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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061257
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】導光シート
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/122 20060101AFI20230424BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20230424BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20230424BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230424BHJP
【FI】
G02B6/122
F21V8/00 227
F21V8/00 241
F21V8/00 261
F21V8/00 282
G02B6/00 331
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171139
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】堀井 千尋
(72)【発明者】
【氏名】柏原 圭子
【テーマコード(参考)】
2H038
2H147
【Fターム(参考)】
2H038AA55
2H038BA01
2H147BG02
2H147BG17
2H147CA13
2H147CD02
2H147EA16A
2H147EA16B
2H147EA17B
2H147EA18A
2H147EA19A
2H147EA19B
2H147EA20A
2H147EA20B
2H147FC08
2H147FD01
2H147FD08
2H147FD15
2H147GA19
(57)【要約】
【課題】光を光源から離れた発光部へ導くことができる、フレキシブルな導光シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】厚みが30μm以上100μm以下であり、幅が50μm以上10mm以下であるコア層と、前記コア層を取り囲むように配置され、前記コア層よりも低い屈折率を有し、厚みが30μm以上200μm以下であるクラッド層とを備え、前記コア層は、幅方向に複数のコア配線を含む部位を有し、当該部位における前記複数のコア配線は、1本のコア配線の幅と、当該コア配線と隣り合うコア配線との間の距離との比が0.5:1~20:1であり、前記コア層は光取り出し部を備える、導光シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが30μm以上100μm以下であり、幅が50μm以上10mm以下であるコア層と、
前記コア層を取り囲むように配置され、前記コア層よりも低い屈折率を有し、厚みが30μm以上200μm以下であるクラッド層とを備え、
前記コア層は、幅方向に複数のコア配線を含む部位を有し、当該部位における前記複数のコア配線は、1本のコア配線の幅と、当該コア配線と隣り合うコア配線との間の距離との比が0.5:1~20:1であり、
前記コア層は光取り出し部を備える、導光シート。
【請求項2】
前記光取り出し部は、厚み方向に高さ1μm以上30μm以下である複数のプリズム形状を有する、請求項1に記載の導光シート。
【請求項3】
前記光取り出し部は、算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上50μm以下である凹凸形状を有する、請求項1に記載の導光シート。
【請求項4】
前記光取り出し部の少なくとも一部が外部に露出している、請求項1から3のいずれかに記載の導光シート。
【請求項5】
前記複数のコア配線を含む部位が少なくとも一部で屈曲している、請求項1から4のいずれかに記載の導光シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等に使用される導光板は、側面からの光を液晶パネルに導く役割を果たし、テレビ、デスクトップ型パーソナルコンピューターのモニター、ノート型パーソナルコンピューター、携帯電話機、カーナビゲーションなど幅広い用途で使用される。また、導光板を用いたバックライトは、照明用としても使用される。これまで、導光板には一般的にアクリル樹脂が使用されており(特許文献1等)、アクリル板にプリズム、ドット、リブ等が形成され、導光板として用いられている。
【0003】
しかしこれらはアクリル板などの基材を用いて構成されているため、これまでの導光板は柔軟性や耐熱性に乏しいという課題もあった。これまでにも、耐熱性等に優れる樹脂をコア層とクラッド層に用いた、低損失、高速伝送の光導波路が報告されているが(特許文献2)、当該技術の用途は光導波路や光電気複合基板に限定されていた。
【0004】
また、通常の導光板は、発光部周辺にLED等の光源と基板を一体成型しており、光源から離れた場所を発光部とすることは想定されていない。これまでの技術で光源と発光部を離れたところに設けようとすると、構造が複雑になってしまうという問題がある。例えば、LEDを導光板の内部に組み入れると、リブ成型とLED自体の厚みに制限があり、構造が複雑化する。さらには、これまでの導光板は全面を光らせる均一発光が一般的であったが、今後は様々な場面での導光が必要とされており、全面ではなく所望の場所のみ光らせたいというニーズもある。また、光源と発光部の間の光路に屈曲部がある場合は、通常のコア層を屈曲させるだけではほとんどの光が屈曲しきれず直進方向に透過してしまい、ロスが大きくなるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-141459号公報
【特許文献2】特開2007-84765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、光を光源から離れた発光部へ導くことができ、光路の屈曲部における光損失を低減できる、フレキシブルな導光シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、下記構成を有する導光シートによって、上記課題を解決し得ることを見いだした。そして、本発明者等は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の1つの局面に係る導光シートは、厚みが30μm以上100μm以下であり、幅が50μm以上10mm以下であるコア層と、前記コア層を取り囲むように配置され、前記コア層よりも低い屈折率を有し、厚みが30μm以上200μm以下であるクラッド層とを備え、前記コア層は、幅方向に複数のコア配線を含む部位を有し、当該部位における前記複数のコア配線は、1本のコア配線の幅と、当該コア配線と隣り合うコア配線との間の距離との比が0.5:1~20:1であり、前記コア層は光取り出し部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光を光源から離れた発光部へ導くことができ、光路の屈曲部における光損失を低減できる、フレキシブルな導光シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一つの実施形態に係る導光シートの構成を示す断面概略図である。
