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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061132
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】植物の成形ケースと栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/06 20060101AFI20230424BHJP
   A01G 22/05 20180101ALI20230424BHJP
【FI】
A01G7/06 E
A01G22/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170938
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】521368740
【氏名又は名称】山本 利輔
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】山本 利輔
(72)【発明者】
【氏名】住友 宏次
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AA03
2B022AB15
2B022FA04
(57)【要約】
【課題】植物を成形栽培する器具であって、従来の栽培器具の問題点であった組み立て作業性、コスト、生産歩留り等を改善して、大量に効率良く栽培することを可能にした栽培器具を提供する。
【解決手段】複数のケース2、3で構成され、複数のケース2、3を組み合わせたとき特定の形状の空間を形成し、複数のケース2、3を組み合わせたとき植物の茎を通す孔と通路14、31が形成され、通路14、31内には植物の茎とヘタの格納部15、32、33を設け、格納部15、32、33に植物の茎とヘタを置いたときヘタにつながる植物の幼果は特定の形状の空間内に位置し、複数のケース2、3それぞれの両端に突起部6~11及び22~29を設け、複数のケース2、3を組み合わせたとき突起部6~11及び22~29同士が重なり千鳥配列状に配置され、突起部6~11及び22~29を固定具4、5で結合することにより複数のケース2、3を一体化し、その状態で栽培成長させ、特定の形状に成形された果実を収穫する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の形を特定の形状に成形するため幼果を包んで栽培する植物の成形ケースであって、
複数のケースで構成され、
複数の前記ケースを組み合わせることで特定の前記形状に空間を形成するものであり、
複数の前記ケースを組み合わせたとき、一端に前記植物の茎を通す孔と通路が形成され、前記通路内に前記植物の前記茎とヘタとを配置する格納部を設け、
前記孔を通して前記格納部に前記茎と前記ヘタを配置したとき前記ヘタにつながる前記幼果は前記空間内に位置し、
複数の前記ケースそれぞれの側部に突起部を設け、複数の前記ケースを組み合わせたとき互いに対向する前記側部の前記突起部同士を固定具で結合することにより前記複数のケースを一体化させることを特徴とする植物の成形ケース。
【請求項2】
前記突起部は半円弧形状であり、
複数の前記ケースを組み合わせたとき互いに対向する前記側部の前記突起部同士は千鳥配列状になるよう配置され、
前記突起部同士を組み合わせた状態では、前記成形ケースを長手方向から見ると中心に略円筒の孔を形成し、
前記固定具を前記孔に貫通させることにより前記突起部がヒンジになり、複数の前記ケースが前記ヒンジにより回動することで開閉自在になり、
前記ヒンジを形成する前記突起部のうち一部に、回動する角度を規制して全開させないための突起爪を付けることを特徴とする請求項1に記載の植物の成形ケース。
【請求項3】
前記茎を通す前記孔を小判状の長孔とし、前記長孔を横径と縦径の長さ比率が1:1.2~1.5の範囲としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物の成形ケース。
