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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061156
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/16 20060101AFI20230424BHJP
   A47J 37/06 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
F24C15/16 G
F24C15/16 B
A47J37/06 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170972
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】501300436
【氏名又は名称】株式会社 クリスタル電器
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】徳山 良輔
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 由男
【テーマコード(参考)】
4B040
【Fターム(参考)】
4B040AA02
4B040AC02
(57)【要約】
【課題】焼き網への食品の載せ降ろしを安全かつ迅速に行えるオーブントースターを提供する。
【解決手段】扉3は、本体1で前後動自在に支持された可動レール20に、前倒し自在に連結されている。焼き網4は、その後端は本体1の内側板14で前後動自在に支持されて、前寄り部位は、可動レール20の前端に設けた支持ブラケット34で支持されている。焼き網4を安定した状態に大きく引き出されるため、食品の載せ降ろしを安全かつ迅速に行える。左右の可動レール20は、食品屑を受けるトレー33が載るトレーホルダー38の左右両側部に固定されている。このため、可動レール20を含む移動ユニットは堅牢な構造になっている。焼き網4は可動レール20の前端に設けた支持ブラケット34で支持されているため、大きく引き出しても安定性が高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前向きに開口した加熱空間を有する本体と、前記加熱空間を前から塞ぐ扉と、前記加熱空間に前後移動自在に配置された調理品載置用の焼き網と、を備え、
前記扉は、その下部を支点にして下向きに倒し回動される構造であり、
前記扉と焼き網とは、前記扉を倒し回動すると焼き網が前進するように連結されている加熱調理器であって、
前記扉は、前記本体に前後動自在に装着された移動支持体に回動可能に連結されており、前記扉と焼き網とは一緒に前後動するように連結されている、
加熱調理器。
【請求項2】
前記移動支持体は、前記本体の左右内側面に近接して1つずつ配置されており、前記焼き網は、前記移動支持体と前記本体とによって前後2箇所の部位が前後動自在に支持されている、
請求項1に記載した加熱調理器。
【請求項3】
前記左右の移動支持体は前後長手の可動レールを有し、前記可動レールは、前記本体の左右内側面に配置された前後長手の固定レールで前後動自在に支持されている、
請求項2に記載した加熱調理器。
【請求項4】
前記左右の可動レールは、食品屑を受ける上向き開口のトレーが着脱自在に載るトレーホルダーを介して一体に繋がっている、
請求項3に記載した加熱調理器。
【請求項5】
前記固定レールと可動レールとに、引出し限度位置を規制するストッパーが設けられており、前記可動レールは、限度位置まで引き出してから上向きに起こすと前記固定レールから取り外しできるようになっている、
請求項3又は4に記載した加熱調理器。
【請求項6】
前記移動支持体及び焼き網の前後動は、耐熱性のスライダーによって補助されている、
請求項1~5のうちの何れかに記載した加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーブントースターのような加熱調理器に関するものであり、具体的には、前倒し回動式の扉に連動して焼き網が前進動する加熱調理器の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーブントースターは食品(ピザやグラタンや食パンなど)をヒーターで加熱して調理や温めを行うもので、食品(被調理品)は焼き網(受け網)の上に載置されて、上下両方向からヒーターで加熱されるようになっている。従って、焼き網は加熱空間の上下中途部に配置されているが、焼き網が固定的に配置されていると、食品の出し入れが面倒である。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に開示されているように、扉を下向きに倒し回動する方式に構成して、扉の倒し回動に連動して焼き網を前進させることが行われている。他方、特許文献2では、焼き網を着脱式に構成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63-63608号のマイクロフィルム
