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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061119
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
F16K31/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170922
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠一
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062BB33
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
(57)【要約】
【課題】ロータ回転時の摩擦抵抗を抑制することで、弁体の駆動効率を向上させることができる弁装置を得ることを目的とする。
【解決手段】弁装置1の駆動部5は、キャン50と、駆動軸としての雄ねじ55と、雄ねじ55に螺合する雌ねじ部材56と、キャン50に対して移動不能に設けられて雌ねじ部材56を進退ガイドするガイド部材54と、キャン50内部に設けられ雄ねじ55を回転支持する軸受け部材53と、を有している。雄ねじ55の両端部には、円柱状の第一軸部55bおよび第二軸部55c(軸部)がそれぞれ設けられ、ガイド部材54および軸受け部材53には、雄ねじ55の軸芯位置に第一軸受孔53c1および第二軸受孔54a(有底の凹孔)がそれぞれ設けられ、第一軸受孔53c1に第一軸部55bが嵌挿され、第二軸受孔54aに第二軸部55cが嵌挿され、雄ねじ55が回転支持されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状の弁本体と、前記弁本体に設けられて弁ポートを有する弁座部と、前記弁本体の内部にて軸線方向にスライド自在に設けられる弁体と、前記弁体をスライド駆動する駆動部と、を備えた弁装置であって、
前記駆動部は、回転可能なロータを有するモータ部と、前記弁本体に固定されて前記ロータを内蔵する有底筒状のケースと、前記ロータに固定されて軸線方向に延びる雄ねじと、前記雄ねじに螺合して前記雄ねじの回転に伴って軸線方向に進退可能な雌ねじ部材と、前記ケースに対して移動不能に設けられて前記雌ねじ部材を進退ガイドするガイド部材と、前記ケースの底側の内部に設けられて前記雄ねじを回転支持する軸受け部材と、を有し、
前記雄ねじの両端部には、それぞれ円柱状の軸部が設けられ、
前記ガイド部材および前記軸受け部材には、それぞれ前記雄ねじの軸芯位置に有底の凹孔が設けられ、前記凹孔の各々に前記雄ねじの両端部の前記軸部がそれぞれ嵌挿されて前記雄ねじが回転支持されていることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記軸受け部材の外周には、径方向に突出する少なくとも3個の凸部が設けられ、前記凸部が前記ケースの内面に当接可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記凹孔の内径は、前記軸部の外径よりも大きく形成され、前記凹孔の底部には、円錐状のテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記雄ねじの両端のうち少なくとも一方の前記軸部先端には、球面が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の弁装置。
【請求項5】
前記雄ねじの前記軸部両先端間の長さは、一方の前記凹孔の底部から他方の前記凹孔の底部までの長さよりも小さく、少なくとも一方の前記軸部先端と前記凹孔の底部との間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の弁装置。
【請求項6】
前記ケースの底部と前記軸受け部材との間には、前記軸受け部材を前記ガイド部材に向かって付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の弁装置。
【請求項7】
前記ガイド部材は、前記雌ねじ部材を軸線回りに回転不能に支持することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の弁装置。
【請求項8】
前記弁体は、軸線方向に長い長円形状の椀状凹部を有して形成され、前記椀状凹部の開口縁部がシール部とされ、このシール部が前記弁座部のシール面に摺接可能とされ、前記弁座部には、前記シール面に開口した複数の前記弁ポートが設けられていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルなどに用いられる弁装置として、筒状の弁本体と、弁本体内部にスライド自在に設けられた弁体と、弁本体に設けられて弁ポートを有する弁座部と、弁体を軸線方向にスライド駆動する駆動部と、を備えた弁装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の弁装置では、駆動部は、ステッピングモータと、ステッピングモータのロータを支持する支持軸と、支持軸の上端部を挿通させて回転支持する支持部材と、ロータの上部に固定されたロータ支持部材と、支持軸の下端部を挿通させて回転支持する出力軸と、ロータと出力軸との間に設けられた減速機構と、を有し、ロータの回転を減速機構により減速させて出力軸を回転させ、出力軸の回転を直