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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061139
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】排熱利用システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 27/02 20060101AFI20230424BHJP
   F25B 17/08 20060101ALI20230424BHJP
   F25B 9/14 20060101ALI20230424BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
F25B27/02 Z
F25B17/08 A
F25B9/14 A
F28D20/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170948
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩苔 翼
(72)【発明者】
【氏名】麻植 実
(72)【発明者】
【氏名】中村 宗広
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093LL01
(57)【要約】
【課題】排熱をより有効に利用することが可能となる排熱利用システムを提供する。
【解決手段】排熱利用システム11のケミカルヒートポンプ12は、化学蓄熱材HMが収容される蓄熱器21と、化学蓄熱材HMの脱水反応により生じた水蒸気を回収する回収器31とを備える。ケミカルヒートポンプ12は、化学蓄熱材HMと水和反応させる水蒸気を蓄熱器21に供給する蒸発器41を備える。排熱利用システム11の冷却装置13は、熱エネルギーと電気エネルギーとを変換するエネルギー変換装置51と、エネルギー変換装置51に電気的に接続された蓄電装置61とを備える。排熱利用システム11は、エネルギー変換装置51から冷却媒体を回収器31へ送る回収器冷却用流路L3と、放熱動作時に発生した熱を外部の加熱対象HTへ送る外部加熱用経路R1と、放熱動作時に発生した熱をエネルギー変換装置51へ送る内部加熱用経路R2とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケミカルヒートポンプと冷却装置とを備える排熱利用システムであって、
前記ケミカルヒートポンプは、蓄熱動作時に脱水反応し、放熱動作時に水和反応する化学蓄熱材が収容される蓄熱器と、
前記化学蓄熱材の脱水反応により生じた水蒸気を回収する回収器と、
前記化学蓄熱材と水和反応させる水蒸気を前記蓄熱器に供給する蒸発器と、を備え、
前記冷却装置は、
熱エネルギーと電気エネルギーとを変換するエネルギー変換装置と、
前記エネルギー変換装置に電気的に接続された蓄電装置と、を備え、
前記排熱利用システムは、
前記エネルギー変換装置から冷却媒体を前記回収器へ送る回収器冷却用流路と、
前記放熱動作時に発生した熱を外部の加熱対象へ送る外部加熱用経路と、
前記放熱動作時に発生した熱を前記エネルギー変換装置へ送る内部加熱用経路と、
を備える、排熱利用システム。
【請求項2】
前記エネルギー変換装置は、熱エネルギーと運動エネルギーとを変換する第1変換装置と、運動エネルギーと電気エネルギーとを変換する第2変換装置と、を備える、請求項1に記載の排熱利用システム。
【請求項3】
外部の熱媒体供給部から外部の冷却対象に熱媒体を送る外部冷却用流路を有し、前記外部冷却用流路は、前記回収器内を通過するように配置される、請求項1又は請求項2に記載の排熱利用システム。
【請求項4】
前記蓄電装置は、外部の電力供給対象に電気的に接続され、前記電力供給対象に電力を供給可能に構成される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の排熱利用システム。
【請求項5】
