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特開2023-6126レンズ制御装置、眼鏡レンズ装置、眼鏡、制御方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006126
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】レンズ制御装置、眼鏡レンズ装置、眼鏡、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/02 20060101AFI20230111BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20230111BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20230111BHJP
   A61B 3/028 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G02C7/02
G02C11/00
G02B3/14
A61B3/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108548
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】521079488
【氏名又は名称】ViXion株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】川合 忠章
(72)【発明者】
【氏名】内海 俊晴
【テーマコード(参考)】
2H006
4C316
【Fターム(参考)】
2H006BA00
2H006CA00
4C316AA13
4C316AA21
4C316FC07
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】レンズを通じて視認する装用者の視線が変更されても、当該レンズの光軸から装用者の視線が許容範囲を超えるほど外れることが抑制され、当該レンズの本来の機能を発揮することを可能にする。
【解決手段】光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータが変更可能な光軸可変レンズ3を制御するレンズ制御装置10であって、装用者の視線方向を検出する視線方向検出部21A,21Bの検出結果に基づいて、前記少なくとも一方の光軸パラメータが変化するように、前記光軸可変レンズを制御する制御部11を有することを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータが変更可能な光軸可変レンズを制御するレンズ制御装置であって、
装用者の視線方向を検出する視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記少なくとも一方の光軸パラメータが変化するように、前記光軸可変レンズを制御する制御部を有することを特徴とするレンズ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ制御装置において、
前記光軸可変レンズは、屈折面の形状が変化することにより前記少なくとも一方の光軸パラメータが変化する形状可変レンズであることを特徴とするレンズ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレンズ制御装置において、
前記形状可変レンズは、2種類の液体の界面を前記屈折面とし、印加電圧に応じて該界面の形状を変更可能な液体レンズであることを特徴とするレンズ制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレンズ制御装置において、
前記制御部は、前記光軸可変レンズの焦点距離が前記少なくとも一方の光軸パラメータに対応する焦点距離に変化するように、前記光軸可変レンズを制御することを特徴とするレンズ制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレンズ制御装置において、
前記制御部は、前記光軸可変レンズの焦点距離を維持しつつ、前記少なくとも一方の光軸パラメータが変化するように、前記光軸可変レンズを制御することを特徴とするレンズ制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレンズ制御装置において、
前記装用者の視線方向が基準方向であるときの前記光軸可変レンズの焦点距離を設定変更する設定変更部を有することを特徴とするレンズ制御装置。
【請求項7】
光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータが変更可能な光軸可変レンズと、
前記光軸可変レンズを制御するレンズ制御装置とを備えた眼鏡レンズ装置であって、
装用者の視線方向を検出する視線方向検出部を備え、
前記レンズ制御装置として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のレンズ制御装置を用いることを特徴とする眼鏡レンズ装置。
【請求項8】
請求項7に記載の眼鏡レンズ装置を備え、
