図形112を描いておく。また、ユーザは、設計図110の中に、換算情報取得用図形113およびその周辺に換算情報取得用の数字114が描かれていることを確認する。それから、ユーザは、設計図110をコピーして複数枚の紙の設計図110A,110B,110C,…を作成する。
【0233】
続いて、ユーザは、各設計図110A,110B,110C,…において、蛍光ペン100を用いて所望の建築要素を示す線をなぞることにより、指示図形としての積算用図形115A,116A,115B,116B,115C,…(いずれも蛍光ペン指示部分)を描くとともに、蛍光ペン100を用いて、通常は黒色で描かれている位置合わせ用図形112および換算情報取得用図形113をなぞることにより、指示図形としての位置合わせ用図形112A,112B,112C,…(いずれも蛍光ペン指示部分)および換算情報取得用図形113A,113B,113C,…(いずれも蛍光ペン指示部分)を描き、さらに、蛍光ペン100を用いて、換算情報取得用の数字114およびその周辺部を塗ることにより、換算情報取得用の数字の部分114A,114B,114C,…(いずれも蛍光ペン指示部分)を描く。
【0234】
なお、コピーする前の設計図110の段階で、蛍光ペン100を用いて、位置合わせ用図形112A,112B,112C,…、換算情報取得用図形113A,113B,113C,…、および換算情報取得用の数字の部分114A,114B,114C,…(いずれも蛍光ペン指示部分)を作成しておき、その状態の設計図110をカラーコピーしてもよい。
【0235】
そして、ユーザは、全ての蛍光ペン作業が終わった後に、蛍光ペン作業後の各設計図110A,110B,110C,…をスキャナ94によりカラースキャンし、得られた各画像データを画像データ記憶手段77に記憶させる。
【0236】
続いて、ユーザは、処理対象とする画像データ(建築要素登録・配置手段50による建築要素の配置・登録に使用する画像データ)を選択し、換算情報設定手段40は、この選択を受け付けて、処理対象の画像データを画像データ記憶手段77(図2参照)から読み込む(ステップS10)。なお、このユーザによる画像選択の受付処理は、換算情報設定手段40ではなく、処理手段20Aの他の機能としてもよい。
【0237】
それから、指示図形抽出手段36の蛍光ペン指示部分抽出手段36A(図3参照)により、画像データの中から、蛍光ペン指示部分により形成された指示図形等を抽出する。この抽出処理の内容は、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aの説明で既に詳述しているので、ここでは詳しい説明を省略する。例えば、図7の例では、蛍光ペン指示部分により形成された積算用図形115A,116A、位置合わせ用図形112A、換算情報取得用図形113A、および換算情報取得用の数字の部分114Aを抽出する(ステップS11)。
【0238】
なお、積算用図形と、それ以外の指示図形等とを異なる色にする取り決めをしている場合には、色のデータに基づき、積算用図形以外の指示図形等だけを抽出することができるので、そのようにしてもよく、積算用図形を含めて全ての指示図形等を抽出してもよい。前者のように積算用図形以外の指示図形等だけを抽出し、その処理を済ませ、換算情報設定手段40による画像全体の回転補正を行った場合(後述する図6のステップS18参照)には、積算用図形は、回転補正後の画像データの中から抽出することもできる。一方、後者のように積算用図形を含めて全ての指示図形等を抽出した場合には、積算用図形を含めて全ての指示図形等が、回転補正をしていない状態の画像データの中から抽出されることになる。
【0239】
続いて、換算情報設定手段40により、処理対象の画像データの中に、換算情報取得用図形の指示があるか否かを指示図形抽出手段36に問い合わせて判断し(ステップS12)、換算情報取得用図形の指示があると判断した場合には、換算情報設定手段40により、換算情報を自動で取得する換算情報自動取得処理を実行する(ステップS13)。すなわち、換算情報設定手段40から指示図形抽出手段36に実行指令を送り、換算情報取得用図形(コの字状の図形)について、図形分断手段36Bにより、屈折部を決定して指示図形を線分に分断する処理を実行し、フィッティング手段36Cにより、直線フィッティングを行い、換算情報取得用図形決定手段36Eにより、最終的なフィット線の交点を求め、求めた交点の座標データを換算情報設定手段40に渡す処理を実行する。これらの処理の内容は、図形分断手段36B、フィッティング手段36C、換算情報取得用図形決定手段36Eの説明で既に詳述しているので、ここでは詳しい説明を省略する。また、換算情報設定手段40は、換算情報取得用図形決定手段36Eから、換算情報取得用の数字の部分の抽出データも受け取り、OCR処理で数字を読み取る処理も実行する。
