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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061319
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】順送プレス金型
(51)【国際特許分類】
   B30B 13/00 20060101AFI20230424BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20230424BHJP
   B21D 43/00 20060101ALI20230424BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
B30B13/00 M
B21D28/02 C
B21D43/00 E
H02K15/02 E
H02K15/02 F
B30B13/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171249
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】米澤 道治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晋
(72)【発明者】
【氏名】飯田 莉晃
【テーマコード(参考)】
4E090
5H615
【Fターム(参考)】
4E090AA01
4E090AB01
4E090BA03
4E090EA01
4E090EB01
4E090EC01
4E090FA02
4E090GA03
4E090HA04
5H615AA01
5H615BB01
5H615PP01
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】リフタ部材の有無に関わらず、特定の加工ステージに対して帯状の金属材料を常に良好に搬送することができる順送プレス金型を提供する。
【解決手段】プレス加工形状に応じた複数のダイ穴Daが形成されたダイを有した下型1と、ダイ穴Da毎に対応したパンチPを具備するとともに、下型1に対して近接離間可能とされた上型2とを具備し、対応するダイ穴Da及びパンチPにより複数の加工ステージSが構成されるとともに、加工ステージSに対して帯状の金属材料Wが順次搬送され、それぞれの加工ステージSのパンチP及びダイ穴Daにより所定のプレス加工が行われる順送プレス金型であって、少なくとも上型2における特定の加工ステージScに配設され、当該特定の加工ステージScに搬送される帯状の金属材料Wを磁力にて吸引する電磁石7を具備したものである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工形状に応じた複数のダイ穴が形成されたダイを有した下型と、
前記ダイ穴毎に対応したパンチを具備するとともに、前記下型に対して近接離間可能とされた上型と、
を具備し、対応する前記ダイ穴及び前記パンチにより複数の加工ステージが構成されるとともに、前記加工ステージに対して帯状の金属材料が順次搬送され、それぞれの前記加工ステージの前記パンチ及び前記ダイ穴により所定のプレス加工が行われる順送プレス金型であって、
少なくとも前記上型における特定の加工ステージに配設され、当該特定の加工ステージに搬送される前記帯状の金属材料を磁力にて吸引する磁力吸引手段を具備したことを特徴とする順送プレス金型。
【請求項2】
前記磁力吸引手段は、通電により磁力が発生する電磁石から成り、所定のタイミングで通電されて前記帯状の金属材料を磁力にて吸引することを特徴とする請求項1記載の順送プレス金型。
【請求項3】
前記上型を前記下型に近接させて前記加工ステージにおける前記ダイ穴及びパンチにて前記帯状の金属材料をプレス加工するプレス加工工程と、
前記上型を前記下型から離間させるとともに、前記帯状の金属材料を次の加工ステージに順次搬送する搬送工程と、
が繰り返し実行されるとともに、前記磁力吸引手段は、前記搬送工程時に限り通電して前記特定の加工ステージに搬送される帯状の金属材料を吸引することを特徴とする請求項2記載の順送プレス金型。
【請求項4】
前記特定の加工ステージは、前記帯状の金属材料から抜き加工した複数の板材を積層して一体化された積層部品を得るとともに、前記特定の加工ステージより前の加工ステージは、所定のプレス加工と共に前記特定の加工ステージで積層される板材となる部位に接着剤を塗布することを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載の順送プレス金型。
【請求項5】
前記下型は、前記帯状の金属材料が複数の加工ステージに亘って順次搬送される過程において当該帯状の金属材料を前記ダイの表面から所定寸法上方に保持するリフタ部材が配設されるとともに、前記特定の加工ステージには前記リフタ部材が配設されないことを特徴とする請求項4記載の順送プレス金型。
【請求項6】
