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特開2023-61121在宅医療支援システムおよび患者側装置プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061121
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】在宅医療支援システムおよび患者側装置プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 80/00 20180101AFI20230424BHJP
【FI】
G16H80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170925
(22)【出願日】2021-10-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第7回いよぎんビジネスプランコンテスト 2021年7月7日 株式会社伊予銀行 本店4階ホール
(71)【出願人】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 晋士
(72)【発明者】
【氏名】矢野 安樹子
(72)【発明者】
【氏名】井門 静香
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】在宅で治療する患者の個性に応じて患者の体調および症状の把握を容易にし、医療従事者および患者の不安を軽減する在宅医療支援システムを提供する。
【解決手段】患者側表示部21は、患者16の症状に関し、予め重要度が規定された設問を表示する。個性値設定部51は、設問への回答に基づいて、患者16に固有の個性値を設定する。閾値設定部52は、設定した個性値に基づいて、患者16ごとに回答の重み付けを示す閾値を設定する。症状判断部52は、患者16から最新の回答を受けると、回答に対応する設問の重要度、および閾値設定部51で設定した閾値に基づいて、患者16が、予め設定された複数の段階の症状程度うちのいずれの症状程度に該当するかを判断する。データ作成部54は、症状程度を患者16ごとに視覚的に認識可能な診断画面の基となる画面データを作成する。医療側装置13に設けられている医療側表示部41は、診断画面を表示する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が利用する端末である患者側装置と、
前記患者側装置と通信可能に接続され、前記患者側装置から入力された情報を蓄えるサーバ装置と、
前記サーバ装置に接続され、前記患者側装置と遠隔に設けられ、医者が利用する端末である医療側装置と、を備える在宅医療支援システムであって、
前記患者側装置に設けられ、前記患者の症状に関し、予め重要度が規定された設問を表示する患者側表示部と、
前記患者側装置に設けられ、前記患者側表示部に表示された前記設問に対する回答を入力する入力部と、
前記入力部から入力された前記回答に基づいて、前記患者に固有の個性値を設定する個正値設定部と、
前記個性値設定部で設定した前記個性値に基づいて、前記患者ごとに前記回答の重み付けを示す閾値を設定する閾値設定部と、
前記患者側装置を通して前記患者が入力した最新の回答を受けると、前記回答に対応する前記設問の前記重要度、および前記閾値設定部で設定した前記閾値に基づいて、前記患者が、予め設定された複数の段階の症状程度うちのいずれの症状程度に該当するかを判断する症状判断部と、
前記症状判断部で判断した前記症状程度を、前記患者ごとに視覚的に認識可能な画面データを作成するデータ作成部と、
前記医療側装置に設けられ、前記データ作成部で作成された前記画面データに基づく診断画面を表示する医療側表示部と、
を備える在宅医療支援システム。
【請求項2】
前記個性値設定部は、予め設定した設定期間における前記回答の頻度に基づいて前記個性値を設定する請求項1記載の在宅医療支援システム。
【請求項3】
前記設問は、ガン患者に対して処方される薬剤の副作用に関する請求項1または2記載の在宅医療支援システム。
【請求項4】
患者が利用する端末である患者側装置に、サーバ装置に蓄積するための情報の収集を実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記患者側装置に設けられている患者側表示部に、予め重要度が規定された設問を表示する表示手順と、
前記表示手順で前記患者側表示部に表示された設問に対する回答を、前記患者側装置に設けられている入力部を通して前記患者から受け付ける受付手順と、
前記受付手順で前記入力部を通して受け付けた回答を、前記患者側装置に設けられている通信部を通して、外部の前記サーバ装置へ送信する送信手順と、
を実行させる在宅医療支援システムの患者側装置プログラム。
【請求項5】
前記入力部から入力された前記回答に基づいて、前記患者側装置に設けられている個性値設定部に、前記患者に固有の個性値を設定する個性値設定手順を、
さらに実行させる請求項4記載の在宅医療支援システムの患者側装置プログラム。
【請求項6】
前記個性値設定部で設定した前記個性値に基づいて、前記患者側装置に設けられている閾値設定部に、前記回答の重み付けを設定する閾値設定手順を、
さらに実行させる請求項5記載の在宅医療支援システムの患者側装置プログラム。
【請求項7】
前記入力部を通して前記患者から最新の回答を受け付けると、前記回答に対応する前記設問の前記重要度、および前記閾値設定部で設定した前記回答の重み付けに基づいて、前記患者が、予め設定された複数の段階の症状程度のうちいずれの症状程度に該当するかを判断する症状判断手順を、
さらに実行させる請求項6記載の在宅医療支援システムの患者側装置プログラム。
【請求項8】
前記個性値設定手順は、予め設定した設定期間における前記回答の頻度に基づいて前記個性値を設定する請求項5記載の在宅医療支援システムの患者側装置プログラム。
【請求項9】