【請求項4】
複数の前記ケースの内面には、内側一周に渡り連続した小突起状のガイドを設け、
前記幼果が肥大成長したとき前記ガイドによって植物外皮の一周均等に前記ガイドによる凹みが転写され、
前記凹みに合わせて前記植物を切断したとき前記植物の長手方向と垂直な切断面が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の植物の成形ケース。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の成形ケースを用いた植物の育成方法であって、畑等で栽培中の前記植物の前記幼果と前記幼果につながる枝の先端部に前記成形ケースを、前記幼果が前記空間に納まるよう取り付け、複数の前記ケースを前記固定具で結合して前記幼果を栽培し、前記栽培の過程で前記幼果が前記空間に合わせて成形されることを特徴とする植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長前の植物の幼果に装着し植物を所望の形状に成形しながら栽培する成形ケースと栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜や果物などの植物に対して、特殊な矯正器具や容器に入れて所望の形状になるよう栽培する手法が従来から行われている。胡瓜を真直ぐになるよう円筒状の矯正器具に入れて栽培する方法、メロンなど球状の果実を角型形状の容器に入れて栽培する方法、果実をハート型や星型など意匠的価値がある形状の容器で栽培する方法などが考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-72175号公報
【特許文献2】実用新案登録第3186786号公報
【特許文献3】特許第6457220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物を所望の形状に成形栽培する先行技術として、特許文献1のように圧迫板を組み合わせて金属の支持部品にナットを締めて固定する果実の成型栽培装置がある。様々な形状の圧迫板と複数の支持部品を組み合わせ任意の形状を作ることができる。また果実の成長過程に合わせて成型サイズを調整できる構造になっている。このように汎用性がある装置になっているが、果実1個に対して組み立て調整の時間と手間がかかり、装置も複雑になるため、1個から数個程度の栽培には適しているが、大量の栽培に使用することは現実的でない。
特許文献2に記載のレモン栽培容器は、ハート型、星型、クローバー型などの断面形状のレモンを栽培するため、分割された一対の型を合わせることで所望の断面形状の空間を形成する。レモンの木の成長前の幼果を一対の容器で挟み込んで、外部から固定バンドで容器全体を締め付け固定する。固定バンドは金属製で2箇所に掛けて締めることによりレモンの肥大化を抑えて容器に合わせて成形することができる。また固定バンドで肥大化する力を抑制するため容器本体は薄く軽量化できるとしている。また容器を軽量化することにより、レモンの幼果に取り付けた容器は他の支え手段なしで、吊り下げることができるとしている。
特許文献2では金属の固定バンドを2箇所に使用しているが、再利用可能な固定バンドは高額でありレモン1個の成形に対するコスト負担が大きい。安い使い捨てタイプもあるが、毎シーズン大量の廃棄物を出すことになる。またレモン1個の容器に対して固定バンドを2回取り付ける作業は、数千~数万個の数になると大変な労力を要する。
レモンなどの柑橘類は茎(枝)、ヘタ(ガク)を介して幼果が成長するが、ヘタと幼果の部分は栽培過程で次第に肥大化する。特許文献2ではレモンの枝を通過させる孔を通してヘタと幼果を容器内に入れた状態で吊り下げるが、幼果が大きくなる過程で孔にヘタの部分が食い込みレモンの延びる方向が不適切になったり、ヘタの部分から腐って果実が落ちたりする不具合が生じる場合がある。
特許文献3は、植物を成形する容器を3枚のプレートを3箇所で結合する構成で、2箇所の結束部はヒンジ構造になっておりプレート同士を嵌め込み嵌合させる。その他1箇所は開閉自在で植物を容器に収めて閉じた状態で突出部の間にピンを通して固定するもので、ナット・ボルトなど手間のかかる固定手段を用いない容器になっている。この方法によればピンを差すだけで容器に収納固定できるので作業を短時間で容易にできる。
