(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061267
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】振出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/04 20060101AFI20230424BHJP
A61J 1/03 20230101ALI20230424BHJP
【FI】
B65D83/04
A61J1/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171164
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】515163472
【氏名又は名称】有限会社nendo
(74)【代理人】
【識別番号】110001391
【氏名又は名称】弁理士法人レガート知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047CC13
4C047NN01
(57)【要約】
【課題】この発明の第一の課題は、容器の大型化を可及的に回避しつつ、操作で収納物を一粒ずつ取り出すことができ容器を得ること、第二の課題は、収納物の数が少ないときであっても収納物のぶつかり音の発生を可及的に減少することのできる容器を得ることである。
【解決手段】この発明の振出容器は、粒状の収納物を保持する保持体1と、これと一体になって容器を構成するカバー体2とを摺動可能に嵌め合わせて構成する。
前記保持体1は、一端部に収納物の振出部8を備え、全長にわたり収納物を一粒ずつ収納できる複数の収納区画5を備え、隣接する収納区画は収納物の振出部方向への移動を許容する第一の逆止弁4で仕切られている。
前記カバー体2には、保持体1に収納された収納物Pの前記振出部方向の移動を許容する第二の逆止弁7が、前記第一の逆止弁4に対応して複数設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の収納物を保持する保持体と、前記保持体と組み合わせて容器を構成するカバー体とを摺動可能に嵌め合わせてなり、
前記保持体は、一端部に収納物の振出部を備え、全長にわたり収納物を一粒ずつ収納できる複数の収納区画を備え、隣接する収納区画は収納物の振出部方向への移動を許容する第一の逆止弁で仕切られ、
前記カバー体には、保持体に収納された収納物の前記振出部方向の移動を許容する第二の逆止弁が、前記第一の逆止弁に対応して複数設けられた、
粒状物の振出容器
【請求項2】
保持体又はカバー体には、収納物を対向壁側へ押しつける押圧部材が設けられた、請求項1又は2に記載の振出容器。
【請求項3】
第一の逆止弁と第二の逆止弁とは対向位置に設けられた、請求項1又は2に記載の振出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、あめ玉や丸薬などの粒状の収納物の振出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、あめ玉などの粒状の収納物を1粒ずつ取り出せるようにした容器として、例えば以下の発明、考案が提案されている。
【特許文献1】特開2002-326675号公報
【特許文献2】実全平03ー117670号公報
【特許文献3】実全昭58ー113673号公報
【0003】
特開2002-326675号の発明は、粒状物が収納される部分の上方に仕切りを設け、仕切の上方に押圧部材を取り付けて、この押圧部材を押し下げることによって粒状物を一粒ずつ取り出せるようにしたものである。
この発明においては、押圧部材の占める容積の分、容器が大きくなる。また、収納される粒状物の数が少なくなると粒状物は収納部内で移動するので、粒状物同士がぶつかり合う音や、粒状物が容器壁にぶつかる音が発生する。
【0004】
実全平03-117670号の考案は、筒状の容器体に回動体を支持して嵌装し、回動体の一端に設けた回動板の小孔内に嵌入する丸粒を回動体を回すことによつて、一粒ずつ、取り出すようにしたものである、
この考案においては、容器体に回動体を装着するので容器体の直径は収納物の直径の2倍以上が必要であり、収納物の大きさが大きい場合にはきわめて大きな容器体が必要になる。そして、収納物の数が少ない時にぶつかり音が発生することは、上記発明と同様である。
【0005】
実全昭58ー113673の考案は、容器本体に収納凹部と予備室凹部とを設け、収納凹部と予備室凹部との間に回動柱を嵌め、この回動柱で収納凹部から予備室凹部に収納物を一粒ずつ送り込むようにしたものである。
この考案においては、収納凹部の他に予備室凹部と回動柱が必要であるからその分容器は大きくなる。そして、収納物の数が少ない時にぶつかり音が発生することは、上記発明と同様である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の第一の課題は、容器の大型化を可及的に回避しつつ、簡便な操作で収納物を一粒ずつ取り出すことができ容器を得ること、第二の課題は、収納物の数が少ないときであっても収納物のぶつかり音の発生を可及的に減少することのできる容器を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の振出容器は、粒状の収納物を保持する保持体と、これと一体になって容器を構成するカバー体とを摺動可能に嵌め合わせて構成する。