動変換することで、弁体を進退駆動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-199921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の弁装置では、駆動部において支持軸の軸線方向への移動が、ロータ支持部材と支持部材との面接触によって規制されているため、ロータ回転時の摩擦抵抗が大きくなり、ステッピングモータによる弁体の駆動効率が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、ロータ回転時の摩擦抵抗を小さくすることで、弁体の駆動効率を向上させることができる弁装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁装置は、中空筒状の弁本体と、前記弁本体に設けられて弁ポートを有する弁座部と、前記弁本体の内部にて軸線方向にスライド自在に設けられる弁体と、前記弁体をスライド駆動する駆動部と、を備えた弁装置であって、前記駆動部は、回転可能なロータを有するモータ部と、前記弁本体に固定されて前記ロータを内蔵する有底筒状のケースと、前記ロータに固定されて軸線方向に延びる雄ねじと、前記雄ねじに螺合して前記雄ねじの回転に伴って軸線方向に進退可能な雌ねじ部材と、前記ケースに対して移動不能に設けられて前記雌ねじ部材を進退ガイドするガイド部材と、前記ケースの底側の内部に設けられて前記雄ねじを回転支持する軸受け部材と、を有し、前記雄ねじの両端部には、それぞれ円柱状の軸部が設けられ、前記ガイド部材および前記軸受け部材には、それぞれ前記雄ねじの軸芯位置に有底の凹孔が設けられ、前記凹孔の各々に前記雄ねじの両端部の前記軸部がそれぞれ嵌挿されて前記雄ねじが回転支持されていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、ロータに固定されて軸線方向に延びる雄ねじの両端部には、それぞれ円柱状の軸部が設けられている。各軸部は、ガイド部材および軸受け部材に形成された有底の凹孔に嵌挿され、これによって雄ねじが回転支持されている。このように、雄ねじ両端の円柱状軸部が有底の凹孔に支持されることで、軸部と凹孔における摩擦抵抗を小さくしつつ雄ねじおよびロータを回転自在に支持することができる。そして、ロータ回転時の摩擦抵抗を小さくすることで、モータ部の出力の減衰が抑制されるので、弁体の駆動効率を向上させることができる弁装置を得ることができる。また、この構成によれば、軸線方向に移動する雌ねじ部材に螺合する雄ねじは、軸受け部材とガイド部材に支持されて軸線交差方向への移動が規制されるので、外部から衝撃や振動が加わっても、雄ねじ、雌ねじ部材、および弁体の振れを抑制することができ、ロータがケースに接触することなどによる弁体の作動への影響を抑えることができる。また、各凹孔の底部により、雄ねじの軸線方向への移動を規制することができる。
【0008】
この際、前記軸受け部材の外周には、径方向に突出する少なくとも3個の凸部が設けられ、前記凸部が前記ケースの内面に当接可能に構成されていることが好ましい。この構成によれば、軸受け部材をケースに挿入する際に、軸受け部材の全周でなく、少なくとも3個の凸部を接触させて挿入できるので、軸受け部材をケースに低荷重で挿入するとともに、ケースと軸受け部材の同心を確保することができる。
【0009】
また、前記凹孔の内径は、前記軸部の外径よりも大きく形成され、前記凹孔の底部には、円錐状のテーパ面が形成されていることが好ましい。この構成によれば、凹孔の底部に円錐状のテーパ面が形成されていることで、雄ねじの軸部は、テーパ面によって求心される。また、凹孔の内径が軸部の外径よりも大きく形成されていることで、軸部と凹孔とが接触し難くなり、雄ねじをよりスムーズに回転させ、軸受け部材およびガイド部材の凹孔内における軸部の摩擦抵抗を抑制することができる。
【0010】
また、前記雄ねじの両端のうち少なくとも一方の前記軸部先端には、球面が設けられていることが好ましい。この構成によれば、雄ねじは、軸部先端に設けられた球面を介して凹孔の底部に接することができるので凹孔の底部との接触面積を更に小さくすることができ、これによって雄ねじを低トルクでスムーズに回転させることができる。
【0011】
また、前記雄ねじの前記軸部両先端間の長さは、一方の前記凹孔の底部から他方の前記凹孔の底部までの長さよりも小さく、少なくとも一方の前記軸部先端と前記凹孔の底部との間に隙間が設けられていることが好ましい。この構成によれば、雄ねじの軸部の少なくとも一方の先端と凹孔の底部との間には隙間が設けられているので、各凹孔の底部によって雄ねじの軸部が押さえ付けられることを抑制し、雄ねじをスムーズに回転させることができる。
【0012】
また、前記ケースの底部と前記軸受け部材との間には、前記軸受け部材を前記ガイド部材に向かって付勢する付勢部材が設けられていてもよい。この構成によれば、付勢部材によって軸受け部材と雄ねじがガイド部材側に付勢されることで、軸受け部材と雄ねじの軸部がガイド部材側に押し付けられ、一方の凹孔の底部から他方の凹孔の底部までの長さが縮まることとなる。これにより、凹孔の底部と雄ねじの軸部との間の隙間をなくすことができる。このため、凹孔と雄ねじの軸部との間でガタをなくすことができる。
【0013】
さらに、前記ガイド部材は、前記雌ねじ部材を軸線回りに回転不能に支持することが好ましい。この構成によれば、ガイド部材によって雌ねじ部材を回転不能かつ進退可能に支持することができる。これにより、ガイド部材、雌ねじ部材、および雄ねじによって、ロータの回転運動を軸線方向への運動に変換する直動機構を構成することができる。
