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特開2023-61091カプセル皮膜用ゼラチン粉末、これを含むカプセル皮膜、カプセルおよびカプセル皮膜用ゼラチン粉末を構成するためのキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061091
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】カプセル皮膜用ゼラチン粉末、これを含むカプセル皮膜、カプセルおよびカプセル皮膜用ゼラチン粉末を構成するためのキット
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20230424BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230424BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230424BHJP
【FI】
A61K9/48
A23L5/00 C
A61K47/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170869
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000190943
【氏名又は名称】新田ゼラチン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 光太
【テーマコード(参考)】
4B035
4C076
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LG15
4B035LP01
4C076AA53
4C076BB01
4C076EE42
4C076FF36
(57)【要約】
【課題】良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を示し、簡易な方法でカプセル皮膜を製造可能なカプセル皮膜用ゼラチン粉末を提供する。
【解決手段】カプセル皮膜用ゼラチン粉末は、不溶化ゼラチン粒子とゼラチンとを含み、前記不溶化ゼラチン粒子は、それを構成する分子内および分子間の両方またはいずれか一方にアミノ酸残基間の脱水縮合による架橋構造を有し、前記不溶化ゼラチン粒子の含有量は、前記ゼラチンおよび前記不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の1質量%以上50質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンと不溶化ゼラチン粒子とを含み、
前記不溶化ゼラチン粒子は、それを構成する分子内および分子間の両方またはいずれか一方にアミノ酸残基間の脱水縮合による架橋構造を有し、
前記不溶化ゼラチン粒子の含有量は、前記ゼラチンおよび前記不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の0.5質量%以上50質量%以下である、カプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【請求項2】
前記不溶化ゼラチン粒子の不溶化率は、40質量%以上100質量%以下であり、
前記不溶化率は、水500gに前記不溶化ゼラチン粒子10gを分散することにより得られる分散液を90℃になるまで加熱し、かつ90℃にて10分間維持した後、ろ過精度6μmの孔を有するろ紙にてろ過することにより残渣を得るとともに、前記残渣を105℃および17時間の条件において乾燥することにより得られる乾燥体の質量を測定し、前記不溶化ゼラチン粒子10gに対する前記乾燥体の質量の百分率を求めることにより算出される、請求項1に記載のカプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【請求項3】
前記不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が2μm以上1400μm以下の粒径を有する、請求項1または請求項2に記載のカプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【請求項4】
前記不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が5μm以上210μm以下の粒径を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【請求項5】
前記不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が2μm以上150μm以下の粒径を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【請求項6】
前記不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が20μm以上300μm以下の粒径を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【請求項7】
前記不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が110μm以上1400μm以下の粒径を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【請求項8】
前記不溶化ゼラチン粒子の含有量は、前記ゼラチンおよび前記不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の0.99質量%以上30質量%以下である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のカプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【請求項9】
前記カプセル皮膜用ゼラチン粉末は、前記不溶化ゼラチン粒子と前記ゼラチンとからなる、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のカプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【請求項10】
前記カプセル皮膜用ゼラチン粉末は、複数の粒子の集合体であって、
前記複数の粒子は、前記不溶化ゼラチン粒子と前記ゼラチンとが一体化された粒子を含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のカプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のカプセル皮膜用ゼラチン粉末を含む、カプセル皮膜。
【請求項12】
請求項11に記載のカプセル皮膜を含む、カプセル。
【請求項13】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のカプセル皮膜用ゼラチン粉末を構成するためのキットであって、
前記不溶化ゼラチン粒子と前記ゼラチンとは、別個に梱包されている、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル皮膜用ゼラチン粉末、これを含むカプセル皮膜、カプセルおよびカプセル皮膜用ゼラチン粉末を構成するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
カプセル皮膜の表面のべたつきを抑制し、かつ当該皮膜同士の付着を防止することができる作用効果(以下、このような作用効果を「耐ブロッキング性」とも記す)を付与することを目的として、従来から各種の技術が提案されている。たとえば特開2004-351007号公報(特許文献1)、特開2007-055945号公報(特許文献2)、特開2012-144504号公報(特許文献3)、特開2011-026262号公報(特許文献4)、特開2009-102293号公報(特許文献5)、特開2013-213000号公報(特許文献6)、および国際公開第2005/011402号(特許文献7)は、植物由来成分を主成分であるゼラチンに添加してカプセル皮膜を構成することを開示している。特開2017-014166号公報(特許文献8)は、ゼラチン、トランスグルタミナーゼ、酵母細胞壁およびメチルセルロースでカプセルを構成すること、特開平10-248502号公報(特許文献9)は、ゼラチン-キトサン混合物に対して紫外線照射することにより皮膜表層を不溶化してカプセルを構成することをそれぞれ開示している。特開2001-178376号公報(特許文献10)は、ゼラチンを主成分とするカプセル皮膜の表面に微粉末を塗布する方法について開示している。
【0003】
特開2003-070880号公報(特許文献11)は、二酸化ケイ素微粉末をゼラチンに添加してカプセル皮膜を構成することを開示している。特開2020-105141号公報(特許文献12)は、ゼラチンを含むカプセル皮膜に、脂肪酸トリグリセリド、メントールおよびパセリ種子油を含む内容物を内包させることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-351007号公報
【特許文献2】特開2007-055945号公報
【特許文献3】特開2012-144504号公報
【特許文献4】特開2011-026262号公報
【特許文献5】特開2009-102293号公報
【特許文献6】特開2013-213000号公報
【特許文献7】国際公開第2005/011402号
【特許文献8】特開2017-014166号公報
【特許文献9】特開平10-248502号公報
【特許文献10】特開2001-178376号公報
【特許文献11】特開2003-070880号公報
【特許文献12】特開2020-105141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1~12のようにゼラチンを主成分としたカプセル皮膜に、ゼラチンのようなコラーゲンを由来とする材料とは異なる成分等を配合した場合、溶解性能が悪化すること等によってカプセル成形に特殊な製法、あるいは複雑な製法を用いる必要があり、かつ成形したカプセルにおいて割れが発生する傾向がある。特許文献11に開示されたカプセル皮膜は、良好な耐ブロッキング性を有するとされるが、本発明者らの研究によれば、十分な耐ブロッキング性を有する条件において当該カプセル皮膜の形成が困難であることが判明している。また特許文献11に開示されたカプセル皮膜は、ゼラチンおよびグリセリン溶液のみから作製される従来の標準カプセルと同様に、所定の温度に保管した場合にカプセル皮膜の崩壊性が悪化することが判明している。したがってゼラチンを主成分としたカプセル皮膜に、良好な耐ブロッキング性を付与することができ、良好な溶解性および耐割れ性も示し、かつ特殊あるいは複雑な製法を必要としないカプセル皮膜は未だ実現されておらず、その開発が切望されている。