前記特定の加工ステージで得られる前記積層部品は、モータのロータ又はステータであることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の順送プレス金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の加工ステージに対して帯状の金属材料が順次搬送され、それぞれの加工ステージのパンチ及びダイ穴により所定のプレス加工が行われる順送プレス金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の順送プレス金型は、例えば特許文献1にて開示されるように、プレス加工形状に応じたダイ穴がそれぞれ形成された複数のダイを有した下型と、ダイ穴毎に対応したパンチを具備するとともに、下型に対して近接離間可能とされた上型とを具備し、対応するダイ穴及びパンチにより複数の加工ステージが構成されるとともに、加工ステージに対して帯状の金属材料(薄板金属の長尺の元板)が順次搬送され、それぞれの加工ステージのパンチ及びダイ穴により所定のプレス加工が行われるよう構成されていた。
【0003】
また、従来の順送プレス金型は、その下型に複数のリフタが配設されており、帯状の金属材料をダイの表面から所定寸法上方に保持しつつ複数の加工ステージに亘って順次搬送し得るようになっている。かかるリフタは、スプリングにより上方に付勢された部材から成り、プレス加工時には上型の下降によってスプリングの付勢力に抗して下方に押圧されるとともに、プレス加工後に上型が上昇すると、スプリングの付勢力により上昇して帯状の金属材料をダイの表面から所定寸法だけ上方に保持するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-200296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、例えば特定の加工ステージで抜き加工した板材を互いに接着しつつ積層してモータのロータ又はステータを得るよう構成された場合、特定の加工ステージより前の加工ステージにおいて積層板材となる部位に接着剤などを塗布する必要がある。この場合、特定の加工ステージにリフタを配設すると、接着剤などがリフタに付着してしまい、帯状の金属材料の搬送を良好に行うことができない虞がある。
【0006】
また、特定の加工ステージにリフタを配設しない場合、特定の加工ステージに搬送される帯状の金属材料がダイの表面上を摺動することとなり、例えばダイに形成されたダイ穴の開口縁部等に引っ掛かって折れ曲がってしまい、搬送を良好に行わせることが困難になってしまう虞があった。特に、最終の加工ステージにおいては、帯状の金属材料の剛性が著しく低下した状態となっており、ダイ穴の開口縁部等に引っ掛かって大きく折れ曲がってしまう。なお、特定の加工ステージにリフタ部材を配設することができない原因としては、接着剤の塗布の他、金型のレイアウトや帯状の金属材料の材質等、種々の理由が考えられる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、リフタ部材の有無に関わらず、特定の加工ステージに対して帯状の金属材料を常に良好に搬送することができる順送プレス金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、プレス加工形状に応じた複数のダイ穴が形成されたダイを有した下型と、前記ダイ穴毎に対応したパンチを具備するとともに、前記下型に対して近接離間可能とされた上型とを具備し、対応する前記ダイ穴及び前記パンチにより複数の加工ステージが構成されるとともに、前記加工ステージに対して帯状の金属材料が順次搬送され、それぞれの前記加工ステージの前記パンチ及び前記ダイ穴により所定のプレス加工が行われる順送プレス金型であって、少なくとも前記上型における特定の加工ステージに配設され、当該特定の加工ステージに搬送される前記帯状の金属材料を磁力にて吸引する磁力吸引手段を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の順送プレス金型において、前記磁力吸引手段は、通電により磁力が発生する電磁石から成り、所定のタイミングで通電されて前記帯状の金属材料を磁力にて吸引することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の順送プレス金型において、前記上型を前記下型に近接させて前記加工ステージにおける前記ダイ穴及びパンチにて前記帯状の金属材料をプレス加工するプレス加工工程と、前記上型を前記下型から離間させるとともに、前記帯状の金属材料を次の加工ステージに順次搬送する搬送工程とが繰り返し実行されるとともに、前記磁力吸引手段は、前記搬送工程時に限り通電して前記特定の加工ステージに搬送される帯状の金属材料を吸引することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載の順送プレス金型において、前記特定の加工ステージは、前記帯状の金属材料から抜き加工した複数の板材を積層して一体化された積層部品を得るとともに、前記特定の加工ステージより前の加工ステージは、所定のプレス加工と共に前記特定の加工ステージで積層される板材となる部位に接着剤を塗布することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の順送プレス金型において、前記下型は、前記