前記光軸可変レンズが眼鏡フレームに保持されていることを特徴とする眼鏡。
【請求項9】
光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータが変更可能な光軸可変レンズを制御する制御方法であって、
装用者の視線方向を検出する視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記少なくとも一方の光軸パラメータが変化するように、前記光軸可変レンズを制御する制御工程を有することを特徴とする制御方法。
【請求項10】
光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータが変更可能な光軸可変レンズを制御するレンズ制御装置のコンピュータを機能させるプログラムであって、
装用者の視線方向を検出する視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記少なくとも一方の光軸パラメータが変化するように、前記光軸可変レンズを制御する制御手段として、前記コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ制御装置、眼鏡レンズ装置、眼鏡、制御方法、プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、近視の発症又は進行を遅延させる目的で、油/水封入レンズ等の可変焦点レンズを電気的に制御し、可変焦点レンズの焦点距離を変化させる制御を行う眼鏡レンズ装置が開示されている。この装置では、可変焦点レンズを着用した近視の装用者に対し、ピントの合う状態の焦点距離とプラスパワー(+3D)に対応する焦点距離(ピントの合わない状態の焦点距離)との切り替えを、装用者が感知できないほど高い周波数で行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-173825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
装用者は、眼鏡レンズ装置の使用中に視線方向を変更することがある。例えば、装用者が、視認対象物を近くのものから遠方のものへ変更するとき(近方視から遠方視へ切り替えるとき)、装用者の視線方向が変更される。また、視認対象物までの距離が変更されるときに生じる輻輳開散運動によっても、装用者の両眼が違う方向に動いて装用者の各眼の視線方向が変更される。従来の眼鏡レンズ装置は、装用者の視線方向が変更されると、レンズの光軸から装用者の視線が許容範囲を超えるほど大きく外れてしまい、当該レンズの本来の機能が発揮されないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータが変更可能な光軸可変レンズを制御するレンズ制御装置であって、装用者の視線方向を検出する視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記少なくとも一方の光軸パラメータが変化するように、前記光軸可変レンズを制御する制御部を有することを特徴とするものである。
本制御装置においては、視線方向検出部によって検出される装用者の視線方向に基づいて光軸可変レンズを制御し、当該光軸可変レンズの光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータを変化させることができる。これにより、当該光軸可変レンズを通じて視認する装用者の視線が変更されても、これに追従して当該光軸可変レンズの光軸の方向や位置が変更され、当該光軸可変レンズの光軸から装用者の視線が許容範囲を超えるほど外れることが抑制される。その結果、装用者の視線が変更されても、光軸可変レンズの本来の機能(近視、遠視、乱視などの屈折異常を含む眼の異常を矯正する機能など)を発揮することが可能となる。
【0006】
前記レンズ制御装置において、前記光軸可変レンズは、屈折面の形状が変化することにより前記少なくとも一方の光軸パラメータが変化する形状可変レンズであってもよい。
本制御装置においては、光軸の位置や方向だけでなく、焦点距離などの他のレンズパラメータについても制御可能になる。
【0007】
また、前記レンズ制御装置において、前記形状可変レンズは、2種類の液体の界面を前記屈折面とし、印加電圧に応じて該界面の形状を変更可能な液体レンズであってもよい。
本制御装置においては、光軸の位置や方向だけでなく、焦点距離などの他のレンズパラメータについて、高速で自由度の高い制御が可能になる。
【0008】
また、前記レンズ制御装置において、前記制御部は、前記光軸可変レンズの焦点距離が前記少なくとも一方の光軸パラメータに対応する焦点距離に変化するように、前記光軸可変レンズを制御してもよい。
本制御装置においては、光軸可変レンズの光軸の位置及び方向の少なくとも一方の光軸パラメータの変化に合わせて、当該少なくとも一方の光軸パラメータに対応するように、光軸可変レンズの焦点距離を変化させることができる。これによれば、装用者が光軸可変レンズを通じて視認している視認対象物との距離の変化を伴う輻輳開散、または視線変更を行った場合でも、装用者の眼の毛様体筋の弛緩や収縮などの動きが少なく、装用者の違和感や眼の疲労を抑制することが可能となる。
【0009】
