(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061340
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】フィルター、フィルターユニット、防護具、組フィルター、マスク、フィルターユニットの製造方法及び組フィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 46/24 20060101AFI20230424BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20230424BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20230424BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
B01D46/24 Z
B01D39/16 A
A62B18/02 C
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】64
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200178
(22)【出願日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2021170915
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592171005
【氏名又は名称】株式会社セフト研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 弘司
【テーマコード(参考)】
2E185
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185AA07
2E185CB18
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB05
4D019BD02
4D019BD03
4D019CA03
4D019CA04
4D019CB04
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4D019CB07
4D058JA02
4D058JA09
4D058JB14
4D058JB26
4D058KA01
4D058KA04
4D058KA08
4D058KA11
4D058KA12
4D058KA13
4D058KB05
4D058KB11
4D058QA03
4D058QA21
4D058SA20
(57)【要約】
【課題】フィルターの面積を拡大し易くする。
【解決手段】袋状フィルター23は、筒状又は袋状に形成され、少なくとも一端部に形成された開口部232と、周囲を周回するように配置された濾過面234と、を備える。濾過送風装置2は、袋状フィルター23と、袋状フィルター23が取り付けられる接続体21と、を備え、接続体21は、接続体21内に空気を取り込むための空気取込孔211を備え、袋状フィルター23の開口部232と接続体21の空気取込孔211とが接続されるようにして、袋状フィルター23が接続体21に取り付けられる。防護具100は、濾過送風装置2と、着用者Wの顔面を覆う防護具本体1と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状又は袋状に形成され、
少なくとも一端部に形成された開口部と、
通過する流体を濾過する濾過面と、
を備えることを特徴とするフィルター。
【請求項2】
前記濾過面は、高さが周長の0.1倍以上の柱状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
前記開口部を1つのみ備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルター。
【請求項4】
前記濾過面を構成する濾紙を接着させた部分であるシールラインを、上下方向に延在するようにして、1又は2か所に有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項5】
前記濾過面は、テープ状の濾紙が一部重なるように巻かれることで形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項6】
上下方向に伸ばした場合と比較して、上下方向の長さが圧縮されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項7】
前記濾過面の周囲を覆う袋状の部材である形状保持布を備えることを特徴とする請求項6に記載のフィルター。
【請求項8】
上下方向に伸ばした場合と比較して、前記フィルターの上下方向の長さを、5分の1以下に圧縮可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項9】
上端部における中心線と、下端部における中心線とがなす角度が20度以上となることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項10】
前記濾過面は、平面視における断面の外形が複数の凸部と複数の凹部とを有する形状となることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項11】
前記濾過面は、ポリプロピレン繊維で形成された濾紙を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のフィルターと、
前記フィルターが取り付けられるフィルター取付部材と、
を備え、
前記フィルター取付部材は、流体を流通させることができる開口部である流通孔を備え、
前記フィルターの前記開口部と前記フィルター取付部材の前記流通孔とが接続されるようにして、前記フィルターが前記フィルター取付部材に取り付けられていることを特徴とするフィルターユニット。
【請求項13】
前記フィルター取付部材は、内部に空間を有する接続体であり、前記流通孔は前記接続体の内外で流体を流通させる孔部であることを特徴とする請求項12に記載のフィルターユニット。
【請求項14】
前記流通孔は、前記接続体内に流体を取り込むための取込孔であることを特徴とする請求項13に記載のフィルターユニット。
【請求項15】
前記流通孔は、前記接続体内から流体を送出するための送出孔であることを特徴とする請求項13に記載のフィルターユニット。
【請求項16】
前記フィルターは、前記開口部の周囲に、前記接続体との接続部である封止部を備え、
前記接続体は、前記流通孔の周囲に、前記フィルターとの接続部である封止対応部を備え、
前記封止部が前記封止対応部を覆うようにして前記フィルターが前記接続体に取り付けられることを特徴とする請求項13から15のいずれか一項に記載のフィルターユニット。
【請求項17】
前記濾過面の面積をS平方センチメートル、前記封止部が前記封止対応部を覆う際の封止長をLセンチメートルとした場合に、L/√Sが√2より小さいことを特徴とする請求項16に記載のフィルターユニット。
【請求項18】
前記接続体の前記封止対応部は、平面視において外周が全周に亘って外側に凸となる筒状に形成されていることを特徴とする請求項16又は17に記載のフィルターユニット。
【請求項19】
前記封止対応部は、平面視における外周が全周に亘って外側に凸となる曲線から形成され、平面視における外周のどの点においても、曲率半径が外周の周長以下であることを特徴とする請求項18に記載のフィルターユニット。
【請求項20】
前記封止部を前記封止対応部に密着させるリング状部材を備えることを特徴とする請求項18又は19に記載のフィルターユニット。
【請求項21】
前記封止部は、前記開口部の周囲に、前記濾過面と比較して硬質な材料によって形成されたリング状の部材である封止板を備え、
前記封止板を、前記封止対応部に取り付けることによって前記フィルターが前記接続体に取り付けられることを特徴とする請求項16から19のいずれか一項に記載のフィルターユニット。
【請求項22】
前記封止板は外面から突出するように形成された取手部を備えることを特徴とする請求項21に記載のフィルターユニット。
【請求項23】
前記封止板は摩擦力によって前記封止対応部に取り付けられることを特徴とする請求項21又は22に記載のフィルターユニット。
【請求項24】
前記封止板は、ネジによって前記封止対応部に取り付けられることを特徴とする請求項21又は22に記載のフィルターユニット。
【請求項25】
前記封止対応部の外面は、前記接続体の他の部分と比較して弾性が大きい材料によって形成されていることを特徴とする請求項16から24のいずれか一項に記載のフィルターユニット。
【請求項26】
前記フィルターの前記濾過面を外面側から覆う袋状のフィルターであるプレフィルターを備えることを特徴とする請求項13から25のいずれか一項に記載のフィルターユニット。
【請求項27】
複数の前記フィルターを備えることを特徴とする請求項13から26のいずれか一項に記載のフィルターユニット。
【請求項28】
前記接続体は前記フィルターの数と一致する数の前記流通孔を備え、前記流通孔のそれぞれを覆うようにして前記フィルターが取り付けられていることを特徴とする請求項27に記載のフィルターユニット。
【請求項29】
請求項13から28のいずれか一項に記載のフィルターユニットと、
着用者の顔面を覆う防護具本体と、
を備えることを特徴とする防護具。
【請求項30】
前記フィルター取付部材は、板状に形成された底板であり、前記流通孔は前記底板の一の面の側と他の面の側とで流体を流通させる孔部であることを特徴とする請求項12に記載のフィルターユニット。
【請求項31】
前記底板は複数の前記流通孔を備え、
複数の前記フィルターが前記底板に取り付けられていることを特徴とする請求項30に記載のフィルターユニット。
【請求項32】
前記フィルターの前記開口部が形成されたのと反対側の端部を覆うように取り付けられた天板を備えることを特徴とする請求項30又は31に記載のフィルターユニット。
【請求項33】
前記天板は、前記フィルターが接続されるフィルター接続部を備え、前記フィルター接続部の周囲に空気が流通する天板開口部が形成されていることを特徴とする請求項32に記載のフィルターユニット。
【請求項34】
前記底板と前記天板とを繋ぐ棒状の部材である連結棒を備えることを特徴とする請求項32又は33に記載のフィルターユニット。
【請求項35】
前記底板と前記天板とを繋ぎ、前記フィルターユニットの側面を覆う側板を備えることを特徴とする請求項32又は33に記載のフィルターユニット。
【請求項36】
前記側板は、複数組み合わせることで筒状となるように形成されていることを特徴とする請求項35に記載のフィルターユニット。
【請求項37】
前記側板は、内面側に前記底板又は前記天板を固定するための溝を備えることを特徴とする請求項35又は36に記載のフィルターユニット。
【請求項38】
前記底板は、前記流通孔の周囲に溝部を備え、
前記フィルターは、前記開口部の周囲が前記溝部に挿入されて前記底板に取り付けられていることを特徴とする請求項30から37のいずれか一項に記載のフィルターユニット。
【請求項39】
前記底板は、前記流通孔の周囲にリング状の突出部である内リングを備え、
前記フィルターは、前記開口部の周囲が、前記内リングと、前記内リングの外周に被せられたリング状の部材である外リングと、の間に挟まれて前記底板に取り付けられていることを特徴とする請求項30から37のいずれか一項に記載のフィルターユニット。
【請求項40】
前記外リングは、複数接続されて外リング連結板を構成していることを特徴とする請求項39に記載のフィルターユニット。
【請求項41】
前記底板は、前記流通孔の周囲にリング状の突出部である内リングを備え、
前記フィルターは、前記開口部の周囲が前記内リングに被せられた上で、紐状の部材によって巻かれて前記底板に取り付けられていることを特徴とする請求項30から37のいずれか一項に記載のフィルターユニット。
【請求項42】
前記フィルターを通すことで前記フィルターの位置を規制する規制部を有するリテーナー板を備えることを特徴とする請求項30から41のいずれか一項に記載のフィルターユニット。
【請求項43】
前記リテーナー板に取り付けられ、前記リテーナー板が設置面に垂直に立った状態で前記フィルターユニットを設置するためのリテーナー台を備えることを特徴とする請求項42に記載のフィルターユニット。
【請求項44】
前記フィルターは、前記開口部付近において、前記開口部から離れた部分と比較して濾紙が厚くなるように形成されていることを特徴とする請求項30から43のいずれか一項に記載のフィルターユニット。
【請求項45】
前記フィルターは、前記濾過面が圧縮され、
前記フィルターを構成する濾紙が圧縮された状態で溶着された溶着部を備えることを特徴とする請求項30から44のいずれか一項に記載のフィルターユニット。
【請求項46】
前記溶着部は線状に形成され、
前記フィルターの対向する位置に2本形成されていることを特徴とする請求項45に記載のフィルターユニット。
【請求項47】
前記底板は、着用者の鼻及び口を覆うことができるように形成されていることを特徴とする請求項30又は31に記載のフィルターユニット。
【請求項48】
前記フィルターを覆い、前記底板に接続された布材である天板布を備えることを特徴とする請求項47に記載のフィルターユニット。
【請求項49】
前記底板は、テープ状に形成されていることを特徴とする請求項30又は31に記載のフィルターユニット。
【請求項50】
請求項30から46のいずれか一項に記載のフィルターユニットが複数接続されていることを特徴とする組フィルター。
【請求項51】
前記底板は矩形状に形成され、前記底板同士が接続されていることを特徴とする請求項50に記載の組フィルター。
【請求項52】
前記底板はテープによって他のフィルターユニットの前記底板に接続され、
前記テープは、一の方向に延在するテープの上に前記一の方向に直行する他の方向に延在するテープが位置するように前記底板に貼付され、
前記他の方向に延在するテープの幅は、前記一の方向に延在するテープの幅よりも広いことを特徴とする請求項51に記載の組フィルター。
【請求項53】
前記フィルターユニットが接続される板状の部材である連結板を備え、
フィルターユニットのそれぞれが前記連結板に接続されることで、前記連結板を介して前記フィルターユニットが複数接続されていることを特徴とする請求項50に記載の組フィルター。
【請求項54】
請求項47又は48に記載のフィルターユニットに耳掛け紐が取り付けられたマスク。
【請求項55】
請求項1から11のいずれか一項に記載のフィルターと、
流体を流通させることができる開口部である流通孔が形成された底板と、
を備えるフィルターユニットを製造する製造方法であって、
前記フィルターを、前記フィルターの前記開口部と前記底板の前記流通孔とが接続されるようにして前記底板に取り付ける第1工程を含むことを特徴とするフィルターユニットの製造方法。
【請求項56】
前記第1工程では、柱状の成形柱が備えられた成形装置の前記成形柱が前記流通孔に挿通され、前記成形柱が前記フィルターの前記開口部に挿入された状態で、前記フィルターが前記底板に取り付けられることを特徴とする請求項55に記載のフィルターユニットの製造方法。
【請求項57】
前記フィルターの前記底板に取り付けられたのと反対側の端部に、天板を取り付ける第2工程をさらに含むことを特徴とする請求項55又は56に記載のフィルターユニットの製造方法。
【請求項58】
前記フィルターの前記濾過面を圧縮する第3工程をさらに含むことを特徴とする請求項55から57のいずれか一項に記載のフィルターユニットの製造方法。
【請求項59】
圧縮された前記濾過面を加熱する第4工程と、
加熱後の前記濾過面を前記第3工程における圧縮前よりは短い状態まで伸ばす第5工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項58に記載のフィルターユニットの製造方法。
【請求項60】
前記第3工程では、前記濾過面の周囲を筒状の部材である外筒で覆った状態で前記濾過面を圧縮することを特徴とする請求項58又は59に記載のフィルターユニットの製造方法。
【請求項61】
前記第3工程では、前記底板を持ち上げることで、前記濾過面を圧縮することを特徴とする請求項58から60のいずれか一項に記載のフィルターユニットの製造方法。
【請求項62】
前記第3工程では、ローラーを前記濾過面に押し付けることで、前記濾過面を圧縮することを特徴とする請求項58から60のいずれか一項に記載のフィルターユニットの製造方法。
【請求項63】
前記第1工程では、予め前記濾過面が圧縮された前記フィルターを取り付けることを特とする請求項55から57のいずれか一項に記載のフィルターユニットの製造方法。
【請求項64】
請求項55から63のいずれか一項に記載のフィルターユニットの製造方法を用いて製造されたフィルターユニットを、複数接続する工程を含むことを特徴とする組フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター、フィルターユニット、防護具、組フィルター、マスク、フィルターユニットの製造方法及び組フィルターの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、使用者の身体の冷却等を目的として、ファンによって内部に空気を導入して使用する、ファン付きウェアやファン付きマット等の物品が、急速に普及している。
例えば、ファン付きウェアは、通気性の低い素材で形成されたウェア本体に、ウェア本体内へと空気を送風するためのファンが取り付けられており、ファンによってウェア本体内へと送風された空気が襟部や袖部の開口部に形成された空気排出部へと流通する間に、着用者の身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体が冷却される。
【0003】
このようなファンによって内部に空気を導入して使用する物品は、例えば粉塵、飛沫等の、物品の内部に導入される空気から除去することが好ましい粒子が浮遊する環境下で使用されることも想定されるところ、このような場合に、物品内に粉塵、飛沫等の粒子が取り込まれないようにするため、ファンによって送風される空気を濾過するためのフィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空気等の流体の濾過に使用されるフィルターにおいては、濾過に使用されるフィルターの面積が大きい程、単位面積あたりの流量が減り、除去対象となる粒子がフィルターを通過してしまう量を低減できると共に、圧力損失を低減できることから好ましい。
しかしながら、特許文献1に記載されているような平面状のフィルターを用いる場合、フィルターの平面視における大きさが、フィルターの面積の拡大に比例して大きくなってしまうことから、例えばファンの大きさ等のフィルターの使用条件によって拡大可能な面積が制限される場合が多く、フィルターの面積の拡大には限界があった。
【0006】
本発明の課題は、フィルターの面積を拡大し易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、フィルターであって、
筒状又は袋状に形成され、
少なくとも一端部に形成された開口部と、
通過する流体を濾過する濾過面と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフィルターであって、
前記濾過面は、高さが周長の0.1倍以上の柱状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のフィルターであって、
前記開口部を1つのみ備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルターであって、
前記濾過面を構成する濾紙を接着させた部分であるシールラインを、上下方向に延在するようにして、1又は2か所に有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルターであって、
前記濾過面は、テープ状の濾紙が一部重なるように巻かれることで形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルターであって、
上下方向に伸ばした場合と比較して、上下方向の長さが圧縮されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のフィルターであって、
前記濾過面の周囲を覆う袋状の部材である形状保持布を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載のフィルターであって、
