(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061331
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】ポッティング加工装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20230424BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171267
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】517168679
【氏名又は名称】株式会社プロモ
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】中沢 直哉
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AB01
4F041BA02
4F041BA32
4F041BA34
4F041BA42
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042CA01
4F042CB03
4F042CB10
4F042CB19
4F042CB27
(57)【要約】
【課題】軽量、コンパクトで狭い場所でも設置でき、少量生産に適した装置を提供する。
【解決手段】可撓性を有するチューブを備えたスタティックミキサー30が所定の長さを有し、その先端部に弾性チューブ40が設けられている。ポッティング加工を行う際には、弾性チューブ40の吐出口を、加工対象のシールに対峙させる。スタティックミキサー30が所定の長さを有するため、加工対象のシールの位置に応じて曲がる。よって、手動で、弾性チューブ40の吐出口を加工対象となるシールの印刷面に容易に対峙させることができ、かつ、弾性チューブ40を外周側から押しつぶしてポッティング液の吐出を容易に止めることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱泡処理された主剤が充填された第1シリンジと、脱泡処理された硬化剤が充填された第2シリンジとが並列配置された2液カートリッジと、
前記第1シリンジ及び第2シリンジの各前部に位置する各出口のいずれにも連通する連通管と、
可撓性を有するチューブ内にミキシングエレメントが挿入され、後端部が前記連通管に接続され、前記第1シリンジから流出する主剤及び前記第2シリンジから流出する硬化剤が、前記ミキシングエレメントを通過する過程で混合される所定長さのスタティックミキサーと、
前記第1シリンジ及び第2シリンジの各後部に設けられた栓部材を押圧する第1及び第2プランジャと
前記スタティックミキサーの先端部に設けられ、内部を前記スタティックミキサーの先端部から流出される前記主剤及び硬化剤が混合されたポッティング液が通過し、操作者の手により外周側から押しつぶして流路を閉塞可能な弾性チューブと
を有し、前記弾性チューブの吐出口を加工対象に手動操作で対向させて前記ポッティング液を吐出させ、前記弾性チューブを押しつぶすことにより、前記ポッティング液の吐出を停止可能であることを特徴とするポッティング加工装置。
【請求項2】
前記第1及び第2プランジャは、モータの駆動により進退動作する請求項1記載のポッティング加工装置。
【請求項3】
前記モータの駆動時間を制御するタイマーが設けられ、前記タイマーの設定時間分、前記第1及び第2プランジャが前進動作する請求項2記載のポッティング加工装置。
【請求項4】
前記2液カートリッジが固定配置されるカートリッジ配置面を有する支持フレームを備え、
前記カートリッジ配置面が略水平となるように前記支持フレームをセットした際に、前記カートリッジ配置面上の前記2液カートリッジが略水平姿勢となり、前記第1及び第2シリンジ内を進退動作する前記第1及び第2プランジャが略水平方向に動作可能に前記支持フレームに支持される請求項2又は3記載のポッティング加工装置。
【請求項5】
卓上型である請求項4記載のポッティング加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポッティング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷面上に、透明の樹脂を数mm程度の厚みで被覆するポッティング加工を施したシールやラベル等は、印刷面を保護できると共に、光沢感、高級感が付与されることから、様々な宣伝、広告ツール等として用いられている。例えば、特許文献1では、ワッペン素材部上に、ウレタン系、エポキシ系等の2液架橋型の樹脂あるいは熱可塑性樹脂を使用してポッティング加工を施すことが開示されている。特許文献2では織物に対して、その織物模様を強調するためにポッティング加工を施すことが開示されている。