また、前記レンズ制御装置において、前記制御部は、前記光軸可変レンズの焦点距離を維持しつつ、前記少なくとも一方の光軸パラメータが変化するように、前記光軸可変レンズを制御してもよい。
本制御装置においては、光軸可変レンズの焦点距離を変化させることなく、光軸可変レンズの光軸の位置及び方向の少なくとも一方を変化させることができる。これによれば、装用者が光軸可変レンズを通じて視認している視認対象物との距離を変化させないまま視線を変更した場合に、装用者の眼の毛様体筋の弛緩や収縮などの動きが少なく、装用者の違和感や眼の疲労を抑制することが可能となる。
【0010】
また、前記レンズ制御装置において、前記装用者の視線方向が基準方向であるときの前記光軸可変レンズの焦点距離を設定変更する設定変更部を有してもよい。
本制御装置においては、前記装用者の視線方向が基準方向を向いているときの光軸可変レンズの焦点距離を、例えば、装用者による当該光軸可変レンズの使用用途に応じて設定変更したり、装用者の屈折力(眼科医などにより計測された屈折力。以下「処方屈折力」という。)に合わせて設定変更したりすることができる。
【0011】
本発明の他の態様は、光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータが変更可能な眼鏡の光軸可変レンズと、前記光軸可変レンズを制御するレンズ制御装置とを備えた眼鏡レンズ装置であって、装用者の視線方向を検出する視線方向検出部を備え、前記レンズ制御装置として、前記レンズ制御装置を用いることを特徴とするものである。
本眼鏡レンズ装置としては、例えば、眼鏡などの装用者に装用される物品として使用するものが挙げられる。このように本眼鏡レンズ装置が装用者に装用される物品として使用されることで、装用者が当該物品を装用する日常生活の中で、光軸可変レンズを通じて視認する装用者の視線が変更されても、当該光軸可変レンズの光軸から装用者の視線が許容範囲を超えるほど外れることが抑制され、当該光軸可変レンズの本来の機能を発揮することが可能となる。
また、本眼鏡レンズ装置としては、例えば、眼科などに設置される据え置き型の装置として使用するものも挙げられる。このような据え置き型の眼鏡レンズ装置においては、装用者が光軸可変レンズを通じて所定の視認対象物を見ている間に装用者の視線が変更されても、当該光軸可変レンズの光軸から装用者の視線が許容範囲を超えるほど外れることが抑制され、当該光軸可変レンズの本来の機能を発揮することが可能となる。
なお、光軸可変レンズとレンズ制御装置とは、互いに有線又は無線によって電気的接続されていれば、別体に構成されていてもよい。
【0012】
本発明の更に他の態様は、眼鏡であって、前記眼鏡レンズ装置を備え、前記光軸可変レンズが眼鏡フレームに保持されていることを特徴とするものである。
眼鏡レンズ装置の使用態様が眼鏡であれば、上述したように、装用者が当該眼鏡を装用する日常生活の中で、光軸可変レンズを通じて視認する装用者の視線が変更されても、当該光軸可変レンズの光軸から装用者の視線が許容範囲を超えるほど外れることが抑制され、当該光軸可変レンズの本来の機能を発揮することが可能となる。また、眼鏡であれば、レンズ制御装置の構成を、光軸可変レンズが保持された眼鏡フレームに配置することが可能となり、光軸可変レンズとレンズ制御装置との間の接続構成が簡易となるため、低コスト化が可能である。
【0013】
また、本発明の更に他の態様は、光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータが変更可能な光軸可変レンズを制御する制御方法であって、装用者の視線方向を検出する視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記少なくとも一方の光軸パラメータが変化するように、前記光軸可変レンズを制御する制御工程を有することを特徴とするものである。
本制御方法においては、視線方向検出部によって検出される装用者の視線方向に基づいて光軸可変レンズを制御し、当該光軸可変レンズの光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータを変化させることができる。これにより、当該光軸可変レンズを通じて視認する装用者の視線が変更されても、当該光軸可変レンズの光軸から装用者の視線が許容範囲を超えるほど外れることが抑制され、当該光軸可変レンズの本来の機能を発揮することが可能となる。
【0014】
また、本発明の更に他の態様は、光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータが変更可能な光軸可変レンズを制御するレンズ制御装置のコンピュータを機能させるプログラムであって、装用者の視線方向を検出する視線方向検出部の検出結果に基づいて、前記少なくとも一方の光軸パラメータが変化するように、前記光軸可変レンズを制御する制御手段として、前記コンピュータを機能させることを特徴とするものである。
