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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006137
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】内視鏡用プロセッサ、内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
A61B1/06 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108566
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山邉 俊明
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161JJ18
4C161NN01
4C161QQ04
4C161QQ09
4C161RR04
4C161RR23
4C161RR25
(57)【要約】
【課題】体腔内の生体組織を照明する際に、照明光の光バランスの変動を容易に抑制できる内視鏡用プロセッサ及び内視鏡システムを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態は、生体組織の撮像画像を処理するように構成された内視鏡用プロセッサである。この内視鏡用プロセッサは、生体組織の照明のための光を出射する光源装置と、光源装置の出射光の光スペクトラムを取得するスペクトルセンサと、スペクトルセンサによって取得された光スペクトラムと、所定の目標スペクトラムとの差分が小さくなるように、光源装置の出射光の光スペクトラムを調整する調整部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の撮像画像を処理するように構成された内視鏡用プロセッサであって、
前記生体組織の照明のための光を出射する光源装置と、
前記光源装置の出射光の光スペクトラムを取得するスペクトルセンサと、
前記スペクトルセンサによって取得された光スペクトラムと、所定の目標スペクトラムとの差分が小さくなるように、前記光源装置の出射光の光スペクトラムを調整する調整部と、
を備えた内視鏡用プロセッサ。
【請求項2】
前記光源装置は、紫外線波長光を発光するUV発光素子を含み、
前記内視鏡用プロセッサは、前記UV発光素子の出射光の光強度が所定のピーク値を越えないように、前記UV発光素子の温度を制御する温度制御部を備えた、
請求項1に記載された内視鏡用プロセッサ。
【請求項3】
前記光源装置は、波長帯が異なる光を出射する複数の発光素子を備え、
前記調整部は、前記スペクトルセンサによって取得された光スペクトラムと所定の目標スペクトラムとの比較結果に基づいて前記複数の発光素子の波長シフト量を取得し、前記複数の発光素子の少なくともいずれかの波長シフト量が所定値を超えている場合に前記光源装置の出射光の光スペクトラムを調整する、
請求項1又は2に記載された内視鏡用プロセッサ。
【請求項4】
前記光源装置の光出射端と前記スペクトルセンサの間に配置され、前記光出射端から前記光源装置の出射光の一部を前記スペクトルセンサに導く光ファイバを備え、
前記光ファイバには、FBG(Fiber Bragg Grating)が配置され、
前記スペクトルセンサは、前記光源装置の出射光のうち前記FBGによって反射される反射光の波長を検出し、
前記制御部は、前記スペクトルセンサによって検出された前記反射光の波長に基づいて、前記スペクトルセンサによって取得された光スペクトラムを補正する、
請求項1から3のいずれか一項に記載された内視鏡用プロセッサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の内視鏡用プロセッサと、前記内視鏡用プロセッサに接続された内視鏡スコープと、を含む内視鏡システムであって、
前記内視鏡スコープは、
前記生体組織の照明のための光を出射する第2の光源装置と、
前記内視鏡用プロセッサに備わる光源装置である第1の光源装置の出射光と、前記第2の光源装置の出射光とを結合する光結合部と、を有する、
内視鏡システム。
【請求項6】
前記内視鏡スコープは、前記光結合部によって結合された結合光の光スペクトラムを取得する第2のスペクトルセンサを有し、
