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特開2023-61069電子線適用装置および電子線適用装置における検出データの作成方法
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  • 特開-電子線適用装置および電子線適用装置における検出データの作成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061069
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】電子線適用装置および電子線適用装置における検出データの作成方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 1/34 20060101AFI20230424BHJP
   H01J 37/26 20060101ALI20230424BHJP
   H01J 37/073 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
H01J1/34
H01J37/26
H01J37/073
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170831
(22)【出願日】2021-10-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】516040121
【氏名又は名称】株式会社Photo electron Soul
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】西谷智博
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101EE03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フォトカソードを利用した新たな電子線適用装置および電子線適用装置における検出データの作成方法を提供する。
【解決手段】光源2から照射された励起光により電子を生成するフォトカソード3と、電子を引き出し電子ビームBを形成するアノード4と、電子ビームBを照射した照射対象Sから放出された放出物を検出し検出信号を生成する検出器5と、制御部6と、を含む、電子線適用装置1であって、フォトカソード3が受光する励起光は2つ以上であり、2つ以上の励起光はパルス状であり且つフォトカソード3が受光する際のタイミングが異なるように照射され、制御部6は励起光の受光により形成された2つ以上のパルス状の電子ビームBを照射対象Sの異なる照射領域に照射し、検出器5は生成した検出信号を異なる照射領域の位置情報と関連付けて出力し、検出器5の数が照射対象に照射した電子ビームの数より少ない、電子線適用装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から照射された励起光の受光に応じて、放出可能な電子を生成するフォトカソードと、
前記フォトカソードとの間で電界を形成することができ、形成した電界により前記放出可能な電子を引き出し、電子ビームを形成するアノードと、
前記電子ビームを照射した照射対象から放出された放出物を検出し、検出信号を生成する検出器と、
制御部と、
を含む、電子線適用装置であって、
前記フォトカソードが受光する励起光は2つ以上であり、
前記2つ以上の励起光は、それぞれ、パルス状であり、且つ、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射され、
前記制御部は、
前記タイミングが異なる2つ以上のパルス状の励起光の受光により形成された2つ以上のパルス状の電子ビームを、それぞれ、前記照射対象の異なる照射領域に照射し、
前記検出器は、前記照射対象の異なる照射領域から放出されたパルス状の放出物を異なるタイミングで検出することで検出信号を生成し、
生成した検出信号を前記異なる照射領域の位置情報と関連付けて出力し、
前記検出器の数が、前記照射対象に照射した電子ビームの数より少ない
電子線適用装置。
【請求項2】
前記検出器の数が1つである
請求項1に記載の電子線適用装置。
【請求項3】
前記光源が2つ以上であり、それぞれの光源から照射される励起光は、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射される
請求項1または2に記載の電子線適用装置。
【請求項4】
前記光源が1つであり、前記光源から照射された励起光を2つ以上に分割し、分割された2つ以上の励起光は、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射される
請求項1または2に記載の電子線適用装置。
【請求項5】
前記電子線適用装置が、
走査電子顕微鏡、
電子線検査装置、
オージェ電子分光器、
カソードルミネッセンス装置、
X線分析装置、
透過電子顕微鏡、または、
走査型透過電子顕微鏡、
である
請求項1~4の何れか一項に記載の電子線適用装置。
【請求項6】
電子線適用装置における検出データの作成方法であって、
電子線適用装置は、
光源と、
前記光源から照射された励起光の受光に応じて、放出可能な電子を生成するフォトカソードと、