本プログラムによれば、視線方向検出部によって検出される装用者の視線方向に基づいて光軸可変レンズを制御し、当該光軸可変レンズの光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータを変化させることができる。これにより、当該光軸可変レンズを通じて視認する装用者の視線が変更されても、当該光軸可変レンズの光軸から装用者の視線が許容範囲を超えるほど外れることが抑制され、当該光軸可変レンズの本来の機能を発揮することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レンズ(光軸可変レンズ)を通じて視認する装用者の視線が変更されても、当該レンズの光軸から装用者の視線が許容範囲を超えるほど外れることが抑制され、当該レンズの本来の機能を発揮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る眼鏡の構成を模式的に示す正面図。
図2】同眼鏡の構成を模式的に示す平面図。
図3】同眼鏡における可変焦点レンズの概略構成を示す断面図。
図4】同眼鏡における可変焦点レンズの概略構成を示す平面図。
図5】同眼鏡における制御装置の構成を示すブロック図。
図6】同眼鏡における左眼視線方向検出部の概略構成を示す平面図。
図7】本実施形態における光軸パラメータ制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、レンズ制御装置を備えた眼鏡レンズ装置としての眼鏡に適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明を適用可能な眼鏡レンズ装置は、眼鏡に限らず、装用者(以下「ユーザー」という。)に装用される他の物品であってもよい。また、ユーザーに装用される物品に限らず、本発明は、眼科などに設置される据え置き型の眼鏡レンズ装置などにも適用可能である。
【0018】
図1は、本実施形態に係る眼鏡1の構成を模式的に示す正面図であり、図2は、本実施形態に係る眼鏡1の構成を模式的に示す平面図である。
本実施形態における眼鏡1は、眼鏡フレーム2と、左右一対の光軸可変レンズ3,3と、光軸可変レンズ3,3の光軸パラメータを制御するレンズ制御装置としての制御装置10と、を備えている。ここでいう光軸パラメータとは、光軸可変レンズ3,3の光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方である。
【0019】
眼鏡フレーム2は、ブリッジ部4と、左右一対のレンズ保持部6,6と、鼻当部7と、左右一対のヨロイ部8,8と、左右一対のテンプル部9,9と、を備えている。
【0020】
ブリッジ部4は、光軸可変レンズ3,3を保持する左右のレンズ保持部6,6を連結する部材である。ブリッジ部4は、左右のヨロイ部8,8間にわたって左右方向に延在し、ブリッジ部4の左右方向両端部にヨロイ部8,8が取り付けられる。ブリッジ部4は、レンズ保持部6が左右方向に移動可能にレンズ保持部6を連結して、レンズ保持部6に保持される左右一対の光軸可変レンズ3,3の左右方向のレンズ間距離Dを調整できるレンズ間距離調節部を備えるのが好ましい。なお、レンズ間距離Dは、例えば、光軸可変レンズ3,3上の基準位置(例えば光軸可変レンズ3,3の中心位置)間の距離によって規定することができる。ここで、光軸可変レンズ3,3の基準位置は、例えば光軸可変レンズ3,3の光学中心位置と等しく、レンズ間距離Dは各光軸可変レンズ3,3の光学中心がなす距離と等しくなる。
【0021】
レンズ保持部6,6は、光軸可変レンズ3,3を保持する部材である。本実施形態におけるレンズ保持部6は、光軸可変レンズ3を保持するレンズ保持部本体6aと、レンズ保持部本体6aに設けられたスライド部6b,6cとを備え、スライド部6b,6cによってレンズ間距離調節部が構成される。具体的には、スライド部6b,6cは、ブリッジ部4に対してレンズ保持部本体6aを左右方向にスライド可能に保持する部材である。本実施形態におけるスライド部6b,6cは、中空状部材であり、その中空部にブリッジ部4が挿入されて、ブリッジ部4の長手方向に沿って摺動可能なようにブリッジ部4に取り付けられる。
【0022】
レンズ間距離調節部を備えることで、正視状態におけるユーザーの瞳孔間距離PDに合わせて、光軸可変レンズ3,3のレンズ間距離Dを調整することができる。本実施形態のように光軸可変レンズ3,3が通常の眼鏡レンズと比べて小型である場合、ユーザーの瞳孔間距離PDに合わせて光軸可変レンズ3,3のレンズ間距離Dをユーザーごとに調整できるようにすることは有益である。
【0023】
鼻当部7は、ブリッジ部4に保持され、ユーザーが眼鏡1を装着した際にユーザーの鼻に当接して眼鏡1の位置を位置決めする部材である。
【0024】
ヨロイ部8,8は、ブリッジ部4とテンプル部9,9とを連結する部材である。本実施形態におけるヨロイ部8,8は、ブリッジ部4の端部に取り付けられる取付部8aと、テンプル部9を回動可能に支持するヒンジ部8bとを備えている。
【0025】
テンプル部9,9は、ユーザーが眼鏡1を装着した際にユーザーの耳に掛けられる部材である。本実施形態における左右のテンプル部9,9は、ヨロイ部8,8が備えるヒンジ部8bにより眼鏡1の左右方向中央側に向かってそれぞれ折りたたむことができるように構成されている。
【0026】
