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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061343
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】芯出し部材
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/053 20060101AFI20230424BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
B23K37/053 F
B23K37/053 A
F16L1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015931
(22)【出願日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2021170724
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000231877
【氏名又は名称】日本鋳鉄管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】松島 誠二
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】畑 信行
(57)【要約】
【課題】第2の管と第1の管の芯出しを容易に行うことができると共に、作業員の熟練度に左右されずに掘削溝内での作業時間を短縮することができる芯出し部材を提供する。
【解決手段】第1の管と、前記第1の管が内径部に挿入されると共に、前記第1の管の挿入部の外径よりも大きく形成された拡径部が形成された第2の管との接合に用いられる芯出し部材であって、第1の管に固定される固定部と、前記固定部に取り付けられ、前記第1の管の一端から第2の管の方向に突出するアーム部と、前記アーム部に設けられ、前記拡径部に当接する当接部と、を備え、前記当接部は、前記拡径部と当接する当接部分と、前記拡径部の端部からはみ出して配置される挿入代部分とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の管と、前記第1の管が内径部に挿入されると共に、前記第1の管の挿入部の外径よりも大きく形成された拡径部が形成された第2の管との接合に用いられる芯出し部材であって、
第1の管に固定される固定部と、
前記固定部に取り付けられ、前記第1の管の一端から第2の管の方向に突出するアーム部と、
前記アーム部に設けられ、前記拡径部に当接する当接部と、
を備え、
前記当接部は、前記拡径部と当接する当接部分と、前記拡径部の端部からはみ出して配置される挿入代部分とを備えることを特徴とする芯出し部材。
【請求項2】
請求項1に記載の芯出し部材において、
前記アーム部の一端は、前記固定部に着脱自在に取り付けられる着脱部を備えることを特徴とする芯出し部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の芯出し部材において、
前記アーム部は、前記第1の管又は第2の管の長手方向に沿って略平行に延びる一対の腕部を備えることを特徴とする芯出し部材。
【請求項4】
請求項3に記載の芯出し部材において、
前記腕部は、所定の空隙を有して互いに配置されることを特徴とする芯出し部材。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の芯出し部材において、
前記当接部は、前記一対の腕部のそれぞれから互いに離間する方向に延設することを特徴とする芯出し部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の芯出し部材において、
前記当接部は、前記拡径部に当接する羽部材を有し、
前記羽部材は、前記拡径部に対して近接・離間可能に調整される調整手段を有することを特徴とする芯出し部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管部材の組み立て、特に鋳鉄管同士の接合を行う際に用いられる芯出し部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道管などを埋設する工法として、種々の工法が知られており、開削工法や推進工法などが実施されている。
【0003】
開削工法は、地盤を直接掘削して掘削溝を掘削し、掘削溝内に基礎等を形成して新設管となる複数の管を設置し、複数の管を互いに接合して敷設する工法である。
【0004】
敷設する複数の管のうち、一方の管の挿し口を他方の管の受け口に嵌め込む際、新設管の円滑な敷設のために、管同士の芯出し位置決め作業を行う必要がある。
【0005】