前記蓄電装置は、外部の余剰電力発生源に電気的に接続され、前記余剰電力発生源から供給される余剰電力を蓄電可能に構成される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の排熱利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルヒートポンプを備える排熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、工場等で発生する排熱の再利用に用いることのできる装置として、ケミカルヒートポンプが知られている。ケミカルヒートポンプは、蓄熱器と、回収器と、蒸発器とを備えている。蓄熱器には、脱水反応により蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が収容される。回収器は、化学蓄熱材の脱水反応により生じた蒸気を回収する。蒸発器は、化学蓄熱材の水和反応に用いる蒸気を生成する。このようなケミカルヒートポンプの回収器には、化学蓄熱材の脱水反応で生じた蒸気と水和反応する回収材が収容されることで、化学蓄熱材の脱水反応を容易に進行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-158299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケミカルヒートポンプを備える排熱利用システムでは、使用する排熱に対して出力する熱の割合、すなわち排熱の利用効率を高めることが重要である。ここで、上記のケミカルヒートポンプでは、回収器に収容される回収材を繰り返し使用するために、排熱を使用して脱水反応させる再生動作を行うことが必要となる。このような回収材の再生動作で排熱を使用することは、排熱の利用効率を低下させる一因となっている。また、例えば、排熱利用システムの放熱動作は、熱需要がない場合、停止させる必要がある。このような排熱利用システムの放熱動作の停止に伴って、排熱を利用できない時間が増加する。このように排熱をより有効に利用するという観点で未だ改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する排熱利用システムは、ケミカルヒートポンプと冷却装置とを備える排熱利用システムであって、前記ケミカルヒートポンプは、蓄熱動作時に脱水反応し、放熱動作時に水和反応する化学蓄熱材が収容される蓄熱器と、前記化学蓄熱材の脱水反応により生じた水蒸気を回収する回収器と、前記化学蓄熱材と水和反応させる水蒸気を前記蓄熱器に供給する蒸発器と、を備え、前記冷却装置は、熱エネルギーと電気エネルギーとを変換するエネルギー変換装置と、前記エネルギー変換装置に電気的に接続された蓄電装置と、を備え、前記排熱利用システムは、前記エネルギー変換装置から冷却媒体を前記回収器へ送る回収器冷却用流路と、前記放熱動作時に発生した熱を外部の加熱対象へ送る外部加熱用経路と、前記放熱動作時に発生した熱を前記エネルギー変換装置へ送る内部加熱用経路と、を備える。
【0006】
この構成によれば、冷却装置により回収器を冷却することができる。これにより、回収器内の圧力を低下させることで、蓄熱器の化学蓄熱材の脱水反応を進行させることができる。このため、回収器内の圧力を低下させるための回収材の使用を省略することができる。これにより、排熱を利用する回収材の再生動作が不要になるため、排熱利用効率を高めることが可能となる。また、上記排熱利用システムは、ケミカルヒートポンプの放熱動作で発生した熱を、内部加熱用経路を通じてエネルギー変換装置へ送ることができる。エネルギー変換装置では、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。得られた電気エネルギーは、蓄電装置に蓄電することができる。すなわち、上記排熱利用システムでは、例えば、熱需要がない場合、熱エネルギーを利用して電気エネルギーを蓄電することができる。
【0007】
上記排熱利用システムにおいて、前記エネルギー変換装置は、熱エネルギーと運動エネルギーとを変換する第1変換装置と、運動エネルギーと電気エネルギーとを変換する第2変換装置と、を備えてもよい。このように、例えば二種類の変換装置から上記エネルギー変換装置を構成することができる。
【0008】
上記排熱利用システムにおいて、外部の熱媒体供給部から外部の冷却対象に熱媒体を送る外部冷却用流路を有し、前記外部冷却用流路は、前記回収器内を通過するように配置されてもよい。この構成によれば、ケミカルヒートポンプの回収器を用いて外部の冷却対象を冷却することができる。
【0009】
上記排熱利用システムにおいて、前記蓄電装置は、外部の電力供給対象に電気的に接続され、前記電力供給対象に電力を供給可能に構成されてもよい。この構成によれば、ケミカルヒートポンプを用いて蓄電装置に蓄電した電気エネルギーを外部で有効に利用することができる。すなわち、排熱をさらに有効に利用することができる。
【0010】