前記フォトカソードとの間で電界を形成することができ、形成した電界により前記放出可能な電子を引き出し、電子ビームを形成するアノードと、
前記電子ビームを照射した照射対象から放出された放出物を検出し、検出信号を生成する検出器と、
制御部と、
を含み、
前記検出データの作成方法は、
前記光源から、パルス状であり、且つ、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なる2つ以上の励起光を前記フォトカソードに照射し、2つ以上のパルス状の電子ビームを形成する電子ビーム形成工程と、
前記2つ以上のパルス状の電子ビームを、それぞれ、前記照射対象の異なる照射領域に照射する電子ビーム照射工程と、
前記2つ以上のパルス状の電子ビームを照射することで前記異なる照射領域から放出されたパルス状の放出物を異なるタイミングで前記検出器により検出し、検出信号を生成する検出工程と、
生成した検出信号を前記異なる照射領域の位置情報と関連付けて出力する検出データ出力工程と、
を含み、
前記検出器の数が、前記照射対象に照射した電子ビームの数より少ない
検出データの作成方法。
【請求項7】
前記検出器の数が1である
請求項6に記載の検出データの作成方法。
【請求項8】
前記光源が2つ以上であり、それぞれの光源から照射される励起光は、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射される
請求項6または7に記載の検出データの作成方法。
【請求項9】
前記光源が1つであり、前記光源から照射された励起光を2つ以上に分割し、分割された2つ以上の励起光は、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射される
請求項6または7に記載の検出データの作成方法。
【請求項10】
前記電子線適用装置が、
走査電子顕微鏡、
電子線検査装置、
オージェ電子分光器、
カソードルミネッセンス装置、
X線分析装置、
透過電子顕微鏡、または、
走査型透過電子顕微鏡、
である
請求項6~9の何れか一項に記載の検出データの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願における開示は、電子線適用装置および電子線適用装置における検出データの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビームを用いて、試料等の照射対象から検出データを取得する電子線適用装置が知られている。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、試料上の複数の計測点に荷電粒子線を照射する照射系と、試料からの2次電子又は反射荷電粒子を検出する複数個の検出器と、を有するマルチビーム検査装置が記載されている。特許文献1には、複数の計測点に並列に荷電粒子線が照射されるため、高いスループットで試料の欠陥検査等が行える利点があることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、マルチビーム型の荷電粒子ビーム装置において、マルチビームに対応した複数の検出素子を二次元状に配列することが記載されている。
【0005】
ところで、電子銃としては、熱電子射出型、電界放射(FE)型、ショットキー型以外に、フォトカソードを用いることが知られている。特許文献3には、フォトカソードを用いた電子銃が記載されている。特許文献3に記載のフォトカソードを用いた電子銃は、フォトカソードに励起光を照射することで、明るく、シャープな電子ビームを射出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-134757号公報
【特許文献2】国際公開第2021/024397号公報
【特許文献3】特許第5808021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2に記載の発明は、マルチビームに対応した複数の検出器(検出素子)を用いることで、スループットの向上を図っている。しかしながら、特許文献1および2に記載の発明は、少なくとも照射対象に照射される電子ビームの数以上の検出器(検出素子)が必要であるとの問題がある。一方、特許文献3に記載のフォトカソードを用いた電子銃は開発途上にある。フォトカソードを用いた電子銃を搭載した電子線適用装置において、マルチビームに対応した有意な検出データの作成方法の開発が望まれる。
【0008】
本出願は上記問題点を解決するためになされたものであり、鋭意研究を行ったところ、(1)フォトカソードは、照射タイミングが異なる2つ以上のパルス状の励起光を受光すると、励起光の照射タイミングを反映したパルス状の電子ビームを2つ以上形成できること、(2)形成した2つ以上のパルス状の電子ビームを照射対象の異なる照射領域に照射すると、それぞれの照射領域に照射される電子ビームの照射タイミングが異なること、(3)電子ビームの照射タイミングが異なることから、照射対象の異なる照射領域からは電子ビームの照射タイミングに応じたパルス状の放出物が得られること、(4)その結果、照射対象の異なる照射領域から得られた2つ以上の放出物から、同一の検出器で検出信号を生成できるので、検出器の数を照射する電子ビームの数より少なくできること、を新たに見出した。
【0009】