上下方向に伸ばした場合と比較して、前記フィルターの上下方向の長さを、5分の1以下に圧縮可能であることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載のフィルターであって、
上端部における中心線と、下端部における中心線とがなす角度が20度以上となることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルターであって、
前記濾過面は、平面視における断面の外形が複数の凸部と複数の凹部とを有する形状となることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1から10のいずれか一項に記載のフィルターであって、
前記濾過面は、ポリプロピレン繊維で形成された濾紙を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、フィルターユニットであって、
請求項1から11のいずれか一項に記載のフィルターと、
前記フィルターが取り付けられるフィルター取付部材と、
を備え、
前記フィルター取付部材は、流体を流通させることができる開口部である流通孔を備え、
前記フィルターの前記開口部と前記フィルター取付部材の前記流通孔とが接続されるようにして、前記フィルターが前記フィルター取付部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のフィルターユニットであって、
前記フィルター取付部材は、内部に空間を有する接続体であり、前記流通孔は前記接続体の内外で流体を流通させる孔部であることを特徴とする。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のフィルターユニットであって、
前記流通孔は、前記接続体内に流体を取り込むための取込孔であることを特徴とする。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項13に記載のフィルターユニットであって、
前記流通孔は、前記接続体内から流体を送出するための送出孔であることを特徴とする。
【0022】
請求項16に記載の発明は、請求項13から15のいずれか一項に記載のフィルターユニットであって、
前記フィルターは、前記開口部の周囲に、前記接続体との接続部である封止部を備え、
前記接続体は、前記流通孔の周囲に、前記フィルターとの接続部である封止対応部を備え、
前記封止部が前記封止対応部を覆うようにして前記フィルターが前記接続体に取り付けられることを特徴とする。
【0023】
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載のフィルターユニットであって、
前記濾過面の面積をS平方センチメートル、前記封止部が前記封止対応部を覆う際の封止長をLセンチメートルとした場合に、L/√Sが√2より小さいことを特徴とする。
【0024】
請求項18に記載の発明は、請求項16又は17に記載のフィルターユニットであって、
前記接続体の前記封止対応部は、平面視において外周が全周に亘って外側に凸となる筒状に形成されていることを特徴とする。
【0025】
請求項19に記載の発明は、請求項18に記載のフィルターユニットであって、
前記封止対応部は、平面視における外周が全周に亘って外側に凸となる曲線から形成され、平面視における外周のどの点においても、曲率半径が外周の周長以下であることを特徴とする。
【0026】
請求項20に記載の発明は、請求項18又は19に記載のフィルターユニットであって、
前記封止部を前記封止対応部に密着させるリング状部材を備えることを特徴とする。
【0027】
請求項21に記載の発明は、請求項16から19のいずれか一項に記載のフィルターユニットであって、
前記封止部は、前記開口部の周囲に、前記濾過面と比較して硬質な材料によって形成されたリング状の部材である封止板を備え、
前記封止板を、前記封止対応部に取り付けることによって前記フィルターが前記接続体に取り付けられることを特徴とする。
【0028】
請求項22に記載の発明は、請求項21に記載のフィルターユニットであって、
前記封止板は外面から突出するように形成された取手部を備えることを特徴とする。
【0029】
請求項23に記載の発明は、請求項21又は22に記載のフィルターユニットであって、
前記封止板は摩擦力によって前記封止対応部に取り付けられることを特徴とする。
【0030】
請求項24に記載の発明は、請求項21又は22に記載のフィルターユニットであって、
前記封止板は、ネジによって前記封止対応部に取り付けられることを特徴とする。
【0031】
請求項25に記載の発明は、請求項16から24のいずれか一項に記載のフィルターユニットであって、
前記封止対応部の外面は、前記接続体の他の部分と比較して弾性が大きい材料によって形成されていることを特徴とする。
【0032】
請求項26に記載の発明は、請求項13から25のいずれか一項に記載のフィルターユニットであって、
前記フィルターの前記濾過面を外面側から覆う袋状のフィルターであるプレフィルターを備えることを特徴とする。
【0033】
請求項27に記載の発明は、請求項13から26のいずれか一項に記載のフィルターユニットであって、
複数の前記フィルターを備えることを特徴とする。
【0034】
請求項28に記載の発明は、請求項27に記載のフィルターユニットであって、
前記接続体は前記フィルターの数と一致する数の前記流通孔を備え、前記流通孔のそれぞれを覆うようにして前記フィルターが取り付けられていることを特徴とする。
【0035】
請求項29に記載の発明は、防護具であって、
請求項13から28のいずれか一項に記載のフィルターユニットと、
着用者の顔面を覆う防護具本体と、
を備えることを特徴とする。
【0036】
請求項30に記載の発明は、請求項12に記載のフィルターユニットであって、
前記フィルター取付部材は、板状に形成された底板であり、前記流通孔は前記底板の一の面の側と他の面の側とで流体を流通させる孔部であることを特徴とする。
【0037】
請求項31に記載の発明は、請求項30に記載のフィルターユニットであって、
前記底板は複数の前記流通孔を備え、
複数の前記フィルターが前記底板に取り付けられていることを特徴とする。
【0038】
請求項32に記載の発明は、請求項30又は31に記載のフィルターユニットであって、
前記フィルターの前記開口部が形成されたのと反対側の端部を覆うように取り付けられた天板を備えることを特徴とする。
【0039】
請求項33に記載の発明は、請求項32に記載のフィルターユニットであって、
前記天板は、前記フィルターが接続されるフィルター接続部を備え、前記フィルター接続部の周囲に空気が流通する天板開口部が形成されていることを特徴とする。
【0040】
請求項34に記載の発明は、請求項32又は33に記載のフィルターユニットであって、
前記底板と前記天板とを繋ぐ棒状の部材である連結棒を備えることを特徴とする。
【0041】
請求項35に記載の発明は、請求項32又は33に記載のフィルターユニットであって、
前記底板と前記天板とを繋ぎ、前記フィルターユニットの側面を覆う側板を備えることを特徴とする。
【0042】
請求項36に記載の発明は、請求項35に記載のフィルターユニットであって、
前記側板は、複数組み合わせることで筒状となるように形成されていることを特徴とする。
【0043】
請求項37に記載の発明は、請求項35又は36に記載のフィルターユニットであって、
前記側板は、内面側に前記底板又は前記天板を固定するための溝を備えることを特徴とする。
【0044】
請求項38に記載の発明は、請求項30から37のいずれか一項に記載のフィルターユニットであって、
前記底板は、前記流通孔の周囲に溝部を備え、
前記フィルターは、前記開口部の周囲が前記溝部に挿入されて前記底板に取り付けられていることを特徴とする。
【0045】
請求項39に記載の発明は、請求項30から37のいずれか一項に記載のフィルターユニットであって、
前記底板は、前記流通孔の周囲にリング状の突出部である内リングを備え、
前記フィルターは、前記開口部の周囲が、前記内リングと、前記内リングの外周に被せられたリング状の部材である外リングと、の間に挟まれて前記底板に取り付けられていることを特徴とする。
【0046】
請求項40に記載の発明は、請求項39に記載のフィルターユニットであって、
前記外リングは、複数接続されて外リング連結板を構成していることを特徴とする。
【0047】
請求項41に記載の発明は、請求項30から37のいずれか一項に記載のフィルターユニットであって、
前記底板は、前記流通孔の周囲にリング状の突出部である内リングを備え、
前記フィルターは、前記開口部の周囲が前記内リングに被せられた上で、紐状の部材によって巻かれて前記底板に取り付けられていることを特徴とする。
【0048】
請求項42に記載の発明は、請求項30から41のいずれか一項に記載のフィルターユニットであって、
前記フィルターを通すことで前記フィルターの位置を規制する規制部を有するリテーナー板を備えることを特徴とする。
【0049】
請求項43に記載の発明は、請求項42に記載のフィルターユニットであって、
前記リテーナー板に取り付けられ、前記リテーナー板が設置面に垂直に立った状態で前記フィルターユニットを設置するためのリテーナー台を備えることを特徴とする。
【0050】
請求項44に記載の発明は、請求項30から43のいずれか一項に記載のフィルターユニットであって、
前記フィルターは、前記開口部付近において、前記開口部から離れた部分と比較して濾紙が厚くなるように形成されていることを特徴とする。
【0051】
請求項45に記載の発明は、請求項30から44のいずれか一項に記載のフィルターユニットであって、
前記フィルターは、前記濾過面が圧縮され、
前記フィルターを構成する濾紙が圧縮された状態で溶着された溶着部を備えることを特徴とする。
【0052】
請求項46に記載の発明は、請求項45に記載のフィルターユニットであって、
前記溶着部は線状に形成され、
前記フィルターの対向する位置に2本形成されていることを特徴とする。
【0053】
請求項47に記載の発明は、請求項30又は31に記載のフィルターユニット
前記底板は、着用者の鼻及び口を覆うことができるように形成されていることを特徴とする。
【0054】
請求項48に記載の発明は、請求項47に記載のフィルターユニットであって、
前記フィルターを覆い、前記底板に接続された布材である天板布を備えることを特徴とする。
【0055】
請求項49に記載の発明は、請求項30又は31に記載のフィルターユニットであって、
前記底板は、テープ状に形成されていることを特徴とする。
【0056】
請求項50に記載の発明は、組フィルターであって、
請求項30から46のいずれか一項に記載のフィルターユニットが複数接続されていることを特徴とする。
【0057】
請求項51に記載の発明は、請求項50に記載の組フィルターであって、
前記底板は矩形状に形成され、前記底板同士が接続されていることを特徴とする。
【0058】
請求項52に記載の発明は、請求項51に記載の組フィルターであって、
前記底板はテープによって他のフィルターユニットの前記底板に接続され、
前記テープは、一の方向に延在するテープの上に前記一の方向に直行する他の方向に延在するテープが位置するように前記底板に貼付され、
前記他の方向に延在するテープの幅は、前記一の方向に延在するテープの幅よりも広いことを特徴とする。
【0059】
請求項53に記載の発明は、請求項50に記載の組フィルターであって、
前記フィルターユニットが接続される板状の部材である連結板を備え、
フィルターユニットのそれぞれが前記連結板に接続されることで、前記連結板を介して前記フィルターユニットが複数接続されていることを特徴とする。
【0060】
請求項54に記載の発明は、マスクであって、
請求項47又は48に記載のフィルターユニットに耳掛け紐が取り付けられていることを特徴とする。
【0061】
請求項55に記載の発明は、
請求項1から11のいずれか一項に記載のフィルターと、
流体を流通させることができる開口部である流通孔が形成された底板と、
を備えるフィルターユニットを製造する製造方法であって、
前記フィルターを、前記フィルターの前記開口部と前記底板の前記流通孔とが接続されるようにして前記底板に取り付ける第1工程を含むことを特徴とする。
【0062】
請求項56に記載の発明は、請求項55に記載のフィルターユニットの製造方法であって、
前記第1工程では、柱状の成形柱が備えられた成形装置の前記成形柱が前記流通孔に挿通され、前記成形柱が前記フィルターの前記開口部に挿入された状態で、前記フィルターが前記底板に取り付けられることを特徴とする。
【0063】
請求項57に記載の発明は、請求項55又は56に記載のフィルターユニットの製造方法であって、
前記フィルターの前記底板に取り付けられたのと反対側の端部に、天板を取り付ける第2工程をさらに含むことを特徴とする。
【0064】
請求項58に記載の発明は、請求項55から57のいずれか一項に記載のフィルターユニットの製造方法であって、
前記フィルターの前記濾過面を圧縮する第3工程をさらに含むことを特徴とする。
【0065】
請求項59に記載の発明は、請求項58に記載のフィルターユニットの製造方法であって、
圧縮された前記濾過面を加熱する第4工程と、
加熱後の前記濾過面を前記第3工程における圧縮前よりは短い状態まで伸ばす第5工程と、
をさらに含むことを特徴とする。
【0066】
請求項60に記載の発明は、請求項58又は59に記載のフィルターユニットの製造方法であって、
前記第3工程では、前記濾過面の周囲を筒状の部材である外筒で覆った状態で前記濾過面を圧縮することを特徴とする。
【0067】
請求項61に記載の発明は、請求項58から60のいずれか一項に記載のフィルターユニットの製造方法であって、
前記第3工程では、前記底板を持ち上げることで、前記濾過面を圧縮することを特徴とする。
【0068】
請求項62に記載の発明は、請求項58から60のいずれか一項に記載のフィルターユニットの製造方法であって、
前記第3工程では、ローラーを前記濾過面に押し付けることで、前記濾過面を圧縮することを特徴とする。
【0069】
請求項63に記載の発明は、請求項55から57のいずれか一項に記載のフィルターユニットの製造方法であって、
前記第1工程では、予め前記濾過面が圧縮された前記フィルターを取り付けることを特とする。
【0070】
請求項64に記載の発明は、組フィルターの製造方法であって、
請求項55から63のいずれか一項に記載のフィルターユニットの製造方法を用いて製造されたフィルターユニットを、複数接続する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0071】
本発明によれば、フィルターの面積を拡大し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】第1実施形態に係る防護具を着用者が着用した状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る濾過送風装置の正面図である。
【
図3】第1実施形態に係る接続体を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る接続体に支え部を備えた場合を示す正面図である。
【
図5】第1実施形態に係る袋状フィルターを示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(a)のc-c部における断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る袋状フィルターの作製に使用する濾紙を示す図である。
【
図7】袋状フィルターを濾紙テープで作成した場合を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る濾過送風装置のファンを作動させた場合の空気の流れを示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る濾過送風装置の正面図である。
【
図10】第2実施形態に係る袋状フィルターの濾過面の一部を拡大した図である。
【
図11】第2実施形態の第1変形例に係る袋状フィルターの正面図である。
【
図12】第2実施形態の第2変形例に係る袋状フィルターの正面図である。
【
図13】第2実施形態の第3変形例に係る袋状フィルターを示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図14】第2実施形態の第4変形例に係る袋状フィルターの正面図である。
【
図15】第3実施形態に係る濾過送風装置の正面図である。
【
図16】第3実施形態に係る接続体を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図17】接続体に封止対応部を1つのみ設けた場合を示す平面図である。
【
図18】変形例に係る袋状フィルターの濾過面の折り畳み方を示す図である。
【
図19】第4実施形態に係る組フィルターの斜視図である。
【
図20】第4実施形態に係るフィルターユニットの斜視図である。
【
図21】第4実施形態に係る袋状フィルターの斜視図である。
【
図22】第4実施形態に係る底板を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b部における断面図である。なお、フィルターユニットに100個の袋状フィルターが備えられることに対応して、本実施形態に係る底板には、本来100個の底板開口部が備えられるが、図の簡略化のため、ここでは9個とした場合について図示している。
【
図23】第4実施形態に係る円筒濾紙高速製造装置を示す図である。
【
図24】第4実施形態に係る底融着済円筒濾紙を示す図である。
【
図25】第4実施形態に係るフィルターユニットの製造工程で使用する成形装置の斜視図ある。なお、フィルターユニットに100個の袋状フィルターが備えられることに対応して、本実施形態に係る成形装置には、本来成形柱が100個備えられるが、図の簡略化のため、ここでは9個とした場合について図示している。
【
図26】第4実施形態に係るフィルターユニットの製造工程で使用する一括筒袋セット装置を示す図である。なお、本実施形態に係るフィルターユニットには、本来正面視において10列の袋状フィルターが備えられるが、図の簡略化のため、ここでは3列とした場合について図示している。
【
図27】第4実施形態に係るフィルターユニットの製造工程を示す図である。なお、本実施形態に係るフィルターユニットには、本来正面視において10列の袋状フィルターが備えられるが、図の簡略化のため、ここでは3列とした場合について図示している。
【
図28】複数のフィルターユニットがテープによって接続された状態を示す斜視図である。
【
図29】(a)は、複数のフィルターユニットがテープによって接続された状態において、テープが交差する部分を拡大した平面図であり、(b)は(a)のb-b部における断面図である。
【
図30】各型式のフィルターの形状を示す図であり、(a)はプリーツ方式、(b)は平行板方式、(c)は筒方式、(d)はサポート材を備えた平行板方式を示す図である。
【
図31】各型式のフィルターを用いて作製したフィルターユニットのフィルターの形状を示す図であり、(a)は平行板方式、(b)は筒方式を示す図である。
【
図32】第4実施形態の第2変形例に係る袋状フィルターの底板への取付方法を示す断面図である。
【
図33】第4実施形態の第2変形例に係る外リング連結板を示す平面図である。なお、フィルターユニットに100個の袋状フィルターが備えられることに対応して、外リング連結板には、本来外リングが100個備えられるが、図の簡略化のため、ここでは9個とした場合について図示している。
【
図34】第4実施形態の第3変形例に係る袋状フィルターの底板への取付方法を示す平面図である。なお、底板には、本来100個の袋状フィルターが取り付けられるが、図の簡略化のため、ここでは9個とした場合について図示している。
【
図35】第4実施形態の第4変形例に係る袋状フィルターの底板への取付方法を示す断面図である。
【
図36】耳が形成された筒袋濾紙の上部を示す正面図である。
【
図37】第4実施形態の第5変形例に係る底融着済円筒濾紙の底融着部近傍の部分を示す正面図である。
【
図38】第4実施形態の第6変形例に係る連結板を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b部における断面図の一部である。
【
図39】第5実施形態に係るフィルターユニットの斜視図である。
【
図40】第5実施形態に係る側板への底板及び天板の取付部を示す断面図である。
【
図41】第5実施形態の第1変形例に係るフィルターユニットの正面図である。
【