【0240】
一方、上述したステップS12で、換算情報取得用図形の指示がないと判断した場合には、換算情報設定手段40により、ユーザによる換算情報の入力を受け付ける換算情報手動入力受付処理を実行する(ステップS14)。すなわち、画面表示された設計図上でのユーザによるマウス等のポインティングデバイスを用いた2点の座標の指定、およびキーボードを用いた2点間の実際の寸法の入力を受け付ける。これらの処理の内容は、前述した特許文献1に記載された現行システムと同様であり、換算情報設定手段40の説明で既に詳述しているので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0241】
それから、図6において、換算情報設定手段40により、処理対象の画像データの中に、位置合わせ用図形の指示があるか否かを指示図形抽出手段36に問い合わせて判断し(ステップS15)、位置合わせ用図形の指示があると判断した場合には、換算情報設定手段40により、位置合わせ用情報を自動で取得する位置合わせ用情報自動取得処理を実行する(ステップS16)。すなわち、換算情報設定手段40から指示図形抽出手段36に実行指令を送り、位置合わせ用図形(L字状の図形)について、図形分断手段36Bにより、屈折部を決定して指示図形を線分に分断する処理を実行し、フィッティング手段36Cにより、直線フィッティングを行い、位置合わせ用図形決定手段36Fにより、最終的なフィット線の交点を求め、求めた交点の座標データを換算情報設定手段40に渡す処理を実行する。これらの処理の内容は、図形分断手段36B、フィッティング手段36C、位置合わせ用図形決定手段36Fの説明で既に詳述しているので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0242】
一方、上述したステップS15で、位置合わせ用図形の指示がないと判断した場合には、換算情報設定手段40により、ユーザによる位置合わせ用情報の入力を受け付ける位置合わせ用情報手動入力受付処理を実行する(ステップS17)。すなわち、画面表示された設計図上でのユーザによるマウス等のポインティングデバイスを用いた基準点の座標の入力を受け付ける。この処理の内容は、前述した特許文献1に記載された現行システムと同様であり、換算情報設定手段40の説明で既に詳述しているので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0243】
それから、換算情報設定手段40により、前述したステップS13の換算情報自動取得処理、またはステップS14の換算情報手動入力受付処理で得られたデータを用いて、換算情報(換算比)および画像データの回転角度を算出し、これらを換算情報記憶手段78に記憶させるとともに、算出した回転角度を用いて画像データ全体の回転補正を行う(ステップS18)。この処理の内容は、換算情報設定手段40の説明で既に詳述しているので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0244】
それから、建築要素登録手段51により、建築要素の登録処理を実行する(ステップS19)。例えば、区画の登録を行う際には、建築要素登録手段51により、図24に示すような区画登録画面290および部材選択画面291が表示装置91に画面表示されるので、ユーザは、区画登録画面290において、入力手段92を操作し、登録する区画についての区画名(例えば「子供部屋」等)を入力するとともに、非座標データ(積算用図形の座標データではないデータ)として、区画の説明、用途種別(一般、ポーチ、吹き抜け、ベランダ、バルコニー、車庫等の別)、床の高さ、FL(床仕上げレベル)からの天井高さ等を入力し、さらに、この区画に一緒に配置する部材およびその部材の配置方法を、部材選択画面291で選択し、選択した部材およびその部材の配置方法(配置の仕方)を区画登録画面290に表示させる。そして、これらの区画登録画面290および部材選択画面291で入力されたデータ(区画であることを示す建築要素種別情報、建築要素識別情報である登録した区画についての区画名(例えば「子供部屋」等)、配置した部材についての部材識別情報である部材名称、部材の配置方法等の非座標データ)は、建築要素登録手段51により、配置データ記憶手段79(図2参照)に記憶される。なお、部材選択画面291には、部材データ記憶手段71(図2参照)に記憶されている部材がすべて表示されるか、あるいは、例えば工事毎などのように部分的に表示される。
【0245】