前記設問は、ガン患者に対して処方される薬剤の副作用に関する請求項4から8のいずれか一項記載の在宅医療支援システムの患者側装置プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在宅医療支援システムに関し、特に患者の所有する端末装置を活用した在宅医療支援システムおよび患者側装置プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療の高度化および長期化にともない、入院による治療だけでなく、在宅および通院による治療が進んでいる。そのため、患者は、自宅での体調管理および自己管理が必要となっている。このような在宅医療を行なう場合、医療従事者は、数日または数週間に一度程度の通院では、患者の体調および症状を完全に把握するのが困難である。一方、患者は、在宅時における体調不良への対処や、通院すべきか否かの判断が困難であるという問題がある。このように、在宅医療は、医療従事者および患者の双方に不安を生じるという問題がある(在宅医療の支援に関する先行技術として、特許文献1参照)。
近年では、医療の高度化によって、処方される薬品の効果が向上したものの、同時に副作用も懸念される。在宅医療の場合、薬品は主に病院外で服用されるため、副作用に対する迅速な対応も必要となる。
【0003】
ところで、在宅での医療を受ける患者は、副作用をはじめとする各種の症状に対する耐性に個性がある。例えば、軽度な痛みや苦痛であってもこれを頻繁に訴える患者もいれば、重度な症状であっても医療従事者への通報を拒む患者もいる。このような患者の個性を考慮することなく単なるアンケート形式の問診を行なっても、患者の個々の体調および症状を適切に把握することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-26773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、在宅で治療する患者の個性に応じて患者の体調および症状の把握を容易にし、医療従事者および患者の不安を軽減する在宅医療支援システムを提供することを目的とする。
また、在宅で治療する患者の個性に応じて患者の体調および症状の把握を容易にするために患者側装置で実行する患者側装置プログラムを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の在宅医療支援システムは、患者側装置、サーバ装置および医療側装置を備える。患者側装置は、患者が利用する端末である。サーバ装置は、前記患者側装置と通信可能に接続され、前記患者側装置から入力された情報を蓄える。医療側装置は、前記サーバ装置に接続され、前記患者側装置と遠隔に設けられ、医者が利用する端末である。
【0007】
また、一実施形態による在宅医療支援システムは、患者側表示部、入力部、個性値設定部、閾値設定部、症状判断部、データ作成部および医療側表示部を備える。患者側表示部は、前記患者側装置に設けられ、前記患者の症状に関し、予め重要度が規定された設問を表示する。入力部は、前記患者側装置に設けられ、前記患者側表示部に表示された前記設問に対する回答を入力する。個性値設定部は、前記入力部から入力された前記回答に基づいて、前記患者に固有の個性値を設定する。閾値設定部は、前記個性値設定部で設定した前記個性値に基づいて、前記患者ごとに前記回答の重み付けを示す閾値を設定する。症状判断部は、前記患者側装置を通して前記患者が入力した最新の回答を受けると、前記回答に対応する前記設問の前記重要度、および前記閾値設定部で設定した前記閾値に基づいて、前記患者が、予め設定された複数の段階の症状程度うちのいずれの症状程度に該当するかを判断する。データ作成部は、前記症状判断部で判断した前記症状程度を、前記患者ごとに視覚的に認識可能な画面データを作成する。医療側表示部は、前記医療側装置に設けられ、前記データ作成部で作成された前記画面データに基づく診断画面を表示する。
【0008】
一実施形態による患者側装置プログラムは、患者が利用する端末である患者側装置に、サーバ装置に蓄積するための情報の収集を実行させるためのコンピュータプログラムである。患者側装置プログラムは、患者側装置に、表示手順、受付手順および送信手順を実行させる。表示手順は、前記患者側装置に設けられている患者側表示部に、予め重要度が規定された設問を表示させる。受付手順は、前記表示手順で前記患者側表示部に表示された設問に対する回答を、前記患者側装置に設けられている入力部を通して前記患者から受け付けさせる。送信手順は、前記受付手順で前記入力部を通して受け付けた回答を、前記患者側装置に設けられている通信部を通して、外部の前記サーバ装置へ送信させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による在宅医療支援システムの構成を示す概略図
図2】一実施形態による在宅医療支援システムの構成を示すブロック図
図3】一実施形態による在宅医療支援システムにおける診断画面を示す模式図
図4】一実施形態による在宅医療支援システムにおける患者側装置プログラムによる処理の流れを示す概略図
図5】一実施形態による在宅医療支援システムにおける患者側装置プログラムによる処理の流れを示す概略図
図6】一実施形態による在宅医療支援システムにおける患者側装置プログラムの実行によって患者側表示部に表示されるトップページを示す模式図
図7】一実施形態による在宅医療支援システムにおける患者側装置プログラムの実行によって患者側表示部に表示されるヘルスチェック入力画面を示す模式図
図8】一実施形態による在宅医療支援システムにおける患者側装置プログラムの実行によって患者側表示部に表示される投薬日入力画面を示す模式図
図9】一実施形態による在宅医療支援システムにおける患者側装置プログラムの実行によって患者側表示部に表示される設問画面を示す模式図
図10】一実施形態による在宅医療支援システムにおける患者側装置プログラムの実行によって患者側表示部に表示される設問画面を示す模式図
図11】一実施形態による在宅医療支援システムにおける患者側装置プログラムの実行によって患者側表示部に表示される設問画面を示す模式図
図12】一実施形態による在宅医療支援システムにおける患者側装置プログラムの実行によって患者側表示部に表示される設問画面を示す模式図