図42】第5実施形態の第1変形例に係るリテーナー板を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図43】第6実施形態に係るマスクを示す斜視図である。
【
図44】第6実施形態に係る袋状フィルターの底板への取付方法を示す断面図である。
【
図45】第6実施形態に係るフィルターユニットの断面図である。
【
図46】第7実施形態に係るフィルターユニットを示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のb-b部における断面図である。
【
図47】第7実施形態の第1変形例に袋状フィルターの圧縮成形の方法を示す正面図である。
【
図48】第7実施形態の第2変形例に袋状フィルターの圧縮成形の方法を示す正面図である。
【
図49】第7実施形態の第3変形例に袋状フィルターの圧縮成形の方法を示す図である。
【
図50】第8実施形態に係るフィルターユニットの製造工程を示す図である。なお、本実施形態に係るフィルターユニットには、本来正面視において10列の袋状フィルターが備えられるが、図の簡略化のため、ここでは3列とした場合について図示している。
【
図51】第8実施形態の第1変形例に係るフィルターユニットの正面図である。なお、本実施形態に係るフィルターユニットには、本来正面視において10列の袋状フィルターが備えられるが、図の簡略化のため、ここでは3列とした場合について図示している。
【
図52】第8実施形態の第2変形例に係るフィルターユニットの正面図である。
【
図53】第8実施形態の第3変形例に係るフィルターユニットの斜視図である。
【
図54】第4実施形態から8実施形態に共通する変形例に係るフィルターユニットの正面図である。
【
図55】第4実施形態から8実施形態に共通する変形例に係る袋状フィルターの湾曲成形の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、本発明の実施の形態について、
図1から
図55に基づいて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではなく、以下説明する実施の形態には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を加えることが可能である。
【0074】
[1 第1実施形態]
本発明の第1実施形態について、
図1から
図8に基づいて説明する。なお、本実施形態においては、本発明に係るフィルターを、フィルターによって濾過された空気を着用者に提供するための防護具に使用した場合を一例として説明する。
【0075】
また、以下においては、着用者が防護具を着用した状態を基準として、着用者の前方向を前、着用者の後方向を後、着用者の上方向を上、着用者の下方向を下、着用者の右手方向を右、着用者の左手方向を左と定めて説明する。
この場合、後述のように、袋状フィルターについては、底部が形成された側が上、開口部が形成された側が下となる。また、濾過送風装置については、上に袋状フィルター、下に接続体が位置するようにしてこれらが接続されることとなる。
【0076】
[(1) 構成の説明]
本実施形態に係る防護具100は、フィルターによって濾過された空気を着用者に提供するためのものであり、
図1に示すように、防護具本体1と、濾過送風装置2と、濾過送風装置2内のファン22に電力を供給するための電源部(図示せず)と、を備える。
【0077】
[a 防護具本体]
防護具本体1は、
図1に示すように、着用者Wの目、鼻及び口を覆う部材である面体11と、面体11の周囲からの空気漏れを防ぐための部材であるスポンジ部材12と、面体11を着用者Wの顔面に取り付けるための部材である装着ベルト13と、面体11に形成された空気排出孔111を覆う排出部フィルター14と、を備える。
なお、防護具本体1は、着用者Wの顔面だけを覆うものに限られず、使用目的によっては、着用者Wの顔面以外の部分も覆うように形成してもよい。また、着用者Wの顔面の全体を覆うことは必須ではないが、少なくとも着用者が呼吸する鼻孔を覆う必要がある。
【0078】
[(a) 面体]
面体11は、例えば、厚さ0.5mm程度の弾力性のある透明なプラスチック材料により、
図1に示すように着用者の顔面に沿う形状となるように成形されている。
【0079】
また、面体11のうち着用者Wの口を覆う部分は、大きく切り取られて開口し、空気排出孔111が形成されている。空気排出孔111は、面体11と着用者の頭部との間の空間内の空気を排出するための開口部であり、排出部フィルター14によって覆われる。
【0080】
また、面体11は、空気排出孔111の左右に位置する部分に、後述のようにマスク状に形成された排出部フィルター14の紐を掛けることができるように構成された突出部であるマスク掛け部112を左右2か所ずつ備える。
【0081】
また、面体11は、上部に、後述のように濾過送風装置2の接続体21の空気送出孔212と接続される開口部である浄化空気取込孔113を備える。
【0082】
[(b) スポンジ部材]
スポンジ部材12は、スポンジの弾性により着用者Wの顔面に密着することで、面体11と着用者Wの頭部との間の空間の気密性を保ち、当該空間からの空気の漏れを防止するための部材であり、
図1に示すように、面体11の端部近傍の着用者Wの顔面に接する部分に、面体11を周回するように取り付けられている。
スポンジ部材12は、例えば、スポンジが柔軟なプラスチックフィルムで覆われた上で、両面テープ等を用いて貼付することによって、面体11の着用者Wの顔面に向く側に取り付けられている。
【0083】
[(c) 装着ベルト]
装着ベルト13は、防護具本体1を着用者Wの頭部に取り付けるためのベルト状の部材であり、
図1(b)に示すように着用者Wの後頭部を回るようにして、面体11の左右に取り付けられている。
【0084】
[(d) 排出部フィルター]
排出部フィルター14は、
図1に示すように、面体11の空気排出孔111を覆うフィルターである。
【0085】
図1においては、フィルターの左右に紐状の部材を備えるマスクに類似する形状に形成され、面体11の左右に備えられたマスク掛け部112に掛けることで、空気排出孔111を面体11の外面側から覆うようにして、面体11に着脱自在に取り付ける場合について図示しているが、これに限られず、面体11の空気排出孔111を覆うフィルターを、接着等の方法で着脱不能に取り付けてもよい。
【0086】
また、排出部フィルターに用いるフィルターの種類としては、粉塵、飛沫、化学物質等の面体11と着用者Wの頭部との間の空間内への侵入を防ぎたい除去対象物に合わせて、適宜最適な種類のフィルターを選択すればよい。
【0087】
[b 濾過送風装置]
濾過送風装置2は、防護具100に使用される場合、
図1に示すように、接続体21の下面に形成された空気送出孔212が、面体11に形成された浄化空気取込孔113を覆うようにして防護具本体1の面体11上部に取り付けられ、面体11と着用者Wの頭部との間の空間に、フィルターによって濾過された空気を提供するために用いられる。
【0088】
また、濾過送風装置2は、
図2に示すように、接続体21と、ファン22と、袋状フィルター23と、ゴムベルト24と、を備える。
【0089】
[(a) 接続体]
接続体21は、
図2及び
図3に示すように、内部にファン22が収納される筒状の部材であり、上面には、ファン22の稼働時に接続体21内に空気を取り込むための開口部である空気取込孔211が形成され、下面には、ファン22の稼働時に接続体21から空気を送出するための開口部である空気送出孔212が形成されている。
また、接続体21は、下部にファン22が収納されるファン収納部213、上部に袋状フィルター23を隙間なく封止しつつ接続するための封止対応部214を備える。
【0090】
ファン収納部213及び封止対応部214は、いずれも円柱状に形成されているが、封止対応部214よりもファン収納部213の方が平面視における直径が大きい。これによって、接続体21は、
図2及び
図3に示すように、上下方向における中央部付近において太さが変わる筒状に形成されていることとなる。
接続体21は、
図1に示すように、空気送出孔212が防護具本体1の面体11に形成された浄化空気取込孔113を覆うようにして面体11に取り付けられ、また、空気取込孔211を覆うようにして袋状フィルター23が取り付けられる。この場合、接続体21の空気取込孔211が、袋状フィルター23の開口部232と接続される本発明における空気流通孔に該当する。
【0091】
封止対応部214が円柱状に形成されていることによって、後述のようにゴムベルト24によって、封止対応部214の全周に亘って均等な力で袋状フィルター23の封止部233を封止対応部214に押し付けることができ、封止対応部214と袋状フィルター23の封止部233との間に隙間が生じ難くなる。
また、封止対応部214の外面を、樹脂材料等で形成された接続体21の他の部分よりも弾性が大きい材料(ゴム等)によって形成してもよい。この場合、ゴムベルト24が封止対応部214に食い込むことで、さらに密閉性を向上することができる。
【0092】
なお、本実施形態のように、ゴムベルト24を用いて、その張力によって袋状フィルター23の封止部233と接続体21の封止対応部214との間に隙間が生じないようにするためには、接続体21の封止対応部214のゴムベルト24によって締め付けられる部分の全周が外側に凸となり、凹部が生じないことが求められる。
この点、本実施形態のように、封止対応部214が、平面視において外周が円形となる円柱状となるように形成されていることが好ましいが、その他には、例えば、平面視において外周が四角形、五角形等となる角柱状等の柱状に形成することも可能である。
【0093】
また、封止対応部214は、平面視における外周が全周に亘って外側に凸となる曲線から形成されている場合、外周のどの点においても、曲率半径が外周の周長以下であることが好ましい。
【0094】
なお、
図4に示す接続体21Aのように、封止対応部214の上方に、袋状フィルター23の内部に配置され、袋状フィルター23を支えるための支え部215を備えるようにしてもよい。
支え部215は、例えば、
図4に示すように、外形が袋状フィルター23の内面側の形状と略一致する円柱状となり、かつ全体に開口部が形成された網目状となるように形成されている。
【0095】
支え部215は、袋状フィルター23の内部が陰圧となった際に、袋状フィルター23を内側から支えることで、袋状フィルター23が潰れることを防止するためのものであるが、ファン22を稼働しても、袋状フィルター23の内外の圧力差は小さいことから、支え部215を備えずとも、通常は袋状フィルター23が潰れてしまうことはない。したがって、支え部215は必須の構成ではない。
例えば、袋状フィルター23を形成する濾紙として、非常に柔らかいものを用いる場合等には、袋状フィルター23が潰れないようにするために、接続体21Aが支え部215を備えることが好ましいが、この場合も、袋状フィルター23の内外の圧力差は小さいことから、支え部215にはそれほどの強度を要しない。
【0096】
[(b) ファン]
ファン22は、袋状フィルター23によって濾過された空気を、接続体21の空気取込孔211から導入し、空気送出孔212から送出するための部材であり、
図2に示すように、接続体21のファン収納部213内に収納されている。
【0097】
ファン22としては、上下方向の空気の流れを生じさせ、上記のような機能を果たしうるものであれば特に限定されず、一般的なプロペラファン等、任意のファンを使用することができる。
【0098】
[(c) 袋状フィルター]
袋状フィルター23は、空気取込孔211から接続体21内に取り込まれる空気を濾過するためのフィルターであり、
図2に示すように、接続体21に、空気取込孔211を覆うようにして取り付けられる。
このように、接続体に袋状フィルターが取り付けられたものが、内部にファンが収納されているか否かを問わず、本発明におけるフィルターユニットに該当することとなる。
【0099】
袋状フィルター23は、
図5に示すように上端部が閉じられ底部231となり、下端部が開放され開口部232となる袋状に形成されたフィルターである。なお、本発明においては、フィルターの形状としての「袋状」には、開口部を一つのみ有し、内部に当該開口部へと繋がる空間が形成される形状を広く含むものとする。
【0100】
袋状フィルター23の下端部近傍の部分は、
図2に示すように接続体21の封止対応部214に取り付け、密閉するために使用される。
具体的には、
図2に示すように、袋状フィルター23のうち、下端部から、接続体21の封止対応部214の上下方向の長さと一致する長さの部分が、袋状フィルター23を接続体21の封止対応部214に取り付けるために使用されることとなる。当該部分を、封止部233とする。
【0101】
袋状フィルター23は、
図2に示すように、封止部233が接続体21の封止対応部214を覆い、開口部232と接続体21の空気取込孔211とが接続されるようにして、接続体21に取り付けられる。
これによって、接続体21内に配置されたファン22は、接続体21の空気取込孔211を介して、袋状フィルター23の開口部232から、袋状フィルター23内の空気を取り込み、これを下方へと送風することとなる。
【0102】
また、袋状フィルター23の側面の封止部233以外の部分は、外気を濾過しつつ袋状フィルター23内に取り込む濾過材として機能する部分である。当該部分を濾過面234とする。
濾過面234は、
図5に示すように、袋状フィルター23の周囲を水平方向に周回するようにして、底部231と封止部233との間の部分に形成されている。
濾過面234の大きさは特に限定されるものではないが、高さ(上下方向の長さ)が断面の周長の0.1倍以上となる円柱状に形成されていることが好ましい。
【0103】
なお、底部231については、濾紙によって形成することで、この部分も外気を濾過しつつ袋状フィルター23内に取り込む濾過材として機能するようにしてもよいし、空気を通さない別部材によって形成するようにしてもよい。前者の場合、底部231についても濾過面の一部として機能することとなる。
【0104】
また、袋状フィルターの側面の一方(
図5においては左方に形成されている場合について図示しているがこれに限られない。)には、後述のように袋状フィルター23の形成時に濾紙Fを融着させた部分であるシール片235が、上下方向に延在するように形成されている。
【0105】
袋状フィルター23は、例えば、
図6に示すような矩形状の濾紙Fから形成される。濾紙Fとしては、粉塵、飛沫、化学物質等、ファン22によって接続体21内に導入され、接続体21から、防護具本体1の面体11と着用者Wの頭部との間の空間内に導入される空気から取り除きたい除去対象物に対応して、適宜適切な種類のものを使用すればよい。
例えば、感染症予防のために飛沫等を除去対象物とする場合であれば、一般的な不織布マスクと同様に、2枚のポリプロピレン不織布又はポリエチレン不織布により、ポリプロピレン繊維又はポリエチレン繊維からなる濾紙層を挟んで作製されたものを用いればよい。
【0106】
濾紙Fを袋状として、袋状フィルター23を作製する最も簡易な加工方法について、直径2R、高さHの円柱状の濾過面234を持つ袋状フィルター23を作製する場合を例として説明する。
【0107】
この場合、まず、
図6に示すように、袋状フィルター23の濾過面234となる濾過面対応面F1(高さH、幅2πR)を有し、濾過面対応面F1の下方に袋状フィルター23の封止部233となる封止部対応面F2、濾過面対応面F1の両側部に袋状フィルター23のシール片235となるシール片対応面F3、濾過面対応面F1の上方に、袋状フィルター23の底部231となる底部対応面F4を有する矩形状の濾紙Fを用意する。
【0108】
このような濾紙Fを、濾過面対応面F1の両側部のシール片対応面F3同士が重なるように折り畳んだ上で、シール片対応面F3の全面をヒートシールにより溶着させた後に、底部対応面F4を、
図6に示すシール線F41でヒートシールにより溶着させると同時に切断することで、濾紙Fを上端部が閉じられて底部231となる袋状とし、袋状フィルター23を形成することができる。
【0109】
上記のように、1枚の矩形状の濾紙Fを用いた場合には、
図5に示すように、上下方向に延在するシール片235が1か所にのみ形成されることとなる。
これに対し、
図6に示す濾紙Fの半分強の幅を持つ2枚の矩形状の濾紙を用い、濾紙の両側を溶着させることにより、シール片が2か所に形成されるようにして袋状フィルターを形成することも可能である。
【0110】
また、
図7に示すように、濾紙によってテープ状に形成された濾紙テープTを一部重なるようにして斜めに巻くことで筒状として濾過面を形成した上で、上端部の開口部を閉じることで、袋状フィルターを形成してもよい。この場合、上下方向に延在するシール片が形成されないようにすることができる。
【0111】
[(d) ゴムベルト]
ゴムベルト24は、ゴムによってリング状に形成された部材であり、袋状フィルター23の封止部233を、接続体21の封止対応部214に密着させるための部材である。
図2に示すように、封止対応部214の周囲に封止部233が位置するようにして、袋状フィルター23を封止対応部214に被せた上で、ゴムベルト24によって袋状フィルター23の封止部233を封止対応部214に密着させることで、袋状フィルター23を接続体21に隙間なく封止された状態で取り付けることができる。
【0112】
なお、ゴムベルト24の代わりに、内周の周長が封止対応部214の外周の周長と略同一となるように形成された弾性の小さいリングを、封止部233の上から封止対応部214にはめ込むことで、封止部233を封止対応部214に密着させるようにしてもよい。
【0113】
[c 電源部]
電源部(図示せず)は、ファン22に電力を供給するための部材であり、例えば、安全保護回路が付加されたリチウムイオン組電池等を用いればよい。電源部を備える位置については、ファン22に電力を供給できれば任意であり、濾過送風装置2の接続体21内に内蔵するようにしてもよいし、接続体21の外部に備え、ケーブルによってファン22と接続されるようにしてもよい。
【0114】
[(2) 効果の説明]
本実施形態に係る袋状フィルター23によれば、全体が袋状に形成されると共に、開口部232と、開口部232の上方に袋状フィルター23の周囲を周回するように配置された濾過面234と、を備えることで、開口部232から空気を取り込むようにファン22を配置した際に、濾過面234によって濾過されて袋状フィルター23内に導入された空気が、開口部232から排出され、ファン22に取り込まれることとなる。
これによって、ファン22によって送風される空気(この場合、接続体21の空気取込孔211から接続体21内に導入され、ファン22によって下方へと送風されて空気送出孔212から排出される空気)の濾過に使用されるフィルターの面積を拡大することが容易となる。
【0115】
すなわち、従来の平面状のフィルターの場合、平面的に面積を拡大するしかなく、この場合、特許文献1に記載の発明のように、ファンの外面側の全体を覆う程度が面積の拡大の限界となる。
これに対し、全体が袋状に形成された袋状フィルター23であれば、袋の容積の拡大に伴って、立体的に外気の濾過に使用される濾過面234の面積を拡大できることから、ファンの外面側の面積によって制限されることなくフィルターの面積を拡大でき、従来の平面状のフィルターと比較して、フィルターの面積の拡大が容易となることは明らかである。
【0116】
そして、フィルターの面積を拡大できれば、それに伴って、フィルターの性能の向上を達成することができる。
すなわち、一定の流量の場合に除去対象物がフィルターを通過してしまう割合(以下、「漏れ率」という。)を0.01(1%)とすると、フィルターを2枚重ねれば漏れ率は0.0001、フィルターを3枚重ねれば0.000001となる。しかし、この場合、圧力損失がフィルターを重ねた枚数に応じて2倍又は3倍となることから、一定の流量を確保するためには、フィルターに掛ける圧力を、圧力損失に応じて高くしなければならない。
【0117】
これに対し、フィルターの面積を2倍にした場合、単位面積あたりのフィルターを通過する空気の流量は半分となることから、漏れ率の点で、フィルターを2枚重ねた場合と同様の効果を得ることができる。さらに、この場合、一定の流量を得るためにフィルターに掛ける必要のある圧力は半分になる。
【0118】
この点から、フィルターの面積の拡大によって、圧力損失が増加することを抑えつつ除去対象物の通過率を低下させることができ、フィルターの性能向上のために、フィルターの面積を拡大することが有効であることが分かる。
【0119】
どの程度面積を拡大できるかは、具体的な袋状フィルター23の形状及び大きさにも左右されるが、袋状フィルター23を用いることで、従来の平面状のフィルターを用いる場合と比較して、概ね3倍程度の面積の拡大は容易に達成することができる。
【0120】
