(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061356
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】スマートバッテリ装置及びその急速充電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/10 20060101AFI20230424BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20230424BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230424BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
H02J7/10 H
H02H7/18
H01M10/44 P
H02J7/00 S
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126187
(22)【出願日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】110138631
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】508018934
【氏名又は名称】廣達電腦股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Quanta Computer Inc.
【住所又は居所原語表記】No.188,Wenhua 2nd Rd.,Guishan Dist.,Taoyuan City 333,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】顏 維廷
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G053AA02
5G053AA09
5G053AA12
5G053AA14
5G053BA01
5G053BA04
5G053BA06
5G053CA01
5G053EA01
5G053EC03
5G503BB02
5G503CA03
5G503CC02
5G503DA13
5G503FA17
5G503GD02
5H030AA03
5H030AA04
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バッテリ装置及びその急速充電方法を提供する。
【解決手段】充電用のCレートが1Cであるバッテリ装置200であって、電池セルと、電池セルの状態に応じてバッテリ装置の保護機構の作動を決定する保護チップと、保護チップに電気的に接続され、電池セルの相対的充電状態(RSOC)を検出するマイクロコントローラと、を備える。マイクロコントローラは、外部電源がバッテリ装置に接続されており、電池セルのRSOCが50%未満の場合に、電池セルを制御して10分を超えない1.7C~1.8Cでの急速充電を行い、急速充電の10分の間に、保護チップが保護機構を作動させるか又は電池セルが定電流(CC)状態から定電圧(CV)状態に変わったことを検出して急速充電を停止させ、同時に電池セルのCレートを1Cに戻す。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電用のCレートが1Cであるバッテリ装置であって、
電池セルと、
前記電池セルに電気的に接続された保護チップであって、前記電池セルの状態に応じて、前記バッテリ装置の保護機構を作動させるかどうかを決定する保護チップと、
前記保護チップに電気的に接続されたマイクロコントローラであって、前記電池セルの相対的充電状態(RSOC)を検出するように構成されたマイクロコントローラと、を備え、
外部電源が前記バッテリ装置に電気的に接続されており、前記電池セルの前記RSOCが50%未満の場合に、前記マイクロコントローラは、前記電池セルを制御して10分を超えない急速充電を行い、前記急速充電は、前記マイクロコントローラが前記電池セルを制御して1.7C~1.8CのCレートで充電するためのものであり、
前記急速充電の10分の間に、前記保護チップが前記保護機構を作動させるか、又は、前記マイクロコントローラが、前記電池セルが定電流(CC)状態から定電圧(CV)状態に変わったことを検出し、前記マイクロコントローラは、前記急速充電を停止し、同時に前記電池セルのCレートを1Cに戻す、バッテリ装置。
【請求項2】
前記保護機構は、過電圧保護(OVP)、過電流保護(OCP)、過熱保護(OTP)、低電圧保護(UVP)、低温保護(UTP)、逆電圧保護及び短絡保護を含む、請求項1に記載のバッテリ装置。
【請求項3】
前記電池セルが前記CC状態から前記CV状態に変わった場合に前記電池セルの前記RSOCは、60%~70%である、請求項1に記載のバッテリ装置。
【請求項4】
前記電池セルの正極に電気的に結合された充電スイッチをさらに備え、前記電池セルが充電されている場合であって、前記保護チップが前記保護機構のOVP、OCP及びOTPを作動させた場合に、前記保護チップは、前記充電スイッチをオフにする、請求項2に記載のバッテリ装置。