上記排熱利用システムにおいて、前記蓄電装置は、外部の余剰電力発生源に電気的に接続され、前記余剰電力発生源から供給される余剰電力を蓄電可能に構成されてもよい。この構成によれば、外部の余剰電力を利用してケミカルヒートポンプの回収器を冷却することができる。すなわち、外部の余剰電力を蓄熱動作に有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、排熱をより有効に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態における排熱利用システムを示す概略図である。
図2】蓄熱動作を説明する概略図である。
図3】放熱動作を説明する概略図である。
図4】外部冷却動作を説明する概略図である。
図5】蓄電動作を説明する概略図である。
図6】排熱利用システムの動作を説明するフロー図である。
図7】第2実施形態における排熱利用システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、排熱利用システムの第1実施形態について図面を参照して説明する。
<排熱利用システムの主な構成>
図1に示すように、排熱利用システム11は、ケミカルヒートポンプ12と、冷却装置13とを備えている。ケミカルヒートポンプ12は、蓄熱器21と、回収器31と、蒸発器41とを備えている。ケミカルヒートポンプ12は、排熱源HSを用いて蓄熱した後、排熱源HSよりも高い温度の放熱を行う。冷却装置13は、エネルギー変換装置51と、蓄電装置61とを備えている。
【0014】
排熱利用システム11は、エネルギー変換装置51から冷却媒体を回収器31へ送る回収器冷却用流路L3を備えている。回収器冷却用流路L3の途中にはポンプが設けられ、エネルギー変換装置51と回収器31との間を冷却媒体が循環できるように構成されている。排熱利用システム11は、ケミカルヒートポンプ12の放熱動作で発生した熱を外部の加熱対象HTへ送る外部加熱用経路R1を備えている。排熱利用システム11は、ケミカルヒートポンプ12の放熱動作で発生した熱をエネルギー変換装置51へ送る内部加熱用経路R2を備えている。
【0015】
<ケミカルヒートポンプの蓄熱器>
蓄熱器21は、ケミカルヒートポンプ12の蓄熱動作時に脱水反応し、ケミカルヒートポンプ12の放熱動作時に水和反応する化学蓄熱材HMを有する。化学蓄熱材HMとしては、周知の固体材料を用いることができる。化学蓄熱材HMは、化学蓄熱物質のみから構成してもよいし、粒子状の化学蓄熱物質を水蒸気透過性樹脂等の水蒸気透過性のバインダーで結合した材料であってもよい。化学蓄熱物質としては、例えば、アルカリ土類金属のハロゲン化物、硫酸カルシウム等が挙げられる。化学蓄熱材HMは、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
化学蓄熱物質の一種である塩化カルシウムの脱水反応及び水和反応は、例えば、下記式(A)で表される。
CaCl・HO+HO⇔CaCl・2HO・・・(A)
蓄熱器21は、化学蓄熱材HMと熱交換する第1熱交換器22を備えている。蓄熱器21は、化学蓄熱材HM及び第1熱交換器22を収容する第1容器23を備えている。蓄熱器21の第1容器23は、化学蓄熱材HMの水和反応に用いられる水蒸気が導入可能に構成されている。また、蓄熱器21の第1容器23は、化学蓄熱材HMの脱水反応で生じる水蒸気が排出可能に構成されている。
【0017】
蓄熱器21の第1熱交換器22としては、例えば、フィンチューブ型の熱交換器、フィンレス熱交換器等が挙げられる。なお、以下で説明する熱交換器についても、同様の熱交換器を用いることができる。
【0018】
<ケミカルヒートポンプの回収器>
回収器31は、蓄熱器21の化学蓄熱材HMの脱水反応により生じた水蒸気を回収する。回収器31は、第2熱交換器32と、第2熱交換器32を収容する第2容器33とを備えている。回収器31内に導入された水蒸気は、第2熱交換器32により冷却されることで凝縮水W1として回収される。
【0019】
<ケミカルヒートポンプの蒸発器>
蒸発器41は、化学蓄熱材HMと反応させる水蒸気を蓄熱器21に供給する。蒸発器41は、排熱源HSから加熱媒体が供給される第3熱交換器42と、第3熱交換器42を収容する第3容器43とを備えている。蒸発器41の第3容器43内の水W2を第3熱交換器42により加熱することで水蒸気を発生させることができる。
【0020】
<冷却装置>
冷却装置13におけるエネルギー変換装置51は、熱エネルギーと電気エネルギーとを変換する。本実施形態のエネルギー変換装置51は、熱エネルギーと運動エネルギーとを変換する第1変換装置52と、運動エネルギーと電気エネルギーとを変換する第2変換装置53とを備えている。