図13】一実施形態による在宅医療支援システムにおける患者側装置プログラムの実行によって患者側表示部に表示される通知画面を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、在宅医療支援システムの一実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、一実施形態による在宅医療支援システム10の構成を示す概略図である。在宅医療支援システム10は、患者側装置11、サーバ装置12および医療側装置13を備える。患者側装置11は、例えばいわゆるスマートフォンやタブレットと称される携帯端末14である。サーバ装置12は、例えばHDDなどの電磁気的または光学的にデジタルデータを記憶可能な記憶領域を備える機器である。医療側装置13は、例えばいわゆるパーソナルコンピュータと称される機器である。これら、患者側装置11とサーバ装置12との間、およびサーバ装置12と医療側装置13との間は、通信ネットワーク15を経由して通信可能に接続されている。通信ネットワーク15は、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット、携帯通信網、イーサネットなど、任意の通信ネットワークを利用することができる。
【0011】
在宅医療支援システム10は、患者16および医療従事者17が利用する。患者16は、例えば任意の疾病を患っている者、または疾病の不安がある者などであり、医療従事者17による診察を希望する者である。医療従事者17は、例えば医療機関18に所属する医師、看護師、薬剤師などであり、患者16に対して医療行為、医療的な助言、診察などを行なう者である。医療従事者17は、対応する患者16の症状などに応じて医師、看護師または薬剤師などが単独で関与してもよく、医者、看護師または薬剤師などがチームとなって複数で関与してもよい。患者16は、自宅19で療養し、自身が所有している携帯端末14を患者側装置11として利用する。携帯端末14は、医療機関18が患者16へ貸与してもよい。また、医療側装置13は、医療機関18に備えられており、医療従事者17が医療機関18において利用する機器である。
【0012】
(患者側装置)
患者側装置11は、上述のようにスマートフォンやタブレットと称される携帯端末14である。患者側装置11は、図2に示すように患者側表示部21、入力部22、通信部23、記憶部24および制御部25を備えている。患者側表示部21および入力部22は、例えばタッチパネルとして構成され、画像の表示および情報の入力の双方が可能である。通信部23は、通信ネットワーク15を経由してサーバ装置12と通信する。記憶部24は、例えばSSDやHDDなどの記憶媒体を有している。制御部25は、これら患者側表示部21、入力部22、通信部23および記憶部24と接続しており、これらを制御する。制御部25は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータユニットで構成され、ROMまたは記憶部24に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、患者側装置11を制御する。
【0013】
患者側装置11は、制御部25でコンピュータプログラムを実行することにより、患者側表示部21に「設問」を表示する。この「設問」は、患者16に対して問われる質問であり、例えば患者16の体調や症状に関する質問である。「設問」は、患者16の体調や症状に関して、予め重要度が規定されている。「設問」は、例えば腹痛、頭痛や筋肉痛などのように患者16に対して身体の痛みを問うもの、吐き気やむかつきなど患者16に対して身体の不快感を問うもの、下痢や痙攣などの患者16の身体に発現する症状を問うもの、体温や血圧など患者16の身体の状態を問うものなど多数が用意されている。そして、この「設問」は、患者16の病歴や症状などに応じて重要度が規定されている。例えば「胃ガン患者」の場合、腹痛を問う「設問」は、頭痛を問う「設問」よりも重要度が高く規定されている。このように、患者側装置11が患者側表示部21に表示する「設問」は、多岐にわたるとともに、予め重要度が規定されている。患者16に問う「設問」の重要度は、患者16の症状などに応じて医療従事者17が設定する。また、患者16に問う「設問」は、多くの患者16に対応できるように一般的な内容としてよく、患者16の個別の症状などに応じて患者16ごとに特定した内容としてもよい。いずれにしても、「設問」は、医療従事者17が設定する。
【0014】
患者16は、患者側装置11の入力部22から、患者側表示部21に表示された「設問」に対する回答を入力する。患者16は、患者側表示部21に表示されている「設問」付近を触れる、つまりタップすることにより、「設問」に対する回答を患者側表示部21の画面上で選択して入力する。制御部25は、入力部22で受け付けた患者16からの回答を、記憶部24に一時的に記憶するとともに、通信部23を通してサーバ装置12へ出力する。この場合、制御部25は、記憶部24に記憶した「設問」に対する回答を、複数まとめてサーバ装置12へ出力してもよく、予め設定された一定期間蓄積した後にサーバ装置12へ出力してもよい。
【0015】
(サーバ装置)
サーバ装置12は、記憶部31、通信部32および制御部33を有している。記憶部31は、患者側装置11から出力された「設問」に対する回答を蓄積する記憶領域である。記憶部31は、例えばSSDやHDDなどの電磁気的または光学的にデジタルデータを蓄積する記憶領域を備えている。通信部32は、通信ネットワーク15を経由して患者側装置11および医療側装置13と通信する。制御部33は、これら記憶部31および通信部32と接続しており、これらを制御する。制御部33は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータユニットで構成され、ROMまたは記憶部31に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、サーバ装置12を制御する。