本出願における開示は、フォトカソードの特徴を利用した新たな電子線適用装置および電子線適用装置における検出データの作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願における開示は、以下に示す、電子線適用装置および電子線適用装置における検出データの作成方法に関する。
【0011】
(1)光源と、
前記光源から照射された励起光の受光に応じて、放出可能な電子を生成するフォトカソードと、
前記フォトカソードとの間で電界を形成することができ、形成した電界により前記放出可能な電子を引き出し、電子ビームを形成するアノードと、
前記電子ビームを照射した照射対象から放出された放出物を検出し、検出信号を生成する検出器と、
制御部と、
を含む、電子線適用装置であって、
前記フォトカソードが受光する励起光は2つ以上であり、
前記2つ以上の励起光は、それぞれ、パルス状であり、且つ、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射され、
前記制御部は、
前記タイミングが異なる2つ以上のパルス状の励起光の受光により形成された2つ以上のパルス状の電子ビームを、それぞれ、前記照射対象の異なる照射領域に照射し、
前記検出器は、前記照射対象の異なる照射領域から放出されたパルス状の放出物を異なるタイミングで検出することで検出信号を生成し、
生成した検出信号を前記異なる照射領域の位置情報と関連付けて出力し、
前記検出器の数が、前記照射対象に照射した電子ビームの数より少ない
電子線適用装置。
(2)前記検出器の数が1つである
上記(1)に記載の電子線適用装置。
(3)前記光源が2つ以上であり、それぞれの光源から照射される励起光は、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射される
上記(1)または(2)に記載の電子線適用装置。
(4)前記光源が1つであり、前記光源から照射された励起光を2つ以上に分割し、分割された2つ以上の励起光は、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射される
上記(1)または(2)に記載の電子線適用装置。
(5)前記電子線適用装置が、
走査電子顕微鏡、
電子線検査装置、
オージェ電子分光器、
カソードルミネッセンス装置、
X線分析装置、
透過電子顕微鏡、または、
走査型透過電子顕微鏡、
である
上記(1)~(4)の何れか一つに記載の電子線適用装置。
(6)電子線適用装置における検出データの作成方法であって、
電子線適用装置は、
光源と、
前記光源から照射された励起光の受光に応じて、放出可能な電子を生成するフォトカソードと、
前記フォトカソードとの間で電界を形成することができ、形成した電界により前記放出可能な電子を引き出し、電子ビームを形成するアノードと、
前記電子ビームを照射した照射対象から放出された放出物を検出し、検出信号を生成する検出器と、
制御部と、
を含み、
前記検出データの作成方法は、
前記光源から、パルス状であり、且つ、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なる2つ以上の励起光を前記フォトカソードに照射し、2つ以上のパルス状の電子ビームを形成する電子ビーム形成工程と、
前記2つ以上のパルス状の電子ビームを、それぞれ、前記照射対象の異なる照射領域に照射する電子ビーム照射工程と、
前記2つ以上のパルス状の電子ビームを照射することで前記異なる照射領域から放出されたパルス状の放出物を異なるタイミングで前記検出器により検出し、検出信号を生成する検出工程と、
生成した検出信号を前記異なる照射領域の位置情報と関連付けて出力する検出データ出力工程と、
を含み、
前記検出器の数が、前記照射対象に照射した電子ビームの数より少ない
検出データの作成方法。
(7)前記検出器の数が1である
上記(6)に記載の検出データの作成方法。
(8)前記光源が2つ以上であり、それぞれの光源から照射される励起光は、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射される
上記(6)または(7)に記載の検出データの作成方法。
(9)前記光源が1つであり、前記光源から照射された励起光を2つ以上に分割し、分割された2つ以上の励起光は、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射される
上記(6)または(7)に記載の検出データの作成方法。
(10)前記電子線適用装置が、
走査電子顕微鏡、
電子線検査装置、
オージェ電子分光器、
カソードルミネッセンス装置、
X線分析装置、
透過電子顕微鏡、または、
走査型透過電子顕微鏡、
である
上記(6)~(9)の何れか一つに記載の検出データの作成方法。
【発明の効果】
【0012】
本出願で開示する電子線適用装置および電子線適用装置における検出データの作成方法は、検出器の数を照射する電子ビームの数より少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る電子線適用装置1を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係る電子線適用装置における検出データ作成方法(制御部6の制御内容)の概略を説明するための図である。
図3図3は、実施形態に係る電子線適用装置における検出データ作成方法(制御部6の制御内容)の概略を説明するための図である。
