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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006112
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】排水設備の漏洩試験システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/28 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
G01M3/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108529
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】390013516
【氏名又は名称】株式会社小島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 誠造
(72)【発明者】
【氏名】加古 洋三
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA12
2G067BB04
2G067BB34
2G067CC02
2G067DD02
2G067EE13
(57)【要約】
【課題】排水設備における漏洩試験の試験コストの軽減を図るとともに、試験データの整理を容易化する。
【解決手段】建物の排水設備10において、末端が塞がれて密閉空間となった試験対象排水流路Kの漏洩を検知する漏洩試験システム20であって、試験対象排水流路Kの密閉空間内の気体圧力を予め決められた値に調整した後、密閉空間内の気体圧力を所定時間測定し、気体圧力の測定値を許容値と比較することで試験対象排水流路の漏洩の有無を判定する漏洩試験機30と、漏洩試験機30に設けられており、漏洩試験機30の判定出力信号をコンピュータが受信可能な無線信号に変換する信号変換装置と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の排水設備において、末端が塞がれて密閉空間となった試験対象排水流路の漏洩を検知する排水設備の漏洩試験システムであって、
前記試験対象排水流路の密閉空間内の気体圧力を予め決められた値に調整した後、前記密閉空間内の気体圧力を所定時間測定し、前記気体圧力の測定値を許容値と比較することで前記試験対象排水流路の漏洩の有無を判定する漏洩試験機と、
前記漏洩試験機に設けられており、前記漏洩試験機の判定出力信号をコンピュータが受信可能な無線信号に変換する信号変換装置と、
を有する排水設備の漏洩試験システム。
【請求項2】
請求項1に記載された排水設備の漏洩試験システムであって、
前記判定出力信号は、漏洩有無の判定信号と、前記密閉空間内の気体圧力を予め決められた値に調整した直後の気体圧力信号と、所定時間経過時の気体圧力信号とを有している排水設備の漏洩試験システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された排水設備の漏洩試験システムであって、
前記コンピュータは、スマートフォンであり、
前記漏洩試験機の判定出力信号に基づく判定出力データと試験対象排水流路情報とを対応させて記憶するためのスマートフォン用のソフトウエアを備えている排水設備の漏洩試験システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された排水設備の漏洩試験システムであって、
前記コンピュータは、タブレットPCであり、
前記漏洩試験機の判定出力信号に基づく判定出力データと試験対象排水流路情報とを対応させて記憶するためのソフトウエアを備えている排水設備の漏洩試験システム。
【請求項5】
請求項3又は請求項4のいずれかに記載された排水設備の漏洩試験システムであって、
前記スマートフォン、あるいはタブレットPCの無線信号を受信して、前記漏洩試験機の判定出力データと試験対象排水流路情報とを印刷するラベルプリンタを備えている排水設備の漏洩試験システム。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれかに記載された排水設備の漏洩試験システムであって、
