(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061068
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】電動機の温度予測方法、温度予測装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01K 7/42 20060101AFI20230424BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20230424BHJP
G01K 7/00 20060101ALI20230424BHJP
H02P 29/62 20160101ALI20230424BHJP
【FI】
G01K7/42
G01K1/14 L
G01K1/14 E
G01K7/00 381D
H02P29/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170826
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000241957
【氏名又は名称】北海道電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】中村 凌太
【テーマコード(参考)】
2F056
5H501
【Fターム(参考)】
2F056CE01
2F056CE04
2F056CL07
5H501AA05
5H501AA08
5H501BB09
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ17
5H501KK06
5H501LL39
5H501LL56
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】電動機が最終的に到達する温度を簡便に予測することが可能な電動機の温度予測方法、温度予測装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】電動機の温度予測方法は、電動機の運転開始時点、運転開始時点から第1の時間t1が経過した第1の時点、運転開始時点から第1の時間よりも長い第2の時間t2が経過した第2の時点、運転開始時点から第2の時間よりも長い第3の時間t3が経過した第3の時点の電動機の温度をそれぞれ測定する測定工程と、測定工程の各時点で測定された温度の測定値に基づいて、電動機の運転を継続して最終的に到達する温度である最終温度θ
∞を演算する演算工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の運転開始時点、前記運転開始時点から第1の時間が経過した第1の時点、前記運転開始時点から前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過した第2の時点、及び前記運転開始時点から前記第2の時間よりも長い第3の時間が経過した第3の時点の前記電動機の温度をそれぞれ測定する測定工程と、
前記測定工程の各時点で測定された温度の測定値に基づいて、前記電動機の運転を継続して最終的に到達する温度である最終温度を演算する演算工程と、
を含む電動機の温度予測方法。
【請求項2】
前記演算工程では、前記測定工程で測定された温度の測定値に基づいて、前記運転開始時点から前記第1の時点までの期間の温度の第1の変化率、及び前記第2の時点から前記第3の時点までの期間の温度の第2の変化率を算出し、
前記電動機の運転開始時点の温度、第1の変化率、及び第2の変化率に基づいて、前記電動機の最終温度を演算する、
請求項1に記載の電動機の温度予測方法。
【請求項3】
前記第2の時点から前記第3の時点までの時間は、前記運転開始時点から前記第1の時点までの時間よりも長い、
請求項1又は2に記載の電動機の温度予測方法。
【請求項4】
前記第1の時点は、前記運転開始時点から30秒~10分の範囲内の時点であり、
前記第2の時点は、前記運転開始時点から20分~40分の範囲内の時点であり、
前記第2の時点から前記第3の時点までの時間は、5分間~20分間の範囲内である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電動機の温度予測方法。
【請求項5】
前記測定工程では、前記電動機のフレーム表面のうち前記電動機の両側にある各軸受及び前記電動機の固定子巻線のそれぞれに対応する3つの測定箇所の温度を測定し、
前記演算工程では、前記測定箇所毎に最終温度を演算する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電動機の温度予測方法。
【請求項6】
前記測定工程では、前記電動機のフレームに棒状温度計の感温部を接触させた状態で、前記棒状温度計が粘土状のパテにより前記フレームに固定されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電動機の温度予測方法。