【0006】
上記実情に鑑み、本発明は、良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を示し、簡易な方法でカプセル皮膜を製造可能なカプセル皮膜用ゼラチン粉末、これを含むカプセル皮膜、カプセルおよびカプセル皮膜用ゼラチン粉末を構成するためのキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明に到達した。具体的には、ゼラチンを主成分としたカプセル皮膜に、耐ブロッキング性の付与を目的としてゼラチンと同じコラーゲンを由来とする材料(以下、「コラーゲン由来材料」とも記す)を添加することに注目した。本発明者らは、上記コラーゲン由来材料として熱架橋によって不溶化したゼラチン粒子(以下、「不溶化ゼラチン粒子」とも記す)を配合することによりカプセル皮膜を製造した場合、当該カプセル皮膜は良好な耐ブロッキング性を示すことを知見した。さらに上記カプセル皮膜は、良好な溶解性および耐割れ性も示すことを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、以下のとおりの特徴を有する。
〔1〕 本発明に係るカプセル皮膜用ゼラチン粉末は、ゼラチンと不溶化ゼラチン粒子とを含み、上記不溶化ゼラチン粒子は、それを構成する分子内および分子間の両方またはいずれか一方にアミノ酸残基間の脱水縮合による架橋構造を有し、上記不溶化ゼラチン粒子の含有量は、上記ゼラチンおよび上記不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の0.5質量%以上50質量%以下である。
〔2〕 上記不溶化ゼラチン粒子の不溶化率は、40質量%以上100質量%以下であり、上記不溶化率は、水500gに上記不溶化ゼラチン粒子10gを分散することにより得られる分散液を90℃になるまで加熱し、かつ90℃にて10分間維持した後、ろ過精度6μmの孔を有するろ紙にてろ過することにより残渣を得るとともに、上記残渣を105℃および17時間の条件において乾燥することにより得られる乾燥体の質量を測定し、上記不溶化ゼラチン粒子10gに対する上記乾燥物の質量の百分率を求めることにより算出されることが好ましい。
〔3〕 上記不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が2μm以上1400μm以下の粒径を有することが好ましい。
〔4〕 上記不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が5μm以上210μm以下の粒径を有することが好ましい。
〔5〕 上記不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が2μm以上150μm以下の粒径を有することが好ましい。
〔6〕 上記不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が20μm以上300μm以下の粒径を有することが好ましい。
〔7〕 上記不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が110μm以上1400μm以下の粒径を有することが好ましい。
〔8〕 上記不溶化ゼラチン粒子の含有量は、上記ゼラチンおよび上記不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の0.99質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
〔9〕 上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末は、上記不溶化ゼラチン粒子と上記ゼラチンとからなることが好ましい。
〔10〕 上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末は、複数の粒子の集合体であって、上記複数の粒子は、上記不溶化ゼラチン粒子と上記ゼラチンとが一体化された粒子を含むことが好ましい。
〔11〕 本発明に係るカプセル皮膜は、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末を含む。
〔12〕 本発明に係るカプセルは、上記カプセル皮膜を含む。
〔13〕 本発明に係るキットは、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末を構成するためのキットであって、上記不溶化ゼラチン粒子と上記ゼラチンとは、別個に梱包されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を示し、簡易な方法でカプセル皮膜を製造可能なカプセル皮膜用ゼラチン粉末、これを含むカプセル皮膜、カプセルおよびカプセル皮膜用ゼラチン粉末を構成するためのキットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態(以下、「本実施形態」とも記す)について、さらに詳細に説明する。ここで本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。本明細書において「ゼラチン」の用語については、物質名そのものをいう場合のほか、粒子状、粉末状およびゲル状のゼラチンをいう場合等にそれぞれ用いることがある。本明細書において「不溶化ゼラチン」と記した場合、特段の表記がない限り、その用語には「不溶化コラーゲン」という物質も含まれるものとする。本明細書において「ろ過精度6μm」とは、JIS Z8901 7種に規定される試験用粉体(試験用粒子)を混合した液をろ過した場合において、個数基準で90%の粒子の粒径が6μm以上である精度を意味するものとする。
【0011】
〔カプセル皮膜用ゼラチン粉末〕
本実施形態に係るカプセル皮膜用ゼラチン粉末は、ゼラチンと不溶化ゼラチン粒子とを含む。上記不溶化ゼラチン粒子は、それを構成する分子内および分子間の両方またはいずれか一方にアミノ酸残基間の脱水縮合による架橋構造を有する。さらに上記不溶化ゼラチン粒子の含有量は、上記ゼラチンおよび上記不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の0.5質量%以上50質量%以下である。このような特徴を備えるカプセル皮膜用ゼラチン粉末を用いることにより、良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を示すカプセル皮膜を得ることができる。上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末は、ゼラチンと不溶化ゼラチン粒子とからなることが好ましい。この場合、良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を示すカプセル皮膜をより歩留まり良く得ることができる。
【0012】
<ゼラチン>
上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末は、上述のようにゼラチンを含む。上記ゼラチンは、カプセル皮膜において主成分をなす。本明細書においてカプセル皮膜の「主成分」とは、カプセル皮膜を構成する成分のうち、最も多く含まれる成分をいうか、あるいは上記カプセル皮膜において50質量%以上を占める成分をいう。上記ゼラチンは、牛、豚、鶏、ダチョウなどの動物の骨または皮部分、サメ、ティラピアなどの魚類の骨、皮または鱗部分などのコラーゲンを含有する材料を、塩酸、硫酸などの無機酸もしくは石灰などの無機塩基を用いて処理することにより得ることができる。一般に、無機酸を用いて処理することにより得たゼラチンを酸処理ゼラチンと称し、無機塩基を用いて処理することにより得たゼラチンをアルカリ処理ゼラチンと称する。酸処理ゼラチンは、pH8~9が等イオン点であり、当該等イオン点が示すpH領域はブロードとなる。これに対し、アルカリ処理ゼラチンは、ほぼpH5が等イオン点であり、当該等イオン点が示すpH領域は非常にシャープとなる。上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末に含まれるゼラチンとしては、酸処理ゼラチンおよびアルカリ処理ゼラチンをいずれも用いることができる。
【0013】
さら上記ゼラチンとしては、この種のカプセル皮膜の主成分として用いられる従来公知のゼラチンを、いずれも制限なく用いることができる。つまりゼラチンの原料となるコラーゲンを含有する材料の由来(動物種)についても、まったく制限されない。上記ゼラチンのゼリー強度も、特に限定されない。ただし、本発明の効果を歩留まりよく奏する観点から、上記ゼラチンのゼリー強度は50~400gであることが好ましく、150~300gであることがより好ましい。さらに上記ゼラチンの粘度は1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。ゼラチンのゼリー強度が50g未満である場合、カプセル皮膜として十分な強度が得られない可能性がある。一方、ゼリー強度が400gを超えるゼラチンは、製造することが技術的に困難であることから現実的ではない可能性がある。
【0014】
ゼラチンのゼリー強度(単位はg)は、JIS K6503(2001)に準拠することにより測定することができる。具体的には、ゼラチンのゼリー強度は、濃度を6.67質量%に調製したゼラチン水溶液を10℃で17時間静置した後、テクスチャーアナライザ(たとえば商品名:「TA-XT21」、英弘精機株式会社製)を用いて4mm押したときの応力を測定することにより求めることができる。
【0015】
ゼラチンの粘度(単位はmPa・s)は、JIS K6503(2001)に準拠することにより測定することができる。具体的には、上記のJIS規格に準拠したブルーム式ピペット型粘度計を用い、濃度を6.67質量%に調製したゼラチン水溶液を対象として60℃で測定することにより求めることができる。
【0016】
<不溶化ゼラチン粒子>