前記調整部は、前記内視鏡用プロセッサに備わる前記スペクトルセンサによって取得された第1の光スペクトラムと、前記第2スペクトルセンサによって取得された第2の光スペクトラムと、に基づいて、前記第2の光スペクトラムと前記目標スペクトラムとの差分が小さくなるように、前記第1の光源装置及び/又は前記第2光源装置の出射光の光スペクトラムを調整する、
請求項5に記載された内視鏡システム。
【請求項7】
内視鏡用プロセッサと、前記内視鏡用プロセッサに接続された内視鏡スコープと、を含む内視鏡システムであって、
前記内視鏡プロセッサは、前記生体組織の照明のための光を出射する光源装置を備え、
前記内視鏡スコープは、前記光源装置の出射光の光スペクトラムを取得するスペクトルセンサを備え、
前記内視鏡プロセッサは、
前記スペクトルセンサによって取得された光スペクトラムと、所定の目標スペクトラムとの差分が小さくなるように、前記光源装置の出射光の光スペクトラムを調整する調整部をさらに備える、
内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置を備えた内視鏡用プロセッサ及び内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器分野においては、体腔内の生体組織を照明し、照明された体腔内の生体組織を被写体として撮像することにより、体腔内に潜む病変部の診断を行うのに好適な画像を生成することが可能な内視鏡システムが知られている。従来、照明光として白色光を発するキセノンランプやハロゲンランプ等のランプ光源が使用されていたが、最近では、ランプ光源に代えて、特定の波長帯域の光を発する発光ダイオード(LED:Light emitting diode)やレーザダイオード(LD:Laser diode)等の発光素子を有する半導体光源が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、複数のLEDによって照明光を得るようにした内視鏡装置が記載されている。特許文献1によれば、この内視鏡装置は、複数のLEDのそれぞれに対応する複数の光センサを設け、各光センサの検知結果に基づいて各LED間の光量比を補正することで、LEDの温度特性に拘わらず最適な光量比を得ることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6138203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、LEDの出力特性は、温度特性による光量の変化だけでなく、寿命劣化による光量減衰(低下)や駆動電流の増加による波長シフト、各LEDの波長の色バランス等、多くの変数によって変化するため、照明光を調整(補正)するのは容易ではない。これらのすべての変数に対応するLEDの出力特性を予めデータテーブルとして用意するのは難易度が高く、また、柔軟性に乏しい。
【0006】
別の観点では、高精細な画素が配置されたイメージセンサを有する広視野(WFOV)センサスコープが利用される場合、デジタルズームが多く利用されると想定されるが、その場合、観察部位までの距離が比較的離れることになる傾向にある。この場合、撮像画像が暗くなることを防止するために光源出力を増大することが想定されるが、光源出力の増大に伴い照射光の光スペクトラムが変化し、光バランスに影響を来す虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、体腔内の生体組織を照明する際に、照明光の光バランスの変動を容易に抑制できる内視鏡用プロセッサ及び内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、生体組織の撮像画像を処理するように構成された内視鏡用プロセッサである。この内視鏡用プロセッサは、
前記生体組織の照明のための光を出射する光源装置と、
前記光源装置の出射光の光スペクトラムを取得するスペクトルセンサと、
前記スペクトルセンサによって取得された光スペクトラムと、所定の目標スペクトラムとの差分が小さくなるように、前記光源装置の出射光の光スペクトラムを調整する調整部と、
を備える。
【0009】
前記光源装置は、紫外線波長光を発光するUV発光素子を含んでもよい。
その場合、前記内視鏡用プロセッサは、前記UV発光素子の出射光の光強度が所定のピーク値を越えないように、前記UV発光素子の温度を制御する温度制御部を備えてもよい。
【0010】