しかしこの例では2箇所の結束部が嵌め込み構造であり、植物の成長による内圧が強い場合は嵌合が外れる問題がある。キュウリやズッキーニなどの細長い植物には適しているが、柑橘など球状に成長する植物では単位面積あたりの圧力が強く嵌め込みでは耐えられない。補強のため結束部の軸に金属シャフトを通す方法もあるが、重量が重く構造が複雑になり容器の価格も高くなる。
これらの従来技術は、総じて少量の栽培や家庭菜園にて趣味の栽培をする用途に限られ、農業生産者が大量に栽培する場合には適していなかった。農業生産者向けの栽培器具であったとしても作業性が悪く、大量栽培に使用するには課題が多いものであった。大量栽培のためには大量の容器が必要であり、単価を安くする他に何年も繰り返し使用できないと投資対効果が得られない。1シーズンを通して風雨に晒されると汚れが付着し、そのまま使うと植物に汚れが転写するためシーズン毎に洗浄しなければならない。洗濯機等での洗浄を考えると乱雑に扱っても壊れない堅牢性が求められる。
【0005】
本発明は、従来の成形栽培用の器具の問題点を解決し、大量に効率良く栽培することを目的として、植物への着脱作業を短時間で容易に実現し、かつ歩留りの良い栽培ができる安価で頑丈な成形ケースと、本発明の成形ケースを使用した植物の栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、植物を特定の形状に成形するため幼果を包んで栽培する成形ケースであって、複数のケースで構成され、複数のケースを組み合わせたとき、特定の形状に空間を形成する。複数のケースを組み合わせたとき、一端に植物の茎を通す孔と通路が形成され、通路内には植物の茎とヘタとを置くそれぞれの格納部を設け、格納部に茎とヘタとを置いたときヘタにつながる幼果は空間内に位置し、複数のケースそれぞれの側部には突起部を設け、複数のケースを組み合わせたとき対向する側部の突起部同士を固定具で結合することにより複数のケースを一体化させることを特徴としている。
複数のケースを組み合わせたとき対向する突起部同士は千鳥配列状に配置され、長手方向に中心に略円筒の孔を形成し、固定具を孔に貫通させることで突起部がヒンジの役割を果たし、ヒンジが回動することでケースが開閉可能になる。全ての突起部に固定具を通すことで複数のケース同士が固定される。また突起部のうち一部に回動する角度を規制して全開させないための突起爪を付けることを特徴としている。
幼果につながる茎を通す孔は、幼果が成長する過程で姿勢が偏らないようある程度の自由度を持たせる必要があり、一方で成形ケースが幼果を保持して落下しないようにするため大き過ぎない孔にしなければならない。そのため孔形状を小判状の長孔にし、長孔の横径と縦径の長さ比率は1:1.2~1.5の範囲の長孔にすることを特徴としている。
成形ケースの内面には内側周方向に連続した小突起状のガイドを設け、幼果が肥大成長したときに植物外皮の一周均等にガイドによる凹みが転写されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の成形ケースによると、複数のケースを組み合わせ、その中に幼果を入れて固定具を付けることで簡単確実に植物の成形が可能になる。複数のケースはそれぞれ単体の部品であり固定具による固定のみで成形ケースとして組むことができて、複雑な嵌合部などを持たない簡単な構造なので、短時間で組み立て易い特徴を持つ。
成形ケースの部品は繰り返し使うことを前提としており、突起部の数を少なくし、突起部は高さを低く肉厚にすることで壊れにくい構造にする。未使用時に大量のケースを積み重ねて倉庫に保管すること、洗濯機でまとめて洗浄することのような雑な取り扱いにも耐えられる。
複数のケースそれぞれには植物の茎を通す孔と通路の一部が形成されており、ケースを組み合せたとき通路が完成し、植物の茎、ヘタ、果実本体を配置する場所をそれぞれ設けている。使用時の形態は、幼果にケースを入れて茎から吊り下げるため、幼果の自重によりヘタと幼果の接続部に負荷がかかることになるが、茎とヘタを通路の指定場所に位置決めすることによりヘタの負担を緩和し果実の落下を防止する効果がある。