図2図2は、本実施形態の導光シートのコア層における、複数のコア配線を含む部位を示す断面概略図である。
図3図3は、本発明の他の実施形態に係る導光シートの構成を示す断面概略図である。
図4図4は、本実施形態の一つに係る導光シートの製造方法における、各工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について図面等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0012】
[導光シート]
まず、本実施形態の導光シートの構成について具体的に説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の導光シート10は、コア層1とクラッド層2とを少なくとも有する。
【0014】
導光シートにおける光路である、コア層1の厚みは30μm以上100μm以下である。また、コア層1のパターン幅は30μm以上10mm以下である。
【0015】
クラッド層2は、光路となるコア層1の周りを取り囲むように配置されており、コア層1の屈折率よりも低い屈折率を有する。そして、クラッド層2の厚みは、30μm以上200μm以下である。
【0016】
本実施形態の導光シート10では、コア層1のパターン幅が上記範囲であることによって、従来の光導波路におけるコア層で伝送していた光通信ではなく光そのものを伝送でき、さらに当該光を光源から離れた発光部へ導くことができる。本実施形態において、コア層1のパターン幅は、光源一つに対して必要なパターン幅である。例えば、複数の光源を用いる画像表示装置や照明装置などに使用する場合、コア層を所望のパターンに変更することで、光取り出し部の輝度を上げたり、面積を広げたりすることができる。
【0017】
本実施形態の導光シート10は、上述の通り、薄いコア層1と薄いクラッド層2を含む構成となっているため、非常に薄膜で柔軟性に優れているため、フレキシブルであり、例えば、曲面に組み込むことも可能である。
【0018】
本実施形態の導光シート10において、前記コア層は、図2に示すように、幅方向に複数のコア配線を含む部位を有している。本明細書において「コア配線」とは、入光部からコア層内に入った光が、光取り出し部まで光伝達される線状の道筋(光伝達部)を意味する。
【0019】
図2では、一例としてコア層が3本のコア配線を含んでいる部位を示しているが、コア配線の本数は特に限定されず、使用したい光源の数などによって、適宜パターン変更することが可能である。また、本実施形態の導光シートのコア層は、そのすべてが図2に示すような複数のコア配線からなる部位であってもよいし、一部に複数のコア配線からなる部位を有し、それ以外部位では1本のコア配線からなるコア層であってもよい。導光シートにおいて、光路(コア層)が屈曲部を有する場合、当該屈曲部が複数のコア配線からなる部位であることが好ましい。例えば、コア層が、光の入射部と出射部では1本のコア配線からなり、光路の途中にある屈曲部においてのみ複数のコア配線からなる部位を有していてもよい。
【0020】
このように、光路の屈曲部において、コア層が複数のコア配線で構成されていることにより、光路(コア層)のパターンを分岐させ、屈曲による光のロスを低減させることができ、導光効率を向上させることができる。
【0021】
複数のコア配線を含む部位における前記複数のコア配線は、1本のコア配線の幅と、当該コア配線と隣り合うコア配線との間の距離との比が0.5:1~20:1となっている。ここで、コア配線の幅とは、図2にwで示されている1本のコア配線の幅(w)であり、コア配線との間の距離とは、図2にdで示されている隣り合うコア配線間の距離を意味する。これらの比、すなわち前記幅(w):前記距離(d)が0.5:1~20:1となっている。前記幅(w):前記距離(d)が20:1を超えてしまうと、屈曲部での光のロスが大きくなり、導光効率を十分に上げることができない。一方で、前記幅(w):前記距離(d)が0.5:1より小さくなると、複数のコア配線からなる部位を有するコア層を形成することが難しくなると考えられる。これは、コアをUV硬化する過程でフォトマスクを介することにより、底面のパターン幅がコア幅に対して、1.1~1.3倍程度に広がってしまうため、隣同士のコア配線がつながってしまい、複数のコア配線による縞構造を十分に形成できないからである。
【0022】
さらに、本実施形態の導光シート10において、前記コア層は図1に示すように光取り出し部3を備えている。光取り出し部3は、光源から入射され光路(コア層)によって導光された光を取り出すための部位である。
【0023】
また、本実施形態の導光シート10は、図3に示すように、光の入射部5と出射部6を備えていることが好ましく、それにより光源4から出された光が、コア層1の入射部5から入射し、クラッド層2との界面で反射させ、コア層1の出射部6へ伝送することができる。
【0024】
(コア層)
本実施形態の導光シート10におけるコア層1は、上述の通り、厚みが30μm以上、100μm以下である。また、コア層のパターン幅は50μm以上10mm以下である。ここで、パターン幅とは、光の進行方向に対して垂直な方向の長さ(幅)をさす。
【0025】
さらに好ましい厚みの範囲は、40μm以上、60μm以下である。また、さらに好ましいパターン幅の範囲は、1mm以上、10mm以下である。
【0026】
本実施形態のコア層1は、図1に示されるような光取り出し部3を有している。
【0027】
前記光取り出し部3はプリズム形状を有することが好ましい。このようなプリズム形状の光取り出し部3を備えることによって、光取り出しの効率がより向上する。前記光取り出し部3が有するプリズム形状はコア層1の厚みの範囲内にある高さであれば特に限定はないが、厚み方向に高さ1μm以上、30μm以下であることが好ましい。プリズムの高さがこのような範囲であることによって、光取り出し部が割れることなく、光取り出し部面内が均一に光らせることができるという利点がある。前記プリズム形状の高さのより好ましい範囲は、1μm以上、10μm以下である。