【0021】
第1変換装置52は、例えば、スターリングエンジンであり、熱吸収側52aと冷熱吸収側52bとを有している。また、第1変換装置52は、図示を省略したピストン、動力伝達部等を備えている。第1変換装置52に外部から運動エネルギーが入力されると、冷熱吸収側52bに対して、熱吸収側52aが低温側となる温度差が生じる。このため、第1変換装置52は、熱吸収側52aで冷却を行う冷却器として用いることができる。このような第1変換装置52を用いてケミカルヒートポンプ12の回収器31を冷却することができる。
【0022】
一方、第1変換装置52は、熱吸収側52aが加熱されると、冷熱吸収側52bの温度と熱吸収側52aの温度との温度差である熱エネルギーが発生する。第1変換装置52は、熱エネルギーを運動エネルギーに変換し、その運動エネルギーを出力することができる。
【0023】
第2変換装置53は、第1変換装置52から入力された運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。また、第2変換装置53は、蓄電装置61から入力された電気エネルギーを運動エネルギーに変換する。第2変換装置53としては、例えば、発電動機を用いることができる。
【0024】
冷却装置13における蓄電装置61は、エネルギー変換装置51に電気的に接続されている。詳述すると、蓄電装置61は、エネルギー変換装置51の第2変換装置53から入力される電気エネルギーを蓄電する。また、蓄電装置61は、第2変換装置53に電気エネルギーを供給する。蓄電装置61としては、例えば、リチウムイオン電池、レドックスフロー電池、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄電池、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。
【0025】
本実施形態の蓄電装置61は、外部の電力供給対象92に電気的に接続され、電力供給対象92に電力を供給可能に構成されている。
<流路構成>
次に、排熱利用システム11の各動作で使用する流路構成について説明する。排熱利用システム11は、蓄熱動作、放熱動作、外部冷却動作、及び蓄電動作を行う。
【0026】
まず、排熱利用システム11の蓄熱動作に用いられる流路について説明する。
図2に示すように、排熱利用システム11は、蓄熱器21から回収器31に水蒸気WV1を送る回収用水蒸気流路L1を有している。排熱利用システム11は、排熱源HSから加熱媒体を蓄熱器21の第1熱交換器22に送る蓄熱器加熱用流路L2を有している。本実施形態の蓄熱器加熱用流路L2は、排熱源HSから蒸発器41及び蓄熱器21の順に加熱媒体を送るように構成されている。この蓄熱器加熱用流路L2は、例えば、蒸発器41を通過させずに、排熱源HSから蓄熱器21に加熱媒体を送る流路に変更することもできる。
【0027】
上述したように、排熱利用システム11は、回収器冷却用流路L3を有している。回収器冷却用流路L3は、第1変換装置52から冷却媒体を回収器31の第2熱交換器32へ送る。冷却媒体としては、例えば、水、不凍液等が挙げられる。排熱利用システム11は、冷却源CSから冷却媒体を第1変換装置52に送る変換装置冷却用流路L4を有している。
【0028】
次に、排熱利用システム11の放熱動作に用いられる流路について説明する。
図3に示すように、排熱利用システム11は、排熱源HSから加熱媒体を蒸発器41に送る蒸発器加熱用流路L5を有している。排熱利用システム11は、蒸発器41から蓄熱器21に水蒸気WV2を送る蓄熱器用水蒸気流路L6を有している。排熱利用システム11は、蓄熱器21内で発生した熱を外部の加熱対象HTへ送る外部加熱用経路R1を有している。本実施形態の外部加熱用経路R1は、ヒートパイプであるが、蓄熱器21の第1熱交換器22内で発生した水蒸気を加熱対象HTに送るように構成してもよい。加熱対象HTは、特に限定されない。加熱対象HTとしては、例えば、蒸気発生装置等が挙げられる。
【0029】
次に、排熱利用システム11の外部冷却動作に用いられる流路について説明する。
図4に示すように、排熱利用システム11は、外部の熱媒体供給部91から外部の冷却対象CTに熱媒体を送る外部冷却用流路L7を有している。外部冷却用流路L7は、回収器31内を通過するように配置されている。これにより、外部冷却用流路L7を通じる熱媒体を回収器31により冷却することができる。熱媒体としては、例えば、空気等の気体を用いることができる。この場合、外部冷却動作により、冷気を冷却対象CTに送ることができる。
【0030】