上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末は、上述のように不溶化ゼラチン粒子を含む。上記不溶化ゼラチン粒子の原料としては、たとえば上述したゼラチンを例示することができる。すなわち「ゼラチン」と「不溶化ゼラチン」とは、不溶化ゼラチンの原料がゼラチンである点において区別することができ、もって本明細書において「ゼラチン」と記す場合、その範疇に「不溶化ゼラチン」は含まれないものとする。また、本明細書における「不溶化ゼラチン」には、未変性コラーゲンを後述の方法で架橋させた粒子も含むものとし、これを本明細書において「不溶化コラーゲン」と称するものとする。つまり、本明細書において「不溶化ゼラチン」とは、その由来原料がゼラチンまたは未変性コラーゲンを含むものを意味する。また上記不溶化ゼラチンの原料がゼラチンである場合、当該ゼラチンについては酸処理ゼラチンおよびアルカリ処理ゼラチンの両者をいずれも用いることができ、かつそれらのゼリー強度も特に限定されない。また当該ゼラチンの原料となるコラーゲンを含有する材料の由来(動物種)についても、まったく制限されない。不溶化ゼラチン粒子は、上述した原料に対し、後述する架橋構造が形成されるように所定の架橋処理を行うことによって得ることができる。
【0017】
(アミノ酸残基間の脱水縮合による架橋構造)
上記不溶化ゼラチン粒子は、上述のように、それを構成する分子内および分子間の両方またはいずれか一方にアミノ酸残基間の脱水縮合による架橋構造を有する。本明細書において、不溶化ゼラチン粒子が有する分子内および分子間の両方またはいずれか一方の「アミノ酸残基間の脱水縮合による架橋構造」とは、ゼラチンを加熱することによって、上記ゼラチンの分子内および分子間の両方またはいずれか一方において物理的に接近したアミノ酸残基同士を結合させる架橋処理を経ることにより得られる架橋構造をいう。このような架橋構造は、伝導熱または輻射熱などの熱を用いて上記ゼラチンを90℃以上とすることにより効果的に得ることができる。
【0018】
したがって不溶化ゼラチン粒子は、いわゆる熱架橋されたゼラチン粒子であることができる。具体的には、不溶化ゼラチン粒子は、上述した架橋構造を備えるように、ゼラチンに対し100~150℃の予備加熱による乾燥と、180~220℃の外部加熱による熱架橋との2段階の加熱処理を施した架橋ゼラチン粒子であることが好ましい。ここで不溶化ゼラチン粒子が「不溶化コラーゲン粒子」である場合、当該不溶化コラーゲンは、熱架橋されたコラーゲン粒子であることができる。
【0019】
上記不溶化ゼラチン粒子は、上述した架橋構造を有する場合、ゼラチンを主成分としたカプセル皮膜中に不溶化ゼラチン粒子が分散することによって、当該カプセル皮膜表面に凹凸を形成することができる。さらに当該凹凸は、不溶化ゼラチン粒子によって隆起していると考えられる凸面が、カプセル皮膜においてブロッキングが発生する条件、例えば高温下での長期間の保管条件においても、ブロッキングの原因となる皮膜表面の溶解が発生しにくいことから、カプセル皮膜に対して耐ブロッキング性を付与することができる。上述した架橋構造を有することによって不溶化ゼラチン粒子が、カプセル皮膜表面において凹凸を形成することができる理由は、その詳細は不明であるものの、次のメカニズムによると推定される。
【0020】
すなわち上述した架橋構造は、アミノ酸残基間の脱水縮合による架橋構造であるため、不溶化ゼラチン粒子の分子間または分子内にて非特異的に形成される。このため不溶化ゼラチン粒子は、特定の部位にて架橋反応を起こすトランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ(「リシンオキシダーゼ」とも呼ばれる)などの酵素を用いて架橋されたゼラチン、紫外線、遠赤外線などの放射線を用いて架橋されたゼラチン、グルタールアルデヒド、タンニン、ミョウバン、硫酸アルミニウムなどの化学品を用いて架橋されたゼラチン(以下、これらのゼラチンを「特定の部位にて架橋されたゼラチン」とも記す)よりも架橋度(単位分子量当たりの架橋部位の数)が大きい。たとえばトランスグルタミナーゼを用いた場合、特定の部位としてゼラチン中のリジン残基のアミノ基においてのみ架橋反応が起こる。またたとえば紫外線を用いた場合、特定の部位としてゼラチン中の芳香族アミノ酸においてのみ架橋反応が起こる。したがって不溶化ゼラチン粒子は、特定の部位にて架橋されたゼラチンよりも、複数の分子間で構成されるネットワークがより強固に形成されていると推定される。
【0021】
このような不溶化ゼラチン粒子に水を添加した場合、水分子は上記ネットワーク間に浸潤した後、上記ネットワーク中のアミノ酸の親水基との間で水素結合を形成し、もって不溶化ゼラチン粒子に保持される。これにより水分子を保持した不溶化ゼラチン粒子の比重と、ゼラチンを主成分としたカプセル皮膜の素溶液の比重とは、共に水の比重と実質的に等価となってほぼ同一となる。また不溶化ゼラチン粒子を、上記素溶液に分散させることによって混合液を得、当該混合液を薄く塗布してカプセル皮膜を形成し、かつこれを乾燥させた場合、不溶化ゼラチン粒子に保持された水分子よりも、上記素溶液中の水分子の方がより積極的に蒸散することとなる。その結果、上述の乾燥プロセスにおいては不溶化ゼラチン粒子と素溶液との間に比重差が発生し、当該比重差に基づいて不溶化ゼラチン粒子がカプセル皮膜表面に移行する(浮く)ことによって、当該カプセル皮膜表面に凹凸が形成されるものと推定される。
【0022】
ここで上述した作用効果をより顕著とするためには、上記不溶化ゼラチン粒子として、酵素を用いて架橋されたゼラチンなどの特定の部位にて架橋されたゼラチンを含まないことが好ましい。これらの特定の部位にて架橋されたゼラチンは、不溶化ゼラチン粒子よりも架橋度が小さいために、水分子の保持能力も低く、もってカプセル皮膜表面に凹凸を形成しにくいと推定される。一方、特定の部位にて架橋されたゼラチンに対し、さらに熱架橋することにより得られるゼラチンは、それを構成する分子内および分子間の両方またはいずれか一方にアミノ酸残基間の脱水縮合による架橋構造を有するので、上記不溶化ゼラチン粒子の範疇に含まれる。なお、二酸化ケイ素粒子を上記素溶液に分散した場合、表面に凹凸が形成されたカプセル皮膜を得ることができるが、その理由は二酸化ケイ素粒子の比重が上記素溶液のそれよりも小さいために、カプセル皮膜表面に二酸化ケイ素粒子が浮くことができるためであると推定される。
【0023】
(含有量)
本実施形態に係るカプセル皮膜用ゼラチン粉末において、不溶化ゼラチン粒子の含有量は、上記ゼラチンおよび上記不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の0.5質量%以上50質量%以下である。これにより上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末を用いてカプセル皮膜を得た場合、当該カプセル皮膜に良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を付与することができる。このような効果をより奏する観点から、上記不溶化ゼラチン粒子の含有量は、ゼラチンおよび不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の0.99質量%以上30質量%以下であることが好ましく、ゼラチンおよび不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の1質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチンおよび不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の0.5質量%未満である場合、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末において不溶化ゼラチン粒子は些少量となる。このため、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末を用いてカプセル皮膜を得た場合、当該カプセル皮膜に良好な耐ブロッキング性を付与することが困難となる。不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチンおよび不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の50質量%を超過する場合、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末において不溶化ゼラチン粒子は過剰量となる。この場合、脱泡性が著しく低下するためにカプセル皮膜用ゼラチン粉末を用いてカプセル皮膜を得ることが困難となる。
【0025】
カプセル皮膜用ゼラチン粉末における上記不溶化ゼラチン粒子の含有量は、次の方法により測定することができる。すなわち、まず90℃以上の水2Lにカプセル皮膜用ゼラチン粉末10gまたはそれを含有する後述のカプセル皮膜10gを添加することにより得た溶液を、ろ過精度(JIS Z8901:2006)6μmを有するろ紙にてろ過することにより残渣を得るとともに、上記残渣を105℃および17時間の条件において乾燥することにより得られる乾燥体の質量を測定する。次いで上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末10gまたはそれを含有するカプセル皮膜10gに対する上記乾燥体の質量の百分率を求める。最後に、その百分率の値を後述する不溶化ゼラチン粒子の不溶化率で除することにより、上記のカプセル皮膜用ゼラチン粉末における不溶化ゼラチン粒子の含有量を求めることができる。
【0026】
(不溶化率)
上記不溶化ゼラチン粒子の不溶化率は、40質量%以上100質量%以下であることが好ましい。不溶化ゼラチン粒子の不溶化率は、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、55質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
上記不溶化ゼラチン粒子の「不溶化率」は、不溶化ゼラチン粒子の架橋度と相関する値として表される数値であり、不溶化ゼラチン粒子が高い架橋度を有するほど、上記不溶化率も高くなるという関係を有する。不溶化ゼラチン粒子は、架橋度が高いほど複数の分子間で構成されるネットワークをより強固に形成できるため、より大きな水分子の保持能力を有することができ、もってより効果的にカプセル皮膜表面に凹凸を形成することができる。したがって不溶化ゼラチン粒子は、その不溶化率が40質量%以上100質量%以下という高い値を示すことにより、より効果的にカプセル皮膜表面に凹凸を形成することができる。上記不溶化ゼラチン粒子の不溶化率が40質量%未満である場合、カプセル皮膜表面における凹凸形成が非効率となる可能性がある。
【0028】
本明細書において「カプセル皮膜用ゼラチン粉末」の特徴を、不溶化ゼラチン粒子の「架橋度」ではなく、「不溶化率」にて説明する理由は、不溶化ゼラチン粒子の分子内および分子間の架橋度を正確に測定することは、技術的に困難である一方、不溶化ゼラチン粒子の不溶化率であれば、後述の算出方法により求めることができるからである。