【0028】
前記プリズムの形状については特に限定はなく、コア層から取り出したい光の種類や方向などによって適宜設定することができるが、例えば、溝状であっても、突起状であってもよく、また、三角柱等の形状であってもよい。好ましくは、三角柱の溝状の形状とする。また、光取り出し部3は複数のプリズム形状を有していてもよく、その場合、各プリズムの形状や高さは同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
本実施形態の光取り出し部3は、図1および3に示されるように、所定の高さを有する複数のプリズム形状を備えることが好ましいが、それ以外にも、算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上、50μm以下である凹凸形状を有していてもよい(図示せず)。光取り出し部3がこのような凹凸形状を有することによっても、光取りだしの効率がより向上する。前記算術平均粗さ(Ra)のより好ましい範囲は、1μm以上、30μm以下である。
【0030】
前記光取り出し部3は、少なくとも一部が外部に露出していることが好ましい。つまり、図1に示されるように、光取り出し部3の少なくとも一部はクラッド層2で覆われていないことが好ましい。このように光取り出し部3を外気(空気)にさらすことによって、光をより確実に取り出すことができる。
【0031】
また、図3に示すように、前記光取り出し部3の一部が外気に触れていることによって、外気に触れている側の反対側の面が出射部6となり、入射部5から入った光は、光取り出し部3で反射して、出射部6から取り出される。
【0032】
入射部5では、コア層はミラー構造となっているが、コア層のミラー部は、図3に示すようにクラッド層2で覆われていてもよい。これは露出面の加工により凹凸が大きくなった場合、光が粗面で散乱し損失が起こる恐れがあるが、コア層よりも屈折率が低い樹脂で凹凸を埋めることにより、その光損失が低減されるためである。
【0033】
また、コア層1の形状は図1~3においては長方形や正方形の形状であるが、コア層1の厚みとパターン幅が上述の範囲となっていれば、コア層1の形状はこれに限定されない。さらに、厚みとパターン幅が上述の範囲となっている限り、コア層1の厚みやパターン幅が一定である必要はなく、場所によって、厚みやパターン幅が増減していてもよい。
【0034】
コア層1は、上述の通り、幅方向に複数のコア配線を含む部位を有する。当該部位において、コア配線の本数は特に限定されず、使用したい光源の数などによって、適宜パターン変更することが可能である。具体的には、例えば、3本以上、40本以下のコア配線を含むことができる。
【0035】
本実施形態のコア層は、幅方向に複数のコア配線を含む部位を有していればよく、例えば、コア層のすべてが複数のコア配線からなる部位であってもよいし、一部に複数のコア配線からなる部位を有し、それ以外部位では1本のコア配線からなるコア層であってもよい。
【0036】
複数のコア配線を含む部位における前記複数のコア配線は、1本のコア配線の幅と、当該コア配線と隣り合うコア配線との間の距離との比が0.5:1~20:1となっている。詳細は上述した通りである。
【0037】
複数のコア配線は、例えば、後述する図4の工程(B)の露光・現像工程により、所定のパターンを有する配線を形成することができる。その際、形成する複数のコア配線の合計の幅が5mm以上10mm以下となっていればよい。例えば、幅50μmのコア配線を形成する場合、コア配線同士の間隔も50μm程度必要であるため、コア層1のパターン幅を5mmとするためには、50本の幅50μmのコア配線が50μm間隔で配列されるように配線パターンを形成することで、所望のコア層1を得ることができる。
【0038】
本実施形態において、コア層1の屈折率は後述するクラッド層2の屈折率より高ければ特に限定はされないが、例えば、コア層の屈折率はクラッド層の屈折率に対して0.5%以上60%以下の範囲であることが好ましい。より好ましい屈折率の範囲は、0.5%以上20%以下である。
【0039】
本実施形態のコア層1を構成する材料については、上述したような屈折率が得られるような硬化性樹脂であれば特に限定はされないが、例えば、エポキシ硬化系の樹脂、あるいは、アクリル硬化系の樹脂、または、シアネートエステル硬化系の樹脂、あるいはこれらを併用した樹脂、あるいは、シリコーン硬化系の樹脂等を例示できる。いずれも導光路を構成する部材として使用されるため、硬化物の透明性が高いことが必要である。
【0040】
より具体的には、光硬化すると共に熱硬化もする樹脂が好ましく、例えば、エポキシ硬化系樹脂などを使用することができる。耐熱性や耐薬品性、電気絶縁性に優れるという利点があるためである。
【0041】
これらの中でも、特に、屈折率と粘度が多少異なる樹脂を2種類以上配合した樹脂を使用することが好ましい。露光後の熱処理時に屈折率分布を生成しやすく、また、屈折率分布を制御しやすいという利点があるためである。
【0042】
さらに具体的な樹脂組成物の例をいくつか以下に挙げる。
【0043】
一つ目の具体例としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールに1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサンを付加して得られるエポキシ樹脂と、ブチラール樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、を含む樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0044】
2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールに1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサンを付加して得られるエポキシ樹脂の構造は、下記化学式(1)で表される。
【0045】
【化1】
【0046】
式(1)中、RはC2m+1であり、nは自然数であり、3つの繰り返し単位の中でnの値は異なる場合がある。
【0047】
上記エポキシ樹脂は、例えば、ダイセル化学工業(株)社製のEHPE3150を使用することができる。このエポキシ樹脂は、脂環式であり、透明性が高く、融点約85℃の多官能エポキシ樹脂であり、ワニスをベースフィルムにキャストして乾燥してフィルム化するのに適し、さらに硬化物の耐熱性をも高めることができる。
【0048】