次に、排熱利用システム11の蓄電動作に用いられる流路について説明する。
図5に示すように、排熱利用システム11の蓄電動作では、上述した内部加熱用経路R2が用いられる。内部加熱用経路R2は、蓄熱器21内で発生した熱をエネルギー変換装置51の第1変換装置52へ送る。本実施形態の内部加熱用経路R2は、ヒートパイプであり、第1変換装置52の熱吸収側52aに熱媒体を循環させる熱媒体循環流路L8と熱交換するように配置されている。なお、内部加熱用経路R2は、蓄熱器21の第1熱交換器22内で発生した水蒸気をエネルギー変換装置51の第1変換装置52へ送るように構成してもよい。
【0031】
蓄電動作では、放熱動作と同様に、蒸発器加熱用流路L5及び蓄熱器用水蒸気流路L6が用いられる。また、蓄電動作では、蓄熱動作と同様に、変換装置冷却用流路L4が用いられる。
【0032】
<排熱利用システムの全体の動作>
次に、排熱利用システム11の全体の動作の一例を説明する。
図6に示すように、排熱利用システム11の動作では、まず、熱需要があるか否かを判断する第1判断工程を行う(ステップS1)。ステップS1の第1判断工程において、熱需要がある旨の判断がなされた場合(ステップS1:YES)、ステップS11の蓄熱動作へと進む。ステップS11の蓄熱動作が行われた後、ステップS12の放熱動作へと進む。ステップS12の放熱動作の後には、ステップS1の第1判断工程が繰り返される。
【0033】
一方、ステップS1の第1判断工程において、熱需要がない旨の判断がなされた場合(ステップS1:NO)、外部を冷却する依頼があるか否かを判断する第2判断工程が行われる(ステップS2)。
【0034】
ステップS2の第2判断工程において、外部を冷却する依頼がある旨の判断がなされた場合(ステップS2:YES)、ステップS21の外部冷却動作へと進む。ステップS21の外部冷却動作の後には、ステップS1の第1判断工程が繰り返される。
【0035】
一方、ステップS2の第2判断工程において、外部冷却依頼がない旨の判断がなされた場合(ステップS2:NO)、ステップS22の蓄電動作へと進む。ステップS22の蓄電動作の後には、ステップS1の第1判断工程が繰り返される。
【0036】
<排熱利用システムの蓄熱動作>
図2に示すように、蓄熱動作(ステップS2)では、蓄熱器21の化学蓄熱材HMから排出される水蒸気WV1を回収器31により回収する。蓄熱器21の化学蓄熱材HMから排出される水蒸気WV1は、回収用水蒸気流路L1を通じて回収器31に送られる。
【0037】
蓄熱器21の化学蓄熱材HMから排出される水蒸気WV1が回収器31に送られることで、化学蓄熱材HMの脱水反応が行われる。ここで、化学蓄熱材HMの脱水反応の進行に伴って、化学蓄熱材HMの温度が低下する。化学蓄熱材HMの温度が排熱源HSの加熱媒体の温度よりも低くなったとき、排熱源HSから蓄熱器加熱用流路L2を通じて加熱媒体を蓄熱器21の第1熱交換器22に送る。これにより、化学蓄熱材HMの脱水反応を促進することができる。
【0038】
蓄熱動作では、冷却装置13により回収器31を冷却する。詳述すると、回収器31の第2熱交換器32には、冷却装置13の第1変換装置52における熱吸収側52aで冷却された冷却媒体が回収器冷却用流路L3を通じて送られる。
【0039】
第1変換装置52の熱吸収側52aの冷却は、蓄電装置61の電気エネルギーが用いられる。詳述すると、第1変換装置52の熱吸収側52aの冷却を行うには、まず、蓄電装置61から電気エネルギーを第2変換装置53に入力する。第2変換装置53では、電気エネルギーが運動エネルギーに変換される。次に、第2変換装置53から第1変換装置52に運動エネルギーを入力する。第1変換装置52では、運動エネルギーが熱エネルギーに変換される。熱エネルギーは、第1変換装置52の熱吸収側52aの温度と、冷熱吸収側52bの温度との温度差として出力される。このとき、第1変換装置52の冷熱吸収側52bには、冷却源CSから冷却媒体が変換装置冷却用流路L4を通じて送られる。
【0040】
このような冷却装置13の一連の動作により、例えば10℃以下の温度となるまで回収器31を冷却することができる。10℃の水の飽和水蒸気圧は、1.2kPaであるため、例えば、排熱で加熱されたときの水蒸気圧が2kPa程度の水蒸気圧となる化学蓄熱材HMであれば、その脱水反応を進行させることが可能となる。例えば、上記式(A)で表される塩化カルシウムの脱水反応において、80℃の排熱を用いる場合、塩化カルシウムの水蒸気圧は、2kPaとなる。このため、冷却装置13を用いて回収器31を10℃程度に冷却し、回収器31内の水蒸気圧を1.2kPa程度まで低下させることで、塩化カルシウムの脱水反応を進行させることができる。