この芯出し位置決め作業は、一方の管は掘削溝の外部からユニックなどのクレーンで吊った状態で掘削溝内に落とし込み、敷設済みの他方の管と新設の一方の管との芯出し、および一方の管の姿勢補助を掘削溝内の作業員とクレーンの操作員とで共同して人力補助によって行っていた。
【0006】
しかし、この人力補助での接合管の芯出し位置決めは、掘削溝内での作業時間が多くなると共に、作業に必要な人数も多くなってしまうため、作業工数の抑制が難しいことから、芯出し位置決め作業を容易に行うことができる手法が求められていた。また、作業員の目視での作業が必要となり、さらに管を吊った状態で芯出しの位置を保持しなければならないため、作業員の熟練度も要求され、容易に芯出し位置決め作業を行うことができないという問題もあった。
【0007】
ここで、管部材の芯出し構造は種々の構造が知られており、例えば、特許文献1に記載されているように、2つの接続すべき鋼管の一方の鋼管の対向端部の外周に着脱可能に装着できるようにするため、複数個に分割された弧状部材を結合手段で結合させて形成したリング状をなす治具本体と、治具本体に設けられ他方の鋼管に向けて延出するようにした複数の腕片と、各腕片の先端部に螺合させ鋼管の中心軸線に向け進退操作できるようにしたねじ調整棒とから成り、複数のねじ調整棒の先端で他方の鋼管の外周面を押圧させ、2つの鋼管の中心軸線を合致させるようにした構造が知られている。
【0008】
このような芯出し構造によれば、鋼管にエレクションピースを溶接することを必要としないので、鋼管の溶接接合作業においてその作業能率が著しく高められ、また、鋼管の溶接接合において品質の向上が計れるなどの効果を奏する。更に、本発明の芯出し治具は、同一のものを繰り返えし使用できるので、鋼管の溶接接合作業においてコストの削減を計るに極めて有利であるという効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-263292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の芯出し構造は、接合端部を互いに溶接するために芯出しを行う方式であるため、鋼管の対向部分の外径は同一である。これに対して、ダクタイル鋳鉄管などが用いられる接合管は、敷設済みの他方の管の受け口に一方の管の挿し口を管軸方向に移動させることにより挿入するため、受け口と挿し口の外径が異なることによって、従来の芯出し構造を適用することができないという問題があった。
【0011】
また、開削工法は、上述したように、掘削溝内にクレーンなどで新設管を吊り下げて作業するため、掘削溝内での作業時間を短縮させることを目的として、後から敷設する一方の管を掘削溝内に下ろすだけで敷設済みの他方の管と一方の管の芯出し位置決め作業を容易に行うことが求められていた。
【0012】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてされた発明であり、敷設済みの他方の管と一方の管の芯出しを容易に行うことができると共に、作業員の熟練度に左右されずに掘削溝内での作業時間を短縮することができる芯出し部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る芯出し部材は、第1の管と、前記第1の管が内径部に挿入されると共に、前記第1の管の挿入部の外径よりも大きく形成された拡径部が形成された第2の管との接合に用いられる芯出し部材であって、第1の管に固定される固定部と、前記固定部に取り付けられ、前記第1の管の一端から第2の管の方向に突出するアーム部と、前記アーム部に設けられ、前記拡径部に当接する当接部と、を備え、前記当接部は、前記拡径部と当接する当接部分と、前記拡径部の端部からはみ出して配置される挿入代部分とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る芯出し部材において、前記アーム部の一端は、前記固定部に着脱自在に取り付けられる着脱部を備えると好適である。
【0015】
また、本発明に係る芯出し部材において、前記アーム部は、前記第1の管又は第2の管の長手方向に沿って略平行に延びる一対の腕部を備えると好適である。
【0016】
また、本発明に係る芯出し部材において、前記腕部は、所定の空隙を有して互いに配置されると好適である。
【0017】
また、本発明に係る芯出し部材において、前記当接部は、前記一対の腕部のそれぞれから互いに離間する方向に延設すると好適である。
【0018】
また、本発明に係る芯出し部材において、前記当接部は、前記拡径部に当接する羽部材を有し、前記羽部材は、前記拡径部に対して近接・離間可能に調整される調整手段を有すると好適である。