【請求項7】
電動機の運転開始時点、前記運転開始時点から第1の時間が経過した第1の時点、前記運転開始時点から前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過した第2の時点、及び前記運転開始時点から前記第2の時間よりも長い第3の時間が経過した第3の時点の前記電動機の温度の測定値をそれぞれ取得する取得部と、
前記取得部で取得された各時点の温度の測定値に基づいて、前記電動機の運転を継続して最終的に到達する温度である最終温度を演算する演算部と、
を備える電動機の温度予測装置。
【請求項8】
コンピュータを、
電動機の運転開始時点、前記運転開始時点から第1の時間が経過した第1の時点、前記運転開始時点から前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過した第2の時点、及び前記運転開始時点から前記第2の時間よりも長い第3の時間が経過した第3の時点の前記電動機の温度の測定値をそれぞれ取得する取得手段、
前記取得手段で取得された各時点の温度の測定値に基づいて、前記電動機の運転を継続して最終的に到達する温度である最終温度を演算する演算手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の温度予測方法、温度予測装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の分解点検の終了後に、電動機が正常に組み立てられたかどうかを確認するために、電動機を負荷に接続した状態で電動機を運転する電動機負荷試験が行われている。電動機負荷試験では、軸受の異常の有無や電動機の絶縁性能を確認するために、運転中の電動機の温度測定が行われている。電動機の温度測定では、電動機の温度が定常状態になるまで多くの待ち時間を要するという問題があり、この問題を解決するために、例えば、特許文献1に開示されているような電動機の温度予測方法を用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の温度予測方法では、運転と停止とを繰り返す電動機の温度を予測するため、電動機の周囲温度、電動機の温度、電動機の負荷率といった指標を測定したり演算したりする必要があり、温度予測のための手順が煩雑である。このため、電動機の運転を継続して最終的に到達する温度である最終温度を簡便に予測することができない、という問題がある。そして、このような問題は、電動機負荷試験以外において電動機の最終温度を予測する場合にも存在している。
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、電動機が最終的に到達する温度を簡便に予測することが可能な電動機の温度予測方法、温度予測装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電動機の温度予測方法は、
電動機の運転開始時点、前記運転開始時点から第1の時間が経過した第1の時点、前記運転開始時点から前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過した第2の時点、及び前記運転開始時点から前記第2の時間よりも長い第3の時間が経過した第3の時点の前記電動機の温度をそれぞれ測定する測定工程と、
前記測定工程の各時点で測定された温度の測定値に基づいて、前記電動機の運転を継続して最終的に到達する温度である最終温度を演算する演算工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動機が最終的に到達する温度を簡便に予測することが可能な電動機の温度予測方法、温度予測装置及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電動機負荷試験における電動機の温度の測定箇所を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る電動機負荷試験中の電動機の温度変化を示すグラフである。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る電動機負荷試験中の電動機の最終温度を予測する手法を説明するグラフである。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る電動機の温度予測方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施の形態2に係る電動機の温度予測装置の構成を示す概略図である。
【
図6】(a)は、本発明の実施の形態2に係る電動機の温度予測装置のハードウェア構成を示すブロック図であり、(b)は、本発明の実施の形態2に係る温度測定値記憶部のデータテーブルの一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る電動機の温度予測処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】実施例における電動機の3つの測定箇所に粘土状のパテで棒状温度計を固定した様子を示す図である。