【0041】
<排熱利用システムの放熱動作>
図3に示すように、放熱動作(ステップS12)では、排熱源HSから蒸発器41の第3熱交換器42に蒸発器加熱用流路L5を通じて加熱媒体を供給する。これにより、蒸発器41で水蒸気WV2を発生させる。蒸発器41で発生させた水蒸気WV2は、蓄熱器用水蒸気流路L6を通じて蓄熱器21に送られる。これにより、蓄熱器21の化学蓄熱材HMの水和反応が行われる。放熱動作において、蓄熱器21内で発生した熱は、外部加熱用経路R1を通じて外部の加熱対象HTへ送られる。
【0042】
<排熱利用システムの外部冷却動作>
図4に示すように、外部冷却動作(ステップS21)では、外部の熱媒体供給部91から外部冷却用流路L7を通じて外部の冷却対象CTに熱媒体を送る。熱媒体は、回収器31により冷却される。この外部冷却動作では、回収器31を用いて外部の冷却対象CTを冷却することができる。回収器31の冷却能力が低下した場合は、冷却装置13を用いて回収器31を冷却してもよい。
【0043】
また、この外部冷却動作中において、蓄電装置61から外部の電力供給対象92に電力を供給してもよい。このように蓄電装置61は、例えば、外部の電力供給対象92の予備電源として利用することができる。
【0044】
<排熱利用システムの蓄電動作>
図5に示すように、蓄電動作(ステップS22)は、排熱源HSから蒸発器41の第3熱交換器42に蒸発器加熱用流路L5を通じて加熱媒体を供給する。これにより、蒸発器41で水蒸気WV2を発生させる。蒸発器41で発生させた水蒸気WV2は、蓄熱器用水蒸気流路L6を通じて蓄熱器21に送られる。これにより、上記放熱動作(ステップS12)と同様に、蓄熱器21の化学蓄熱材HMの水和反応が行われる。
【0045】
蓄電動作において、蓄熱器21内で発生した熱は、内部加熱用経路R2を通じて第1変換装置52へ送られる。このとき、上記外部加熱用経路R1が閉鎖されることで、放熱動作は停止されている。なお、上述した放熱動作中では、内部加熱用経路R2は閉鎖されている。すなわち、外部加熱用経路R1と内部加熱用経路R2とを切り替えることで、放熱動作と蓄電動作とを切り替えることができる。
【0046】
蓄電動作において、第1変換装置52の冷熱吸収側52bには、冷却源CSから冷却媒体が変換装置冷却用流路L4を通じて送られる。このとき、蓄熱器21内で発生した熱により熱吸収側52aが加熱された第1変換装置52では、熱吸収側52aと冷熱吸収側52bとの温度差である熱エネルギーが運動エネルギーに変換される。
【0047】
第1変換装置52から出力された運動エネルギーは、第2変換装置53に入力される。第2変換装置53では、運動エネルギーが電気エネルギーに変換される。第2変換装置53から出力された電気エネルギーは、蓄電装置61によって蓄電される。
【0048】
<作用及び効果>
第1実施形態の作用及び効果について説明する。
(1-1)排熱利用システム11は、ケミカルヒートポンプ12と冷却装置13とを備えている。ケミカルヒートポンプ12は、蓄熱器21、回収器31、及び蒸発器41を備えている。冷却装置13は、熱エネルギーと電気エネルギーとを変換するエネルギー変換装置51と、エネルギー変換装置51に電気的に接続された蓄電装置61とを備えている。排熱利用システム11は、エネルギー変換装置51から冷却媒体を回収器31へ送る回収器冷却用流路L3を備えている。排熱利用システム11は、放熱動作時に発生した熱を外部の加熱対象HTへ送る外部加熱用経路R1と、放熱動作時に発生した熱をエネルギー変換装置51へ送る内部加熱用経路R2とを備えている。
【0049】
この構成によれば、冷却装置13により回収器31を冷却することができる。これにより、回収器31内の圧力を低下させることで、蓄熱器21の化学蓄熱材HMの脱水反応を進行させることができる。このため、回収器31内の圧力を低下させるための回収材の使用を省略することができる。これにより、排熱を利用する回収材の再生動作が不要になるため、排熱の利用効率を高めることが可能となる。また、上記排熱利用システム11は、ケミカルヒートポンプ12の放熱動作で発生した熱を、内部加熱用経路R2を通じてエネルギー変換装置51へ送ることができる。エネルギー変換装置51では、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。得られた電気エネルギーは、蓄電装置61に蓄電することができる。すなわち、上記排熱利用システム11では、例えば、熱需要がない場合、熱エネルギーを利用して電気エネルギーを蓄電することができる。従って、排熱をより有効に利用することが可能となる。