なお、フィルターの形状毎の、平面フィルターに対して濾過面の面積を拡大可能な割合は、概ね以下の通りとなる。なお、袋状化以外の内容については、第2実施形態以下で説明する。
また、数値は、1つ目が単独で使用した場合の面積の拡大率、二つ目の累計の数字が、上から順にそれまでに記載した方法の全てを併用した場合の面積の拡大率を表している。
1.袋状化又は筒状化:3倍・累計3倍
2.圧縮 :3倍・累計9倍
3.断面星形化 :1.5倍・累計13.5倍
4.多筒化(4本) :2倍・累計27倍
【0121】
また、本実施形態のようにフィルターを接続体に取り付ける場合、フィルターと接続体との間の封止長(フィルターと接続体との間を密閉させることが必要となる長さ、本実施形態においては、接続体21の封止対応部214の外周の長さがこれに該当する。)が短い程、隙間が生じてフィルターを介さずに接続体内に空気が侵入するリスクを下げる上で好ましい。
【0122】
本実施形態に係る袋状フィルター23によれば、外気の濾過に使用される濾過面234を広くとりつつ、封止長を短くすることができる。この点について、以下、各形状のフィルターにおける面積と封止長との関係を比較して説明する。
【0123】
まず、各形状のフィルターについて、濾過面の面積をS(単位:cm2)、封止長をL(単位:cm)とした上で、L/√Sを算出する(以下、当該算出式に従って算出した値を、「封止係数」という。)。封止係数が小さい程、濾過面の面積に対する封止長が短く、好ましいということとなる。
なお、袋状に形成されたフィルターの上面(上記実施形態に係る袋状フィルター23においては底部231)は、外気の濾過に寄与する場合もあるものの、ここでは、濾過面とはみなさず、側面のみを濾過面とみなして封止係数を計算する。
【0124】
各形状のフィルターの封止係数は、以下の通りとなる。
・濾過面が正方形となる平面フィルター:4
・濾過面が円形となる平面フィルター:π
・濾過面が立方体の4側面となる角柱状の袋状フィルター:2
・濾過面が直方体の4側面(高さが底辺の2倍の矩形)となる角柱状の袋状フィルター:1.41
・濾過面が直方体の4側面(高さが底辺の4倍の矩形)となる角柱状の袋状フィルター:1
・濾過面が円柱の側面(高さと底面の直径が同じ)となる円柱状の袋状フィルター:√π=1.77
・濾過面が円柱の側面(高さが底面の直径の4倍)となる円柱状の袋状フィルター:0.885
【0125】
以上のように、角柱状、円柱状のいずれの場合においても、袋状フィルターとすることで、平面フィルターと比較して、封止係数を大幅に小さくできることが分かる。
なお、上記のように、袋状フィルターとすることで、封止係数は容易に1.5以下とすることができる。具体的には、√2より小さくすることが、達成の容易性及び隙間が生じるおそれの低減を両立する観点から好ましい。隙間からの空気の侵入を防止することを重視する場合には、1以下とすることがさらに好ましい。
【0126】
また、本実施形態に係る袋状フィルター23によれば、接続体21の封止対応部214を円柱形等の平面視において外周に凹部が生じない形状となるように形成し、これに袋状フィルター23の封止部233を被せた上で、ゴムベルト24によって封止部233を封止対応部214に押し付けることによって、接続体21と袋状フィルター23との間に隙間が生じるおそれをさらに低減することができる。
【0127】
また、本実施形態に係る濾過送風装置2によれば、接続体21のファン収納部213に収納されたファン22を稼働させると、ファン22は、接続体21上面の空気取込孔211から空気を取り込み、接続体21下面の空気送出孔212から空気を送出する方向に回転する。
これによって、空気取込孔211から空気が取り込まれて、袋状フィルター23の内部が陰圧になり、
図8に示すように、袋状フィルター23の外部から濾過面234を介して空気が袋状フィルター23の内部に流入し、この際、空気に含まれていた粒子が濾紙に吸着され、空気が濾過される。
したがって、袋状フィルター23によって濾過され浄化された空気を、空気取込孔211から取り込み、空気送出孔212から送出することができる。
【0128】
さらに、本実施形態に係る防護具100によれば、防護具本体1と、濾過送風装置2を備え、濾過送風装置2が、防護具本体1の面体11に形成された浄化空気取込孔113を空気送出孔212が覆うように取り付けられていることで、袋状フィルター23によって濾過された空気が、接続体21の空気送出孔212から、防護具本体1の面体11と着用者Wの頭部との間の空間内に導入される。
これによって、面体11と着用者Wの頭部との間の空間内は、袋状フィルター23によって濾過され浄化された空気で満たされ、着用者Wは浄化された空気を吸うことができる。
【0129】
[2 第2実施形態]
本発明の第2実施形態について、
図9から
図14に基づいて説明する。なお、濾過送風装置以外の部分については説明を省略する。
【0130】
[(1) 構成の説明]
第2実施形態に係る濾過送風装置2Aは、
図9に示すように、接続体21と、ファン22と、袋状フィルター23Aと、ゴムベルト24と、を備える。これらの内、袋状フィルター23A以外は第1実施形態に係る濾過送風装置2と同様であることから、以下袋状フィルター23Aについてのみ説明する。
【0131】
袋状フィルター23Aは、上下方向に圧縮されていることを特徴とするものである。
【0132】
具体的には、第2実施形態に係る袋状フィルター23Aは、
図9に示すように、濾過面234Aに該当する側面部分を上下方向に圧縮したものである。
圧縮時には、濾過面234Aを形成する濾紙が折り畳まれることとなるが、この際の折り畳み方は特に限定されず、例えば、
図9に示すように山折りと谷折りとが交互に繰り返される蛇腹折となるように折り畳めばよい。
また、例えば、
図10に示すように多数のセル2341が形成されるように折り畳んでもよい。なお、セル2341とは、フィルターの圧縮時に形成される折り目で囲まれた各部分のことを言う。
【0133】
袋状フィルター23Aを、上下方向に伸ばした場合と比較してどの程度圧縮するかは、特に限定されないが、袋状フィルター全体の高さが、上下方向に伸ばした場合と比較して、70%以下となるまで圧縮されていることが好ましい。
【0134】
袋状フィルター23Aを圧縮する方法としては、例えば、平面視において袋状フィルター23Aの内径より僅かに小さい外径となり、高さが袋状フィルター23Aの高さよりも短い円柱状の台座に圧縮されていない袋状に形成されたフィルターを被せた上で、このような台座の高さに合わせて、袋状のフィルターを上下方向に圧縮することで、上下方向に圧縮された袋状フィルター23Aとすればよい。
この際の折り畳み方としては、
図9に示すように蛇腹折としてもよいし、
図10に示すように多数のセル2341が形成されるようにしてもよい。
【0135】
また、第1実施形態と同様の上下方向に圧縮されていない袋状フィルターとして使用者に提供した上で、使用者が、使用開始前にフィルターを上下方向に圧縮して使用するようにしてもよい。この場合、使用開始前には、圧縮されていない袋状フィルターを平面状に潰すことができることから、保管時や輸送時に嵩張らなくて済む。
【0136】
[(2) 効果の説明]
本実施形態に係る袋状フィルター23Aによれば、濾過面234Aが上下方向に圧縮されていることで、高さを抑えつつ、さらに空気の濾過に使用される濾過面の面積を拡大し、フィルターの性能向上(圧力損失が増加することを抑えつつ除去対象物の通過率を低下させること)を図ることができる。
【0137】
また、上下方向に圧縮されているのは濾過面234Aのみであり、接続体21との接続に使用される封止部233は、上下方向に圧縮されることなく、第1実施形態と同様の状態が維持されている。したがって、濾過面の面積を拡大してフィルターの性能向上を図りつつ、封止部233と接続体21の封止対応部214との間に隙間が生じ易くなることも防止できる。
【0138】
また、不使用時に袋状フィルター23Aを使用状態よりもさらに上下方向に圧縮させることで、袋状フィルターを使用状態よりもさらにコンパクトにすることができ、フィルターの保管も容易となる。具体的には、一般的に使用されている不織布マスクと同様の素材を使用した場合、保管時には、袋状フィルター23Aを上下方向に伸ばした状態と比較して、上下方向の長さを5分の1以下に圧縮することが可能である。
【0139】
[(3) 変形例]
続いて、本実施形態の変形例について説明する。
【0140】
[a 第1変形例]
図11に示す袋状フィルター23Bのように、底部231、封止部233及び濾過面234Aの周囲を、袋状に形成された形状保持布236で覆ってもよい。
【0141】
形状保持布236の素材としては、ファン22による空気の導入を妨げない程度の空気透過性を有すると共に、濾過面234Aの圧縮された形状を維持できる程度の強度を有するものであることが求められる。また、封止部233との接続が容易なものが好ましい。
具体的には、濾過面234Aを構成する濾紙と同一の素材を用いることが特に好ましい。
【0142】
形状保持布236は、
図11に示すように、底部231、圧縮された状態の濾過面234A及び封止部233を合わせた大きさより僅かに大きく形成され、底部231、濾過面234A及び封止部233に上から被せた上で、下端部が、封止部233の下端部付近に接着されている。
【0143】
上下方向に圧縮された濾過面234Aは、圧縮成形時の圧力を解放した後は、徐々に圧縮前の形状に戻るように伸長することとなるが、形状保持布236を被せることによって、底部231、濾過面234A及び封止部233を合わせた上下方向の長さが、形状保持布236の上下方向の長さ以上に伸長することを防止し、濾過面234Aの圧縮された形状を維持し易くなる。
【0144】
なお、形状保持布236の代わりに、プラスチック等の材料を成形することで、底部231、圧縮された状態の濾過面234A及び封止部233を合わせた大きさより僅かに大きい袋状の形状とした形状保持部材を作製し、このような形状保持部材を、形状保持布236を有しない袋状フィルター23Aに被せ、接続体21に固定することで、このような形状保持部材によって、濾過面234Aの圧縮された形状を維持するようにしてもよい。
【0145】
[b 第2変形例]
図12に示す袋状フィルター23Cのように、上下方向に直線状ではなく、湾曲するように形成してもよい。
図12においては袋状フィルター23Bが、上に行くにしたがって右方向へと湾曲する場合について図示しているが、湾曲する方向はこれに限られない。
第1実施形態のように濾過面を形成する濾紙が伸ばされた状態のフィルターについて湾曲した形状とすることも可能であるが、袋状フィルター23Cのように濾過面234Bが上下方向に圧縮されつつ、湾曲していることが、上記のように濾過面の面積を拡大し、さらに、湾曲した形状を保持し易くする上で好ましい。
【0146】
このように袋状フィルター23Cを湾曲させることで、圧縮のみを行った状態よりも、さらに上下方向の高さを低く保ちつつ、濾過面の面積を拡大し、フィルターの性能を向上させることが可能となる。
【0147】
圧縮後の高さが円柱状の濾過面の直径(伸ばした状態で測定した値)に対し3倍以上である場合には、上端部における中心線と、下端部における中心線とがなす角度(
図12におけるθ)が、20度以上となるように曲げることが好ましい。
また、あらかじめ曲げることを前提に、例えば、フィルターの側面の一方が長く、これに対向する他方が短くなるようにする等の設計を施した場合には、上端部における中心線と、下端部における中心線とがなす角度が90度程となるように袋状フィルター23Cを形成することも可能である。
【0148】
[c 第3変形例]
袋状フィルターの濾過面の断面形状(平面視における外形)は、円形には限られず、例えば、楕円形や矩形としてもよいが、
図13に示す袋状フィルター23Dのように、複数の凸部と凹部とが交互に配置された、例えば、星形や花びらのような形状としてもよい。
【0149】
図13においては、濾過面234Cの断面形状が、4つの凸部と4つの凹部とが交互に形成され、全体が曲線からなる花びらのような形状となる場合について図示しているが、これに限らず、例えば、5つの凸部と5つの凹部とが交互に形成され、全体が直線からなる星形となるように形成してもよい。
【0150】
濾過面234Cの断面形状が、このように凹凸を有する形状となることによって、断面が円形となる場合と比較して、濾過面の面積を、さらに増加させることができる。
【0151】
なお、
図13においては上下方向に圧縮された場合について図示しているが、第1実施形態のように上下方向に圧縮されていない袋状フィルターについて、濾過面の断面形状が複数の凸部と凹部とが交互に配置された形状となるようにすることも可能である。
【0152】
[d 第4変形例]
図14に示す袋状フィルター23Eのように、封止部233Aが、封止板2331を備えるようにしてもよい。
封止板2331は、例えば樹脂材料等の、濾過面234A等を構成する濾紙と比較して硬質な材料によって、上下が開放された円柱状に形成されている。
【0153】
封止板2331は、封止板2331の上部を、濾過面234Aの下方の濾紙が外側から覆った状態で、濾過面234Aの下方の濾紙を封止板2331の上部に接着させることで、濾過面234A下方の濾紙に隙間なく取り付けられている。
なお、封止板2331が濾過面234Aの下方の濾紙を外側から覆うようにして、封止板2331を取り付けてもよい。
【0154】
また、封止板2331は、内径が、接続体21の封止対応部214の外形と略同一となるように形成されている。これによって、接続体21の封止対応部214を封止板2331内に差し込むことによって、封止板2331の内面と、封止対応部214の外面との間に生じる摩擦力によって、袋状フィルター23Eを、接続体21に取り付けることができる。
このように、封止部233Aが封止板2331を備えることによって、上記のようなフィルターを形成する濾紙を直接接続体の封止対応部に密着させる封止方法から、硬質な部材同士を密着させることによる変形のない封止方法に変更することができる。
【0155】
なお、この場合も、接続体21の封止対応部214の外面が、ゴムなどの弾性材(樹脂材料等で形成された接続体21の他の部分よりも弾性が大きい材料)で形成されていることが好ましい。これによって、封止板2331の下部に封止対応部214を差し込んだ際に、硬質な封止板2331が弾性材で形成された封止対応部214の外面に食い込み、より隙間が生じ難くなると共に、封止板2331と封止対応部214との接続が外れ難くなる。
【0156】
また、封止板2331の下部の外面側の濾紙によって覆われていない部分を外側に突出させ、使用者が掴むことができる突出部である取手部を設けてもよい。これによって、袋状フィルター23Eと接続体21との接続作業を、より簡単かつ確実に行うことが可能となる。
【0157】
また、例えば、封止板2331下部の内面に雌ネジを設け、接続体21の封止対応部214の外面に雄ネジを設けることによって、ネジによって封止板2331と封止対応部214とが接続されるようにしてもよい。
封止板2331と封止対応部214との接続方法としては、接続部分に隙間が生じないように接続できればよく、他の一般的な接続方法を用いてもよい。
【0158】
なお、
図14においては、濾過面234Aが上下方向に圧縮されたフィルターである場合について図示しているが、第1実施形態のように上下方向に圧縮されていない袋状フィルターについて、封止板を備える構成とすることも可能である。
【0159】
[3 第3実施形態]
本発明の第3実施形態について、
図15から
図17に基づいて説明する。なお、濾過送風装置以外の部分については説明を省略する。
【0160】
[(1) 構成の説明]
第3実施形態に係る濾過送風装置2Bは、
図15に示すように、接続体21Bに複数の封止対応部214Aを備え、複数の袋状フィルター23Fを取り付けたものである。
【0161】
接続体21Bは、
図16に示すように、ファン収納部213Aが平面視において正方形となるように形成され、上面に平面視において正方形となる封止対応部214Aを4つ設けたものである。また、封止対応部214Aのそれぞれの上面には、正方形の開口部である空気取込孔211Aが形成され、ファン収納部213Aの下面には、正方形の開口部である空気送出孔212Aが形成されている。
【0162】
また、袋状フィルター23Fは、平面視において正方形となる四角柱状となり、底部231A、開口部232A、封止部233B、濾過面234Dがいずれも平面視において正方形となるように形成されている。
【0163】
また、袋状フィルター23Fは、封止部233Bの内周の長さが接続体21Bの封止対応部214Aの外周の長さと略同一となるように形成され、第1実施形態と同様に、ゴムベルト24によって封止部233Bを封止対応部214Aに密着させることによって、封止対応部214Aのそれぞれに隙間なく取り付けられている。
したがって、本実施形態においては、接続体21Bに封止対応部214Aが4つ備えられているのに対応して、袋状フィルター23Fも4つ備えられることとなる。
【0164】
[(2) 効果の説明]
本実施形態に係る濾過送風装置2Bによれば、接続体21Bが複数の封止対応部214Aを備え、複数の袋状フィルター23Fが取り付けられることで、さらにフィルターの濾過面の面積を拡大することができる。
【0165】
すなわち、例えば、
図16に示す接続体21Bについて、ファン収納部213Aを、平面視において一辺の長さがA+2Bの正方形となるように形成し、4つの封止対応部214Aを、平面視において一辺の長さがA/2の正方形となるように形成した上で、平面視において一辺の長さがA/2となる四角柱状の袋状フィルター23Fを4つ取り付けた場合、フィルターの厚みを0とし、フィルターの高さをHとすると、袋状フィルター23F4つ分の濾過面の面積は、これらの側面の面積を加算し、A/2×H×4×4=8AHとなる。
【0166】
これに対し、
図17に示すように、平面視において正方形となる
図16と同様のファン収納部213Aに、平面視において正方形となる封止対応部214Bを一つのみ設けた接続体21Cについて、平面視におけるファン収納部213Aの一辺の長さをA+2B、平面視における封止対応部214Bの一辺の長さをAとして形成した上で、平面視において一辺の長さがAとなる四角柱状の袋状フィルターを一つ取り付けた場合、フィルターの厚みを0とし、フィルターの高さをHとすると、袋状フィルターの濾過面の面積は、A×H×4=4AHとなる。
【0167】
このように、接続体の上面の面積が一定である場合、封止対応部を一つのみ設けて大型の袋状フィルターを一つのみ接続する場合と比較して、複数の封止対応部を設けて、小型の袋状フィルターを複数接続することで、フィルターの濾過面の面積を拡大できることが分かる。
【0168】
また、単一の接続体に複数の袋状フィルターを接続する構成とすることで、ファンの数を増やすことなく袋状フィルターの数を増やすことができ、濾過送風装置全体を複数備える場合と比較して、コストを抑制しつつ、フィルターの面積を増加させることができる。
【0169】
なお、濾紙の厚みを考量しない場合、平面視において正方形となる袋状フィルターの前後、左右における分割数をNとすると、分割せず単一の袋状フィルターを取り付ける場合と比較して、袋状フィルターの数はN2となり、平面視における各辺の長さは1/Nとなり、濾過面の面積はN倍となる。
また、濾紙の厚みを考慮した場合でも、接続体の大きさ等にもよるが、一定の分割数までは、分割数を増やすことによって濾過面の面積を増加させることができる。
【0170】
袋状フィルターを接続体にいくつ接続する構成とするかは、濾過機能の向上と製造コストとの兼ね合いから、適宜決定すればよい。
【0171】
[4 第1実施形態から第3実施形態に共通する変形例]
以下、上記第1実施形態から第3実施形態に共通する変形例について説明する。
【0172】
[(1) 空気送出孔側への袋状フィルターの取り付け]
上記実施形態の説明においては、袋状フィルターを、接続体の空気取込孔側に、袋状フィルターの開口部と接続体の空気取込孔とが接続されるように取り付けることで、袋状フィルターの内部を陰圧とし、空気が袋状フィルターの外部から内部に流入する際にこれを濾過する場合について説明したが、袋状フィルターの用途によっては、これとは反対に、袋状フィルターを、接続体の空気送出孔側に、袋状フィルターの開口部と接続体の空気送出孔とが接続されるように取り付けることで、袋状フィルターの内部を陽圧とし、空気が袋状フィルターの内部から外部に流出する際にこれを濾過する構成とすることも可能である。
この場合、接続体の空気送出孔が、袋状フィルターの開口部と接続される本発明における空気流通孔に該当する。
【0173】
また、このようにして、接続体の空気送出孔側に袋状フィルターが取り付けられる場合、接続体の封止対応部は、このような空気送出孔の周囲に備えられることとなる。
【0174】