【0029】
すなわち上記不溶化率は、水500gに上記不溶化ゼラチン粒子10gを分散することにより得られる分散液を90℃になるまで加熱し、かつ90℃にて10分間維持した後、ろ過精度6μmの孔を有するろ紙にてろ過することにより残渣を得るとともに、上記残渣を105℃および17時間の条件において乾燥することにより得られる乾燥体の質量を測定し、上記不溶化ゼラチン粒子10gに対する上記乾燥物の質量の百分率を求めることにより算出される。上記不溶化率は、より詳細には次のようにして算出される。
【0030】
まず上記不溶化ゼラチン粒子10gを秤量し、これをイオン交換水500gに投入することによって分散液を得る。この分散液については、1~30℃の室温で2時間静置することが好ましい。次いで上記分散液を、温浴を用いて15分程度かけて90℃まで加熱するとともに、この状態(90℃)にて10分間維持する。その後、直ちに恒量としたろ過精度6μmの孔を有するろ紙(たとえば、商品名:「定性ろ紙 No.5277」、安積濾紙株式会社製)を用いて上記分散液をろ過することによって残渣を得る。続いて、上記残渣を105℃および17時間の条件において乾燥することにより乾燥体を得るとともに、上記乾燥体の質量を市販の電子秤等を用いて測定する。最後に、上記不溶化ゼラチン粒子10gに対する上記乾燥物の質量の百分率を求めることによって、上記不溶化ゼラチン粒子の不溶化率(質量%)を算出することができる。
【0031】
(粒径/粒度)
上記不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が2μm以上1400μm以下の粒径を有することが好ましい。少なくとも99質量%が2μm以上1400μm以下の粒径を有する不溶化ゼラチン粒子は、原料となるゼラチンが上述した熱架橋による架橋処理に供される前に、当該ゼラチンに対し適宜粉砕する等して細粒化した後、36~200メッシュの試験用ふるいを用いて分級することによって得ることができる。99質量%が2μm未満となる粒径を有する不溶化ゼラチン粒子は、その作製が技術的に困難となる場合がある。99質量%が1400μmを超える粒径を有する不溶化ゼラチン粒子は、粒子が巨大であるためにカプセル皮膜またはカプセルを製造した場合に皮膜に孔が発生する恐れがあり、その場合、カプセルの内容物が漏れ出る可能性がある。
【0032】
ここで36~200メッシュという場合の「メッシュ」とは、『JIS Z 8801:2019』にて規定された試験用ふるいの網目の細かさの単位を意味する。たとえば100メッシュの試験用ふるいとは、縦線および横線からなる網目を、1平方インチあたり線径0.1mmの線材100本で形成したふるいをいう。36メッシュの試験用ふるいの網目の公称目開きは425μmである。また200メッシュの試験用ふるいの網目の公称目開きは75μmである。このように「メッシュ」の数値が大きくなるほど、網目(公称目開き)の孔は小さくなる。なお上記の36~200メッシュの試験用ふるいの公称目開きは、75~425μmである。
【0033】
上記不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が5μm以上210μm以下の粒径を有することがより好ましい。このような不溶化ゼラチン粒子は、上述した熱架橋による架橋処理に原料となるゼラチンが供される前に、当該ゼラチンに対し適宜粉砕する等して細粒化した後、100メッシュの試験用ふるいを用いて分級することによって容易に得ることができる。不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が2μm以上150μm以下の粒径を有することもより好ましい。このような不溶化ゼラチン粒子は、上述した熱架橋による架橋処理に原料となるゼラチンが供される前に、当該ゼラチンに対し適宜粉砕する等して細粒化した後、200メッシュの試験用ふるいを用いて分級することによって容易に得ることができる。不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が20μm以上300μm以下の粒径を有することもより好ましい。このような不溶化ゼラチン粒子は、上述した熱架橋による架橋処理に原料となるゼラチンが供される前に、当該ゼラチンに対し適宜粉砕する等して細粒化した後、60メッシュの試験用ふるいを用いて分級することによって容易に得ることができる。不溶化ゼラチン粒子は、少なくとも99質量%が110μm以上1400μm以下の粒径を有することもより好ましい。このような不溶化ゼラチン粒子は、上述した熱架橋による架橋処理に原料となるゼラチンが供される前に、当該ゼラチンに対し適宜粉砕する等して細粒化した後、36メッシュの試験用ふるいを用いて分級することによって容易に得ることができる。これらのカプセル皮膜用ゼラチン粉末を用いてカプセル皮膜を得た場合、当該カプセル皮膜に良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を歩留まり良く付与することができる。
【0034】
上記不溶化ゼラチン粒子の粒径は、粒子径分布測定装置(商品名:「マイクロトラックMT3000II」、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いることにより測定することができる。具体的には、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末または後述するカプセル皮膜に含まれる不溶化ゼラチン粒子の粒径を測定する場合、次のような方法を用いることができる。まず50℃以上の温水を準備し、当該温水にカプセル皮膜用ゼラチン粉末またはカプセル皮膜が5質量%濃度となるように添加し、続いて撹拌することにより、沈殿物を含む分散液を得る。次いで上記分散液をろ紙にてろ過することにより上記分散液から沈殿物を回収し、さらに当該沈殿物を50℃以上の温水に溶かし入れて撹拌し、再びろ紙にて濾過することにより沈殿物(以下、「第2の沈殿物」とも記す)を得る。この第2の沈殿物をイソプロパノールの溶媒に添加し、上記粒子径分布測定装置に適用することにより、不溶化ゼラチン粒子の粒径を求めることができる。なお第2の沈殿物を酸または酵素を用いて溶解することにより溶解液を得、続いて当該溶解液のヒドロキシプロリン含量を計測することにより、第2の沈殿物が不溶化ゼラチン粒子であるか否かを定性的に同定することもできる。
【0035】
(形態)
本実施形態に係るカプセル皮膜用ゼラチン粉末は、上述のようにゼラチンと不溶化ゼラチン粒子とを含む。上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末は、上記ゼラチンと上記不溶化ゼラチン粒子とが混合された形態を有することが好ましい。さらにカプセル皮膜用ゼラチン粉末は、上記ゼラチンと上記不溶化ゼラチン粒子とが一体化した粒子として含まれる形態を有することも好ましい。すなわち上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末は、複数の粒子の集合体であって、上記複数の粒子は、上記不溶化ゼラチン粒子と上記ゼラチンとが一体化された粒子を含むことも好ましい。本実施形態に係るカプセル皮膜用ゼラチン粉末は、ゼラチンと不溶化ゼラチン粒子とが混合された形態、およびゼラチンと不溶化ゼラチン粒子とが一体化した粒子として含まれる形態のいずれにおいても、カプセル皮膜に適用した場合、当該カプセル皮膜に良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を付与することができる。
【0036】
上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末において、ゼラチンと不溶化ゼラチン粒子とが混合された形態は、上述した方法によってゼラチンおよび不溶化ゼラチン粒子をそれぞれ製造した後、従来公知の方法によって混合することにより得ることができる。ゼラチンと不溶化ゼラチン粒子とが一粒子となるように一体化した形態のカプセル皮膜用ゼラチン粉末も、この種の粉末を一体化するための従来公知の方法を用いることによって得ることができる。
【0037】
〔カプセル皮膜用ゼラチン粉末を構成するためのキット〕
本実施形態に係るカプセル皮膜用ゼラチン粉末は、ゼラチンと不溶化ゼラチン粒子とが別個に梱包された形態を有していても、これらを後述するような他の成分(可塑剤、添加剤等)と混合すること等によってカプセル皮膜を製造することができる。つまり本実施形態は、カプセル皮膜用ゼラチン粉末を構成するためのキットであって、上記不溶化ゼラチン粒子と上記ゼラチンとは、別個に梱包されていることも好ましい。上記キットは、上述した方法によってゼラチンおよび不溶化ゼラチン粒子をそれぞれ製造した後、それぞれを別個に梱包することにより得ることができる。当該キットから製造されたカプセル皮膜も、良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を示すことができる。
【0038】
〔カプセル皮膜〕
本実施形態に係るカプセル皮膜は、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末を含む。このような特徴を備えるカプセル皮膜は、良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を示すことができる。上記カプセル皮膜は、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末に加え、可塑剤およびその他の添加剤を含むことができる。
【0039】
<可塑剤>
上記カプセル皮膜は、上述のように可塑剤を含むことができる。可塑剤は、カプセル皮膜に対し、柔軟性および弾力性を付与することができる。可塑剤としては、この種のカプセル皮膜に含むことができる従来公知の可塑剤をいずれも制限なく用いることができ、たとえばグリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトールなどを挙げることができる。上記カプセル皮膜に対しては、これらの可塑剤を1種単独で、あるいは2種以上組合せて用いることができる。
【0040】
上記カプセル皮膜において可塑剤は、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末100質量部に対し、20~60質量部含むことが好ましい。この場合、良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を示すカプセル皮膜を歩留まり良く得るができる。上記カプセル皮膜において可塑剤は、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末100質量部に対し、30~50質量部含むことがより好ましい。