【特許文献2】登録実用新案3189366号のCD-ROM
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、扉の倒し回動に連動して焼き網が前進すると、焼き網が固定されている場合に比べると便利ではあるが、焼き網は、安定的に支持する必要性から3割程度しか本体の前方に露出せず、このため、庫内に差し込んだ手が庫内の内面に触れやすくて使い勝手は十分とは言い難かった。
【0006】
特に、グラタンやピザのように奥行きがあってしかもある程度の重量がある食品の場合は、両手を庫内に差し込んで食品(トレー)の縁を掴まねばならないため、手が庫内に触れないように慎重を要している。例えば餅を焼く場合のように、焼き網に複数の食品を配置することもよく行われているが、この場合も、食品を焼き網にまんべんなく配置するのは厄介であった。
【0007】
これに対して、特許文献2のように焼き網を着脱式に構成すると、食品の載せ降ろしは安全に行えるが、一々焼き網を着脱するのは面倒であり、また、取り出した焼き網はテーブル等に載置せねばならないため、焼き網の熱でテーブル等が損傷しないように注意を要するという問題もあった。
【0008】
本願発明はこのような現状を背景に成されたものであり、使い勝手と安全性とに優れた改良された加熱調理器を開示せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の加熱調理器は、請求項1のとおり、
「前向きに開口した加熱空間を有する本体と、前記加熱空間を前から塞ぐ扉と、前記加熱空間に前後移動自在に配置された調理品載置用の焼き網と、を備え、
前記扉は、その下部を支点にして下向きに倒し回動される構造であり、
前記扉と焼き網とは、前記扉を倒し回動すると焼き網が前進するように連結されている」
という基本構成において、
「前記扉は、前記本体に前後動自在に装着された移動支持体に回動可能に連結されており、前記扉と焼き網とは一緒に前後動するように連結されている」
という特徴を備えている。
【0010】
本願発明は、様々に展開できる。その典型例を請求項2以下で特定している。このうち請求項2の発明は、
「前記移動支持体は、前記本体の左右内側面に近接して1つずつ配置されており、前記焼き網は、前記移動支持体と前記本体とによって前後2箇所の部位が前後動自在に支持されている」
という構成になっている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2において、
「前記左右の移動支持体は前後長手の可動レールを有し、前記可動レールは、前記本体の左右内側面に配置された前後長手の固定レールで前後動自在に支持されている」
という構成になっている。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3において、
「前記左右の可動レールは、食品屑を受ける上向き開口のトレーが着脱自在に載るトレーホルダーを介して一体に繋がっている」
という構成になっている。この場合、可動レールとトレーホルダーとを別体に製造して溶接やビス止めなどで固定してもよいし、トレーホルダーに可動レールを一体に形成してもよい。
【0013】
請求項5の発明は、請求項3又は4において、
「前記固定レールと可動レールとに、引出し限度位置を規制するストッパーが設けられており、前記可動レールは、限度位置まで引き出してから上向きに起こすと前記固定レールから取り外しできるようになっている」
という構成になっている。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1~5のうちのいずれかにおいて、
「前記移動支持体及び焼き網の前後動は、耐熱性のスライダーによって補助されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0015】
本願発明では、焼き網と扉が一緒に前進動するため、焼き網を従来に比べて大きく引き出すことができる。例えば8割程度を本体の前方に引き出すことも容易に実現できるし、全体を引き出すことも可能である。