【0016】
(医療側装置)
医療側装置13は、パーソナルコンピュータなどの機器であり、パーソナルコンピュータに限らずスマートフォンやタブレットなどの携帯端末であってもよい。医療側装置13は、医療側表示部41、入力部42、通信部43、記憶部44および制御部45を備えている。入力部42は、例えばキーボードやマウスといった入力機器など、任意の入力機器である。通信部43は、通信ネットワーク15を経由してサーバ装置12と通信する。記憶部44は、例えばSSDやHDDなどの記憶媒体を有している。制御部45は、これら医療側表示部41、入力部42、通信部43および記憶部44と接続しており、これらを制御する。制御部45は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータユニットで構成され、ROMまたは記憶部44に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、医療側装置13を制御する。
【0017】
医療側装置13は、制御部45でコンピュータプログラムを実行することにより、医療側表示部41に、図3に示すような診断画面46を表示する。この医療側表示部41に表示される診断画面46は、患者側装置11を通して患者16に対して問われた「設問」に対する患者16の回答に基づいて作成される。この医療側表示部41に表示される診断画面46については後述する。
【0018】
(在宅医療支援システム)
在宅医療支援システム10は、これら患者側装置11、サーバ装置12および医療側装置13を、コンピュータプログラムを用いて一体的に機能させることによって実現する。在宅医療支援システム10は、これらの患者側装置11、サーバ装置12および医療側装置13に加え、図2に示すように個性値設定部51、閾値設定部52、症状判断部53およびデータ作成部54を備えている。個性値設定部51、閾値設定部52、症状判断部53およびデータ作成部54は、コンピュータプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現される。具体的には、個性値設定部51、閾値設定部52、症状判断部53およびデータ作成部54は、患者側装置11、サーバ装置12または医療側装置13のいずれかでコンピュータプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現される。以下の説明では、患者側装置11は、コンピュータプログラムである「患者側装置プログラム」を実行することにより、個性値設定部51、閾値設定部52および症状判断部53を実現する例について説明する。また、この例の場合、データ作成部54は、医療側装置13においてコンピュータプログラムを実行することによりソフトウェア的に実現される。すなわち、医療側装置13で実現されるデータ作成部54は、サーバ装置12に蓄積された「設問」に対する回答のデータを用いて診断画面46の基となる画面データを作成する。
【0019】
個性値設定部51は、「設問」に対する患者16の回答に基づいて、患者16に固有の個性値Pを設定する。患者16は、それぞれ個性を有しており、「設問」に対しても個々に様々な回答を行なう。個性値設定部51は、患者16から得られる「設問」に対する回答を用いて、この回答に基づく患者16の個性を個性値Pとして設定する。具体的には、個性値設定部51は、予め設定した設定期間Tの間における患者16の「設問」に対する回答の頻度に基づいて個性値Pを設定する。患者16は、例えば大雑把な性格、神経質な性格、敏感な性格、鈍感な性格など、多様な感受性を有している。この患者16の個性は、一例として、設問に対する回答の頻度として現れる。例えば設定期間Tを任意の日数に設定し、生真面目な患者16と不真面目な患者16とを比較すると、一般に生真面目な患者16の回答の頻度は、不真面目な患者16の回答の頻度よりも多くなる傾向にある。また、神経質な患者16は、体調への些細な違和感でも回答するのに対し、神経質でない患者16は、強い違和感が生じても回答しないことがある。さらに、患者16は、仮に同一の病状であっても、例えば数時間おきなどのように頻繁に異状を訴える者、まれにしか異状を訴えない者など様々である。
【0020】
個性値設定部51は、このように患者16の個性を把握するための一つの指標として、予め設定した設定期間Tにおける「設問」に対する回答の頻度を用いている。これにより、個性値設定部51は、患者16の個性を、例えば頻度が高い方から「S」、「A」、「B」、「C」、「D」などのように、2つの段階以上のいずれかの個性値Pに分類する。また、個性値設定部51は、回答の頻度に加え、例えば痛みに関する回答が多い患者16、不快感に関する回答が多い患者、腹痛や頭痛など特定の疾患に対する回答が多い患者などを特徴付けながら、予め設定されたアルゴリズムにしたがって「設問」に対する回答の内容から個性値Pを設定する。
【0021】
閾値設定部52は、個性値設定部51で設定した個性値Pに基づいて、患者16ごとに回答の重み付けに対応する閾値Vbを設定する。上述のように、患者16は、それぞれ個性を有している。そのため、同一の「設問」および同一の「設問」に対する同一の回答であっても、患者16ごとに回答の実質的な内容が異なっている。例えば、「腹痛はありますか?」という設問に対し、敏感な患者16であれば、弱い痛みであっても「ある」という回答を行なうのに対し、鈍感な患者16であれば、強い痛みであっても「ない」という回答を行なうことがある。すなわち、同一の「設問」に対する同一の回答であっても、医療従事者17として、採用すべき回答であるか否かは、患者16の個性によって異なる。そこで、閾値設定部52は、個性値設定部51で設定した個性値Pに基づいて、回答の重み付けを決定し、その回答を採用するか否かの判断基準となる閾値Vbを設定する。例えば、閾値設定部52は、個性値設定部51で個性値Pが「A」と設定された患者16に対し、特定の「設問」に対する閾値Vbを予め設定されている平均的な閾値Vaよりも高める。また、閾値設定部52は、個性値設定部51で個性値Pが「D」と設定された患者16に対し、特定の「設問」に対する閾値Vbを予め設定されている平均的な閾値Vaよりも低める。