【
図9】実施例における電動機負荷試験中の電動機の温度変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る電動機の温度予測方法、温度予測装置及びプログラムを、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面では、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0010】
(実施の形態1)
図1~
図4を参照して、実施の形態1に係る電動機の温度予測方法を説明する。電動機の温度予測方法は、少なくとも4つの時点で電動機の温度を測定し、測定された温度の測定値に基づいて電動機の運転を継続して最終的に到達する温度である最終温度を予測する方法である。以下、電動機負荷試験における電動機の最終温度を予測する場合を例に説明する。
【0011】
図1は、実施の形態1に係る電動機負荷試験における電動機1の温度の測定箇所を示す概略図である。電動機負荷試験は、分解点検後の電動機1が正常に組み立てられたことを確認するための試験である。電動機1の分解点検には、部品の分解、洗浄、検査、注油、組み立て、調整のみならず、例えば、軸受のような部品の交換も含まれる。電動機負荷試験では、電動機1と負荷2とが接続された状態で電動機1を運転し、電動機1の電流、電圧、振動及び温度を測定する。負荷2は、例えば、ポンプ、ファンである。
【0012】
電動機負荷試験の温度測定では、棒状温度計3により電動機1のフレーム1A表面の3つの測定箇所P1~P3の温度を測定する。具体的には、電動機1のフレーム1Aのうち電動機1の両端にある各軸受のそれぞれに対応する測定箇所P1、P2、及び電動機1の固定子巻線に対応する測定箇所P3の温度を測定する。各測定箇所P1~P3の温度を測定することにより、電動機1の軸受が固着していないことや固定子巻線に傷が付いていないことを確認できる。各測定箇所P1~P3の温度のいずれか1つでも条件を満たさない場合、電動機1の組み立てに問題があると判断し、運転を中止する。
【0013】
電動機負荷試験で用いる棒状温度計3は、例えば、ガラス管内に石油系液体の赤液を封入した温度計である。赤液が封入された棒状温度計3の精度は±1℃程度であるが、これは電動機1の最終温度を予測するのに十分な精度である。棒状温度計3は、先端側にある感温部が電動機1のフレーム1A表面に接触した状態で、粘土状のパテによりフレーム1Aに固定されてもよい。
【0014】
図2は、実施の形態1に係る電動機負荷試験中の電動機1の温度変化を示すグラフである。電動機負荷試験中の電動機1の温度変化は、立ち上がりから次第に上昇するものの、時間の経過に伴い温度上昇の程度が次第に鈍化する一時遅れ系で表現される。電動機負荷試験の温度測定では、運転開始時点から一定時間が経過するまでの温度変化(温度測定ポイント1)と、電動機1の運転を継続して最終的に到達する温度である最終温度(温度測定ポイント2)とに注目し、組み立て後の電動機1の運転状態を確認する。最終温度は、厳密には10分あたりの温度変化が0.5℃以内に収まった時点の温度として定義される。
【0015】
電動機1の異常の有無については、経験則上、例えば、運転開始時から1分間で温度が5℃以上上昇する場合に、軸受に異常が発生している可能性があると判断できる。また、最終温度が周囲温度+40℃以上である場合には、電動機1の絶縁性能に影響を及ぼす可能性があると判断できる。これは、JEC(Japanese Electrotechnical Committee)-37-1979「誘導機」の規格によると、電動機1の絶縁性能の観点から許容される温度の上限が周囲温度+40℃と規定されているためである。
【0016】
図3は、実施の形態に係る電動機負荷試験中の電動機1の最終温度θ
∞を予測する手法を説明するグラフである。以下、実施の形態に係る電動機1の最終温度θ
∞を予測する手法を説明する。初期温度をθ
0、運転開始時点の初期温度変化をθ’(0)、運転開始時点から第2の時間t2が経過した時点における温度変化をθ’(t2)とすると、電動機1の最終温度θ
∞の予測値は、以下の式(1)で表される。
θ
∞=θ
0-θ’(0)*(t2/lnα) …(1)
ただし、式(1)のαは、以下の式(2)で表される。
α=θ’(t2)/θ’(0) …(2)
【0017】
初期温度θ0は、運転開始時点の温度である。初期温度変化θ’(0)は、運転開始時点から第1の時間t1が経過した時点(第1の時点)までの温度の変化率(第1の変化率)として算出され、温度変化θ’(t2)は、運転開始時点から第2の時間t2が経過した時点(第2の時点)から第3の時間t3が経過した時点(第3の時点)までの温度の変化率(第2の変化率)として算出される。各温度の変化率は、温度の変化量を変化に要した時間で割ることで算出される。