【請求項5】
前記充電スイッチと前記電池セルの正極との間に電気的に結合された放電スイッチをさらに備え、
前記電池セルが充電されている場合であって、前記保護チップが前記保護機構のOCP、OTP、UVP、UTP、逆電圧保護及び短絡保護を作動させた場合に、前記保護チップは、前記放電スイッチをオフにする、請求項4に記載のバッテリ装置。
【請求項6】
前記電池セルの正極と前記充電スイッチとの間に電気的に接続された保護装置をさらに備え、
前記保護チップが、前記保護機構を作動させるが前記充電スイッチ又は前記放電スイッチをオフにすることができない場合に、前記マイクロコントローラは、前記保護装置を直接切断する、請求項5に記載のバッテリ装置。
【請求項7】
充電用のCレートが1Cであるバッテリ装置に適用される急速充電方法であって、
外部電源が前記バッテリ装置に電気的に結合されていることを検出するステップと、
前記バッテリ装置を1CのCレートで充電するように制御するステップと、
前記バッテリ装置の相対的充電状態(RSOC)が50%未満であることを検出するステップと、
前記バッテリ装置を、10分を超えない急速充電を行うように制御するステップであって、前記急速充電は、1.7C~1.8CのCレートで充電するように前記バッテリ装置を制御する、ステップと、
前記急速充電中に保護機構が作動した場合に、前記急速充電を停止するステップと、
前記バッテリ装置が定電流(CC)状態から定電圧(CV)状態に変わったことを検出した場合に、前記急速充電を停止するステップと、
前記急速充電が10分行なわれた場合に、前記急速充電を停止するステップと、を含む、急速充電方法。
【請求項8】
前記保護機構は、過電圧保護(OVP)、過電流保護(OCP)、過熱保護(OTP)、低電圧保護(UVP)、低温保護(UTP)、逆電圧保護及び短絡保護を含む、請求項7に記載の急速充電方法。
【請求項9】
前記外部電源が前記バッテリ装置に電気的に結合されていないことを検出した場合に、前記バッテリ装置を放電するように制御するステップと、
前記バッテリ装置のRSOCが50%以上であることを検出した場合に、前記急速充電を行なわず、1CのCレートで充電するように前記バッテリ装置を制御し続けるステップと、
前記急速充電を停止した後に、1CのCレートに戻して、前記バッテリ装置を充電するステップと、をさらに含む、請求項7に記載の急速充電方法。
【請求項10】
前記バッテリ装置が充電されている場合であって、前記保護機構のOVP、OCP、OTPが作動している場合に、第1の信号を、前記バッテリ装置に含まれる充電スイッチに出力して、前記充電スイッチがオフになるようにするステップと、
前記バッテリ装置が充電されている場合であって、OCP、OTP、UVP、UTP、逆電圧保護及び短絡保護が作動している場合に、第2の信号を、前記バッテリ装置に含まれる放電スイッチに出力して、前記放電スイッチがオフになるようにするステップと、
前記保護機構が作動しているが、充電スイッチ又は放電スイッチをオフにできない場合に、第3の信号を保護装置に出力して、前記保護装置が電気的に切断されるようにするステップと、をさらに含む、請求項8に記載の急速充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年10月19日に出願された台湾特許出願番号第110138631号についての優先権を主張するものであり、これらの全ては、引用によって本願に援用される。
【0002】
本発明は、電子機器に関し、特に、バッテリ装置及びその急速充電方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム電池を用いる電気自動車(EV)、3C、エネルギー貯蔵システム(ESS)及び情報技術(IT)は全て、異なる充電条件に遭遇する可能性がある。しかしながら、共通しているのは、充電時間が遅いことが多いということである。現在の技術と現在の電池セルに用いられている材料により、既存のリチウム電池はCC-CVモードで充電される必要がある。
図1は、バッテリ装置の充電曲線図である。
図1は、バッテリ装置の充電容量曲線100、充電電流曲線102、及び、充電電圧曲線104を示している。
【0004】
図1に示すように、バッテリ装置は、1CのCレートで充電している。充電開始から0.6時間経過すると、バッテリ装置はCCモードになる。CCモードでは、バッテリ容量曲線100は直線的に増加する。充電開始から0.6時間を超えると、バッテリ装置はCVモードに変わる。ユーザーがバッテリ容量の約60%に達するのに10分しかかからないことを経験した場合、ユーザーはこれを許容範囲と考え、ここで充電を停止することができる。従って、如何にしてCCモードでバッテリ装置を瞬時に充電することでバッテリ低下のパニックを回避させるか、又は、バッテリ容量の特定の割合に到達させるかが重要な問題になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリ装置及びその急速充電方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、充電用のCレートが1Cであるバッテリ装置を提供する。