【0022】
これにより、特定の「設問」に対し同様の回答があったとしても、個性値Pが「D」の患者16は、個性値が「A」の患者よりも回答が重視される。このように、閾値設定部52は、個性値設定部51で設定された個性値Pに基づいて、閾値Vbを設定する。閾値設定部52が設定する閾値Vbは、例えば上記の例のように平均的な閾値Vaを基準に増減することにより設定される。閾値設定部52が設定する患者16ごとの閾値Vbは、「設問」の内容や患者16の症状などに応じて医療従事者17が任意に調整することができる。さらに、「設問」の内容が同一であっても、患者16の病状などによって、重視すべき場合と軽視してもよい場合とがある。閾値設定部52は、これら「設問」およびこれに対する回答も加味して、予め設定されたアルゴリズムにしたがって閾値Vbを設定する。
【0023】
症状判断部53は、患者16が予め設定された複数の段階の症状程度Ssのうち、いずれの症状程度Ssに該当するかを判断する。上述した個性値Pおよび閾値Vbは、患者側装置11に蓄積、または患者側装置11からサーバ装置12へ出力されてサーバ装置12に蓄積されている予め設定された回答期間Taにおける回答に基づいて設定される。この場合、回答期間Taは、例えば1週間であるとか、10日間であるとか任意に設定することができる。個性値設定部51および閾値設定部52は、この設定期間Taの間において患者16から出された「設問」への回答に基づいて個性値Pおよび閾値Vbを設定する。この場合、設定期間Taは、個性値Pを判断するための回答の頻度を得るための基礎となる設定期間Tと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0024】
症状判断部53は、患者側装置11を通して患者16から最新の回答を受けると、この最新の回答に基づいて症状程度Ssを判断する。具体的には、症状判断部53は、最新の回答を受けると、回答に対する「設問」の重要度Iv、および閾値設定部52で設定した回答の閾値Vbに基づいて、症状程度Ssを判断する。症状程度Ssは、例えば「重度」、「中程度」、「軽度」、「症状なし」などのように2つ以上の段階に設定されている。
【0025】
例えば、個性値Pが「D」のガン患者に、「腹痛はありますか?」という「設問」を提供したとする。この場合、ガン患者の「腹痛」は、重要度Ivが高い。この「設問」に対して、個性値Pが「D」の患者から「ある」という回答があったとき、症状判断部53は、平均的な閾値Vaから下げて設定した閾値Vbから、症状程度Ssを「中程度」と判断する。一方、個性値Pが「A」のガン患者に、「筋肉痛はありますか?」という「設問」を提供したとする。この場合、ガン患者の「筋肉痛」は、重要度Ivが低い。この「設問」に対して、個性値Pが「A」の患者から「ある」という回答があったとき、症状判断部53は、平均的な閾値Vaより上げて設定した閾値Vbから、「軽度」の症状程度と判断する。
【0026】
このように、症状判断部53は、重要度Ivが設定されている「設問」に対する最新の回答に基づいて、閾値設定部52で設定した閾値Vbを用いて患者16の症状程度Ssを判断する。すなわち、症状判断部53は、蓄積された患者16による過去の回答の傾向に基づく個性値P、および「設問」の重要度Ivに基づいて、最新の回答に対する患者16の症状程度Ssを判断する。なお、上述した「設問」、回答、個性値Pなどは、あくまでも説明のための例であり、これらは例えば患者16の疾病、疾患、病状、投薬状況などを総合的に考慮して設定および判断される。
【0027】
データ作成部54は、症状判断部53で判断された症状程度Ssを、患者16ごとに視覚的に認識可能な診断画面46の基となる画面データを作成する。データ作成部54は、患者側装置11で各患者16から「設問」への回答を受け付けると、図3に示す診断画面46の基となる画面データを作成する。すなわち、データ作成部54は、症状判断部53で判断された症状程度Ssを、患者16ごとの一覧表とするための画面データを作成する。医療側装置13の医療側表示部41は、画面データに基づく一覧表の診断画面46を表示する。これにより、医療側装置13を操作する医療従事者17は、患者16ごとの症状程度Ssを、医療側表示部41の画面から視覚的に入手することができる。
【0028】
以上説明した実施形態では、患者側装置11でアプリケーションである「患者側装置プログラム」を実行することにより、患者側装置11が個性値設定部51、閾値設定部52および症状判断部53を実現する例を説明した。しかし、個性値設定部51、閾値設定部52および症状判断部53は、患者側装置11に限らず、サーバ装置12で実現する構成としてもよい。また、個性値設定部51、閾値設定部52および症状判断部53は、サーバ装置12に蓄積されているデータ、および患者側装置11で入力された最新の回答を医療側装置13で入手して、医療側装置13で実現する構成としてもよい。この他にも、データ作成部54は、医療側装置13だけでなく、患者側装置11またはサーバ装置12で実現する構成としてもよい。このように、個性値設定部51、閾値設定部52、症状判断部53およびデータ作成部54は、処理の負荷に応じて、患者側装置11、サーバ装置12および医療側装置13のいずれかで実現する構成とすることができる。
【0029】
以下、上述の構成による在宅医療支援システム10の実施例の流れを図4および図5に基づいて詳細に説明する。この実施例では、アプリケーションプログラムとして「患者側装置プログラム」を使用して患者側装置11を制御する例について説明する。また、この実施例は、医療従事者17からの投薬によって、自宅19で服薬治療を行なう患者16を対象とする例である。以下、「患者側装置プログラム」は、「患者アプリ」と省略する。また、「患者アプリは、○○を××する。」とは、患者側装置11の制御部25が患者アプリにしたがって実行する動作を意味する。
【0030】
(設問受付処理)
まず、患者アプリによる設問受付処理について説明する。
