(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061395
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】照明装置および照明システム
(51)【国際特許分類】
G02B 17/08 20060101AFI20230424BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20230424BHJP
F21S 43/20 20180101ALI20230424BHJP
F21S 43/31 20180101ALI20230424BHJP
F21W 103/60 20180101ALN20230424BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230424BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230424BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20230424BHJP
【FI】
G02B17/08 Z
F21S43/14
F21S43/20
F21S43/31
F21W103:60
F21Y115:10
F21Y115:30
F21Y101:00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167876
(22)【出願日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2021171254
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505474256
【氏名又は名称】佐藤ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】土井 元裕
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA29
2H087LA24
2H087LA27
2H087RA32
2H087RA45
2H087TA01
2H087TA04
2H087TA06
(57)【要約】
【課題】小型化を図りつつ、近距離からであっても広範囲に照射可能な照明装置、および、この照明装置を備えた照明システムを提供する。
【解決手段】照明装置1は、外界の照射面に任意のデザインを照射する照明装置であって、LED4と、デザインフィルム6と、デザインフィルム6を透過した光を屈折させる偏向レンズ群7と、偏向レンズ群7を透過した光を反射する反射部材8と、曲率一定の凹状の反射面9aを有する広角化素子9とを備え、偏向レンズ群7は、デザインフィルム6と広角化素子9との間に中間像を結像させるレンズ群であり、該中間像が広角化素子9の反射面9aで反射されて照射面へ照射される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外界の照射面に任意のデザインを照射する照明装置であって、
光源と、デザイン部材と、前記デザイン部材を透過した光を屈折させる偏向レンズ群と、湾曲凹状の反射面を有する広角化素子とを備え、
前記偏向レンズ群は、前記デザイン部材と前記広角化素子との間に中間像を結像させるレンズ群であり、該中間像が前記広角化素子の前記反射面で反射されて前記照射面へ照射されることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
上記反射面が曲率一定の反射面であることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記照明装置は、前記偏向レンズ群を透過した光を前記広角化素子の反射面に向けて反射する反射部材を備え、前記偏向レンズ群と前記広角化素子との間に前記中間像が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の照明装置。
【請求項4】
前記広角化素子の前記反射面は略四半球状に形成されており、前記偏向レンズ群の光軸の左右一方側の斜め下方に照射光を照射することを特徴とする請求項1または請求項2記載の照明装置。
【請求項5】
前記光源は、その光軸が前記偏向レンズ群の光軸と同一直線上に重ならず、かつ略平行になるように配置されることを特徴とする請求項4記載の照明装置。
【請求項6】
前記照明装置は、前記光源と前記デザイン部材との間に光学素子を有し、該光学素子は、前記光源から入射される光を略平行光にして出射する光学素子であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の照明装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2記載の照明装置と該照明装置が取り付けられるハウジングとを備えることを特徴とする照明システム。