前記光源装置は、波長帯が異なる光を出射する複数の発光素子を備えてもよい。
その場合、前記調整部は、前記スペクトルセンサによって取得された光スペクトラムと所定の目標スペクトラムとの比較結果に基づいて前記複数の発光素子の波長シフト量を取得し、前記複数の発光素子の少なくともいずれかの波長シフト量が所定値を超えている場合に前記光源装置の出射光の光スペクトラムを調整してもよい。
【0011】
前記光源装置の光出射端と前記スペクトルセンサの間に配置され、前記光出射端から前記光源装置の出射光の一部を前記スペクトルセンサに導く光ファイバを備えてもよい。
その場合、前記光ファイバには、FBG(Fiber Bragg Grating)が配置され、
前記スペクトルセンサは、前記光源装置の出射光のうち前記FBGによって反射される反射光の波長を検出し、
前記制御部は、前記スペクトルセンサによって検出された前記反射光の波長に基づいて、前記スペクトルセンサによって取得された光スペクトラムを補正してもよい。
【0012】
本発明の別の態様は、前記内視鏡用プロセッサと、前記内視鏡用プロセッサに接続された内視鏡スコープと、を含む内視鏡システムである。
前記内視鏡スコープは、
前記生体組織の照明のための光を出射する第2の光源装置と、
前記内視鏡用プロセッサに備わる光源装置である第1の光源装置の出射光と、前記第2の光源装置の出射光とを結合する光結合部と、を有する。
【0013】
前記内視鏡スコープは、前記光結合部によって結合された結合光の光スペクトラムを取得する第2のスペクトルセンサを有してもよい。
その場合、前記調整部は、前記内視鏡用プロセッサに備わる前記スペクトルセンサによって取得された第1の光スペクトラムと、前記第2スペクトルセンサによって取得された第2の光スペクトラムと、に基づいて、前記第2の光スペクトラムと前記目標スペクトラムとの差分が小さくなるように、前記第1の光源装置及び/又は前記第2光源装置の出射光の光スペクトラムを調整してもよい。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、内視鏡用プロセッサと、前記内視鏡用プロセッサに接続された内視鏡スコープと、を含む内視鏡システムである。
前記内視鏡プロセッサは、前記生体組織の照明のための光を出射する光源装置を備え、
前記内視鏡スコープは、前記光源装置の出射光の光スペクトラムを取得するスペクトルセンサを備える。
前記内視鏡プロセッサは、前記スペクトルセンサによって取得された光スペクトラムと、所定の目標スペクトラムとの差分が小さくなるように、前記光源装置の出射光の光スペクトラムを調整する調整部をさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
上述の内視鏡用プロセッサ及び内視鏡システムによれば、体腔内の生体組織を照明する際に、照明光の光バランスの変動を容易に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態の内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】一実施形態の光源装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図2とは異なる実施形態の光源装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4図2又は図3に示す実施形態の電子内視鏡システムにおいて、LED光源の調整処理を示すフローチャートの一例である。
図5図3とは異なる実施形態の光源装置の構成の一例を示すブロック図である。
図6図5とは異なる実施形態の光源装置の構成の一例を示すブロック図である。
図7図6に示す実施形態の電子内視鏡システムにおいて、LED光源の調整処理を示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、電子内視鏡システムについて添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
一実施形態の電子内視鏡用プロセッサは、生体組織の照明のための光を出射する光源装置と、スペクトルセンサと、光源装置の出射光の光スペクトラムを調整する調整部と、を備える。光源装置における光源は限定しないが、発光ダイオードやレーザダイオード等の発光素子である。