【0018】
式(1)、(2)からすると、初期温度θ0、初期温度変化θ’(0)、温度変化θ’(t2)を演算するには、初期温度、第1の時点の温度、第2の時点の温度及び第3の時点の温度をそれぞれ測定すればよい。温度を測定するタイミングは3つの測定箇所P1~P3で厳密に同時である必要はなく、数秒の時間遅れが生じたとしても問題がない。このため、3本の棒状温度計3の読み取りは1人の作業者が実施すればよい。
【0019】
電動機負荷試験中の電動機1の温度変化は指数関数的に変化するため、運転開始直後の温度変化は急激であるのに対し、概ね30分後の温度変化は相対的に緩やかである。このため、最終温度θ∞の予測精度を向上させるには、初期温度変化θ’(0)については短時間で、温度変化θ’(t2)については、ある程度の時間、例えば、10分程度の時間を掛けて測定するとよい。このため、第2の時点から第3の時点までの時間t3-t2は、運転開始時点から第1の時点までの時間である第1の時間t1よりも長くなるように設定される。
【0020】
第1の時間t1は、例えば、30秒~10分の範囲内であり、好ましくは3分~7分の範囲内であり、より好ましくは5分である。第2の時間t2は、例えば、20分~40分の範囲内であり、好ましくは25分~35分の範囲内であり、より好ましくは30分である。第2の時点から第3の時点までの時間t3-t2は、例えば、5分~20分の範囲内であり、好ましくは7分~15分の範囲内であり、より好ましくは10分である。
【0021】
なお、実施の形態1に係る温度予測方法は、
図2及び
図3に示すように、負荷運転時の温度変化が一時遅れ系で表現される電動機に適用される。発熱量に対して冷却量の大きい電動機、例えば、軸流型電動機や冷却器付き電動機では、負荷運転時の温度変化が一時遅れ系で表現されないため、実施の形態1に係る温度予測方法の適用は好ましくない。
【0022】
図4は、実施の形態1に係る電動機1の温度予測方法の流れを示すフローチャートである。以下、実施の形態1に係る電動機1の温度予測方法の流れを説明する。
【0023】
まず、負荷2に接続された電動機1の運転を開始させ、電動機1のフレーム1A表面に設定された3つの測定箇所P1~P3毎に4つの時点における温度を測定する(ステップS11:測定工程)。4つの時点は、例えば、運転開始時点、運転開始時点から5分後、30分後、40分後である。それぞれのタイミングで粘土状のパテで固定された各棒状温度計3の目盛りを作業者が読み取り、記録用紙に記入すればよい。
【0024】
次に、3つの測定箇所P1~P3毎に記録された4つの時点の温度に基づいて、式(1)、(2)を用いて演算することにより各測定箇所P1~P3における最終温度θ∞の予測値を演算する(ステップS12:演算工程)。例えば、作業者が、記録用紙に記録された測定結果を参照し、関数電卓を用いて最終温度θ∞の予測値を演算すればよい。
以上が、電動機1の温度予測方法の流れである。
【0025】
以上説明したように、実施の形態に係る電動機1の温度予測方法は、電動機1の運転開始時点、第1の時点、第2の時点及び第3の時点の電動機1の温度をそれぞれ測定する測定工程と、測定工程の各時点で測定された温度の測定値に基づいて、電動機1の運転を継続して最終的に到達する温度である最終温度θ∞を演算する演算工程と、を含む。このため、電動機1の最終温度θ∞を簡便に予測できる。
【0026】
(実施の形態2)
図5~
図7を参照して、実施の形態2に係る温度予測装置、温度予測方法及びプログラムを説明する。実施の形態1では、人手により電動機1の温度を測定し、電動機1の最終温度θ
∞を演算していたが、実施の形態2では、温度予測装置が電動機1の温度測定値を取得し、電動機1の最終温度θ
∞を演算する。以下、両者の相違する点を中心に説明する。
【0027】
図5は、実施の形態2に係る温度予測装置100の構成を示す概略図である。温度予測装置100は、例えば、汎用コンピュータであり、有線又は無線の通信回線を介して複数の温度センサ4が通信可能に接続されている。温度予測装置100は、各温度センサ4から取得した温度測定値に基づいて電動機1の測定箇所P1~P3の最終温度θ
∞を予測する装置である。温度センサ4は、例えば、熱電対、サーミスタを備える接触式温度センサであり、電動機1の各測定箇所P1~P3に設置され、各測定箇所P1~P3の温度測定値をリアルタイムで温度予測装置100に送信する。
【0028】
図6(a)は、実施の形態2に係る温度予測装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。温度予測装置100は、操作部110と、表示部120と、通信部130と、記憶部140と、制御部150と、を備える。温度予測装置100の各部は、内部バス(図示せず)を介して相互に接続されている。
【0029】