【0019】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る芯出し部材は、第1の管に取付けられる固定部に取付けられ、第1の管の一端から第2の管の方向に突出するアーム部と、アーム部に設けられ、第1の管の拡径部に当接する当接部と、を備え、当接部は、拡径部と当接する当接部分と、拡径部の端部からはみ出して配置される挿入代部分とを備えるので、第1の管の受け口と、第2の管の挿し口の外径が互いに異なる場合であっても、芯出し位置決め作業を容易に行うことができ、アーム部の当接部を第1の管の拡径部に当接させるだけで第1の管と第2の管の芯出しを行うことができ、その状態を保持することが可能となるので、作業員の熟練度に依ることなく、掘削溝内での作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】開削工法に用いる新設管の概要を示す斜視図。
図2】本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材の斜視図。
図3】本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材の固定部の斜視図。
図4】本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材のアーム部の斜視図。
図5】本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材の側面図。
図6】本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材と共に用いられる反力部材であって、(a)は取付状態を示す図、(b)は分割片を開いた状態を示す図。
図7】本発明の第1の実施形態に係る接合部材の斜視図。
図8】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材を用いた接合方法を説明する斜視図、(b)は接合方法に用いる接合部材の変形例を示す斜視図。
図9】本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材を用いた接合方法のフロー図。
図10】本発明の第2の実施形態に係る芯出し部材のアーム部の斜視図。
図11】本発明の第2の実施形態に係る芯出し部材の固定部の斜視図。
図12】本発明の第2の実施形態に係る芯出し部材の固定部の変形例を示す斜視図。
図13】本発明の第2の実施形態に係る芯出し部材と共に用いられる反力部材の斜視図。
図14】本発明の第2の実施形態に係る芯出し部材と伴い用いられる反力部材の斜視図。
図15】本発明の第2の実施形態に係る芯出し部材を用いた接合方法を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
[第1の実施形態]
図1は、開削工法に用いる新設管の概要を示す斜視図であり、図2は、本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材の斜視図であり、図3は、本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材の固定部の斜視図であり、図4は、本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材のアーム部の斜視図であり、図5は、本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材の側面図であり、図6は、本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材と共に用いられる反力部材であって、(a)は取付状態を示す図、(b)は分割片を開いた状態を示す図であり、図7は、本発明の第1の実施形態に係る接合部材の斜視図であり、図8(a)は、本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材を用いた接合方法を説明する斜視図、(b)は接合方法に用いる接合部材の変形例を示す斜視図であり、図9は、本発明の第1の実施形態に係る芯出し部材を用いた接合方法のフロー図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る芯出し部材10を用いて敷設される新設管(第2の管1及び第1の管2)は、所定の長さを有する中空の鉄管部材であり、ダクタイル鉄管が好適に用いられる。第2の管1及び第1の管2は、先端側に挿し口4となる挿入部が形成されると共に、基端側に受け口3aが形成され、挿入部よりも外径が大きく形成された拡径部3が形成されている。
【0025】
第2の管1及び第1の管2は、敷設済みの第2の管1の受け口3a内に第1の管2の挿し口4を嵌め込むことによって互いに接合される。受け口3aと挿し口4との間には、図示しないシール用ゴム輪と抜け出し防止用のロックリングとが設けられている。挿し口4を受け口3a内に挿入すると、挿し口4の先端と受け口3aとはシール用ゴム輪が密着して、隙間は、形成されない。なお、第1の管2の挿入に伴って第2の管1の受け口3aに取り付けられたシール用ゴム輪が脱落や損傷しないように挿し口4の外周及びシール用ゴム輪の内周には滑剤が塗布される。