前記スマートフォン用のソフトウエア、あるいはタブレットPCのソフトウエアは、音声、あるいは絵文字を使用して試験対象排水流路情報を入力できるように構成されている排水設備の漏洩試験システム。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれかに記載された排水設備の漏洩試験システムであって、
前記スマートフォン用のソフトウエア、あるいはタブレットPCのソフトウエアは、前記漏洩試験機の判定出力データが漏れ有り状態の場合、試験対象排水流路情報を表示して警報を発せられるように構成されている排水設備の漏洩試験システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載された排水設備の漏洩試験システムであって、
前記スマートフォン、あるいはタブレットPCが記憶している前記漏洩試験機の判定出力データと試験対象排水流路情報とは、上位コンピュータ、あるいはクラウドサーバーに転送できるように構成されている排水設備の漏洩試験システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載された排水設備の漏洩試験システムであって、
前記信号変換装置は、前記漏洩試験機の判定出力信号をブルートゥース(登録商標)、あるいはWi-Fi(登録商標)による無線信号に変換する排水設備の漏洩試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の排水設備の漏洩試験を効率的に実施するための排水設備の漏洩試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の排水設備の漏洩試験では、排水設備の試験対象排水流路内を満水にして漏水の有無を検査する満水試験、あるいは試験対象排水流路内を密閉して加圧空気を供給し、その試験対象排水流路内の圧力低下から漏れの有無を確認する気圧試験が行われる。気圧試験に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の気圧試験では、先ず、図13に示すように、排水管継手101の上部受け口101uから膨張性プラグ102を挿入して排水立て管103の位置まで下ろし、膨張性プラグ102を空気圧で膨張させて排水立て管103を封鎖する。さらに、排水管継手101の上部受け口101uと排水横枝管104の末端とを閉鎖する。即ち、排水設備の試験対象排水流路(排水管継手101、及び排水横枝管104内)を密閉する。次に、前記試験対象排水流路内に加圧空気を供給して所定圧力になるまで加圧する。そして、試験対象排水流路の加圧停止後、15分間以上、試験対象排水流路の減圧の有無を圧力ゲージ106(図14参照)により目視確認することで、試験対象排水流路内の漏洩の有無を確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4653254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、気圧試験では、圧力ゲージ106により排水設備の試験対象排水流路内の圧力を検出する構成のため、試験対象排水流路内を試験圧力まで加圧する際、作業者が圧力ゲージを目視して試験対象排水流路内の圧力を調整する必要がある。また、前記気圧試験中は、作業者が圧力ゲージ106により試験対象排水流路内の圧力を確認して記録する作業が必要になる。このように、漏洩試験に専属の作業者が必要になるため、試験コストが掛かる。さらに、作業者が記録した試験データの整理にも時間が掛かる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の技術的課題は、排水設備における漏洩試験の試験コストの軽減を図るとともに、試験データの整理を容易化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、建物の排水設備において、末端が塞がれて密閉空間となった試験対象排水流路の漏洩を検知する排水設備の漏洩試験システムであって、前記試験対象排水流路の密閉空間内の気体圧力を予め決められた値に調整した後、前記密閉空間内の気体圧力を所定時間測定し、前記気体圧力の測定値を許容値と比較することで前記試験対象排水流路の漏洩の有無を判定する漏洩試験機と、前記漏洩試験機に設けられており、前記漏洩試験機の判定出力信号をコンピュータが受信可能な無線信号に変換する信号変換装置と、を有する。
【0007】