前記エポキシ樹脂は、全樹脂中の30~80重量%の割合で配合されることが好ましい。この理由は、エポキシ樹脂の配合量が30重量%未満になると、硬化後の耐熱性が低下し、さらにフィルムのタック性が悪化するからであり、逆に、80重量%を超えると、耐熱性の低下を抑制できるものの、フィルムの可とう性(柔軟性)が低下し、取り扱い時にクラックが生じる恐れがあるからである。
【0049】
ブチラール樹脂は、以下の化学式(2)で表される。
【0050】
【化2】
【0051】
式(2)中、x、y、zは自然数であり、Rはプロピル基を示す。
【0052】
ブチラール樹脂は、工業用試薬、化学実験用試薬として販売され、工業用樹脂としては電気化学工業(株)社製のデンカブチラールを挙げることができる。ブチラール樹脂の重合度は、約630~2400(重量平均の分子量に換算した場合には、約7万~30万)であり、x、y、zの比率は、重量比で、xが2~13、yが12~19、zが71~83のものが製造されている。ブチラール樹脂は、透明性が高く、光伝搬時の損失を低く抑えることができる。また、ビニルアルコール由来の水酸基を含有するためにカチオン重合の連鎖移動剤としての働きにより、樹脂組成物の硬化性が高まり、被着物との密着性も向上し、さらに分子量が大きいため、乾燥塗膜のタック性を抑え、脆さを低減することができる。また、マスク等で部分的に露光した後に現像してパターンを形成する場合には、現像時のクラックやパターン欠け等の欠陥を抑制することも可能となる。
【0053】
ブチラール樹脂は、全樹脂中の1~30重量%の割合で配合されることが好ましい。この理由は、ブチラール樹脂の配合量が1重量%未満になると、効果が得られないからであり、逆に、30重量%を超えるとワニスの粘性が著しく高まり、ワニスの溶剤含有率を高めると塗工が可能となるが、溶剤の使用量が増加し、コスト上昇の要因となり、さらにウェット膜の厚さが乾燥後に著しく低下するからである。
【0054】
ブチラール樹脂の分子量は、重合度で800以下(重量平均の分子量に換算すると、約10万以下)が好ましい。この理由は、重合度が800を超えると、ワニスの粘性が著しく高くなり、前述した不都合が生じるからであり、逆に、分子量が低下すると、乾燥塗膜のタック性や脆さ改善等の効果が低くなる恐れがあるからである。実際、電気化学工業(株)製から過去に提供されていたブチラール樹脂のうち最も低重合度のものは、300(重量平均の分子量に換算すると約3万)であり、この範囲の重合度までであれば、充分な効果を維持することができる。
【0055】
ビスフェノール型エポキシ樹脂とは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂であり、分子量により室温で液体から固体の状態を有する。ビスフェノール型エポキシ樹脂はベンゼン環を有することから、硬化物の屈折率を高めることができ、クラッドよりも屈折率の高いコアを形成するのに適している。屈折率を高めるためには、ベンゼン環の含有率の高い樹脂が適しており、この点に限ると、ナフタレン型エポキシ樹脂やビフェニル型エポキシ樹脂も好適であるが、共役系が長くなり、コアをパターニングする際に使用される領域の紫外線を吸収するため、硬化性が悪化して好ましくない。
【0056】
ビスフェノール型エポキシ樹脂は、全樹脂中の5~60重量%の範囲で配合することが好ましい。この理由は、配合量が5重量%未満になると、組成物の硬化物の屈折率が向上せず、コアとしての機能が発現し難くなるからである。逆に、配合量が60重量%を超えると屈折率は高くなるが、硬化物の耐熱性が低下し、電子機器の基板として一般的に使用されるFR4グレードのプリント配線板の耐熱温度(Tg)よりも低下し、使用環境での信頼性が低下する恐れがあるからである。
【0057】
一般に、硬化性樹脂を硬化させるには、硬化剤及び又は硬化開始剤(硬化触媒)が必要であるが、いずれも、硬化物における高い透明性を実現できるものであれば限定なく使用できる。例えば、カチオン重合開始剤等が好ましく例示される。
【0058】
本実施形態の導光シートを形成する際には、製造をより簡易にするという観点から、上述したような樹脂をフィルム状にして、コア層形成用樹脂フィルムとして使用することが好ましい。
【0059】
カチオン重合開始剤としては、光や熱、電子線等によりルイス酸又はブレンステッド酸を発生するもので、透明性を損なわないものであれば良い。カチオン重合開始剤は、エポキシ樹脂の自重合を進めることができ、フェノール性水酸基を有する化合物、アミン類などの付加型硬化に比べて着色し難いため、光導波路(コア層)の用途に適している。また、光によってカチオンを発生させる光硬化型の開始剤は、短時間の光照射によって一旦硬化反応が開始されると、光を照射することなく、加熱により硬化反応が促進されるため、製造プロセスを簡略化して製造効率をも高めることができる。
【0060】
さらに、前記樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述した以外のエポキシ樹脂やポリマーを含有させることもできる。また、その他、カップリング剤等の添加剤を配合してもよい。
【0061】
コア層用樹脂組成物の二つ目の具体例としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールに1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサンを付加して得られるエポキシ樹脂と、上記化学式(2)で表されるブチラール樹脂と、水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンと、カチオン重合開始剤と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0062】
水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンは、CASナンバー68441-49-6に代表されて、分子鎖内に水酸基が必ず存在し、分子鎖末端に水酸基を有するものである。例えば、ダイセル化学工業(株)製のエポリード(登録商標)には、分子内、分子末端に水酸基を有する品番PB3600、分子内に水酸基を有する品番PB4700を挙げることができる。
【0063】
水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンは、液状であり、分子鎖が動き易く、水酸基を有するため、カチオン硬化系における連鎖移動効果を有し、重合速度(硬化速度)を高めることができる。また、エポキシ樹脂との相溶性が良く、透明性を維持することができる。さらに前述した連鎖移動剤である多官能アルコールとは異なり、分子量の大きな脂肪族の非グリシジルエーテルのエポキシ樹脂であることから、エポキシ基の反応性は脂環式エポキシと同程度であり、硬化系に取り込まれるため、硬化物の吸湿性や耐熱性を悪化させ難くなる。この結果、硬化物を光導波路のクラッドに用いた場合には、金属との密着力を高めることができる。