帯状の金属材料が複数の加工ステージに亘って順次搬送される過程において当該帯状の金属材料を前記ダイの表面から所定寸法上方に保持するリフタ部材が配設されるとともに、前記特定の加工ステージには前記リフタ部材が配設されないことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5記載の順送プレス金型において、前記特定の加工ステージで得られる前記積層部品は、モータのロータ又はステータであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、少なくとも上型における特定の加工ステージに配設され、当該特定の加工ステージに搬送される帯状の金属材料を磁力にて吸引する磁力吸引手段を具備したので、リフタ部材の有無に関わらず、特定の加工ステージに対して帯状の金属材料を常に良好に搬送することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、磁力吸引手段は、通電により磁力が発生する電磁石から成り、所定のタイミングで通電されて帯状の金属材料を磁力にて吸引するので、必要時に限り帯状の金属材料を吸引する磁力を発生させることができ、下型やダイが必要以上に磁化されてしまうのを回避することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、磁力吸引手段は、搬送工程時に限り通電して特定の加工ステージに搬送される帯状の金属材料を吸引するので、下型やダイが必要以上に磁化されてしまうのを回避することができるとともに、プレス加工工程時に帯状の金属材料の吸引を停止して精度よくプレス加工させることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、特定の加工ステージは、帯状の金属材料から抜き加工した複数の板材を積層して一体化された積層部品を得るとともに、特定の加工ステージより前の加工ステージは、所定のプレス加工と共に特定の加工ステージで積層される板材となる部位に接着剤を塗布するので、特定の加工ステージにおいて板材の積層と同時に隣り合う板材を接着剤にて接着させることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、下型は、帯状の金属材料が複数の加工ステージに亘って順次搬送される過程において当該帯状の金属材料をダイの表面から所定寸法上方に保持するリフタ部材が配設されるとともに、特定の加工ステージにはリフタ部材が配設されないので、リフタ部材に接着剤が付着して帯状の金属材料の搬送に支障が生じてしまうのを防止することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、特定の加工ステージで得られる積層部品は、モータのロータ又はステータであるので、複数の板材を積層して接着剤で一体化して成るモータのロータ又はステータを円滑に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る順送プレス金型を示す全体側面図
図2】同順送プレス金型の下型を示す平面図及び側面図
図3】同順送プレス金型の下型を示す斜視図
図4】同順送プレス金型の上型を示す平面図及び側面図
図5】同順送プレス金型の上型を示す斜視図
図6】同順送プレス金型のガイド部材を示す斜視図
図7】同順送プレス金型のリフタ部材を示す断面図
図8】同順送プレス金型で製造されたステータを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る順送プレス金型は、複数の加工ステージに対して帯状の金属材料が順次搬送され、それぞれの加工ステージのパンチ及びダイ穴により所定のプレス加工が行われるもので、図1~5に示すように、下型1と、上型2と、上型2の上昇動作及び下降動作を繰り返し行わせる駆動部8と、電磁石7(磁力吸引手段)に通電するタイミングを制御するマイコン等から成る制御部9とを有して構成されている。
【0022】
下型1は、床面に固設されたもので、図2、3に示すように、プレス加工形状に応じた複数のダイ穴Daが形成されたダイDを有して構成されている。また、下型1の近傍には、帯状の金属材料W(コイル材)が巻かれた状態で保持されるとともに、フィーダ(不図示)により当該帯状の金属材料Wが下型1に対して搬入されるようになっている。なお、下型1にて所定のプレス加工された帯状の金属材料Wは、端材がフィーダ(不図示)により搬出されるよう構成されている。
【0023】
さらに、下型1に形成されたダイDには、図2、3に示すように、複数のガイド部材4が取り付けられている。かかるガイド部材4は、帯状の金属材料Wの延設方向に沿って複数取り付けられており、移動する帯状の金属材料Wの幅方向の位置決めを行い得るようになっている。すなわち、ガイド部材4は、図6に示すように、下型1aを移動する帯状の金属材料Wの両側にそれぞれ位置するよう配設されており、側壁4aにて幅方向の位置決めが行われるとともに、上壁4bにて上方向の移動を規制している。
【0024】