本実施形態における光軸可変レンズ3,3は、電気的に制御可能な光軸パラメータの変更機能を有する光軸可変レンズであれば、その構成に限定されない。ただし、光軸可変レンズ3,3は、屈折面の形状が変化することにより光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータ(以下、単に「光軸パラメータ」という。)が変化する形状可変レンズであるのが好ましい。形状可変レンズであれば、光軸の位置や方向だけでなく、焦点距離などの他のレンズパラメータについても制御可能になる。なお、焦点距離を電気的に制御可能なレンズは可変焦点レンズとも呼ばれる。
【0027】
形状可変レンズの中でも、2種類の液体の界面を屈折面とし、液体の濡れ性を電気的に制御して当該界面の形状を変更することで光軸パラメータを変更可能な液体レンズ(エレクトロウェッティングデバイスなどとも言う。)が好ましい。液体レンズであれば、光軸の位置や方向、焦点距離などを含むレンズパラメータについて、高速で自由度の高い制御が可能である。
【0028】
本実施形態の光軸可変レンズ3,3は、例えばレンズ部分の直径が5mm~12mm程度の液体レンズを採用している。なお、より大型の光軸可変レンズを用いることで、光軸可変レンズがカバーできるユーザーの視線方向範囲が広がり、ユーザーの利便性を高めることができる。
【0029】
図3は、本実施形態における光軸可変レンズ3の概略構成を示す断面図である。
図4は、本実施形態における光軸可変レンズ3の概略構成を示す平面図である。
本実施形態の光軸可変レンズ3は、図3に示すように、界面Iで非混合状態で接触している絶縁液311と導電液312とが、環状の第一電極301と、第一電極301の上端と下端を閉じる2つの透明な窓部材303,304とによって封入された構成を有する。絶縁液311は例えば油性液体であり、導電液312は例えば比較的導電率の低い水性液体である。第一電極301には電圧V0が印加されるが、本実施形態では環状の第一電極301を接地しているため、V0=0Vである。また、第一電極301は、封入されている絶縁液311及び導電液312に対し、絶縁層301aによって絶縁されている。
【0030】
また、本実施形態の光軸可変レンズ3は、第一電極301の軸Oに対する対称位置に複数対の第二電極302A,302B,・・・が配置されている。本実施形態では、図4に示すように、4対の第二電極302A~302Hが軸Oを中心とした円周上に配置されており、合計8つの第二電極302A~302Hを備えている。
【0031】
第二電極302A~302Hは、図3に示すように、導電液312に接触する位置に配置されている。各第二電極302A~302Hに電圧VA~VHを印加すると、各第二電極302A~302Hと第一電極301との間に電位差が生じ、エレクトロウェッティング効果によって絶縁液311の端部Ia(界面Iの端部Ia)を第一電極301上の絶縁層部分301bに沿って変位させることができる。このように絶縁液311の端部Iaが変位することにより、絶縁液311の形状が変化して界面Iの曲率が変更される。したがって、第二電極302A~302Hに印加する電圧VA~VHを制御することにより、界面Iを屈折面とする光軸可変レンズ3の焦点距離を変化させることができる。
【0032】
特に、本実施形態の光軸可変レンズ3は、第二電極302A~302Hに印加する電圧VA~VHを制御することにより、屈折面である界面Iを、拡散レンズ(凹レンズ)、平面レンズ、集光レンズ(凸レンズ)に変形させることができる。したがって、本実施形態の眼鏡1は、光軸可変レンズ3を拡散レンズ(凹レンズ)とすることで近視ユーザー用の眼鏡として使用でき、また、光軸可変レンズ3を集光レンズ(凸レンズ)とすることで遠視ユーザー用の眼鏡として使用できる。
【0033】
本実施形態の光軸可変レンズ3は、ジオプター換算(焦点距離の逆数)で-15D以上+15D以下の範囲で、焦点距離を変化させることができる。このように焦点距離の変化範囲が広い光軸可変レンズ3を用いることで、例えば、弱視のような低視力のユーザーに対応することも可能である。
【0034】
本実施形態において、第一電極301の軸Oの対称位置に配置されるすべての第二電極302A~302Hに同じ電圧を印加することで、光軸可変レンズ3の光軸を第一電極301の軸Oに一致させたまま、焦点距離を変化させることができる。一方で、各第二電極302A~302Hに対して異なる電圧を印加すれば、焦点距離を変化させるだけでなく、光軸可変レンズ3の光軸をずらしたり傾けたりすることも可能である。すなわち、本実施形態の光軸可変レンズ3は、印加電圧VA~VHを制御することによって、光軸の位置と方向のいずれか一方及び両方を変化させることができる。
【0035】
制御装置10は、図1に示すように、バッテリー20とともに、左右のヨロイ部8,8のうちの一方(図中左側のヨロイ部8)に設けられている。制御装置10は、バッテリー20から光軸可変レンズ3の各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を制御することにより、光軸可変レンズ3の光軸の位置や方向並びに焦点距離を制御することができる。
【0036】
図5は、本実施形態における制御装置10の構成を示すブロック図である。
