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  • 特開-マイクロキャパシタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061405
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】マイクロキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/06 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
H01M12/06 G
H01M12/06 F
H01M12/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142109
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】500055935
【氏名又は名称】佐想 光廣
(71)【出願人】
【識別番号】517217232
【氏名又は名称】クロステクノロジーラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】佐想 光廣
【テーマコード(参考)】
5H032
【Fターム(参考)】
5H032AA02
5H032AS02
5H032AS11
5H032CC11
5H032CC16
5H032HH00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電池電極間に形成されるマイクロキャパシタの提供。
【解決手段】過酸化水素を含み、双極子電気二重層を金属銅又はその合金からなるカソード電極と、カソード電極より電極電位が卑である、電極電位差を形成する金属又はその合金からなるアノード電極との間に形成してなる、カソード電極からアノード電極に電子がトンネル現象で流れる構造を形成するマイクロキャパシタであって、アバランシェ増幅に似た電流増幅現象を引き起こす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2.0e.s.u.×10-15以上の双極子能率を有する双極子を含み、双極子電気二重層を電極との界面に形成する水溶性電解液と、金属銅又はその合金からなるカソード電極と、カソード電極より電極電位が卑なる電極電位差を形成する金属又はその合金からなるアノード電極とを備え、カソード電極とアノード電極との間に少なくとも1分子の双極子が挟持されて形成され、カソード電極からアノード電極への電子の流れにトンネル効果を付与する機能を有することを特徴とするマイクロキャパシタ。
【請求項2】
前記マイクロキャパシタが、カソード電極面から突出する鋭角三角形状の突起電極と、その先端とアノード電極表面との間に挟持される少なくとも1個の過酸化水素分子とで形成される双極子電気二重層である請求項1に記載のマイクロキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池構成において、カソード電極からアノード電極表面局部に形成されるマイクロキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気二重層キャパシタが応答性のよい蓄電池として注目を浴びており、瞬発力に優れた小型電池の機能を有し、その上、急速な充放電や百万回を超える充放電にも耐えるなどの機能を有するため、蓄電池の機能を改善する可能性を有する方策として検討される。他方、本発明者は過酸化水素を含む電解液中ではアノード電極とカソード電極とを極めて接近させても電極間に双極子電気二重層が形成され、セパレータ無くしても短絡しないことを見出している(特許文献1)。そこで、発明者はこの電気二重層キャパシタを電池構成に取り組むべく、カソード側電極を部分的にアノード電極に接近させると、電流の増大が見られ、ホトダイオードにおいて見られると同様のアバランシェ増幅現象が起きることを見出した。アバランシェ増幅とは、強い電界をもつ半導体の受光部に光が入ると、半導体原子への光子の衝突によって発生する電子が加速され、他の半導体原子と衝突し、更に複数の電子を喚起し、このなだれのような連鎖によって、移動電子が爆発的に増える現象をいう(非特許文献1)。かかる現象は半導体又は絶縁体において、起こる特異な現象であるが、一対の電池電極間に双極子を介してマイクロキャパシタが形成されると、本発明者は金属空気電池又は過酸化水素燃料電池反応において、このアバランシェ増幅に似た現象が起こることを見出した。すなわち、一対の電池電極間に双極子を介して複数のマイクロキャパシタが形成されると、このマイクロキャパシタには、周囲のカソード電極から電子が流れ込んで蓄電される。このカソード電極が三角形の突起電極を介してアノード電極の局部に接近していると、トンネル現象によりアノード電極の局部に電子が流れ始め、電極の他の原子に衝突して喚起すると、前記アバランシェ増幅を起こすと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2021-073490号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ホトダイオード(PD)の構造や原理とは」byファイバーラボ株式会社