【0026】
第2の管1及び第1の管2は、既に掘削溝に敷設された第2の管1の受け口3aに第1の管2の挿し口4を接合する際に、第2の管1と第1の管2の中心線が一致するように芯出しを行う必要がある。
【0027】
図2に示すように、本実施形態に係る芯出し部材10は、第1の管2に取り付けることで、第2の管1及び第1の管2の芯出しを行うことができる。本実施形態に係る芯出し部材10は、第1の管2の挿し口4に取り付けられる固定部11と、固定部11に着脱自在に取り付けられるアーム部12とを有している。
【0028】
図3に示すように、固定部11は、第1の管2の挿し口4の外周に巻き回されて取り付けられるバンド状の部材である。固定部11は、挿し口4の先端部から所定の距離の位置に取り付けられ、挿し口4の受け口3aへの挿入部分と重畳しないように取り付けられる。固定部11は、バンド本体25と、バンド本体25の両端から第1の管2の径方向に突出して形成された一対の鍔部26、26を有しており、該鍔部26、26同士を互いに連結するボルト・ナット23によって固定されている。鍔部26は、所定の間隔を有して配置されており、ボルト・ナット23の軸部23aは、当該間隔を横切るように配置され、後述する着脱部20が係合及び固定可能に形成されている。また、鍔部26には、後述する接合部材30が取り付けられる接合部材取付部24が長手方向に突出するように形成されている。
【0029】
図2に示すように、アーム部12は、固定部11に取り付けられるとともに、固定部11から第2の管1の方向に突出するように延設される。図4に示すように、アーム部12は、基端側に着脱部20が形成され、該着脱部20が固定部11に取り付けられる。また、アーム部12は、着脱部20から長手方向に沿って略平行に延びる一対の腕部16、16と、一対の腕部16、16の先端側に形成された当接部13とを備えている。一対の腕部16は、後述する当接部13と拡径部3とが確実に当接するように上側に凸となるように湾曲している。
【0030】
着脱部20は、固定部11のボルト23の軸部23aに係合する係合部21と係合部21に係合した軸部23aを保持する爪部22を有している。爪部22は、図示しないバネで軸部23aに付勢されて軸部23aと係脱自在に構成されており、当接部13を拡径部3に当接させて第1の管2と第2の管1の芯出しを行う際にアーム部12が不用意に抜け出してしまうことを防止すると共に、第1の管2の接合後、アーム部12を取り外すことができるように構成されている。
【0031】
一対の腕部16、16は、所定の空隙Sを有して配置されており、先端部が互いに補強部17によって連結されている。また、必要に応じて腕部16の中間部分にも補強部を設けても構わない。腕部16の先端には、一対の腕部16のそれぞれから互いに離間する方向に延びる当接部13が形成されている。このように、当接部13が互いに離間する方向に延設しているので、当接部13が拡径部3に二箇所で接することで、第2の管1と第1の管2の芯出しをより精度良く行うことができる。
【0032】
当接部13は、長手方向に沿って所定の長さを有しており、図5に示すように、第2の管1の受け口3aの端部と第1の管2の挿し口4の先端とを位置合わせした状態で拡径部3に当接させた際、拡径部3と当接する当接部分14と拡径部3の基端からはみ出して配置される挿入代部分15とを有している。受け口3a内には、シール用ゴム輪(図示せず)がセットされているが、そのセットされている位置は、受け口3aの端部から管軸方向他方の端部に向かって一定量離れた位置となっている。このとき、第1の管2の挿し口4がシール用ゴム輪に挿入されるまで芯出し状態を維持しなければならないが、この挿入代部分15を有することで、第1の管2を第2の管1に挿入した場合、当接部13が拡径部3の長手方向に沿って先端側へ移動し、シール用ゴム輪に挿入されるまで挿入代部分15が拡径部3と確実に当接し、当接部分14が拡径部3と当接しない位置まで第1の管2を挿入した場合でも、当接部13が拡径部3から脱落することを防止し、確実な芯出しを維持することができる。
【0033】
つぎに、図6から8を参照して本実施形態に係る接合部材30の説明を行う。図7及び図8(a)に示すように、接合部材30は、固定部11の接合部材取付部24と係合する係合爪31を有しており、固定部11に取付可能に形成されている。このとき、接合部材30は、一対の腕部16、16間の空隙Sに挟み込まれることで、横方向に拘束されている。また、接合部材30は、ウォームギヤ32とウォームギヤ32に歯合する歯車33とを連結部として有している。ウォームギヤ32は、操作部32aを操作して回転自在に配置されており、歯車33は、後述するワイヤ41を巻き取り可能な巻取部34を有している。