患者16は、例えば1日に1回など、任意の時期に患者側装置11を操作する。なお、患者16が患者側装置11を操作する機会は、1日に1回に限らない。患者16は、例えば1日に何度も患者側装置11を操作してもよく、数日に1回程度の操作であってもよい。患者側装置11で患者アプリが起動されると、患者アプリは設問受付処理を実行する。設問受付処理は、患者16が患者側装置11で患者アプリを起動すると開始される(S101)。
【0031】
患者アプリが起動されると、患者アプリは患者側表示部21に図6に示すようなトップ画面60を表示する(S102)。トップ画面60は、治療開始日領域61、通院予定日領域62、推移表示領域63、irAE領域64および選択表示領域65を含んでいる。治療開始日領域61は、治療開始日、つまり患者16が医療機関18において治療を開始した日付を表示する。通院予定日領域62は、患者16の次回の通院予定日を表示する。通院予定日は、例えば医療従事者17から患者16に通院日の指示があったとき、その日付が患者16または医療従事者17によって入力される。通院予定日は、患者側装置11を用いて患者16が入力してもよく、医療側装置13を用いて医療従事者17が入力してもよい。これら、治療開始日および通院予定日は、サーバ装置12を通して、患者側装置11および医療側装置13で共有される。
【0032】
推移表示領域63は、患者16が入力した体温、体重および血圧の推移を時系列的に表示する。推移表示領域63は、例えば1週間分の体温、体重および血圧を表示する。irAE領域64は、投薬による副作用にともなう体調の変化があったか否かを表示するとともに、後述する副作用に関する情報の入力の開始を受け付ける。選択表示領域65は、「毎日のヘルスチェック」を選択するためのボタン66および「カレンダー」を選択するためのボタン67を表示するとともに、これらへの移行への入力を受け付ける。なお、ボタン66およびボタン67は、機械的なボタンではなく、患者側表示部21に表示された画面上でタッチされるボタンである。以下の説明における「ボタン」についても、同様である。
【0033】
患者アプリは、トップ画面60を表示した後、終了操作があったか否かを判断する(S103)。患者16は、患者アプリを起動した後に、必要な事項の入力が完了したり、その他の何らかの事情で患者アプリによる操作を終了したりするとき、患者アプリを閉じるための操作を行なう。患者アプリは、トップ画面60を表示した後に患者から患者アプリを終了するための操作や処理があったか否かを判断する。患者アプリは、終了操作が「あり」と判断すると(S103:Yes)、動作を終了する(S104)。
【0034】
患者アプリは、終了操作が「ない」と判断すると(S103:No)、irAE領域64または選択表示領域65のタップなどの操作があったか否かを判断する(S105)。患者アプリは、操作があったと判断すると(S105:Yes)、その操作が「毎日のヘルスチェック」のボタン66のタップであるか否かを判断する(S106)。患者アプリは、S105において操作がないと判断すると(S105:No)、S102にリターンし、トップ画面60の表示を継続する。
【0035】
患者アプリは、S106において、「毎日のヘルスチェック」のボタン66のタップであると判断すると(S106:Yes)、図7に示すようなヘルスチェック入力画面70を患者側表示部21に表示する(S107)。ヘルスチェック入力画面70は、入力表示領域71、完了ボタン72およびキャンセルボタン73を含んでいる。入力表示領域71は、「毎日のヘルスチェック」で入力される、体温欄74、体重欄75および血圧欄76を含んでいる。また、ヘルスチェック入力画面70は、日付の表示欄77も含んでいる。
【0036】
患者アプリは、患者16によってヘルスチェック入力画面70の体温欄74、体重欄75または血圧欄76がタップされると、図示しない入力パッドなどを表示し、患者16の入力日における体温、体重、ならびに血圧の最高値および最低値の入力を受け付ける。患者アプリは、受け付けた体温、体重および血圧のデータを保存する(S108)。これら体温、体重および血圧のデータは、入力日に関連付けられて、患者側装置11の記憶部24に保存される。この場合、これらのデータは、通信ネットワーク15を経由してサーバ装置12の記憶部31に同期して保存してもよい。
【0037】
患者アプリは、完了ボタン72がタップされたか否かを判断する(S109)。患者アプリは、完了ボタン72がタップされると(S109:Yes)、データの入力の受付を完了し、S103へリターンする。また、患者アプリは、完了ボタン72がタップされないと(S109:No)、S107にリターンし、データの入力の受付を継続する。なお、患者アプリは、ヘルスチェック入力画面70に表示されたキャンセルボタン73が患者によってタップされると、入力されたデータを保存することなくS102へリターンする。
【0038】
患者アプリは、S106において図6に示すトップ画面60の「毎日のヘルスチェック」のボタン66がタップされていないと判断すると(S106:No)、irAE領域64がタップされたか否かを判断する(S110)。irAE領域64は、上述のように投薬による副作用に関する情報を表示および入力する領域である。具体的には、irAE領域64は、例えば1週間などの期間で時系列的に副作用の有無を表示する。また、irAE領域64が患者16によってタップされると、患者アプリは患者16の最新の状態の入力を受け付ける。すなわち、患者アプリは、irAE領域64がタップされたと判断すると(S110:Yes)、図7に示すようなヘルスチェック入力画面70を患者側表示部21に表示する(S111)。ヘルスチェック入力画面70は、上述のS107で表示したものと同一である。患者アプリは、S107およびS108と同様に、ヘルスチェック入力画面70から入力された体温、体重および血圧のデータの入力を受け付けるとともに、これらのデータを保存する(S112)。データの保存についても、S108で説明した通りである。
【0039】