また茎を通す孔は、茎の外径ばらつきを吸収するため茎の外径から少し余裕を取った大きさにしている。通常ヘタの部分は茎より外径が大きくなっており、吊り下げたときヘタとヘタにつながる幼果の先端が孔に食い込む可能性がある。幼果とヘタは成長するため孔に食い込んだ状態で肥大化したとき孔のエッジでヘタ部分が傷付き、中の果実が腐ってしまう場合がある。茎とヘタを配置する場所をそれぞれ設け、茎とヘタを指定場所に位置決めすることによりヘタの孔への食い込みを防ぎ、成長する果実が腐る問題を解決できる。
更に茎を通す孔は丸い孔ではなく小判状の長孔にする。孔を単純に丸く拡張するとヘタ部が孔に食い込む恐れがあり、小さくして茎の動きの自由度を制限すると、幼果が成長する過程で成形ケース内側のある方向に偏った状態で成長し、外観不良の成形品ができてしまう。適度な比率の長孔にして一方向に自由度を持たせることにより幼果が成長する過程で、ケース内の一部に偏ることを防ぎ、最適な方向へ伸ばしてきれいな外観の果実を得ることができる。また孔の大きさを必要最小限にすることで雨、ごみ、虫などの侵入を防ぎ果実の品質を守る効果がある。
複数のケースを組み合わせて、その一部の突起部に固定具を取り付けるとヒンジが形成されケースが回動可能になる。これにより幼果をケース内に入れて、ケースを閉じる操作が片手で簡単にできる。また回動するケースが開き過ぎて外れることを防止するため、突起爪を設けて一定角度以上に開かない構造にしている。
成形ケースの内側に一周均等に小突起を形成する。幼果が成長し肥大化したとき、果実の表皮に小突起による凹みが形成される。果実の端面から均等な距離に一周に渡る凹みになっており、この凹みをガイドにして果実を切断すると長手方向に垂直な断面で切断することができる。またこの凹みを所定の距離で隣接して複数形成し、切断すると所定の幅できれいな断面の果実片を切り出すことが可能になる。
このような機能を持った成形ケースの所定の位置に幼果を配置し、固定具を取り付けて成形ケースを固定し、幼果と成形ケースを茎から吊り下げた状態にして、その他は特別の作業をせず通常の果実と同様に栽培することによって、成形ケース内面の特定の形状に成形された果実を大量に作ることができる。
また収穫時の作業は、固定具を手で引き抜くだけで成形ケースを簡単に外すことができるので、果実の収穫と成形ケースの回収を短時間で同時に容易に実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】植物の成形ケースを組み立てた状態を表した外観図
図2】植物の成形ケースを部品に分解した展開図
図3】植物の成形ケースの構成部品である上ケースの外観図
図4】植物の成形ケースの構成部品である上ケースの内面図
図5】植物の成形ケースの構成部品である上ケースの内面を別角度から図示
図6】植物の成形ケースの構成部品である下ケースの外観図
図7】植物の成形ケースの構成部品である下ケースの内面図
図8】植物の成形ケースの構成部品である下ケースの内面を別角度から図示
図9】植物の成形ケースの構成部品である下ケースの茎を通す通路部分の拡大図
図10】植物の成形ケースの構成部品である下ケースに幼果を装着し、上ケースを片側のヒンジだけ取り付け開いた状態の図
図11】植物の成形ケースに幼果を装着した図
図12】従来技術による成形ケースに幼果を装着した状態の図
図13】植物の成形ケースの構成部品である下ケースと上ケースの突起爪がある側のヒンジ部に固定具を取り付け、上ケースが回動して突起爪により停止した状態の図
図14図13において幼果を装着した状態の図
図15図14の状態から下ケースと上ケースを合わせて二箇所のヒンジ部に固定具を取り付けた状態の図
図16】植物の成形ケースの構成部品である下ケースにレモンの幼果を置いた状態の写真
図17】レモンの幼果に植物の成形ケースを装着した状態の写真
図18】複数のレモンの幼果に植物の成形ケースを装着した状態の写真
図19】植物の成形ケースの六面図