【0041】
<添加剤>
上記カプセル皮膜は、上述のように添加剤を含むことができる。添加剤としては、この種のカプセル皮膜に含むことができる従来公知の添加剤をいずれも制限なく用いることができる。添加剤の例示としては、脂肪、脂質、安定剤、酸化防止剤、保存剤、着色料、甘味料、防腐剤、水分活性低下剤、pH調整剤などを挙げることができる。上記カプセル皮膜に対しては、これらの添加剤を1種単独で、あるいは2種以上組合せて用いることができる。
【0042】
上記カプセル皮膜において添加剤は、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末100質量部に対し、0.01~30質量部含むことが好ましい。この場合、各種の添加剤がそれぞれ有する作用効果を、適切にカプセル皮膜に付与することができる。上記カプセル皮膜において添加剤は、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末100質量部に対し、1~10質量部含むことがより好ましい。
【0043】
上記カプセル皮膜は、従来公知の方法を用いることにより製造することができる。たとえばまず、カプセル皮膜用ゼラチン粉末100質量部に対して可塑剤20~60質量部および添加剤0.01~30質量部を必要量の水(たとえば精製水またはイオン交換水)に添加することにより、上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末中のゼラチンを膨潤させたカプセル皮膜素液を得る。次いで、当該素液を30~90℃に加温することによりゼラチンを完全に溶解した後、常法にしたがうことによりカプセル皮膜を得ることができる。上記カプセル皮膜は、所謂直接攪拌法を用いて得たカプセル皮膜素液から得ることもできる。
【0044】
〔カプセル〕
本実施形態に係るカプセルは、上記カプセル皮膜を含む。このような特徴を備えるカプセルは、上述したカプセル皮膜用ゼラチン粉末を含むことから、良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を示すことができる。さらに上述したカプセル皮膜を含むことから、上記可塑剤および添加剤の各作用効果を備えることもできる。
【0045】
<製造方法>
本実施形態に係るカプセルは、上述したカプセル皮膜を製造する方法と同じ要領により製造することができる。具体的には、上記カプセル皮膜を得るプロセスにおいて、カプセル皮膜素液を30~90℃に加温することによりゼラチンを完全に溶解した後、常法にしたがってカプセル皮膜を得るのと併せ、カプセルの形状に成形することによって得ることができる。
【0046】
〔他の形態〕
本実施形態に係るカプセル皮膜用ゼラチン粉末は、上述のように不溶化ゼラチン粒子とゼラチンとを含む。上記カプセル皮膜用ゼラチン粉末は、他の形態として上記ゼラチンに代えて、あるいは上記ゼラチンと共に植物基材を含むことができる。すなわち以上の説明は、以下に付記する実施形態を含む。
【0047】
<付記1>
カプセル基材と不溶化ゼラチン粒子とを含み、
前記カプセル基材は、植物基材およびゼラチンを含み、
前記不溶化ゼラチン粒子は、それを構成する分子内および分子間の両方またはいずれか一方にアミノ酸残基間の脱水縮合による架橋構造を有し、
前記不溶化ゼラチン粒子の含有量は、前記植物基材、前記ゼラチンおよび前記不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の0.5質量%以上50質量%以下である、カプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【0048】
<付記2>
カプセル基材と不溶化ゼラチン粒子とを含み、
前記カプセル基材は、植物基材を含み、
前記不溶化ゼラチン粒子は、それを構成する分子内および分子間の両方またはいずれか一方にアミノ酸残基間の脱水縮合による架橋構造を有し、
前記不溶化ゼラチン粒子の含有量は、前記植物基材および前記不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の0.5質量%以上50質量%以下である、カプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【0049】
<付記3>
前記植物基材は、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉等の澱粉、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース類、LMペクチン、HMペクチン等のペクチン、加工澱粉、カラギーナン、植物性たんぱく、寒天およびプルランからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含む、付記1または付記2に記載のカプセル皮膜用ゼラチン粉末。
【0050】
上述したような植物基材をカプセル基材とし、これに不溶化ゼラチン粒子を適用して形成したカプセル皮膜も、良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を示すことができる。
【実施例0051】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
〔試料の準備〕
後述する第1試験~第7試験を実行するため、不溶化ゼラチン粒子および不溶化コラーゲン粒子、ならびにそれらと比較するための各試料を以下のようにして準備した。
【0053】
<試料1>
試料1の不溶化ゼラチン粒子として、上述した2段階の加熱処理によって熱架橋した市販の不溶化牛骨ゼラチン(商品名:「UH-100」、新田ゼラチン株式会社製)を準備した。試料1の不溶化ゼラチン粒子については、上述した測定方法により、少なくとも99質量%が5μm以上200μm以下の粒径を有することを確認した。
【0054】
<試料2>
試料2の不溶化ゼラチン粒子として、試料1をさらに粉砕して得た不溶化牛骨ゼラチンを準備した。試料2の不溶化ゼラチン粒子については、上述した測定方法により、少なくとも99質量%が2μm以上150μm以下の粒径を有することを確認した。
【0055】
<試料3>
市販の豚皮コラーゲン粒子(商品名:「PK―100」、新田ゼラチン株式会社製)に対し、上述した2段階の加熱処理を行って熱架橋することにより、試料3の不溶化コラーゲン粒子を準備した。試料3の不溶化コラーゲン粒子については、上述した測定方法により、少なくとも99質量%が5μm以上210μm以下の粒径を有することを確認した。
【0056】
<試料4>
市販の牛骨ゼラチン(商品名:「R微粉」、新田ゼラチン株式会社製)に対し、上述した2段階の加熱処理を行って熱架橋することにより、試料4の不溶化ゼラチン粒子を準備した。試料4の不溶化ゼラチン粒子については、上述した測定方法により、少なくとも99質量%が20μm以上300μm以下の粒径を有することを確認した。
【0057】
<試料5>
牛の骨由来のコラーゲン材料をアルカリ処理し、続いて適宜分級することによって、試料1よりも粒度が大きいゼラチンを得た。次いで当該ゼラチンに対し、上述した2段階の加熱処理を行って熱架橋することにより、試料5の不溶化ゼラチン粒子を準備した。試料5の不溶化ゼラチン粒子については、上述した測定方法により、少なくとも99質量%が110μm以上1400μm以下の粒径を有することを確認した。
【0058】
<試料101>
試料101として、市販の二酸化ケイ素粒子(商品名:「M5F」、Cabot Corporation製)を準備した。
【0059】
<試料102>
トランスグルタミナーゼを用いて架橋することにより得た架橋ゼラチンを乾燥させ、次いでこれを粉砕することによって、試料102の架橋ゼラチン粒子を準備した。
【0060】
<試料103>
市販の牛骨ゼラチン(商品名:「R微粉」、新田ゼラチン株式会社製)に対して紫外線を照射することにより上記牛骨ゼラチンを架橋し、これを試料103の架橋ゼラチン粒子として準備した。
【0061】
<試料104>
試料104として、架橋処理されていない市販の豚皮コラーゲン粒子(商品名:「PK-100」、新田ゼラチン株式会社製)を準備した。
【0062】
〔第1試験:不溶化率測定試験〕
上述した試料1~試料5および試料102~試料103に対し、それらの不溶化率を上述した方法にしたがって求めた。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1によれば、試料1~試料5は、不溶化率が40質量%以上であるため、ゼラチンを主成分とするカプセル皮膜表面に凹凸を形成することができるものと示唆される。一方、試料102~試料103は、不溶化率が40質量%未満であるため、上記カプセル皮膜表面に凹凸を形成することが困難となるものと示唆される。
【0065】
〔第2試験:第1付着性試験(皮膜落下試験)〕
<カプセル皮膜の作製>
(試料21-1)
ゼリー強度150gである牛骨ゼラチン(商品名:「♯150」、新田ゼラチン株式会社製)15gおよび試料1の不溶化ゼラチン粒子を、グリセリン溶液(グリセリン:イオン交換水=6:39)45gに添加し、溶解することにより素液を得、当該素液を薄膜として乾燥させることにより、試料21-1のカプセル皮膜を作製した。試料21-1においては、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して1質量部(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.15g)、2質量部(同0.3g)、5質量部(同0.75g)および10質量部(同1.5g)のものをそれぞれ準備した。
【0066】
(試料21-2)
試料1の不溶化ゼラチン粒子およびゼリー強度150gである牛骨ゼラチン(商品名:「♯150」、新田ゼラチン株式会社製)の合計15gを、グリセリン溶液(グリセリン:イオン交換水=6:39)45gに添加し、溶解することにより素液を得、当該素液を薄膜として乾燥させることにより、試料21-2のカプセル皮膜を作製した。試料21-2においては、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチンおよび不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の1質量%(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.15g)、2質量%(同0.3g)、5質量%(同0.75g)および10質量%(同1.5g)のものをそれぞれ準備した。
【0067】
(試料22)
試料2の不溶化ゼラチン粒子を用いること以外、試料21-1のカプセル皮膜を作製するのと同じ要領により、試料22のカプセル皮膜を作製した。