[(2) 用途の変更]
上記実施形態の説明では、本発明に係る袋状フィルターの用途の一例として、着用者の顔面を覆うと共に、着用者の顔面の周囲の空間にフィルターによって濾過された空気を提供することを目的とした防護具に用いる場合について説明したが、袋状フィルターの用途はこれに限られず、ファンによって送風される空気を濾過する場合等において、広く使用することができる。
【0175】
例えば、濾過送風装置について、接続体の内部に収納されたファンを除外した上で、袋状フィルターの全体を覆うことができる形状の空気の流通を阻害しない部材である覆い体を袋状フィルターの上に被せ、このような覆い体と接続体とを結合させるようにしてもよい。
覆い体は、例えば、プラスチック等の材料を成形することで、袋状フィルターよりも僅かに大きく、かつ網目状に形成された開口度の大きい部材として作製した上で、これを袋状フィルターの上から被せて、下端部を接着等の方法で接続体に結合すればよい。
【0176】
これによって、袋状フィルターと、内部にファンが収納されていない接続体とが一体化され、例えば、空気清浄機等に使用することができる、取り扱い易いカートリッジタイプの交換可能なフィルターユニットを実現することができる。
【0177】
また、平面視における面積が広い接続体の上面に多数の封止対応部を設けた上で、上下方向の長さが短い袋状フィルターを各封止対応部に取り付け、各袋状フィルターを覆い体で覆って接続体と一体化することで、接続体が下面に位置し、多数の覆い体が上面に位置するパネル状としてもよい。
この場合、クリーンルーム等での使用に適した交換可能なフィルターユニットを実現することができる。
【0178】
なお、このように接続体内にファンが存在しない場合においても、外部の装置に備えられたファンによって送風される空気を濾過することとなり、袋状フィルターがファンによって送風される空気を濾過している点において変わるところはない。
【0179】
また、例えば、家屋の壁に孔を設けた上で、第1実施形態に係る濾過送風装置2を、接続体21の空気送出孔212側が室内に向く状態で、当該孔を塞ぐようにして、家屋の外側に袋状フィルター23が位置するように取り付ければ、袋状フィルター23によって外気を濾過しつつ室内に送風することができる。これによって、濾過送風装置2を、濾過された空気を室内に導入するために使用することができる。
第2実施形態に係る濾過送風装置2A又は第3実施形態に係る濾過送風装置2Bを用いる場合も同様である。
【0180】
また、例えば、ファン付きウェアのウェア本体に、第1実施形態に係る濾過送風装置2を、接続体21の空気送出孔212側がウェアの内面側に向く状態で取り付ければ、ウェア本体内に導入される空気を効果的に濾過することができるファン付きウェアを実現することができる。第2実施形態に係る濾過送風装置2A又は第3実施形態に係る濾過送風装置2Bを用いる場合も同様である。
【0181】
また、袋状フィルターによって濾過する対象は、流体であればよく、空気(気体)には限られない。例えば、用いる濾紙の種類を液体の濾過に適したものとした上で、水中用のファンやポンプの吸水口に取り付けることで、水中の汚れを濾過するために使用することも可能である。
【0182】
液体の濾過に用いる場合、袋状フィルターの内部から、又は外部から、2KPS以下の圧力をかけることで、液体が袋状フィルターを通過するようにし、当該液体を濾過することが好ましい。
また、気体の濾過に用いる場合、袋状フィルターの内部から、又は外部から、500PS以下の圧力をかけることで、気体が袋状フィルターを通過するようにし、当該気体を濾過することが好ましい。また、気体の濾過に使用する袋状フィルターの作製に使用する具体的な濾紙の種類は、用途によって適宜選択することができるが、HEPAフィルター(JIS Z8122:2000)以上の性能を有するものを使用することが好ましい。
【0183】
[(3) 袋状フィルターの形状の変更]
上記実施形態の説明では、袋状フィルターについて、上下方向の全体において断面の形状及び周長が同一の円形となる円柱状、又は正方形となる四角柱状に形成される場合について説明したが、袋状フィルターの形状はこれに限られず、例えば、断面が三角形、五角形、六角形等となる角柱状としてもよい。
【0184】
また、どのような断面形状であっても、第2実施形態で説明したように、濾過面を上下方向に圧縮してもよい。
断面が四角形となる四角柱状とする場合において、さらに上下方向に圧縮する場合には、
図18に示す濾過面234Eのように折り畳まれるようにすることが、濾過面の面積を効率的に向上させる上で好ましい。
【0185】
また、袋状フィルターは、例えば、上端部近傍で下端部近傍よりも断面の周長が大きくなるようにする等、上下方向の位置によって、断面の形状及び/又は周長が異なってもよい。
また、開口部の面積に対し、袋状フィルターの周囲を周回するように配置される濾過面の断面積が大きくなるようにしてもよい。この場合は、濾過面の面積をさらに増加させることができ、フィルターの性能のさらなる向上を図ることができる。
【0186】
その他、袋状の形状が維持されている限り、袋状フィルターの形状は、その用途等に応じて適宜変更させることが可能である。
【0187】
[(4) プレフィルター又は保護用の袋の採用]
いずれの実施形態においても、袋状フィルターの上に、袋状フィルターの濾過面を覆うことができる袋状のプレフィルターを取り付けることで、濾過機能の向上を図ってもよい。プレフィルターに用いる濾紙としては、例えば袋状フィルターに用いるのと同一のものを用いてもよいし、袋状フィルターよりは濾過機能が劣るものを使用してもよい。
プレフィルターは、少なくとも袋状フィルターの濾過面の全面を覆うことが好ましく、また、袋状フィルターに接続されず、独立して交換可能であることが好ましい。
【0188】
また、このようなプレフィルターに代えて、濾過機能を有しない空気の透過率の高い布で形成された保護用の袋を取り付けることで、袋状フィルターの保護のみを図るようにすることも可能である。
【0189】
[(5) 筒状フィルターへの変更]
上記実施形態の説明では、いずれの実施形態も、開口部を下端部に一つのみ有し、内部に当該開口部へと繋がる空間が形成される袋状のフィルターを用いる場合について説明したが、いずれの実施形態についても、このような袋状のフィルターに代えて、対向する位置(上端部及び下端部)に配置された二つの開口部を有する筒状のフィルター(以下「筒状フィルター」という。)を用いてもよい。
なお、本発明においては、フィルターの形状としての「筒状」には、開口部を対向する位置に配置された二つのみ有し、内部にこれら開口部へと繋がる空間が形成される形状を広く含むものとする。
【0190】
このような筒状フィルターを使用する場合、上端部の開口部を板状の部材を取り付けて塞げば、上記各実施形態において説明したのと同様にして使用することができる。
【0191】
また、両端部に接続体を取り付け、筒状フィルターの両端部からファンによって空気を排出することで筒状フィルター内を陰圧とし、又は筒状フィルターの両端部からファンによって空気を導入することで筒状フィルター内を陽圧として使用することも可能である。
【0192】
なお、断面が円形でなくてもよい点、上下方向の位置によって断面の形状及び/又は周長が異なってもよい点、並びに開口部の面積に対し濾過面の断面積が大きくなるようにしてもよい点等、筒状の形状を維持しつつ用途等に応じて適宜形状の変更が可能である点は、筒状フィルターについても袋状フィルターの場合と同様である。
【0193】
[5 第4実施形態]
本発明の第4実施形態について、
図19から
図38に基づいて説明する。
なお、以下においては、実際の使用状態を問わず、袋状フィルターに底部が形成された側を上、開口部が形成された側を下とし、また、上下方向と直行する一の方向を前後方向、上下方向及び前後方向と直行する方向を左右方向と定めて説明する。
【0194】
本実施形態に係る組フィルター3は、クリーンルーム用のフィルターとして使用することを想定したフィルターである。具体的には、クリーンルーム用の高性能HEPAフィルターとして、610mm×610mm×290mmの直方体状に形成されたフィルターが広く流通していることから、これと同等の外形を持つフィルターを形成することを想定した場合について説明する。
【0195】
[(1) 構成の説明]
組フィルター3は、610mm×610mm×290mmの直方体状のフィルターの濾紙収容部分の大きさを、
図19における左右方向に600mm、前後方向に600mm、上下方向に280mmの直方体状と想定し、左右方向100mm、前後方向100mm、上下方向280mmに形成されたフィルターユニット31を、左右方向6個、前後方向6個の総計36個組み合わせて作製されたものである。
【0196】
フィルターユニット31は、
図20に示すように、多数の袋状フィルター311が、底板312と天板313との間に配置され、底板312と天板313とが連結棒314によって接続されたものである。
具体的には、袋状フィルター311は、前後方向10列、左右方向10列の計100個備えられている。
【0197】
[a 袋状フィルター]
袋状フィルター311は、
図21に示すように、側面に通過する空気を濾過する円柱状の濾過面3113を備え、上端部が閉じられて底部3111となり、下端部が開放されて開口部3112となる袋状に形成されている。
【0198】
また、袋状フィルター311は、上端部に形成された底部3111が天板313の袋底部収納部3132に固定され、下端部に形成された開口部3112が、底板312の底板開口部3121に接続されている。
【0199】
また、袋状フィルター311は、
図21に示すように、濾過面3113が上下方向に圧縮されている。
【0200】
[b 底板]
底板312は、
図20に示すようにフィルターユニット31の下面に配置された板状の部材であり、前後方向及び左右方向共に100mmとなる平面視正方形となるように形成されている。底板312は、例えば真空成形又は射出成形によって、硬質な樹脂材料を用いて形成すればよい。
【0201】
底板312は、
図22に示すように、直径7mmの円形の開口部である底板開口部3121を備え、底板開口部3121の周囲には、後述のように袋状フィルター311を接着するための溝部であるリング状糊溝3122が形成されている。底板開口部3121は、フィルターユニット31に袋状フィルター311が備えられる個数に対応して、前後方向10列、左右方向10列の計100か所に形成されている。
【0202】
袋状フィルター311は、下端部の開口部3112の縁の部分が、第1接着剤が注入されたリング状糊溝3122に差し込まれるようにして、底板312に接着される。袋状フィルター311と底板312との接着に用いる第1接着剤としては、リング状糊溝3122に流し込みやすい低粘度接着剤を用いることが好ましい。
【0203】
また、底板開口部3121の間の部分には、リング状糊溝3122を繋ぐ溝部である連結糊溝3123が形成され、連結糊溝3123の適所には、リング状糊溝3122及び連結糊溝3123に糊を注入するための凹部である糊注入部3124が形成されている。
【0204】
糊注入部3124の形成数は、底板312への袋状フィルター311の接着に使用する第1接着剤の粘度に応じて定めればよい。すなわち、第1接着剤の粘度が十分低い場合には、接着剤が広がり易いことから糊注入部3124を一カ所設けるだけでもよく、粘度が高くなるにつれて、形成する必要のある糊注入部3124の数は多くなる。
【0205】
また、底板312の四隅には、連結棒314を接続するための孔部である連結棒用孔3125が形成されている。
【0206】
なお、第1実施形態から第3実施形態のように内部に空間を有する接続体ではなく、底板開口部を有する板状の部材である底板に袋状フィルターが取り付けられたものも含め、袋状フィルターが、空気等の流体を流通させることができる開口部を有する部材に、袋状フィルターの開口部と当該部材の開口部とが接続されるようにして取り付けられたものであれば、フィルターユニットに該当するものとする。
【0207】
[c 天板]
天板313は、フィルターユニット31の上面に配置された板状の部材であり、前後方向及び左右方向共に100mmとなる平面視正方形となるように形成されている。天板313は、底板312と同様、例えば真空成形又は射出成形によって、硬質な樹脂材料を用いて形成すればよい。
【0208】
天板313は、
図20に示すように、天板313の周囲に形成された枠部3131と、下面側に凹部が形成され、袋状フィルター311の底部3111を接着保持する部位である袋底部収納部3132と、袋底部収納部3132同士、又は袋底部収納部3132と枠部3131とを繋ぐ連結部3133と、を備え、それ以外の部分は空気が流通する天板開口部3134となるよう形成されている。
【0209】
天板313には、フィルターユニット31に袋状フィルター311が備えられる個数に対応して、袋底部収納部3132が、前後方向10列、左右方向10列の計100個備えられ、袋底部収納部3132のそれぞれの下面に、袋状フィルター311の底部3111が接着されて接続されている。袋底部収納部3132と袋状フィルター311の底部3111との接着に用いる第2接着剤としては、高粘度の接着剤を用いることが好ましい。
なお、袋底部収納部3132と袋状フィルター311の底部3111との接続方法は、第2接着剤による接着には限られず、例えば、第2接着剤による接着に換えて、超音波溶着を使用して接着してもよい。
【0210】
また、天板313の四隅(枠部3131の四隅)には、連結棒314を接続するための孔部である連結棒用孔31311が形成されている。
【0211】
[d 連結棒]
連結棒314は、底板312と天板313とを繋ぐ部材であり、長さ280mmの棒状に形成され、
図20に示すように、底板312の連結棒用孔3125と、天板313の連結棒用孔31311とを繋ぐようにして、4本備えられる。
【0212】
[(2) 製造方法の説明]
続いて、本実施形態に係る組フィルター3の製造方法について説明する。
【0213】
[a 製造に必要な装置]
まず、組フィルター3の製造に必要となる装置について説明する。
【0214】
[(a) 円筒濾紙高速製造装置]
円筒濾紙高速製造装置200は、幅28mmの濾紙テープTを連続して丸めた上で、幅3mm弱の重なった部分を熱接合することで、直径8mmの円筒形の濾紙を作製する装置である。なお、円筒濾紙高速製造装置200の濾紙テープTが送られる方向に合わせ、濾紙テープTの進行方向前方を前方とし、進行方向後方を後方とする。
【0215】
円筒濾紙高速製造装置200は、
図23に示すように、後端部付近の外筒内筒連結部210で連結された2重の円筒(外筒220及び内筒230)を備える。
また、内筒230の前端部付近に位置する部分に、前方に濾紙テープTを引っ張る送りローラー240を備え、前後方向において内筒230の中央部付近に位置する部分に、濾紙テープTの重なった部分を溶着する溶着ローラー250を備え、外筒220の後方に位置する部分に、濾紙テープTに徐々に丸みを帯びさせるための外筒220に連なった成形部260を備える。
【0216】
内筒230の前端部付近に設けられた送りローラー240によって濾紙テープTを前方に送ると、円筒濾紙高速製造装置200の後方から濾紙テープTが成形部260の入り口に入り徐々に丸められ、外筒220及び内筒230の間で、幅3mm弱の重なった部分を有する円筒形に成形される。
さらに、円筒形に成形された濾紙テープTは、外筒220に開口した溶着窓2201上に配置された溶着ローラー250によって重なった部分が溶着されて溶着部Yが形成され、円筒形となった円筒濾紙C1が前方に放出される。
【0217】
なお、円筒濾紙高速製造装置200を用いて濾紙テープTから円筒濾紙C1を作製することなく、初めから濾紙を円筒状に製造することで、円筒濾紙C1としてもよい。この場合には、溶着部Yがないことから、後述の圧縮成形の精度が向上する。
【0218】
[(b) 円筒濾紙封止加工装置]
円筒濾紙封止加工装置は、超音波融着機により円筒濾紙C1に一定間隔で袋状フィルター311の底部3111に対応した封止融着加工を行い、
図24に示すように底融着部C21を形成し、底融着済円筒濾紙C2に加工するための装置である。
【0219】
[(c) 成形装置]
成形装置300は、
図25に示すように、台板310上に円柱状の成形柱320が形成された装置である。成形柱320は、直径6.5mm、高さ880mmの円柱状に形成され、10mmピッチで100本形成されている。
【0220】
[(d) 一括筒袋セット装置]
一括筒袋セット装置400は、100本の底融着済円筒濾紙C2を、成形装置300の100本の成形柱320に被せるための装置であり、
図26に示すように、底融着済円筒濾紙C2が入る入り口ガイド部410と、成形装置300の成形柱320の方向へと底融着済円筒濾紙C2を送る送り部420と、成形柱320の上端に底融着部C21が到達した後に底融着部C21の上部を切断する切断部430と、を備える。
【0221】
送り部420は底融着済円筒濾紙C2を送る回転ローラー4201を備え、回転ローラー4201の底融着済円筒濾紙C2と接する部分には、例えば羽根4202等の柔らかい素材で形成された部材が備えられている。これによって、成形柱320の上端部に底融着部C21が到達すると、羽根4202と底融着済円筒濾紙C2とが滑り、回転ローラー4201が空回りして、100本の底融着済円筒濾紙C2の底融着部C21の位置を揃えることができる。
【0222】
[(e) 上下スライド装置]
上下スライド装置は、成形装置300の成形柱320の長手方向(上下方向)と平行にスライドし、成形装置300の成形柱320が底板開口部3121を貫通した状態で、底板312を上下に移動させる装置である。
【0223】
[(f) 接着剤注入装置]
接着剤注入装置500は、底板312の糊注入部3124に適量の接着剤を注入する装置である。
【0224】
[(g) 熱成形炉]
熱成形炉は、袋状フィルター311を構成する濾紙の圧縮成形により生じる折り目を熱により定着させるための炉である。袋状フィルター311を構成する濾紙の材料がポリプロピレン繊維である場合には、炉内温度は約110度が適切である。
【0225】
[b 製造手順]
続いて、組フィルター3の製造手順について説明する。
【0226】
[(a) 底融着済円筒濾紙の製造手順]
まず、底融着済円筒濾紙C2の製造手順について説明する。
【0227】
幅28mmの濾紙テープTを円筒濾紙高速製造装置200により連続して丸め、3mm弱の重なった部分を溶着して溶着部Yとすることで、直径8mmの円筒濾紙C1を作製した上で、円筒濾紙封止加工装置により一定間隔で封止融着加工を行うことで、850mm毎に、
図24に示すように底融着部C21を形成し、底融着済円筒濾紙C2を製造する。
【0228】
[(b) フィルターユニットの製造手順]
続いて、フィルターユニット31の製造手順について説明する
【0229】
[手順1 筒袋濾紙のセット]
図27(a)に示すように成形装置300に底板312をセットした上で、成形柱320の上部に一括筒袋セット装置400を設置し、一括筒袋セット装置400の送り部420により底融着済円筒濾紙C2を成形柱320に被せ、底融着部C21が成形柱320の上端に到達した後、底融着部C21の上部を切断部430で切断する事により、長さ880mmの成形柱320に長さ840mmの上下方向に圧縮されていない状態の袋状フィルター311が被せられた状態とする。
なお、底融着済円筒濾紙C2を底融着部C21の上部で切断して袋状とした、上下方向に圧縮されていない状態の袋状フィルター311を、筒袋濾紙C3とする。
【0230】
[手順2 接着剤の注入]
接着剤注入装置500を用いて、底板312の糊注入部3124に第1接着剤を注入する。
図27(a)に示すように高さ(上下方向の長さ)880mmの成形柱320に高さ(上下方向の長さ)840の筒袋濾紙C3を被せた状態では、底板312と筒袋濾紙C3下端との距離は、底板312の厚みを10mm程とすると30mm程あり、容易に接着剤注入装置500の注入ノズルから底板312の適所に設けられた糊注入部3124に適量の第1接着剤を注入できる。
【0231】
[手順3 天板の接続]
成形柱320の上端は、筒袋濾紙C3の先端を被せやすいようにテーパー形状に形成され、また、天板313の袋底部収納部3132の下面にはこのテーパー形状に対応した凹部が形成されている。
【0232】
袋底部収納部3132の下面に粘度の高い接着剤である第2接着剤を塗布した上で、筒袋濾紙C3の上端部(袋状フィルター311の底部3111に該当する部分)を挟んで成形柱320の上端に押し付けることにより、筒袋濾紙C3の上端部が、袋底部収納部3132の下面に収納された状態で、天板313に接続される。
【0233】
[手順4 接着封止と圧縮成形]
上下スライド装置(不図示)によって、