【0014】
そして、前記弁体は、軸線方向に長い長円形状の椀状凹部を有して形成され、前記椀状凹部の開口縁部がシール部とされ、このシール部が前記弁座部のシール面に摺接可能とされ、前記弁座部には、前記シール面に開口した複数の前記弁ポートが設けられていてもよい。この構成によれば、椀状凹部を有する弁体と、複数の弁ポートと、を備える弁装置であるスライド式切換弁などにおいて、摩擦抵抗を小さくしつつ雄ねじおよびロータを回転自在に支持するとともに、雄ねじ、雌ねじ部材、および弁体の振れを抑制することができ、弁体の作動への影響を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロータ回転時の摩擦抵抗を小さくすることで、弁体の駆動効率を向上させることができる弁装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る弁装置の断面図。
図2】駆動部の拡大断面図。
図3】(A)は雄ねじの軸部と軸受け部材の拡大断面図であり、(B)は雄ねじの軸部とガイド部材の拡大断面図。
図4図1のA―A線矢視断面図。
図5】軸受け部材の斜視図。
図6】第一変形例における雄ねじと軸受け部材の拡大断面図。
図7】第二変形例における雄ねじとガイド部材の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図1~5に基づいて説明する。本実施形態に係る弁装置1は、冷凍サイクルなどにおいて圧縮機、蒸発器、凝縮器と接続され、これらの機器に流れる冷媒の流路を切り換えるスライド式切換弁である。弁装置1は、中空筒状の弁本体2と、弁本体2に設けられて複数の弁ポートを有する弁座部3と、弁本体2の内部に軸線L方向にスライド自在に設けられる弁体4と、弁体4をスライド駆動する駆動部5と、を備えている。なお、本実施形態では、図1~3における上下方向を弁装置1における上下方向とする。すなわち、弁装置1における軸線L方向の一方側を上側とし、他方側を下側とする。これは、あくまでも説明の便宜のためであり、必ずしも弁装置1の実際の使用状態における上下方向と一致するとは限らず、弁装置1の実際の使用状態における上下方向を限定するものではない。
【0018】
弁本体2は、先端部が上側に延びるように、樹脂製の材料を用いて有底筒状に形成され、その内部が弁室2aを構成している。弁本体2の底壁には、弁室2aの内外に連通する入口ポートAが形成されている。入口ポートAは、軸線L方向に延びる入口接続流路20を介して不図示の圧縮機の吐出口と連通するポートである。この入口ポートAは、圧縮機から送られる高圧の冷媒が弁室2aに流入する際の入口を構成している。弁本体2の側壁には、弁室2aの内外に連通する複数の円筒状の流路として、第1接続流路21、出口接続流路22、第2接続流路23が、上側からこの順に軸線L方向に沿ってそれぞれ形成されている。第1接続流路21は、後述する第1ポート30と連通する流路である。この第1接続流路21は、凝縮器(または蒸発器)と接続されて凝縮器(または蒸発器)と弁室2aとの間に流れる流体の流路を構成している。
【0019】
出口接続流路22は、後述する出口ポート31と連通する流路である。この出口接続流路22は、圧縮機の吸入口に接続されるようになっており、第1接続流路21(または第2接続流路23)を通って弁室2aに戻ってきた低圧の冷媒が圧縮機に送られる際の流路を構成している。第2接続流路23は、後述する第2ポート32と連通する流路である。この第2接続流路23は、蒸発器(または凝縮器)と接続されて蒸発器(または凝縮器)と弁室2aとの間に流れる流体の流路を構成している。弁本体2の上側の端部には、金属製の筒状の下蓋24が弁本体2とのインサート成形にて固定され、下蓋24の上側の端部には、上側に底壁を有する金属製の有底筒状の上蓋25が固定されている。
【0020】
上蓋25は、その底壁の中央部に軸線L方向で上側に延びた小径部25aを有している。小径部25aの中央部には、軸線L方向に貫通する貫通孔25bが形成されており、この貫通孔25b内には、後述するガイド部材54が配置されるようになっている。このように構成された弁本体2、下蓋24、および上蓋25は、不図示のハウジングに収容されている。なお、図1に示す符号Gは、弁本体2の外周壁およびハウジングの内周壁のいずれかに、所定間隔で軸線L方向の複数の位置形成された溝部であり、符号26は、溝部Gに配置されたOリングである。このOリング26により、弁本体2とハウジングとの間はシールされている。なお、本実施形態で弁本体2は、材質をポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂としたが、この他真鍮、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属等、適宜な材質で構成してもよい。
【0021】
弁座部3は、弁本体2の側壁のうち、第1接続流路21、出口接続流路22、第2接続流路23が形成された側壁に設置される部分であり、複数の弁ポートを有するように構成されている。この弁座部3は、薄型金属板で形成され、インサート成形や接着、溶着等により弁本体2の側壁に固定されている。弁座部3の板面には、第1接続流路21に連通する第1ポート30、出口接続流路22に連通する出口ポート31、第2接続流路23に連通する第2ポート32がそれぞれ形成されている。各ポート30、31、32は、第1接続流路21、出口接続流路22、第2接続流路23よりも内径の寸法が小さい円筒状に形成され、軸線L方向に所定の間隔を空けて配置されている。弁座部3における各接続流路21、22、23のある側と反対側の面は、後述する弁体4のシール部Sと摺接するシール面33を構成している。このため、複数の弁ポート30、31、32は、シール面33に開口していることとなる。