図4図4は、照射対象の異なる照射領域から得られた2つ以上の放出物から、同一の検出器で検出信号を生成できることを説明するための図である。
図5図5は、照射対象の異なる照射領域から得られた2つ以上の放出物から、同一の検出器で検出信号を生成できることを説明するための図である。
図6図6は、検出データ作成方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、電子線適用装置および電子線適用装置における検出データの作成方法(以下、「検出データ作成方法」と記載することがある。)について詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0015】
また、図面において示す各構成の位置、大きさ、範囲などは、理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、本出願における開示は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0016】
(電子線適用装置および検出データ作成方法の実施形態)
図1図6を参照して、電子線適用装置および検出データ作成方法の実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る電子線適用装置1を模式的に示す図である。図2および図3は、実施形態に係る電子線適用装置における検出データ作成方法(制御部6の制御内容)の概略を説明するための図である。図4および図5は、照射対象の異なる2つ以上の照射領域からそれぞれ得られた放出物から、同一の検出器で検出信号を生成できることを説明するための図である。図6は、検出データ作成方法のフローチャートである。
【0017】
図1に示す電子線適用装置1の実施形態は、光源2と、フォトカソード3と、アノード4と、検出器5と、制御部6と、を少なくとも含んでいる。なお、図1には、電子線適用装置1が電子銃部分1aと相手側装置1b(電子線適用装置1から電子銃部分1aを除いた部分)に分けて形成した例が示されている。代替的に、電子線適用装置1は一体的に形成されてもよい。また、電子線適用装置1は、任意付加的に、フォトカソード3とアノード4との間に電界を発生させるための電源7、電子ビームBを照射対象Sに向けて集束するためのオブジェクティブレンズ8、電子ビームBを照射対象S上で走査するための電子ビーム偏向装置9を設けてもよい。更に、図示は省略するが、電子線適用装置1の種類に応じた公知の構成部材を含んでもよい。なお、図1に示す例は、電子線適用装置1全体の概略を示すため、フォトカソード3から放出する電子ビームBの数は一つである。実施形態に係る電子線適用装置における検出データ作成方法(制御部6の制御内容)の概略については、図2乃至図5を参照して詳細に説明する。
【0018】
光源2は、フォトカソード3に励起光Lを照射することで、電子ビームBを射出できるものであれば特に制限はない。光源2は、例えば、高出力(ワット級)、高周波数(数百MHz)、超短パルスレーザー光源、比較的安価なレーザーダイオード、LED等があげられる。励起光Lは、フォトカソード3が受光する際にパルス光であればよい。したがって、光源2が連続光を照射する場合は、光源2とフォトカソード3との間に液晶シャッター等を設ければよい。なお、図1に示す例では、光源2が、真空チャンバーCB外に配置され励起光Lが、フォトカソード3の第1面31(アノード4側の面)側に照射されている。代替的に、光源2を真空チャンバーCB内に配置してもよい。また、励起光Lは、フォトカソード3の第2面32(アノード4とは反対側の面)側に照射されてもよい。
【0019】
フォトカソード3は、光源2から照射される励起光Lの受光に応じて、放出可能な電子を生成する。フォトカソード3が励起光Lの受光に応じて放出可能な電子を生成する原理は公知である(例えば、特許第5808021号公報等を参照)。
【0020】
フォトカソード3は、石英ガラスやサファイアガラス等の基板と、基板の第1面31に接着したフォトカソード膜(図示は省略)で形成されている。フォトカソード膜を形成するためのフォトカソード材料は、励起光を照射することで放出可能な電子を生成できれば特に制限はなく、EA表面処理が必要な材料、EA表面処理が不要な材料等が挙げられる。EA表面処理が必要な材料としては、例えば、III-V族半導体材料、II-VI族半導体材料が挙げられる。具体的には、AlN、CeTe、GaN、1種類以上のアルカリ金属とSbの化合物、AlAs、GaP、GaAs、GaSb、InAs等およびそれらの混晶等が挙げられる。その他の例としては金属が挙げられ、具体的には、Mg、Cu、Nb、LaB、SeB、Ag等が挙げられる。前記フォトカソード材料をEA表面処理することでフォトカソード3を作製することができ、該フォトカソード3は、半導体のギャップエネルギーに応じた近紫外-赤外波長領域で励起光の選択が可能となるのみでなく、電子ビームの用途に応じた電子ビーム源性能(量子収量、耐久性、単色性、時間応答性、スピン偏極度)が半導体の材料や構造の選択により可能となる。
【0021】
また、EA表面処理が不要な材料としては、例えば、Cu、Mg、Sm、Tb、Y等の金属単体、或いは、合金、金属化合物、又は、ダイアモンド、WBaO、CsTe等が挙げられる。EA表面処理が不要であるフォトカソードは、公知の方法(例えば、特許第3537779号等を参照)で作製すればよい。特許第3537779号に記載の内容は参照によりその全体が本明細書に含まれる。