【請求項8】
前記照明システムは水平面に照射する照明システムであり、前記照明システムにおいて、前記照明装置は前記ハウジングに取り付けられ、前記偏向レンズ群の光軸と前記広角化素子との光軸で形成される平面と、前記偏向レンズ群の光軸上で直交する平面が水平方向に対して1°~30°の傾きを持って構成されていることを特徴とする請求項7記載の照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、照明装置および照明システムに関し、特に車両の底部に設置される照明装置および照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に取り付けられる灯具としてロゴランプが用いられている。ロゴランプは、夜間に乗降者の足元を照らす足元照明の役割と加飾性を担っており、需要が高まりつつある。
【0003】
ロゴランプの多くは、サイドミラーや車両ドアの内側に組み込まれて使用される。近年では、ロゴランプの付加価値向上のため、例えば車両の底部(前輪付近など)に取り付けることで、ドアの開閉によってロゴが移動せずに乗降者の足元を投影できるようにしたロゴランプも考案され、市場に投入されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、現在市場に出ている車両の底部に取り付けられるロゴランプの構造は、小型化を図るべく、光源と投影レンズを備えるだけのシンプルな構造が多い。このようなロゴランプは、照射面(地面)までの距離が短く、また照射方向が地面に水平に近い方向になるため、ロゴ自体が細長く投影されている。例えば、車両用灯具としてのロゴランプは、乗降者から見て広範囲で照射させることが安全性やインパクトからして好ましいが、従来の構造ではこれらが乏しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、小型化を図りつつ、近距離からであっても広範囲に照射可能な照明装置、および、この照明装置を備えた照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の照明装置は、外界の照射面に任意のデザインを照射する照明装置であって、光源と、デザイン部材と、上記デザイン部材を透過した光を屈折させる偏向レンズ群と、湾曲凹状の反射面を有する広角化素子とを備え、上記偏向レンズ群は、上記デザイン部材と上記広角化素子との間に中間像を結像させるレンズ群であり、該中間像が上記広角化素子の上記反射面で反射されて上記照射面へ照射されることを特徴とする。
【0008】
上記反射面が曲率一定の反射面であることを特徴とする。
【0009】
上記照明装置は、上記偏向レンズ群を透過した光を上記広角化素子の反射面に向けて反射する反射部材を備え、上記偏向レンズ群と上記広角化素子との間に上記中間像が形成されることを特徴とする。
【0010】
上記広角化素子の上記反射面は略四半球状に形成されており、上記偏向レンズ群の光軸の左右一方側の斜め下方に照射光を照射することを特徴とする。
【0011】
上記光源は、その光軸が上記偏向レンズ群の光軸と同一直線上に重ならず、かつ略平行になるように配置されることを特徴とする。なお、本発明において、略平行とは、両者が平行な関係であるだけでなく、平行な関係からある程度ずれたものも包含される。
【0012】
上記照明装置は、上記光源と上記デザイン部材との間に光学素子を有し、該光学素子は、上記光源から入射される光を略平行光にして出射する光学素子であることを特徴とする。
【0013】
本発明の照明システムは、上記照明装置と上記照明装置が取り付けられるハウジングとを備えることを特徴とする。
【0014】
上記照明システムは水平面に照射する照明システムであり、上記照明システムにおいて、上記照明装置は上記ハウジングに取り付けられ、上記偏向レンズ群の光軸と上記広角化素子との光軸で形成される平面と、上記偏向レンズ群の光軸上で直交する平面が水平方向に対して1°~30°の傾きを持って構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の照明装置は、外界の照射面に任意のデザインを照射する照明装置であり、デザイン部材と広角化素子との間に中間像を結像した後、該中間像を広角化素子の反射面で反射して、例えば斜め下方へ照射面に拡大投射するため、小型でありながら、近距離であっても広範囲に照射することができる。
【0016】
広角化素子の反射面は略四半球の形状に形成されており、偏向レンズ群の光軸の左右一方側の斜め下方に照射光を照射するので、照射範囲に合わせて広角化素子をスリム化でき、装置全体の小型化を図ることができる。
【0017】