【0003】
また、ポッティング加工を施す装置としては、非特許文献1に示したものが知られている。非特許文献1には、本出願人の販売に係るポッティングマシンが開示されている。このポッティングマシンは、加工対象であるシールの上方を、X-Yプロッタのように、前後左右に動いてポッティング液を吐出するノズルを備えている。よって、ノズルの前後左右へ移動量を入力しておくことで、自動的に、加工対象となるシール上に、順次ノズルが移動しポッティング液が吐出されていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-109382号公報
【特許文献2】特開2018-202711号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社プロモのホームページ、「ポッティングマシン販売」、(令和3年10月8日検索」 URL:https://promobiz.co.jp/potting/potting-machine/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に示したポッティングマシンは、多数のシールに対して、シールの大きさ等に応じた移動量を入力するだけでよい自動機であるため、省力化、大量生産に適しているものの、装置自体の製造コストが高い。よって、生産量が少ない場合には、非特許文献1に示したものはコスト的に見合わない場合がある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、低コストで製造可能であると共に、軽量、コンパクトで、狭い場所でも設置でき、少量生産に適したポッティング加工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のポッティング加工装置は、
脱泡処理された主剤が充填された第1シリンジと、脱泡処理された硬化剤が充填された第2シリンジとが並列配置された2液カートリッジと、
前記第1シリンジ及び第2シリンジの各前部に位置する各出口のいずれにも連通する連通管と、
可撓性を有するチューブ内にミキシングエレメントが挿入され、後端部が前記連通管に接続され、前記第1シリンジから流出する主剤及び前記第2シリンジから流出する硬化剤が、前記ミキシングエレメントを通過する過程で混合される所定長さのスタティックミキサーと、
前記第1シリンジ及び第2シリンジの各後部に設けられた栓部材を押圧する第1及び第2プランジャと
前記スタティックミキサーの先端部に設けられ、内部を前記スタティックミキサーの先端部から流出される前記主剤及び硬化剤が混合されたポッティング液が通過し、操作者の手により外周側から押しつぶして流路を閉塞可能な弾性チューブと
を有し、前記弾性チューブの吐出口を加工対象に手動操作で対向させて前記ポッティング液を吐出させ、前記弾性チューブを押しつぶすことにより、前記ポッティング液の吐出を停止可能であることを特徴とする。
【0009】
前記第1及び第2プランジャは、モータの駆動により進退動作することが好ましい。
前記モータの駆動時間を制御するタイマーが設けられ、前記タイマーの設定時間分、前記第1及び第2プランジャが前進動作する構成であることが好ましい。
【0010】
前記2液カートリッジが固定配置されるカートリッジ配置面を有する支持フレームを備え、
前記カートリッジ配置面が略水平となるように前記支持フレームをセットした際に、前記カートリッジ配置面上の前記2液カートリッジが略水平姿勢となり、前記第1及び第2シリンジ内を進退動作する前記第1及び第2プランジャが略水平方向に動作可能に前記支持フレームに支持される構成であることが好ましい。
本発明のポッティング加工装置は、好適には卓上型として提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポッティング加工装置は、可撓性を有するチューブを備えたスタティックミキサーが所定の長さを有し、かつ、その先端部に弾性チューブが設けられている。このため、例えば印刷面を表側にして複数配設されているシールのうちの任意のシールの印刷面にポッティング加工を施す場合、まず、弾性チューブの吐出口を、当該加工対象の印刷面に対峙させる。この際、スタティックミキサーが所定の長さを有し、かつ可撓性を有するため、加工対象のシールの位置に応じて曲がる。従って、手動で、弾性チューブの吐出口を加工対象となるシールの印刷面に容易に対峙させることができ、また、弾性チューブを外周側から押しつぶせば、ポッティング液の吐出を容易に止めることができ、ポッティング液の余分な吐出を防ぐことができる。そのため、本発明のポッティング装置は、手動での使用に適しており、加工対象のシール等の数が少量の場合に適している。
【0012】
