IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エストの特許一覧

<>
  • 特開-地熱交換器および地熱発電装置 図1
  • 特開-地熱交換器および地熱発電装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061059
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】地熱交換器および地熱発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03G 4/00 20060101AFI20230424BHJP
   F03G 4/06 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
F03G4/00 511
F03G4/00 501
F03G4/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170817
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】515126592
【氏名又は名称】株式会社エスト
(74)【代理人】
【識別番号】100116296
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幹生
(72)【発明者】
【氏名】田原 千年生
(57)【要約】
【課題】地熱地帯からの熱の供給が長期間継続しないことに起因する、生産される蒸気量の減少を防いで、発電出力を安定化することが可能な地熱交換器および地熱発電装置を提供する。
【解決手段】地下に設置された外管1と内管2とを備えた2重管15に対して、地上から注入された水が地熱帯により加熱されることによって得られる圧力水が、蒸気発生器4に送られて蒸気として取り出される。また、フラッシュ方式によって地下の坑井8から取り出された熱流体は、蒸気発生器9に送られて蒸気として取り出される。2重管15で生成される高温の圧力水の一部は、地下において坑井8の周囲に噴射される。蒸気発生器4、10で生成された蒸気は、タービン7に送られて、発電がなされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に設置された外管と内管とを備えた2重管に対して、地上から注入された水が地熱帯により加熱されることによって得られる圧力水が蒸気発生器に送られて、蒸気発生器内で蒸気として取り出され、この蒸気がタービンに送られるとともに、フラッシュ方式によって地下の坑井から取り出された熱流体が蒸気発生器に送られて、蒸気発生器内で蒸気として取り出され、この蒸気がタービンに送られる地熱交換器であって、
前記2重管で生成される高温の圧力水の一部が、地下において前記坑井の周囲に噴射されて、フラッシュ方式により蒸気が生成されることを特徴とする地熱交換器。
【請求項2】
地上に取出された蒸気の加熱は、地熱以外の外部熱源によってなされることを特徴とする請求項1記載の地熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の地熱交換器を用いて発電を行うことを特徴とする地熱発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電出力を安定化することが可能な地熱交換器および地熱発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下の熱源から熱流体を採取して発電を行うフラッシュ方式の地熱発電は、従来から実用化されているが、地熱地帯からの熱の供給が長期間継続しないことによって、生産される蒸気量が減少する。そのため、発電出力が安定しないことが問題となっており、これを原因として、計画的に発電装置を停止してメンテナンスを行うことが必要となる。
【0003】
一方、地上から地下の地熱帯に水を注入して高温の圧力水を生成し、この圧力水を地上に取出して発電を行う方式の発電装置の一例が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6844880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フラッシュ方式の地熱発電において、発電出力の安定化は悲願であり、これを実現することができれば、メンテナンスの省力化が可能となり、地熱発電の普及が促進され、再生可能エネルギーによる発電の一手段として、原子力発電の停止に伴う代替手段として有効に機能する。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、地熱地帯からの熱の供給が長期間継続しないことに起因する、生産される蒸気量の減少を防いで、発電出力を安定化することが可能な地熱交換器および地熱発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の地熱交換器は、地下に設置された外管と内管とを備えた2重管に対して、地上から注入された水が地熱帯により加熱されることによって得られる圧力水が蒸気発生器に送られて、蒸気発生器内で蒸気として取り出され、この蒸気がタービンに送られるとともに、フラッシュ方式によって地下の坑井から取り出された熱流体が蒸気発生器に送られて、蒸気発生器内で蒸気として取り出され、この蒸気がタービンに送られる地熱交換器であって、前記2重管で生成される高温の圧力水の一部が、地下において前記坑井の周囲に噴射されて、フラッシュ方式により蒸気が生成されることを特徴とする。
【0008】
2重管で生成される高温の圧力水の一部が、地下において前記坑井の周囲に噴射されて、フラッシュ方式により蒸気が生成されることにより、地熱地帯からの熱の供給が長期間継続しないことに起因する、生産される蒸気量の減少を防ぐことができ、発電出力を安定化することが可能となる。
【0009】
本発明においては、地上に取出された蒸気の加熱は、地熱以外の外部熱源によってなされることとすることができる。
【0010】
蒸気の加熱が地熱以外の外部熱源によってなされるようにすることにより、蒸気温度が不足する場合の対応策として有効である。
【0011】
本発明の地熱発電装置は、本発明の地熱交換器を用いて発電を行うことを特徴とする。
これにより、発電出力の安定化が可能な発電装置を実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、地熱地帯からの熱の供給が長期間継続しないことに起因する、生産される蒸気量の減少を防いで、発電出力を安定化することが可能な地熱交換器および地熱発電装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る地熱交換器と地熱発電装置の構成を示す図である。
図2】2重管の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の地熱交換器および地熱発電装置を、その実施形態に基づいて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る地熱交換器と地熱発電装置の構成を示し、図2に、2重管の構成を示す。
【0015】
地下に設置された外管1と内管2とを備えた2重管15に対して、地上から注入された水が地熱帯により加熱されることによって得られる圧力水が、圧力水槽3を経て蒸気発生器4に送られて、蒸気発生器4内で蒸気として取り出される。この蒸気は、蒸気槽5、蒸気弁6を経てタービン7に送られて、発電がなされる。
【0016】
また、フラッシュ方式によって地下の坑井8から取り出された熱流体は、蒸気発生器9に送られて、蒸気発生器9内で蒸気として取り出され、蒸気加熱器10で加熱される。この蒸気は、蒸気槽5、蒸気弁6を経てタービン7に送られて、発電がなされる。フラッシュ方式には、ダブルフラッシュ方式も含まれる。
【0017】
2重管15で生成される高温の圧力水の一部は、地下において坑井8の周囲に噴射される。これにより、地熱地帯からの熱の供給が長期間継続しないことに起因する、生産される蒸気量の減少を防ぐことができ、発電出力を安定化することが可能となる。
【0018】
地上に取出された蒸気の加熱は、地熱以外の外部熱源によってなされ、外部熱源は、メタンガス、バイオマス発電の余剰熱、再生可能燃料のいずれかまたはこれらの組み合わせによるものである。
【0019】
タービン7の出口を出た蒸気は、水源11から水の供給を受ける熱交換器12に導かれて復水し、循環水槽13、坑井循環ポンプ14を経て、地下に設置された2重管15の外管1に水が注入される。熱交換器12で生成される水の一部は、圧力水槽3に送られる。また、蒸気発生器4内で生じる水は、循環水槽13に送られる。
【0020】
上述した構成によると、フラッシュ方式において坑井8の周辺が枯れるという事態を、2重管15で生成される高温の圧力水の一部を、坑井8の周囲に噴射することによって解決しており、蒸気温度を180℃程度としている。蒸気温度が不足する場合には、メタンガス、バイオマス発電の余剰熱、再生可能燃料等の地熱以外の外部熱源を使用する。
【0021】
2重管を用いた発電出力は、フラッシュ方式による発電出力よりも小さいことが考えられるため、フラッシュ方式の予備として位置づけられる。そのため、上記の方式は、ハイブリッド型の発電方式と言うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、地熱地帯からの熱の供給が長期間継続しないことに起因する、生産される蒸気量の減少を防いで、発電出力を安定化することが可能な地熱交換器および地熱発電装置として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 外管
2 内管
3 圧力水槽
4 蒸気発生器
5 蒸気槽
6 蒸気弁
7 タービン
8 坑井
9 蒸気発生器
10 蒸気加熱器
11 水源
12 熱交換器
13 循環水槽
14 坑井循環ポンプ
15 2重管
図1
図2