本発明の照明システムは、本発明の照明装置を備えるので、小型化を図りつつ、近距離からであっても広範囲に照射することができる。さらに、照明システムは水平面に照射する照明システムであり、照明装置はハウジングに取り付けられ、偏向レンズ群の光軸と広角化素子との光軸で形成される平面と、偏向レンズ群の光軸上で直交する平面が水平方向に対して1°~30°の傾きを持って構成されているので、広角化素子により反射された光がより広角化し、広範囲を照射しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の照明装置の一形態の概略構成図である。
【
図2】
図1の照明装置から出射される光線などを示す図である。
【
図3】本発明の照明システムの一形態の概略構成図である。
【
図4】
図3の照明システムから出射される光線などを示す図である。
【
図5】本発明の照明装置が車両に取り付けられた態様を示す図である。
【
図6】ロゴを地面に照射した場合の解析結果を示す図である。
【
図7】照明装置における光学素子の変形例を示す図である。
【
図8】本発明の照明装置の他の形態の概略構成図である。
【
図9】照明装置における光学素子の変形例を示す図である。
【
図10】本発明の照明装置の他の形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の照明装置の一形態について
図1に基づいて説明する。
図1の照明装置は、外界の照射面に任意のデザインを表示するものである。この照明装置が、例えば車両の底部に取り付けられ、照射面となる地面にロゴマークなどを映し出す車両用灯具として用いられる。
【0020】
図1は照明装置を側方から見た概略構成図である。照明装置からの照射光は、
図1において斜め下方に向けて出射される。本発明において、偏向レンズ群の光軸O
bに平行な方向をX軸方向とし、この光軸O
bに直交する上下方向をZ軸方向とする。なお、X軸方向は照明装置の長手方向でもある。
【0021】
照明装置1の全体的なサイズは、特に限定されないが、本発明の照明装置はコンパクトであるので、小スペース内に搭載される照明装置に適している。照明装置1のX軸方向の長さは160mm以下であることが好ましく、140mm以下であってもよい。また、Z軸方向の長さが80mm以下であることが好ましく、70mm以下であってもよい。
【0022】
照明装置1は、装置ハウジング2の空間内に、光源としてのLED4を備え、LED4からの光を屈折させ、かつ、広角化させて外界の照射面に照射する照明装置である。
図1において、LED4は、回路基板3上に設けられている。LED4としては、例えば、青色、赤色、および緑色などの単色系LED、あるいは青色系LED、赤色系LED、および緑色系LEDを備えたRGB型のLEDを使用できる。なお、LEDに代えて、LDや電球を用いてもよい。
【0023】
照明装置1は、LED側より順に、光学素子5と、デザイン部材としてのデザインフィルム6と、デザインフィルム6を透過した光を屈折させる偏向レンズ群7と、反射部材8と、湾曲凹状の反射面9aを有する広角化素子9とを有している。偏向レンズ群7は、デザインフィルム6と広角化素子9との間に中間像を結ばせるレンズ群であり、該中間像が、広角化素子9の反射面9aで反射されて斜めに向けて出射される(
図2参照)。装置ハウジング2において広角化素子9の曲面9aの対向位置には開口部(図示省略)が設けられており、その開口部に設けられたカバー(図示省略)を通過した光が照射面に映し出される。なお、照明装置1の外形形状は、例えば、略直方体形状や円筒形状などである。
【0024】
光学素子5は、LED4から出射された光を入射して略平行光にして出射する光学素子であり、ポリカーボネートやアクリル、ガラスなどの透明材質によって形成される。光学素子5としては、後述の
図7~
図9で示すように様々な形状を採用できる。
【0025】
図1において、光学素子5は、光路制御に関わる主な光学機能面として、入射面5aと、反射面5bと、出射面5cとを有する。これら光学機能面は、光学素子5に一体に設けられている。入射面5aは、更に第1入射面と第2入射面を有する。第1入射面はLED4の出射面と対向する位置に配置され、LED4側に凸の曲面で構成されている。第1入射面は、LED4から入射した光を平行光とする機能を有する。第2入射面は、第1入射面の周縁からLED4側に向けて延びた円筒形状をなしており、LED4からの入射光を屈折させ反射面5bへ向ける機能を有する。反射面5bは、第2入射面のLED4側の端部からX軸方向に向かって拡径する環状の傾斜面で構成されている。反射面5bは、光学素子5内に入射した入射光をデザインフィルム6側へ向けて全反射する全反射面である。LED4の光軸O
aに対して垂直に切断した反射面5bの形状は、円形である。出射面5cは、光学素子5のX軸方向側の端面に位置し、LED4から入射した光をデザインフィルム6に向けて出射する。