続いて、建築要素配置手段52により、建築要素の配置処理を実行する(ステップS20)。例えば、区画の配置を行う際には、建築要素配置手段52により、図25に示すような区画配置画面300が表示装置91に画面表示され、この区画配置画面300には、図24の区画登録画面290で登録された区画についての区画名(例えば「子供部屋」等)が表示されるので、ユーザは、入力手段92を操作し、その中から、配置する区画を選択入力する。また、各建築要素(各区画)またはその構成部材に関して積算演算に必要な数値データがある場合には、建築要素配置手段52により、その入力を受け付ける非座標データ受付処理も行う。
【0246】
さらに、建築要素配置手段52により、図25に示す区画配置画面300等の各種の配置画面において、画像データ記憶手段77から読み込んだ処理対象の画像データ、すなわち蛍光ペン作業後の設計図をスキャンした画像データ(回転補正後の状態のもの)を、表示装置91に画面表示する。なお、ここでは、設計図の画像表示を合わせて配置画面と呼んでいる。図25示す区画配置画面300の例では、図7の設計図110Aをスキャンした画像データが画面表示されている。
【0247】
そして、建築要素配置手段52により、指示図形抽出手段36に対し、蛍光ペン100による指示図形としての積算用図形(処理対象の画像データとして図7の設計図110Aをスキャンした画像データが選択されているとすると、積算用図形115A,116Aが該当する。)の処理の実行指令を送り、[1]指示図形抽出手段36の蛍光ペン指示部分抽出手段36Aから、積算用図形(蛍光ペン指示部分抽出手段36Aにより図形単位で抽出された蛍光ペン指示部分)の各構成ドットの座標データを取得するか、または、[2]指示図形抽出手段36の積算用図形決定手段36Dから、積算用図形(積算用図形決定手段36Dまでの処理を終えた積算用図形)の座標データを取得する。
【0248】
ここで、[1]の場合には、建築要素配置手段52からの実行指令を受けた指示図形抽出手段36は、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aによる処理を実行し、処理対象の画像データの中に含まれる全ての積算用図形の蛍光ペン指示部分を図形単位で分け、それぞれの積算用図形の蛍光ペン指示部分の各構成ドットの座標データを建築要素配置手段52に渡す。従って、図形分断手段36B、フィッティング手段36C、および積算用図形決定手段36Dの処理が未だ済んでいない状態である。
【0249】
また、[2]の場合には、建築要素配置手段52からの実行指令を受けた指示図形抽出手段36は、処理対象の画像データの中に含まれる全ての積算用図形について、蛍光ペン指示部分抽出手段36A、図形分断手段36B、フィッティング手段36C、および積算用図形決定手段36Dの処理を済ませ、それぞれの積算用図形の座標データを建築要素配置手段52に渡す。
【0250】
それから、建築要素配置手段52は、[1]の場合には、取得した積算用図形(図形単位で分けられた蛍光ペン指示部分)の各構成ドットの座標データを用いて、画面表示した設計図に、積算用図形を重ねて表示する(例えば、赤色等で色付け表示をするか、または点滅表示する)。この[1]の場合は、蛍光ペン指示部分について、色付け表示または点滅表示を行うことになる。また、[2]の場合には、取得した積算用図形の座標データ(積算用図形決定手段36Dまでの処理を終えて得られた座標データ)を用いて、画面表示した設計図に、積算用図形を重ねて表示する(例えば、赤色等で色付け表示をするか、または点滅表示する)。この[2]の場合は、蛍光ペン指示部分ではなく、フィッティングで得られた線上の線分について、色付け表示または点滅表示を行うことになる。
【0251】
続いて、ユーザが、入力手段92を用いて、図25の送りボタン301,302を押下操作すると、建築要素配置手段52により、このユーザ操作に合わせて、複数の積算用図形115A,116Aについて、画面上で1つずつ順番に赤色等で色付け表示(この色付け表示の色は、蛍光ペン100の色とは異なる。)または点滅表示が行われる。従って、ユーザは、色付け表示または点滅表示が、所望の配置対象の積算用図形の位置(複数の積算用図形115A,116Aのいずれかの位置)に来たときに、図形選択ボタン303を押下操作すればよく、その押下操作をしたときに色付け表示または点滅表示されていた積算用図形が、配置対象の積算用図形となる。なお、ここでユーザが選択する配置対象の積算用図形は、区画配置画面300で選択した区画(例えば「子供部屋」という区画名を付した区画)に対応する積算用図形である。
【0252】