【0022】
弁体4は、主にポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂製であり、弁本体2の内部に軸線L方向にスライド自在に設けられている。この弁体4は、弁座部3に着座して入口ポートA、第1ポート30、出口ポート31、第2ポート32、の各々を連通または遮断する椀状の弁体本体40を備えて構成されている。この弁体本体40は、弁座部3のシール面33と対向するように設けられた軸線L方向に長い長円形状の開口縁部40aと、開口縁部40aから弁座部3のある側と反対側に突出する椀状部40bと、を備えて構成され、その内部は流体の流路となる椀状凹部40cを構成している。椀状凹部40cにおける開口縁部40aの軸線L方向の寸法は、第1ポート30、出口ポート31、第2ポート32のうち隣り合う2つ分のポートを覆える長さに設定されている。また、開口縁部40aの軸線L方向に交差する幅方向の寸法は、第1ポート30、出口ポート31、第2ポート32のうち、1つ分のポートを覆える長さに設定されている。
【0023】
椀状凹部40cは、その開口縁部40aが上述のシール面33に摺接可能なシール部Sを構成しており、シール部Sがシール面33に当接すると、例えば、第1ポート30と出口ポート31とが椀状凹部40cに囲まれて他のポートA、32と遮断される。この結果、第1ポート30と出口ポート31とが連通されるとともに、入口ポートAと第2ポート32とが連通されることとなる。そして、シール部Sがシール面33上を滑りながら下側にスライド移動すると、出口ポート31と第2ポート32とが椀状凹部40cに囲まれて他のポートA、30と遮断される。この結果、出口ポート31と第2ポート32とが連通されるとともに、入口ポートAと第1ポート30とが連通されることとなる。すなわち、弁体本体40がスライド移動し、シール部Sがシール面33に摺接することで、各ポートA、30、31、32同士の連通および遮断が切り換えられるようになっている。
【0024】
椀状凹部40cの幅方向の両端部に位置する側壁には、台座41がそれぞれ形成されている。台座41には、軸線L方向に長い嵌合溝41aがそれぞれ形成されている。そして、椀状凹部40c内には、一方の嵌合溝41aから他方の嵌合溝41aに亘って嵌め込まれるように、補強部材6が配置されている。補強部材6は、高圧の弁室2a内と低圧の椀状凹部40c内との圧力差によって、椀状凹部40cの側壁が変形するのを抑制する部材である。補強部材6は、椀状凹部40cの幅方向両側壁の内側に、両側壁に亘って設けられている。補強部材6は、軸線L方向かつ幅方向に沿った長方形状の平面部60と、平面部60の幅方向両端縁から立ち上がる一対の立上面部61と、を備えて構成されている。平面部60と立上面部61とは金属製の板部材を用いてプレス成形等の方法で一体に形成されている。図1に示すように、平面部60は、その底面がシール面33に対向しつつ、シール面33と対向方向に所定のクリアランスを有するようにするように配置されている。一対の立上面部61は、それぞれが、椀状凹部40cの幅方向両側壁の内面に沿って設けられている。立上面部61は、上述の嵌合溝41aに嵌まるように軸線L方向に長い長方形状に形成されている。この立上面部61が嵌合溝41aに嵌合すると、補強部材6が椀状凹部40cに位置決めされるようになっている。
【0025】
弁体本体40の椀状部40bにおける頂部には、弁体本体40を弁座部3側に付勢するばね部材42が設置されている。このばね部材42は、一端部が弁本体2の内周壁に当接し、他端部が弁体本体40の頂部に当接するように構成されており、弁本体2と弁体本体40の間に介在している。弁体本体40の下側の端部には、下側に向けて軸線L方向に突出するストッパ43が形成されている。このストッパ43は、弁体4のスライド移動を規制するための突起であり、その突出端部が弁本体2の底壁における弁室2a側の面と当接することで弁体4の下側への移動が規制されるようになっている。すなわち、ストッパ43と弁本体2の底壁における弁室2a側の面は、下側へ移動する弁体4の移動できる限界の位置を規定している。
【0026】
弁体本体40の上側の端部には、上側に突出する接続部44が形成されている。接続部44は、その上側の端部が弁座部3のある側から弁座部3のある側の反対側に向けて軸線Lに交差する軸線交差方向に延びる薄板状の薄板部44aを構成している。薄板部44aには、弁座部3がある側と反対側に開口する切欠き44bが形成されており、これによって薄板部44aはフック状になっている。薄板部44aの幅方向両端面は、後述する雌ねじ部材56の2本の連結腕部56bで幅方向から挟まれ、この状態で切欠き44bに内に配置される固定ピン59と、連結腕部56bおよび薄板部44aを周方向に囲んで同方向に締め付ける金属製のホースバンド45と、によって雌ねじ部材56に接続されるようになっている。
【0027】