前記保持体は、一端部に収納物の振出部を備え、全長にわたり収納物を一粒ずつ収納できる複数の収納区画を備え、隣接する収納区画は収納物の振出部方向への移動を許容する第一の逆止弁で仕切られている。
前記カバー体には、保持体に収納された収納物の前記振出部方向の移動を許容する第二の逆止弁が、前記第一の逆止弁に対応して複数設けられている。
【0008】
この発明における「粒状」は、あめ玉や丸薬のように小さくて丸いものに限定されず小さな固体を意味する概念であり、この発明の構成によって所期の移動が可能なものであればよい。
【0009】
この発明における保持体とカバー体は、以下の実施例では双方を組み合わせて円筒を形成する形状としているが、必ずしも円筒を形成する必要はない。収納物が扁平形状である場合は扁平円筒状や角筒状が好ましい。収納物のスムーズな移動という観点からは筒を形成することが好ましいが、
図9に示すように環状(ドーナツ形)とすることも考えられる。
また、この発明における振出部は、振出用の穴を設けた構成である必要はない。保持体とカバー体との位置をずらすことによって保持体の上方に開口部が生じる構成であれば、この開口部を振出部とすることができる。
【0010】
前記保持体に形成する収納区画は、収納物を一粒ずつ隔離して収納保持し、収納物同士のぶつかり合いを阻止するためのものである。そして、収納物は一粒取り出されるごとに隣の収納区画に移動する必要があるので、収納区画間の仕切は、収納物が隣接する振出部側の収納区画に移動可能であることが必要である。そのために、各収納区画は収納物の振出部側への移動を許容する第一の逆止弁で仕切られている。この第一の逆止弁の具体的な構成に制約はない。
【0011】
前記保持体又はカバー体には、収納物を対向壁側へ押しつける押圧部材が設けることにより、収納物の容器壁面へのぶつかり音の発生を防止することができ好ましい(請求項2)。また、前記第一の逆止弁と第二の逆止弁とは対向位置に設けると、収納物の収納状体が安定して好ましい(請求項3)。
【発明の効果】
【0012】
この発明の容器を使用する場合、保持体とカバー体とを分割した状態で収納物を保持体の収納区画に一粒ずつ収納し、その後保持体に保持体を嵌め合わせる。
ここで保持体の振出部を引き出す(振出部を露出させる方向へ移動させる)と、収納物は保持体の仕切に妨げられて保持体の上では同じ位置を保ち、カバー体の逆止弁を越えてカバー体との関係では逆止弁一つ分だけ移動する。そして、振出部から収納物が一粒取り出される。
次いで保持体を引き戻すと、収納物はカバー体の逆止弁で妨げられてカバー体との関係では移動せず、保持体の仕切りを越えて振出口側の隣接する収納区画に移動する。すなわち、保持体の振出部と反対側端部の収納区画には収納物一つ分の空きスペースができ、残った収納物は収納区画に一つずつ収納された状態となる。
【0013】
したがって、容器を大型化することなく所望の数の収納物を収納することができ、保持体を引き出し引き戻すという、通常の振出容器と同じ使用方法で収納物を一粒ずつ取り出すことができる。そして、収納物は一粒ずつ収納区画に収納されているので、収納物同士がぶつかり合うことはなく、ぶつかり音の発生が防止できる。加えて、収納物を対向壁側へ押しつける押圧部材が設けると、収納物の容器壁へのぶつかり音の発生も阻止できる。
この発明によれば、簡単な操作で内容物を一粒ずつ取り出すことができるので、映画館や劇場のような暗い場所でも迷うことなく、あめ玉などの菓子を食することができる。加えて、収納物のぶつかり音の発生が減殺されるので、映画化や劇場など静寂を要求される場においても、あめ玉などぶつかり音が生じる菓子を食することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】同じくすべての収納区画に収納物が収納された状体の模式図で、Aは横断面図、Bは縦断面図。
【
図4】同じく繰り出し途中の模式図で、Aは横断面図、Bは縦断面図。
【
図5】同じく取り出し時の模式図で、Aは横断面図、Bは縦断面図。
【
図6】同じく引き戻し途中の模式図で、Aは横断面図、Bは縦断面図。
【
図7】同じく引き戻し完了時の模式図で、Aは横断面図、Bは縦断面図。
【
図9】全体形状をドーナツ形とした実施例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施例を説明する。
【実施例0016】
図1,
図2において、保持体1とカバー体2とは、嵌め合わせて有底有頂の円筒状の容器を構成している。前記保持体1とカバー体2とはそれぞれ断面略半円形の船形状であり、保持体1とカバー体2とは嵌め合わせた状態で軸方向に摺動するように、軸方向に形成した溝(図示しない)に嵌めて結合している。そして、保持体1の一方の側壁1aには、後に述べるカバー体2に設けた第二の逆止弁が通過するための抉り部3が設けてある。