【0022】
なお、本明細書中における「フォトカソード」と「カソード」との記載に関し、電子ビームを射出するという意味で記載する場合には「フォトカソード」と記載し、「アノード」の対極との意味で記載する場合には「カソード」と記載することがあるが、符号に関しては、「フォトカソード」および「カソード」のいずれの場合でも3を用いる。
【0023】
アノード4は、カソード3と電界を形成できるものであれば特に制限はなく、電子銃の分野において一般的に用いられているアノード4を使用すればよい。カソード3とアノード4との間で電界を形成することで、励起光Lの照射によりフォトカソード3に生成した放出可能な電子を引き出し、電子ビームBを形成する。
【0024】
図1には、カソード3とアノード4との間に電界を形成するため、電源7をカソード3に接続した例が示されているが、カソード3とアノード4との間に電位差が生じれば電源7の配置に特に制限はない。
【0025】
検出器5は、電子ビームBを照射した照射対象Sから放出された放出物SBを検出する。放出物SBは、電子ビームBを照射することで照射対象Sから発せられる信号を意味し、例えば、二次電子、反射電子、特性X線、オージェ電子、カソードルミネセンス、透過電子等が挙げられる。検出器5は、これらの放出物SBを検出できるものであれば特に制限はなく、公知の検出器・検出方法を用いればよい。
【0026】
次に、図2乃至図5を参照し、実施形態に係る電子線適用装置1および検出データ作成方法(より具体的には、制御部6の制御内容)の一例について詳しく説明する。
【0027】
実施形態に係る電子線適用装置1では、フォトカソード3が受光する励起光Lは、2つ以上である。図2に示す例では、フォトカソード3が受光する励起光Lは、4つ(L1~L4)である。フォトカソード3が受光する励起光Lの数は2つ以上であれば特に制限はなく、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上等、適宜選択すればよい。フォトカソード3が受光する励起光Lの数が多いほど、1回の検出データ作成作業において、照射対象Sの異なる照射領域Rに照射する電子ビームBの数が多くなる。したがって、1回の検出データ作成作業で、検出データを作成できる照射領域Rの設定の自由度が向上する。一方、フォトカソード3が受光する励起光Lの数の上限は特にないが、後述するとおり、光源2の数を増加する場合は製造コストが高くなると共に、装置が大型化する。したがって、技術的観点からの上限は特にはないが、製造コスト等の観点から、フォトカソード3が受光する励起光Lの数の上限を適宜設定すればよい。
【0028】
フォトカソード3が受光する励起光Lの数を2つ以上とするためには、例えば、フォトカソード3に励起光Lを照射する光源2の数を2つ以上とすればよい。代替的に、図1に示すように、単一の光源2とフォトカソード3との間にビームスプリッタ21を配置し、ビームスプリッタ21により、単一の光源2から照射された励起光Lを所望の数に分割すればよい。更に代替的に、2つ以上の光源2とビームスプリッタ21を組み合わせてもよい。
【0029】
図2に示す例では、フォトカソード3は4つの励起光L1~L4の受光に応じて放出可能な電子を生成する。次いで、カソード3とアノード4との間に形成した電界により、フォトカソード3から電子が引き出され4つの電子ビームB1~B4が形成される。そして、形成された4つの電子ビームB1~B4は、図3に示すように、それぞれ、照射対象Sの異なる照射領域R1~R4に照射される。なお、フォトカソード3から照射される電子ビームBは、他の電子銃から射出した電子ビームと比較して拡散し難いという特徴を有するが、必要に応じて、オブジェクティブレンズ8(図1参照)を用いて、電子ビームB1~B4を照射対象Sに照射する前に集束してもよい。オブジェクティブレンズ8を用いる場合は、2つ以上の電子ビームBに対して少なくとも1つのオブジェクティブレンズ8を設ければよい。
【0030】
電子線適用装置1が走査型の場合、制御部6は、電子ビーム偏向装置9を用い、電子ビームB1~B4それぞれをライン状に走査しながら照射対象Sの異なる照射領域R1~R4に照射する。そして、電子ビームB1~B4が照射された照射領域R1~R4からは、それぞれ、二次電子等の放出物SB1~SB4が放出される。電子ビーム偏向装置9を設ける場合、一つの電子ビーム偏向装置9で2つ以上の電子ビームBを偏向してもよいし、それぞれの電子ビームBに対して電子ビーム偏向装置9を設けてもよい。電子線適用装置1が非走査型のTEM等の場合は、照射対象Sに照射する電子ビームBのサイズを大きくすればよいことから、電子ビーム偏向装置9は設けなくてもよい。電子ビーム偏向装置9は、例えば、電子ビームBの進行方向と交差する方向の電界を生成する偏向用電極等、公知の装置を用いればよい。
【0031】
図2乃至図4を参照して、励起光Lと形成される電子ビームBについてより詳しく説明する。実施形態に係る電子線適用装置1では、フォトカソード3が受光する励起光L1~L4は、それぞれ、パルス状であり、且つ、フォトカソード3が受光する際のタイミングが異なるように設定されている。なお、本明細書において「フォトカソード3が受光する際のタイミングが異なる」とは、フォトカソード3が、2つ以上の異なる励起光(例えば、L1~L4。フォトカソード3が励起光L1~L4を受光する場所が異なる。)を同時に受光しないことを意味する。換言すると、フォトカソード3が2つ以上の異なる励起光(L1~L4)を受光する時間軸の任意の時間において、受光する場所が異なる励起光(L1~L4)を重複して受光しないことを意味する。