さらに、[1]の場合には、建築要素配置手段52により、指示図形抽出手段36に対し、配置対象として選択した積算用図形について、積算用図形決定手段36Dまでの処理を終えるための実行指令を送り、積算用図形決定手段36Dから、配置対象の積算用図形(積算用図形決定手段36Dまでの処理を終えた積算用図形)の座標データを取得する。従って、この建築要素配置手段52からの実行指令を受けた指示図形抽出手段36は、選択された配置対象の積算用図形について、図形分断手段36B、フィッティング手段36C、および積算用図形決定手段36Dの処理を行い、その積算用図形の座標データを建築要素配置手段52に渡す。
【0253】
そして、建築要素配置手段52により、受け付けた各データ(積算用図形の座標データ、非座標データ)を、配置データ記憶手段79(図2参照)に記憶させる。
【0254】
なお、上記の積算用図形の座標データから得られる区画の面積は、積算手段60による積算処理において、2F(2階)以上施工面積を算出する際に用いられる。具体的には、上記のようにして2階の各区画を配置して得られた2階の各区画についての構成ドットの座標上の面積(ドット×ドット)を、実際の面積に換算し、それらの実際の面積を合計することにより、2F以上施工面積を算出することができる。
【0255】
その後、処理手段20Aにより、処理中の画像データの中に、配置対象として選択可能な積算用図形が残っているか否かを判断し(ステップS21)、積算用図形が残っている場合には、前述したステップS19の処理に戻り、以降、処理中の画像データの中に、積算用図形が残っている限り、ステップS19~S21の処理を繰り返す。なお、このループにおけるステップS20の処理で、配置対象として選択された積算用図形についての指示図形抽出手段36の処理が、積算用図形決定手段36Dの処理まで終わっている場合には、再度、同じ処理を繰り返す必要はない。すなわち、前述した[2]の場合の色付け表示または点滅表示を行う際には、最初にステップS20の処理を通過したときに、全ての積算用図形について積算用図形決定手段36Dの処理まで終わるので、同じ処理を繰り返す必要はない。また、以上では、図24および図25を用いて、区画の登録・配置の説明を行ったが、壁、建具、基礎、屋根、備品等の登録・配置も同様である。
【0256】
一方、上記のステップS21で、積算用図形が残っていない場合には、処理手段20Aにより、配置対象として選択可能な積算用図形を含む画像データが残っているか否かを判断し(ステップS22)、画像データが残っている場合には、前述した図5のステップS10の処理に戻り、以降、画像データが残っている限り、図5のステップS10~図6のステップS22の処理を繰り返す。
【0257】
一方、上記のステップS22で、画像データが残っていない場合には、その後の処理に進むが、その後の処理は、前述した特許文献1に記載された現行システムと同様である。すなわち、積算手段60の集計手段61により、部材の数量(個数)等を算出し、集計を行い、得られたデータを集計データ記憶手段80(図2参照)に保存する(ステップS23)。それから、積算手段60の帳票作成手段62により、見積書や原価計算書等の各種の建築関連帳票またはそれらの一部を作成し、表示または印刷する処理を行う(ステップS24)。これらの処理の詳細は、積算手段60の説明で既に詳述しているので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0258】
<第1実施形態の効果>
【0259】
このような第1実施形態によれば、前述した特許文献1に記載された現行システムで得られた効果を維持することができることに加え、次のような効果がある。すなわち、建築積算システム10は、指示図形抽出手段36を備えているので、設計図の紙面上に描かれた建築要素を示す線を蛍光ペンでなぞって形成された蛍光ペン指示部分を含む状態で設計図をスキャンして得られた画像データを読み込み、蛍光ペン指示部分から、建築要素を示す線との重畳部分(蛍光ペン指示部分と建築要素を示す線とが重なった重畳部分)を抽出することにより、蛍光ペンによる指示図形の座標データを取得することができる。
【0260】
従って、前述した特許文献1に記載した建築積算システムの場合とは異なり、コンピュータの画面上での描画操作を行わなくても、所望の図形を指示し、座標データを得ることができる。このため、コンピュータ処理により得られる利点を損なうことなく、コンピュータ作業が人にもたらす負の側面の影響を緩和することができる。
【0261】
具体的には、コンピュータの画面上で設計図に引かれた線をなぞる描画作業に馴染めない人、例えば、コンピュータ操作に慣れていない人、コンピュータ操作が嫌いな人、コンピュータ操作で細かい作業を行うと、直ぐに目が疲れる人、肩が凝る人、うっとうしく感じる人、うっ積してくる人等にとっても、使い勝手のよいシステムを提供することができる。