【0016】
従って、焼き網への食品の載せ降ろしは、火傷に注意することなく安全かつ迅速に行える。具体的には、食パンのような広い面積の食品や、ピザやグラタンのような大型で重い食品であっても、上から手を伸ばして安全にかつ容易に行えるし、複数の食品をまんべんなく配置することも、庫内への接触の心配をすることなく迅速に行える。
【0017】
そして、焼き網は加熱調理器に取り付いたままであるため、着脱の手間は不要であるし、取り外した焼き網の配置に気を遣う必要もなくて、ユーザーフレンドリーである。また、扉の倒し回動と引出し操作、及び、扉の起こし回動と押し込み操作は、それぞれハンドルや把手などに手を掛けて片手で一連に行えるため、操作性にも優れている。この点でも、ユーザーフレンドリーである。
【0018】
なお、食品の前端部を摘んで焼き網に載せ降ろしできる場合は、扉を倒し回動させて焼き網を部分的に前進させた状態で使用することも可能である。すなわち、消費者は、扉を倒しただけで食品を載せ降ろしする態様と、扉及び焼き網を大きく引き出して食品を載せ降ろしする態様とを、食品の種類等に応じて選択できる。この点も本願発明の利点の1つである。
【0019】
さて、焼き網が本体の前方に大きくはみ出ると、焼き網を本体の前方においても支持する手段が必要であり、この場合、焼き網を支持する専用の支持レールを設けることも可能であるが、請求項2のように、扉を支持する移動支持体で焼き網を支持すると、構造を簡単化しつつ焼き網を安定的に保持できて好適である。
【0020】
移動支持体の前後動のガイド手段は様々な構造を採用できるが、請求項3のように、固定レールと可動レールとからなるレール構造を採用すると、移動支持体を安定的に支持できる利点がある。
【0021】
更に、請求項4の構成を採用すると、左右の可動レールがトレーホルダーを介して一体化するため、引出し状の移動ユニットは全体として堅牢な構造になって、扉及び焼き網の支持強度も向上できる。特に、トレーホルダーを上向きに開口させると剛性が高くなるため、可動レールの安定性を格段に向上できる。請求項5の構成を採用すると、可動レールを簡単に取り外しできるため、庫内やトレーホルダーの掃除を行うのに便利である。トレーはトレーホルダーに載せてあるため、着脱可能でパンくず等を頻繁に掃除するのに便利である。
【0022】
また、請求項6の構成を採用すると、移動支持体及び焼き網のスムースな動きを安全な状態で確保できる(グリスのような潤滑材は、燃焼の危険や食品への悪影響の点から使用できない。)。
【0023】
実施形態のように、 扉を閉じ姿勢に保持するばねを設けると、扉の開閉を容易化しつつ加熱状態でのシール性を確保できる。また、実施形態のようにバランサーを設けると、扉を倒して引き出した状態で重い食品を載せても、本体が前倒れすることを防止できて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(A)は閉扉状態での全体の斜視図、(B)は扉を開いて引き出した状態での概略斜視図である。
図2図1(A)のII-II 視概略断面図である。
図3】(A)は要部の分離斜視図、(B)は扉を閉じた状態でのリンクと扉の連結部の縦断側面図、(C)は扉を倒した状態でのリンクと扉との連結部の縦断側面図である。
図4】(A)は扉を倒した状態での縦断側面図、(B)は図2の IVB-IVB視断面図である。
図5】(A)は扉を倒して引き出した状態での縦断側面図、(B)は焼き網ホルダーの部分斜視図である。
図6】扉を引き出して起こした状態での縦断側面図である。
図7】(A)は図2の VIIA-VIIA視断面図、(B)は図2の VIIB-VIIB視断面図、(C)は左側部の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1).概要
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態はオーブントースターに適用しており、まず、図1,2を参照して概要を説明する。オーブントースターは、前向きに開口した加熱空間2を有する本体1と、加熱空間2を塞ぐ扉3と、加熱空間2に配置されて食品(被調理品W)を載せる焼き網4とを備えている。扉3の前面上部には、バー方式のハンドル(把手)5を設けている。また、扉3には覗き窓6を設けている。
【0026】