一実施形態の電子内視鏡システムでは、スペクトルセンサが光源装置の出射光の光スペクトラムを取得する。調整部は、スペクトルセンサによって取得された光スペクトラムと、所定の目標スペクトラムとの差分が小さくなるように、光源装置の出射光の光スペクトラムを調整するように構成される。そのため、体腔内の生体組織を照明する際に、照明光の光バランスの変動を容易に抑制できるため、特に、高精細な画素が配置されたイメージセンサを有する広視野(WFOV)センサスコープが利用される場合に有益である。すなわち、デジタルズームの利用により、センサスコープから観察部位までの距離が比較的離れることに起因して光源出力を増大する状況下においても、光源出力の増大に伴う照射光の光スペクトラムの変化が抑制される。
【0018】
一実施形態では、スペクトルセンサは、電子内視鏡用プロセッサに含まれる場合に限られない。光源装置から出射された照明光が生体組織に達するまでに照明光の光スペクトラムをモニタできればよいため、スペクトルセンサは、電子スコープ内に設けられてもよい。その場合でも、スペクトルセンサによって取得された光スペクトラムを電子内視鏡用プロセッサ内の調整部でデータ処理することで、光源装置の出射光の光スペクトラムを調整することができる。
【0019】
図1は、一実施形態の電子内視鏡システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、電子スコープ100、電子内視鏡用プロセッサ200、及び、モニタ300を備えている。
【0020】
電子内視鏡用プロセッサ200は、システムコントローラ202やタイミングコントローラ206を備えている。システムコントローラ202は、メモリ204に記憶された各種プログラムを実行し、電子内視鏡システム1の全体を統括的に制御する。また、システムコントローラ202は、操作パネル208に入力されるユーザ(術者又は補助者)による指示に応じて電子内視鏡システム1の各種設定を変更する。タイミングコントローラ206は、各部の動作のタイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各回路に出力する。
【0021】
電子内視鏡用プロセッサ200は、電子スコープ100に照明光を供給する光源装置230を備えている。照明光は、図示されない集光レンズにより集光された後、図示されない調光装置を介して電子スコープ100の光ファイバ素線の束であるLCB(Light Carrying Bundle)102の入射端に入射されるように光源装置230は構成される。
光源装置230は、所定の色の波長帯域の光を出射する複数の発光ダイオードによる光源(以下、適宜「LED光源」と表記する。)を備える。LEDに代えてレーザダイオードを光源として用いることもできる。LED及びレーザダイオードは、他の光源と比較して、低消費電力、発熱量が小さい等の特徴があるため、消費電力や発熱量を抑えつつ明るい画像を取得できるというメリットがある。明るい画像が取得できることにより、病変部の病変の程度に関する評価の精度を向上させることができる。
なお、図1に示す例では、光源装置230は、電子内視鏡用プロセッサ200に内蔵して設けられるが、電子内視鏡用プロセッサ200とは別体の装置として電子内視鏡システム1に設けられてもよい。また、光源装置230は、後述する電子スコープ100の先端部に設けられてもよい。この場合、照明光を導光するLCB102は不要である。
【0022】
入射端よりLCB102内に入射した照明光は、LCB102内を伝播して電子スコープ100の先端部内に配置されたLCB102の射出端より射出され、配光レンズ104を介して被写体に照射される。被写体からの反射光は、対物レンズ106を介して撮像素子108の受光面上で光学像を結ぶ。
【0023】
撮像素子108は、例えば、IR(Infra Red)カットフィルタ108a、ベイヤ配列カラーフィルタ108bの各種フィルタが受光面に配置された単板式カラーCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサであり、受光面上で結像した光学像に応じたR(Red)、G(Green)、B(Blue)の各原色信号を生成する。単板式カラーCCDイメージセンサの代わりに、単板式カラーCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いることもできる。
【0024】