バッテリ装置は、電池セルと、保護チップと、マイクロコントローラと、を含む。保護チップは、電池セルに電気的に接続されている。保護チップは、電池セルの状態に応じて、バッテリ装置の保護機構を作動させるかどうかを決定する。マイクロコントローラは、保護チップに電気的に接続されており、電池セルの相対的充電状態(Relative State-Of-Charge;RSOC)を検出する。外部電源がバッテリ装置に電気的に接続され、電池セルのRSOCが50%未満の場合、マイクロコントローラは、電池セルを制御して10分を超えない急速充電を行う。急速充電は、マイクロコントローラが電池セルを制御して1.7C~1.8CのCレートで充電するためのものである。急速充電の10分以内に、保護チップが保護機構を作動させるか、又は、マイクロコントローラが、電池セルが定電流(CC)状態から定電圧(CV)状態に変わったことを検出すると、マイクロコントローラは、急速充電を停止して、電池セルのCレートを1Cに戻す。
【0007】
上述したバッテリ装置によれば、保護機構は、過電圧保護(OVP)、過電流保護(OCP)、過熱保護(OTP)、低電圧保護(UVP)、低温保護(UTP)、逆電圧保護、及び、短絡保護を含む。
【0008】
上述したバッテリ装置によれば、電池セルがCC状態からCV状態に変わる場合の電池セルのRSOCは、60%~70%である。
【0009】
上述したバッテリ装置によれば、バッテリ装置は、充電スイッチをさらに含む。充電スイッチは、電池セルの正極に電気的に結合されている。電池セルが充電されており、保護チップが保護機構のOVP、OCP及びOTPを作動させた場合に、保護チップは、充電スイッチをオフにする。
【0010】
上述したバッテリ装置は、放電スイッチをさらに含む。電池セルが充電されており、保護チップが保護機構のOCP、OTP、UVP、UTP、逆電圧保護及び短絡保護を作動させた場合に、保護チップは放電スイッチをオフにする。
【0011】
上述したバッテリ装置によれば、バッテリ装置は、保護装置をさらに含む。保護装置は、電池セルの正極と充電スイッチとの間に電気的に接続されている。保護チップが、保護機構を作動させるが充電スイッチ又は放電スイッチをオフにすることができない場合に、マイクロコントローラは、保護装置を直接切断する。
【0012】
また、本発明は、急速充電方法を提供する。急速充電方法は、充電用のCレートが1Cであるバッテリ装置に適用されている。急速充電方法は、以下のステップを含む。
外部電源がバッテリ装置に電気的に結合されていることを検出する。
バッテリ装置を1CのCレートで充電するように制御する。
バッテリ装置の相対的充電状態(RSOC)が50%未満であることを検出する。
バッテリ装置が10分を超えない急速充電を行うように制御する。
急速充電が1.7C~1.8CのCレートで充電するようにバッテリ装置を制御する。
保護機構が急速充電中に作動された場合に、急速充電を停止する。
バッテリ装置が定電流(CC)状態から定電圧(CV)状態に変わったことを検出した場合に、急速充電を停止する。
急速充電が10分行なわれた場合に、急速充電を停止する。
【0013】
上述した急速充電方法によれば、保護機構は、過電圧保護(OVP)、過電流保護(OCP)、過熱保護(OTP)、低電圧保護(UVP)、低温保護(UTP)、逆電圧保護、及び、短絡保護を含む。
【0014】
上述した急速充電方法によれば、この方法は、以下のステップをさらに含む。外部電源がバッテリ装置に電気的に結合されていないことを検出した場合に、バッテリ装置を放電するように制御する。バッテリ装置のRSOCが50%以上であることを検出した場合に、急速充電を行なわず、1CのCレートで充電するようにバッテリ装置を制御し続ける。急速充電を停止した後に、1CのCレートを戻して、バッテリ装置を充電する。
【0015】
上述した急速充電方法によれば、この方法は、以下の動作をさらに含む。バッテリ装置が充電されており、保護機構のOVP、OCP、OTPが作動している場合に、第1の信号を、バッテリ装置に含まれる充電スイッチに出力し、充電スイッチがオフになるようにする。本発明のバッテリ装置が充電されており、OCP、OTP、UVP、UTP、逆電圧保護及び短絡保護が作動している場合に、第2の信号を、バッテリ装置に含まれる放電スイッチに出力し、放電スイッチがオフになるようにする。保護機構が作動しているが、充電スイッチ又は放電スイッチをオフにできない場合に、第3の信号を保護装置に出力して、保護装置が電気的に切断されるようにする。
【0016】
本発明は、添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明及び実施例を読むことによって、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、バッテリ装置200の概略図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、急速充電方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明は、本発明の一般的な原理を説明する目的でなされたものであり、本発明を限定するものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによって決定される。