操作部110は、ユーザの指示を受け付け、受け付けた操作に対応する操作信号を制御部150に供給する。操作部110は、例えば、マウス、キーボードを備える。
【0030】
表示部120は、制御部150から供給される温度測定値に基づいて、ユーザに向けて各種の画像を表示する。
【0031】
通信部130は、例えば、インターネットのような通信ネットワークに接続することが可能なインターフェースである。また、通信部130は、各温度センサ4から温度測定値に関するデータを受信する。
【0032】
記憶部140は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクを備える。記憶部140は、制御部150で実行されるプログラムや各種のデータを記憶する。また、記憶部140は、各種の情報を一時的に記憶し、制御部150が処理を実行するためのワークメモリとしても機能する。さらに、記憶部140は、温度測定値記憶部141と、演算式記憶部142と、を備える。
【0033】
図6(b)は、実施の形態2に係る温度測定値記憶部141のデータテーブルの一例である。温度測定値記憶部141は、温度センサ4から取得した温度の測定値に関する情報を、測定箇所P1~P3及び測定日時に関する情報と対応付けて記憶する。
【0034】
図6(a)に戻り、演算式記憶部142は、電動機1の最終温度θ
∞の予測値の演算に必要な式(1)、(2)を記憶する。
【0035】
制御部150は、プロセッサを備え、温度予測装置100の各部の制御を行う。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部150は、記憶部140に記憶されているプログラムを実行することにより、
図7の温度予測処理を実行する。制御部150は、機能的には、取得部151と、演算部152と、出力部153と、を備える。
【0036】
取得部151は、温度センサ4から送信された測定箇所P1~P3毎の温度測定値を取得し、測定箇所P1~P3及び測定日時に対応付けて温度測定値記憶部141に記憶させる。取得部151による温度測定値の取得には、温度センサ4から温度測定値を受信することと、記憶部140に記憶されたデータを読み込むこととの両方が含まれる。
【0037】
演算部152は、演算式記憶部142に記憶された演算式を用いて、取得部151により取得された測定箇所P1~P3毎の温度測定値から、測定箇所P1~P3毎の最終温度θ∞の予測値を演算する。
【0038】
出力部153は、演算部152により演算された測定箇所P1~P3毎の最終温度θ∞の予測値を外部に出力する。出力部153は、例えば、測定箇所P1~P3毎の最終温度θ∞の予測値を表示部120に表示させる。
以上が、実施の形態2に係る温度予測装置100の構成である。
【0039】
(温度予測処理)
以下、
図7のフローチャートを参照して、温度予測装置100の制御部150が実行する温度予測処理の流れを説明する。温度予測処理は、測定箇所P1~P3毎に測定された温度測定値に基づいて測定箇所P1~P3毎の最終温度θ
∞を予測する処理である。温度予測処理は、負荷2に接続された電動機1の運転を開始させ、電動機1のフレーム1A表面に設定された3つの測定箇所P1~P3毎に4つの時点における温度を測定した後、ユーザが操作部110を操作して温度予測処理の開始を指示した時点で開始される。4つの時点は、例えば、運転開始時点、運転開始時点から5分後、30分後、40分後である。
【0040】
まず、取得部151は、温度測定値記憶部141から測定箇所P1~P3毎に測定された4つの時点における温度測定値を取得する(ステップS21:取得工程)。
【0041】
次に、演算部152は、演算式記憶部142に記憶された演算式を用いて、取得部151により取得された測定箇所P1~P3毎に測定された4つの時点の温度測定値に基づいて、測定箇所P1~P3毎の最終温度θ∞の予測値を演算する(ステップS22:演算工程)。
【0042】
次に、出力部153は、ステップS22の処理で演算された測定箇所P1~P3毎の最終温度θ∞の予測値を外部に出力する(ステップS23:出力工程)。出力部153は、例えば、測定箇所P1~P3毎の最終温度θ∞の予測値を表示部120に表示させればよい。
以上が、実施の形態2に係る温度予測処理の流れである。
【0043】
以上説明したように、実施の形態2に係る温度予測装置100は、電動機1の運転開始時点、第1の時点、第2の時点及び第3の時点の電動機1の温度の測定値をそれぞれ取得する取得部151と、取得部151で取得された各温度の測定値に基づいて、電動機1の運転を継続して最終的に到達する温度である最終温度θ∞を演算する演算部152と、を備える。このため、電動機1の最終温度θ∞を人手によらず簡便に予測できる。
【0044】
本発明は上記実施の形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0045】
(変形例)