電子スコープ100の接続部内には、ドライバ信号処理回路152が備えられている。ドライバ信号処理回路152は、撮像素子108より入力される原色信号に対して色補間、マトリックス演算等の所定の信号処理を施して画像信号(輝度信号Y、色差信号Cb、Cr)を生成し、生成された画像信号を電子内視鏡用プロセッサ200の画像処理ユニット220に出力する。また、ドライバ信号処理回路152は、メモリ154にアクセスして電子スコープ100の固有情報を読み出す。メモリ154に記録される電子スコープ100の固有情報には、例えば撮像素子108の画素数や感度、動作可能なフレームレート、型番等が含まれる。ドライバ信号処理回路152は、メモリ154より読み出された固有情報をシステムコントローラ202に出力する。このように、電子スコープ100は、撮像素子108を用いて、体腔内の生体組織を撮像する。
【0025】
システムコントローラ202は、電子スコープ100の固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ202は、生成された制御信号を用いて、電子内視鏡用プロセッサ200に接続中の電子スコープ100に適した処理がなされるように電子内視鏡用プロセッサ200内の各回路の動作やタイミングを制御する。
【0026】
タイミングコントローラ206は、システムコントローラ202によるタイミング制御に従ってクロックパルスで構成されたタイミング信号を生成し、このタイミング信号を、撮像素子108、ドライバ信号処理回路152、画像処理ユニット220、及び光源装置230に供給する。ドライバ信号処理回路152は、タイミングコントローラ206から供給されるタイミング信号のクロックパルスに従って駆動する。
【0027】
画像処理ユニット220は、システムコントローラ202による制御の下、タイミング信号に従がって、ドライバ信号処理回路152より入力した画像信号に基づいて内視鏡画像等をモニタ表示するためのビデオ信号を生成し、モニタ300に出力する。
【0028】
図2に、光源装置230のブロック図を示す。光源装置230は、光源制御部10、LED光源11~15、LED駆動部21~25、及び、光結合部31を含む。
【0029】
LED光源11~15は、LED駆動部21~25によって個別に発光制御される。
LED光源11は、紫外線(UV)の波長帯域(例えば、波長が375~435nm;以下、「UV波長帯域」ともいう。)の光を射出するLED光源である。LED光源12は、青色の波長帯域(例えば、波長が420~510nm)の光を射出するLED光源である。LED光源13は、緑色の波長帯域(例えば、波長が520~580nm)の光を射出するLED光源である。LED光源14は、琥珀色(amber)の波長帯域(例えば、波長が590~620nm)の光を射出するLED光源である。LED光源15は、赤色の波長帯域(例えば、波長が630~680nm)の光を射出するLED光源である。
【0030】
LED光源11~15の各出射光は、光結合部31により結合されて内視鏡コネクタ201を介してLCB102に入射される。
光源制御部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成され、LED駆動部21~25に対して、対応するLED光源に流す電流値を示す信号を送信することにより、実質的に、LED光源11~15の各々の出射光の光強度を制御するように構成される。
【0031】
図2に示すように、光源装置230はさらに、スペクトルセンサ32、信号処理部33、スペクトル比較部34、及び、記憶部35を備える。
スペクトルセンサ32は、光結合部31の出射光から、当該出射光の光スペクトラム及び光量を取得する。スペクトルセンサ32は、LED光源11~15の各出射光の波長帯域をカバーするようにスペクトル測定を行う。スペクトルセンサ32は、例えば、検出対象の全波長帯域をカバーする複数のチャンネル(複数の分割された波長帯域)にそれぞれ対応する複数のフォトダイオードを備える。複数のフォトダイオードには、各チャンネルに対応する波長帯域の光を透過するフィルタが設けられる。スペクトルセンサ32は、光結合部31の出射光からの各フォトダイオードの検出値に基づいて、光結合部31の出射光の光スペクトラムの測定を行う。
一実施形態では、スペクトルセンサ32の複数のチャンネルのいくつかは、LED光源11~15の各出射光の波長帯域に対応する。
【0032】