【0034】
操作部32aは、例えばインパクトドライバのような電動工具を取り付けてウォームギヤ32を回転させると好適である。また、電動工具に限らず、手動で回転力を付与するハンドルなどを取り付けても構わない。
【0035】
さらに、図8(b)に示すように接合部材30を取り付けずに、従来周知のラチェット構造を有する接合用機材30´を用いても構わない。この場合、固定部11にフック53を有するフック付き金具50を取り付け、反力部材40と当該フック53とを接合用機材30´で連結して締結することができる。
【0036】
フック付き金具50は、固定部11の爪部22に係合する係合ピン52と、アーム部12の取り付けピン11aに係合する係合溝51とを有している。係合溝51は、管軸方向うに延びる溝部と切り欠き部とを有している。また、フック付き金具50は、アーム部12に外嵌するように取り付けられている。
【0037】
また、第2の管1には拡径部3と重畳しない位置に反力部材40が取り付けられている。反力部材40は、接合時の反力を取るための治具であり、ワイヤ41のフック部41aが取り付けられる環状部42を有している。なお、接合部材30と反力部材40とは、ワイヤ41によって連結されており、接合部材30の巻取部34によってワイヤ41を巻き取る事で、第1の管2を第2の管1に接合する。なお、ワイヤ41は、図8(b)に示すようにチェーン41´を用いても構わない。
【0038】
図6(a)に示すように、反力部材40は、第2の管1の外周に取り付けられる一対の分割片43a、43bを互いにヒンジ44で締結して構成されている。図6(b)に示すように、第1の分割片43aは、上片45a及び上片45aの両端から垂下する一対の側片45b,45bを有する下方向に開口した概略C字状の部材であり、第2の分割片43bは、一対の上下片46a,46a及び一対の上下片46a,46aの一端を連結する側片46bを有する横方向に開口した概略C字状の部材である。第1の分割片43aと第2の分割片43bとは、第1の分割片43aの一方の側片45bと第2の分割片43bの側片46bとがヒンジ44によって回動可能に連結されている。また、第2の分割片43bの上片46aに環状部42が取り付けられている。
【0039】
このように反力部材40が構成されているので、反力部材40を第2の管1に取り付ける場合は、図6(b)に示すように、分割片を略90°の状態まで開き、第1の分割片43aの開口部分を第2の管1の外周に接するように挿入する。このとき、第2の分割片43bは、第2の管1の長手方向に沿って配置されるため、第1の分割片43aの組み付けの際に第2の管1に干渉することはない。
【0040】
その後、ヒンジ44を回動させて第2の分割片43bを図6(a)の状態となるように第1の分割片43aと略平行となるように移動させる。このとき、第2の分割片43bは、横方向に開口しているので、第2の管1の外周に沿って第2の分割片43bの開口部が移動することで、第2の分割片43bと第2の管1の外周とが干渉することはない。第2の分割片43bが図6(a)の状態まで移動すると、第1の分割片43aの開口(第2の管1の下部分)を第2の分割片43bの下片46aが閉塞することで、反力部材40を第2の管1の外周に取り付けることが可能となる。
【0041】
また、反力部材40の取り外しは、第2の分割片43bを図6(b)の状態に開くことで容易に行うことができるので、第1の管2の接合後は第2の管1から容易に取り外すことができるように構成されている。なお、反力部材40は、分割片43a、43bによる構成に限らず、従来周知のバンド状の取付部材を用いても構わない。
【0042】
次に、図9を参照して、本実施形態に係る芯出し部材10を用いた第2の管1と第1の管2の接合方法について説明を行う。まず、第1の管2に固定部11を取り付けて固定する(S101)。固定部11の取り付けは、新設管の敷設を行う現場で行っても構わないし、新設管(第1の管2)の製造時に工場で取り付けても構わない。
【0043】
その後、アーム部12を固定部11に取り付ける(S102)。具体的には、アーム部12の着脱部20の係合部21に固定部11の軸部23aを係合させ、爪部22で軸部23aを固定する。このとき、爪部22は図示しないバネによって軸部23aの方向に付勢されているので、爪部22を軸部23aへの付勢側と逆方向にバネ力に抗して退避させることで、係合部21に軸部23aを係合させることができる。
【0044】
次に、アーム部12を取り付けた第1の管2の挿し口4の外周及び敷設済みの第2の管1の受け口3a内にセットされたシール用ゴム輪(図示せず)の内周に滑剤を塗布した後、第1の管2を掘削溝内にクレーンなどによって吊下げて下ろし、アーム部12の当接部13を掘削溝内に敷設された第2の管1の拡径部3に当接させる。このとき、当接部13は、拡径部3の基端側から第1の管2側にはみ出すように挿入代部分15を有するように配置される。この拡径部3と当接部13との当接によって第2の管1と第1の管2の芯出しを行うことができる。