【0050】
(1-2)排熱利用システム11は、外部の熱媒体供給部91から外部の冷却対象CTに熱媒体を送る外部冷却用流路L7を有している。外部冷却用流路L7は、回収器31内を通過するように配置されている。この場合、ケミカルヒートポンプ12の回収器31を用いて外部の冷却対象CTを冷却することができる。
【0051】
(1-3)排熱利用システム11の蓄電装置61は、外部の電力供給対象92に電力を供給可能に構成されている。この場合、ケミカルヒートポンプ12を用いて蓄電装置61に蓄電した電気エネルギーを外部で有効に利用することができる。すなわち、排熱をさらに有効に利用することができる。
【0052】
(第2実施形態)
排熱利用システム11の第2実施形態について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0053】
図7に示すように、第2実施形態の排熱利用システム11は、冷却装置13の構成が第1実施形態の排熱利用システム11と異なる。第2実施形態のエネルギー変換装置51は、第3変換装置54を備えている。第3変換装置54は、熱エネルギーと電気エネルギーとを変換する。
【0054】
第3変換装置54は、例えば、ペルチェ素子等の熱電素子であり、熱吸収側54aと冷熱吸収側54bとを有している。第3変換装置54に外部から電気エネルギーが入力されると、冷熱吸収側54bに対して、熱吸収側54aが低温側となる温度差が生じる。このため、第3変換装置54は、熱吸収側54aで冷却を行う冷却器として用いることができる。このような第3変換装置54を用いてケミカルヒートポンプ12の回収器31を冷却することができる。
【0055】
一方、第3変換装置54は、熱吸収側54aが加熱されると、冷熱吸収側54bの温度と熱吸収側54aの温度との温度差である熱エネルギーから変換された電気エネルギーを出力することができる。すなわち、第2実施形態のエネルギー変換装置51では、第1実施形態のエネルギー変換装置51が備える第2変換装置53を省略することができる。
【0056】
冷却装置13における蓄電装置61は、エネルギー変換装置51の第3変換装置54から入力される電気エネルギーを蓄電する。また、蓄電装置61は、第3変換装置54に電気エネルギーを供給する。
【0057】
第2実施形態の蓄電装置61は、外部の余剰電力発生源93に電気的に接続され、余剰電力発生源93から供給される余剰電力を蓄電可能に構成されている。余剰電力発生源93としては、例えば、太陽光発電システム、風力発電システム、水力発電システム、地熱発電システム、バイオマス発電システム等が挙げられる。
【0058】
第2実施形態の作用及び効果について説明する。
(2-1)エネルギー変換装置51は、上述した第3変換装置54を備えている。この場合、第1実施形態で用いた第2変換装置53が不要となる。これにより、エネルギー変換装置51を小型化することが可能となる。
【0059】
(2-2)排熱利用システム11の蓄電装置61は、外部の余剰電力発生源93から供給される余剰電力を蓄電可能に構成されている。この場合、外部の余剰電力を利用してケミカルヒートポンプ12の回収器31を冷却することができる。すなわち、外部の余剰電力を蓄熱動作に有効に利用することができる。
【0060】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0061】
・第1実施形態の排熱利用システム11において、蓄電装置61を余剰電力発生源93に電気的に接続してもよい。
・第2実施形態の排熱利用システム11において、蓄電装置61を電力供給対象92に電気的に接続してもよい。
【0062】
・上記余剰電力発生源93及び電力供給対象92を省略してもよい。
・上記外部冷却用流路L7を省略してもよい。すなわち、ステップS21の外部冷却動作を省略することもできる。
【符号の説明】
【0063】
11…排熱利用システム
12…ケミカルヒートポンプ
13…冷却装置
21…蓄熱器
31…回収器
41…蒸発器
51…エネルギー変換装置
52…第1変換装置
53…第2変換装置
54…第3変換装置
61…蓄電装置
91…熱媒体供給部
92…電力供給対象
93…余剰電力発生源
CT…冷却対象
HT…加熱対象
HM…化学蓄熱材
L3…回収器冷却用流路
L7…外部冷却用流路
R1…外部加熱用経路
R2…内部加熱用経路
WV1,WV2…水蒸気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7