図27(b)に示すように、底板312を上方に移動させることにより、接着剤注入済みのリング状糊溝に筒袋濾紙C3の下端部(袋状フィルター311の下端部の開口部3112の周囲の部分に該当する部分)が挿入される。
【0234】
上記の状態からさらに底板312を上方に移動させることにより、筒袋濾紙C3の側面(袋状フィルター311の濾過面3113に対応する部分)を上下方向に圧縮し、多くのセルを形成する。
本実施形態では筒袋濾紙C3の直径は8mmで、成形柱320の直径は6.5mmであることから、成形柱320と筒袋濾紙C3の側面との間隔は0.75mmとなり、筒袋濾紙C3の側面が折り畳まれるのに十分な間隔があることから、良好なセルを形成可能である。
【0235】
上下方向に840mmの袋状フィルター311を140mm程度まで圧縮した後に、160mm程度に戻した上で、
図27(c)に示すように、平面視における4隅に、底板312の連結棒用孔3125と天板313の連結棒用孔31311とを挿通するように連結棒314を差し込み、連結棒314と孔との摩擦により底板312と天板313との間隔を約160mmに保ち一体化する。
【0236】
[手順5 熱成形]
袋状フィルター311、底板312、天板313及び連結棒314が一体化したもの(以下、「半製品」という。)から、成形装置300を取り外した上で、摂氏約110度の熱成形炉の中に数分間置くことにより、袋状フィルター311の濾過面3113の隣り合うセルの間の折り目を安定化させる。
なお、熱成形中に圧縮された袋状フィルター311の形状が崩れることを防止するために、成形装置300と同様に台座と成形柱を有しつつ、成形装置300と比較して成形柱が短い簡便な熱成形用装置を使用し、それに半製品を取り付けてから熱成形炉に投入するようにしてもよい。
【0237】
[手順6 最終工程]
半製品を熱成形炉から取り出した上で、接着剤がある程度固化してから底板312と天板313との間隔が280mmとなるように天板313の位置を引き上げると、
図27(d)に示すフィルターユニット31が完成する。
なお、半製品を熱成形炉に投入するタイミングや、熱成形炉から取り出して天板313を引き上げるタイミング等は、使用する接着剤の特性等を考慮して設定すれば良い。
【0238】
[(c) 組フィルターの製造手順]
上記のようにして形成されたフィルターユニット31を、
図19に示すように36個接続することにより、組フィルター3を製造する際の製造手順について説明する。
【0239】
平面視において各辺100mm、高さ約280mmのフィルターユニット31を、前後、左右に6個、総計36個接続することによって、組フィルター3とする。
【0240】
具体的には、フィルターユニット31を上下に反転させて底板312を上に向けて36個のフィルターユニット31を隙間なく並べた上で、底板312同士を、空気漏れの小さいテープである第1接着テープT1及び第2接着テープT2を用いて接続する。この際には、
図28に示すように、まず、第2接着テープT2と比較して幅の狭い第1接着テープT1で左右方向の接続線(隣り合う底板312が接する線)である第1接続線CL1を封じる。その上で、第1接着テープT1の上から、第1接着テープT1と比較して幅の広い第2接着テープT2で、直交するもう一方の方向である前後方向の接続線である第2接続線CL2を封じることにより、36個のフィルターユニット31の底板312を一体化する。
【0241】
このように最初に幅の狭い第1接着テープT1を貼り、その上に、第1接着テープT1が延在する方向と直交する方向に延在するようにして、幅の広い第2接着テープT2を貼るのは、次の理由による。
【0242】
すなわち、テープには厚みが有るので、平面上に直交するようにしてテープを貼ると、下に貼られた厚みのあるテープの上に、上に貼られたテープが直交するため、
図29(b)に示すように、下に貼られたテープの両側に、下に貼られたテープの厚みによる小さな隙間が生じる。
【0243】
この点、後から貼る第2接着テープT2の幅を、先に貼る第1接着テープT1の幅よりも広くすることで、
図29(a)に示すように、第2接着テープT2の縁から第2接続線CL2までの距離を長くすることができ、上記隙間による空気の漏れを軽減することができる。
【0244】
なお、組フィルター3の強度を強化するためには、フィルターユニット31の天板313同士も、テープで貼り合わせることが好ましい。天板313の接続に関しては、底板312の接続と異なり、空気漏れが生じ難いように配慮する必要はないことから、強度だけを考慮して用いるテープを選択すればよい。
【0245】
このようにして接着テープで接続した36個のフィルターユニット31を、内側の大きさが36個のフィルターユニットが接続されたものと一致する直方体状のアルミ製の枠であるアルミ枠32に納めることにより、
図19に示すように、組フィルター3が完成する。
【0246】
[(3) 効果の説明]
続いて、本実施形態に係る組フィルター3の効果について説明する。
【0247】
本実施形態に係る組フィルター3は、例えば、底板312側がクリーンルーム内に向き、天板313側が外部空間内に向く状態で、底板312の周囲に隙間が生じないように設置した上で、底板312側に設置されたファン等により、底板開口部3121から空気を吸い出すようにして、袋状フィルター311によって濾過された空気を、クリーンルーム内に導入する。
また、例えば、上記とは反対に、天板313側がクリーンルーム内に向き、底板312側が外部空間内に向く状態で、底板312の周囲に隙間が生じないように設置した上で、底板312側に設置されたファン等により、底板開口部3121から空気を送り込むようにして、袋状フィルター311によって濾過された空気を、クリーンルーム内に導入してもよい。
【0248】
どのように設置するとしても、本実施形態によれは、濾過面の面積が広く、形状が安定した、クリーンルーム用の高性能HEPAフィルターと同等の外形を持つフィルターを得ることができる。
【0249】
まず、圧縮された袋状フィルター311の圧縮された形状の安定性について説明する。
【0250】
すなわち、上記のように、高さ840mmの袋状フィルター311を高さ160mmまで圧縮して熱成形を行う。この時、圧縮された袋状フィルター311の自然長(上下方向の加圧を解除した際の高さ)がおおよそ200mmとなるように熱成形条件を設定する。
自然長200mmに成形された袋状フィルター311を280mmまで伸ばして使用することにより、袋状フィルター311が伸長しようとすることによって底板312及び天板313を押す圧力が消え、反対に底板312及び天板313を引く張力が発生することから、袋状フィルター311の形状が安定する。すなわち、圧縮された袋状フィルター311が底板312及び天板313を押す圧力によって袋状フィルター311が折れ曲がってしまうことを防止できる。
【0251】
続いて、濾過面の面積について説明する。
【0252】
すなわち、上記の手順1から6を経て製造されたフィルターユニット31に備えられた100個の袋状フィルター311の濾過面3113の有効表面積を計算すると、以下のようになる。
【0253】
まず、圧縮前の濾過面3113の表面積を計算すると、直径8mm、高さ840mmの円筒100個で構成されているため、圧縮前の濾過面3113の表面積S1は、
S1=8×π×840×100≒2111000mm2=2.111m2となる。
【0254】
高さ840mmを3分の1に圧縮して280mmとすることで、セルの成形状況により濾過面3113の有効表面積(実際に空気の濾過に使用される面積)は83%(2.5/3)程度まで低下するが、その場合も、有効表面積は、2.111×2.5/3≒1.76m2となる。
【0255】
これに対し、前後、左右100mmの底板312の面積は0.01m2であることから、底板312と同一の大きさの平面状のフィルターと比較して、面積を176倍とすることができる。
同じ濾紙を使用した場合、フィルターの性能は濾過面の有効表面積で決まることから、これによって平面状の従来のフィルターと比較して、フィルターの性能を向上できる。
【0256】
本実施形態によって、濾過面の有効表面積を拡大できる点は、以下の従来の各形状の立体形状のフィルターとの比較からも明らかである。
【0257】
従来、フィルターの濾過面の面積を拡大する方法としては、例えば、
図30(a)に示すプリーツ方式や、
図30(b)に示す平行板方式を採ることが考えられる。
【0258】
立体形状フィルターの表面積を増やすためには、折り畳まれた濾紙R間の間隔を狭くしつつ、高さを高くする必要があるが、プリーツ形状の場合、濾紙R間の間隔を変えることなく高さを高くすると、上端部付近及び下端部付近では濾紙の間の間隔を保つことが困難となり、濾紙同士が接してしまう。したがって、実用的なピッチで折り畳んでプリーツ形状とした場合、通常、高さはおよそ30mmが限界となる。
【0259】
上記のようなプリーツ方式の問題を解決するため開発された方法が
図30(b)に示す平行板方式である。平行板方式によれば、どの高さに於いても濾紙Rの間に一定の間隔を保つことができ、高さに制限がなくなる。なお、平行板方式については、濾紙Rのみで濾紙Rの間の間隔を保つのは難しい場合が多いことから、
図30(d)に示すように、隣り合う濾紙Rの間に、波型のサポート材Sを配することによって濾紙Rの間の間隔を保つことが通常である。
【0260】
しかし、このような従来技術で最大の面積を得ることができる並行版方式と比較しても、以下のように、本実施形態のような筒方式(
図30(c))の方が優れている。
【0261】
前後方向100mm、左右方向100mm、高さ280mmの直方体状の空間に10mmピッチでフィルターを備える場合のフィルターの面積について、平行板方式と本実施形態のような筒方式とを比較する。
なお、筒方式では筒内部の断面積と筒外部の断面積を略同一にするため(空気の入口と出口の断面積を同じにするため)、筒の直径は8mmとして計算する。
またフィルター面積の計算にあたっては、両方式とも上面、下面に位置する濾紙の面積は無視して側面の面積のみについて計算する。
【0262】
図31(a)に示すように平行板方式とした場合、フィルターの面積は、
100mm(前後)×280mm(高さ)×20(面の数)
=560000mm
2
=5600cm
2
【0263】
図31(b)に示すように筒方式とした場合、上下方向に圧縮していない場合でも、フィルターの面積は、
8mm(直径)×π×280mm(高さ)×100(本数)
≒703718mm
2
≒7037cm
2
【0264】
なお、上下に高さのない平面フィルターの面積の場合、10cm×10cmに範囲に配置することのできるフィルターの面積は100cm2である。
【0265】
このように、10mmピッチの場合のフィルターの面積は、平面フィルターに対し平行板方式では56倍だが、筒方式では約70.37倍とすることができる。
【0266】
また、筒方式において、さらに、本実施形態のように280mmの3倍の840mmの高さを有する袋状フィルター311を1/3の高さに圧縮して高さ280mmとなるように圧縮成形した場合の有効表面積の増加は、初めから高さ280mmに形成した場合の3倍を少し下回り2.5倍程度になる。
したがって、筒状のフィルターを圧縮した方式(圧縮筒方式)では平面フィルターに対し、70.37×2.5≒176倍、平行板方式に対し約3.14倍のフィルターの有効表面積を得ることができる。
【0267】
なお、平行板方式では
図30(d)に示すように、形状の維持に波型のサポート材Sが必要になり、これによってフィルターの有効表面積が減少することから、有効表面積の差は3.14倍よりも大きくなる。
【0268】
[(4) 変形例]
続いて、本実施形態の変形例について説明する。
【0269】
[a 第1変形例:接着のタイミングの変更]
上記の製造方法の説明では、フィルターユニットの製造手順の手順2で、筒袋濾紙C3が成形柱320にセットされた直後のタイミングで、熱成形炉に投入される以前に、接着剤注入装置500の底板312上に配置された注入ノズルから、底板312の糊注入部3124に第1接着剤が注入される場合について説明したが、第1接着剤注入のタイミングはこれに限られない。
【0270】
例えば、第1接着剤の注入の有無にかかわらず圧縮成形後は筒袋濾紙C3の下端部の縁がリング状糊溝3122に入っていることから、手順5の熱成形後に、袋状フィルター311、底板312、天板313及び連結棒314が一体化した半製品が冷えてから、糊注入部3124に第1接着剤を注入して、袋状フィルター311と底板312とを接着するようにしてもよい。
【0271】
また、この場合、上記手順2で説明したように接着剤注入装置500の底板312上に配置された注入ノズルから底板312の糊注入部3124に接着剤を注入するのではなく、手順5の熱成形後に、底板312の底に1又は複数の注入孔(不図示)を開け、当該注入孔から接着剤を圧入するようにしてもよい。この場合、注入後、注入孔から接着剤が漏れたり、製造後の使用時に注入孔から空気が漏れたりしないようにするため、接着剤の粘度等の特性、注入圧力等を考慮して注入孔の大きさや数を決定する。
また、あらかじめ底板312の糊注入部3124に第1接着剤を注入した上で、第1接着剤注入後の底板312を成形装置300の成形柱320にセットしてもよい。
【0272】
[b 第2変形例:封止方法の変更]
上記構成の説明及び製造方法の説明では、袋状フィルター311の開口部3112の周囲の縁の部分を、底板312の底板開口部3121の縁の部分に接続して隙間なく封じる手段として、接着剤を用いる場合について説明したが、これに代えて、2つのリング状部材を用いて、袋状フィルター311の開口部3112の周囲の縁の部分を、底板312Aの底板開口部3121の縁の部分に接続して隙間なく封じるようにしてもよい。
【0273】
すなわち、この場合、
図32示すように、底板312Aの底板開口部3121の縁に、リング状糊溝3122に代えて、平面視においてリング状となるように上方へと突出する部分である内リング3126を形成し、内リング3126を袋状フィルター311の開口部3112に差し込むことにより袋状フィルター311の開口部3112の周囲の縁で内リング3126を覆う。
【0274】
その上で、内径が内リング3126の外径と略同一となるリング状の部材である外リング315を、上方から内リング3126に圧入し、袋状フィルター311の上から内リング3126に被せ、内リング3126と外リング315との間に袋状フィルター311の下端部近傍の部分が挟まれるようにする。これによって、袋状フィルター311を、開口部3112が底板開口部3121を覆うようにして、隙間なく底板312に取り付けることができる。
【0275】
なお、外リング315は、1つのフィルターユニット31に取り付けられる分が全て接続されていることが好ましい。
すなわち、
図33に示すように、平面視において外形が底板312の形状と一致する矩形状の外枠316を設けた上で、外リング315同士及び外リング315と外枠316とが、連結帯317によって接続されるようにすることで、開口度の大きな板状の部材である外リング連結板318を形成する。これによって、1つのフィルターユニット31分の外リング315を一括して取り扱うことが可能となる。
【0276】
製造工程において、成形装置300の成形柱320の上下方向の長さを、圧縮されていない状態の袋状フィルター311(筒袋濾紙C3)の上下方向の長さと同じか僅かに短くすると、成形柱320に筒袋濾紙C3を被せた状態では、袋状フィルター311の下端部の縁が底板312Aの内リング3126を覆うようになる。
【0277】
このような状態となるように、成形柱320に筒袋濾紙C3を被せた後に、100個の外リング315を有する外リング連結板318を成形柱320の上から下ろし、各外リング315に成形柱320が挿入されるようにし、外リング315が底板312Aの内リング3126の上端に達した後に、さらに底板312A側(下方)に向け外リング連結板318の全体に圧力を加えることにより、袋状フィルター311の下端部近傍の開口部3112の縁の部分が、内リング3126を完全に覆った状態で、100個の外リング315を一度に嵌め込むことができる。
【0278】
外リング連結板318は、例えば射出成形により作製することで、個々の外リング315を、その内径が、内リング3126に嵌め込んで固定する上で十分な精度となるように形成することができる。
【0279】
なお、熱膨張や熱変形などにより、外リング連結板318における外リング315同士の配置位置の精度は下がる場合があるが、外リング315同士を連結する連結帯317を伸縮性のある材料で形成の上、外リング315同士を緩やかに連結すれば、外リング連結板318を成形装置300の上から被せれば、個々の外リング315が、成形柱320にガイドされて自動的に最適位置に位置することとなる。
【0280】
このように外リング315を連結して板状の外リング連結板318とすることで、外リング315を取り付ける際の手間を低減できる。すなわち、100個の外リング315が独立していると、外リング315の内リング3126への取り付け作業に100個分の手間がかかるが、100個の外リング315が連結して外リング連結板318となっていると、100個の外リング315の取り付け作業をまとめて行うことができる。
【0281】
なお、外リング連結板318の材料として弾性のある材料を使用する場合には、外リング315は、内径が、外リング315を伸ばした際に内リング3126を通すことができる範囲で内リングの3116外径より小さくなりさえすれよく、外リング連結板318を低い精度で形成することも可能となる。
また、取り付け前に外リング連結板318を加熱して熱膨張により外リング315の径を大きくすれば、小さな圧力で外リング315を内リング3126に圧入することが出来る。
【0282】
[c 第3変形例:紐による封止]
第2変形例について、外リング315に代えて、紐319によって袋状フィルター311の下端部を封止するようにしてもよい。
この場合、袋状フィルター311の下端部の開口部3112に内リング3126を挿入し、袋状フィルター311の下端部近傍の部分が内リング3126を覆う状態とした上で、ゴム等の弾性を有する材料で形成された紐319を、
図34に示すように、袋状フィルター311の上から内リング3126に巻き付けることにより、袋状フィルター311の下端部を内リング3126に密着させ、袋状フィルター311の開口部3112が底板312の底板開口部3121を覆った状態で、袋状フィルター311を底板312に取り付けることができる。
【0283】
紐319としては、リング状に形成されたものを100個用いて、個々の袋状フィルター311の下端部を個別に封止してもよいが、
図34に示すように、1本の長い紐319を用いて、一筆書きのように100個の袋状フィルター311の下端部近傍の部分を内リング3126に密着させるようしてもよい。この場合、封止作業の手間が低減し、短時間で行うことが可能となる。
【0284】
[d 第4変形例:超音波による封止]
上記構成の説明及び製造方法の説明では、袋状フィルター311の開口部3112の周囲の縁の部分を、底板312の底板開口部3121の縁の部分に接続して隙間なく封じる手段として、接着剤を用いる場合について説明したが、これに代えて、超音波溶着により、袋状フィルター311と底板とを接続するようにしてもよい。この場合、底板は、袋状フィルター311との溶着が容易となるように、第2変形例と同様に内リング3126を備える底板312Aを用いる、ただし、袋状フィルター311を構成する濾紙との溶着が容易となるように、内リング3126を薄く形成する必要がある。そのため、真空成形で底板312Aを形成することが好ましい。
【0285】
また、超音波で溶着するまで、圧縮されていない状態の袋状フィルター311(筒袋濾紙C3)を内リング3126に密着させるための専用の治具(台座連結板)を使用する。台座連結板は、
図35に示すような断面がL字型となるリング状の部材であるリング状台座600が、100個接続されたものである。
【0286】
この場合の製造手順について説明する。
【0287】
[手順1]
筒袋濾紙C3を成形柱320に被せた後、100個のリング状台座600を有する台座連結板を成形柱320の上から下ろし、各リング状台座600に成形柱320が挿入されるようにし、
図35に示すように、リング状台座600と底板312Aの内リング3126により袋状フィルター311の下端部の縁を挟み固定する。
【0288】
[手順2]
成形装置300から、台座連結板ごと半製品を上方に抜き、超音波溶着装置にセットして、
図35に示すように、内リング3126の内側から、超音波溶着装置の溶着に用いる部分であるホーン700を差し込み、一周回転させることで、リング状台座600に接した薄い内リング3126と袋状フィルター311とを超音波溶着する。
【0289】
[手順3]
成形装置300上に戻す。
【0290】
[e 第5変形例:上端部に突出部が生じない袋状フィルターの形成]