【0045】
次に、第2の管1の拡径部3と重畳しない位置に反力部材40を取り付ける(S104)。この反力部材40の取り付けは、当接部13を拡径部3に当接させる工程(S103)の前に行っても構わない。
【0046】
次に、第2の管1及び第1の管2に接合部材30を取り付ける(S105)。具体的には、第1の管2の固定部11に接合部材30の係合爪31を係合させ、一対の腕部16の間に接合部材30を保持する。また、反力部材40の環状部42にワイヤ41のフック部41aを取り付ける。
【0047】
次に、接合部材30の操作部32aを電動工具などで回転操作して、ワイヤ41を巻き取ることで、反力部材40が拡径部3との段差に係止し、その反力によって第1の管2を第2の管1の受け口3a内に挿入して嵌合させる(S106)。このとき、接合部材30を用いずに図8(b)に示すような従来周知のラチェット構造を有する接合用機材を用いても構わない。
【0048】
第1の管2の嵌合が終了した後、アーム部12,接合部材30及び反力部材40を取り外す(S107~S109)。なお、アーム部12,接合部材30及び反力部材40の取り外し順は、図9に示す順に限らず、順番は問わない。また、固定部11も同時に取り外しても構わないが、第1の管2に取り付けたまま埋設しても構わない。
【0049】
その後、第2の管1と第1の管2の接合状態をチェックゲージなどで確認した後、当該第1の管2が既に敷設済みの第2の管となって次の第1の管の接合作業を行い、必要な新設管の敷設長さが得られるまで当該工程を繰り返すことで、新設管の敷設を完了する。
【0050】
このように、本実施形態に係る芯出し部材を用いた接合方法によれば、当接部13を拡径部3に当接させるだけで第2の管1と第1の管2の芯出しを行うことができるので、芯出し位置決め作業を容易に行うことができると共に、作業員の熟練度に左右されずに掘削溝内での作業時間を短縮することができる。
【0051】
[第2の実施形態]
以上説明した第1の実施形態に係る芯出し部材は、アーム部と固定部とを有し、反力部材を用いて接合部材によって接合する場合について説明を行った。次に説明する第2の実施形態に係る芯出し部材は、第1の実施形態と異なる形態を有するアーム部、固定部及び反力部材について説明を行うものである。なお、上述した第1の実施形態の場合と同一又は類似する部材については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る芯出し部材のアーム部の斜視図であり、図11は、本発明の第2の実施形態に係る芯出し部材の固定部の斜視図であり、図12は、本発明の第2の実施形態に係る芯出し部材の固定部の変形例を示す斜視図であり、図13は、本発明の第2の実施形態に係る芯出し部材と共に用いられる反力部材の斜視図であり、図14は、本発明の第2の実施形態に係る芯出し部材と伴い用いられる反力部材の斜視図であり、図15は、本発明の第2の実施形態に係る芯出し部材を用いた接合方法を説明する斜視図である。
【0053】
図10に示すように、本実施形態に係るアーム部62は、基端側に着脱部20が形成される。また、アーム部62は、着脱部20から長手方向に沿って略平行に延びる一対の腕部16、16と、一対の腕部16、16の先端側に形成された当接部13とを備えている。一対の腕部16は、第1の実施形態に係る芯出し部材と同様に、当接部13と拡径部3とが確実に当接するように上側に凸となるように湾曲している。
【0054】
一対の腕部16、16は、所定の空隙Sを有して配置されており、先端部が互いに補強部17によって連結されている。また、必要に応じて腕部16の中間部分にも補強部を設けても構わない。腕部16の先端には、一対の腕部16のそれぞれから互いに離間する方向に延びる当接部鍔部63が形成されている。また、当接部鍔部63は、拡径部3に当接する羽部材64が取り付けられており、羽部材64は、補強部17に取付けられた調整手段としての調整ねじ65に取付けられ、拡径部3に対して近接・離間可能に取付られている。
【0055】
羽部材64は、当接部鍔部63に対応する羽部材本体64aと、調整ねじ65が螺合する連結部64bを備えている。なお、羽部材本体64aは、当接部鍔部63に挿通されたボルト・ナット64cによって当接部鍔部63から脱落しないように取り付けられている。このように、当接部13が拡径部3に対して近接・離間することができる羽部材64と調整手段65を有しているので、第2の管1と第1の管2のサイズが異なる場合であっても、種々のサイズの管に対応することができる。
【0056】