上記実施の形態1では、電動機1の温度を測定するために棒状温度計3を用いていたが、本発明はこれに限られない。電動機1の温度を測定する温度計としては、接触式の熱電対、測温抵抗体、サーミスタを備える温度計を用いてもよい。
【0046】
上記実施の形態では、電動機1の温度を測定するために接触式の温度計(温度センサ)を用いていたが、本発明はこれに限られない。電動機1の反射率を検証した上で適切な設定が可能であれば、非接触式の放射温度計を用いてもよい。
【0047】
上記実施の形態では、棒状温度計3が粘土状のパテにより電動機1のフレーム1A表面に固定されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、棒状温度計3を作業者の手により把持して各測定箇所P1~P3に接触させてもよく、治具に支持された状態で棒状温度計3を各測定箇所P1~P3に接触させてもよい。電動機1のフレーム1Aの各測定箇所P1~P3には、作業者の利便性を考慮してマーキングを施してもよい。
【0048】
上記実施の形態では、電動機1の3つの測定箇所P1~P3の温度を測定し、それぞれの最終温度θ∞を予測していたが、本発明はこれに限られない。測定箇所は、1つ又は2つであってもよく、4つ以上であってもよい。また、上記実施の形態では、電動機負荷試験中の電動機1の最終温度θ∞を予測していたが、本発明はこれに限られず、電動機負荷試験以外において電動機1の最終温度を予測する場合に適用してもよい。
【0049】
上記実施の形態2では、温度予測装置100の記憶部140に各種データが記憶されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各種データは、その全部又は一部が通信ネットワークを介して外部の制御装置やコンピュータ等に記憶されていてもよい。
【0050】
上記実施の形態2では、温度予測装置100は、それぞれ記憶部140に記憶されたプログラムに基づいて動作していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、プログラムにより実現された機能的な構成をハードウェアにより実現してもよい。
【0051】
上記実施の形態2では、温度予測装置100は、例えば、汎用コンピュータであったが、本発明はこれに限られない。例えば、温度予測装置100は、クラウド上に設けられたコンピュータで実現してもよい。
【0052】
上記実施の形態2では、温度予測装置100が実行する処理は、上述の物理的な構成を備える装置が記憶部140に記憶されたプログラムを実行することによって実現されていたが、本発明は、プログラムとして実現されてもよく、そのプログラムが記録された記憶媒体として実現されてもよい。
【0053】
また、上述の処理動作を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical Disk)のようなコンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理動作を実行する装置を構成してもよい。
【0054】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例)
実施例では、過去に実施した電動機負荷試験の測定データを用いて実施の形態に係る温度測定方法の有効性に関する検証を行った。測定対象の電動機1は、
図8に示す格納容器給気ファン用電動機である。電動機1のフレーム1A表面の3つの測定箇所P1~P3のそれぞれに粘土状のパテで棒状温度計3を固定し、運転開始時点から温度を測定した。3つの測定箇所P1~P3の位置は、
図8の3つの矢印でそれぞれ示すとおりである。
【0057】
以下に検証結果を示す。
図9は、電動機1の温度の実測値及び予測値の一例を示すグラフである。温度の実測値は、運転開始時点で22.0℃、5分後で24.0℃、30分後で32.0℃、40分後で34.0℃である。したがって、最大温度変化θ’(0)=(24.0-22.0)/5=0.4、運転開始から30分経過時点の温度変化θ’(30)=(34.0-32.0)/10=0.2である。式(2)よりα=θ’(30)/θ’(0)=0.2/0.4=0.5であり、このα値を式(1)に代入すると、最終温度θ
∞の予測値は、22.0-0.4*(30/ln0.5)=39.3℃と演算できる。
【0058】
最終温度θ∞の実測値が39.0℃であるのに対し、その予測値が39.3℃であるため、実施の形態に係る温度測定方法により電動機1の最終温度θ∞を精度良く予測できることを確認できた。合計40台の電動機1について同様に検証を行ったところ、実測値と予測値との平均誤差は±5℃以内であった。周囲温度+40℃に対して十分な裕度があるため、実施の形態に係る温度測定方法が実用に耐え得る信頼性を有することが実証できた。
【符号の説明】
【0059】
1 電動機
1A フレーム
3 棒状温度計
t1 第1の時間
t2 第2の時間
t3 第3の時間
P1~P3 測定箇所
θ∞ 最終温度
100 温度予測装置
151 取得部
152 演算部