本体1は、その外面を構成する筐体を備えており、筐体は、前板7と、左右の外側板8と天板9、背板10、底板11を有しており、前面の下部には框部12を設けている。加熱空間2は、左右の内側板14と、ベース板15と、上板16と、後面板17とで囲われている。焼き網4は加熱空間2のほぼ中間高さ位置に配置されており、その上下に前後一対ずつのヒーター18が左右長手の姿勢で配置されている。扉3は中空構造になっている。
【0027】
図1(B)から理解できるように、扉3は、その下端部を支点にして下向きに倒し回動させうるように、下端部が左右の可動レール20の前端部に回動自在に連結されている。また、扉3の中途高さ部位と本体1の内側板14とは、円弧状のリンク21によって連結されている。
【0028】
図1(A)から理解できるように、リンク21は本体1における左右の中空部に入り込んでおり、本体1の前板7には、リンク21が貫通した上下長手のスリット22を開口させている。他方、焼き網4は、図5(B)に表示した焼き網ホルダー38に着脱自在に載っており、焼き網ホルダー38の後端部に溶接で固定したスライドピン23が、リンク21の後端には、庫内側からの挿通によって連結されている。従って、本体1の内側板14には、焼き網ホルダー38に固定されたスライドピン23の前後動を許容するための前後手の長穴24が形成されている。
【0029】
焼き網4は、上記のとおり、焼き網ホルダー38で支持されているが、図5に示すように、焼き網ホルダー38の前部に囲い枠部38cを溶接している一方、例えば図2に示すように、焼き網4の前部に左右一対の足体4aを設けて,前部の足体4aは囲い枠部38cで囲われた部位に挿通して、後部の足体4aはスライドピン23を形成した部材で囲われた部位に挿通している。これにより、焼き網4の位置決めを行っている。
【0030】
そして、焼き網4は扉3と一緒に前後動するため、その8割程度が本体1の前方に引き出されるが、扉3が引き出された状態で可動レール20に接合された支持ブラケット34が本体1の前方に大きくはみ出るため、焼き網4は大きく引き出された状態でも安定的に保持されている。図5(B)に示すように、焼き網ホルダー38は、十字状の補強バー38bを備えている。
【0031】
(2).細部の詳細
次に、細部の詳細を説明する。図3(A)及び図7(A)(B)に示すように、可動レール20は、内向きに開口した正面視コ字形の形態を成している。一方、本体1の内側板14には、可動レール20と同じ方向に開口した正面視コ字形の固定レール25が配置されており、固定レール25で可動レール20が遊びを持った状態で抱持されている。
【0032】
そして、固定レール25の前端部にテフロン(登録商標)製のフロントスライダー26を配置して、可動レール20の上水平片20aをフロントスライダー26で支持している。フロントスライダー26は、テフロンのような耐熱合成樹脂によってL形に形成されており、可動レール20の左右の振れもフロントスライダー26によって阻止されている。フロントスライダー26は、固定レール25の側板及び下水平板に形成した係合穴に爪部26aを嵌め込むスナップ係合によって、固定レール25に取り付けられている。
【0033】
図3及び図7(B)に示すように、可動レール20の後端部には、その上面と外側面とに露出したリアスライダー27を装着しており、リアスライダー27を固定レール25の上水平片25aに下方から当てている。リアスライダー27もテフロン等の耐熱性合成樹脂からなっており、可動レール20に形成した係合穴に強制的に嵌め込まれている。
【0034】
固定レール25の下水平片25bのうちフロントスライダー26の真後ろの位置に、フロントストッパー28が上向きに膨出形成されている一方、可動レール20における下水平片20bの後端には、固定レール25の下水平片25bに載るリアストッパー29が下向きに膨出形成されており、リアストッパー29がフロントストッパー28に当たることにより、可動レール20(及び扉3)の前進位置が規制される。
【0035】
固定レール25の上水平片25aはフロントストッパー28よりも後ろの位置で切除されている。このため、可動レール20は、いっぱいに引き出してからその前端を上に上げるように傾斜させると、固定レール25から抜き取ることができる。
【0036】
例えば図2に示すように、可動レール20を構成する側板20cは扉3の内部に進入しており、その前端が扉3に設けたブラケット30にピン31で連結されている。従って、扉3はピン31を支点にして回動する。
【0037】
図7(C)から理解できるように、ブラケット30は、扉3の前内面に重なった前側板30aを備えている。他方、図3(A)や図7(C)に示すように、可動レール20の前端には、下水平片20bから段落ちしたストッパー部20dを設けており、ブラケット30における前側板30aの下端30bがストッパー部20dに当たることにより、扉3の倒し姿勢が規定されている。従って、ブラケット30の前側板30aは、扉3の倒し姿勢を規定するストッパー部の機能を有している。