また、アーム部62の先端側には、一対の腕部16のそれぞれから互いに離間する方向に延びる手持ち部66が形成されている。また、手持ち部66は、アーム部62の先端側において、一対の腕部16,16の間を連結している。このような手持ち部66を備えることで、安全に管の誘導や芯出しを行うことができる。
【0057】
図11に示すように、固定部61は、一対の固定部分割片61a,61aを互いに組み合わせて構成されている。固定部分割片61aは、第1の管2の挿し口4の外周に対応して湾曲した固定部分割片本体61bと、固定部分割片本体61bの両端にそれぞれ形成された第1の鍔部67及び第2の鍔部68とを有している。
【0058】
第1の鍔部67及び第2の鍔部68は、径方向に突出して形成されており、固定部分割片61a同士を固定するボルト・ナットが挿通されるボルト孔71が形成されている。また、第2の鍔部68には、他方の固定部分割片61aに向けて突出するピン部69が形成されており、第1の鍔部67は、ピン部69と対応する位置に、当該ピン部69が挿入可能なピン孔70が形成されている。なお、第1の鍔部67及び第2の鍔部68の詳細な形状は、上述した第1の実施形態に係る芯出し部材10の固定部11に形成された鍔部26と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0059】
このように、本実施形態に係る固定部61は、一方の固定部分割片61aのピン部69を他方の固定部分割片61aのピン孔70に挿入して互いに位置を固定し、ボルト孔71に図示しないボルトを挿通してナットで固定することで第1の管2の挿し口4に取り付けることが出来る。また、本実施形態に係る固定部61は、第1の管2の径方向に分割可能であることから、取り付け及び取り外し作業を省スペースで行うことができる。
【0060】
また、本実施形態に係る固定部61は、第1の鍔部67及び第2の鍔部68が組み合わされてなる鍔部72が図11における上下に一対形成されている。このように、アーム部62の着脱部20が係合及び固定可能な鍔部72が上下に形成されることで、敷設済みの管の挿し口に新設管の受け口を接合する場合には、図15に示すように、下側の鍔部72にアーム部62を取り付けることで、対応することができる。
【0061】
本実施形態に係る固定部61は、上述したように固定部分割片61aをボルト・ナットで固定する完全分離型でも構わないが、図12に示すように、変形例として、一対の固定部分割片61cをボールジョイント73で回転自在に組み付け、一方の固定部分割片61cに取り付けたヒンジ部74を他方の固定部分割片61cに取り付けたヒンジ係止部75に係合させて互いに固定した固定部61´としても構わない。この際、ヒンジ部74に取り付けた固定ボルト76によってヒンジ部74とヒンジ係止部75とを固定することで、ヒンジ部74とヒンジ係止部75の固定が解除されることを防止している。
【0062】
また、本変形例に係る固定部61´は、上述した固定部61と同様に上下に一対の鍔部72が形成されているが、当該鍔部72は、固定部分割片61cの概略中央部分に形成されており、鍔部72,ヒンジ部74,鍔部72及びヒンジ係止部75が周方向に略等間隔に配置されていると好適である。
【0063】
図13及び図14に示すように、反力部材80は、概略コ字状に形成された第1の反力部材片81と概略コ字状に形成された第2の反力部材片82とが、ヒンジ83を介して開閉自在に取り付けられている。
【0064】
図13に示すように、第1の反力部材片81は、下方に開口するように配置されており、第1の反力部材片本体81aと、当該第1の反力部材片本体81aの両端から垂下して延設される第1の側方脚部81b及び第2の側方脚部81cとを有している。第1の反力部材片本体81aの概略中央部には、長孔状のガイド孔88aと、第1の側方脚部81b及び第2の側方脚部81cの延設方向と概略直交する方向に延びる第1の把持部87が形成されている。
【0065】
図14に示すように、第2の反力部材片82は、側方に開口するように配置されており、第2の反力部材片本体82aと、当該第2の反力部材片本体82aの両端から直交して延設される上方脚部82b及び下方脚部82cとを有している。下方脚部82cは、上述した第1の把持部87と対向する第2の把持部89が形成されている。
【0066】
上方脚部82bの概略中央部には、上方脚部82b及び下方脚部82cの延設方向と概略直交する方向に延びる支持台86が形成されている。支持台86は、枢軸84aを介して枢動するフック受け部材84が取り付けられており、フック受け部材84は、弾性体85によって枢軸84aの周方向に付勢されている。
【0067】
図13に示すように、フック受け部材84は、弾性体85によって枢軸84a周りに付勢され、第1の反力部材片本体81aの上端に当接して第2の反力部材片82を上方に付勢している。第2の反力部材片82は、第2の反力部材片82の上方脚部82bに形成されたガイドピン88と、第1の反力部材片本体81aに形成された長孔状のガイド孔88aによって上下方向に案内されている。