本発明によると、漏洩試験機は、試験対象排水流路の密閉空間内の気体圧力を予め決められた値に調整した後、前記密閉空間内の気体圧力を所定時間測定し、前記気体圧力の測定値を許容値と比較することで前記試験対象排水流路の漏洩の有無を判定する。このため、排水設備の試験対象排水流路の漏れ判定のために作業者が試験対象排水流路の近くに待機する必要がなくなる。したがって、漏洩試験の試験コストの軽減を図ることができる。また、漏洩試験機には、その漏洩試験機の判定出力信号をコンピュータが受信可能な無線信号に変換する信号変換装置が設けられている。このため、コンピュータで漏洩試験機の判定出力データを整理できるようになり、試験データの整理を容易化できる。
【0008】
第2の発明によると、判定出力信号は、漏洩有無の判定信号と、密閉空間内の気体圧力を予め決められた値に調整した直後の気体圧力信号と、所定時間経過時の気体圧力信号とを有している。このため、漏洩有無の判定信号の確認が容易になる。
【0009】
第3の発明によると、コンピュータは、スマートフォンであり、漏洩試験機の判定出力信号に基づく判定出力データと試験対象排水流路情報とを対応させて記憶するためのスマートフォン用のソフトウエアを備えている。即ち、スマートフォンで判定出力データと試験対象排水流路情報とを管理できるため、スマートフォンを利用してデータの整理、伝送を容易に行えるようになる。
【0010】
第4の発明によると、コンピュータは、タブレットPCであり、漏洩試験機の判定出力信号に基づく判定出力データと試験対象排水流路情報とを対応させて記憶するためのソフトウエアを備えている。即ち、タブレットPCを利用してデータの整理、伝送を容易に行えるようになる。
【0011】
第5の発明によると、スマートフォン、あるいはタブレットPCの無線信号を受信して、漏洩試験機の判定出力データと試験対象排水流路情報とを印刷するラベルプリンタを備えている。これにより、排水設備の試験対象排水流路に対して漏洩試験機の判定出力データの印刷物のラベルを貼付可能になる。
【0012】
第6の発明によると、スマートフォン用のソフトウエア、あるいはタブレットPCのソフトウエアは、音声、あるいは絵文字を使用して試験対象排水流路情報を入力できるように構成されている。即ち、音声、あるいは絵文字を使用して試験対象排水流路情報を入力できるため、試験対象排水流路情報の入力が容易になる。
【0013】
第7の発明によると、スマートフォン用のソフトウエア、あるいはタブレットPCのソフトウエアは、漏洩試験機の判定出力データが漏れ有り状態の場合、試験対象排水流路情報を表示して警報を発せられるように構成されている。
【0014】
第8の発明によると、スマートフォン、あるいはタブレットPCが記憶している漏洩試験機の判定出力データと試験対象排水流路情報とは、上位コンピュータ、あるいはクラウドサーバーに転送できるように構成されている。このため、上位コンピュータ等において複数のスマートフォン、あるいはタブレットPCから転送されたデータを建物の排水設備毎にまとめて整理できる。
【0015】
第9の発明によると、信号変換装置は、漏洩試験機の判定出力信号をブルートゥース(登録商標)、あるいはWi-Fi(登録商標)よる無線信号に変換する。このため、作業者が漏洩試験機、及び試験対象排水流路の近くにいる状態(約20m以内)で、漏洩試験機の判定出力信号をコンピュータに取り込めるようになる。このため、複数台の漏洩試験機を使用して複数の試験対象排水流路の漏洩試験を行なう場合に、漏洩試験機の機番と対応する試験対象排水流路との確認が容易になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、排水設備における漏洩試験の試験コストの軽減を図ることができる。また、試験データの整理を容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1に係る漏洩試験システムにおける漏洩試験機により建物の排水設備の漏洩試験を行っている状態を表す模式平面図である。
図2】前記漏洩試験機により建物の排水設備の漏洩試験を行っている状態を表す模式側面図である。
図3】前記漏洩試験システムの全体構成を表す信号ブロック図である。
図4図2のIV矢視部拡大図である。
図5】排水設備の試験対象排水流路における排水立て管を閉鎖する様子を表す模式側面図である。
図6】前記漏洩試験システムにおける漏洩試験機の構成を表す模式図である。
図7】前記漏洩試験システムを構成するスマートフォンにおいて試験対象排水流路と漏洩試験機の判定出力データとを整理した状態の一例を表す図表である。