図1において、出射面5cは、X軸方向に対して直交した平面で構成されている。
【0026】
デザインフィルム6は遮光部と非遮光部で構成されており、デザインフィルム6を透過する光の光線量の差が模様となって表れる。デザインフィルム6には、公知のものを用いることができる。また、デザインフィルム6は視野絞りとなる開口部を有していてもよい。
図1において、デザインフィルム6はそのフィルム面(YZ平面)が光源の光軸O
aに対して略直交して配置されている。照明装置1において、フィルム面と照射面との角度は10°以上、好ましくは50°以上であることが好ましい。当該角度の上限は、例えば120°である。
【0027】
偏向レンズ群7は、少なくとも2枚以上のレンズで構成される。
図1において、偏向レンズ群7は、LED側より順に、第1レンズ7Aと、第2レンズ7Bと、第3レンズ7Cと、第4レンズ7Dとを有する。レンズの面形状について、具体的には、第1レンズ7Aは入射側が凸に形成されたプラスのパワーを持ったレンズであり、第2レンズ7Bと第3レンズ7Cはプラスのパワーを持つレンズ群を構成しており、第4レンズ7Dは入射側が凸、出射側が凹に形成されたプラスのパワーを持ったレンズである。また、各レンズの配置については、第2レンズ7Bと第3レンズ7Cが近接して配置されており、これらの間の距離は、他のレンズ間の距離に比べて小さくなっている。
【0028】
また、第3レンズ7Cと第4レンズ7Dとの間には、開口絞りSTが設けられている。偏向レンズ群7において、開口絞りSTに近接する第3レンズ7Cは、光路の最下流のレンズ(第4レンズ7D)よりも、開口絞りSTから近い位置に配置されている。
【0029】
図1の偏向レンズ群7において、第1~第4レンズ7A~7Dは編芯しておらず、各レンズの光軸と偏向レンズ群7の光軸O
bは一致している。なお、偏向レンズ群7の光軸O
bは、偏向レンズ群7内のレンズの一部が偏芯している場合は、開口絞りSTの中心を通り、その開口絞りSTの断面に垂直な軸をいう。
【0030】
図1において、偏向レンズ群7の光軸O
bは、LED4の光軸O
aと同一直線上に重ならず、かつ略平行になっている。これらの光軸はZ軸方向にシフトした関係になっている。具体的には、LED4および光学素子5は、偏向レンズ群7の光軸O
bを境にして一方側(上方側)に位置するように配置されている。
【0031】
第1~第4レンズ7A~7Dは、ポリカーボネートやアクリル、ガラスなどの透明材質によって形成される。各レンズの光学機能面は、球面または非球面であり、
図1において、各レンズの共通の光軸である光軸O
bに対し回転対称な形状を有している。また、偏向レンズ群を構成する一部のレンズが接合レンズで構成されていてもよい。
【0032】
反射部材8は、偏向レンズ群7を透過した光を広角化素子9の反射面9aに向けて反射する反射面8aを有しており、例えば平板状のミラーである。
図1の照明装置1では、偏向レンズ群7と広角化素子9との間に中間像が形成される。なお、反射部材8はミラー蒸着によって形成した反射面を有する部材であってもよい。反射部材8を設けることにより、光路を所望の角度(例えば60°~120°)折り曲げることができる。これにより、例えば、デザインフィルム6のフィルム面と照射面とが略直交する場合であっても、反射部材8による反射と広角化素子9による反射を組み合わせることで、照明装置の全高を小さくすることができる。
【0033】
広角化素子9は、反射部材8からの光を反射して、照射面に導く反射面9aを有する。広角化素子9は、照明装置1における光路の最下流において、反射面9aの光軸Ocが反射部材8を基準に偏向レンズ群7の光軸Obと対称に配設される。そして、広角化素子9は、偏向レンズ群7および反射部材8により導かれた中間像を反射して、斜め下方側に折り返すとともに当該画像を広角化する。反射面9aは曲率一定の凹面形状を有している。
反射面9aの曲率が一定の場合、どの方向に向けて(回転して)も同じ断面であるため、形状評価の基準点となる軸対称の曲率頂点が任意に設定できる。これにより部品形状の制限を受けにくい姿勢で曲率頂点を設定することができ、特別な光学用測定機でなくても一般的な三次元測定機で形状の評価がしやすく、製造面で好ましい。また、反射面が非球面の場合、形状評価の基準点となる軸対称の曲率頂点は1点のみであるため光軸Oc上の頂点を残さないと、つまり部品形状と曲率頂点の関係によっては形状の評価が困難になる。また反射面が曲率一定の場合は、反射面を反射に使用する部分(反射エリア)だけを残して必要最小限までサイズダウンしても形状の評価がしやすく、部品のサイズダウンを図ることができ、ひいては、照明装置の小型化に繋がる。このように、反射面9aを曲率一定とすることで、装置の小型化および製造面の両面において好ましいといえる。
【0034】