【非特許文献2】水渡英二著:物理化学の進歩(1936),10(3):154~165頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、電極と電解液との界面に双極子電気二重層を形成する水溶液電池に利用できるマイクロキャパシタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
過酸化水素という双極子能率の高い化合物は電極面に双極子電気二重層を形成すると、カソード電極とアノード電極を接触させても短絡しない。特にカソード電極から鋭角三角形状を切り出し、突出する突起電極を形成してアノード電極の局部に極めて接触するようにさせてもカソードとアノード間に双極子電気二重層を形成され、短絡せず、マイクロキャパシタを形成し、カソードからの電子を蓄電しては所定の電荷が溜まるまで蓄電し、トンネル効果により電子がカソードからアノードに流れ始めると、急激に対向するアノード局部に集中して流れ、アバランシェのごとく増幅されることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、2.0e.s.u.×10―15以上の双極子能率を有する双極子を含み、双極子電気二重層を電極との界面に形成する水溶性電解液と、金属銅又はその合金からなるカソード電極と、カソード電極より電極電位が卑なる電極電位差を形成する金属又はその合金からなるアノード電極とを備え、カソード電極とアノード電極との間に少なくとも1分子の双極子が挟持されて形成され、カソード電極からアノード電極への電子の流れにトンネル効果を付与する機能を有することを特徴とするマイクロキャパシタにある。
特に、カソード電極面から突出する鋭角三角形状の突起電極と、その先端とアノード電極表面との間に挟持される少なくとも1個の2.0e.s.u.×10―15以上の双極子能率を有する双極子、例えば過酸化水素分子とで形成される双極子電気二重層であるマイクロキャパシタが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマイクロキャパシタによれば、カソード電極からアノード電極に電子がトンネル現象で流れる構造を形成するマイクロキャパシタ(図1)であって、アバランシェ増幅に似た電流増幅現象を引き起こす(図4)。
しかも、過酸化水素は双極子としてカソード電極表面に双極子電気二重層を形成するが、同時に、カソード電極表面に介在してアノード電極が接触しても短絡せず、しかも電気双極子は集電機能を有する電気二重層キャパシタを形成し、複数の電極突起は、アノード電極との間に複数のマイクロキャパシタを形成し、集電して一定の電荷が溜まると、トンネル現象により放電を繰り返すマイクロキャパシタを構成して点在し(図3)、等価な回路構成の概念図は図4のように示され、図5に示す起電力変化を起こす。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のマイクロキャパシタの概念図である。
図2】本発明のマイクロキャパシタを適用する空気電池の概念図である。
図3】本発明のマイクロキャパシタを構成する銅電極の構成の(A)は斜視図、(B)はマグネシウム電極と銅電極の組み合わせ状態の断面図である。
図4】多数のマイクロキャパシタを形成した電池の概念図である。
図5】本発明のマイクロキャパシタをマグネシウム空気電池に適用した場合の発電状態を示すグラフである。
図6】通常の電気二重層キャパシタを形成する電池の銅電極の構成の(A)は斜視図、(B)はマグネシウム電極と銅電極の組み合わせ状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明では、図2に示すように、Mgアノード電極板とCuカソード電極板を過酸化水素を含むアルカリ性電解液に浸漬して対向配置してなる。そして、図3(A)に示すように、銅電極10はその一部を三角形に切り欠いて電極面に対し直角に立ち上げ、高さ5~15mmの鋭角三角形の突起電極11を形成し、その先端をマグネシウム電極面に柔らかく接するように、対向させる。少なくとも1分子の双極子が介在する間隔が好ましい。突起電極は150mmから200mmの間隔で形成し、周囲のカソード電極領域から電子が流れ込むようにするのがよい。
【0010】
アノード電極/過酸化水素を含むアルカリ性電解液/カソード電極の構成における起電力であって、その金属空気電池の反応は次の通りである。
アノード側の酸化反応を2Mg→2Mg2+ + 4e-と、
他方、カソード側の還元反応をO+HO+4e-→4OH- となる。
本発明では、金属空気電池のカソード側の還元反応を促進するために、電解液に過酸化水素を添加し、アノード側負極に比べてカソード側正極のイオン化進行速度が劣る原因を改善した。
すなわち、金属銅はCu+H→Cu2++OH+OH-及び Cu+OH→Cu2++OH-と一部過酸化水素に溶けるが、
Cu2++HO -→Cu+2HOと、HO基がHaber u. Willstatter連鎖によって過酸化水素の分解を促進するからであると思われる(非特許文献2)。
【0011】