図8】前記スマートフォンにおいて試験対象排水流路情報を入力する際に使用される絵文字の一例を表す図である。
図9】前記スマートフォンにおいて試験対象排水流路(排水管継手)と試験結果のラベルとを撮影した様子を表す斜視図である。
図10】上位コンピュータにおいて、建物毎の漏洩試験結果をまとめた表の一例を表す図面である。
図11】実施形態2に係る漏洩試験システムの全体構成を表す信号ブロック図である。
図12】排水設備の試験対象排水流路の変更例を表す模式側面図である。
図13】従来の排水設備の漏洩試験装置を表す側面図である。
図14図13のXIV矢視拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態1]
以下、図1図10に基づいて本発明の実施形態1に係る排水設備の漏洩試験システムの説明を行なう。本実施形態に係る漏洩試験システム20は、例えば、集合住宅の住宅毎(世帯毎)に排水設備10の漏洩試験を行ない、その漏洩試験の判定結果を整理するシステムである。
【0019】
<排水設備の概要について>
漏洩試験システム20について説明する前に、漏洩試験が行われる集合住宅の排水設備10について説明する。ここで、図1は、集合住宅の所定階(例えば、3階)の2LDKの住宅の一区画(例えば、301号室)を例示している。集合住宅の排水設備10は、ダイニングキッチン2の台所排水を流す台所排水系統10dと、洗面所、浴室4の排水を流すユーティリティ排水系統10uと、トイレ6の排水を流すトイレ排水系統10tとから構成されている。各排水系統10d,10u,10tは、配管径寸法が異なるだけで、等しい構成である。各排水系統10d,10u,10tは、図2に示すように、集合住宅の上階と下階とを仕切る床スラブCSを貫通して各階に設置されている排水管継手12と、各階の排水管継手12を相互につなぐ排水立て管14とを備えている。そして、台所排水系統10dでは、台所の流し台等の排水が各階の床上に配管された排水横枝管16によって排水管継手12に導かれる。また、ユーティリティ排水系統10uでは、洗面台、浴槽等の排水が床上に配管された排水横枝管16によって排水管継手12に導かれる。トイレ排水系統10tでは、トイレ6の排水が床上に配管された排水横枝管16によって排水管継手12に導かれる。
【0020】
<漏洩試験の方法について>
排水設備10の漏洩試験は、住宅毎(世帯毎)に1階から最上階まで排水系統10d,10u,10t毎に順番に行われる。例えば、3階の住宅における漏洩試験の場合、図2に示すように、2階の排水管継手12の下側から3階の排水管継手12までの間で漏洩試験が行われる。即ち、2階の排水管継手12の下側の排水立て管14が閉鎖され、2階、3階の排水横枝管16の末端が閉鎖され、3階の排水管継手12の上部受け口が閉鎖された状態で漏洩試験が行なわれる。したがって、3階の住宅における漏洩試験の試験対象排水流路Kは、2階の排水管継手12の下側から3階の排水管継手12までの間となる。
【0021】
<漏洩試験システム20の概要について>
漏洩試験システム20は、図1図2等に示すように、漏洩試験の試験対象排水流路Kの末端を塞ぐ閉鎖装置22と、閉鎖装置22によって末端が塞がれた試験対象排水流路Kに対して空気圧を加え、漏洩試験を行う漏洩試験機30とを備えている。また、漏洩試験システム20は、図3に示すように、漏洩試験機30の無線出力(漏洩試験の判定出力信号)を受信可能なスマートフォン61と、前記スマートフォン61と無線接続されたコンピュータ63、及びラベルプリンタ65とを備えている。
【0022】
<漏洩試験システム20の閉鎖装置22について>
漏洩試験システム20の閉鎖装置22は、図4に示すように、排水管継手12の上部受け口12uを塞ぐ受け口閉止具24と、図2に示すように、排水立て管14の途中位置を塞ぐ立て管閉止具26と、排水横枝管16の末端を塞ぐキャップ28等とを備えている。受け口閉止具24は、図4に示すように、排水管継手12の上部受け口12uを塞いだ状態で漏洩試験機30から圧送された加圧空気を試験対象排水流路K内に供給できるように構成されている。受け口閉止具24は、排水管継手12の上部受け口12uを気密状態で塞ぐ閉止具本体部240と、その閉止具本体部240を排水管継手12の上部受け口12uに固定する抜け止め治具248とを備えている。閉止具本体部240の中央には、図4に示すように、貫通雌ネジ孔(図番省略)が形成されており、その貫通雌ネジ孔には、漏洩試験機30の空気ホース31の先端に固定された継手(図番省略)が接続されるようになっている。また、閉止具本体部240の裏面には、立て管閉止具26(後記する)の空気ホース26tを掛けるフック246が設けられている。