【0038】
図7(C)に示すように、引っ張りばね32が配置されている。引っ張りばね32は、閉扉状態では上から下に向けて後ろにずれるように前傾姿勢になっており、上端はブラケット30に設けた係止部30cに引っ掛けられて、下端は可動レール20に引っ掛けられている。
【0039】
そして、引っ張りばね32は、扉3を起こした状態ではその中心線がピン31の上に位置して、扉3を倒した状態では、その中心線がピン31の下方に位置するように設定されている。従って、引っ張りばね32は、いわゆる支点越えをすることにより、扉3を閉じた状態では扉3を閉じるように付勢し、扉3を下方向に開いた状態では扉3を開くように付勢している。従って、1つの引っ張りばね32により、扉3は閉じ状態と開き状態とに選択的に保持される。なお、扉3を閉じた状態及び開いた状態に保持する手段としては、マグネットやラッチ爪を採用することも可能である。
【0040】
図3から理解できるように、庫内には、パン屑のような食品屑を受けるトレー33を配置している。トレー33は、基本的には可動レール20の上下高さよりもやや大きい程度の深さであるが、前端部は傾斜しつつ高く延びている。なお、図4~6では、トレー33は仮想線で示している。
【0041】
図3から理解できるように、左右の可動レール20の上面に、起立板34aと底板34cと前板34bとを有する支持ブラケット34が固定され、左右の支持ブラケット34の前面に、左右長手のフロントステー35aが固定されている。フロントステー35aの下端は可動レール20の下方に位置しているため、フロントステー35aには、可動レール20との干渉を回避する切欠き35b(図7(C)参照)が形成されている。
【0042】
図3(A)から理解できるように、トレー33の左右両側部は固定レール25の上に位置する張り出し部33aになっている。トレー33は、その下方に配置されたトレーホルダー35bに着脱自在に載置されている。トレーホルダー35bは、平面視四角形で四周に高さが低い壁を立ち上げた浅い箱状(トレー状)の形態であり、左右側部が可動レール20の下水平片20bにねじ止め又は溶接によって固定されている。従って、左右の可動レール20と、トレーホルダー35bと、支持ブラケット34と、フロントステー35aとが一体になって、堅牢な構造の引出し状の移動ユニットを構成している。
【0043】
ブラケット34を構成する起立板34aの上端は焼き網4の上面近くに位置しており、図3(B)に示すように、起立板34aの上端に曲げ形成したL形の受け部34dに、テフロン製のガイドスライダー36を固定し、ガイドスライダー36に設けたガイド溝37に、焼き網ホルダー38の左右側部38aを前後動自在にかつ強制的に嵌め込んでいる。焼き網ホルダー38に焼き網4が載せられることは、既に説明したとおりである。
【0044】
図3(B)(C)に示すように、リンク21の前端には、略前向きに切り開き溝39aを有する鍵穴条の係合穴39が形成されており、扉3の後面板3aに打ち抜きで形成した係合部40に係合穴39を嵌合させている。係合穴39は係合部40と相対回動しうる大きさであり、扉3を閉じた状態で、切り開き溝39aは係合穴39の下端に連通している。
【0045】
扉3を倒した状態では、係合部40は係合穴39の略中央部に位置するため、扉3を倒しただけでは、係合穴39から係合部40が外れることはないが、扉3を倒した状態でリンク21の下端を少し持ち上げて奥に移動させると、係合部40を係合穴39から抜き外すことができる。既述のとおり、扉3を倒しきってから、その上端を少し持ち上げて傾斜させると可動レール20を固定レール25から抜き外すことができるが、この動作に関連して、リンク21の前端を少し持ち上げることにより、扉3をリンク21及び固定レール25から抜き外すことができる。可動レール20(扉3)の取付けは逆の手順で行えばよい。
【0046】
図4(B)に示すように、リンク21の後端には、焼き網ホルダーに固定されたスライドピン23が庫内から挿通されており、スライドピン23は、本体1の中空部に配置したスナップ式ナット(スピードナット)41によって内向き抜け不能に保持されている。そして、スライドピン23には、長穴24に挿通された第1スライダー42aと、内側板14の内側において第1スライダー42aに被嵌した第2スライダー42bとが嵌まっている。従って、焼き網4はリンク21と一緒に前後動する。