【0068】
(試料23)
試料3の不溶化コラーゲン粒子0.75gおよびゼリー強度150gである牛骨ゼラチン(商品名:「♯150」、新田ゼラチン株式会社製)15gを、グリセリン溶液(グリセリン:イオン交換水=6:39)45gに添加し、溶解することにより素液を得、当該素液を薄膜として乾燥させることにより、試料23のカプセル皮膜を作製した。
【0069】
(試料24)
試料4の不溶化ゼラチン粒子0.75gを用いること以外、試料23のカプセル皮膜を作製するのと同じ要領により、試料24のカプセル皮膜を作製した。
【0070】
(試料25)
試料5の不溶化ゼラチン粒子0.75gを用いること以外、試料23のカプセル皮膜を作製するのと同じ要領により、試料25のカプセル皮膜を作製した。
【0071】
(試料121)
ゼリー強度150gである牛骨ゼラチン(商品名:「♯150」、新田ゼラチン株式会社製)15gおよび試料101の二酸化ケイ素粒子を、グリセリン溶液(グリセリン:イオン交換水=6:39)45gに添加し、溶解することにより素液を得、当該素液を薄膜として乾燥させることにより、試料121のカプセル皮膜を作製した。試料121においては、二酸化ケイ素粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して1質量部(すなわち二酸化ケイ素粒子の添加量0.15g)、2質量部(同0.3g)および5質量部(同0.75g)のものをそれぞれ準備した。なお、試料101をゼラチン100質量部に対して5質量部添加した場合、上記方法で得た素液は、同2質量部以下添加した試料と比較して多量の起泡が発生し、素液の調整が非常に困難であった。このことから試料101は、同5質量部の添加が、上記方法で素液を調整する場合の上限量と判断した。
【0072】
(試料122)
試料102の架橋ゼラチン粒子0.75gを用いること以外、試料23のカプセル皮膜を作製するのと同じ要領により、試料122のカプセル皮膜を作製した。
【0073】
(試料123)
試料103の架橋ゼラチン粒子0.75gを用いること以外、試料23のカプセル皮膜を作製するのと同じ要領により、試料123のカプセル皮膜を作製した。
【0074】
(試料124)
試料104の豚皮コラーゲン粒子0.75gを用いること以外、試料23のカプセル皮膜を作製するのと同じ要領により、試料124のカプセル皮膜を作製した。
【0075】
<皮膜落下試験>
試料21-1、試料22~試料25および試料121~試料124のカプセル皮膜に対し、次のような皮膜落下試験を実行することにより、各カプセル皮膜が有する付着性(耐ブロッキング性)について評価した。試料21-1、試料22~試料25が実施例であり、試料121~試料124が比較例である。
【0076】
各試料のカプセル皮膜を1cm四方にカットし、凹凸が発生していると考えられる表面同士を二枚重ねて静置することにより、付着性を評価するための試験体を試料毎に5組準備した。次いで、当該試験体を40℃、50%相対湿度とした恒温室にて8週間保管した後、上記シャーレを上下反転させ、当該シャーレを20回軽く叩いた。その場合において、二枚重ねたカプセル皮膜の一方が落下した枚数を計測し、皮膜同士が付着しない(すなわち耐ブロッキング性を有する)確率を求めた。結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2によれば、試料21-1、試料22~試料24のカプセル皮膜は、不溶化ゼラチン粒子の含有量が1~10質量部のいずれの場合であっても、皮膜同士が付着しない確率が100%であり、かつ試料25のカプセル皮膜は、不溶化ゼラチン粒子の含有量が5質量部の場合、皮膜同士が付着しない確率が60%であるため、いずれも試料122~試料124のカプセル皮膜に比して良好な耐ブロッキング性を備えると評価することができる。なお試料121のカプセル皮膜も良好な耐ブロッキング性を備えていた。一方、不溶化ゼラチン粒子を含まず、上述したゼラチン15gおよびグリセリン溶液45gからカプセル皮膜を形成し、上述の皮膜落下試験を行ったところ、皮膜同士が付着しない確率は0%であった。
【0079】
さらに、試料21-2のカプセル皮膜に対し、40℃、50%相対湿度とした恒温室に4週間保管したこと以外、上述の皮膜落下試験と同じ試験を行ったところ、不溶化ゼラチン粒子の含有量が1質量%以上で耐ブロッキング性が向上し、かつ不溶化ゼラチン粒子の含有量が5質量%以上で皮膜同士が付着しない確率が100%となった。したがって試料21-2のカプセル皮膜は、良好な耐ブロッキング性を備えると評価することができる。
【0080】
〔第3試験:第2付着性試験(最大剥離強度測定試験(4週保管))〕
<カプセル皮膜の作製>
(試料31-1)
試料21-1のカプセル皮膜を試料31-1のカプセル皮膜として用いた。試料31-1においては、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して1質量部(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.15g)、2質量部(同0.3g)、5質量部(同0.75g)および10質量部(同1.5g)のものをそれぞれ準備した。
【0081】
(試料31-2)
試料21-2のカプセル皮膜を試料31-2のカプセル皮膜として用いた。試料31-2においては、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチンおよび不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の1質量%(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.15g)、2質量%(同0.3g)、5質量%(同0.75g)および10質量%(同1.5g)のものをそれぞれ準備した。
【0082】
(試料32)
試料22のカプセル皮膜を試料32のカプセル皮膜として用いた。試料32においては、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して1質量部(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.15g)、2質量部(同0.3g)、5質量部(同0.75g)および10質量部(同1.5g)のものをそれぞれ準備した。
【0083】
(試料33)
試料23のカプセル皮膜を試料33のカプセル皮膜として用いた。
【0084】
(試料34)
試料24のカプセル皮膜を試料34のカプセル皮膜として用いた。
【0085】
(試料35)
試料25のカプセル皮膜を試料35のカプセル皮膜として用いた。
【0086】
(試料131-1)
試料121のカプセル皮膜を試料131-1のカプセル皮膜として用いた。試料131-1においては、二酸化ケイ素粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して1質量部(すなわち二酸化ケイ素粒子の添加量0.15g)、2質量部(同0.3g)および5質量部(同0.75g)のものをそれぞれ準備した。
【0087】
(試料131-2)
試料101の二酸化ケイ素粒子およびゼリー強度150gである牛骨ゼラチン(商品名:「♯150」、新田ゼラチン株式会社製)の合計15gを、グリセリン溶液(グリセリン:イオン交換水=6:39)45gに添加し、溶解することにより素液を得、当該素液を薄膜として乾燥させることにより、試料131-2のカプセル皮膜を作製した。試料131-2においては、二酸化ケイ素粒子の含有量がゼラチンおよび二酸化ケイ素粒子の合計含有量の1質量%(すなわち二酸化ケイ素粒子の添加量0.15g)、2質量%(同0.3g)および5質量%(同0.75g)のものをそれぞれ準備した。
【0088】
(試料132)
試料122のカプセル皮膜を試料132のカプセル皮膜として用いた。
【0089】
(試料133)
試料123のカプセル皮膜を試料133のカプセル皮膜として用いた。
【0090】
(試料134)
試料124のカプセル皮膜を試料134のカプセル皮膜として用いた。
【0091】
<最大剥離強度測定試験(4週保管)>
試料31-1、試料32~試料35、試料131-1および試料132~試料134のカプセル皮膜に対し、次のような最大剥離強度測定試験を実行することにより、各カプセル皮膜が有する付着性(耐ブロッキング性)について評価した。試料31-1および試料32~試料35が実施例であり、試料131-1および試料132~試料134が比較例である。
【0092】
各試料のカプセル皮膜を直径3.3cm円にカットし、凹凸が発生していると推定される表面同士を二枚重ねるとともに、上記円の半分については薬包紙を挟んだ状態として試験体を準備した。次いで、当該試験体を40℃、50%相対湿度とした恒温室にて4週間保管した。続いて23℃、50%相対湿度の雰囲気下で1時間静置した後、試験体から上記薬包紙を除去するとともに、上記試験体の薬包紙を挟んでいた側をテンシロン万能試験機(商品名:「RTG1310」、株式会社エー・アンド・デイ製)の治具に固定した。この場合において、上記治具を用いて5mm/sの速度で上記試験体の重ねた皮膜を引き剥がした際に計測される最大剥離強度を求めた。この最大剥離強度については、各試料について3回計測し、その平均値を算出した。結果を表3に示す。
【0093】
表3においては、各試料の最大剥離強度を、不溶化ゼラチン粒子等を含有することなく上記のゼラチンおよびグリセリン溶液のみから作製したカプセル皮膜(以下、「標準カプセル皮膜」とも記す)の最大剥離強度との相対値(単位は、%)で示した。上記相対値が小さいほど、標準カプセル皮膜に比して皮膜同士が付着していないといえるため、耐ブロッキング性に優れると評価される。
【0094】
【表3】
【0095】
表3によれば、試料31-1および試料32~試料35のカプセル皮膜は、不溶化ゼラチン粒子の含有量が2~10質量部のいずれの場合であっても、上記相対値が小さく試料132~試料133のカプセル皮膜に比して良好な耐ブロッキング性を備えると評価することができる。なお試料131-1および試料134のカプセル皮膜も良好な耐ブロッキング性を備えていた。
【0096】
さらに、試料31-2および試料131-2のカプセル皮膜に対し、上述の最大剥離強度測定試験と同じ試験を行ったところ、試料31-2では不溶化ゼラチン粒子の含有量が5質量%以上で耐ブロッキング性が向上した。したがって試料31-2のカプセル皮膜は、良好な耐ブロッキング性を備えると評価することができる。なお試料131-2のカプセル皮膜も良好な耐ブロッキング性を備えていた。
【0097】
〔第4試験:第3付着性試験(最大剥離強度測定試験(8週保管))〕
<カプセル皮膜の作製>