駆動部5は、弁体4をスライド駆動する部分であり、回転可能なロータを有する電動モータとしてのステッピングモータ5a(モータ部)と、ステッピングモータ5aの回転を直線運動に変換して弁体4に伝達する直動機構5bと、を備えている。図1に示すように、ステッピングモータ5aは、上蓋25の小径部25aに固定され、駆動部5内を密閉する金属製の有底筒状のキャン50(有底筒状のケース)と、キャン50に内蔵されるマグネットロータ51(ロータ)と、キャン50を挟んでマグネットロータ51の外周を軸線L回りに囲むように配置されるステータコイル52と、を備えている。キャン50は、薄板状の金属材料から有底筒状に形成されており、底壁が上側に配置され、先端部が上述の上蓋25の小径部25aの上側縁部に溶接等で固定されている。すなわち、キャン50は、上蓋25を介して弁本体2に固定されている。そして、このようにキャン51が上蓋25に固定されることによって、キャン50と後述するガイド部材54とは中心軸が弁本体2の軸線Lと同軸になるように配置されることとなる。直動機構5bは、キャン50の底側(上側)の内部に配置される軸受け部材53と、上蓋25に固定されるガイド部材54と、マグネットロータ51の中心に固定部材55aを介して固定されたロータ軸としての雄ねじ55と、雄ねじ55の外周面に形成された雄ねじ部55dに螺合する雌ねじ部56a1を有する雌ねじ部材56と、を備えている。すなわち、直動機構5bは、互いに螺合する雄ねじ部55dおよび雌ねじ部56a1を有したねじ送り機構として構成されている。
【0028】
軸受け部材53は、雄ねじ55を軸線L回りに回転可能に支持する部材であり、円柱状の大径部53aと、大径部53aの中央部から上側に突出する円柱状の第一小径部53bと、大径部53aの中央部から下側に突出する円柱状の第二小径部53cと、を備えている。大径部53a、第一小径部53b、および第二小径部53cは、一体に成形され、中心軸が軸線Lと同軸になるようにキャン50内に配置されている。図4に示すように、大径部53aは、その直径の寸法がキャン50の内径の寸法よりも僅かに小さくなるように形成されている。図5に示すように、大径部53aの外周壁には、径方向外方に突出する凸部53a1が周方向に間隔を空けて複数(本実施形態では3つ)形成されている。凸部53a1は、キャン50の内壁面に当接可能な部分であり、大径部53aの中心から凸部53a1の先端までの径方向の寸法は、キャン50の中心から内壁部までの径方向の寸法と略同じかやや大きくなるように設定されている。この構成により、図4に示すように、大径部53aをキャン50内に挿入することで、大径部53aのうち凸部53a1の先端がキャン50の内壁を押圧し、大径部53aの外周壁とキャン50の内壁とが径方向に隙間を空け、軸受け部材53がキャン50内に固定されるようになっている。
【0029】
第一小径部53bは、軸受け部材53が上側に移動するのを規制する部分であり、大径部53aの直径より小さな直径で形成されている。図1に示すように、第一小径部53bは、軸受け部材53がキャン50内に挿入された状態で、上側の端部がキャン50の底壁内面に当接し、位置決めされている。軸受け部材53において雄ねじ55の軸心位置である中心には、下側に向けて開口する第一軸受孔53c1が形成されている。第一軸受孔53c1は、後述する第一軸部55bを挿入可能に設けられた有底の凹孔であり、第二小径部53cの下端面に開口し、大径部53aを通って第一小径部53b内まで軸線L方向に延びている。第一軸受孔53c1は、内周壁が円筒状に形成され、底部が上側に向かって傾斜した円錐状の第一テーパ面53c2を構成している。図3(A)に示すように第一軸受孔53c1の内径の寸法は、第一軸部55bの直径(外径)の寸法よりも大きく形成されている。
【0030】
ガイド部材54は、有底円筒状の部材であり、底部が下側に位置し、先端部が上側に位置するように上述の上蓋25の貫通孔25b内に配置されている。ガイド部材54は、軸線L方向略中央部にインサート成形により一体に設けられた固定リング57を有し、この固定リング57を上蓋25の小径部25aの上側縁部に溶接することで上蓋25に固定されている。すなわち、ガイド部材54は、キャン50に対して移動不能に設けられている。ガイド部材54は、中心軸が弁本体2の軸線Lと同軸になるように配置されており、この配置によって、上述のキャン50、軸受け部材53、およびガイド部材54は、いずれも中心軸が弁本体2の軸線Lと同軸になるように配置されることとなる。
【0031】
ガイド部材54において雄ねじ55の軸心位置である中心には、上側に向けて開口する第二軸受孔54aが形成されている。第二軸受孔54aは、後述する第二軸部55cを挿入可能に設けられた有底の凹孔であり、ガイド部材54の底壁内面に開口し、軸線L方向に延びている。第二軸受孔54aは、内周壁が円筒状に形成され、底部が下側に向かって傾斜した円錐状の第二テーパ面54a1を構成している。図3(B)に示すように、第二軸受孔54aの内径の寸法は、第二軸部55cの直径(外径)の寸法よりもやや大きく形成されている。そして、図2に示すように、ガイド部材54の底壁には、第二軸受孔54aの径方向外方の部分に、後述する雌ねじ部材56の連結腕部56bを軸線L方向に進退可能に挿通させる一対のガイド孔54bが形成されている。このガイド孔54bは、第二軸受孔54aを挟んで径方向に対向して形成されている。ガイド孔54bの縁部は、連結腕部56bの外壁面に沿う形状を有している。そして、連結腕部56bは、軸線L方向に進退する際に軸線L回りに回転しようとしても、その外壁面がガイド孔54bの縁部に当接することで回転できないようになっている。すなわち、ガイド部材54は、雌ねじ部材56を軸線L回りに回転不能かつ軸線L方向に進退ガイドするように構成されている。
【0032】