【0023】
閉鎖装置22の立て管閉止具26は、上記したように排水立て管14を塞ぐ治具であり、図5等に示すように、空気圧により膨張して径方向に拡開する膨張性プラグ26pと、その膨張性プラグ26pに対して空気を供給する空気ホース26tとから構成されている。膨張性プラグ26pは、弾性体により元の形状が棒状となるように形成されており、内側に加圧空気が供給されることで円筒状に拡開する。そして、膨張性プラグ26pが円筒状に拡開して、その膨張性プラグ26pの外周面が排水立て管14の内周面に面接触することで、前記排水立て管14が閉塞される。空気ホース26tは、先端が膨張性プラグ26pに接続されている。そして、空気ホース26tの基端部には、その空気ホース26tを電動エアポンプ50に接続するための逆止弁付きコネクタ26cが固定されている。このため、逆止弁付きコネクタ26cの働きにより、膨張性プラグ26pの拡開後は、電動エアポンプ50と逆止弁付きコネクタ26cとの接続を解除しても、膨張性プラグ26pは拡開状態に保持される(図2参照)。
【0024】
<漏洩試験システム20の漏洩試験機30について>
漏洩試験機30は、図6に示すように、排水設備10の試験対象排水流路Kに対して空気圧を加える通気部32と、その通気部32を操作、制御する操作制御部40とから構成されている。通気部32は、管路33と、管路33の上流端に接続された空気ポンプ34と、管路33の途中位置に設けられた逆流防止用電磁弁35と、手動バルブ36と、管路33の下流端に設けられた継手38とを備えている。そして、通気部32の継手38に対して排水設備10の試験対象排水流路Kに空気を供給するための空気ホース31が接続される。また、管路33には、手動バルブ36の下流側に圧力センサー37の配管が接続されている。このため、圧力センサー37によって、図6に示すように、管路33と空気ホース31を介して連通する排水設備10の試験対象排水流路K内の圧力を検出できる。
【0025】
逆流防止用電磁弁35(以下、逆止弁35という)は、通電時(オン時)に管路33の流路を開放し、通電解除時(オフ時)に管路33の流路を閉鎖できるように構成されている。また、手動バルブ36は、連通位置と遮断位置間で切替可能に構成されており、連通位置で管路33の流路を開放し、遮断位置で管路33の流路を閉鎖して排水設備10の試験対象排水流路K側を大気開放できるように構成されている。
【0026】
<漏洩試験機30の操作制御部40について>
操作制御部40は、空気ポンプ34、逆止弁35を電気信号により動作させることで排水設備10の試験対象排水流路Kの漏洩試験を行うとともに、試験対象排水流路Kの正常判定、あるいは漏れ判定をし、その結果を記録する部分である。操作制御部40は、CPU41と、CPU41の状態を表示する液晶表示部411と、データ入力用の操作スイッチ413と、試験対象排水流路Kの漏洩試験の結果(判定出力信号)を無線信号(ブルートゥース(登録商標))に変換する信号変換装置414を備えている。また、操作制御部40は、交流電源電圧をCPU41等の専用電圧に変換する電源回路415を備えている。
【0027】
操作制御部40は、図6に示すように、圧力センサー37の圧力検出値と、試験場所の気温を測定する温度センサー43の温度検出値とをデジタル変換してCPU41に入力するA/D変換器44と、各種データ、及び漏洩試験のプログラム等を記憶するメモリ45を備えている。また、操作制御部40は、空気ポンプ34を駆動させるためのポンプ制御回路47と、逆止弁35を動作させるための逆止弁制御回路46とを備えている。逆止弁制御回路46とポンプ制御回路47とは、CPU41の出力信号に基づいて動作する。
【0028】
<漏洩試験の具体的な手順について>
前記漏洩試験は、住宅毎(世帯毎)に行なわれるため、一般的に、作業者は三台の漏洩試験機30を使用して各排水系統10d,10u,10tについて同時に漏洩試験を行なう。このため、試験対象排水流路Kの末端を塞ぐ閉鎖装置22も三セット必要になる。
【0029】