(試料41)
試料21-1のカプセル皮膜を試料41のカプセル皮膜として用いた。試料41としては、試料21-1と同様に、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して1質量部(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.15g)、2質量部(同0.3g)、5質量部(同0.75g)および10質量部(同1.5g)のものをそれぞれ準備した。
【0098】
(試料42)
試料22のカプセル皮膜を試料42のカプセル皮膜として用いた。試料42としては、試料22と同様に、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して1質量部(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.15g)、2質量部(同0.3g)、5質量部(同0.75g)および10質量部(同1.5g)のものをそれぞれ準備した。
【0099】
(試料43)
試料23のカプセル皮膜を試料43のカプセル皮膜として用いた。
【0100】
(試料44)
試料24のカプセル皮膜を試料44のカプセル皮膜として用いた。
【0101】
(試料45)
試料25のカプセル皮膜を試料45のカプセル皮膜として用いた。
【0102】
(試料141)
試料121のカプセル皮膜を試料141のカプセル皮膜として用いた。試料141においては、二酸化ケイ素粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して1質量部(すなわち二酸化ケイ素粒子の添加量0.15g)、2質量部(同0.3g)および5質量部(同0.75g)のものをそれぞれ準備した。
【0103】
(試料142)
試料122のカプセル皮膜を試料142のカプセル皮膜として用いた。
【0104】
(試料143)
試料123のカプセル皮膜を試料143のカプセル皮膜として用いた。
【0105】
(試料144)
試料124のカプセル皮膜を試料144のカプセル皮膜として用いた。
【0106】
<最大剥離強度測定試験(8週保管)>
試料41~試料45および試料141~試料144のカプセル皮膜に対し、保管期間を8週間とすること以外、第3試験と同じ要領で最大剥離強度測定試験を実行することにより、各カプセル皮膜が有する付着性(耐ブロッキング性)について評価した。結果を表4に示す。試料41~試料45が実施例であり、試料141~試料144が比較例である。
【0107】
【表4】
【0108】
表4によれば、試料41~試料45のカプセル皮膜は、不溶化ゼラチン粒子の含有量が5質量部および10質量部の場合、上記相対値が小さく、試料141~試料144のカプセル皮膜に比して良好な耐ブロッキング性を備えると評価することができる。
【0109】
〔第5試験:皮膜強度評価試験および皮膜伸長距離評価試験〕
<カプセル皮膜の作製>
(試料51-1)
試料21-1のカプセル皮膜を試料51-1のカプセル皮膜として用いた。試料51-1においては、試料21-1と同様に、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して1質量部(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.15g)、2質量部(同0.3g)、5質量部(同0.75g)および10質量部(同1.5g)のものをそれぞれ準備した。
【0110】
(試料51-2)
試料21-2のカプセル皮膜を試料51-2のカプセル皮膜として用いた。試料51-2においては、試料21-2と同様に、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチンおよび不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の1質量%(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.15g)、2質量%(同0.3g)、5質量%(同0.75g)および10質量%(同1.5g)のものをそれぞれ準備した。
【0111】
(試料52)
試料22のカプセル皮膜を試料52のカプセル皮膜として用いた。試料52においては、試料22と同様に、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して1質量部(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.15g)、2質量部(同0.3g)、5質量部(同0.75g)および10質量部(同1.5g)のものをそれぞれ準備した。
【0112】
(試料53)
試料23のカプセル皮膜を試料53のカプセル皮膜として用いた。
【0113】
(試料54)
試料24のカプセル皮膜を試料54のカプセル皮膜として用いた。
【0114】
(試料55)
試料25のカプセル皮膜を試料55のカプセル皮膜として用いた。
【0115】
(試料151-1)
試料121のカプセル皮膜を試料151-1のカプセル皮膜として用いた。試料151-1においては、二酸化ケイ素粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して1質量部(すなわち二酸化ケイ素粒子の添加量0.15g)、2質量部(同0.3g)および5質量部(同0.75g)のものをそれぞれ準備した。
【0116】
(試料151-2)
試料101の二酸化ケイ素粒子およびゼリー強度150gである牛骨ゼラチン(商品名:「♯150」、新田ゼラチン株式会社製)の合計15gを、グリセリン溶液(グリセリン:イオン交換水=6:39)45gに添加し、溶解することにより素液を得、当該素液を薄膜として乾燥させることにより、試料151-2のカプセル皮膜を作製した。試料151-2においては、二酸化ケイ素粒子の含有量がゼラチンおよび二酸化ケイ素粒子の合計含有量の1質量%(すなわち二酸化ケイ素粒子の添加量0.15g)、2質量%(同0.3g)および5質量%(同0.75g)のものをそれぞれ準備した。
【0117】
(試料152)
試料122のカプセル皮膜を試料152のカプセル皮膜として用いた。
【0118】
(試料153)
試料123のカプセル皮膜を試料153のカプセル皮膜として用いた。
【0119】
(試料154)
試料124のカプセル皮膜を試料154のカプセル皮膜として用いた。
【0120】
<皮膜強度測定試験>
試料51-1、試料52~試料55、試料151-1および試料152~試料155のカプセル皮膜に対し、次のような皮膜強度測定試験を実行することにより、各カプセル皮膜が有する強度を評価した。試料51-1および試料52~試料55が実施例であり、試料151-1および試料152~試料155が比較例である。
【0121】
各試料のカプセル皮膜を直径3.3cm円にカットして所定の器具に固定することにより試験体を準備した。次いで、直径1mmのステンレス製シリンダを取付けたテクスチャーアナライザ(商品名:「TA-XT21」、英弘精機株式会社製)を準備した。上記試験体に対して上記ステンレス製シリンダを10mm/sの速度にて突き刺し、その際に計測される最大荷重値を求めた。この最大荷重値については各試料に対し7または8回計測し、その平均値を算出した。結果を表5に示す。
【0122】
表5においては、各試料の最大荷重値を、上述した標準カプセル皮膜を対象として得た最大荷重値との相対値(単位は、%)で示した。上記相対値が大きいほど、標準カプセル皮膜に比してより大きな強度を有すると評価される。
【0123】
<皮膜伸長距離測定試験>
試料51-1、試料52~試料55、試料151-1および試料152~試料155のカプセル皮膜に対し、測定対象を最大荷重測定時のステンレス製シリンダの伸長距離とすること以外、皮膜強度測定試験と同じ要領にて皮膜伸長距離測定試験を実行することにより、各カプセル皮膜が有する柔軟性を評価した。結果を表6に示す。試料51-1および試料52~試料55が実施例であり、試料151-1および試料152~試料155が比較例である。
【0124】
表6においては、各試料における上記シリンダの伸長距離を、上述した標準カプセル皮膜を対象とした上記シリンダの伸長距離との相対値(単位は、%)で示した。標準カプセル皮膜自体、良好な柔軟性を有することが知られるため、上記相対値の数値が100%近くまたは100%以上を示した場合、良好な柔軟性を有すると評価することができる。
【0125】
【表5】
【0126】
【表6】
【0127】
表5によれば、試料51-1および試料52~試料55のカプセル皮膜は、上記相対値が同等かあるいは大きく、試料152~試料154のカプセル皮膜に比して良好な強度を有すると評価することができる。なお試料151-1のカプセル皮膜も良好な強度を有していた。表6によれば、試料51-1、試料52~試料55のカプセル皮膜は、不溶化ゼラチン粒子の含有量が5質量部において、とりわけ試料52のカプセル皮膜は不溶化ゼラチン粒子の含有量が10質量部においても、それぞれ上記相対値が100%程度であるので、上述した標準カプセル皮膜と同様に良好な柔軟性を有すると評価することができる。一般に、ゼラチンなどの皮膜基材に対するグリセリンの比率が低下すると、可塑性が低下して伸長距離が低下することが知られている。しかし驚くべきことに、試料51-1および試料52~試料55では不溶化ゼラチン粒子の含有量が5質量部以上である場合において、上述した標準カプセル皮膜と比較して皮膜基材となる総コラーゲン量に対するグリセリンの比率が低下しているにもかかわらず、上記相対値は97%以上であり、伸長距離が低下しなかった。なお試料151-1のカプセル皮膜も、試料101の含有量が5質量部である場合、標準カプセル皮膜と同様な柔軟性を有していた。
【0128】
以上によれば、試料51-1および試料52~試料55のカプセル皮膜は、いずれも良好な強度および柔軟性の両特性を有することから、良好な耐割れ性を有すると評価することができる。
【0129】
さらに、試料51-2および試料151-2のカプセル皮膜に対し、上述の皮膜強度測定試験および皮膜伸長距離測定試験と同じ試験をそれぞれ行ったところ、試料51-2および試料151-2のカプセル皮膜は、いずれも良好な強度および柔軟性の両特性を示した。このことから試料51-2は、良好な耐割れ性を有すると評価することができる。
【0130】
〔第6試験:第1崩壊試験(50℃保管)〕
<カプセル皮膜の作製>
(試料6A)
上述した第3試験等で用いた標準カプセル皮膜を試料6Aのカプセル皮膜として用いた。上記標準カプセル皮膜は、不溶化ゼラチン粒子などの不溶性成分を含まないことから良好な溶解性を有する試料の標準とすることができる。
【0131】
(試料61-1)