信号処理部33は、例えば、スペクトルセンサ32により得られた光スペクトラム(つまり、各チャンネルの検出値の信号)に対して所定の信号の処理を行う。例えば、信号処理部33は、スペクトル比較部34において比較処理を行うのに適切な信号処理(例えば、特定のチャンネルの信号を基準とした正規化処理等)を行ってもよい。
【0033】
記憶部35は、不揮発性メモリであり、目標スペクトラムに関するデータを記憶する。目標スペクトラムは、光結合部31の出射光として予め定められた目標となる光スペクトラムであってもよいし、例えば電子内視鏡用プロセッサ200の製造時に測定された、初期の光結合部31の出射光の光スペクトラムの実測値であってもよい。
一実施形態では、目標スペクトラムは、スペクトルセンサ32の各チャンネルに対応するスペクトラムのデータである。
【0034】
スペクトル比較部34は、信号処理部33により得られる光結合部31の出射光の光スペクトラムと、記憶部35から読み出される目標スペクトラムとを比較し、その比較結果を示すデータを光源制御部10に送出する。
光源制御部10(調整部の一例)は、スペクトル比較部34における比較結果に基づき、光結合部31の出射光の光スペクトラムと、目標スペクトラムとの差分が小さくなる(例えば、所定の閾値以下となる)ように、LED駆動部21~25に対して、対応するLED光源に流す電流値を示す信号を送信する。それによって、光結合部31の出射光の光スペクトラムが目標スペクトラムと近くなるように調整される。
【0035】
スペクトルセンサ32は、電子内視鏡用プロセッサ内に設けなくてもよい。
一実施形態の電子内視鏡システム1Aでは、図3に示すように、電子内視鏡用プロセッサ200の光源装置230Aは、スペクトルセンサ32を備えておらず、電子スコープ100Aにスペクトルセンサ32が設けられる。この場合、電子スコープ100A内のLCB102(図3には図示せず)から出射される出射光が反射面41を通してスペクトルセンサ32に入射され、スペクトルセンサ32により得られた光スペクトラムが内視鏡コネクタ201を介して、光源装置230Aの信号処理部33に送られる。
【0036】
次に、図4のフローチャートを参照して、電子内視鏡システムにおいて実行されるLED光源の調整処理について説明する。
図4を参照すると、光源制御部10は、電子内視鏡用プロセッサ200の起動とともに、LED駆動部21~25に対して信号を送信し、それによって各LED駆動部が対応するLED光源を点灯させる(ステップS2)。
LED光源11~15からの出射光が光結合部31によって結合され、光結合部31からの出射光がLCB102に入射され、生体組織を照明する。光結合部31からの出射光は、スペクトルセンサ32にも向けられる。スペクトルセンサ32は、光結合部31からの出射光の光スペクトラムと光量を取得する(ステップS4)。
スペクトル比較部34は、スペクトルセンサ32により取得された光スペクトラムと、記憶部35から読み出した目標スペクトラムとを比較し(ステップS6)、その比較結果を示すデータを光源制御部10に送出する。
【0037】
一実施形態では、スペクトル比較部34での比較結果を示すデータは、スペクトルセンサ32により取得された光スペクトラムと目標スペクトラムとの間での、チャンネル単位でのピーク波長の差分を示すデータである。例えば、スペクトルセンサ32から得られる光スペクトラムのうち青色の波長帯域(例えば、波長が420~510nm)の光に対応するチャンネルの光スペクトラムのピーク波長を算出し、当該ピーク波長と、目標スペクトラムにおいて規定される青色の波長帯域のピーク波長(例えば、475nm)との差分(波長シフト量)を算出する。
【0038】
光源制御部10は、スペクトル比較部34から受信したデータに基づいて、LED光源11~15の各々から出射される波長帯域の光の波長シフト量が規定値より小さいか否か判断し(ステップS8)、小さい場合には正常であるため、何もせずに終了する。
【0039】
他方、波長シフト量が規定値以上である場合には(ステップS8:NO)、光源制御部10(温度制御部の一例)は、先ず、UV光源波長のピークが所定の閾値を超えないように温度制御を行う(ステップS10)。すなわち、エネルギーが高いUV光のピークは、電子スコープ100の先端の熱に影響するため、照明光による血液凝固、生体損傷を考慮してUV光のピークを制限することが好ましい。そこで、スペクトルセンサ32によって測定されるUV波長帯域のピークレベルが所定の閾値を超えないように、光源制御部10は、UV波長の光を出射するLED光源11に対応するLED駆動部21を制御する。つまり、LED光源11を流れる電流の値が制御される。