先ず、漏洩試験の準備として、図5に示すように、試験対象排水流路Kの上部(試験階)の排水管継手12の上部受け口12uから膨張性プラグ26pと空気ホース26tとを挿入し、試験対象排水流路Kの下部(1階下)の排水立て管14を閉鎖する。さらに、試験階と1階下の排水横枝管16の末端をキャップ28等で閉鎖する。次に、図4に示すように、試験階の排水管継手12の上部受け口12uに受け口閉止具24を装着する。このとき、立て管閉止具26の空気ホース26tを受け口閉止具24の閉止具本体部240のフック246に掛けた状態で、その閉止具本体部240により排水管継手12の上部受け口12uを閉鎖する。この状態で、試験対象排水流路Kは密閉状態に保持される。次に、受け口閉止具24に対して、図2図4に示すように、漏洩試験機30の空気ホース31を接続することで、漏洩試験の準備が完了する。
【0030】
漏洩試験では、漏洩試験機30(通気部32)の手動バルブ36(図6参照)を連通位置に切り替え、ポンプONのボタン(図示省略)を操作する。これにより、CPU41の出力信号に基づいて逆止弁35がオンして流路が開かれ、空気ポンプ34が駆動される。そして、排水設備10の試験対象排水流路K内に加圧空気が供給され、試験対象排水流路K内の圧力Pが試験圧力Psに調整される。ここで、試験圧力Psは、一般的に36kPaに設定されている。
【0031】
試験対象排水流路K内の圧力Pが試験圧力Psに調整されると、空気ポンプ34が停止し、逆止弁35がオフして流路が閉鎖される。このタイミングで時間のカウントが開始され、所定時間tsの間、試験対象排水流路K内の圧力Pが連続して計測される。ここで、本実施形態では所定時間ts=15分に設定されている。そして、所定時間tsが経過すると試験対象排水流路K内の圧力Pが圧力下限値PL(=35kPa)と比較される。試験対象排水流路K内の圧力Pが圧力下限値PLよりも小さい場合には、試験対象排水流路Kに漏れがあると考えられるため、漏れ有りと判定される。また、前記圧力Pが圧力下限値PLよりも大きい場合には、漏れ無し、即ち、正常判定が行われる。
【0032】
ここで、試験対象排水流路K内の圧力Pの値は、全てメモリ45に記憶される。また、漏洩試験の判定結果、即ち、正常判定、及び漏れ有り判定も全てメモリ45に記憶される。そして、漏洩試験の判定信号(正常、又は漏れ有り)と、ts=0、及びts=15分のときの試験対象排水流路K内の圧力信号Pとが、漏洩試験機30の信号変換装置414により判定出力信号として無線出力(ブルートゥース(登録商標))される。なお、漏洩試験後は、漏洩試験機30の手動バルブ36が遮断位置に切り替えられ、排水設備10の試験対象排水流路Kが大気開放される。
【0033】
<スマートフォン61のソフトウエアについて>
漏洩試験機30の信号変換装置414により無線出力された判定出力信号は、図3に示すように、作業者のスマートフォン61で受信される。スマートフォン61には、試験対象排水流路Kと、その試験対象排水流路Kで使用された漏洩試験機30の判定出力信号とを対応させて記憶し、表としてまとめるためのソフトウエアがインストールされている。図7には、スマートフォン61において試験対象排水流路Kと漏洩試験機30の判定出力信号とをまとめた表の一例が示されている。
【0034】
ここで、図7の表において、例えば、No.1の3階301号室、トイレ系統は、図2に示すトイレ排水系統10tの試験対象排水流路K、即ち、トイレ排水系統10tにおける2階の排水管継手12の下側から3階の排水管継手12までの間の試験対象排水流路Kを表している。同様に、No.2の3階301号室、ユーティリティ系統の場合は、ユーティリティ排水系統10uにおける2階の排水管継手12の下側から3階の排水管継手12までの間の試験対象排水流路Kを表している。同じく、No.3の3階301号室、台所系統の場合は、台所排水系統10dにおける2階の排水管継手12の下側から3階の排水管継手12までの間の試験対象排水流路Kを表している。
【0035】
図7の表における機番は、漏洩試験に使用される漏洩試験機30の機番を表している。即ち、3階301号室、トイレ系統では、漏洩試験機30の1号機が使用されている。また、3階301号室、ユーティリティ系統では、漏洩試験機30の2号機が使用されている。さらに、3階301号室、台所系統では、漏洩試験機30の3号機が使用されている。作業者は、漏洩試験を行なう準備段階で、試験対象排水流路K(例えば、3階301号室、ユーティリティ系統)と、使用する漏洩試験機30の号数とを図7の表に入力する。このとき、図8に示すように、スマートフォン61に表示されている絵文字である便器マークAをタッチすることで、表の系統の位置に「トイレ」と記載される。また、スマートフォン61のバスタブマークB、洗濯機マークC、洗面台マークDをタッチすることで、表の系統の位置に「ユーティリティ」と記載され、器具名が具体的に記載される。同様に、スマートフォン61の流し台マークEをタッチすることで、表の系統の位置に「台所」と記載され、器具名が具体的に表示される。なお、音声により、上記系統、及び器具名を入力することも可能である。