また、第1及び第2プランジャはモータで駆動制御することが好ましい。従来、コンプレッサーの駆動力を用いてプランジャを動作させていたが、本発明では、小型化が可能であるため、コンプレッサーを用いる必要がなくモータ駆動に適している。また、モータ駆動とすることにより、タイマの設定で、モータの駆動時間、すなわち、第1及び第2プランジャの前進時間を制御でき、その結果、ポッティング液の吐出量制御が容易である。
【0013】
また、第1及び第2シリンジ、第1及び第2プランジャ、モータ等を支持するための支持フレームとしては、カートリッジ配置面を略水平にセットすることで、第1及び第2シリンジを略水平姿勢で配置できるものが好ましい。従来の装置は、スタティックミキサーを曲げて使用することができなかったため、スタティックミキサーの吐出口が加工対象の直上となるように移動させるX-Yプロッタが必要であると共に、第1及び第2シリンジ並びに第1及び第2プランジャを略垂直姿勢で配置する必要があった。しかし、本発明によれば、スタティックミキサーが可撓性を備えるため、そのような配置に限定されることはない。その結果、第1及び第2シリンジ、第1及び第2プランジャを略水平姿勢で配置することが可能となり、それらを垂直姿勢で配置する場合よりも装置の高さ方向の占有空間が小さくなり、机上等での配置、使用が容易となり、卓上型として適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るポッティング加工装置を示した斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、上記実施形態に係るポッティング加工装置の分解斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)のA部拡大図である。
【
図3】
図3は、支持フレーム及び駆動機構を説明するための図である。
【
図4】
図4(a)は、支持フレーム上に第1及び第2シリンジと第1及び第2プランジャを配置した状態の平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)の正面図であり、
図4(c)は、
図4(a)の側面図であり、
図4(d)は、
図4(a)の背面図である。
【
図5】
図5は、上記実施形態に係るポッティング加工装置を用いたポッティング加工を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示した実施形態に基づき本発明を説明する。
図1~
図4は、本発明の実施形態に係るポッティング加工装置1を説明するための図である。これらの図に示したように、本実施形態のポッティング加工装置1は、2液カートリッジ10、連通管15、スタティックミキサー30、弾性チューブ40、第1プランジャ50及び第2プランジャ60、支持フレーム70を有して構成されている。
【0016】
2液カートリッジ10は、第1シリンジ11及び第2シリンジ12を有して構成され、一方(本実施形態では第1シリンジ11)に主剤が充填され、他方に(本実施形態では第2シリンジ12)に硬化剤が充填されている。なお、主剤及び硬化剤のいずれも脱泡処理されている。脱泡処理することにより、硬化後に、気泡が残ることを抑制できる。ポッティング加工用の主剤及び硬化剤としては、それぞれポリオール及びイソシアネートを反応させた透明なポリウレタン樹脂を用いることができ、これに限らず、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。
【0017】
2液カートリッジ10の第1シリンジ11及び第2シリンジ12は、並列配置される。それぞれの前部11a,12aには、液体の出口11b,12bが形成され、それぞれの後部11c,12cの開口端には栓部材13,14が装着されている。栓部材13,14は、後部11c,12cの開口端に装着され、押圧されて前進することで、各シリンジ11,12内の液体を出口11b,12bから流出させる。
【0018】
各シリンジ11,12の出口11b、12bには、連通管15が設けられている。連通管15は、主管15aから2つに分かれた枝管15b,15cを有しており、各枝管15b,15cが各シリンジの出口11b,12bに接続される。よって、出口11b,12bから流出した液体は、各枝管15b,15cを経由して1本の主管15aに至る。主管15a内は、隔壁15dにより2室に区分されており、それぞれが各枝管15b,15cに対応している。
【0019】
スタティックミキサー30は、