【0064】
水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンは、全樹脂中の1~30重量%の割合で配合することが好ましい。この理由は、配合量が1重量%未満になると、重合速度を高める効果が得られないからであり、逆に、配合量が30重量%を超えると、硬化物の耐熱性が低下し、フィルムのタック性が悪化するからである。さらに、水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンの配合量は、2~15重量%の範囲とすることが好ましい。
【0065】
また前記樹脂組成物にも、本発明の目的を損なわない範囲で、前記エポキシ樹脂とは異なる樹脂であるエポキシ樹脂、または各種ポリマーなどを併用しても良い。
【0066】
カチオン重合開始剤としては、前述したカチオン重合開始剤と同様のものを用いることができ、他の添加剤に関しても前述した添加剤と同様のものを用いることができる。
【0067】
三つ目の具体例としては、フェノキシ樹脂と、室温で固形のビスフェノール型エポキシ樹脂と、室温で液状のビスフェノール型エポキシ樹脂と、カチオン重合開始剤と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0068】
フェノキシ樹脂は、ビスフェノール型のエポキシ樹脂の分子量が数万以上の高分子であり、室温で固形のビスフェノール型エポキシ樹脂はオリゴマ、室温で液状のビスフェノール型エポキシ樹脂はモノマと2~3量体の混合物である。前記フェノキシ樹脂は、樹脂全体に対して1~10重量%の割合で配合することが好ましい。この理由は、配合量が1重量%未満になると、フェノキシ樹脂の効果(良好なワニス塗工性やタック性の抑制、現像時のコア欠陥抑制など)が発揮されないからであり、逆に、配合量が10重量%を超えると、ワニスの粘性が著しく増加し、ワニスの溶剤含有率を高めると塗工は可能となるが、溶剤使用量が増加して、コストが上昇し、さらにウェット膜の厚さが、乾燥後に著しく減少する恐れがあるからである。
【0069】
室温で液状のビスフェノール型エポキシ樹脂は、10~40重量%の割合で配合することが好ましい。この理由は、配合量が10重量%未満になると、フィルムの適度なタック性が発現され難くなり、溶融性が悪化し、ラミネートし難くなる恐れがあるからであり、逆に、配合量が40重量%を超えると、フィルムのタック性が強すぎてしまうからである。
【0070】
前述したフェノキシ樹脂と室温で液状のビスフェノール型エポキシ樹脂とを除く、残りの部分には室温で固体のビスフェノール型エポキシ樹脂のみを使用しても良い。また、本発明の目的を損なわない範囲で、前記エポキシ樹脂とは異なる樹脂である、既述のエポキシ樹脂やオキセタン樹脂、あるいは各種ポリマーなどを併用しても良い。
【0071】
カチオン重合開始剤としては、前述したカチオン重合開始剤と同様のものを用いることができ、他の添加剤に関しても前述した添加剤と同様のものを用いることができる。
【0072】
本実施形態の導光シートを形成する際には、製造をより簡易にするという観点から、上述したような樹脂をフィルム状にして、コア層用フィルムとして使用することが好ましい。
【0073】
よって、上述したような樹脂組成物は、最終的にフィルム状とするために、有機溶媒等の溶剤に溶解してワニスを作製する。フィルムの形成は、一般的な方法を用いることができる。具体的には、前記樹脂ワニスを支持体上に塗工、乾燥することによって得られる。この際に、加工工程での塗工性を高めるために、各種の界面活性剤を配合しても良い。さらに、支持体への濡れ性を向上させるレベリング剤、気泡の発生を防止する消泡剤等を用いても良い。
【0074】
支持体としては通常使用されている支持体(キャリアフィルムなど)を限定なく使用できる。
【0075】
(クラッド層)
図2に示すように、クラッド層2は、上述したコア層1を取り囲む形で配置されている。クラッド層2の厚みは、30μm以上200μm以下であるが、ここでいう厚みとは、積層前のドライフィルムの状態での厚みを指す。これは、後述する図4(C)におけるドライフィルム(第一クラッド層用フィルム2’又は第二クラッド層用フィルム2’’)の厚みに相当する。
【0076】
前記ドライフィルム(第一クラッド層用フィルム2’又は第二クラッド層用フィルム2’’)を積層し、ラミネート(熱+加圧)することによって、クラッド層はコア配線の間にも充填される。
【0077】
クラッド層2の厚みが前記範囲となることにより、フレシキブル性とコア層の保護を両立できるという利点がある。前記クラッド層2の厚みは、より好ましくは、35μm以上150μm以下である。
【0078】
本実施形態において、クラッド層2の屈折率は前記コア層1の屈折率より低ければ特に限定はされないが、例えば、コア層の屈折率がクラッド層の屈折率に対して0.5%以上60%以下の範囲となるような屈折率であることが好ましい。より好ましい屈折率の範囲は、0.5%以上20%以下の範囲となるような屈折率である。
【0079】
本実施形態において、クラッド層2を構成する材料については、特に限定はされず、上述したコア層1を構成する材料よりも導波光の伝送波長における屈折率が低い材料を適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。
【0080】
より具体的には、光硬化すると共に熱硬化もする樹脂が好ましく、例えば、エポキシ硬化系樹脂などを使用することができる。耐熱性や耐薬品性、電気絶縁性に優れるという利点があるためである。
【0081】
さらに具体的な樹脂組成物の例を挙げると、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールに1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサンを付加して得られるエポキシ樹脂と、ブチラール樹脂と、光重合開始剤を含む樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0082】
前記エポキシ樹脂、ブチラール樹脂及び光重合開始剤、並びにそれらの配合量については、詳細は前記コア層について述べたものと同様である。
【0083】
さらに、前記樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述した以外のエポキシ樹脂やポリマーを含有させることもできる。例えば、必要に応じて、水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエン、ビスフェノール型エポキシ樹脂、及び、水素添加ビスフェノール型エポキシ樹脂から選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0084】