本実施形態における制御装置10は、主制御部11と、電圧変更部12と、操作部13と、を備えている。制御装置10は、光軸可変レンズ3の第二電極302A~302Hと、電圧を供給する電源としてのバッテリー20と、ユーザーの視線方向を検出する視線方向検出部21A,21Bとが接続されている。なお、本実施形態では、ユーザーの各眼の視線方向をそれぞれ検出する2つの視線方向検出部21A,21Bが備わっているが、ユーザーのいずれか一方の眼の視線方向を検出する視線方向検出部だけが備わっている構成や、ユーザーの両眼に共通する1つの視線方向を検出する視線方向検出部が備わっている構成などを採用してもよい。
【0037】
主制御部11は、例えば、CPU、RAM、ROMなどが実装された制御基板(コンピュータ)によって構成され、ROMに記憶されている所定の制御プログラムを実行することにより、眼鏡レンズ装置である眼鏡1の全体的な制御を行う。特に、本実施形態では、主制御部11は、視線方向検出部によって検出されるユーザーの視線方向(検出結果)に基づいて、光軸可変レンズ3,3の光軸パラメータが変化するように、光軸可変レンズ3を制御する制御部(制御手段)として機能する。
【0038】
電圧変更部12は、主制御部11の制御の下、バッテリー20から光軸可変レンズ3の各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を変更する。電圧変更部12は、各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を、第二電極302A~302Hごとに個別に変更することができる。ただし、電圧変更部12は、第二電極302A~302Hの一部だけ(例えば1対の第二電極だけ)を部分的に変更可能なものであってもよい。
【0039】
操作部13は、ユーザーによって操作されることで、ユーザーの操作内容を示す操作信号を主制御部11に出力する。操作部13が受け付けるユーザー操作としては、例えば、電源のオンオフ操作、主制御部11の実行指示、主制御部11の制御内容の変更などが挙げられる。操作部13は、受け付けるユーザー操作の内容に適した種類の操作器(機械式や静電タッチ式などのボタン、ダイヤルなどの回転型操作部など)によって構成される。なお、これらのユーザー操作を不要とする構成とすることも可能であり、その場合には操作部13を省略することが可能である。
【0040】
バッテリー20は、制御装置10の電源として機能し、光軸可変レンズ3の第二電極302A~302Hに供給する電圧を出力する。バッテリー20は、一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。また、太陽光パネルなどの発電機能を備えたものであってもよい。
【0041】
2つの視線方向検出部21A,21Bは、ユーザーの右眼と左眼のそれぞれの視線方向を個別に検出するものであり、視線方向が検知できるものであれば、その構成は限定されないが、眼鏡フレーム2上に配置できる構成であるのが好ましい。
【0042】
図6は、本実施形態における左眼視線方向検出部21Bの概略構成を示す平面図である。なお、図6では、説明のため、眼鏡フレーム2の図示は省略され、左眼用の光軸可変レンズ3のみが図示されている。
本実施形態の左眼視線方向検出部21Bは、光源211と、ハーフミラー212と、撮像手段としてのカメラ213と、画像処理部214と、から構成されている。なお、右眼視線方向検出部21Aの構成は、左眼視線方向検出部21Bと同様であるため、説明を省略する。
【0043】
左眼視線方向検出部21Bのうちの光源211及びカメラ213は、図2の符号21Bで示すように、眼鏡フレーム2の左側ヨロイ部8の近くの左側テンプル部9上に取り付けられている。一方、左眼視線方向検出部21Bのうちのハーフミラー212は、図6に示すように、眼鏡1を装着したユーザーの左眼Eと左眼用の光軸可変レンズ3との間に配置される。ハーフミラー212は、光軸可変レンズ3と一体構成とするのが好ましいが、別体構成としてもよい。
【0044】
ハーフミラー212は、入射する近赤外光を反射し、可視光は透過する機能を有している。これにより、光軸可変レンズ3を通じて入射する視認対象物からの可視光Lは、図6に示すように、ハーフミラー212を通過してユーザーの眼Eに入射することになり、ユーザーは視認対象物を視認することができる。
【0045】
光源211は、非可視光として、例えば近赤外光L0を照射する。光源211は、ハーフミラー212に対し、眼鏡1を装着したユーザーの眼Eと同じ側に配置される。光源211から照射される近赤外光L0は、ハーフミラー212で反射され、ユーザーの眼Eに入射される。ユーザーの眼Eに入射した近赤外光は、ユーザーの眼E(眼の角膜)で反射され、再びハーフミラー212に到達する。そして、ユーザーの眼Eで反射した近赤外光L1は、ハーフミラー212で反射され、光源211の近傍に配置されているカメラ213に入射される。
【0046】
カメラ213は、光源211から照射される非可視光の画像を撮像する撮像手段であり、本実施形態では、近赤外光の画像を撮像可能な近赤外カメラである。本実施形態のカメラ213は、可視光を遮断するフィルタを備え、可視光に邪魔されることなく、ユーザーの眼Eで反射された近赤外光L1の画像を撮像することができる。カメラ213で撮像された画像のデータは、画像処理部214に出力される。
【0047】
画像処理部214は、例えば、CPU、RAM、ROMなどが実装された制御基板(コンピュータ)によって構成され、ROMに記憶されている所定の視線方向検出プログラムを実行することにより、カメラ213で撮像された画像データに基づいてユーザーの眼Eの視線方向を検出する。なお、画像処理部214の機能を制御装置10の主制御部11に持たせ、画像処理部214を省略してもよい。