【0262】
また、指示図形抽出手段36は、図3に示すように、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aと、図形分断手段36Bと、フィッティング手段36Cと、積算用図形決定手段36Dとを含む構成とされているので、蛍光ペン指示部分フィット線222および重畳部分フィット線223(図18参照)を求め、これらを用いて、最終的なフィット線を決定することができる。このため、建築要素を示す線が描かれた設計図の性質に応じた指示図形の抽出処理を実現することができる。すなわち、設計図では、各建築要素が個別に1つずつ描かれているわけではなく、通常、複数の建築要素が描かれているので、ユーザが、蛍光ペンを用いて自分の意図する図形(自分の意図する建築要素を示す線)をなぞったとしても、蛍光ペン指示部分220の中には、不要な線224(図18参照)が、部分的に混在する状態となる。従って、蛍光ペン指示部分220から抽出した重畳部分221は、必ずしもユーザの意図する建築要素を示す線になるわけではない。この意味で、蛍光ペン指示部分220は、重畳部分221よりも太くなるものの、蛍光ペン指示部分220の方が、重畳部分221よりも、全体としてユーザの描画意図を反映しているともいえる。このため、蛍光ペン指示部分フィット線222を用いることにより、ユーザの描画意図を確認しながら、最終的なフィット線を決定することができる。
【0263】
さらに、指示図形抽出手段36は、図3に示すように、換算情報取得用図形決定手段36Eと、位置合わせ用図形決定手段36Fとを含む構成とされているので、積算用図形の場合と同様なアルゴリズムで、換算情報取得用図形および位置合わせ用図形を抽出し、換算情報となる座標データ、および位置合わせ用の基準点の座標データを得ることができる。
【0264】
また、フィッティング手段36Cは、間引き処理を行う構成とされているので(図18の最下部を参照)、重畳部分221に含まれる不要な線224を取り除いて、修正後の重畳部分フィット線223を求めることができるため、より適切な重畳部分フィット線223とすることができる。
【0265】
さらに、図形分断手段36Bは、極座標を用いて蛍光ペン指示部分の屈折部を決定する構成とされているので(図11図17参照)、蛍光ペン指示部分が伸びる方向と交差する切断線により、適切に蛍光ペン指示部分を区切って処理単位を形成し、屈折部を決定することができる。つまり、蛍光ペン指示部分抽出手段36Aにより蛍光ペン指示部分を抽出した段階では、どのような形状の指示図形であるのか(例えば、何角形の指示図形であるのか等)、あるいはどのような姿勢でその指示図形が存在するのかが不明であるため、適切な処理単位を形成しにくいが、重心点等の指示図形代表点を中心とする極座標を用いることにより、適切な処理単位を容易に形成することができる。
【0266】
[第2実施形態]
【0267】
図26には、本発明の第2実施形態の図形分断手段による処理の内容が記載されている。第2実施形態では、図形分断手段の処理内容が、前記第1実施形態の図形分断手段36Bと異なるだけであり、その他の部分の構成および機能は、前記第1実施形態の建築積算システム10と同様であり、同様な効果を得ることができる。
【0268】
本第2実施形態の図形分断手段は、前記第1実施形態の図形分断手段36Bとは異なり、極座標を用いた処理単位の形成は行わず、1つの指示図形における蛍光ペン指示部分の構成ドットの連続性を利用して処理単位を形成する。
【0269】
図26において、蛍光ペン指示部分310を適切な大きさで切断して処理単位を形成するために、蛍光ペン指示部分310内の移動する点311(構成ドット)を中心とする円形の枠312を用意する。従って、枠312も、中心の点311とともに移動する。但し、枠312は、円形でなくてもよく、正方形等でもよい。枠312の大きさは、枠312内に、蛍光ペン指示部分310とそれ以外の部分(白色の部分)とが存在する状態となるようにする。例えば、蛍光ペン指示部分310の幅(図4のW1)が2mm(300dpiでスキャンしたとすると、24ドット程度に相当)の場合には、枠312の直径は、それよりも大きくし、例えば3~4mm(35~48ドット程度に相当)等とする。枠312内に白色の部分が存在するようにするのは、枠312内の蛍光ペン指示部分310の方向性を認識できるようにするためである。
【0270】