しかも、本発明によると、カソード電極の表面に形成される電気二重層は過酸化水素を含み、その双極子(ダイポール)機能により形成されるため、イオン透過性セパレータ機能を有する。そのため、対極のアノード電極はカソード電極と接触しても短絡せず、対向するアノード電極とカソード電極の接触を一定間隔で点状に配置される突起等で形成すると、点状突起の先端に電気二重層キャパシタ構造を有することになり(図1)、電極表面にマイクロコンデンサとして多数点在し、電池起電力を集電してはトンネル効果により流れ、アバランシェ増幅を繰り返す(図5)ので、マクロコンデンサ機能を有しない同一電極構成の場合に比して30%から2倍以上の発電能力を発揮することになる。
【0012】
本発明においては、前記水溶性電解液に過酸化水素の一部又は全部を過炭酸ナトリウムにより供給するのが好ましい。具体的には、0.5から2.0モルのアルカリ金属又はアルカリ土類金属ハロゲン化塩、特に塩化ナトリウムを含む中性又はアルカリ性水溶液に対し数%から十数%の過酸化水素水(体積%)又は過炭酸ナトリウム(重量%)を添加するのが好ましい。
【0013】
アノード電極がマグネシウム又はその合金からなり、
(-)Mg/NaCl+H/Cu(+)の電池構成をとることにより、銅カソード電極との間に過酸化水素又はそれが分解したヒドロキシラジカルを分解するに必要な分解電圧を与える。マグネシウム合金電極としてMAZ61又はMAZ31のマグネシウム/アルミ/亜鉛の合金電極が使用できる。
【0014】
前記アノード電極とカソード電極とを交互にスペーサを介して一定の間隔をもって対向配置し、アノード電極とカソード電極との接触部に過酸化水素を含む水溶性電解液により電気二重層キャパシタを形成するが、前記スペーサがカソード電極と同じ金属銅又は銅合金からなり、対極表面に一定間隔を隔てる点状突起を有する(図2)のが好ましい。マイクロキャパシタは2.0e.s.u.×10-15以上の双極子能率を有する双極子、例えば過酸化水素の1分子のnmオーダーの間隔をもってカソード電極とアノード電極を対向させることにより、構成されるが、カソード電極からアノード電極局部にトンネル電流が集中して流れるように、カソード電極面から三角形状の電極を突出させる。
【実施例0015】
図3に示す銅電極を使用して図1に示す概念のマイクロキャパシタがある電池を構成した。
容量3000mlの上方開放型直方体プラスチック容器を用いる。図2では、1mm厚み、縦横100×100mmの銅カソード電極板10に上下左右に150mmないし200mm間隔で多数の三角形の50ないし100mmの高さの突起11を切り立て(図3A)、図3Bに示すように、両端銅板10は突起11を内向きに、真ん中は背中合わせに張り合わせた銅電極10で両方向に突出させ、2mm厚み、縦横100×100mmのマグネシウムアノード電極板20を挟み込んで組み合わせる。
この組み合わせ電極を使うと、図1に示すように、銅カソード電極の表面にマイクロキャパシタを形成することができる。
他方、1mm厚み、縦横100×100mmの銅カソード電極板10に銅電極板をT字形に切り出し、端部を折り曲げて形成したスペーサSを取り付ける。このカソード電極板でスペーサSを介して2mm厚みの縦横100×100mmのMgアノード電極板20の両側を挟みつける。3枚の銅カソード電極板10で、2枚のMgアノード電極板20はスペーサSを介して交互に挟みつける。この組み合わせ電極を使うとマイクロキャパシタは形成しない。
【0016】
プラスチック容器にはおよそ1500mlの純水に塩化ナトリウム0.5モル/l以上、好ましくは1.5モル/l以上2モル/lの電解液を調整し、これに過炭酸ナトリウム50~100gと30%過酸化水素水50mlを加える。
電池反応は一定時間過ぎると、過酸化水素が消費され、電球が減少するので、2~3時間ごとに10mlの30%過酸化水素水を添加する。
【0017】
本件実施例においては、図3AおよびBの電極構成と図6AおよびBの電極構成の性能を比較してマイクロキャパシタを銅カソード電極表面に形成する場合とない場合の性能比較を行った。
電極構成以外は同じ条件としたので、アルカリ電解水における過酸化水素燃料電池反応に、マグネシウム空気電池反応が伴うものである点は同じである。したがって、以下の反応式に基づき、
過酸化水素がH+2HO+2e-→2HO+2OH-に分解する一方、カソード電極側でH+2OH-→O+2HO+2e-の酸化反応を起こすだけでなく、アルカリ性電解液での金属酸化反応がMg→Mg2++2e-となり、カソード側での酸素を還元してイオン化する反応がO+2HO+4e-→4OH-と典型的な金属空気電池反応が起こる。但し、過酸化水素燃料電池及び金属空気電池反応では酸素ガスは発生すると理解できるが、上記構成では酸素ガスだけでなく、水素ガスも発生する。ということは、非特許文献2(水渡英二著、物理化学の進歩(1936)、10(3):154~165頁)に示唆されるように、銅カソード電極表面で触媒機能が働き、過酸化水素の分解又はヒドロキシイオンの分解が起こり、発電反応に繋がっていると思われる。
2H→4・OH→H+O+4e-
4OH-→H+O+4e-
【0018】
以上の実験結果を考察すると、マイクロキャパシタを作る構成にもよるが、図3に示すマイクロキャパシタを有する燃料電池は図6に示すマイクロキャパシタを有しないものに比して2倍以上の電流値の増加を見ることがわかった。
マイクロキャパシタに伴う集電放電効果が電池の発電量に大きな影響を与えることがわかる。そのため、本発明の構成は1コンパートメント構造の過酸化水素燃料電池として新規で有用な構成を提供することができるので、画期的である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6