水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエン及びビスフェノール型エポキシ樹脂としては、前記コア層について述べたものと同様である。
【0085】
特に、水素添加ビスフェノール型エポキシ樹脂を含む組成物の硬化物は、FR4等の耐熱性、耐湿性を有する基板と複合化するなどの用途ではなく、柔軟性が要求される屈折率の低いクラッドの用途に適している。
【0086】
水素添加ビスフェノール型エポキシ樹脂とは、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型エポキシ樹脂のベンゼン環に水素を添加して、シクロヘキサン環に変性したものであり、透明性に優れ、分子骨格がフレキシブルであり、2官能エポキシである。さらに、分子骨格からグリシジルエーテルの形で側鎖として突き出た、所謂、外部エポキシであるため、カチオン硬化システムでの反応性が内部エポキシよりも劣り、組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)が低下し、柔軟性に優れた導光シートとすることができる。
【0087】
さらに、樹脂組成物はフィルム状とするため、フィルムのタック性を抑制する必要がある。このような観点から、オリゴマタイプのビスフェノール型エポキシ樹脂に対して水素を添加して得られる、室温で固体の樹脂を用いることが好ましい。
【0088】
水素添加ビスフェノール型エポキシ樹脂は、全樹脂中の20~60重量%の割合で配合することが好ましい。この理由は、配合量が、20重量%未満になると柔軟性が発現し難くなり、逆に、配合量が60重量%を超えると、硬化物の架橋密度が低下し過ぎて、取り扱い性が低下するからである。
【0089】
また、クラッド層用樹脂組成物にも、その他、カップリング剤等の添加剤を配合してもよい。
【0090】
本実施形態の導光シートを形成する際には、製造をより簡易にするという観点から、上述したような樹脂をフィルム状にして、クラッド層形成用樹脂フィルムとして使用することが好ましい。フィルムの形成については、上述のコア層用フィルムと同様の手段を用いることができる。
【0091】
(用途)
上述したようなコア層およびクラッド層を備える本実施形態の導光シートは、フレキシブルで、かつ、光伝送効率及び信頼性に優れており、光源から離れた場所へ光を導くことが可能であるため、様々な電子機器に好適に使用することができる。また、上述したようなコア層およびクラッド層を備える本実施形態の導光シートは、さらに透明度が高いため、使用方法が限定されないといった利点もある。例えば、自動車の表示パネル、車のインサート成形で製造されるインストルメントパネルのインジケーターライトや、アンビエントライト等の用途に使用でき、産業上非常に有用である。
【0092】
[導光シートの製造方法]
上述したような導光シートの製造方法は特に限定されないが、いくつか実施形態を以下に具体的に説明する。
【0093】
(第一実施形態)
本実施形態の導光シートが、プリズム形状を有する光取り出し部を備える場合、その製造方法としては、少なくとも以下の工程:
工程(1):光取り出し用プリズム形成部を備えるプリズム形成用型を用いて、コア層用フィルムに光取り出し部を形成する工程、
工程(2):前記コア層用フィルムの一部を除去する工程、
工程(3):第一クラッド層用フィルムを、前記コア層用フィルムの上面に積層し、且つ、工程(2)において除去した部位に充填する工程、
工程(4):前記コア層用フィルム及び前記第一クラッド層用フィルムに硬化処理を施しし、コア層及び第一クラッド層からなる第一クラッド-コア積層体を形成する工程、
工程(5):第一クラッド-コア積層体をプリズム形成用型から剥離して、前記第一クラッド-コア積層体における前記第一クラッド層側を仮固定材に積層する工程、
工程(6):第二クラッド層用フィルムを、前記第一クラッド-コア積層体に積層し、前記第二クラッド層用フィルムに硬化処理を施し、第一クラッド層、コア層および第二クラッド層を有する積層シートを形成する工程、
工程(7):前記積層シートにおける第二クラッド層において、前記コア層の光取り出し部と少なくとも一部が重なる部位を除去する工程、
工程(8):前記積層シートを、前記仮固定材から剥離する工程、及び、
工程(9):前記積層シートの端においてコア層の一部を露出させ、光入射部を設ける工程。
を含む製造方法が挙げられる。
【0094】
これらの工程は、上記順序で行うことが好ましい。
【0095】
以下、製造方法の各工程について図面を用いて具体的に説明する。
【0096】
(工程(1))
工程(1)は、図4(A)に示すように、コア層用フィルム1’にプリズム形状からなる光取り出し部3を形成する工程である。
【0097】
具体的には、光取り出し用プリズム形成部31を備えるプリズム形成用型30に、コア層用樹脂組成物を用いて形成されたコア層用フィルム1’を当接し、必要に応じて減圧下で加熱加圧して貼り合わせて積層する。それにより、前記コア層用フィルムに前記プリズム形成部の形状を転写して光取り出し部3を形成できる。
【0098】
前記コア層用フィルム1’は未硬化の樹脂フィルムであり、当該フィルムに使用するコア層用樹脂組成物としては、上述したような樹脂組成物を用いることができる。積層した後、コア層用フィルム1’の支持体7は剥離する。
【0099】
プリズム形成用型30としては、前記プリズム形成部31を備えている限り特に限定はない。材質、形状(寸法)ともに用途に応じて適宜選択できる。一例を挙げると、例えば、クロム合金ステンレス工具鋼板に所望のプリズム形状を機械加工したもの等の型を使用できる。
【0100】
光取り出し部の形状は、コア層から取り出したい光の種類や方向などによって適宜設定することができる。好ましくは、本工程では、厚み方向に高さが1μm以上30μm以下である複数のプリズム形状を有する光取り出し部を形成する。
【0101】
(工程(2))
工程(2)は、前記コア層用フィルムの一部を除去し、コア層を形成する工程である。つまり、クラッド層2を、コア層1を取り囲むように配置するために、クラッド層を充填させるための部位(例えば、コア層の両端)におけるコア層用フィルムを除去する。
【0102】
具体的には、図4(B)に示すように、マスク8を使用して、前記コア層用フィルム1’に紫外線等の活性エネルギー線(図4(B)において矢印で示される)を照射し、熱処理によって照射した部分の樹脂を硬化させ、その後、現像により、不要な未硬化部分を除去して、所望のコア層のパターンを得ることができる。