患者アプリは、S111でヘルスチェック入力画面70の表示およびデータの入力を受け付けるとともに、S112で入力されたデータを保存すると、完了ボタン72がタップされたか否かを判断する(S113)。患者アプリは、完了ボタン72がタップされると(S113:Yes)、図8に示すように投薬日入力画面80を患者側表示部21に表示する(S114)。投薬日入力画面80は、回答選択領域81およびキャンセルボタン82を含んでいる。回答選択領域81は、「今日は投薬日ですか?」という質問の表示83に対し、「はい」または「いいえ」の回答を表示する。患者16は、これら「はい」のボタン84または「いいえ」のボタン85をタップすることにより、投薬日の質問に対する回答を入力する。
【0040】
患者アプリは、投薬日入力画面80を表示すると、「はい」のボタン84がタップされたか否かを判断する(S115)。患者アプリは、「はい」のボタン84がタップされると(S115:Yes)、「はい」の回答に基づいて投薬日であることを保存する(S116)。一方、患者アプリは、「はい」のボタン84がタップされないと(S115:No)、「いいえ」のボタン85がタップされたか否かを判断する(S117)。患者アプリは、「いいえ」のボタン85がタップされると(S117:Yes)、「いいえ」の回答に基づいて投薬日でないことを保存する(S118)。投薬日であること、または投薬日でないことを示すデータは、入力日に関連付けられて、患者側装置11の記憶部24に保存される。この場合、これらのデータは、サーバ装置12の記憶部31に同期して保存してもよい。患者アプリは、「いいえ」のボタン85がタップされないと(S117:No)、S114にリターンし、投薬日入力画面80を表示して、「はい」または「いいえ」の回答が入力されるまで待機する。なお、患者アプリは、投薬日入力画面80に表示されたキャンセルボタン82が患者16によってタップされると、入力されたデータを保存することなくS111へリターンする。この場合、患者アプリは、S102など、他の処理にリターンしてもよい。
【0041】
患者アプリは、S116またはS118において投薬日入力画面80への回答を保存すると、図9に示すように設問画面90を患者側装置11の患者側表示部21に表示する(S119)。設問画面90は、「設問」の表示欄91、および「次へ」のボタン92を含んでいる。患者アプリは、設問画面90の表示欄91に表示した複数の「設問」に対する患者からのタップを受け付ける。患者アプリは、「次へ」のボタン92が患者によってタップされると、次の設問画面90に移行する。
【0042】
設問画面90は、本実施例の場合、34ページが用意されており、ページ領域93に「1/34」、「2/34」、・・・「34/34」のように現在のページが表示される。設問画面90は、例えば図9に示すような「日常生活」に関する画面、図10に示すような「症状」に関する画面、図11に示すような「筋力低下」に関する画面、および図12に示すような「お知らせ」に関する画面など、「設問」の内容にあわせて複数のページが用意されている。患者16は、設問画面に90含まれている「次へ」のボタン92をタップすることにより、設問画面90のページを次へ送ることができる。
【0043】
患者16は、設問画面90の表示欄91に表示される各「設問」を確認し、「設問」に該当する欄をタップすることにより、「設問」に対して順に回答していく。患者アプリは、患者16によって「設問」がタップされると、当該「設問」の欄にその旨を示す「レ」点を表示する。また、患者16は、設問画面90に含まれている「戻る」のボタン94をタップすることにより、設問画面90のページを戻すことができる。患者アプリは、この設問画面90に表示された「設問」への回答を受け付ける。さらに、患者16は、設問画面90に含まれる「キャンセル」のボタン95をタップすることにより、「設問」への回答を中止することができる。患者アプリは、いずれかの設問画面90を表示しているとき、「キャンセル」がタップされると、それまでの入力された回答を保存することなくS119にリターンし、再び「1/34」ページの設問画面90を表示する。
【0044】
患者アプリは、図12に示すように設問画面90の最後である「お知らせ」のページまで到達すると、このページに含まれている「完了」のボタン96がタップされたか否かを判断する(S120)。患者アプリは、「完了」のボタン96がタップされると(S120:Yes)、患者16からの「設問」に対する回答に基づいて、患者16の症状を分析する(S121)。患者アプリは、複数の設問画面90で患者16から受け付けた「設問」への回答に基づいて、「設問」の重要度、および患者16の個性値Pに相関する閾値Vbを参照して、患者16の症状を分析する。患者アプリが複数の設問画面90で表示する「設問」は、例えば患者16の個性、疾患の種類および症状などの関係なく、すべての患者16に共通の一般的なものとして設定されている。そこで、患者アプリは、患者16の疾患や投薬される薬品の種類、および投薬の有無などに応じて、各「設問」に対して複数の重要度Ivを設定している。そして、患者アプリは、患者16の個性値Pに応じて「設問」対する回答の閾値Vbを設定し、「設問」の重要度Ivと、その「設問」に対する回答の閾値Vbを用いて、患者16の症状程度Ssを判断する。
【0045】
詳細には、患者アプリは、個性値設定部51によって、サーバ装置12に蓄積されている患者16から受けた回答の頻度や傾向から、患者16の個性値Pを設定する。そして、患者アプリは、閾値設定部52によって、個性値Pに基づく閾値Vbを設定する。患者アプリは、症状判断部53において、個性値Pおよび閾値Vbに基づいて、S119における「設問」に対し患者16から入力された最新の回答から、患者16の症状程度Ssを分析する。このとき、患者アプリは、S115~S118で確認した投薬日も参酌する。このように、患者アプリの症状判断部53は、患者16の過去の回答傾向や頻度などから個性値Pおよび閾値Vbを設定するとともに、最新の回答から患者16の症状程度Ssを判断する。患者アプリは、S120において、「完了」のボタン96がタップされないと(S120:No)、「完了」のボタン96がタップされるまで待機する。
【0046】