図20】植物の成形ケースの構成部品である上ケースの六面図
図21】植物の成形ケースの構成部品である下ケースの六面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について図を用いて説明する。図1は本発明の成形ケース1を組み立てた完成形を示す。成形ケース1は射出成形金型を使い樹脂成形することで自由な形状を作ることができる。また樹脂の種類を選択して成形ケース1を透明や色付きにすることもできる。ポリカーボネートやABS等を選択すると、透明になり内部が見えるようになる。この実施形態では成形される断面形状をハート型にしているが、他の三角形、四角形、星形など、所望の形状に合わせた成形ケース1にデザインできる。本実施形態の例では、成形ケース1は2分割で構成しているが、断面形状によって3分割以上が適する場合もある。
【0010】
図2図1の成形ケース1を部品に展開した図である。成形ケース1は上ケース2と下ケース3の二つのケースで構成され、上下ケース2、3を固定具4と固定具5で固定して形成する。固定具4、5は直線の金属棒やプラスチック製の棒で一方の端に抜け止めが付いている。専用の棒を作っても良いが、寸法が合う市販の針金を切って一端を少し曲げて使用すると低コストで実現できる。
【0011】
図3は上ケース2を上から見た外観図である。上ケース2の一方の側部には上ケース突起爪6、7、8を設け、上ケース2の他方の側部には上ケース突起部9、10、11を設けている。上ケース突起爪6、7、8と上ケース突起部9、10、11とは、下ケース3と組み合わせたときヒンジを構成する。また上ケース突起爪6、7、8はヒンジを構成したとき上ケース2の回動をある角度で制限する役割も持っている。上ケース水抜き孔12、13は成形ケース1内に溜まる水分を排出する。上ケース通路14は茎とヘタを格納する通路の一部を形成する。上ケース第1格納部15は茎を通す孔と通路を形成する。上ケース補強リブ18、19、20は3箇所で上ケース2を補強する。これらの上ケース補強リブ18、19、20は上ケース2本体と同程度の高さに抑え、強度アップしながら他の下ケース3と接触するときの干渉を少なくし、また上ケース2同士を重ねたとき隙間が小さくなる構造にしている。目盛46は上ケース2の長手方向に付けられており、透明ケースの場合は中の果実の長さが測定できる。
【0012】
図4は上ケース2の内面を図示している。上ケース成形面16は、果実が成長して接触する成形面となり、果実はこの面の形状に沿って成形される。上ケースカットガイド39、40は上ケース2の内面に設けられ連続した小突起になっており、下ケース3の同じ位置にも連続した小突起を設け、果実が成長して上ケースカットガイド39、40の位置まで肥大化すると小突起に当たる部分に凹みができる。上ケース後端補強リブ21は茎につながる果実の後端側の補強リブで、この面は全面をカバーせず部分的なカバーで補強リブの役割を持たせる。
【0013】
図5は上ケース2の内面を図4と反対側から図示している。上ケース先端成形面17は、果実が成長する過程で茎につながる先端部分を平面状に成形するためのもので、下ケース3と組み合わせたとき茎を通す孔を除いて一体の平面を形成する。
【0014】
図6は下ケース3の外観図である。下ケース3の両側部には下ケース突起部22、23、24、25、26、27、28、29を設けている。下ケース突起部22、23、24、25は上ケース2と組み合わせたときに上ケース突起爪6、7、8とともにヒンジを構成する。上ケース2と下ケース3とを組み合わせたときには、上ケース突起爪6、7、8と下ケース突起部22、23、24、25とは千鳥配列状になるよう配置される。下ケース突起部26、27、28、29は上ケース2と組み合わせたときに上ケース突起部9、10、11とともにヒンジを構成する。上ケース2と下ケース3とを組み合わせたときには、上ケース突起部9、10、11と下ケース突起部26、27、28、29とは千鳥配列状になるよう配置される。下ケース水抜き孔30は成形ケース1内に溜まる水分を排出する。下ケース通路31は下ケース3側の茎とヘタを格納する通路の一部を形成する。下ケース補強リブ36、37は下ケース3の強度アップを目的としており、高さは低く抑えて下ケース3同士を重ねたとき隙間を小さくして保管時に邪魔にならない構造にしている。