【0068】
なお、第1の反力部材片81の第1の側方脚部81bと第2の反力部材片82の第2の反力部材片本体82aは、ヒンジ83を介して開閉自在に取り付けられているが、当該ヒンジ83は、フック受け部材84による第2の反力部材片82の上下方向への移動を許容する程度にガタを有している。
【0069】
このように、反力部材80は、フック受け部材84によって第2の反力部材片82が下上方に付勢されているので、第1の把持部87と第2の把持部89とが互いに近接して第1の管2の外周を挟み込み反力部材80のズレを防止することができる。
【0070】
次に、図15を参照して本実施形態に係る芯出し部材10´の芯出し部材10´の接合方法について説明を行う。図15に示すように、埋設管である第2の管1の挿し口4に固定部61を取り付ける。また、下方の72にアーム部62を取り付ける。このとき、アーム部62の当接部13は、上方を向くように、第1の実施形態に係る芯出し部材10とは天地逆転して取り付けられる。また、必要に応じて羽部材64の位置を調整して第2の管1と第1の管2の位置を微調整する。さらに、固定部61の上方の鍔部72には、接合部材30を取り付ける。アーム部62及び接合部材30の取り付け方法は、上述した第1の実施形態に係る芯出し部材10と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0071】
反力部材80は、第1の管2の拡径部3と重畳しない位置に取り付けられ、フック受け部材84に接合部材30から延びるチェーン41´の先端に形成されたフック部41aを係合する。その後、接合部材30を操作してチェーン41´を巻き取り、第1の管2の受け口3aを第2の管1の挿し口4に挿入して第1の管2と第2の管1を接合する。また、チェーン41´の巻き取りによって、フック受け部材84は、枢軸84a周りに枢動することから、反力部材80はより強固に第1の管2の外周に固着される。
【0072】
このように、本実施形態に係る芯出し部材10´によれば、固定部61の着脱が容易になるので、固定部61を埋設することなく繰り返し使用することが出来るため、コスト抑制を図ることができる。
【0073】
なお、以上の第1の実施形態では、接合部材30は、歯車33とウォームギヤ32とで構成した場合について説明を行ったが、歯車33を複数設けても構わないし、ウォームギヤ32を削除して直接歯車33を操作するように構成しても構わない。
【0074】
また、第1の実施形態に係る芯出し部材は、既に敷設済みの第2の管1の受け口3aに第1の管2の挿し口4を接合する場合について説明を行ったが、第2の実施形態に係る芯出し部材のように、既に敷設済みの管の挿し口に新設管の受け口を接合しても構わない。この場合、既に敷設済みの管にアーム部12を当接部13が上を向くように取り付け、クレーンなどによって吊下げられる管の拡径部を当接させるように構成することで、管同士の芯出しを行うことができる。また、第2の実施形態に係る固定部の変形例として、一対の固定部分割片61cをボールジョイント73で回転自在に組み付けた固定部61´について説明を行ったが、一対の固定部分割片61cをユニバーサルジョイントを用いて回転自在に組みつけても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0075】
1 第2の管
2 第1の管
3 拡径部
3a 受け口(内径部)
4 挿し口(挿入部)
10,10´ 芯出し部材
11,61 固定部
12,62 アーム部
13 当接部
14 当接部分
15 挿入代部分
16 腕部
17 補強部
20 着脱部
21 係合部
22 爪部
23 ボルト
23a 軸部
24 接合部材取付部
25 バンド本体
26,72 鍔部
30 接合部材
31 係合爪
32 ウォームギヤ
32a 操作部
33 歯車
34 巻取部
40,80 反力部材
41 ワイヤ
41´ チェーン
41a フック部
42 環状部
43a 第1の分割片
43b 第2の分割片
44 ヒンジ
50 フック付き金具
51 係合溝
52 係合ピン
53 フック
61a 固定部分割片
61b 固定部分割片本体
63 当接部鍔部
64 羽部材
64a 羽部材本体
64b 連結部
64c ボルト・ナット
65 調整ねじ(調整手段)
66 手持ち部
67 第1の鍔部
68 第2の鍔部
69 ピン部
70 ピン孔
71 ボルト孔
73 ボールジョイント
74 ヒンジ部
75 ヒンジ係止部
81 第1の反力部材片
82 第2の反力部材片
83 ヒンジ
84 フック受け部材
84a 枢軸
85 弾性体
86 支持台
87 第1の把持部
88 ガイドピン
89 第2の把持部
S 空隙

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15