雄ねじ55は、固定部材55aを用いてマグネットロータ51の中心部に固定され、軸線L方向に延び、マグネットロータ51と一体に軸線L回りに回転するように構成されている。雄ねじ55の上側の端部は円柱状の第一軸部55b(軸部)を構成し、雄ねじ55の下側の端部は円柱状の第二軸部55c(軸部)を構成し、第一軸部55bと第二軸部55cとの間の部分の外周面には雄ねじ部55dが形成されている。そして、第一軸部55bは第一軸受孔53c1に嵌挿され、第二軸部55cは第二軸受孔54aに嵌挿され、これによって、雄ねじ55は、軸線L回りに回転できるように第一軸受孔53c1および第二軸受孔54aに中心軸が軸線Lと同軸になるように支持されている。第一軸部55bの先端から第二軸部55cの先端までの長さである軸部両先端間の長さは、第一軸受孔53c1の第一テーパ面53c2(すなわち、第一軸受孔53c1の底部)から第二軸受孔54aの第二テーパ面54a1(すなわち、第二軸受孔54aの底部)までの長さよりも小さく形成されている。これにより、図3(A)に示すように、第一軸部55bの先端と第一テーパ面53c2との間には、軸線L方向の隙間Sが設けられている。この隙間Sは、軸受け部材53の上側端部が底壁内面に当接したキャン50を、ガイド部材54が固定された上蓋25に固定した際に、第一軸受孔53c1と第二軸受孔54aの底部によって第一軸部55bと第二軸部55cが軸線L方向に押さえ付けられることを抑制し、これによって雄ねじ55をスムーズに回転させることができるようにするための空間である。ただし、あまり大きな隙間Sを設けると雄ねじ55の軸線L方向への移動量が大きくなり、弁体4の位置に影響が出ることや、弁体4の作動に外部からの振動や衝撃による影響を受ける可能性があるので、隙間Sの寸法は、約0.1mm~0.7mm程度の範囲に設定することが好ましい。なお、隙間Sは、必ずしも、第一軸部55bの先端と第一テーパ面53c2との間に設ける必要はなく、図3(B)に示した、第二軸部55cの先端部と第二テーパ面54a1との間に設けてもよい。
【0033】
雌ねじ部材56は、ガイド部材54内に収容されてその外周壁がガイド部材54の内周壁に摺接する円柱状の基端部56aと、基端部56aから下側に向けて軸線L方向に延び、上述のガイド孔54bを通って、弁室2a内に延びる2本の連結腕部56bと、を備えて構成されている。基端部56aは、中心軸がガイド部材54の中心軸と同軸になるように形成されている。雌ねじ部材56の中心には、軸線Lに沿って雌ねじ部56a1が形成されている。この雌ねじ部56a1は、雄ねじ部55dに螺合するように構成されている。この構成により、雌ねじ部材56は、雄ねじ55の回転に伴って中心軸と同軸で軸線L方向に進退可能となっている。連結腕部56bは、駆動部5と弁体4とを接続するための部分である。図2に示すように、この連結腕部56bは、基端部56aの周縁部の一部から軸線L方向に延びる円弧状の曲板部56b1と、曲板部56b1の円弧の端部同士を結ぶ平面部56b2と、を備え、それぞれ断面半円状に形成されている。各連結腕部56bの平面部56b2は、基端部56aの径方向に対向するようになっており、その下端部には、軸線L方向に交差する軸線交差方向に貫通する貫通孔56b3がそれぞれ形成されている。この貫通孔56b3には、軸状の固定ピン59が挿通されて固定されている。
【0034】
このような構成の弁装置1において、弁体4は、軸線L方向にスライドして冷媒の流路を切り換える。先ず、駆動部5を駆動し、弁体4を下側にスライドさせて弁体本体40で第2ポート32と出口ポート31を覆う。これにより、第2ポート32と出口ポート31とが連通される。また、入口ポートAと第1ポート30とが連通される。この際、入口接続流路20および入口ポートAを介して高圧の冷媒が弁室2a内に流入し、当該高圧の冷媒は、第1ポート30および第1接続流路21を通って凝縮器に送られる。一方、蒸発器から送られた低圧の冷媒が、第2ポート32および第2接続流路23を介して椀状凹部40cに流入し、当該低圧の冷媒は、出口ポート31および出口接続流路22を介して圧縮機の吸入口に送られる。次に、弁体4を上側にスライドさせて弁体本体40で出口ポート31と第1ポート30を覆う。これにより、出口ポート31と第1ポート30とが連通される。また、入口ポートAと第2ポート32とが連通される。この際、入口接続流路20および入口ポートAを介して高圧の冷媒が弁室内に流入し、当該高圧の冷媒は、第2ポート32および第2接続流路23を通って蒸発器に送られる。一方、凝縮器から送られた低圧の冷媒が、第1ポート30および第1接続流路21を介して椀状凹部40cに流入し、当該低圧の冷媒は、出口ポート31および出口接続流路22を介して圧縮機の吸入口に送られる。
【0035】
以上の実施形態によれば、弁装置1は、中空筒状の弁本体2と、弁本体2に設けられて弁ポート30、31、32を有する弁座部3と、弁本体2の内部にて軸線L方向にスライド自在に設けられる弁体4と、弁体4をスライド駆動する駆動部5と、を備えた弁装置1であって、駆動部5は、回転可能なマグネットロータ51(ロータ)を有するステッピングモータ5a(モータ部)と、弁本体2に固定されてマグネットロータ51を内蔵する有底筒状のキャン50(ケース)と、マグネットロータ51に固定されて軸線L方向に延びる雄ねじ55と、雄ねじ55に螺合して雄ねじ55の回転に伴って軸線L方向に進退可能な雌ねじ部材56と、キャン50に対して移動不能に設けられて雌ねじ部材56を進退ガイドするガイド部材54と、キャン50の底側の内部に設けられて雄ねじ55を回転支持する軸受け部材53と、を有し、雄ねじ55の両端部には、それぞれ円柱状の第一軸部55bおよび第二軸部55c(軸部)が設けられ、ガイド部材54および軸受け部材53には、それぞれ雄ねじ55の軸芯位置に第一軸受孔53c1および第二軸受孔54a(有底の凹孔)が設けられ、第一軸受孔53c1に第一軸部55bが嵌挿され、第二軸受孔54aに第二軸部55cが嵌挿され、雄ねじ55が回転支持されている。