上記製造方法の説明においては、円筒濾紙封止加工装置により、
図24に示す850mm毎に直線状に融着され底融着部C21が形成された底融着済円筒濾紙C2を作製し、成形柱320に被せた後、底融着部C21の上部で切断することによって筒袋濾紙C3とする場合について説明したが、この場合、底融着部C21からある程度間隔があいた部分を切断することから、
図36に示すように、底融着部C21の両端部の上部に突出部(以下「耳」という。)ができる。
【0291】
このような耳があると、天板313を取り付けた際に天板313付近において空気の流通の妨げとなるおそれがあることから、耳が出ないようにすることが好ましいが、このために天板313の袋底部収納部3132の形状を変更すると、天板313の厚さが厚くなりがちである。
【0292】
そこで、
図37に示す底融着済円筒濾紙C2Aのように、底融着部C21Aを左右両端部が下がるように融着して形成した上で、切り込みC22を図示のように入れておくことで、水平方向の切断線C23における切断により耳となり易い底融着部C21Aの左右両端部の上部の部分が切り離されるようにすることで、底融着部C21Aの両端部の上部に耳が形成され難くすることが好ましい。
【0293】
[f 第6変形例:組フィルターの接続方法の変更]
上記製造方法の説明では、36個のフィルターユニット31を接続して組フィルター3を作製する方法として、フィルターユニット31同士の連結に接着テープを使用する場合について説明したが、これに代えて、連結板33を用いて、フィルターユニット31同士を連結するようにしてもよい。
【0294】
連結板33は、
図38に示すように、連結するフィルターユニット31と一致する数(この場合36個)の開口部331を有し、開口部331の周囲に、下方に凹となる枠縁332が形成されている。なお、枠縁332の平面視における外形は、フィルターユニット31の底板312の外形と一致する。
【0295】
連結板33の枠縁332の上面に接着剤を塗布した上で、フィルターユニット31の底板312を枠縁332に嵌め込めば、フィルターユニット31が連結板33に接続され、連結板33を介して複数のフィルターユニット31を接続することができる。
【0296】
なお、連結板33の開口部331や枠縁332の形状は、フィルターユニット31の底板312の形状に合わせて適宜変更することが可能である。
【0297】
また、上記とは異なり、枠縁332の平面視における外形が、フィルターユニット31の天板313の外径と一致するようにした上で、天板313を連結板33に接続することで、フィルターユニット31が連結板33に接続され、連結板33を介して複数のフィルターユニット31が接続されるようにしてもよい。
【0298】
[6 第5実施形態]
本発明の第5実施形態について、
図39から
図42に基づいて説明する。なお、第4実施形態と同一となる部分については説明を省略する。
【0299】
本実施形態は空気清浄機、掃除機、車のエアクリーナーなどに使用するフィルターを提供することを目的としたものであり、第4実施形態のように複数のフィルターユニットを組み合わせることなく、
図39に示すように、直径100mm、高さ100mmの円筒形に形成された単一のフィルターユニット31Aから構成されている。
【0300】
[(1) 構成の説明]
まず、本実施形態に係るフィルターユニット31Aの構成について説明する。
図39においては、7個の袋状フィルター311を内部に備える場合について図示しているが、袋状フィルター311を備える個数はこれに限られない。
【0301】
[a 底板]
底板312Bは、
図39に示すように、全体が直径100mmの円板状となるように形成されている。また、図示しないが、底板312Bは、底板開口部3121が袋状フィルター311の個数に対応して7個形成され、第4実施形態と同様、底板開口部3121の周囲にリング状糊溝3122が形成されると共に、連結糊溝3123及び糊注入部3124も設けられている。
【0302】
[b 天板]
天板313Aは、
図39に示すように、全体が直径100mmの円板状となるように形成されている。
天板313Aは、
図39に示すように、枠部3131Aが平面視円形となるように形成され、その内側に7個の袋底部収納部3132が備えられ、袋底部収納部3132同士及び袋底部収納部3132と枠部3131Aとが、連結部3133によって接続されている。また、これらの間に天板開口部3134が形成されている。
【0303】
[c 側板]
側板3010は、
図39に示すように、それぞれ半円筒形に形成され、二つ組み合わせることで円筒形となるように形成されている。
側板3010の内面には、
図40に示すように、水平方向に延在する溝が、上部、中部、下部の3か所に形成されている。上部の溝を上部嵌め込み溝30101、中央部の溝を中央部嵌め込み溝30102、下部の溝を下部嵌め込み溝30103とする。
【0304】
上部嵌め込み溝30101は、
図40に示すように側板3010の上部に形成された、天板313Aを嵌め込み固定するための溝である。
下部嵌め込み溝30103は、
図40に示すように側板3010の下部に形成された、底板312Bを嵌め込み固定するための溝である。
中央部嵌め込み溝30102は、
図40に示すように側板3010の上下方向中央部に形成された、後述のように熱成形時に一時的に天板313Aを嵌め込み固定するための溝である。
【0305】
このような側板3010によって底板312Bと天板313Aとが接続されることから、本実施形態に係るフィルターユニット31Aは、底板312Bと天板313Aとの間に、連結棒314を有しない。
【0306】
連結棒314に代えて、側板3010によって底板312Bと天板313Aとが接続されるようにすることで、フィルターユニット31Aの側面が覆われ、内部の袋状フィルター311を保護することができる。
【0307】
なお、側板3010の分割数は二つには限られず、例えば1つの円筒から構成されるようにしてもよいし、3つ以上に分割されるようにしてもよい。
【0308】
[d 外層フィルム]
外層フィルム3020は、側板3010の外面に、二つの側板3010に亘るように貼付されたフィルムであり、外層フィルム3020によって、二つの側板3010が一体化されている。
図39においては外層フィルム3020が透明であり、二つの側板3010の外面の全体を覆う場合について図示しているが、外層フィルムの構成は、二つの側板3010を隙間なく一体化させることができるものであればよい。
【0309】
[(2) 製造方法の説明]
続いて、本実施形態に係るフィルターユニット31Aの製造方法について説明する。
【0310】
底融着済円筒濾紙の製造手順やフィルターユニットの製造手順の手順3(天板の接続)までは第4実施形態と同様である。また製造装置についても、円筒形のフィルターユニット31Aに対応した形状となる点を除いて、第4実施形態と同様である。
【0311】
手順4(接着封止と圧縮成形)においては、底板312Bを下部嵌め込み溝30103に嵌め込み、天板313Aを中央部嵌め込み溝30102に嵌め込むようにして、二つの側板3010を底板312B及び天板313Aを両側から包み込むようにして取り付ける。
【0312】
上記のようにして袋状フィルター311、底板312B、天板313A及び側板3010が一体化したものを、第4実施形態の手順5で説明したのと同様に熱成形炉に投入して熱成形した後、天板313Aの取り付け位置を変更して、
図40に示すように、天板313Bが上部嵌め込み溝30101に取り付けられるようにする。
【0313】
なお、
図40に示す状態において、底板312Bの側部が、気密性を保つガスケットとして機能する。また、底板312Bと側板3010との間に十分な気密性を持たせれば、側板3010もガスケットとして機能する。
【0314】
上記の状態で、二つの側板3010の外面に、二つの側板3010に亘るように外層フィルム3020を貼って二つの側板3010を一体化させることで、円筒型のフィルターユニット31Aが完成する。
なお、フィルターユニットの外観は用途等に応じて変更することができ、円筒型には限られない。例えば、角筒型等でもよい。
【0315】
[(3) 変形例]
続いて、本実施形態の変形例について説明する。
【0316】
[a 第1変形例:液体用への変更]
本実施形態に係るフィルターユニットを、パイプ中に設置して液体を濾過するために使用できるようにしてもよい。
【0317】
この場合、パイプ中に設置可能とするため、
図41に示すように、フィルターユニット31Bを細長く形成する。具体的には、底板312C及び天板313Bの直径が50mm、高さ(長さ)が1000mmとなる円筒状とすることが好ましい。
【0318】
また、この場合、内部の袋状フィルター311が非常に細長くなることから、使用中に形状が崩れるおそれがあるため、これを防止するため、袋状フィルターを支えるリテーナー板3030が追加されている。
【0319】
リテーナー板3030は、
図42(a)に示すように、袋状フィルター311を通すことで各袋状フィルター311の位置を規制するリング状の部材である規制部30301を有する開口度の大きい部材であり、平面視において外径が側板3010Aの内径と略一致する円形となり、
図42(b)に示すように、水平方向から見た際に薄い板状となる部材である。
リテーナー板3030は、規制部30301の他に、円形の外枠を形成する外枠部30302と、規制部30301同士及び規制部30301と外枠部30302とを接続する接続部30303と、を備え、側板3010A内に固定することができるように構成されている。
【0320】
リテーナー板3030は、例えば、押出成形により製造した長尺な柱状の部材を、5mm程度の幅で切断して板状とすることにより容易に製造することができる。
【0321】
リテーナー板3030は、
図41に示すように、側板3010Aで覆われたフィルターユニット31Aの底板312Cと天板313Bとの間の部分に、間隔を空けて所定個数(
図41においては3個)備えられる。
リテーナー板3030は、フィルターユニット31Bの高さ(長さ)方向の幅が5mm程度あるが、これによって液体の流れを大きく妨げることはない。
【0322】
このようなフィルターユニット31Bは、内径が底板312C及び天板313Bと略一致するパイプ中に隙間なく収納した上で、例えば、底板312C側から天板313B側へと流れるように液体を流すことで、当該液体を効率的に濾過することができる。
【0323】
フィルターユニット31Bの製造時には、天板313Bを側板3010Aに取り付ける前に、必要数のリテーナー板3030を側板3010A内に入れておく。
袋状フィルター311の圧縮された濾過面3113を取り囲むように配置される規制部30301の内径が、濾過面3113の外径より一定程度大きくなるようにすれば、リテーナー板3030が存在する状態で袋状フィルター311の圧縮成形を行っても、リテーナー板3030が圧縮成形の妨げになることはない。
熱成形後の最終工程において、天板313Bを上部嵌め込み溝30101に取り付けると共に、各リテーナー板3030を
図41に示すように適正位置に移動させ、固定する。
【0324】
なお、必要に応じ、リテーナー板3030と、袋状フィルター311の規制部30301に通された部分とを、接着剤などで固定するようにしてもよい。
【0325】
なお、リテーナー板については、本変形例に限らず、リテーナー板について記載されていない他の実施形態、他の変形例においても、必要に応じて追加することが可能である。
【0326】
[b 第2変形例:袋状フィルターの濾紙の調整]
例えば第1変形例のように、袋状フィルター311の長さが長くなる場合、使用時の流量や圧力によっては、袋状フィルター311の濾過面3113の両端部(開口部3112付近及び底部3111付近)で流量に大きな差が生じることがある。このように流量に差が生じることは、袋状フィルター311中の位置によって粒子捕捉率に差を生じさせることとなり、好ましくない。
【0327】
そこで、袋状フィルター311の濾過面3113について、長さ方向で濾紙の使用枚数や厚みが異なるようにする(すなわち、濾過対象とする流体が流入する開口部3112付近において、開口部3112から離れた底部3111付近と比べて、例えば、重ねられた濾紙の枚数を多くするか、使用する濾紙を厚くすることで、濾紙が厚くなるようにする)ことにより、流量の差を縮小し、粒子捕捉率の差を縮小するようにしてもよい。
【0328】
[7 第6実施形態]
本発明の第6実施形態について、
図43から
図45に基づいて説明する。なお、第4実施形態と同一となる部分については説明を省略する。
【0329】
本実施形態は形状変更可能な底板(フレキシブル底板)を使用したマスク用のフィルターに関するものである。
【0330】
[(1) 構成の説明]
まず、本実施形態に係るマスク4の構成について説明する。マスク4は、フィルターユニット31Cに、左右一対の耳掛け紐41を備えて構成されている。
【0331】
フィルターユニット31Cは、底板312Dが、着用者の鼻及び口を覆うマスクの形状に形成されている。また、底板312Dは、例えば、板厚0.2mmのポリプロピレンシート等を用いて真空成形することで、薄くしなやかで折り曲げ可能となるように形成されている。
【0332】
また、第4実施形態の第2変形例等と同様に、底板開口部3121の周囲に内リング3126Aを備え、内リング3126Aに外リング315Aを嵌めることで、袋状フィルター311Aが底板312Dに固定されている。
また、袋状フィルター311Aは、高さが低く、20mm未満となるように形成されている。
【0333】
内リング3126Aは、
図44に示すように下部が傾斜した円筒状に形成され、外リング315Aもこれに対応して傾斜した形状となるように形成されている。
外リング315Aは、例えば、板厚0.1mmのポリプロピレンシート等を用いて真空成形することで形成すればよい。
【0334】
また、フィルターユニット31Cは、天板を有せず、
図43に示すように、全袋状フィルター311Aをまとめて、通気性のよい不織布等から形成された天板布3040で覆っている。
また、連結棒314を使用することなく、天板布3040は、
図45に示すように、複数箇所で底板312Dに点状に融着することで、直接固定されている。当該固定部を点状融着部3050とする。
【0335】
また、フィルターユニット31Cは、上記のように袋状フィルター311Aの高さを低くすることにより、高さ(厚み)が20mm程度となるように形成されている。
【0336】
耳掛け紐41としては、特に限定されず、一般のマスクに使用されるような伸縮性を有する紐状の部材を用いればよい。
【0337】
[(2) 効果の説明]
このようなマスク4によれば、平面状のフィルターを使用していた従来のマスクと比較して、大幅にフィルターの面積を拡大できる。具体的には、厚さが20mm程度であれば、容易に10倍以上の表面積を実現できる。
【0338】
また、底板312Dは板厚が0.2mmのポリプロピレンシート等を用いて形状変更可能に形成され、天板布3040も不織布であることから、容易に折り曲げたり歪めたりすることができる。
【0339】
[(3) 製造方法の説明]
続いて、本実施形態に係るフィルターユニット31Cの製造方法について説明する。
【0340】
[手順1]
底板312Dを載せたテーブルを成形装置300Aにセットする。なお、成形装置300Aは、多数の成形柱320Aを備え、成形柱320Aは、高さが60mmであり、下端部が外側に広がるように傾斜している。
【0341】
[手順2]
一括筒袋セット装置400で、1つのフィルターユニット31C分の筒袋濾紙C3(圧縮されていない状態の袋状フィルター311A)を、一括して成形装置300Aにセットする。
【0342】
[手順3]
外リング315Aが複数連結された外リング連結板をセットし、各筒袋濾紙C3の下端部付近を、
図44に示すように内リング3126Aと外リング315Aとの間に挟み込む。
【0343】
[手順4]
超音波溶着装置を用いて、内リング3126Aの傾斜部分と、筒袋濾紙C3の下端部付近と、外リング315Aの傾斜部分と、を溶着させる。
なお、成形装置300Aの成形柱320Aが短いことから、
図44に示すように、成形柱320Aの根元の傾斜部分を台座として上から超音波溶着装置のホーン700を当てるようにして融着することが可能である。
【0344】
[手順5]
成形柱320Aにストッパー板を圧接固定する。
【0345】
[手順6]
上下スライド装置でテーブルを上げ、筒袋濾紙C3を圧縮成形する。
【0346】
[手順7]
連結具で左右両側からストッパー板とテーブルとを挟むことでストッパー板とテーブルとを連結する。
【0347】
[手順8]
連結具及びストッパー板を取り付けた状態のまま熱成形炉に投入する。
【0348】
[手順9]
連結具とストッパー板とを外し、圧縮された筒袋濾紙C3、すなわち袋状フィルター311Aの上から、天板布3040を被せた上で、多点融着器を用いて、天板布3040の所定箇所を点状に底板312Dに融着させ、点状融着部3050を形成する。
【0349】
[8 第7実施形態]
本発明の第7実施形態について、
図46から
図49に基づいて説明する。なお、第4実施形態と同一となる部分については説明を省略する。
【0350】
本実施形態は各種ユニットや製品に使用する、多目的、多用途のフィルターモジュールとしてのフィルターユニット31D及びその量産方法に関するものである。
【0351】
[(1) 構成の説明]
本実施形態に係るフィルターユニット31Dは、
図46に示すように、単一の袋状フィルター311Bが硬質な材料によって筒状に形成された接続体3060に接続されたものである。
この場合、袋状フィルター311Bは、
図46に示すように、長細い円筒状に形成され、濾過面3113Aが圧縮され、圧縮された濾過面3113Aには、圧縮された状態で濾過面3113Aを形成する濾紙が線状に溶着された線状溶着部31131が形成されている。
【0352】
また、接続体3060は、円筒状に形成された内部円筒30602と、内径が内部円筒30602の外径と略同一となる円筒状に形成された外部円筒30601とを備え、内部円筒30602と外部円筒30601との間に袋状フィルター311Bの開口部3112の周囲の部分を挟むようにして、袋状フィルター311Bが接続体3060に固定されている。
【0353】
[(2) 製造方法の説明]
続いて、本実施形態に係るフィルターユニット31Dの製造方法について説明する。
【0354】
[a 製造に必要な装置]
まず、フィルターユニット31Dの製造に必要となる装置について説明する。
【0355】
[(a) 台座移動装置]
台座を次の加工ポジションに移動するコンベアのような装置である。
【0356】
[(b) 成形柱付台座
板状の台座の中央にアルミ製の成形柱320が1本立ったものである。
【0357】
[(c) 接続体差込機]
第1の加工ポジションに備えられている。
【0358】
[(d) 筒袋濾紙差込機]
第2の加工ポジションに備えられている。
【0359】
[(e) 差込圧入機]
第3の加工ポジションに備えられている。
【0360】
[(f) 上端固定機]
第4の加工ポジションに備えられている。
【0361】
[(g) 上下スライダー]
第4の加工ポジションに備えられている。
【0362】
[(h) 超音波線状溶着機]
第4の加工ポジションに備えられている。
【0363】
[(i) 取り出し機]
第5の加工ポジションに備えられている。
【0364】
[b 製造手順]
以下、上記各装置を用いて、本実施形態に係るフィルターユニット31Dを製造する際の製造手順について説明する。フィルターユニット31Dは、台座移動装置によって台座を第1の加工ポジションから第5の加工ポジションに移動させながら、連続して製造される。
【0365】
[手順1]
接続体差込機により成形柱付台座の成形柱に接続体3060の内部円筒30602を差し込む。
【0366】
[手順2]
筒袋濾紙差込機により、筒袋濾紙C3(圧縮されていない状態の袋状フィルター311B)を、成形柱付台座の成形柱に差し込み、接続体3060の内部円筒30602が濾紙で覆われた状態とする。
【0367】
[手順3]
差込圧入機により外部円筒30601を成形柱付台座の成形柱に差し込み、内部円筒30602が外部円筒30601の内側に位置し、これらの間に筒袋濾紙C3の下端部の縁が位置するように圧入する。
【0368】
[手順4]
上端固定機が、成形柱付台座の成形柱の上端に筒袋濾紙C3の上端部(袋状フィルター311Bの底部3111に対応する部分)を押し付けた後、上下スライダーにより接続体3060を上方に移動させることで、筒袋濾紙C3を上下に圧縮した後、左右の超音波線状溶着機が圧縮された筒袋濾紙(圧縮筒袋濾紙C4)の側面の対向する位置を上下に延在する線状に溶着し、線状溶着部31131を形成する。
【0369】
[手順5]
作製されたフィルターユニット31Dを、成形柱付台座の成形柱から取り外す。