【0015】
図7は下ケース3の内面を果実の茎側から見た図である。下ケース第1格納部32は下ケース3側の茎を通す孔と通路を形成する。下ケース第2格納部33には茎と茎につながるヘタを格納する。下ケース成形面34は果実が成長して接触する成形面となり面の形状に沿って成形される。下ケース後端補強リブ38は茎につながる果実の後端側の補強リブで、この面は全面をカバーせず上ケース後端補強リブ21と組み合わせて、部分的なカバーで補強リブの役割を持たせる。下ケースカットガイド41、42は下ケース3の内面に設けられ連続した小突起になっている。上ケースカットガイド39、40と合わせて一周に渡る凹みを形成する。
成形された果実を購入した消費者は、果実を薄くカットして、見映えの良い断面形状にしたい要望がある。上下ケース2、3のカットガイドによる果実の凹みに合わせてカットすることで長手方向に垂直な断面を得ることができる。一度カットした後は、その切断面から一定距離ずらしてカットすればよい。
【0016】
図8は下ケース3の内面を図7と反対側から図示している。下ケース先端成形面35は、上ケース先端成形面17と組み合わせて一体の平面を形成し、果実の茎につながる先端部分を平面状に成形する。ここでヘタは下ケース第2格納部33に配置され、果実のその他の先端部分を平面状に成形することができる。
【0017】
図9は下ケース3の一部を示す。下ケース通路31、下ケース第1格納部32、下ケース第2格納部33を拡大している。図9のように下ケース第1格納部32は茎を通す程度の寸法で、下ケース第2格納部33はヘタが位置し肥大化する空間を確保している。この構造によるとヘタにつながる果実の面が下ケース第2格納部33の端面で規制されるため、ヘタが下ケース第1格納部32に食い込む不具合はない。
【0018】
図10は下ケース3に果実(レモン)を置いて、上ケース2の片側のヒンジを固定具4で固定して開いた状態を示す図である。レモンは、レモンの本体43、レモンのヘタ44、レモンの茎45を有する。茎45は下ケース第1格納部32に置かれ、ヘタ44は下ケース第2格納部33に置かれている。本実施形態で例示する植物はレモンを用いているが、他にりんご、梨、ナス、ミカンなどの球体に近い形に成長する果実でも同様に使用することが可能である。
【0019】
図11はレモン43を成形ケース1に入れケースを閉じて固定具4、5を取り付け茎45が孔から出ている状態を示す。上ケース2と下ケース3を組み合わせて両端2箇所のヒンジ部に固定具4、5を挿入している。固定具4、5は単に突き刺しているだけで片端に抜け止めを付けて固定しており、引き抜くことで容易に開放できる。茎45を通す孔は長孔になっており、図19の正面図がより分かり易いが、長孔は上ケース第1格納部15と下ケース第1格納部32の組み合わせで形成されている。成形ケース1を正面から見たとき上下左右のなかで長孔の上方にハートのエッジがある。木の枝や茎の伸び方によっては幼果の成長過程の早い段階で上方のエッジ側に偏って配置される場合がある。このとき茎45の動きが孔によって規制されていると、幼果は偏った配置で固定されてしまう。このため、幼果の段階で不適切な位置にエッジが食い込み、最終の完成形がいびつになる。上下方向に長孔にして幼果の上下方向の動きに自由度を与えると、負荷がかからない方に幼果が動き、成長過程でエッジの位置が修正される。
【0020】
図12は従来技術による成形ケース1である。本発明の特徴である茎45やヘタ44の格納部は設けていない。図12ではレモンを装着しているが、茎45を通す孔にヘタ44が接近し接触する状態になってしまう。実際にレモンの木に成形ケース1を装着すると、成形ケース1とレモン本体43が茎45から吊り下げられる形になる。レモン43が幼果の場合、ヘタ44も外径が小さいので個体差により孔に食い込むものがある。孔に食い込んだまま肥大化するとヘタ44部分に孔のエッジが食い込んで外皮が裂けて果実の腐敗や落下の原因になる。本発明の図9の構造にすれば、この問題は解決できる。