【0036】
このような本発明によれば、マグネットロータ51に固定されて軸線L方向に延びる雄ねじ55の両端部には、それぞれ円柱状の第一軸部55bおよび第二軸部55cが設けられている。そして、第一軸部55bは軸線Lと同軸に配置された第一軸受孔53c1に嵌挿され、第二軸部55cは軸線Lと同軸に配置された第二軸受孔54aにそれぞれ嵌挿され、これによって雄ねじ55が軸線Lに同軸で回転支持されている。このように、雄ねじ55が回転支持されることで、第一軸部55bが第一軸受孔53c1に、または第二軸部55cが第二軸受孔54aに傾いて接触することを抑制して、各軸部55b、55cと各軸受孔53c1、54aにおける摩擦抵抗を小さくしつつ雄ねじ55およびマグネットロータ51を回転自在に支持することができる。そして、マグネットロータ51回転時の摩擦抵抗を小さくすることで、ステッピングモータ5aの出力の減衰が抑制されるので、弁体4の駆動効率を向上させることができる弁装置1を得ることができる。また、この構成によれば、軸線L方向に移動する雌ねじ部材56に螺合する雄ねじ55は、軸受け部材53とガイド部材54に支持されて軸線Lに交差する軸線交差方向への移動が規制されるので、外部から衝撃や振動が加わっても、雄ねじ55、雌ねじ部材56、および弁体4の振れを抑制することができ、マグネットロータ51がキャン50に接触することなどによる弁体4の作動への影響を抑えることができる。また、第一軸受孔53c1の底部および第二軸受孔54aの底部により、雄ねじ55の軸線L方向への移動を規制することができる。
【0037】
また、本実施形態の構成によれば、軸受け部材53の外周には、径方向に突出する少なくとも3個の凸部53a1が設けられ、凸部53a1がキャン50の内面に当接可能に構成されているので、軸受け部材53をキャン50に挿入する際に、軸受け部材53の全周でなく、凸部53a1を接触させて挿入できるので、軸受け部材53をキャン50に低荷重で挿入するとともに、キャン50と軸受け部材53の同心を確保することができる。また、第一軸受孔53c1および第二軸受孔54aの内径は第一軸部55bおよび第二軸部55cの外径よりも大きく形成され、第一軸部55bの底部には円錐状の第一テーパ面53c2が、第二軸部55cの底部には円錐状の第二テーパ面54a1が形成されている。このため、第一軸部55bおよび第二軸部55cは、各テーパ面53c2、54a1によって求心される。また、第一軸部55b及び第二軸部55cの内径が第一軸部55bおよび第二軸部55cの外径よりも大きく形成されていることで、雄ねじ55をよりスムーズに回転させ、第一軸受孔53c1および第二軸受孔54a内における第一軸部55bおよび第二軸部55cの摩擦抵抗を抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態の構成によれば、第一軸部55bと第二軸部55cの両先端間の長さである軸部両先端間の長さは、第一軸受孔53c1の第一テーパ面53c2(第一軸受孔53c1の底部)から第二軸受孔54aの第二テーパ面54a1(第2軸受孔54aの底部)までの長さよりも小さく設定されており、第一軸部55bの先端と第一テーパ面53c2の底部との間に隙間Sが設けられている。このため、第一軸受孔53c1と第二軸受孔54aの底部によって第一軸部55bと第二軸部55cが軸線L方向に押さえ付けられることを抑制し、雄ねじ55をスムーズに回転させることができる。また、本実施形態の構成によれば、ガイド部材54は、雌ねじ部材56を軸線L回りに回転不能かつ軸線L方向に進退可能に支持しているので、ガイド部材54、雌ねじ部材56、および雄ねじ44によって、マグネットロータ51の回転運動を軸線L方向への運動に変換する直動機構5bを構成することができる。
【0039】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形例も本発明に含まれる。図6は、第一変形例における雄ねじ55と軸受け部材53の断面図である。この第一変形例の第一軸部55b1は、先端部の形状が上述の実施形態における第一軸部55bと異なり、上側に突出するように湾曲している。また、第一変形例では、前記実施形態と異なり、軸受け部材53の第一小径部53bは、軸受け部材53がキャン50内に挿入された状態で上側の端部がキャン50の底壁内面に当接していない。すなわち、軸受け部材53がキャン50内に挿入された状態で、第一小径部53bの上側の端部とキャン50の底壁内面との間には、軸線L方向の隙間が形成されるようになっている。そして、第一小径部53bの外周には、圧縮ばねA(付勢部材)が配置されている。
【0040】
圧縮ばねAは、軸線L方向一端部がキャン50の底壁内面に当接し、軸線L方向他端部が大径部53aの上側の壁面と当接するようにしてキャン50と軸受け部材53との間に介在しており、軸受け部材53を下側、すなわちガイド部材54側に付勢している。この構成によれば、圧縮ばねAによって軸受け部材53と雄ねじ55がガイド部材54側に付勢されることで、軸受け部材53と第一軸部55bおよび第二軸部55cがガイド部材54側に押し付けられるので、第一軸受孔53c1の第一テーパ面53c2から第二軸受孔54aの第二テーパ面54a1までの長さが縮まることとなる。これにより、上述の隙間Sをなくすことができる。このため、第一軸受孔53c1および第二軸受孔54aと、第一軸部55b1および第二軸部55cとの間でガタをなくすことができる。なお、圧縮ばねAの付勢荷重は、可動部品である軸受け部材53、雄ねじ55、雌ねじ部材56、弁体4が、外部からの振動で振れない程度の荷重に設定されることが好ましい。