【0047】
本実施形態では扉3は手前に大きく引き出されるため、扉3を倒して引き出した状態で、食品Wを含む全体の重心が前足よりも手前に位置する可能性がある。そこで、図2に示すように、本体1のうち背板10と後面板17とで挟まれた後部空間の下面に、例えば1Kg程度の重量のバランサー(重り)44を配置している。
【0048】
従って、扉3を倒して手前に引いて重い食品を焼き網4に載せても、本体1が前倒れすることはない。実施形態のように本体1の後端にバランサー44を配置すると、本体1の重心が後ろに位置するため、なるべく軽いバランサー44を使用しつつ転倒防止効果を確保できる利点がある。
【0049】
(3).まとめ
本実施形態のオーブントースターは以上の構成であり、既に述べたように、扉3は、図4に示すように前倒しできると共に、図5,6に示すように手前に大きく引き出すことができる。実施形態では、焼き網4の概ね8割程度が本体1の前方に引き出される。従って、食品Wの載せ降ろしに際して手先を庫内に差し込む必要はない。
【0050】
このように、庫内との接触に注意を払う必要はないため、食品Wの載せ降ろしを安全かつ迅速に行える。この場合、焼き網4は可動レール20に設けたブラケット34で前寄り部位が支持されているため、手前に大きく引き出しても安定した状態に保持される。
【0051】
既述のとおり、本実施形態では、左右の可動レール20とトレーホルダー35b、ブラケット34、フロントステー35aで移動ユニットが構成されているが、全体として堅牢な剛体構造になっているため、扉3の前後動をスムースに行える。可動レール20と焼き網4とは、耐熱性が高いテフロン製のスライダー26,27,36で支持されているため、擦れ音の発生もなくスライドはスムースである。
【0052】
また、トレー33には食品屑がすぐに溜まるため頻繁な掃除の必要性が高いが、本実施形態では、扉3を引いて手前に倒すとトレー33を簡単に取り外しできるため、トレー33の掃除をごく簡単に行うことができる。移動ユニットと扉3とは一緒に取り外しできるため、庫内の掃除も容易に行える。
【0053】
なお、具体的な使用方法としては、扉3を前倒ししてから扉3及び焼き網4を引き出しても良いし、扉3を起立姿勢のままで引き出してから倒し回動させてもよい。閉じるに際しても、扉3を直立姿勢に起こしてから押し込んでもよいし、扉3を倒れた姿勢のまま押し込んでから起こし回動させてもよい。
【0054】
人がハンドル5を握るに際して、手の甲を上にした順手と手の甲を下に逆手とがあるが、ハンドル5の握り方によって操作のしやすさに個人差が現れることも考えられる。いずれにしても、扉3の姿勢変更と前後移動とはワンアクションで行えるため、使用者に手間をかけることはない。
【0055】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、移動支持体は実施形態のようなコ字形のレール手段には限らず、例えば、外形筒と小径筒とがスライド自在に嵌まり合ったテレスコープ式の構造なども採用できる。トレーの下面に可動レールを設け、本体のベースに固定レールを設けるといったことも可能である。
【0056】
実施形態では、ハンドル5を扉3の上端よりも僅かに低い位置に配置しているが、ハンドル5を扉3の前方でかつ上端よりも高い位置に配置すると、扉3の回動操作と前後動操作とを容易に行える。焼き網4の前後動ガイド手段としては、本体の内側板にコ字状等のガイドレールを設けて、これに、焼き網4の左右両端を直接又はスライダーを介して嵌合させることも可能である。実施形態のように、移動体が支持ブラケット34やフロントステー35a、トレーホルダー35bを備えている場合、扉3は支持ブラケット34又はフロントステー35aに連結することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本願発明は、オーブントースター等の加熱調理器に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 本体
2 加熱空間
3 扉
4 焼き網
5 ハンドル
14 内側板
18 ヒーター
20 可動レール
21 リンク
23 スライドピン
24 長穴(ガイド手段)
25 固定レール
26,27,36 スライダー
28 フロントストッパー
29 リアストッパー
33 トレー
34 支持ブラケット
35b トレーホルダー
38 焼き網ホルダー
38a 焼き網ホルダーの側部
W 食品(被調理品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7