なお、図示しないが、LED光源の温度を制御するために、光源装置230内に、サーミスタ等の温度検出器と、LED光源の温度を調整するためのファンモータとを設けてもよい。
【0040】
次いで、光源制御部10は、再度、スペクトル比較部34から受信したデータに基づいて、LED光源11~15の各々から出射される波長帯域の光の波長シフト量が規定値より小さいか否か判断する(ステップS12)。波長シフト量が規定値より小さい場合には、光源制御部10は、スペクトルセンサ32によって測定されるUV波長帯域のピークレベルに基づいて規格化(正規化)し、他の波長帯域のスペクトラムのバランスを調整する(ステップS14)。例えば、光結合部31の出射光が目標となる白色光となるように、UV波長帯域以外の波長帯域の光の光量が調整される。
【0041】
他方、波長シフト量が規定値以上である場合には(ステップS12:NO)、光源制御部10は、UV光源波長のピークが所定の閾値を超えないように、LED駆動部21~25に対する電流制御を行う(ステップS16)。これによって、各波長帯域の光の波長シフト量を小さくし、光結合部31の出射光の光スペクトラムを目標スペクトラムに近付けることができる。つまり、光源装置230から出射される光の光スペクトラムが調整される。
なお、記憶部35は、各LED光源について、電流と出射光の波長との関係を示すLUT(Lookup Table)を記憶し、光源制御部10がこのLUTを参照し、波長シフト量を低減するために各LED光源に流す電流値を決定することができる。
【0042】
一実施形態では、図5に示すように、電子スコープにLED光源を設けてもよい。
一実施形態の電子内視鏡システム1Bでは、図5に示すように、LED駆動部26とLED光源16を有する電子スコープ100Bを備える。
光源装置230Bの光源制御部10は、LED駆動部26に対して、対応するLED光源に流す電流値を示す信号を送信することにより、実質的に、LED光源16の出射光の光強度を制御するように構成される。図5に示す例では、電子スコープ100Bに設けられるLED光源は1つであるが、その数は限定されず、異なる波長帯域の光を出射するLED光源を2以上設けてもよい。
電子内視鏡システム1Bでは、光源装置230B(第1の光源装置の一例)の光結合部31の出射光と、電子スコープ100B内のLED光源16(第2の光源装置の一例)の出射光とが結合されて、体腔内の生体組織に対する照明光となる。
電子スコープ100B内にLED光源16を設けることで、光源装置230Bからの出射光(光結合部31の出射光)の波長成分を補完することができる利点がある。例えば、図4に示したようにして、光源装置230B内のLED光源11~15の調整処理を実行した後においても波長シフト量の低減やスペクトラムのバランス調整が難しい場合に、電子スコープ100B内のLED光源16の出射光を利用して補完することができる。
【0043】
図示しないが、一実施形態では、光源装置230の光結合部31の光出射端とスペクトルセンサ32の間に、FBG(Fiber Bragg Grating)を含む光ファイバを設けてもよい。光ファイバは、光結合部31の出射光の一部をスペクトルセンサ32に導くように構成される。
スペクトルセンサ32は、光結合部31の出射光のうちFBGを透過する透過光のスペクトルを観測することにより、FBGによって反射される反射光の波長を検出する。FBGにおけるブラッグ波長は任意に設定することができる。
光源制御部10は、スペクトルセンサ32によって検出された反射光に基づいて、例えば室温等の基準温度での反射光の波長と、稼働中の(現在の)反射光の波長との波長シフト量に基づいて、スペクトルセンサ32によって取得された光スペクトラムを補正する。そのため、温度によるスペクトルセンサ32の出力変動が補正される。
【0044】
一実施形態では、電子内視鏡用プロセッサの光源装置側だけでなく、電子スコープ側にもスペクトルセンサを設けるとよい。この実施形態を図6に示す。
図6に示す電子内視鏡システム1Cでは、電子内視鏡用プロセッサの光源装置230Cにスペクトルセンサ32aが設けられ、電子スコープ100Cにスペクトルセンサ32bが設けられる。
光源装置230C内のスペクトルセンサ32aは、図2に示した実施形態と同様に、光結合部31の出射光の光スペクトラム及び光量を取得する。