またさらに、下型1に形成されたダイDには、図2、3に示すように、複数のリフタ部材5が取り付けられている。かかるリフタ部材5は、帯状の金属材料Wの延設方向に沿って複数取り付けられており、図7に示すように、帯状の金属材料Wが複数の加工ステージSに亘って順次搬送される過程において当該帯状の金属材料WをダイDの表面fから所定寸法上方に保持し得るようになっている。
【0025】
具体的には、リフタ部材5は、コイルスプリングから成る付勢部材6により上方に向かって付勢されており、プレス加工時には上型2の下降によって付勢部材6の付勢力に抗して下方に押圧されるとともに、プレス加工後に上型2が上昇すると、付勢部材6の付勢力により図7で示す位置まで上昇して帯状の金属材料WをダイDの表面fから所定寸法だけ上方に保持するよう構成されている。そして、帯状の金属材料Wは、順次搬送される過程において、リフタ部材5の突端面を摺動して移動することとなる。
【0026】
上型2は、下型1の上方に配設されたもので、図4、5に示すように、ダイ穴Da毎に対応したパンチPを具備するとともに、駆動部8の駆動によって、下型1に対して近接離間可能とされている。すなわち、上型が下降して下型1に対して近接すると、それぞれのパンチPが対応するダイ穴Daに挿通し、その部位の帯状の金属材料Wをプレス加工(本実施形態においては抜き加工)するよう構成されている。
【0027】
また、上型2における下型1と対向する面には、パンチPを覆って保護するストリッパ3が取り付けられており、駆動部8の駆動によって上型2が下型1に対して近接すると、ストリッパ3からパンチPが突出してダイ穴Daに挿通可能とされている。
【0028】
このように、本実施形態に係る順送プレス金型においては、対応するダイ穴Da及びパンチPにより複数の加工ステージSが構成されるとともに、加工ステージSに対して帯状の金属材料Wが順次搬送され、それぞれの加工ステージSのパンチP及びダイ穴Daにより所定のプレス加工(抜き加工)が行われるようになっている。すなわち、帯状の金属材料Wは、上型2が下型1に近接する毎に、下型1及び上型2で構成される複数の加工ステージSで所定のプレス加工が同時に行われることとなる。
【0029】
しかるに、本実施形態においては、下型1及び上型2で構成される複数の加工ステージSのうち最終工程のものを特定の加工ステージScとし、その直前の加工ステージを加工ステージSdと称するものとする。
【0030】
そして、特定の加工ステージScは、帯状の金属材料Wから抜き加工した複数の板材を積層して一体化された積層部品を得るとともに、特定の加工ステージScより前の加工ステージ(本実施形態においては直前の加工ステージSd)は、所定のプレス加工と共に特定の加工ステージScで積層される板材となる部位に接着剤を塗布するよう構成されている。
【0031】
すなわち、加工ステージSdにおいて、所定のプレス加工に加えて接着剤が塗布された後、その接着剤が塗布された部位を特定の加工ステージScにて抜き加工して所定形状の板材を得るとともに、このように得られた複数の板材を積層することにより接着剤で一体化された積層部品を得ることができる。本実施形態においては、特定の加工ステージScで得られる積層部品は、図8で示されるように、モータのステータB(積層型ステータ)である。
【0032】
ここで、本実施形態に係る順送プレス金型は、少なくとも上型2における特定の加工ステージScに配設され、当該特定の加工ステージScに搬送される帯状の金属材料Wを磁力にて吸引する磁力吸引手段としての電磁石7を具備している。かかる電磁石7は、図4、5に示すように、上型2(具体的には、上型2に取り付けられたストリッパ3)に配設され、通電により磁力が発生するもので、特定の加工ステージScのパンチPの周囲に複数(本実施形態においては周方向に4つ)取り付けられている。
【0033】
また、電磁石7は、制御部9と電気的に接続されており、駆動部8の駆動と同期した所定タイミングにて通電可能とされている。具体的には、本実施形態に係る順送プレス金型は、駆動部8による駆動によって上型2を下型1に近接させて加工ステージSにおけるダイ穴Da及びパンチPにて帯状の金属材料Wをプレス加工するプレス加工工程と、駆動部8による駆動によって上型2を下型1から離間させるとともに、帯状の金属材料Wを次の加工ステージSに順次搬送する搬送工程とが繰り返し実行されるとともに、電磁石7は、搬送工程時に限り通電して特定の加工ステージScに搬送される帯状の金属材料Wを吸引するようになっている。
【0034】
さらに、本実施形態に係る順送プレス金型においては、特定の加工ステージScにはリフタ部材5が配設されていない。すなわち、帯状の金属材料Wは、特定の加工ステージSc以外の加工ステージSを移動する過程においてリフタ部材5上を摺動してダイDの表面fから所定寸法上方に保持されつつ順次搬送されるとともに、最終の加工ステージである特定の加工ステージScにおいて、電磁石7で発生した磁力で上方に吸引されることにより、リフタ部材5がなくてもダイDの表面fから所定寸法上方に保持されつつ搬送されることとなる。
【0035】
したがって、加工ステージSdで接着剤が塗布された帯状の金属材料Wが特定の加工ステージScに搬送される過程、及び特定の下降ステージScにて所定のプレス加工(抜き加工)が行われる過程において、リフタ部材5の代わりに電磁石7の磁力による吸引力にてダイDの表面fより上方の位置に保持することができるので、リフタ部材5に接着剤が付着してしまうのを防止することができる。