【0019】
図2は、本発明のいくつかの実施形態による、バッテリ装置200の概略図である。
図2に示すように、バッテリ装置200は、電池セル202と、保護チップ204と、マイクロコントローラ206と、充電スイッチ208と、放電スイッチ210と、保護装置212と、副保護チップ214と、温度センサ216と、感知抵抗器218と、通信バスSMBUS_DATA及びSMBUS_CLOCKと、バッテリ識別インジケーターBATTERY_ID及びSYSTEM_IDと、正極P+と、負極P-と、を含む。電池セル202は、受け取った電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵するか、又は、貯蔵した化学エネルギーを電気エネルギーに変換して出力する。保護チップ204は、電池セル202に電気的に接続されており、電池セル202の状態に応じて(例えば、充電電圧、充電電流又は放電電流等に基づいて)、バッテリ装置200の保護機構を作動させるかどうかを決定する。いくつかの実施形態では、保護機構は、過電圧保護(OVP)、過電流保護(OCP)、過熱保護(OTP)、低電圧保護(UVP)、低温保護(UTP)、逆電圧保護及び短絡保護を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、電池セル202が充電されており、保護チップ204が保護機構のOVP、OCP及びOTPを作動させた場合に、保護チップ204は、信号230を充電スイッチ208に出力して、充電スイッチ208がオフになり、バッテリ装置200が充電を停止するようにする。いくつかの実施形態では、電池セル202が放電されており、保護チップ204がOCP、OTP、UVP、UTP、逆電圧保護及び短絡保護を作動させた場合に、保護チップ204は、信号232を放電スイッチ210に出力して、放電スイッチ210がオフになり、バッテリ装置200が放電を停止するようにする。
【0021】
図2に示すように、充電スイッチ208は、保護装置212と放電スイッチ210との間に電気的に接続されている。放電スイッチ210は、正極P+と充電スイッチ208との間に電気的に接続されている。充電スイッチ208は、保護チップ204からの信号230に従って、その状態を変える。例えば、信号230が「0」等の論理ローレベルにある場合、充電スイッチ208は、電流がノードBからノードAに流れることのみを可能にし、ノードAからノードBに電流を流すことを禁止する。信号230が「1」等の論理ハイレベルにある場合、充電スイッチ208は、完全導通(fully conductive)状態にある。放電スイッチ210は、保護チップ204からの信号232に従って、その状態を変える。例えば、信号232が「0」等の論理ローレベルにある場合、放電スイッチ210は、電流がノードAからノードBに流れることのみを可能にし、ノードBからノードAに電流を流すことを禁止する。信号232が「1」等の論理ハイレベルにある場合、放電スイッチ210は、完全導電状態にある。
【0022】
マイクロコントローラ206は、保護チップ204に電気的に接続されており、電池セル202の相対的充電状態(Relative State-Of-Charge;RSOC)を検出する。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ206は、通信インターフェース240を介して保護チップ204と通信する。例えば、マイクロコントローラ206は、通信インターフェース240を介して、保護チップ204から電池セル202の充放電電流及び充放電電圧等の情報を取得することができる。いくつかの実施形態では、通信インターフェースは、I2C通信インターフェースであるが、本発明はそれに限定されない。マイクロコントローラ206は、電池セル202からの電荷が、バッテリ装置200の正極P+を介して出力され、バッテリ装置200の負極P-から電池セル202に戻るように制御することができる。あるいは、マイクロコントローラ206は、バッテリ装置200の外部の外部電源(図示省略)を制御して、電池セル202を充電することができる。
【0023】
一般に、通常の充放電プロセスでは、バッテリ装置200の充電用のCレートは1Cであり、放電用のバッテリ装置200のCレートは2Cであるが、本発明はそれに限定されない。外部電源がバッテリ装置200に電気的に結合されており、電池セル202のRSOCが50%未満である場合に、マイクロコントローラ206は、電池セル202を制御して、10分を超えない急速充電を行う。急速充電中、マイクロコントローラ206は、電池セル202を制御して、17.7Cから1.8CのCレートで充電する。急速充電の10分間に、保護チップ204は、保護機構を作動させるか、又は、マイクロコントローラ206が、電池セル202が定電流(CC)状態から定電圧(CV)状態に変わったことを検出し、マイクロコントローラ206は、急速充電を停止し、同時に電池セル202のCレートを戻して、1Cで充電する。いくつかの実施形態では、電池セル202のRSOCは、電池セル202がCC状態からCV状態に変わった場合に、60%~70%である。