【0021】
図13は上ケース2と下ケース3を組み合わせて、片側に固定具4を挿入した状態を示す。上ケース突起爪6、7、8で規制される状態まで上ケース2を開いている。この状態は片手で固定・保持できるので、もう一方の手でレモンを掴み、図14のようにケース内にレモンを装着する作業が容易になり作業効率が良くなる。レモンを装着した後は、図15のように上ケース2を被せてもう一方の固定具5を挿入して作業が完了する。
【0022】
図16は下ケース3にレモンの幼果を置いた写真で、レモンの茎45が下ケース第1格納部32に配置され、ヘタ44とヘタ44につながるレモン本体43が下ケース第2格納部33に配置されている状態を示す。レモンは、成形ケース1に装着され、図17の写真のように木から吊り下げられた状態で栽培される。図18は一本の木に複数の成形ケース1を装着した状態の写真である。
本発明の成形ケース1は茎45から吊り下げても茎45が耐えられる重量と、成形ケース1内で幼果から成長するときの内圧に耐えられる構造を実現できており、茎を通す長孔を必要最小限の大きさにして雨水、ごみ、虫などの侵入を防ぎ、黒点病など柑橘の病気を予防できる。レモンなどの柑橘は木にとげがあり、自身のとげで果実を傷付けて、外観を損ねる。成形ケース1はとげによる傷も防止できる。
成形ケース1をポリカーボネートなどの透明な樹脂にすると、果実が成長して成形される過程を外から監視できる。上ケース2に付けた目盛46で果実の成長具合を確認し、予め決めた長さになったら固定具4、5を引き抜いて上下ケース2、3を開放し果実を収穫する。また固定具4、5、上ケース2、下ケース3を回収し、まとめて洗浄し次のシーズンまで保管する。上ケース2、下ケース3をそれぞれ重ねて保管することで収納場所を小さくできるので数万個の規模でも容易に保管できる。
【0023】
図19は本発明による植物の成形ケース1の六面図であり、図19(a)は正面図、図19(b)は背面図、図19(c)は右側面図、図19(d)は左側面図、図19(e)は平面図、図19(f)は底面図である。
【0024】
図20は本発明による植物の成形ケース1を構成する上ケース2の六面図であり、図20(a)は正面図、図20(b)は背面図、図20(c)は右側面図、図20(d)は左側面図、図20(e)は平面図、図20(f)は底面図である。
【0025】
図21は本発明による植物の成形ケース1を構成する下ケース3の六面図であり、図21(a)は正面図、図21(b)は背面図、図21(c)は右側面図、図21(d)は左側面図、図21(e)は平面図、図21(f)は底面図である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
農業生産者は、本発明の成形ケース1を用いて植物の幼果に装着し栽培することにより、所望の形状に成形された果実を得ることができる。成形ケース1は樹脂等の材料で作ることができるので、樹脂成形金型を用いて大量にケースを生産し、大量の成形果実を収穫することも可能になる。
【符号の説明】
【0027】
1 成形ケース
2 上ケース
3 下ケース
4、5 固定具
6、7、8 上ケース突起爪(突起部)
9、10、11 上ケース突起部(突起部)
12、13 上ケース水抜き孔
14 上ケース通路(通路)
15 上ケース第1格納部(格納部)
16 上ケース成形面
17 上ケース先端成形面
18、19、20 上ケース補強リブ
21 上ケース後端補強リブ
22、23、24、25、26、27、28、29 下ケース突起部(突起部)
30 下ケース水抜き孔
31 下ケース通路(通路)
32 下ケース第1格納部(格納部)
33 下ケース第2格納部(格納部)
34 下ケース成形面
35 下ケース先端成形面
36、37 下ケース補強リブ
38 下ケース後端補強リブ
39、40 上ケースカットガイド
41、42 下ケースカットガイド
43 レモン本体
44 レモンのヘタ
45 レモンの茎
46 目盛
図1
図2
図3
図4
図5
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