【0048】
カメラ213によって撮像される非可視光画像である近赤外画像には、ユーザーの眼Eの画像が含まれる。画像処理部214は、カメラ213から出力されるユーザーの眼Eの画像から、眼Eの視線方向を検出する。眼Eの視線方向を検出する方法は、特に限定はないが、例えば、カメラ213によって撮像された画像には近赤外光の輝点が含まれるので、この輝点を利用する方法が挙げられる。具体的には、この輝点は、眼Eの視線方向によらず、画像上における眼Eの固定地点に表示されることから、この輝点を基準位置とし、この基準位置に対する眼Eの瞳孔中心の相対位置から、眼Eの視線方向を検出することができる。なお、カメラ213から出力される画像における輝点及び瞳孔中心の検出は、エッジ抽出やハフ変換などの既存の画像処理技術を用いて実現することができる。
【0049】
次に、本実施形態における光軸可変レンズ3,3の光軸パラメータ制御の一例について説明する。
図7は、本実施形態における光軸パラメータ制御の流れを示すフローチャートである。
本実施形態における光軸パラメータ制御では、所定の制御プログラムを実行する主制御部11が電圧変更部12を制御することにより、視線方向検出部21A,21Bの各検出結果(ユーザーの右眼と左眼の各視線方向の検出結果)に基づいて、光軸パラメータである光軸の方向が変化するように、左右の光軸可変レンズ3,3を制御する。なお、ユーザーの右眼と左眼にそれぞれ対応する2つの光軸可変レンズ3,3の制御は独立して行われるが、その制御内容は同様であるため、以下、左右の光軸可変レンズ3,3を区別することなく説明する。
【0050】
本実施形態では、操作部13がユーザーによる電源オンの操作を受け付けると(S1)、まず、光軸可変レンズ3の基本焦点距離の設定が完了していない場合には、基本焦点距離の設定を行う(S2)。本実施形態では、光軸可変レンズ3の光軸方向が変化されても、光軸可変レンズ3の焦点距離は基本焦点距離のまま変化しないように、光軸可変レンズ3を制御する。なお、ここでは、電源オンになることで光軸パラメータ制御が開始される例であるが、これに限らず、例えば、眼鏡1がユーザーに装着されたことを検知する装着検知部を設け、ユーザーが眼鏡1を装着したことを検知することで光軸パラメータ制御が開始されるように構成してもよい。
【0051】
基本焦点距離は、眼鏡1を利用するユーザーの利用用途(ユーザーが視認対象物を視認する距離)に応じて、任意に設定することができる。例えば、ユーザーが近くの視認対象物(スマートフォン、タブレット、ゲーム機、書籍など)を視認する用途に眼鏡1を利用するときには、この近くの視認対象物にピントが合う焦点距離に基本焦点距離を設定し、逆に、ユーザーが離れた視認対象物(離れた場所の映像(映画など)、美術品などの鑑賞物、景色など)を視認する用途に眼鏡1を利用するときには、この遠くの視認対象物にピントが合う焦点距離に基本焦点距離を設定する。
【0052】
また、基本焦点距離は、眼鏡1を利用するユーザーの利用用途に関係なく、ユーザーごとに固定の焦点距離に設定してもよい。例えば、近視、遠視、乱視などの屈折異常を含む眼の異常をもつユーザーであれば、ユーザーの処方屈折力(基本屈折力)に対応する焦点距離に基本焦点距離を設定する。この場合、例えば、近視ユーザーであれば、マイナス屈折力に対応する焦点距離が基本焦点距離として設定される。
【0053】
なお、基本焦点距離の設定作業は、専門の作業者あるいはユーザー自身が操作部13を操作することにより行うことができる。例えば、操作部13に屈折力が表記されたダイヤルが設けられている場合、ユーザーの処方屈折力に一致するようにダイヤルを回すことで、基本焦点距離の設定を行うことができる。この場合、ダイヤルの回転位置に応じた電気信号(操作信号)が主制御部11に送られ、主制御部11は、この信号に対応する電圧が光軸可変レンズ3の第二電極302A~302Hに印加されるように、電圧変更部12を制御する。これにより、光軸可変レンズ3における絶縁液311と導電液312との界面Iの形状変化により界面Iの曲率が変更され、光軸可変レンズ3の焦点距離が、設定された基本焦点距離に変更される。
【0054】
光軸可変レンズ3の基本焦点距離の設定が完了したら、主制御部11は、視線方向検出部21A,21Bによる検出動作を開始させる(S3)。これにより、光源211から照射された近赤外光L0が、ハーフミラー212で反射されてユーザーの各眼Eに入射され、その反射光が再びハーフミラー212で反射されてそれぞれのカメラ213に入射され、各眼Eの画像が撮像される。そして、各カメラ213で撮像された各眼Eの画像データは、それぞれの画像処理部214によって画像処理がなされ、各眼Eの画像から各眼Eの視線方向が検出される。この視線方向の検出動作は、所定のサンプリング間隔で繰り返し実行される。
【0055】
視線方向検出部21A,21Bで検出された各眼Eの視線方向の検出結果は主制御部11に送られる。主制御部11は、電圧変更部12を制御し、光軸可変レンズ3の各第二電極302A~302Hに、視線方向の検出結果に対応する電圧がそれぞれ印加させる制御を実行する(S4)。これにより、ユーザーの視線方向が変わると、その検知結果に応じて、光軸可変レンズ3の各第二電極302A~302Hに印加される電圧が電圧変更部12により変更され、光軸可変レンズの光軸の方向が、変更後のユーザーの視線方向に追従するように変化する。