【0024】
いくつかの実施形態では、バッテリ装置200は、少なくとも1つのプロセッサを有する電子機器に含まれる。電子機器は、例えば、ラップトップ、タブレット、ウェアラブルデバイス、又は、スマートフォンであり得る。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ206は、通信バスSMBUS_COLOK及びSMBUS_TATAを介して、バッテリ装置200を含む電子機器のプロセッサと通信することができる。例えば、電子機器のプロセッサは、通信バスSMBUS_COLOK及びSMBUS_DATAを介して、マイクロコントローラ206が急速充電を行うための最大時間(例えば、10分)及びCレート(例えば、1.7C~1.8C)を調整することができる。いくつかの実施形態では、バッテリ装置200を含む電子機器のプロセッサは、バッテリ装置200の電池識別インジケーターBATTERY_ID及びSYSTEM_IDを介して、バッテリ装置200が電子機器に取り付けられていることを検出することができる。
【0025】
温度センサ216は、バッテリ装置200の温度を検出し、検出された温度の情報を保護チップ204に送信する。いくつかの実施形態では、温度センサ216は、温度感知チップである。いくつかの実施形態では、温度センサ216は、温度によって抵抗値が変化するサーミスタを含む。温度センサ216は、サーミスタに電力を供給し、サーミスタの両端の電圧を測定することによって、サーミスタの両端の電圧の変化(抵抗の変化に対応する)を温度の変化に変換する。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ206は、感知抵抗器218の両端の電圧(例えば、ノードD及びEの両端の電圧)を測定することによって、充電モードでの充電電流の大きさを計算することができる。
【0026】
表1は、本発明のいくつかの実施形態による、充電用の異なるCレートに対応する10分あたりのバッテリ200の容量増分の比較表である。
【表1】
【0027】
表1に示すように、マイクロコントローラ206が電池セル202を1.1CのCレートで充電するように制御した場合に、電池セル202は、30分の充電後にバッテリ容量の50%に達することができる。従って、充電用のCレートが1.1Cである場合、バッテリ装置200の10分あたりの容量増分は16.67%である。マイクロコントローラ206が、1.5CのCレートで充電するように電池セル202を制御した場合に、電池セル202は、20分の充電後にバッテリ容量の50%に達することができる。従って、充電用のCレートが1.5Cである場合に、バッテリ装置200の10分あたりの容量増分は25.00%である。マイクロコントローラ206が、電池セル202を1.7C~1.8CのCレートで充電するように制御した場合に、電池セル202は、12分の充電後にバッテリ容量の35%に達することができる。従って、充電用のCレートが1.7Cである場合に、バッテリ装置200の10分あたりの容量増分は29.17%である。
【0028】
マイクロコントローラ206が、2.5CのCレートで充電するように電池セル202を制御した場合に、電池セル202は、10分の充電後にバッテリ容量の40%に達することができる。従って、充電用のCレートが2.5Cである場合に、バッテリ装置200の10分あたりの容量増分は40%である。表1の結果によれば、バッテリ装置200の充電用のCレートが高いほど、バッテリ装置200の10分あたりの容量増分も高くなる。しかしながら、本発明は、バッテリ装置200を充電するために2.5CのCレートを用いず、その理由は、以下のとおりであり、表2に示されている。
【0029】
表2は、本発明のいくつかの実施形態による、充電用の異なるCレートに対応するバッテリ装置200の性能比の比較表である。性能比は、充電用のCレートを1分あたりの容量増分で割ったものとして定義される。
【表2】
【0030】
表2に示すように、マイクロコントローラ206が、電池セル202を1.1CのCレートで充電するように制御した場合に、バッテリ装置200の性能比(即ち、充電用のCレートと1分あたりの容量増分の比率)は1.52である。マイクロコントローラ206が、電池セル202を1.5CのCレートで充電するように制御した場合に、バッテリ装置200の性能比は1.67である。マイクロコントローラ206が、電池セル202を1.7C~1.8CのCレートで充電するように制御した場合に、バッテリ装置200の性能比は1.72である。マイクロコントローラ206が、電池セル202を2.5CのCレートで充電するように制御した場合に、バッテリ装置200の性能比は1.6である。表2に示すように、本発明は、バッテリ装置200を充電するために1.7C~1.8CのCレートを用いており、最も高い性能比(即ち、充電用のCレートと1分あたりの容量増分の比率)を得ることができる。
【0031】