照明装置1は、例えば、偏向レンズ群7の光軸Obの斜め下方に照射光を照射する形態で用いられ、この形態において広角化素子9の反射面9aは略半球から略四半球の形状に形成されることが好ましい。特に、偏向レンズ群7の光軸Obの左右一方側の斜め下方に照射光を照射する形態の場合、広角化素子9の反射面9aは略四半球状に形成されることが好ましい。この場合、広角化素子の反射面が略半球状の場合などに比べて、該広角化素子をよりスリム化でき、装置の小型化に繋がる。
【0035】
次に、偏向レンズ群に入射した光が照射面に照射されるまでの光線を
図2に示す。
図2(a)は照明装置の一部拡大図を示し、
図2(b)は照明装置と照射面の関係を示す。
図2は、
図1と同様に、照明装置を側方から見た図である。
図2(a)に示すように、光源から出射され、光学素子およびデザインフィルムを透過した光は、略平行光となって偏向レンズ群に入射される。偏向レンズ群の第1~第3レンズ7A~7Cは開口絞りSTに向けて屈折させ、第4レンズ7Dは開口絞りSTによって絞られた光を屈折させる。偏向レンズ群を透過した光は、反射部材8および広角化素子9によって反射されて、外界に出射され、例えば照射面である水平面に照射される(
図2(b)参照)。
【0036】
照明装置から照射面までの距離、例えば照射面が水平面である場合、該水平面を基準にした照明装置の取り付け高さは1cm~100cm程度である。このように照明装置から照射面までの距離が近距離であっても、
図2に示すように、X軸方向において照明装置の手前側から奥側にかけて広範囲に照射することができる。具体的には、照明装置から照射面に降ろした垂線と照射面との交点を基準にして、該交点からX軸方向における距離が1cm~30cm程度の手前側から20cm~200cm程度の奥側まで照射することができる。
【0037】
本発明の照明システムの一形態を
図3に示す。
図3に示すように照明システム11は、上述した照明装置1とその照明装置1が取り付けられるハウジング12とを備えている。ハウジングへの取り付け方法は特に限定されず、照明装置1の角度を調整できる角度調整部材を介してハウジングに取り付けてもよい。
【0038】
また、照明装置1のハウジング12に対する取り付け角度は特に限定されないが、例えば照明システム11が水平面として地面に照射する照明システムである場合、
図3(a)に示すように、照明装置1は、広角化素子9の光軸O
cに直交し、かつ、偏向レンズ群7の光軸O
bを通る平面(XY平面)が水平面HPに対して所定角度(角度θ
a)上向きになるように取り付けられることが好ましい。この角度θ
aは、例えば1°~30°であり、3°~28°が好ましく、3°~15°であってもよい。
【0039】
また、
図3(b)に示すように、照明システム11において、照明装置1の上記平面(XY平面)が水平面HPに対して所定角度(角度θ
b)なすように、偏向レンズ群7の光軸O
bの回転方向に傾けてもよい。偏向レンズ群7の光軸O
bの回転方向にも角度を付けることで、左右方向の一方側に大きく照射することができる。この角度θ
bは、例えば1°~30°であり、3°~28°が好ましく、3°~15°であってもよい。なお、
図3(b)は、光軸方向が紙面手前側から紙面奥側に向かう方向であり、図左側の斜め下方に向けて照射光を出射する形態を示している。この場合、光軸O
bを、上から下へ、且つ、照射する側(
図3では左側)とは反対側(
図3では右側)へ向けて回転させることで、照明装置1を傾ける。
【0040】
図4は、照明装置を5°上向きに傾けた構成における光線の様子を示している。水平面に照射する場合、照明装置を上向きに傾けることで、より広範囲を照射しやすくなり、照射範囲も奥行きのある略長方形状になりやすい。
なお、例えば照明システム11が水平面として天井面に照射する照明システムである場合、照明装置1は、広角化素子9の光軸O
cに直交し、かつ、偏向レンズ群7の光軸O
bを通る平面が水平方向に対して所定角度(例えば1°~10°)下向きになるように取り付けられてもよい。
【0041】
なお、
図3(a)の形態と
図3(b)の形態を組み合わせてもよい。つまり、水平面に対して光軸の上下方向の傾きと左右方向の傾きを組み合わせて、照明装置を取り付けるようにしてもよい。
【0042】
次に、
図5および
図6には、照明装置を車両用灯具として用いた形態について説明する。
図5は、車両と照射範囲の位置関係を上方から見た平面模式図である。
図5において、照明装置1は、車両13の右側面側の底部で、かつ、前輪14と後輪15の間に取り付けられている。この場合、車両本体やその一部分が、照明システムにおけるハウジングに相当する。照明装置1は、後部座席から乗降する乗降者の足元を照らすように設置されている。
図5において、照明装置1におけるX軸方向は、車両13の前後方向と一致し、照明装置1におけるY軸方向は、車両13の左右方向に一致している。
【0043】