図2(a),(b)に示したように、可撓性を有するチューブ31内に、ミキシングエレメント32が多数挿入されたものである。ミキシングエレメント32は、長方形の合成樹脂製の板を180度ねじった形をなしており、ねじれ方向の異なるものが例えば交互に挿入されている。スタティックミキサー30の後端部30a(すなわち、チューブ31の後端部)は、連通管15の主管15aに接続される。これにより、各シリンジ11,12の出口11b,12bが流出した液体(主剤及び硬化剤)は、それぞれ枝管15b,15cを通過した後、主管15aを経て、スタティックミキサー30の後端部30aからチューブ31内に供給される。チューブ31内を通過する液体(主剤及び硬化剤)は、ミキシングエレメント32に接触するたびに分割、反転などの作用を受けて回転方向に変化し、攪拌される。これにより、チューブ31内を流れる2液タイプの樹脂(主剤及び硬化剤)は、後端部30aから先端部30bに向かって流れていくに従って、ミキシングエレメント32を通過する過程で攪拌され、混合される。
【0020】
本実施形態においてスタティックミキサー30は、所定の長さを有している。スタティックミキサー30は、上記のように、多数のミキシングエレメント32が充填されているため、全長15cm以下のような短い場合には曲がりにくい。しかしながら、本実施形態では所定の長さ、好ましくは30cm以上、より好ましくは40~150cm程度とすることで、屈曲性を持たせている。
【0021】
スタティックミキサー30の先端部30bには、弾性チューブ40が連結される。弾性チューブ40は、内部をスタティックミキサー30の先端部30bから流出される主剤及び硬化剤が混合されたポッティング液が通過可能であると共に、操作者の手により外周側から押しつぶして流路を閉塞可能である。本実施形態では、後述のように、タイマー制御により、第1及び第2プランジャ50,60の前進距離が制御される。従って、第1及び第2プランジャ50,60が前進した分に対応する容量が吐出されるが、弾性チューブ40の吐出口40aが下向きでは、ポッティング液がたれてしまう。しかしながら、本実施形態のように、弾性チューブ40を設けることにより、操作者が手で外周側から押しつぶして流路を閉塞すれば、このような液だれを即座に止めることができる。
【0022】
弾性チューブ40は、このように手動で押しつぶすことができる弾性力のものが用いられる。例えば、シリコーンゴム等からなるものを用いることができる。
【0023】
第1プランジャ50及び第2プランジャ60は、第1シリンジ11及び第2シリンジ12に対応して配設される。具体的には、第1シリンジ11及び第2シリンジ12の軸心の延長線上に第1プランジャ50及び第2プランジャ60の軸心が一致するように配設され、第1シリンジ11及び第2シリンジ12内に侵入可能な円筒状に形成されている。また、第1シリンジ11及び第2シリンジ12の後部11c,12cに装着された栓部材13,14に、第1プランジャ50及び第2プランジャ60の先端50a,60aが接するように配設される。これにより、第1プランジャ50及び第2プランジャ60が前進すると、それに押されて栓部材13,14が第1シリンジ11及び第2シリンジ12内を前進し、それに対応する容量の液体(主剤及び硬化剤)が、各出口11b,12bから連通管15内に流出する。
【0024】
支持フレーム70は、2液カートリッジ10が固定配置されるカートリッジ配置面71を有している。支持フレーム70は、任意の位置、例えば、机上等の卓上に設置した場合にカートリッジ配置面71が略水平となるように構成されている。基本的には、該支持フレーム70は、略直方体で、上面がカートリッジ配置面71となっている。略直方体であるため、底面72を机上等の卓上に載置すると、カートリッジ配置面71は略水平となる。
【0025】
2液カートリッジ10は、このカートリッジ配置面71上に第1及び第2シリンジ11,12を並列にして配設され、その結果、第1及び第2シリンジ11,12は略水平に配設される。上記のように、第1及び第2プランジャ560,60は、第1及び第2シリンジ11,12の軸心の延長線上において、カートリッジ配置面71上に配設される。従って、第1及び第2プランジャ50,60も略水平姿勢で配設されることになる。なお、2液カートリッジ10は、カートリッジ配置面71上において、第1及び第2プランジャ50,60の前進方向の手前に固定される。符号71aは、2液カートリッジ10をカートリッジ配置面71上に固定配置後にその上方を被覆するカバーである。
【0026】
支持フレーム70のカートリッジ配置面71及び底面72との間に、モータ73等の駆動機構が配設されている。駆動機構は、モータ73に加え、カートリッジ配置面71上に配置される第1及び第2シリンジ11,12の長手方向(本実施形態では、支持フレーム70の長手方向)に沿って設けられるボールねじを構成するねじ軸74と、その両脇に設けられるガイド軸75と、モータ73を内蔵した駆動ボックス76とを有している。
【0027】