【0103】
(工程(3))
次に、図4(C)に示すように、第一クラッド層用フィルム2’を前記コア層用フィルム1’の上面に積層する。具体的には、プリズム形成用型30上に積層されている、前記コア層用フィルム1’に、第一クラッド層用フィルム2’を当接し、減圧下で加熱加圧して貼り合わせる。貼り合わせる前には、前記コア層用フィルム1’の表面をプラズマ処理などによって表面処理していてもよい。
【0104】
ここで、第一クラッド層とは、コア層の上面にあるクラッド層をさす。第一クラッド層用フィルム2’はクラッド層用樹脂組成物を用いて形成された未硬化の樹脂フィルムであり、クラッド層用樹脂組成物としては、上述したような樹脂組成物を使用することができる。第一クラッド層用フィルム2’は未硬化であるため、前記コア層用フィルム1’の上面に積層することによって、工程(2)において除去した部位にも充填される。積層した後、第一クラッド層用フィルム2’の支持体7は剥離する。
【0105】
(工程(4))
工程(4)は、図4(D)に示すように、前記コア層用フィルム1’及び前記第一クラッド層用フィルム2’に硬化処理を施しし、コア層1及び第一クラッド層2からなる第一クラッド-コア積層体を形成する工程である。
【0106】
硬化処理としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射し、熱処理によって前記コア層用フィルム1’及び前記第一クラッド層用フィルム2’を硬化させることができる。
【0107】
なお、前記活性エネルギー線の照射において、露光条件としては、用いる樹脂組成物の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、超高圧水銀灯を用い、波長365nmの光線を、500~2500mJ/cmとなるように露光する条件等が選ばれる。
【0108】
また、さらに、光硬化させた後に、熱による後キュアを行うことも硬化を確実にする点から有効である。後キュアのための熱処理条件としては、温度80~160℃程度、時間20~120分間程度が好ましい。しかしながら、特にこの範囲に限られるものではなく、用いる樹脂組成物等によって最適化することが重要であることは言うまでもない。
【0109】
(工程(5))
工程(5)は、前記第一クラッド-コア積層体をプリズム形成用型30から剥離して、前記第一クラッド-コア積層体における前記第一クラッド層側を仮固定材9に積層する工程である。
【0110】
具体的には、図4(E)に示すように、第一クラッド層2側が仮固定材9と接するように、前記第一クラッド-コア積層体と仮固定材9を当接し、必要に応じて減圧下で加熱加圧して貼り合わせる。この工程で、前記第一クラッド-コア積層体においては、コア層の光取り出し部3がある方が上面となる。
【0111】
ここで使用する仮固定材9としては特に限定はされないが、例えば、基板に低粘着性の樹脂層が塗工された基板、例えば工程搬送用の仮固定基板等を使用できる。
【0112】
このように、プリズム形成用型30と仮固定材9を使用することによって、従来のような基板を有する導光板ではなく、導光シートを製造できるというメリットがある。
【0113】
(工程(6))
工程(6)では、図4(F)に示すように、まず、支持体7に積層された第二クラッド層用フィルム2’’と前記第一クラッド-コア積層体における前記コア層が露出する面側とを当接し、必要に応じて減圧下で加熱加圧して貼り合わせ、積層する。貼り合わせる前には、前記コア層1の表面をプラズマ処理などによって表面処理していてもよい。第二クラッド層用フィルム2’’を積層した後、第二クラッド層用フィルム2’’の支持体7は剥離する。
【0114】
ここで、第二クラッド層とは、最終的に得られる導光シートにおいてコア層の下面にあるクラッド層をさす。第二クラッド層用フィルム2’’はクラッド層用樹脂組成物を用いて形成された未硬化の樹脂フィルムであり、クラッド層用樹脂組成物としては、上述したような樹脂組成物を使用することができる。
【0115】
その後、第二クラッド層用フィルム2’’に第一クラッド層用フィルム2’等において行った硬化処理と同様の硬化処理を行い、第二クラッド層用フィルム2’’を硬化させ、第一クラッド層、コア層および第二クラッド層を有する積層シートを形成する。
【0116】
(工程(7))
工程(7)は、前記積層シートにおける第二クラッド層において、前記コア層の光取り出し部と少なくとも一部が重なる部位を除去する工程である。
【0117】
具体的には、図4(G)に示すように、マスク8を使用して、前記第二クラッド層2に紫外線等の活性エネルギー線(図4(G)において矢印で示される)を照射し、熱処理によって照射した部分の樹脂を硬化させる(いわゆるアフターキュア)。その後、現像により、不要な未硬化部分を除去して、所望の部位以外の第二クラッド層を除去することができる。
【0118】
この工程によって、得られる導光シートの光取り出し部3の少なくとも一部が外部に露出していることとなる。このように光取り出し3を外気(空気)にさらすことによって、光をより確実に取り出すことができる。
【0119】
(工程(8))
次に、前記積層シートを、前記仮固定材9から剥離する。
【0120】
得られる積層シートでは、図4(H)に示すように、前記工程(7)によって第二クラッド層2に開口部aが形成され、コア層1の光取り出し部3が露出している。
【0121】
仮固定材9から剥離した積層シートは、図4(I)に示すように反転させ、第二クラッド層2の開口部aおよび露出しているコア層1の光取り出し部3が下面となるようにする。
【0122】
(工程(9))
工程(9)では、図4(J)に示すように、前記積層シートの端において、クラッド層を除去し、コア層の一部を露出させ、本実施形態の導光シート10を得る。露出されたコア層の部分が、導光シート10の入射部となる。
【0123】
前記露出部の形状は特に限定はされないが、図4(J)に示すような傾斜面(ミラー部)であってもよい。
【0124】
前記傾斜面を形成する手段については、特に限定はなく、例えば、導光シートの下から入射した光を、入光部端部に45度の傾斜面を形成することで90°に偏光させる。例えば、ダイシング加工機により45度のブレードを使用することによって、形成することができる。
【0125】
上述したような製造方法によれば、従来、導光板に必要とされていた基板を用いることなく、薄くてフレキシブルな導光シートを得ることができる。
【0126】
(第二実施形態)
上記製造方法以外にも、本実施形態の導光シートを製造する方法としては、少なくとも以下の工程:
工程(1):第一仮固定材にコア層用フィルムを積層する工程、
工程(2):前記コア層用フィルムの一部を除去し、コア層を形成する工程、