【0036】
本実施形態によれば、少なくとも上型2における特定の加工ステージScに配設され、当該特定の加工ステージScに搬送される帯状の金属材料Wを磁力にて吸引する磁力吸引手段としての電磁石7を具備したので、リフタ部材5の有無に関わらず、特定の加工ステージScに対して帯状の金属材料Wを常に良好に搬送することができる。特に、特定の加工ステージScは、最終の加工ステージであることから、帯状の金属材料Wの剛性が最も低下しており、リフタ部材5がないと撓み易いことから、当該特定の加工ステージScにおいて電磁石7の磁力を発生させて上方に吸引することにより、帯状の金属材料Wを効果的且つ確実に搬送させることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る磁力吸引手段は、通電により磁力が発生する電磁石7から成り、所定のタイミングで通電されて帯状の金属材料Wを磁力にて吸引するので、必要時に限り帯状の金属材料Wを吸引する磁力を発生させることができ、下型1やダイDが必要以上に磁化されてしまうのを回避することができる。特に、本実施形態に係る磁力吸引手段は、搬送工程時に限り通電して特定の加工ステージScに搬送される帯状の金属材料Wを吸引するので、下型1やダイDが必要以上に磁化されてしまうのを回避することができるとともに、プレス加工工程時に帯状の金属材料Wの吸引を停止して精度よくプレス加工させることができる。
【0038】
さらに、特定の加工ステージScは、帯状の金属材料Wから抜き加工した複数の板材を積層して一体化された積層部品を得るとともに、特定の加工ステージScより前(本実施形態においては直前)の加工ステージSdは、所定のプレス加工と共に特定の加工ステージScで積層される板材となる部位に接着剤を塗布するので、特定の加工ステージScにおいて板材の積層と同時に隣り合う板材を接着剤にて接着させることができる。
【0039】
またさらに、下型1は、帯状の金属材料Wが複数の加工ステージSに亘って順次搬送される過程において当該帯状の金属材料WをダイDの表面fから所定寸法上方に保持するリフタ部材5が配設されるとともに、特定の加工ステージScにはリフタ部材5が配設されないので、リフタ部材5に接着剤が付着して帯状の金属材料Wの搬送に支障が生じてしまうのを防止することができる。
【0040】
また、特定の加工ステージScで得られる積層部品は、モータのステータBであるので、複数の板材を積層して接着剤で一体化して成るモータのステータBを円滑に得ることができる。また、特定の加工ステージで得られる積層部品をモータのロータとしてもよく、その場合、複数の板材を積層して接着剤で一体化して成るモータのロータを円滑に得ることができる。なお、特定の加工ステージScで得られる積層部品は、積層型の他の部品であってもよく、接着剤による一体化の他、かしめ等による一体化を前提としたものであってもよい。
【0041】
さらに、本実施形態に係る順送プレス金型においては、モータのステータBを順次得るものとされているが、モータのロータを得る順送プレス金型とステータBを得る順送プレス金型とが直列に配列されたもの、或いはロータを得る順送プレス金型とステータBを得る順送プレス金型とが並列に配列されたものであってもよい。
【0042】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば磁力吸引手段を電磁石7に代えて永久磁石としてもよい。また、本実施形態に係る磁力吸引手段は、搬送工程時に限り通電して特定の加工ステージScに搬送される帯状の金属材料Wを吸引するものであるが、プレス加工工程及び搬送工程の両方において通電するようにしてもよい。
【0043】
さらに、本実施形態においては、磁力吸引手段が上型2の特定の加工ステージScのみに配設されているが、特定の加工ステージScに加えて他の加工ステージに配設されたものであってもよい。なお、本実施形態においては、特定の加工ステージScにリフタ部材5が配設されず他の部位にリフタ部材5が配設されているが、他の部位においてもリフタ部材5が配設されないものであってもよく、金属材料Wの縁部のみでなく金属材料Wの中央部近傍に配設されたものとしてもよい。加えて、本実施形態においては、パンチP及びダイ穴Daが金属材料Wの搬送方向に対して1列に配設されているが、パンチP及びダイ穴Daを金属材料Wの搬送方向に対して2列以上配設して複数の製品を同時に抜き加工し得るものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
少なくとも上型における特定の加工ステージに配設され、当該特定の加工ステージに搬送される帯状の金属材料を磁力にて吸引する磁力吸引手段を具備した順送プレス金型であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 下型
2 上型
3 ストリッパ
4 ガイド部材
5 リフタ部材
6 付勢部材(コイルスプリング)
7 電磁石(磁力吸引手段)
8 駆動部
9 制御部
D ダイ
Da ダイ穴
S 加工ステージ
B ステータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8