最初の点311の位置は、蛍光ペン指示部分310の幅(図4のW1)の中央付近が好ましいが、以下の処理を何回か繰り返すと、移動する点311の位置は、中央付近に寄ってくるので、何回かアイドリング処理を行った後の点311を最初の点311Aとみなして正式な処理を開始してもよい。
【0271】
先ず、最初の点311(311A)から、その点311Aを中心とする枠312内の蛍光ペン指示部分310の各構成ドットに至るベクトルについて、クラスタの数=2としてk-means法等によるクラスタリングを行うことにより、各構成ドットを、図26中の実線で示された第1クラスタ313と、図26中の点線で示された第2クラスタ314とに分ける。
【0272】
次に、第1クラスタ313に属するベクトルの平均ベクトル315(315A)と、第2クラスタ314に属するベクトルの平均ベクトル316とを求める。最初の点なので、どちらに進んでいってもよいが、ここでは平均ベクトル315Aの方へ処理を進めていくことにする。従って、平均ベクトル315Aの先端を、移動後の新たな点311(311B)とし、この点311Bを中心とする枠312を用意する。
【0273】
上述した点311Aを中心とする枠312内の処理の場合と同様にして、点311Bから、その点311Bを中心とする枠312内の蛍光ペン指示部分310の各構成ドットに至るベクトルについて、クラスタの数=2としてk-means法等によるクラスタリングを行うことにより、各構成ドットを、第1クラスタと第2クラスタとに分ける。そして、第1クラスタに属するベクトルの平均ベクトル315(315B)と、第2クラスタに属するベクトルの平均ベクトルとを求め、これらの平均ベクトルのうち、先端が最初の点311Aから遠い方の平均ベクトル315Bを選択し、この平均ベクトル315Bの先端を、移動後の新たな点311(311C)とし、この点311Cを中心とする枠312を用意する。なお、第2クラスタの平均ベクトルを選択すると、処理が元の方向へ戻ってしまうことになるので、遠ざかっていく方の第1クラスタの平均ベクトル315Bを選択している。
【0274】
以降の点311C,311D,…を中心とする枠312内の処理も同様であり、第1クラスタの平均ベクトル315C,315D,…を選択していく。そして、第1クラスタの平均ベクトル315A,315B,315C,315D,…を繋いでいくと、図26に示すような第1クラスタの重心(平均ベクトルの先端)の移動軌跡が得られる。図26の例では、マイナス90度の屈折部であることが判るが、一気に(1つの枠312内で)90度屈折しているわけではなく、連続する幾つかの枠312内の処理の集積として、90度屈折していることが判る。従って、横軸を第1クラスタの重心(平均ベクトルの先端)の移動距離Lとし、縦軸を先行処理の第1クラスタの平均ベクトルとの成す角度Mとするグラフを描くと、その積分値が、90度を示すことが判る。
【0275】
このため、屈折部であるか否かを判断する際に、連続する幾つかの枠312内の処理で、先行処理の第1クラスタの平均ベクトルとの成す角度M(例えば、第1クラスタの平均ベクトル315Dの場合には、その平均ベクトル315Dが、先行処理の第1クラスタの平均ベクトル315Cに対して成す角度)が、予め定められた閾値以上または超える場合には、それらは1つの屈折部であると判断し、先行処理の第1クラスタの平均ベクトルとの成す角度Mが最大値をとる枠312の位置(最大値をとるときの枠312内の蛍光ペン指示部分310の各構成ドット)を、屈折部として決定し、その位置で蛍光ペン指示部分310を分断する。
【0276】
なお、決定した複数の屈折部が1つの指示図形を構成するように正しく並んでいるか否かを確認する処理では、屈折部として決定した枠312の中心の点311を結んだ線分の周辺に、線分の長さ(蛍光ペン指示部分310の幅×線分の長さ)に応じた数の構成ドットが存在するか否かを判断する。
【0277】
[第3実施形態]
【0278】
本発明の第3実施形態の図形分断手段は、ニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムで構築されたパターン認識器により、屈折部を決定する処理を実行する。本第3実施形態では、図形分断手段の処理内容が、前記第1実施形態の図形分断手段36Bと異なるだけであり、その他の部分の構成および機能は、前記第1実施形態の建築積算システム10と同様であり、同様な効果を得ることができる。
【0279】
処理対象の画像データ内の指示図形を形成する蛍光ペン指示部分を含む領域を、移動する正方形等の形状の判定用区画で切り出し、切り出された判定用区画の画像データを、学習処理を行って構築されたパターン認識器に入力し、得られた認識結果に従って屈折部の位置を決定する。このパターン認識器のアルゴリズムとしては、例えばニューラルネットワーク等を採用することができる。