【0036】
そして、3階301号室のトイレ系統、ユーティリティ系統、台所系統において漏洩試験が完了すると、漏洩試験機30の1号機、2号機、及び3号機の信号変換装置414から判定出力信号が無線出力される。そして、漏洩試験機30の1号機、2号機、及び3号機(信号変換装置414)から無線出力された判定出力信号が、上記したように、作業者のスマートフォン61で受信される。ここで、判定出力信号は、上記したように、漏洩の有無の判定信号と、ts=0の時の圧力信号(開始圧力)と、ts=15分の時の圧力信号(終了圧力)とである。このため、例えば、漏洩試験機30の1号機により漏れなしと判定された場合には、3階301号室のトイレ系統の判定の欄に合格と記載される。また、開始圧力と終了圧力の欄に具体的な数値、即ち、開始圧力36.1kPa、終了圧力35.9kPaが記載される。漏洩試験機30の2号機により漏れなしと判定された場合には、3階301号室のユーティリティ系統の判定の欄に合格と記載され、開始圧力と終了圧力の欄に具体的な数値、即ち、開始圧力36.1kPa、終了圧力35.8kPaが記載される。同様に、漏洩試験機30の3号機により漏れなしと判定された場合には、3階301号室の台所系統の判定の欄に合格と記載され、開始圧力と終了圧力の欄に具体的な数値、即ち、開始圧力36.2kPa、終了圧力35.9kPaが記載される。なお、漏洩試験機30により漏れ有りと判定された場合には、何号室の何系統で漏れ有りと警報が発せられる。この場合、点検、補修後に再度漏洩試験が行われる。
【0037】
漏洩試験機30が終了すると、作業者はスマートフォン61のデータをラベルプリンタ65に転送する。ラベルプリンタ65は、スマートフォン61のデータに基づいて、号室と系統毎に、機番、判定、開始圧力、及び終了圧力を印刷する。作業者は、印刷されたラベルを号室と系統に対応する排水管継手12、例えば、301号室の台所排水系統の排水管継手12に貼付して、図9に示すように、写真撮影する。これにより、図7の表における写真の欄に撮影された写真が表示される。さらに、スマートフォン61のデータは事務所のコンピュータ63に転送可能となっている。コンピュータ63には、複数のスマートフォン61から送られてきたデータを集中して管理するためのソフトウエアがインストールされている。前記コンピュータ63では、図10に示すように、集合住宅の建物毎に漏洩試験データを管理できるように構成されている。そして、集合住宅の物件名の詳細をクリックすることで、図7の表に示すように、集合住宅の個々住宅の系統毎に漏洩試験データを確認することができる。
【0038】
<本実施形態に係る漏洩試験システム20の用語と本発明の用語との対応>
図7の表における開始圧力(所定時間ts=0)が本発明の密閉空間内の気体圧力を予め決められた値に調整した直後の気体圧力に相当し、終了圧力(所定時間ts=15分)が本発明の所定時間経過時の気体圧力に相当する。また、圧力下限値PLが本発明の気体圧力の許容値に相当する。さらに、図7の表における判定、開始圧力、終了圧力が本発明の判定出力データに相当する。また、コンピュータ63が本発明の上位コンピュータに相当する。
【0039】
<本実施形態に係る漏洩試験システム20の長所について>
本実施形態に係る漏洩試験システム20によると、漏洩試験機30は、試験対象排水流路Kの密閉空間内の気体圧力を予め決められた値に調整した後、前記密閉空間内の気体圧力を所定時間測定し、前記気体圧力の測定値を圧力下限値PL(許容値)と比較することで試験対象排水流路Kの漏洩の有無を判定する。このため、排水設備の試験対象排水流路Kの漏れ判定のために作業者が試験対象排水流路の近くに待機する必要がなくなる。したがって、漏洩試験の試験コストの軽減を図ることができる。また、漏洩試験機30には、その漏洩試験機30の判定出力信号をスマートフォン61(コンピュータ)が受信可能な無線信号に変換する信号変換装置414が設けられている。このため、スマートフォン61で漏洩試験機の判定出力データを整理できるようになり、試験データの整理を容易化できる。また、判定出力信号は、漏洩有無の判定信号と、開始圧力、終了圧力とを有しているため、漏洩有無の判定信号の確認が容易になる。
【0040】
[実施形態2]