【0056】
なお、操作部13がユーザーによる電源オフの操作を受け付けると(S5のYes)、主制御部11は、光軸パラメータ制御を終了する。このとき、光軸可変レンズ3の各第二電極302A~302Hへの電圧供給はオフにしてもよいし、オンにしてもよい。光軸可変レンズ3の各第二電極302A~302Hへの電圧供給はオフにすれば、バッテリー20の電力消費を節約することができる。
【0057】
一方、光軸可変レンズ3の各第二電極302A~302Hへの電圧供給はオンにすれば、ユーザーの視線方向に追従して光軸可変レンズの光軸の方向が変化する光軸パラメータ制御は行われないが、本眼鏡1を通常の眼鏡としてそのまま利用することが可能となる。この場合、例えば、操作部13がユーザーによる電源オフの操作を受け付けたときに、光軸可変レンズ3の焦点距離が基本焦点距離のまま、光軸可変レンズ3の光軸が所定の基準方向を向くように、各第二電極302A~302Hへ電圧を印加し続ける。
【0058】
本実施形態によれば、眼鏡1を利用しているユーザーの視線が変更されても、これに追従して眼鏡1の光軸可変レンズ3,3の光軸の方向が変更され、光軸可変レンズ3,3の光軸からユーザーの視線が許容範囲を超えるほど大きく外れることが抑制される。その結果、ユーザーの視線が変更されても、光軸可変レンズ3,3の本来の機能(ユーザーの眼をレンズによって矯正する機能)を適正に発揮することができる。
【0059】
特に、本実施形態によれば、光軸可変レンズ3,3の焦点距離を維持しつつ光軸可変レンズ3,3の光軸の方向が変化する。そのため、ユーザーが光軸可変レンズ3,3を通じて視認している視認対象物との距離を変化させないまま視線を変更した場合に、ユーザーの眼の毛様体筋の弛緩や収縮などの動きが少なく、ユーザーの違和感や眼の疲労が抑制される。
【0060】
ただし、本実施形態において、光軸可変レンズ3,3の焦点距離が、ユーザーの視線方向の検出結果に応じて変化する光軸可変レンズ3,3の光軸の方向に対応する焦点距離となるように、光軸可変レンズ3,3の焦点距離を制御してもよい。この場合、例えば、ユーザーの視線方向と光軸可変レンズ3,3の焦点距離との対応関係を記述したテーブルデータなどを記憶部に記憶しておく。そして、主制御部11は、ユーザーの視線方向の検出結果に基づき、ユーザーの視線方向に追従するように光軸可変レンズ3,3の光軸の方向が変更し、かつ、変更後の光軸の方向に対応する焦点距離を記憶部から読み出して光軸可変レンズ3,3の焦点距離も変化するように、電圧変更部12を制御する。
【0061】
これによれば、例えば、ユーザーが、視認対象物を近くのものから遠方のものへ変更する場合(近方視から遠方視へ切り替えるとき)やその逆の場合のように、光軸可変レンズ3,3を通じて視認している視認対象物との距離の変化を伴って視線を変更する場合に、視認対象物との距離の変化に応じて光軸可変レンズ3,3の焦点距離を自動調整することができる。したがって、視認対象物との距離の変化を伴って視線を変更する場合でも、ユーザーの眼の毛様体筋の弛緩や収縮などの動きが少なく、ユーザーの違和感や眼の疲労が抑制される。
【0062】
なお、本実施形態における光軸パラメータ制御では、ユーザーの視線方向の検出結果に応じて、光軸可変レンズ3の光軸の方向を変更する構成について説明したが、光軸可変レンズ3の光軸の位置を変更する構成としてもよい。このとき、光軸可変レンズ3の光軸の方向を変更しないまま光軸可変レンズ3の光軸の位置を変更する構成、すなわち、光軸可変レンズ3の光軸を平行移動させる構成としてもよい。
【0063】
また、本明細書で説明された処理工程並びに眼鏡1等の眼鏡レンズ装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0064】
ハードウェア実装については、上述した工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0065】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0066】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 :眼鏡
2 :眼鏡フレーム
3 :光軸可変レンズ
4 :ブリッジ部
6 :レンズ保持部
6a :レンズ保持部本体
6b,6c:スライド部
7 :鼻当部
8 :ヨロイ部
8a :取付部
8b :ヒンジ部
9 :テンプル部
10 :制御装置
11 :主制御部
12 :電圧変更部
13 :操作部
20 :バッテリー
21A,21B:視線方向検出部
211 :光源
212 :ハーフミラー
213 :カメラ
214 :画像処理部
301 :第一電極
301a,301b:絶縁層
302A~302H:第二電極
303,304:窓部材
311 :絶縁液
312 :導電液
D :レンズ間距離
I :界面
Ia :端部
L :可視光
L0,L1:近赤外光
O :軸
PD :瞳孔間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7