図2では、保護装置212は、電池セル202の正極(ノードB)と充電スイッチ208との間に電気的に接続されている。いくつかの実施形態では、保護チップ204が、保護機構を作動させるが充電スイッチ208又は放電スイッチ210をオフにすることができない場合に、或いは、保護チップが、電池セル202のコアストリップ(core strip)が不均衡又は異常であることを検出した場合に、マイクロコントローラ206は、信号234を保護装置212に直接出力して、保護装置212を切断することができる。いくつかの実施形態では、保護チップ204が、保護機構のOVPを作動させるが充電スイッチ208又は放電スイッチ210をオフにすることができない場合に、副保護チップ214は、信号236を保護装置212に出力して、保護装置212を切断することができる。
【0032】
図3は、本発明のいくつかの実施形態による、急速充電方法のフローチャートである。本発明の急速充電方法は、充電用の1CのCレートのバッテリ装置(例えば、
図2のバッテリ装置200)に適している。
図3に示すように、急速充電方法は、以下のステップを含む。外部電源がバッテリ装置に電気的に結合されていることが検出される(ステップS300)。バッテリ装置は、1CのCレートで充電するように制御される(ステップS302)。50%未満のバッテリ装置の相対的充電状態(RSOC)が検出される(ステップS304)。バッテリ装置は、10分を超えない急速充電を行うように制御され、急速充電は、1.7C~1.8CのCレートで充電するようにバッテリ装置を制御する(ステップS306)。保護機構が急速充電中に作動すると、急速充電が停止される(ステップS308)。バッテリ装置が定電流(CC)状態から定電圧(CV)状態に変わったことを検出した場合に、急速充電が停止される(ステップS310)。急速充電が10分行なわれた場合に、急速充電が停止される(ステップS312)。
【0033】
いくつかの実施形態では、ステップS300~S312は、
図2のマイクロコントローラ206によって行われる。ステップS300では、本発明の急速充電方法が、外部がバッテリ装置に電気的に結合されていることを検出しない場合に、マイクロコントローラ(
図2のマイクロコントローラ206等)は、電池セルを放電するように制御する。即ち、バッテリ装置は、放電モードに入る。ステップS304では、マイクロコントローラが、バッテリ装置のRSOCが50%以上であることを検出した場合に、本発明の急速充電方法は、急速充電を行なわず、1CのCレートで充電するようにバッテリ装置を制御し続ける。ステップS306では、保護機構は、過電圧保護(OVP)、過電流保護(OCP)、過熱保護(OTP)、低電圧保護(UVP)、低温保護(UTP)、逆電圧保護及び短絡保護を含む。ステップS312では、マイクロコントローラが急速充電を停止した後に、マイクロコントローラは、1CのCレートに戻して、バッテリ装置を充電する。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明のバッテリ装置(例えば、
図2のバッテリ装置200)が充電されており、保護メカニズムのOVP、OCP及びOTPが作動している場合に、本発明の急速充電方法は、第1の信号(例えば、信号230)を、バッテリ装置に含まれる充電スイッチ(例えば、
図2の充電スイッチ208)に出力して、充電スイッチがオフになるようにする。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明のバッテリ装置が充電されており、OCP、OTP、UVP、UTP、逆電圧保護及び短絡保護が作動している場合に、本発明の急速充電方法は、第2の信号(例えば、信号232)を、バッテリ装置に含まれる放電スイッチ(例えば、
図2の放電スイッチ210)に出力して、放電スイッチがオフになるようにする。いくつかの実施形態では、保護チップ(例えば、
図2の保護チップ204)が保護機構を作動させたが、充電スイッチ又は放電スイッチ(例えば、損傷した充電スイッチ及び/又は損傷した放電スイッチ)をオフにできない場合に、本発明の急速充電方法は、第3の信号(例えば、信号234)を保護装置(
図2の保護装置212等)に出力して、保護装置を切断する。
【0036】
本発明は、例として及び望ましい実施形態の観点から説明されているが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。逆に、(当業者には明らかなように)様々な変更及び同様の構成をカバーすることが意図されている。よって、添付の特許請求の範囲は、全てのこのような変更及び同様の構成を包含するように、最も広義な解釈が与えられるべきである。
【符号の説明】
【0037】
CC…定電流
CV…定電圧
100…充電容量曲線
102…充電電流曲線
104…充電電圧曲線
200…バッテリ装置
202…電池セル
204…保護チップ
206…マイクロコントローラ
208…充電スイッチ
210…放電スイッチ
212…保護装置
214…副保護チップ
216…温度センサ
218…感知抵抗器
230、232、234…信号
P+…正極
P-…負極
SMBUS_DATA、SMBUS_CLOCK…通信バス
BATTERY_ID、SYSTEM_ID…バッテリ識別インジケーター
A、B、D、E…ノード
S300、S302、S304、S306…ステップ
S308、S310、S312…ステップ