患者アプリは、S121における患者16の症状の分析の結果、投薬にともなう副作用が生じているおそれがあるか否かを判断する(S122)。そして、患者アプリは、副作用が生じている可能性が「ある」と判断したとき(S122:Yes)、「設問」に対する回答を保存するとともに(S123)、患者側装置11の患者側表示部21にその旨を表示する(S124)。一方、患者アプリは、副作用が生じている可能性が「ない」と判断したとき(S122:No)、図13に示すように通知画面100を通して患者側装置11の患者側表示部21にその旨を表示する(S125)。これにより、患者アプリは、患者16に対して、投薬による副作用が生じているか否かを通知する。また、患者アプリは、副作用が生じている可能性が「ある」と判断したとき、「設問」に対する回答を記憶部24に保存する。このとき、「設問」に対する回答は、サーバ装置12の記憶部31にも保存される。サーバ装置12に保存された回答は、後述の「医療従事者確認処理」で説明するように医療従事者17が医療側装置13から確認可能である。
【0047】
患者アプリは、S124またはS125で患者側表示部21を通して患者に通知した後、その通知画面100に含まれる「戻る」のボタン101がタップされたか否かを判断する(S126)。患者アプリは、「戻る」のボタン101がタップされたと判断すると(S126:Yes)、S102にリターンし、トップ画面60の表示以降の処理を継続する。また、患者アプリは、「戻る」のボタン101がタップされないと判断すると(S126:No)、「戻る」のボタン101がタップされるまで待機する。
【0048】
患者アプリは、S110において、図6に示すトップ画面におけるirAE領域64がタップされていないと判断すると(S110:No)、図示しないカレンダー画面を表示する(S127)。カレンダー画面は、日付および曜日が記載された画面である。患者アプリは、カレンダー画面を表示した後、S103にリターンし、その後の処理を継続する。
【0049】
(医療従事者確認処理)
医療従事者17は、任意の時期に医療側装置13を操作することにより、患者16の症状程度Ssを入手する。医療従事者17は、医療側装置13からサーバ装置12へアクセスすることにより、患者16の「設問」に対する回答を入手し、医療側表示部41に画面データに基づく症状程度Ssの診断画面46を表示させる。このとき、医療側表示部41は、図3に示すように画面データに基づく診断画面46を表示する。医療従事者17は、医療側表示部41に表示された診断画面46を用いて患者16ごとの症状程度Ssを確認することにより、患者16への助言および通知の必要性や診断の必要性を判断する。この画面データに基づく診断画面46は、患者16ごとの症状程度Ssを視覚的に確認可能となっている。
【0050】
以上説明した一実施形態による在宅医療支援システムは、患者16から受け付けた「設問」に対する回答に基づいて患者16の個性を示す個性値Pを設定し、この個性値Pから「設問」に対する回答の重み付けを判断するための閾値Vbを設定している。そのため、特定の患者16に対し、複数の患者16に共通する一般的な「設問」を与えたときでも、この特定の患者16からの「設問」に対する回答から、特定の患者16に特有の症状程度Ssが判断される。すなわち、患者16の回答の傾向や頻度から個性値Pが設定され、この個性値Pに基づいて「設問」に対する回答をどの程度重視するかの閾値Vbが設定される。また、「設問」は、一般的なものであっても、例えば個別の患者16の疾病、疾患、病状、投薬状況などを総合的に考慮して重要度Ivが設定されている。そのため、複数の患者16に共通する一般的な「設問」を与えたときでも、「設問」に対する回答の重要度Ivは、患者16ごとに異なる。
【0051】
症状判断部53は、これら個性値P、閾値Vbおよび「設問」に対する回答の重要度Ivに基づいて、患者16から最新の回答があると、この患者16の症状程度Ssを判断する。これにより、医療従事者17は、この症状程度Ssを用いて、例えば患者16の診察の必要性、患者16への電話などを用いた助言の必要性など、患者16の回答にあわせた対応を検討することができる。この場合、医療側装置13は、医療側表示部41に患者16ごとの症状程度Ssを診断画面46として表示する。そのため、医療従事者17は、医療側表示部41を通して、患者16の症状程度Ssの一覧を視覚的に認識することができる。一方、患者16は、自身が所持する携帯端末14を利用して「設問」に回答するだけで、自身の症状程度Ssを主治医などの医療従事者17に伝えることができる。そのため、多忙な医療従事者17に例えば電話で直接接触したり、医療機関18へ出向いて診察を受けたりする必要はない。したがって、在宅で治療する患者16の個性に応じて患者16の体調および症状を容易に把握することができ、医療従事者17および患者16の不安を軽減することができる。
【0052】
一実施形態では、患者16としてガン患者を対象とすることができる。近年の医療の進歩にともない、ガンの治療は、手術をともなう長期的な治療から、在宅での服薬による治療に移行しつつある。反面、ガンの治療に用いる薬品は、強い副作用など患者16の肉体的および精神的な負担が大きくなることがある。このように患者16の負担をともないやすいガンの治療に対して本実施形態を適用することにより、医療従事者17は、患者16の症状程度Ssを投薬日も含めて容易に確認することができる。また、患者16は、任意の時期に、携帯端末14で実行する患者アプリを通して、「設問」に回答するだけで、自身の体調および症状を医療従事者17に伝えることができる。したがって、特に服薬によるガンの治療において、医療従事者17および患者16の不安を軽減することができる。
【0053】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
図面中、10は在宅医療支援システム、11は患者側装置、12はサーバ装置、13は医療側装置、21は患者側表示部、22は入力部、41は医療側表示部、46は診断画面、51は個性値設定部、52は閾値設定部、53は症状判断部、54はデータ作成部を示す。
図1
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