前記保持体1及びカバー体2の材質は、硬質の収納物(例えばあめ玉)が壁面に当たったときの音が可及的に小さいものを選択する。
【0017】
前記保持体1の一端部は収納物を取り出す振出部8(
図5)となり、振出部の反対側の端部壁面1bは球状の収納物の形状に対応して平面円弧状をなしている。
前記保持体1の抉り部3のない側壁1cの内面に、第一の逆止弁4が複数等間隔で設けてあり、隣接する第一の逆止弁4,4の間が収納物を一粒収納する収納区画5となっている。
前記第一の逆止弁4は、収納物が前記振出部方向へ移動することを許容するもので、平面視円弧状であって、湾曲した内面は前記振出部の反対方向を向いている。そして、収納物が第一の逆止弁4を乗り越えて振出部方向に移動できるような弾性を有している。
【0018】
前記保持体1の底壁1dには収納物を対向する壁面に押しつける押圧部材6が設けてある。この押圧部材6は前記第一の逆止弁4と同様に平面視円弧状であって、湾曲した内面は前記振出部の反対方向を向いている。そして、収納物が押圧部材6を乗り越えて振出部方向に移動できるような弾性を有している。押圧部材をこのように構成することにより、押圧部材にも逆止弁の機能を持たせることができる。
なお、押圧部材は突起のない平面な弾性のあるテープや、弾性のあるテープに収納区画に対応した位置に山形突起を形成したものでもよい。山形突起を形成する場合、前記第一の逆止弁と同じく、収納物の振出部方向への移動を許容する逆止弁の機能を備えてもよい(振出部側の傾斜を急角度とし、反対側を緩傾斜とする)。
【0019】
前記カバー体2は、前記保持体1と同様に一方の端部壁面2aは平面円弧状としてある。そして、前記保持体1に嵌め合わせたときに前記保持体1に設けた第一の逆止弁4と対向する位置に、第二の逆止弁7が、前記保持体1の第一の逆止弁4と同じ間隔で設けてある。
この第二の逆止弁7は、収納物が前記振出部方向へ移動することを許容するもので、平面視円弧状であって、湾曲した内面は前記振出部の反対方向を向いている。そして、収納物が第二の逆止弁7を乗り越えて振出部方向へ移動できるような弾性を有している。
【0020】
以下、
図3ないし
図7を参照しつつ、この実施例の容器の作用を説明する。
図3は、容器の収納区画5のすべてに収納物Pが一つずつ収納された状態である。
図3の状態では、保持体1とカバー体2とは重なりあっており、振出部8(
図5)は閉じられている。
収納物Pを取り出すときには、保持体1を摺動させて引き出す(
図4において左方へ移動する)。保持体1の第一の逆止弁4及びカバー体2の第二の逆止弁7は収納物Pの振出部8方向への移動を許容するので、収納物Pは
図3の状態と同じ収納区画5に位置したままで、保持体1と共に引き出される。そして、収納物一つ分に対応する分だけ保持体1を引き出すと、保持体1の上方に保持体Pを取り出すことのできる開口(振出部)8が生じ、この開口を振出部として、保持体Pを一つ取り出すことができる。
【0021】
収納物Pを取り出すと、取り出された保持体が収納されていた収納区画5は空き区画5aとなる(
図5)。この状態から保持体1を引き戻すと、収納物Pはカバー体2の第二の逆止弁7に阻止されて振出部の反対方向(図中右側)に移動することはできない。他方、保持体1の第一の逆止弁4は収納物Pの振出部方向への移動を許容するので、右側への移動が規制された収納物Pは保持体1の移動にともない第一の逆止弁4を乗り越えて保持体1の振出部側へ移動する(
図6)。押圧部材に逆止弁の機能を持たせた場合は、押圧部材6を乗り越える。
そのために、保持体1を完全に引き戻したとき、収納物Pは収納区画一つずつ振出部側へ移動し、振出部と反対側端部の収納区画は空き区画5bとなる(
図7)。
この操作を繰り返すことによって、容器内の収納物Pは順次一つずつ取り出される。
【0022】
上記のように、収納物Pは数が減っても常に一つの収納区画に一つずつ収納されており、収納物同士がぶつかり合うことがなく、ぶつかり音の発生が防止される。加えてこの実施例においては押圧部材6が設けてあり、これによって収納物は容器の内面に押しつけられているので、収納物が容器内面にぶつかって発生する音も減少させることができる。
【0023】
図8及び
図9は別の実施例を示すものである。
図8は、第一の逆止弁4を山状突起で形成したものである。すなわち、逆止弁として機能し得る剛性を備えたテープに仕切となる山状突起11を設け、収納物の振出部方向への移動を許容し逆方向の移動を規制するように、振出部側を急傾斜として反対側を緩傾斜としてある。
【0024】
図9は、保持体1及びカバー体2が組み合わされてドーナツ形となる形状としたものであり、保持体1とカバー体2とは摺動できるようにし、保持体1及びカバー体2の内部には第一の逆止弁4、第二の逆止弁7、収納区画5を設ける。また、この形態においては摺動することによって振出部となる開口を得ることができないので、保持体又はカバー体に振出口9(必要に応じてキャップつきとする)を設けておく。
この発明は、通常の振出容器を大型化することなく、自体のスライド操作で収納物を一粒ずつ取り出すことができる。そして、収納物の数が少ないときであっても収納物のぶつかり音の発生を可及的に減少することのできる容器であって、産業上の利用可能性を有するものである。