電子スコープ100Cには、図5に示した実施形態と同様に、追加のLED駆動部26及びLED光源16が設けられる。スペクトルセンサ32bは、光結合部31の出射光とLED光源16の出射光とが結合した照明光の光スペクトラム及び光量を取得する。
【0045】
図6に示す電子内視鏡システム1Cにおいて実行されるLED光源の調整処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。
図7のフローチャートにおいて、ステップS2~S16は、光源装置230C内のLED光源の調整処理であり、図4のステップS2~S16と同じであるため、重複説明を省略する。
図7のフローチャートでは、ステップS2~S16の処理を実行した後においてもLED光源11~15の出射光の波長シフト量が規定値未満とならない場合(ステップS18:NO)、光源制御部10は、電子スコープ100CのLED光源16を制御する。
【0046】
具体的には、光源制御部10は、先ず、電子スコープ100C側のスペクトルセンサ32bにより、照明光の光スペクトラム及び光量を取得する(ステップS20)。なお、この時点では、LED駆動部26は、LED光源16を点灯駆動していない。
次いで、光源制御部10は、目標スペクトラムと、スコープ側のスペクトルセンサ32bにより得られた光スペクトラムとの差分値を取得し(ステップS22)、差分値に基づいてスコープ側光源であるLED光源16を点灯駆動するようにLED駆動部26を制御する(ステップS34)。すなわち、プロセッサ側の光源装置で補正できない分をスコープ側の光源装置(つまり、LED光源16)で補うようにする。それによって、電子スコープ100Cの出射光(つまり、生体組織に対する照明光)の光スペクトラムが目標スペクトラムと近くなるように調整される。
【0047】
図6に示す構成は、電子内視鏡用プロセッサと電子スコープを連結して電子内視鏡システムを製造する際の照明光のキャリブレーションを行う際にも都合が良い。すなわち、ステップS22において、プロセッサ側の光結合部31の出射光のスペクトラムの仕様値と、スコープ側のスペクトルセンサ32bにより得られた光スペクトラムとの差分値を取得し、当該差分値が小さくなるように、LED光源16を点灯駆動させる。それによって、プロセッサ側のみでは出射光のスペクトラムの仕様値に適合させることができない場合に、スコープ側で補完させることができる。
【0048】
以上説明したように、実施形態の電子内視鏡システムによれば、光源装置から出射される生体組織の照明のための出射光(照明光)の光スペクトラムを取得するスペクトルセンサを設け、スペクトルセンサによって取得された光スペクトラムと、所定の目標スペクトラムとの差分が小さくなるように、光源装置の出射光の光スペクトラムが調整されるため、体腔内の生体組織を照明する際に、照明光の光バランスの変動を適時に抑制できる。
特に、高精細な画素が配置されたイメージセンサを有する広視野(WFOV)センサスコープが利用される場合に有益である。すなわち、デジタルズームの利用により、センサスコープから観察部位までの距離が比較的離れることに起因して光源出力を増大する状況下においても、光源出力の増大に伴う照射光の光スペクトラムの変化が抑制される。
【0049】
以上、本発明の電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0050】
1,1A…電子内視鏡システム
100,100A,100B,100C…電子スコープ
16…LED光源
26…LED駆動部
32a,32b…スペクトルセンサ
41…反射面
102…LCB
104…配光レンズ
106…対物レンズ
108…撮像素子
108a…カットフィルタ
108b…ベイヤ配列カラーフィルタ
152…ドライバ信号処理回路
154…メモリ
200…電子内視鏡用プロセッサ
201…内視鏡コネクタ
202…システムコントローラ
204…メモリ
206…タイミングコントローラ
208…操作パネル
220…画像処理ユニット
230,230A,230B,230C…光源装置
10…光源制御部
11~15…LED光源
21~25…LED駆動部
31…光結合部31
32…スペクトルセンサ
33…信号処理部
34…スペクトル比較部
35…記憶部
300…モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7