工程(3):第一クラッド層用フィルムを、前記コア層用フィルムの上面に積層し、且つ、工程(2)において除去した部位に充填する工程、
工程(4):前記コア層用フィルム及び前記第一クラッド層用フィルムに硬化処理を施し、コア層及び第一クラッド層からなる第一クラッド-コア積層体を形成する工程、
工程(5):第一クラッド-コア積層体を第一仮固定材から剥離して、反転させ、前記第一クラッド-コア積層体における前記第一クラッド層側を第二仮固定材に積層する工程、
工程(6):露出した前記コア層に凹凸形状を有する光取り出し部を形成する工程、
工程(7):第二クラッド層用フィルムを、前記第一クラッド-コア積層体に積層し、前記第二クラッド層用フィルムに硬化処理を施し、第一クラッド層、コア層および第二クラッド層を有する積層シートを形成する工程、
工程(8):前記積層シートにおける第二クラッド層において、前記コア層の光取り出し部と少なくとも一部が重なる部位を除去する工程、
工程(9):前記積層シートを、前記第二仮固定材から剥離する工程、及び、
工程(10):前記積層シートの端においてコア層の一部を露出させ、光入射部を設ける工程、を含む製造方法が挙げられる。
【0127】
これらの工程は、上記順序で行うことが好ましい。
【0128】
第二実施形態と、前記第一実施形態との主な違いは、コア層における光取り出し部の形成のタイミングと手段である。第二実施形態では、光取り出し部をコア層などを形成した後に行い、また、第一実施形態のようなプリズム形成用型を使用せずに凹凸形状を有する光取り出し部を形成する。具体的には、工程(6)において、サンドブラスト、レーザー加工等で凹凸をつけることにより、光を拡散できる光取り出し部3を形成する。凹凸形状は、算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上50μm以下の凹凸形状であることが好ましい。
【0129】
また、プリズム形成用型を使用しないため、代わりに工程(1)~(4)において、第一仮固定材を使用し、工程(5)で積層シートを反転させるために、第二仮固定材を使用する。これら第一仮固定材および第二仮固定材としては、第一実施形態の仮固定材と同様のものを使用できる。
【0130】
上記以外の工程については、第一実施形態と同様の方法で行うことができる。
【0131】
(第三実施形態)
さらに、本実施形態の導光シートを製造する方法としては、少なくとも以下の工程:
工程(1):第一仮固定材に、コア層用樹脂組成物を用いて形成されたコア層用フィルムを積層する工程、
工程(2):前記コア層用フィルムの一部を除去し、コア層を形成する工程、
工程(3):第一クラッド層用フィルムを、前記コア層用フィルムの上面に積層し、且つ、工程(2)において除去した部位に充填する工程、
工程(4):前記コア層用フィルム及び前記第一クラッド層用フィルムに硬化処理を施しし、コア層及び第一クラッド層からなる第一クラッド-コア積層体を形成する工程、
工程(5):第一クラッド-コア積層体を第一仮固定材から剥離して、反転させ、前記第一クラッド-コア積層体における前記第一クラッド層側を第二仮固定材に積層する工程、
工程(6):第二クラッド層用フィルムを、前記第一クラッド-コア積層体に積層し、前記第二クラッド層用フィルムに硬化処理を施し、第一クラッド層、コア層および第二クラッド層を有する積層シートを形成する工程、
工程(7):前記積層シートにおける第二クラッド層の一部を除去し、コア層が露出した開口部を形成する工程、
工程(8):露出した前記コア層に凹凸形状を有する光取り出し部を形成する工程、
工程(9):前記積層シートを、前記第二仮固定材から剥離する工程、及び、
工程(10):前記積層シートの端においてコア層の一部を露出させ、光入射部を設ける工程
を含む製造方法を用いることもできる。
【0132】
第三実施形態と、前記第二実施形態との主な違いは、コア層における光取り出し部を形成するタイミングである。第二実施形態では、コア層に光取り出し部を形成してから、第二クラッド層を形成し、その後、光取り出し部と重なる部位の第二クラッド層を除去しているが、第三実施形態では、まず、第一クラッド層、コア層および第二クラッド層を有する積層シートを形成してから、第二クラッド層に開口部を設け、露出したコア層に光取り出し部を形成する。
【0133】
この場合の光取り出し部の形成には、第二実施形態と同様にサンドブラスト等の手段を用いることができる。
【0134】
上記以外の工程については、第二実施形態と同様の方法で行うことができる。
【0135】
(第四実施形態)
上述の実施形態では、コア層を先に形成しているが、第一クラッド層を最初に形成することもできる。具体的には、少なくとも以下の工程:
工程(1):光取り出し用プリズム形成部を備えるプリズム形成用型を用いて、第一クラッド層用フィルムを積層する工程、
工程(2):前記第一クラッド層用フィルムにおける、光取り出し部に該当する部分を除去する工程、
工程(3):コア層用フィルムを前記第一クラッド層フィルムの上面に積層し、工程(2)において除去した部位に充填し、プリズム形状を有する光取り出し部を形成する工程、
工程(4):前記コア層用フィルム及び前記第一クラッド層用フィルムに硬化処理を施しし、コア層及び第一クラッド層からなる第一クラッド-コア積層体を形成する工程、
工程(5):第二クラッド層用フィルムを、前記第一クラッド-コア積層体に積層し、前記第二クラッド層用フィルムに硬化処理を施し、第一クラッド層、コア層および第二クラッド層を有する積層シートを形成する工程、及び、
工程(6):前記積層シートの端においてコア層の一部を露出させ、光入射部を設ける工程、
を含む製造方法を用いることもできる。
【0136】
なお、本実施形態の導光シートは、コア層の少なくとも一部に、複数のコア配線を含む部位を有するが、そのような複数のコア配線のパターン形成は、図4(B)に示すような、コア層の露光現像により形成される。より具体的には、コア配線は、所望の配線パターンのネガマスクを使用することで配線部を硬化し、その後、現像により不要な部分を除去することによって形成される。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、導光材料および導光シート、並びにその製造方法に関する技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0138】
1 コア層
1’ コア層用フィルム
2 クラッド層
2’ 第一クラッド層用フィルム
2’’ 第二クラッド層用フィルム
3 光取り出し部
4 光源
5 入射部
6 出射部
7 支持体
8 マスク
9 仮固定材
10 導光シート
30 プリズム形成用型
31 プリズム形成部
a 開口部
図1
図2
図3
図4