カートリッジ配置面71において第1及び第2プランジャ50,60が配置される範囲には、その長手方向に沿ってスリット71b,71cが設けられている。第1及び第2プランジャ50,60の後端50b,60bには、両者に連結されて支持する連結板80が設けられている。そして、この連結板80が、上記のスリット71b,71cを介して、駆動ボックス76に連結される。駆動ボックス76は、略中央部にねじ軸74が位置するように設けられると共に、ガイド軸75に沿って支持フレーム70の長手方向に移動可能となっている。駆動ボックス76内において、ねじ軸74に螺合するナット部材(図示せず)が配置されており、モータ73の回転力が該ナット部材に伝達されると、ねじ軸74に対して相対回転する。これにより、モータ73が駆動すると、駆動ボックス76が支持フレーム70の長手方向に移動する。その結果、駆動ボックス76に連結された連結板80がスリット71b,71cに沿って同じく長手方向に移動し、それに伴って第1及び第2プランジャ50,60も前後動する。
【0028】
また、支持フレーム70には、電源スイッチ77aのほか、タイマー77b、方向切り替えスイッチ77c、動作モード切替スイッチ77dが設けられている。さらに、フットスイッチ(図示しない)とのコネクタ部77eが設けられている。フットスイッチは、踏み込むとONになり、足を離すとOFFになる。モータ73は、電源スイッチ77aをONにした後、フットスイッチをONにすると、タイマー77bの設定時間動作して停止する。停止後、一旦フットスイッチをOFFにして再びフットスイッチをONにするとタイマー77bの設定時間動作して停止する。よって、例えば、タイマー77bの設定が1秒間とすると、フットスイッチをON操作するたびに、1秒間動いた後、停止することを繰り返す。
【0029】
また、支持フレーム70には手動ダイヤル78が設けられている。モータ73をOFFにした状態で手動ダイヤル78を回転させると、連結板80を介して各プランジャ50,60が前後動する。
【0030】
次に、本実施形態の作用を説明する。
まず、例えば、
図5に示したように、縦横に所定間隔で、直径1cm程度の円形のシールが多数印刷された加工対象の用紙を準備する。この用紙を、作業テーブル上に載置する。本実施形態のポッティング加工装置1を、該用紙の周囲の適宜位置に置く。次に、タイマー77bをセットする。この設定した時間分、モータ73が駆動して各プランジャ50,60が前進し、ポッティング液が弾性チューブ40の吐出口40aから吐出される。よって、ポッティング対象のシールの大きさ等を考慮した上で設定する。例えば、1秒間ずつ、5秒間ずつといったように設定する。
【0031】
次に、手動ダイヤル78を回転させ、第1及び第2プランジャ50,60の先端部50a,60aを、第1及び第2シリンジ11,12の栓部材13,14に当接するまで前進させる。なお、動作モード切替スイッチ77dにより、タイマー制御はOFFにしておくと共に、方向切り替えスイッチ77cにより、各プランジャ50,60の移動方向を前進方向としておく。この状態で、電源スイッチ77aをONにする。作業者は、ポッティング加工装置1のスタティックミキサー30又は弾性チューブ40を持つ。スタティックミキサー30の長さによっては、一方の手でスタティックミキサー30を持ち、他方の手で弾性チューブ40を持つようにしてもよい。
【0032】
次いで、フットスイッチをONにすると、モータ73が駆動し、連結板80を介して各プランジャ50,60が前進する。それにより、栓部材13,14が押圧され、第1及び第2シリンジ11,12内の各液体(主剤及び硬化剤)が、出口11b,12bから流出し、連通管15の各枝管15b,15cを経由して主管15aに至る。主管15aを経た後、スタティックミキサー30内に2液(主剤及び硬化剤)が侵入する。スタティックミキサー30内を通過している間に、2液は混合される。本実施形態では、スタティックミキサー30が所定の長さを有するため、該スタティックミキサー30を通過する間に2液は十分混合される。弾性チューブ40の吐出口40a付近に至ったならば、フットスイッチをOFFにする。ここで、液だれを防止するために、作業者は、弾性チューブ40の吐出口40a付近を外周側から押圧してその流路を塞いでおく。ここまでが、ポッティング液を加工対象のシール上に滴下する前の準備工程となる。
【0033】
次に、タイマー77bをセットする。例えば、タイマーによる駆動継続時間を1秒間にセットする。また、動作モード切り替えスイッチ77dによりタイマー制御モードに切り替える。なお、タイマー制御は、動作モード切替スイッチ77dによってタイマー制御モードに切り替えないと働かないので、タイマー77bの時間セット自体は、上記の準備工程の適宜のタイミングで行っても構わない。
【0034】