【0032】
また、本明細書において「パルス状」とは、励起光(L1~L4)の強度が0の時間と所定の強度を有する時間が交互に出現することを意味する(なお、以下において、交互に出現するタイミングを「周波数」と記載することがある。また、所定の強度を有する時間の一つを「パルス」と記載することがある)。パルスの形状は、放出した電子ビームBにより、照射対象Sから、検出信号を生成できる放出物SBが得られる範囲内であれば特に制限はない。図4に示す例では、パルスは略矩形波状であるが、サインカーブ状であってもよい。図4に示す例では、励起光L1~L4それぞれの周波数は同じであるが、フォトカソード3が受光する際のタイミングが異なるように設定できれば、励起光L1~L4の周波数は異なっていてもよい。また、フォトカソード3が受光する際のタイミングが異なるように設定できれば、一つの励起光(L1~L4の何れか)において、時間軸に応じて周波数を変更してもよい。
【0033】
図4に示す例では、励起光L1~L4それぞれのパルスの強度は同じであるが、励起光L1~L4のパルスの強度は異なっていてもよい。また、一つの励起光(L1~L4の何れか)において、時間軸に応じてパルスの強度を変更してもよい。
【0034】
上記のとおり、励起光L1~L4は、それぞれ、パルス状であり、且つ、フォトカソード3が受光する際のタイミングが異なるように照射される。フォトカソード3からは、励起光L1~L4の受光に対応した電子ビームB1~B4が放出されることから、放出される電子ビームB1~B4もタイミングが異なるパルス状の電子ビームとなる。したがって、放出される電子ビームB1~B4は、それぞれ、照射対象Sの異なる照射領域R1~R4に異なるタイミングで照射される。
【0035】
励起光(L1~L4)は、それぞれ、パルス状であり、且つ、フォトカソード3が受光する際のタイミングが異なるように照射されれば、照射方法に特に制限はない。例えば、光源2を2つ以上設ける場合(図2に示す例では4つ)は、それぞれの光源2から照射される励起光(L1~L4)のパルスが時間軸で異なるタイミングとなるように光源2を制御すればよい。なお、光源2の制御は、必要に応じて後述する制御部6が制御してもよい。また、単一の光源2でビームスプリッタ21を用いて2つ以上の励起光を形成する場合は、例えば、ビームスプリッタ21として液晶シャッターを用いればよい。後述する制御部6が、液晶シャッターを開閉制御することで励起光を複数の励起光(L1~L4)に分割すると共に、液晶シャッターの開閉間隔を励起光(L1~L4)毎に調整することで、フォトカソード3が受光する際のタイミングが異なるように制御できる。
【0036】
図2乃至図5を参照し、制御部6の制御内容の一例について詳しく説明する。図5は、照射領域R1およびR2から放出される放出物SBが、一つの検出器に入る例を示している。上記のとおり、電子ビームB1~B4は、それぞれ、照射対象Sの異なる照射領域R1~R4に異なるタイミングで照射される。そのため、図5に示すように、照射領域R1およびR2から放出される放出物SBも、異なるタイミングのパルス状となる。したがって、異なる照射領域R1およびR2から1つの検出器に入る放出物SBは重複しないことから、1つの検出器で異なる照射領域R1およびR2から放出されたパルス状の放出物SBを異なるタイミングで検出し検出信号を生成できる。制御部6は、電子ビームB1およびB2を、照射領域R1およびR2のどの位置に照射するのか制御している。したがって、生成した検出信号を照射領域R1およびR2の位置情報と関連付けて出力することで、照射対象Sに照射した電子ビームBの数より少ない検出器5の数で検出データを作成できる。図5に示す例では、一つの検出器で、2つの放出物SBの検出信号を生成している。放出物SBが3つ以上の場合でも、図5に示す例と同様に、検出器に入る放出物SBが重複しないように照射領域Rに照射する電子ビームBのタイミングを制御することで、一つの検出器で3つ以上の放出物SBから検出信号を生成できる。
【0037】
特許文献1および2では、照射対象Sに照射する電子ビームBの数と同じ或いはそれ以上の検出器(検出素子)を設ける必要があった。一方、上記のとおり、実施形態に係る電子線適用装置1では、検出器5の数は、照射対象Sに照射する電子ビームBの数より少なくできる。より好ましい実施形態では、一つの検出器5でマルチ電子ビームBに対応ができる。
【0038】
電子線適用装置1は、二次電子、反射電子、特性X線、オージェ電子、カソードルミネセンス、透過電子等の放出物を検出できるものであれば特に制限はない。電子線適用装置1の例としては、例えば、走査電子顕微鏡、電子線検査装置、オージェ電子分光装置、カソードルミネッセンス装置、X線分析装置、透過電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)等が挙げられる。なお、電子線適用装置1として非走査型の装置を用いた場合は、異なる照射領域Rに異なるタイミングの2つ以上のパルス状の電子ビームを照射すればよい。非走査であること以外は、走査型と同じである。
【0039】