試料21-2のカプセル皮膜のうち、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチンおよび不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の5質量%(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.75g)のものを試料61-1のカプセル皮膜として準備した。
【0132】
(試料61-2)
試料21-2のカプセル皮膜のうち、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチンおよび不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の10質量%(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量1.5g)のものを試料61-2のカプセル皮膜として準備した。
【0133】
(試料61-3)
試料1の不溶化ゼラチン粒子3g、およびゼリー強度150gである牛骨ゼラチン(商品名:「♯150」、新田ゼラチン株式会社製)12gを、グリセリン溶液(グリセリン:イオン交換水=6:39)45gに添加し、溶解することにより素液を得、当該素液を薄膜として乾燥させることにより、試料61-3のカプセル皮膜を作製した。試料61-3においては、不溶化ゼラチン粒子の含有量はゼラチンおよび不溶化ゼラチン粒子の合計含有量の20質量%となる。
【0134】
<崩壊試験(50℃保管)>
試料6Aおよび試料61-1~試料61-3のカプセル皮膜に対し、次のような崩壊試験を実行することにより、各カプセル皮膜が有する溶解性について評価した。試料6Aが比較例であり、試料61-1~試料61-3が実施例である。
【0135】
50℃の恒温室に保管する前の時点、ならびに50℃の恒温室に保管し、その後、各試料を5週間経過するまで1週間毎に取出して室温(23℃)に戻した時点それぞれにおいて、37±2℃の水中で各試料のカプセル皮膜が溶解して崩壊するまでの時間(単位は、分)を、所定の崩壊試験機(商品名:「NT-20H」、富山産業株式会社製)を用いることにより求めた。結果を表7に示す。カプセル皮膜が溶解して崩壊するまでの時間が短いほど、溶解性に優れると評価される。なお崩壊の確認は、目視にて行った。
【0136】
【表7】
【0137】
表7によれば、試料61-1~試料61-3のカプセル皮膜は、試料6Aに比してカプセル皮膜が溶解して崩壊するまでの時間がほとんど遅延しておらず、もって試料61-1~試料61-3のカプセル皮膜は、良好な溶解性を有すると評価することができる。
【0138】
〔第7試験:第2崩壊試験(40℃、75%相対湿度(RH)保管)〕
<カプセル皮膜の作製>
(試料7A)
崩壊性を遅延させる色素としてIV型カラメル(カラメルIV)0.6gをさらに添加すること以外、上述した第3試験等で用いた標準カプセル皮膜を作製するのと同じ要領により、試料7Aのカプセル皮膜を作製した。試料7Aのカプセル皮膜も、不溶性成分を含まないことから良好な溶解性を有する試料の標準とすることができる。
【0139】
(試料71-1)
IV型カラメル(カラメルIV)0.6gをさらに添加すること以外、試料21-1のカプセル皮膜のうち、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して5質量部(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.75g)のものを得るのと同じ要領により、試料71-1のカプセル皮膜を準備した。
【0140】
(試料71-2)
IV型カラメル(カラメルIV)0.6gをさらに添加すること以外、試料21-1のカプセル皮膜のうち、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して10質量部(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量1.5g)のものを得るのと同じ要領により、試料71-2のカプセル皮膜を準備した。
【0141】
(試料72-1)
IV型カラメル(カラメルIV)0.6gをさらに添加すること以外、試料22のカプセル皮膜のうち、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して5質量部(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量0.75g)のものを得るのと同じ要領により、試料72-1のカプセル皮膜を準備した。
【0142】
(試料72-2)
IV型カラメル(カラメルIV)0.6gをさらに添加すること以外、試料22のカプセル皮膜のうち、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して10質量部(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量1.5g)のものを得るのと同じ要領により、試料72-2のカプセル皮膜を準備した。
【0143】
(試料73)
IV型カラメル(カラメルIV)0.6gをさらに添加すること以外、試料23のカプセル皮膜において、不溶化ゼラチン粒子の含有量がゼラチン100質量部に対して10質量部(すなわち不溶化ゼラチン粒子の添加量1.5g)のものを得るのと同じ要領により、試料73のカプセル皮膜を準備した。
【0144】
(試料171-1)
IV型カラメル(カラメルIV)0.6gをさらに添加すること以外、試料121-1のカプセル皮膜のうち、二酸化ケイ素の含有量がゼラチン100質量部に対して1質量部(すなわち二酸化ケイ素の添加量0.15g)のものを得るのと同じ要領により、試料171-1のカプセル皮膜を準備した。
【0145】
(試料171-2)
IV型カラメル(カラメルIV)0.6gをさらに添加すること以外、試料121-1のカプセル皮膜のうち、二酸化ケイ素の含有量がゼラチン100質量部に対して5質量部(すなわち二酸化ケイ素の添加量0.75g)のものを得るのと同じ要領により、試料171-2のカプセル皮膜を準備した。
【0146】
<崩壊試験(40℃、75%相対湿度(RH)保管)>
試料7A、試料71-1~試料71-2、試料72-1~試料72-2、試料73および試料171-1~試料171-2のカプセル皮膜に対し、次のような崩壊試験を実行することにより、各カプセル皮膜が有する溶解性について評価した。試料71-1~試料71-2、試料72-1~試料72-2および試料73が実施例であり、試料7Aおよび試料171-1~試料171-2が比較例である。
【0147】
40℃、75%相対湿度(RH)とした恒温室に保管する前の時点、ならびに40℃、75%相対湿度(RH)とした恒温室に保管し、その後、各試料を2週間後から5週間後まで1週間毎に取出して室温(23℃)に戻した時点それぞれにおいて、37±2℃の水中で各試料のカプセル皮膜が溶解して崩壊するまでの時間(単位は、分)を、所定の崩壊試験機(商品名:「NT-20H」、富山産業株式会社製)を用いることにより求めた。結果を表8に示す。カプセル皮膜が溶解して崩壊するまでの時間が短いほど、溶解性に優れると評価される。なお崩壊の確認は、目視にて行った。また表8中、「60以上」とは、カプセル皮膜が溶解して崩壊するまで60分以上掛かったために、崩壊(溶解)しないと判断したことを意味する。
【0148】
【表8】
【0149】
表8によれば、試料71-1~試料71-2および試料72-1~試料72-2および試料73のカプセル皮膜は、試料7Aが崩壊しないと判断された40℃75%相対湿度とした恒温室に5週間保管した条件においても、60分以内にカプセル皮膜が崩壊して溶解した。もって試料71-1~試料71-2および試料72-1~試料72-2および試料73のカプセル皮膜は、標準カプセル皮膜に比して良好な溶解性を有すると評価することができる。一方、試料171-1~試料171-2のカプセル皮膜は、40℃、75%相対湿度(RH)とした恒温室に5週間保管した場合、崩壊(溶解)しないと判断された。以上より、試料171-1~試料171-2のカプセル皮膜は、試料71-1~試料71-2、試料72-1~試料72-22および試料73のカプセル皮膜に比して溶解性に劣っていると評価することができる。
【0150】
〔総括〕
以上の各試験によれば、ゼラチンと、試料1~試料5の不溶化ゼラチン粒子または不溶化コラーゲン粒子のいずれかとを含み、上記不溶化ゼラチン粒子または上記不溶化コラーゲン粒子の含有量が上記ゼラチンおよび不溶化ゼラチンまたは不溶化コラーゲンの合計含有量の0.5質量%以上50質量%以下であるカプセル皮膜用ゼラチン粉末を含有するカプセル皮膜は、良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を備えることが理解される。もって上記カプセル皮膜から得られるカプセルについても、良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を備えることが示唆される。
【0151】
ここで上述した第2試験、第3試験および第5試験を、上述したカプセル皮膜とは異なる動物種を由来とする2種のカプセル皮膜に対して実行したところ、上記2種のカプセル皮膜は、それぞれ良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を備えることが判明した。
【0152】
上記2種のカプセル皮膜は、一方は、豚の皮から得たゼラチン(商品名:「BCN200S」、新田ゼラチン株式会社製)と、豚由来のゼラチンより上記の架橋処理を経た不溶化ゼラチン(商品名:「BH-100」、新田ゼラチン株式会社製)とから作製したカプセル皮膜である。他方は、魚の鱗および魚の皮から得たゼラチン(商品名:「SCG-230L」、新田ゼラチン株式会社製)と、豚由来のゼラチンより上記の架橋処理を経ることにより得た不溶化ゼラチン(商品名:「BH-100」、新田ゼラチン株式会社製)とから作製したカプセル皮膜である。
【0153】
以上から、原料となる動物種を問わず、ゼラチンと、不溶化ゼラチン粒子とを含み、上記不溶化ゼラチン粒子または上記不溶化コラーゲン粒子の含有量が上記ゼラチンおよび不溶化ゼラチンまたは不溶化コラーゲンの合計含有量の0.5質量%以上50質量%以下であるカプセル皮膜用ゼラチン粉末を含有するカプセル皮膜、およびこれから得られるカプセルは、良好な耐ブロッキング性、溶解性および耐割れ性を備えることが理解される。
【0154】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0155】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。