【0370】
[(3) 効果の説明]
本実施形態に係るフィルターユニット31Dによれば、袋状フィルター311Bの濾過面3113Aの対向する位置に線状溶着部31131が形成されていることから、フィルターユニット31Dの使用中に圧縮された濾過面3113Aが伸びて長さが変わってしまうことを防止できる。
【0371】
なお、線状溶着部31131の形成数は、必ずしも上記のように対向する位置に2本形成される場合に限定されるわけではないが、このような配置が最も好ましい。
【0372】
線状溶着部31131の形成数による袋状フィルターの特性の違いは、以下のとおりである。
0本:どの方向にも曲げ易く、伸縮させ易い。
1本:上下何れかの端部に形成した場合、上下方向に丸まり易い。
2本(対向する位置):特定の方向(例えば左右両端部の対向する位置に線状溶着部31131を形成した場合の前後方向)に曲げ易く、特定の方向(例えば左右両端部の対向する位置に線状溶着部31131を形成した場合の左右方向)に曲げ難い。
3本以上(等間隔):曲げ難い。
【0373】
[(4) 変形例]
続いて、本実施形態の変形例について説明する。
【0374】
[a 第1変形例:圧縮成形に外筒を使用]
上記製造方法の説明における圧縮成形時(手順4)に、
図47に示すように成形柱320に被せられた筒袋濾紙C3の周囲を、円筒形の筒状の部材である外筒800で覆った上で、圧縮成形を行うようにしてもよい。
【0375】
外筒800は、
図47に示すよう、に成形柱320に被せられた筒袋濾紙C3の周囲を覆うことができるように、成形柱320の外径、筒袋濾紙C3の直径、濾紙の厚さ、圧縮後の圧縮度等に応じて、適宜最適な内径を有するものを使用する。
【0376】
外筒800によって圧縮空間を制限する事により、圧縮により形成されるセルの均一性を向上させることができる。
【0377】
[b 第2変形例:圧縮成形に圧縮用ローラーを使用]
手順4で接続体3060を上方に移動させることにより圧縮成形する代わりに、
図48に示すように、筒袋濾紙C3を形成する濾紙を成形柱320に押し付けながら回転するローラー900を用いて、筒袋濾紙C3を圧縮してもよい。この場合、筒袋濾紙C3の上端部をストッパー910で押さえながらローラー900を回転させて圧縮を行う。
この場合も、圧縮により形成されるセルの均一性を向上させることができる。
【0378】
[c 第3変形例:成形柱を使用しない圧縮]
いずれの実施形態においても、袋状フィルターの濾過面の圧縮に成形柱を使用する場合について説明したが、成形柱を使用する方法では、袋状フィルターの長さが長くなるほどに使用する成形柱も長くなってしまい、一定以上の長さの袋状フィルターの圧縮には支障が生じる可能性がある。例えば、圧縮後の長さが1mの袋状フィルターを製造する場合、使用する成形柱の長さは3m程度となってしまう。
【0379】
そこで、袋状フィルターの長さが長い場合の圧縮を容易とするため。以下のようにして袋状フィルターを作製してもよい。
【0380】
具体的には、
図49に示すような製造装置1000を用いる。
【0381】
製造装置1000は、
図49に示すように、
図23に示した円筒濾紙高速製造装置200と同様の構成を有する円筒製造部1010(ただし、幅66mmのテープ状の濾紙を3mm強の重なりを設けつつ連続して丸めることで、直径20mmの円筒形の濾紙を作製するように変更されている。)と、円筒濾紙高速製造装置200の内筒230に相当する部分を前方に延長(延長部分を延長内筒1020とする。)し、延長内筒1020の送りローラー240の前方に位置する部分に抵抗部1030を備え、抵抗部1030の前に熱成形用ヒーターが配された熱成形部1040が備えられている。
【0382】
このような製造装置1000を用いることによって、送りローラー240が回転すると、幅66mmの濾紙テープが円筒製造部1010の後端に入り、直径20mmの筒状に成形され、溶着ローラー250で3mm強の重なった部分が接合され円筒状となる。
【0383】
円筒状となった後に、送りローラー240で前方に押し出された円筒状の濾紙(円筒濾紙C1)は、抵抗部1030で圧縮された後に、熱成形部1040に入り、圧縮の折り目が固定されることで、濾過面が圧縮された袋状フィルターが完成する。
【0384】
[9 第8実施形態]
本発明の第8実施形態について、
図50から
図53に基づいて説明する。なお、第4実施形態と同一となる部分については説明を省略する。
【0385】
本実施形態に係るフィルターユニット31Eは、第4実施形態に係る製造方法について、成形柱に被せられた袋状フィルターを圧縮するのではなく、予め圧縮された袋状フィルターを用い、圧縮関連の工程が不要となるようにしたものである。
なお、袋状フィルターとしては、上下方向に圧縮された濾過面3113Bを有し、線状溶着部31131が120°間隔で3本形成された袋状フィルター311Cを用いる。袋状フィルター311Cは、このように線状溶着部31131が3本形成されていることで、曲がり難くなる。
【0386】
[(1) 構成の説明]
本実施形態に係るフィルターユニット31Eは、
図50(d)に示すように、以下の部材から構成されている。
【0387】
袋状フィルター311C:上記の通り予め圧縮されたもの。なお、最終的な製品時よりも圧縮されて短く構成されている。製品時には少し伸ばされることとなる。
【0388】
底板312:第4実施形態と同様。ただし、リング状糊溝3122の溝幅が袋状フィルター311Cに対応して広くなっている。
【0389】
天板313:第4実施形態と同様。
【0390】
連結棒314:第4実施形態と同様。4本備える。
【0391】
第1接着剤:第4実施形態と同様。
【0392】
第2接着剤:第4実施形態と同様。
【0393】
[(2) 製造方法の説明]
続いて、本実施形態に係るフィルターユニット31Eの製造方法について説明する。
【0394】
[a 製造に必要な装置]
まず、フィルターユニット31Eの製造に必要となる装置について説明する。
【0395】
成形装置300B:
図50(a)に示すように、台板310と成形柱320Bとを備える。
成形柱320Bは、第4実施形態の成形装置300と比較して長さが短い。具体的には、袋状フィルター311Cが非圧縮の状態と比較して1/3の長さに圧縮済みであれば、成形柱320Bの長さも第4実施形態に係る成形柱320と比較して1/3でよい。
【0396】
一括圧縮筒袋セット装置:第4実施形態における一括筒袋セット装置400について、圧縮済みの袋状フィルター311Cをセットするようにしたもの。
【0397】
接着剤注入装置:第4実施形態と同様。
【0398】
[b 製造手順]
続いて、フィルターユニット31Eの製造手順について説明する。
【0399】
[手順1]
成形装置300Bに底板312をセットする(第4実施形態と同様)。
【0400】
[手順2]
成形柱320Bに袋状フィルター311Cをセットする。これによって
図50(b)に示す状態となる。
【0401】
[手順3]
天板313をセットし、連結棒314を打ち込む。なお、第4実施形態と同様、天板313には予め第2接着剤を塗布しておく。これによって、
図50(c)に示す状態となる。
なお、成形柱320Bの長さが短く、底板312と天板313との間隔が狭いことで、袋状フィルター311Cの下端部が確実にリング状糊溝3122に入るようにすることができる。
【0402】
[手順4]
第1接着剤を糊注入部3124に注入する。第1接着剤の注入タイミングは、第4実施形態と異なっている。
【0403】
[手順5]
第1接着剤が固化した後、成形装置300Bから取り外し、底板312の位置を下げて製品位置にする。これによって、
図50(d)に示す状態となる。このように底板312の位置を下げて袋状フィルター311Cを上下に伸ばすことによって、袋状フィルター311Cの濾過面3113Bに張力が加えられることとなり、濾過面3113Bの形状が崩れにくくなる。
【0404】
[(3) 変形例]
続いて、本実施形態の変形例について説明する。
【0405】
[a 第1変形例:天板の省略]
図51に示すフィルターユニット31Fのように、天板313を備えない構成としてもよい。
図51に示す天板313を備えないフィルターユニット31Fは、そのまま使用することもできるが、これを製造した上で、天板、側板等の部材を適宜追加することで、天板を備えるものや側板を備えるもの等、様々なフィルターユニットやフィルターを製造するために使用してもよい。
【0406】
[b 第2変形例:超ロング横置きフィルター]
本変形例は、大きな作業室の床などに据え付ける空気清浄機のフィルターとして使用することを想定したものである。
【0407】
[(a) 構成の説明]
本実施形態に係るフィルターユニット31Gは、
図52に示すように以下の部材から構成されている。
【0408】
袋状フィルター311D:直径100mm、長さ10m。
【0409】
底板312:第4実施形態と同様。フィルターユニット31Gが設置されて使用される際には、
図52に示すように設置面に対して垂直に立てられることとなる。また、底板312の袋状フィルター311Dが接続されたのと反対側に、ファンが収納されたファン部3080が取り付けられる。
【0410】
リテーナー板3030:第5実施形態の第1変形例と同様。袋状フィルター311Dに所定の間隔で多数設置する。
【0411】
リテーナー台3070:リテーナー板3030を設置面に対して垂直に立てるための台であり、
図52に示すように、リテーナー板3030と同数備えられ、リテーナー板3030の下方に設置される。
【0412】
第1接着剤:第4実施形態と同様。
【0413】
[(b) 製造方法の説明]
続いて、本実施形態に係るフィルターユニット31Gの製造方法について説明する。
【0414】
[製造に必要な装置]
まず、フィルターユニット31Gの製造に必要となる装置について説明する。
【0415】
成形装置:長さ50cm程度の成形柱を備える。また、リテーナー板3030の周囲を囲むようにして備えられ、後述のように積層されたリテーナー板3030の位置を定めるリテーナー板収納囲みを有する。
【0416】
接着剤注入装置:第4実施形態と同様。
【0417】
[製造手順]
続いて、フィルターユニット31Gの製造手順について説明する。
【0418】
[手順1]
成形装置に底板312をセットする。
【0419】
[手順2]
リテーナー板3030を、底板312上に、積層状態で必要数セットする。この際、リテーナー板3030が、リテーナー板収納囲みにより正規位置に積層されることで、成形柱の周囲に空隙ができることから、この後の袋状フィルター311Dのセット等の作業の妨げとなることを防止できる。
このように予めリテーナー板3030を入れておくことで、リテーナー板3030の取り付けが容易となる。
【0420】
[手順3]
袋状フィルター311Dを、下端部の縁が、底板312のリング状糊溝3122に入るように成形柱に被せる。
【0421】
[手順4]
第1接着剤を糊注入部3124に注入する。
【0422】
[(c) 設置方法の説明]
続いて、本実施形態に係るフィルターユニット31Gの使用開始前の設置方法について説明する。
まず、底板312が設置面に対して垂直となるように設置して、底板312にファン部3080を接続する。
続いて、所定の間隔(例えば1m間隔等)で配置したリテーナー台3070にリテーナー板3030を差し込み、袋状フィルター311Dが垂直に立ったリテーナー板3030によって保持された状態とする。
【0423】
[c 第3変形例:テープ状のフィルターユニットの連続生産]
本変形例は、テープ状に形成されたフィルターユニットを連続して生産するものである。
【0424】
[(a) 構成の説明]
本変形例に係るフィルターユニット31Hは、
図53に示すように、以下の部材から、長尺なテープ状となるように構成されている。
【0425】
底板シートテープ3090:幅100mm、厚さ0.3mmの樹脂又はアルミで形成された連続したテープ。第4実施形態に係る底板312と同様の底板開口部、リング状糊溝、連結糊溝、糊注入部が形成されている。
【0426】
袋状フィルター311E:濾過面が圧縮され、高さが低いもの。底板シートテープ3090の上面に、等間隔で多数列並ぶように配置されている。なお、底板シートテープの長さ方向において同一の位置となるように配置された袋状フィルター311Eを、「列」という。
【0427】
第1接着剤:第4実施形態と同様。
【0428】
[(b) 製造方法の説明]
続いて、本実施形態に係るフィルターユニット31Hの製造方法について説明する。
【0429】
[製造に必要な装置]
まず、フィルターユニット31Hの製造に必要となる装置について説明する。
【0430】
成形柱付きコンベア:成形柱が形成されたベルトコンベアである。
【0431】
1列筒袋セット装置:第4実施形態における一括筒袋セット装置400について、圧縮された袋状フィルター311Eを列ごとにセットするようにしたもの。
【0432】
接着剤注入装置:第4実施形態と同様。
【0433】
[製造手順]
続いて、フィルターユニット31Hの製造手順について説明する。以下の工程を一列分ずつ連続して行うことでテープ状のフィルターユニット31Hを連続して製造する。
【0434】
[手順1]
幅100mm、厚さ0.3mmの樹脂又はアルミで形成された連続したテープを加工して、底板シートテープ3090の底板開口部、リング状糊溝、連結糊溝、糊注入部を一列分形成する。
【0435】
[手順2]
手順1で形成された糊注入部に第1接着剤を注入する。
【0436】
[手順3]
手順1で形成された一列分の底板開口部に成形柱付コンベアに形成された成形柱が挿入される。
【0437】
[手順4]
一列分の底板開口部に挿入された成形柱に円筒濾紙C1を被せる。
【0438】
[手順5]
接着剤の硬化を待つ。
【0439】
[10 第4実施形態から第8実施形態に共通する変形例]
以下、上記第4実施形態から第8実施形態に共通する変形例について説明する。
【0440】
[(1) 袋状フィルターの用途・構成の変更]
各実施形態で使用した袋状フィルターは、説明したものの他、例えば以下のような様々な用途に使用することが可能である。
【0441】
[a 各種用途のフィルターモジュールとしての使用]
接続体を取り付けることで、各種用途のフィルターのモジュールとしてもよい。
【0442】
[b 服内部での使用]
防護服などの空気流通性の低い生地で形成された服の内側に配して、服内部に清浄な空気を流通させるために使用してもよい。
【0443】
[c 狭所用空気清浄機での使用]
図54に示すフィルターユニット31Iのように、細長い袋状フィルター311Fがファン22が収納された接続体21Dに取り付けられるようにし、空気清浄機に使用する外部に露出した長さの長いフィルターとして、細長い場所、狭い場所、入り組んだ場所に配置して使用してもよい。
【0444】
[d クリーンルームでの使用]
第4実施形態以外のフィルターユニットについても、クリーンルーム用の高性能フィルターとして使用してもよい。この場合、例えば、天井や床下等に敷き詰めるようにして使用すればよい。
【0445】
[e 容器の蓋としての使用]
袋状フィルターを円筒型の容器の長さの長い蓋として使用し、当該容器を、容器内の食品、医薬品、化学製品等の保存、発酵熟成中の食品等の熟成のために使用してもよい。
袋状フィルターの濾紙を通して空気や水蒸気分子の出入りは十分に可能だが、面積の大きい袋状フィルターによってウイルス等の侵入を防ぐことができる。
【0446】
[f その他の用途]
その他、従来の技術では実現不可能であった細長いフレキシブルなフィルターや、従来の技術では製造費用等の問題により事実上不可能だった超高性能なフィルターの製造が可能になることから、このようなフィルターを使用することで、従来実現不可能だった各種製品の製造が可能となる
【0447】
なお、
図55に示すように、袋状フィルターの製造に使用する製造装置1000Aを、延長内筒1020Aが曲がった形状となり、当該部分に熱成形部1040Aを設けることにより、円筒濾紙C1を丸めて熱成形することができるようにし、熱成形後の袋状フィルターをとぐろ状や渦巻き状に形成できるようにしてもよい。これによって、袋状フィルターを、設置場所が狭い場合にも使用し易くすることができる。
【0448】
また、いずれの実施形態の袋状フィルターについても、圧縮を固定するための手段として、熱成形の代わりに第7実施形態で説明したのと同様の線状溶着部によって圧縮状態を固定してもよいし、熱成形と線状溶着部とを併用してもよい。
【0449】
[(2) 筒状フィルターへの変更]
第1実施形態から第3実施形態について述べたのと同様、第4実施形態から第8実施形態についても、開口部を下端部に一つのみ有し、内部に当該開口部へと繋がる空間が形成される袋状のフィルターを用いる場合について説明したが、いずれの実施形態についても、このような袋状のフィルターに代えて、対向する位置(上端部及び下端部)に配置された二つの開口部を有する筒状フィルターを用いてもよい。
【0450】
このような筒状フィルターを使用する場合、上端部の開口部を板状の部材を取り付けて塞げば、上記各実施形態において説明したのと同様にして使用することができる。
例えば、天板を、筒状フィルターの上端部の開口部を塞ぐことができる形状に形成し、天板の取り付けによって袋状フィルターの上端部の開口部が塞がれるようにすればよい。
無論、両端部ともに開口部として使用してもよく、この場合、例えば、筒状フィルターの両端部からファンによって流体を排出することで筒状フィルター内を陰圧とし、又は筒状フィルターの両端部からファンによって流体を導入することで筒状フィルター内を陽圧として使用する。
この場合、筒状フィルターの上下方向の中間部では流体の流れが生じなくなることから、流体の流れの点では、当該部分が袋状フィルターにおける底部と同様の状態となる。
【0451】
[(3) 組フィルターへの変更]
第4実施形態から第8実施形態においては、第4実施形態のみ複数のフィルターユニットを接続して組フィルターとする場合について説明したが、第5実施形態から第8実施形態で説明したフィルターユニットを複数接続して組フィルターとすることも可能である。
【0452】
[(4) 用途の変更]
例えば第4実施形態におけるクリーンルーム用等の用途の記載は例示に過ぎず、その他各実施形態に記載のフィルターに適した各種用途に使用することができる。
【0453】
[(5) 第1実施形態から第3実施形態の構成の取込み]
第1実施形態から第3実施形態で述べた袋状フィルター等に関する各構成について、各実施形態の目的に反しない範囲で、第4実施形態から第8実施形態に適用することも可能である。
また、反対に、第4実施形態から第8実施形態で述べた袋状フィルター等に関する各構成について、各実施形態の目的に反しない範囲で、第1実施形態から第3実施形態に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0454】
100 防護具
1 防護具本体
2、2A、2B 濾過送風装置(フィルターユニット)
21、21A、21B、21C、21D 接続体(フィルター取付部材)
211、211A 空気取込孔(流通孔)
212、212A 空気送出孔(流通孔)
213、213A ファン収納部
214、214A、214B 封止対応部
22 ファン
23、23A、23B、23C、23D、23E、23F 袋状フィルター
231、231A 底部
232、232A 開口部
233、233A、233B 封止部
2331 封止板
234、234A、234B、234C、234D、234E 濾過面
235 シール片
236 形状保持布
24 ゴムベルト(リング状部材)
3 組フィルター
31、31A、31B、31C、31D、31E、31F、31G、31H、31I フィルターユニット
311、311A、311B、311C、311D、311E、311F 袋状フィルター
3111 底部
3112 開口部
3113、3113A、3113B 濾過面
31131 線状溶着部(溶着部)
312、312A、312B、312C、312D 底板(フィルター取付部材)
3121 底板開口部(流通孔)
3122 リング状糊溝(溝部)
3126、3126A 内リング
313、313A、313B 天板
3132 袋底部収納部(フィルター接続部)
3134 天板開口部
314 連結棒
315、315A 外リング
318 外リング連結板
319 紐
3010、3010A 側板
30101 上部嵌め込み溝(溝)
30102 中央部嵌め込み溝(溝)
30103 下部嵌め込み溝(溝)
3030 リテーナー板
30301 規制部
3040 天板布
3060 接続体
3070 リテーナー台
3090 底板シートテープ
33 連結板
4 マスク
41 耳掛け紐
300、300A、300B 成形装置
320、320A、320B 成形柱
800 外筒
T1 第1接着テープ(テープ)
T2 第2接着テープ(テープ)