図5(a)において、LED4の位置が照明装置1の前方位置とすると、照明装置1の照射光IRは、LED4から見て左側の後方斜め下方に向けて出射される。その結果、
図5(a)に示すように、車両13の右側の後方ドアの開閉領域付近の地面を照射することができる。
図5(a)では、照明装置1の照射範囲が符号Sで表されている。この場合、矩形状の照射範囲Tの後方側の領域が車両13から離れる側にY軸方向に広がった形状になっている。照射範囲Sの設定は、例えば、照明装置1の取り付け位置や取り付け角度などによって調整することができる。
【0044】
図5(b)には、
図5(a)における照明装置1の拡大図を示している。
図5(b)では、反射部材は紙面奥側に位置し、広角化素子9は紙面手前側に位置している。この場合、広角化素子9は、その反射面が略四半球状に形成されている。照明装置1において、広角化素子9のXY平面における断面は略四半円状である。
【0045】
図6には、デザインフィルムのロゴを地面に照射した場合の解析結果を示す。この場合、照明装置の地面からの高さは、20~30cm程度を想定している。
図6に示すように、照射範囲Sにおいて後方側の領域ほど照度が低下し、車両から離れる側の領域ほど照度が低下しているものの、照射エリアの大部分において、デザインの歪みが少なく、十分視認できる程度にデザインが投射されていることが分かる。
【0046】
図7(a)、(b)には、照明装置の
図1の形態の変形例をそれぞれ示す。
図7(a)、(b)の照明装置は、
図1の照明装置と比べて光学素子の構成が異なっており、それ以外の構成は同様である。
【0047】
図7(a)に示すように、光学素子16は、光路制御に関わる主な光学機能面として、入射面16aと、反射面16bと、出射面16cとを有する。これら光学機能面は、光学素子16に一体に設けられている。
【0048】
光学素子16のLED4に対向する面が入射面16aである。入射面16aを光軸方向から見た形状は六角形であり、光学素子16は、入射面16aからX軸方向へ向かって拡径する略六角錘形状である。光学素子16において、反射面16bは6つの面で構成されている。反射面16bは、入射面16aを介してLED4から入射する光をデザインフィルム6側へ向けて全反射する全反射面である。なお、光軸に対して垂直に切断した反射面16bの形状は六角形である。
図7(a)の照明装置において、入射面16aから入射した入射光(反射面16bで反射した反射光も含む)は、光源の光軸O
aと略平行な方向に伝搬し、出射面16cから出射される。なお、
図7(a)では、光学素子16の形状を入射面16aからX軸方向へ向かって拡径する略六角錘形状としたが、これに代えて、略四角錘形状や略五角錘形状などの略多角錘形状としてもよい。
【0049】
図7(b)に示すように、光学素子17は、光路制御に関わる主な光学機能面として、入射面17aと、反射面17bと、出射面17cとを有する。これら光学機能面は、光学素子17に一体に設けられている。
【0050】
光学素子17のLED4に対向する面には、光軸Oaに対して同心円状に形成された複数の円周溝が設けられている。この円周溝の構成面が反射面17bとなっており、反射面17bは複数の反射面で構成される。なお、円周溝の構成面の一部は入射面17aにもなっている。反射面17bは、入射面17aを介してLED4から入射する光をデザインフィルム6側へ向けて全反射する全反射面である。なお、光軸Oaに対して垂直に切断した反射面17bの形状は、円形である。入射面17aから入射した入射光(反射面17bで反射した反射光も含む)は、光軸Oaと略平行な方向に伝搬し、出射面17cから出射される。
【0051】
本発明の照明装置の他の形態を
図8に基づいて説明する。照明装置21は、装置ハウジング22の空間内に、回路基板23上に設けられたLED24と、光学素子25と、デザイン部材としてのデザインフィルム26と、デザインフィルム26を透過した光を屈折させる偏向レンズ群27と、反射部材28と、湾曲凹状の反射面29aを有する広角化素子29とを有している。照明装置21では、上述した
図1の照明装置1と異なり、LED24および光学素子25が、その光軸O
aが偏向レンズ群27の光軸O
bと直交するように配置されている。LED24および光学素子25をこのように配置することで、照明装置21のX軸方向の長さを短くしやすくなる。なお、LED24、デザインフィルム26、偏向レンズ群27、反射部材28、および広角化素子29については、
図1の照明装置1の各構成と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
図8に示すように、光学素子25は、入射面と、第1反射面と、第2反射面25aと、出射面とを有する。これら光学機能面は、光学素子25に一体に設けられている。なお、入射面、第1反射面、および出射面の基本構成は、
図1の光学素子5における各構成と同様である。