次に、図6を参照して、検出データ作成方法を説明する。検出データ作成方法は、電子ビーム形成工程(ST1)と、電子ビーム照射工程(ST2)と、検出工程(ST3)と、検出データ出力工程(ST4)と、を含む。電子ビーム形成工程(ST1)は、光源2から、パルス状であり、且つ、フォトカソード3が受光する際のタイミングが異なる2つ以上の励起光Lをフォトカソード3に照射し、2つ以上のパルス状の電子ビームBを形成する。上記のとおり、フォトカソード3は、励起光Lのタイミングを反映した電子ビームBを形成できる。したがって、電子ビーム形成工程(ST1)では、それぞれタイミングが異なる2つ以上のパルス状の電子ビームBを形成できる。電子ビーム照射工程(ST2)では、2つ以上のパルス状の電子ビームBを、それぞれ、照射対象Sの異なる照射領域Rに照射する。検出工程(ST3)では、2つ以上のパルス状の電子ビームBをそれぞれ照射した異なる照射領域Rから放出された放出物SBを検出器5で検出し、検出信号を生成する。検出器5には、異なる照射領域Rから放出された放出物SBが異なるタイミングで入る。検出データ出力工程(ST4)では、生成した検出信号を異なる照射領域の位置情報と関連付けて出力する。出力したデータに基づき、異なる照射領域Rをカバーする検出データを作成できる。また、検出データ出力工程(ST4)の後に、検出データに基づき画像を形成する画像形成工程を任意付加的に追加してもよい。
【0040】
なお、図1図5は、電子線適用装置1の一例に過ぎない。本出願で開示する技術思想の範囲内であれば各種変更をしてもよい。例えば、図1に示す例では、励起光Lはフォトカソード3の第1面31側から照射されているが、第2面32側から照射してもよい。また、図1に示す例では、放出物SBは照射対象Sから反射した放出物SBを示しているが、照射対象Sを透過した放出物SBであってもよい。
【0041】
本出願で開示する電子線適用装置および検出データ作成方法(以下においては、装置および方法を纏めて「電子線適用装置」と記載することがある。)は、以下の効果を奏する。
(1)従来のマルチ電子ビーム形式の電子線適用装置は、照射対象に照射される電子ビームと同数またはそれよりも多くの数の検出器(検出素子)が必要であった。一方、実施形態に係る電子線適用装置1は、検出器5の数を照射対象Sに照射する電子ビームBの数より少なくできる。検出器5を少なくすることで、電子線適用装置1を小型化できるとともに、コストダウンを図ることができる。
(2)従来のマルチ電子ビームは、電子銃から引き出された後の電子ビームBから、機械的なシャッター等を用いてパルス状の電子ビームを得ていた。一方、実施形態に係る電子線適用装置1は、フォトカソード3を用いていることから、フォトカソード3に照射する励起光Lのタイミングを変えることで、同じフォトカソード3からタイミングの異なる2つ以上の電子ビームBを形成できる。したがって、電子ビームBの設計が多様化できる。また、実施形態に係る電子線適用装置1は、フォトカソード3を用いることで初めて実施ができることから、フォトカソード3特有の性質を用いた新たな原理による電子線適用装置1(検出データ作成方法)ということもできる。
(3)フォトカソード3は、励起光Lの照射時間に応じて劣化することが知られている。励起光Lとしてパルス光を用いた場合は、機械的なシャッターでカットされ不使用となる電子ビームが発生しない。したがって、電子ビームBをパルス化する構成部材が不要で、且つ、フォトカソード3の寿命が長くなる。
(4)検出器5が複数の場合、検出信号から検出データ作成(画像処理)までのプロセスは、検出器5の数だけ必要となる。一方、本出願で開示する電子線適用装置1の場合、検出器5の数は照射対象Sに照射した電子ビームBの数より少なくできる。したがって、シグナル処理が簡易になることから、検出データ作成の作業全体が簡易化(迅速化)できる。
(5)フォトカソード3を用いた電子線適用装置1において、一つの電子ビームBで異なる照射領域Rの検出データを作成することは可能である。例えば、図3の照射領域R1およびR3の検出データを作成する場合は、先ず、照射領域R1の検出データを作成し、次に、照射領域R3の検出データを作成すればよい。しかしながら、その場合、照射領域R1およびR3の検出データを作成するためには、タイムラグが発生する。一方、本出願で開示する電子線適用装置1では、照射対象Sの異なる照射領域R1およびR3に照射するパルス状の電子ビームBが重複しないようにタイミングをずらすことで、異なる照射領域R1およびR3からタイムラグがなく、実質的に同時に検出データが得られる。したがって、例えば、照射領域R1に電圧を印加した際に照射領域R3に及ぼす影響を検出する等、本出願で開示する電子線適用装置1は、従来の一つの電子ビームBではタイムラグの関係で検出が難しかった用途等にも使用できるという予期し得ない効果を奏する。
(6)本出願で開示する電子線適用装置1を用いることで、照射対象Sの所望の照射領域Rからタイムラグなく検出データが得られる。上記(5)に記載の用途以外にも、タイムラグなく検出データが得られることから、様々な用途に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本出願で開示する電子線適用装置および検出データ作成方法は、照射する電子ビームの数より検出器の数を少なくできる。したがって、検出データを作成する電子線適用装置を扱う産業にとって有用である。