この状態で、作業者は、スタティックミキサー30及び弾性チューブ40を手で動かし、弾性チューブ40の吐出口40aを加工対象のシール上に位置させ、フットスイッチをONにする。フットスイッチがONになると、タイマー制御により、1秒間、モータ73が駆動する。それにより、連結板80を介して第1及び第2プランジャ50,60が1秒間前進する。第1及び第2プランジャ50,60が前進した距離に応じて、栓部材13,14が押圧され、それに対応した量の液体(主剤及び硬化剤)が、第1及び第2シリンジ11,12の出口11b,12bから連通管15内に流出する。連通管15及びスタティックミキサー30内に、既に液体(主剤及び硬化剤)が行き渡っているため、連通管15内に流出した分に相当する量がスタティックミキサー30及び弾性チューブ40側に押し出され、吐出口40aから加工対象のシール上に滴下される。滴下された液体は、主剤及び硬化剤が十分に混合されたもので、シール上に滴下されると、シール上において平面方向に広がりつつ、表面張力により所定の厚さとなり、透明な樹脂層がシール上に形成される。これが硬化することによりポッティング加工がなされる。
【0035】
1秒間経過すると、第1及び第2プランジャ50,60の前進が停止する。それにより、第1及び第2シリンジ11,12からの各液体の流出は停止するが、弾性チューブ40が下向きになっている場合には吐出口40aから両者の混合液であるポッティング液が重力により落下する。そこで、作業者は、弾性チューブ40を外周側からつまみ、流路を閉じる。それにより、ポッティング液の吐出が止まる。本実施形態のポッティング加工装置1は、このように手動でありながら、所定量のポッティング液を加工対象のシール上に確実に滴下でき、かつ、余剰液の落下を抑制できる。
【0036】
作業者は、フットスイッチから一旦足を離してフットスイッチをOFFにすると共に、弾性チューブ40をつまんだ状態で、次の加工対象のシール上に弾性チューブ40の吐出口40aを位置させる。次いで、フットスイッチをONにすると、タイマー制御により、再び1秒間、第1及び第2プランジャ50,60が前進する。それにより、それに応じた量の各液体(主剤及び硬化剤)が押し出され、弾性チューブ40の吐出口40aから、対応する量のポッティング液が加工対象のシール上に滴下され、当該シールへのポッティング加工がなされる。
【0037】
作業者は、上記作業を繰り返し、複数のシールにポッティング加工を施していく。例えば、用紙上に、縦横に数cm間隔で数百個のシールが印刷されている場合においては、スタティックミキサー30が所定の長さを有しているため、その可撓性により、手動でありながら、目的とする加工対象のシール上に容易に移動させることができる。また、弾性チューブ40を手動で操作して流路を閉塞可能であるため、簡易な構成でありながら、ポッティング加工を次々と行うことができる。
【0038】
また、本実施形態では、モータ73による第1及び第2プランジャ50,60を動作させる構成であるため、従来のように駆動源としてコンプレッサーが不要で、小型、軽量化に適しており、卓上型として好適である。また、駆動源としてモータ73を採用したことにより、タイマー制御でポッティング液の吐出量を制御でき、かつ、手動操作でポッティング液の滴下を呈させることができることから、手動でありながら、吐出量が安定し、ポッティング加工を行った場合の製品誤差も少ない。
【0039】
従来、手作業でポッティング加工を行う場合、2液をコップ中で混ぜ合わせ、その後、混ぜ合わせたポッティング液をチューブから滴下しているケースが多い。このような場合、2液を混ぜ合わせた直後から反応が始まり、硬化し始める。よって、チューブからのポッティング液の押し出し圧力は、作業当初よりも後半になるほど高くする必要がある。また、速やかに作業を終えないと、ポッティング液がコップ内で硬化してしまい、使用できず、無駄になってしまう。また、コップ内で2液が反応し始めるため、速やかにチューブに送らなければならず、2液の混ざり具合が不十分で脱泡できず、ポッティングしても、気泡が目立つケースが多く、透明度も低くなりがちである。
【0040】
これに対し、本実施形態によれば、予め脱泡処理した2液を上記のように第1及び第2シリンジ11,12に充填し、その2液はスタティックミキサー30に至るまで混ざり合わない。そのため、第1及び第2シリンジ11,12内に充填される2液は、いずれも、全て消費することができ無駄がない。また、所定長さ(好ましくは30cm以上、より好ましくは40~150cm程度)のスタティックミキサー30を用いて混合しているため、スタティックミキサー30内で脱泡された2液が十分混ざり合う。この結果、シール上に滴下されたポッティング液中の気泡はほとんどなく、透明性も高い。従って、手動操作でありながら、透明性の高い優れたポッティング加工を行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
1 ポッティング加工装置
10 2液カートリッジ
11 第1カートリッジ
12 第2カートリッジ
15 連通管
30 スタティックミキサー
40 弾性チューブ
40a 吐出口
50 第1プランジャ
60 第2プランジャ
70 支持フレーム
73 モータ