【0280】
この際、移動する判定用区画は、互いに重なるようにして切り出す。判定用区画の大きさは、判定用区画内に、蛍光ペン指示部分とそれ以外の部分(白色の部分)とが存在する状態となるようにする。白色の部分が存在するようにするのは、判定用区画内の蛍光ペン指示部分の方向性を認識できるようにするためである。また、判定用区画内の蛍光ペン指示部分の構成ドットの数が、予め定められた閾値以下または未満の場合は、その判定用区画は、判定の対象外とする。さらに、判定用区画は、重なっているので、屈折部と判断された判定用区画の位置が近い場合は、1つの屈折部であると判断する。
【0281】
学習段階では、判定用区画の画像データおよび対応するラベルからなる多数の学習用データセットを用意し、パターン認識器のパラメータを決定する学習処理を行う。ラベルは、屈折部であるか否かの2クラス識別にするか、または、屈折部であるか、端部であるか、それら以外であるかの3クラス識別とする。
【0282】
また、パターン認識器で決定した複数の屈折部の並び順を判断する際には、それぞれの屈折部(蛍光ペン指示部分)の構成ドットの重心点どうしを総当たりで結んだ複数の線分を用意し、それぞれの線分の周辺に、線分の長さ(蛍光ペン指示部分の幅×線分の長さ)に応じた数の構成ドットが存在するか否かを判断する。なお、全ての屈折部の関係を総当たりで確認するのではなく、水平または垂直な位置関係にある屈折部どうしは、隣接する屈折部である可能性が高いことを考慮して最初に確認を行うことにより、確認する組合せの数を減らすようにしてもよい。
【0283】
[変形の形態]
【0284】
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形等は本発明に含まれるものである。
【0285】
例えば、前記第1実施形態の建築積算システム10は、図1に示すように、主として1台のコンピュータにより構成されるスタンドアロン型のシステムとして記載されていたが、本発明の建築積算システムは、これに限定されるものではなく、サーバ・クライアント型のシステムとしてネットワーク通信により実現される構成としてもよい。
【0286】
また、前記各実施形態では、図18に示すように、フィッティング手段36Cにより、蛍光ペン指示部分フィット線222および重畳部分フィット線223を求め、これらの双方を用いて最終的なフィット線を決定する構成とされていたが、蛍光ペン指示部分フィット線222を求めることなく、重畳部分フィット線223により最終的なフィット線を決定する構成としてもよい。また、このような構成とする場合において、重畳部分221についての間引き処理(図18の最下部を参照)を行ってもよく、行わなくてもよい。
【0287】
さらに、前記各実施形態では、図形分断手段36Bにより、蛍光ペン指示部分(重畳部分を含む)の屈折部を決定し、屈折部で指示図形(蛍光ペン指示部分)を分断して複数の線分(蛍光ペン指示部分の線分)を作成していたが、蛍光ペン指示部分で屈折部を決定して蛍光ペン指示部分を分断するのではなく、重畳部分だけで屈折部を決定し、重畳部分を分断して複数の線分(重畳部分の線分)を作成し、直線フィッティングを行ってもよい。このような構成とする場合、重畳部分103の中にある不要な線101B(図4参照)が処理の妨げになる可能性があるので、不要な線101Bをホワイトペンや白い修正液等を使って消してから、蛍光ペン100による指示作業を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0288】
以上のように、本発明の建築積算システムおよびプログラムは、例えば、間取りを示す平面図等の設計図を作成してから建築される各種の建築物についての見積書、原価計算書、実行予算書、発注書、請求書等の建築関連帳票を作成する場合に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0289】
10 建築積算システム
36 指示図形抽出手段
36A 蛍光ペン指示部分抽出手段
36B 図形分断手段
36C フィッティング手段
36D 積算用図形決定手段
36E 換算情報取得用図形決定手段
36F 位置合わせ用図形決定手段
40 換算情報設定手段
50 建築要素登録・配置手段
60 積算手段
77 画像データ記憶手段
78 換算情報記憶手段
79 配置データ記憶手段
94 スキャナ
100 蛍光ペン
102 蛍光ペン指示部分
103 重畳部分
222 蛍光ペン指示部分フィット線
223 重畳部分フィット線
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