【0041】
図7は、第二変形例における雄ねじ55とガイド部材54の拡大断面図である。この第二変形例では、第二軸部55c1の先端部に金属製の材料で球状に形成したボール部材Bが溶接によって接続されている。すなわち、第二軸部55c1の先端部には、球面が設けられている。この構成によれば、雄ねじ55は、第二軸部55c1先端に設けられた球面を介して第二軸受孔54aの底部に接することができるので第二軸受孔54aの底部との接触面積を小さくすることができ、これによって雄ねじ55を低トルクでスムーズに回転させることができる。
【0042】
なお、上述の実施形態では、隙間Sは、第一軸部55bの先端と第一テーパ面53c2との間、および第二軸部55cと第二テーパ面54a1との間のいずれかに設けられていた。しかし、これに限らず、第一軸部55bの先端と第一テーパ面53c2との間、および第二軸部55cと第二テーパ面54a1との間のいずれにも隙間Sを設けてよい。また、本実施形態では、第一軸部55bおよび第二軸部55cの先端部の形状が平面状に形成され、第一変形例では、第一軸部55bの先端部の形状が上側に突出するように湾曲して形成され、第二変形例では、第二軸部55c1の先端部に金属製の材料で球状に形成したボール部材Bが溶接によって接続されていた。しかしながら、第一軸部55bおよび第二軸部55cの形状は、各実施形態および変形例ごとに限定されるものでなく、第一変形例のように全体的に上側に突出するように湾曲でなく外径部をR面取り加工させてもよいし、第一テーパ面53c2および第二テーパ面54a1のテーパ角度よりも鋭角の円錐形状としてもよいし、これらいずれかの形状、またはこれらを組み合わせた形状を、上述の実施形態および変形例において採用することができる。
【0043】
さらに、第一変形例では、圧縮ばねAをキャン50と軸受け部材53との間に介在するように配置し、軸受け部材53をガイド部材54側に付勢することとしたが、必ずしも圧縮ばねAを用いる必要はなく、皿ばねやゴム製の円筒状の弾性部材等、軸受け部材53をガイド部材54側に付勢できる付勢部材であればよい。
【0044】
また、前記実施形態、第一変形例、および第二変形例では、有底筒状に形成されたキャン50は、先端部を上蓋25の小径部25aの上側縁部に溶接等で固定するようにし、上蓋25を介して弁本体2に固定する構成とした。しかし、キャン50の固定の構成は、これに限られない。例えば、ガイド部材54の固定リング57の外径を上蓋25の小径部25aの外径と略同じに設定し、この固定リング57とキャン50とを接続した状態で上蓋25に溶接等で固定してもよい。また、弁本体2、下蓋24、および上蓋25を一体に形成し、この全体を弁本体2としてキャン50を固定することで、弁本体2に直接キャン50が固定されるような構成としてもよい。本発明において、「弁本体2に固定されてマグネットロータ51(ロータ)を内蔵する有底筒状のキャン50(ケース)」、の「弁本体2に固定」とは、弁本体2に直接固定、および弁本体2に他の部材(上蓋25や固定リング57など)を介して固定、の両方の意味を含むものであり、上述したようなキャン50に対して移動不能に設けられたガイド部材54とともに弁本体2や軸受け部材53との同心を保持し、かつ軸受け部材53およびガイド部材54と雄ねじ55の両端部との隙間寸法を保持できるように、弁本体2に対して相対変位不能に接続される構成の全てを含んでよい。
【0045】
そして、本実施形態の弁装置1は、弁体4が軸線L方向に長い長円形状の椀状凹部40cを有して形成され、椀状凹部40cの開口縁部40aがシール部Sとされ、このシール部Sが弁座部3のシール面33に摺接可能とされ、弁座部3には、シール面33に開口した複数の弁ポート30、31、32が設けられ、冷凍サイクルなどにおいて冷媒の流路を切り換えるスライド式切換弁として説明したが、弁装置1はこのスライド式切換弁に限られない。例えば、弁座部3に3つ以上の複数のポートが開口し、複数の弁体4を備えるスライド式切換弁にも本発明を適用することができる。また、弁体4が椀状凹部40cを有さず、複数のポートの連通および遮断の切り換えを行わず、軸線L方向に開口するポートの弁座部3に弁本体2の内部にて軸線L方向にスライド自在に着座又は離座するニードル状の弁体4を備えた電動弁にも、本発明を適用することはできる。同様に、弁体4が椀状凹部40cを有さず、複数のポートの連通および遮断の切換を行わず、軸線L方向に開口するポートの弁座部3に弁本体2の内部にて軸線L方向にスライド自在に近接又は離間し、ポートの開度を調整するニードル状の弁体4を備えた電動弁にも本発明を適用することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 弁装置
2 弁本体
3 弁座部
4 弁体
5 駆動部
5a ステッピングモータ(モータ部)
50 キャン(有底筒状のケース)
51 マグネットロータ(ロータ)
53 軸受け部材
53c1 第一軸受孔(有底の凹孔)
54 ガイド部材
54a 第二軸受孔(有底の凹孔)
55 雄ねじ
55b 第一軸部
55c 第二軸部
56 雌ねじ部材
L 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7