次に、図11に示す信号ブロック図に基づいて本発明の実施形態2に係る漏洩試験システムについて説明する。本実施形態に係る漏洩試験システムでは、例えば、実施形態1で使用したスマートフォン61、事務所のコンピュータ63の代わりに建設業等において使用されている現場管理システムを利用して漏洩試験のデータ整理を行なうようにしている。即ち、本実施形態に係る漏洩試験システムでは、図11に示すように、スマートフォン61の代わりに現場管理等で使用されるタブレットPC67により漏洩試験機30の無線出力(判定出力信号)が受信される。ここで、タブレットPC67は、漏洩試験機30の無線出力の他、工事進捗、工事写真等を管理するため、現場に設置されたカメラ64、その他の種々の機器の無線出力信号を受信できるように構成されている。そして、タブレットPC67において受信された種々のデータは、クラウドサーバー68(ネットワーク上で他のコンピュータに情報やサービスを提供するコンピュータ)に転送されて記憶される。
【0041】
タブレットPC67において受信された漏洩試験機30の無線出力(判定出力信号)は、スマートフォン61の場合と同様に、図7に示すように、試験対象排水流路K(階、号室、系統)と判定出力信号(開始圧力、終了圧力、判定)とを対応させた状態で記憶される。そして、上記したように、タブレットPC67のデータは、前記クラウドサーバー68に転送される。クラウドサーバー68では、図10に示すように、集合住宅の建物毎に漏洩試験データを管理できるように構成されている。また、漏洩試験の終了後、作業者はタブレットPC67のデータをラベルプリンタ65に転送する。これにより、ラベルプリンタ65は、タブレットPC67のデータに基づいて、号室と系統毎に、機番、判定、開始圧力、及び終了圧力を印刷する。そして、印刷されたラベルが作業者により号室と系統に対応する排水管接手12に貼着される。このように、建設業等において使用されている現場管理システムを利用して漏洩試験のデータ整理を行なえるため、漏洩試験のための専用のシステムを作成しなくても良くなり、漏洩試験機30の汎用性が高くなる。
【0042】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態1、2に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、実施形態1、2では、図2に示すように、1階下の排水管継手12の下側から所定階の排水管継手12までの間を試験対象排水流路Kとする例を示した。しかし、図12に示すように、2階下の排水管継手12の下側から所定階の排水管継手12までの間を試験対象排水流路Kとすることも可能である。また、本実施形態では、台所排水系統10dとユーティリティ排水系統10uとトイレ排水系統10tとからなる排水設備10の漏洩試験を例示した。しかし、台所排水系統10dとユーティリティ排水系統10uとトイレ排水系統10tとが全てまとまった排水設備10、あるいは部分的にまとまった排水設備10に対して本発明を適用することも可能である。また、本実施形態における漏洩試験機30では、ブルートゥース(登録商標)の信号変換装置414を使用する例を示したが、例えば、Wi-Fi(登録商標)の信号変換装置414を使用することも可能である。さらに、本実施形態では、試験対象排水流路Kに加圧空気を供給する例を示したが、空気以外の気体を充填することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
10・・・・排水設備
20・・・・漏洩試験システム
30・・・・漏洩試験機
61・・・・スマートフォン(コンピュータ)
63・・・・コンピュータ(上位コンピュータ)
65・・・・ラベルプリンタ
67・・・・タブレットPC
68・・・・クラウドサーバー
414・・・信号変換装置
A・・・・・便器マーク(絵文字)
B・・・・・バスタブマーク(絵文字)
C・・・・・洗濯機マーク(絵文字)
D・・・・・洗面台マーク(絵文字)
E・・・・・流し台マーク(絵文字)
K・・・・・試験対象排水流路
PL・・・・圧力下限値(許容値)
図1
図2
図3
図4
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図6
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図8
図9
図10
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