【符号の説明】
【0043】
1…電子線適用装置、1a…電子銃部分、1b…相手側装置、2…光源、21…ビームスプリッタ、3…フォトカソード(カソード)、31…第1面、32…第2面、4…アノード、5…検出器、6…制御部、7…電源、8…オブジェクティブレンズ、9…電子ビーム偏向装置、B、B1~B4…電子ビーム、CB…真空チャンバー、L、L1~L4…励起光、S…照射対象、SB、SB1~SB4…放出物、R、R1~R4…照射領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-01-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から照射された励起光の受光に応じて、放出可能な電子を生成するフォトカソードと、
前記フォトカソードとの間で電界を形成することができ、形成した電界により前記放出可能な電子を引き出し、電子ビームを形成するアノードと、
前記電子ビームを照射した照射対象から放出された放出物を検出し、検出信号を生成する検出器と、
制御部と、
を含む、電子線適用装置であって、
前記フォトカソードが受光する励起光は2つ以上であり、
前記2つ以上の励起光は、それぞれ、パルス状であり、且つ、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射され、
前記制御部は、
1回の検出データ作成作業において、前記照射対象に電子ビームを照射する照射領域を2つ以上設定し、
前記タイミングが異なる2つ以上のパルス状の励起光の受光により形成された2つ以上のパルス状の電子ビームを、それぞれ、設定した2つ以上の照射領域の中から選択した異なる照射領域に照射し、
前記検出器は、前記照射対象の異なる照射領域から放出されたパルス状の放出物を異なるタイミングで検出することで検出信号を生成し、
生成した検出信号を前記異なる照射領域の位置情報と関連付けて出力し、
前記検出器の数が、前記照射対象に照射した電子ビームの数より少ない
電子線適用装置。
【請求項2】
前記検出器の数が1つである
請求項1に記載の電子線適用装置。
【請求項3】
前記光源が2つ以上であり、それぞれの光源から照射される励起光は、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射される
請求項1または2に記載の電子線適用装置。
【請求項4】
前記光源が1つであり、前記光源から照射された励起光を2つ以上に分割し、分割された2つ以上の励起光は、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射される
請求項1または2に記載の電子線適用装置。
【請求項5】
前記電子線適用装置が、
走査電子顕微鏡、
電子線検査装置、
オージェ電子分光器、
カソードルミネッセンス装置、
X線分析装置、
透過電子顕微鏡、または、
走査型透過電子顕微鏡、
である
請求項1~4の何れか一項に記載の電子線適用装置。
【請求項6】
電子線適用装置における検出データの作成方法であって、
電子線適用装置は、
光源と、
前記光源から照射された励起光の受光に応じて、放出可能な電子を生成するフォトカソードと、
前記フォトカソードとの間で電界を形成することができ、形成した電界により前記放出可能な電子を引き出し、電子ビームを形成するアノードと、
前記電子ビームを照射した照射対象から放出された放出物を検出し、検出信号を生成する検出器と、
制御部と、
を含み、
前記検出データの作成方法は、
1回の検出データ作成作業において、前記照射対象に電子ビームを照射する照射領域を2つ以上設定する工程と、
前記光源から、パルス状であり、且つ、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なる2つ以上の励起光を前記フォトカソードに照射し、2つ以上のパルス状の電子ビームを形成する電子ビーム形成工程と、
前記2つ以上のパルス状の電子ビームを、それぞれ、設定した2つ以上の照射領域の中から選択した異なる照射領域に照射する電子ビーム照射工程と、
前記2つ以上のパルス状の電子ビームを照射することで前記異なる照射領域から放出されたパルス状の放出物を異なるタイミングで前記検出器により検出し、検出信号を生成する検出工程と、
生成した検出信号を前記異なる照射領域の位置情報と関連付けて出力する検出データ出力工程と、
を含み、
前記検出器の数が、前記照射対象に照射した電子ビームの数より少ない
検出データの作成方法。
【請求項7】
前記検出器の数が1である
請求項6に記載の検出データの作成方法。
【請求項8】
前記光源が2つ以上であり、それぞれの光源から照射される励起光は、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射される
請求項6または7に記載の検出データの作成方法。
【請求項9】
前記光源が1つであり、前記光源から照射された励起光を2つ以上に分割し、分割された2つ以上の励起光は、前記フォトカソードが受光する際のタイミングが異なるように照射される
請求項6または7に記載の検出データの作成方法。
【請求項10】
前記電子線適用装置が、
走査電子顕微鏡、
電子線検査装置、
オージェ電子分光器、
カソードルミネッセンス装置、
X線分析装置、
透過電子顕微鏡、または、
走査型透過電子顕微鏡、
である
請求項6~9の何れか一項に記載の検出データの作成方法。