【0053】
図8において、光学素子25は、Z軸方向へ沿って延び、第1反射面と第2反射面25aを接続する円柱状の柱部25bを有する。なお、柱部25bは、円柱状に限らず多角柱状であってもよい。入射面から入射した入射光(第1反射面で反射した反射光も含む)は、光源の光軸O
aと略平行な方向に伝搬し、柱部25bを通過して第2反射面25aへ導かれる。
【0054】
第2反射面25aは、光源の光軸O
aと略平行な方向へ進行する光をデザインフィルム26側に反射する反射面である。なお、第2反射面25aは全反射面でもよく、ミラー蒸着によって形成した反射面などでもよい。
図8において、第2反射面25aは、光軸O
a上から、その光軸O
aに対してデザインフィルム26側へ向けて約45°傾けた直線で切断した傾斜平面である。第2反射面25aの形状は、傾斜平面に限らず、例えば、外側に凸の傾斜曲面で構成されていてもよい。光学素子25の出射面は、第2反射面25aによる反射光をデザインフィルム26に向けて出射する機能を有する。
【0055】
また、光学素子25には、柱部25bの外周面からX軸方向へ突出した段差部25cが形成されており、出射面はこの段差部25cのX軸方向側の端面に形成されている。段差部25cは、X軸方向から見て略円形に形成される。段差部25cの突出高さは特に限定されないが、例えば0.1~5mmである。
【0056】
図8の形態の照明装置21の光学素子25として、例えば
図9(a)、(b)に示すような光学素子31、32を用いてもよい。光学素子31は、上述の光学素子16に第2の反射面を設けて折り曲げた形状としたものであり、光学素子32は、上述の光学素子17に第2の反射面を設けて折り曲げた形状としたものである。なお、
図8および
図9では、第2反射面を光学素子と一体に形成したが、例えば、第2反射面を構成する部材を別部材として設けてもよい。
【0057】
本発明の照明装置の他の形態を
図10に基づいて説明する。照明装置41は、装置ハウジング42の空間内に、回路基板43上に設けられたLED44と、光学素子45と、デザイン部材としてのデザインフィルム46と、デザインフィルム46を透過した光を屈折させる偏向レンズ群47と、反射部材48と、湾曲凹状の反射面49aを有する広角化素子49とを有している。照明装置41では、上述した
図1の照明装置1と異なり、広角化素子49の反射面49aが、非球面の自由曲面である。この構成においても、広角化素子49は、偏向レンズ群47および反射部材48により導かれた中間像を反射して、斜め下方側に折り返すとともに当該画像を広角化する。
【0058】
上記
図1~
図10では、光学素子の出射面は、X軸方向に対して直交した平面としたが、出射面の面形状はこれに限定されない。例えば、デザインフィルム側に凸状の曲面で形成されてもよく、凹状の曲面で形成されてもよく、またこれらとX軸方向に対して直交した平面とを組み合わせてもよい。例えば、出射面を凸状や凹状の曲面で形成することで、偏向レンズ群の収差補正を補強でき、照射先でのスポット径が抑制しやすくなると考えられる。
【0059】
以上、本発明の照明装置の各形態およびそれらの変形例について説明したが、本発明の照明装置はこれらの構成に限らない。例えば、上述の構成では、デザインを施すためにデザインフィルムを用いたが、デザインフィルムの代わりに、光学素子の出射面にデザインに対応した三次元形状を設けることで、所定のデザインを投影させるようにしてもよい。この場合、出射面から出射される二次光源を凸部や凹部によって意図的に屈折させることで、光学レンズに入射される光線量を変化させ、所定のデザインを表示することができる。また、デザインフィルムの代わりに、光源から出射された光を直接的に変調させてデザインを生成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の照明装置は、小型化を図りつつ、近距離からであっても広範囲に照射可能であるので、車両用灯具や天井灯具などとして、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 照明装置
2 装置ハウジング
3 回路基板
4 LED(光源)
5 光学素子
6 デザインフィルム(デザイン部材)
7 偏向レンズ群
8 反射部材
9 広角化素子
11 照明システム
12 ハウジング
13 車両
14 前輪
15 後輪
16 光学素子
17 光学素子
21 照明装置
22 装置ハウジング
23 回路基板
24 LED(光源)
25 光学素子
26 デザインフィルム(デザイン部材)
27 偏向レンズ群
28 反射部材
29 広角化素子
31 光学素子
32 光学素子
41 照明装置
42 装置ハウジング
43 回路基板
44 LED(光源)
45 光学素子
46 デザインフィルム(デザイン部材)
47 偏向レンズ群
48 反射部材
49 広角化素子