(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061406
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 55/10 20060101AFI20230425BHJP
B23Q 16/10 20060101ALI20230425BHJP
B23Q 1/28 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
F16D55/10 A
B23Q16/10 Z
B23Q1/28 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167312
(22)【出願日】2021-10-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】591082591
【氏名又は名称】三陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】本田 武信
(72)【発明者】
【氏名】森畑 知也
【テーマコード(参考)】
3C048
3J058
【Fターム(参考)】
3C048DD11
3C048EE00
3J058AB39
3J058BA07
3J058BA62
3J058BA64
3J058BA70
3J058CA78
3J058CB30
3J058CC03
3J058CC06
3J058CC82
3J058FA32
(57)【要約】
【課題】回転軸を秒単位の角度をもって超高精度の回転静止保持を可能としたクランプ装置を提供する。
【解決手段】クランプケーシング内に固設される閉円環板状リング体10Aと、このリング体10Aの内周端縁5から、回転軸の軸心L
1 と平行なアキシャル一方向に突設された複数個の制動把持舌片10Bとを、一体状として、有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプケーシング(2)内に固設される閉円環板状リング体(10A)と、
該リング体(10A)の内周端縁(5)から回転軸(1)の軸心(L1 )と平行なアキシャル一方向(A1 )に突設され、回転軸(1)の外周面(1A)に接触可能な複数個の制動把持舌片(10B)と、
を一体として有するクランプリング(10)を備え、
アクチュエータ(6)から発生した制動のための付勢力(F6 )を、力伝達系を介して、上記制動把持舌片(10B)に対しラジアル方向力(FR )として、付与して、上記回転軸(1)を停止状態に保つように構成したことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
上記力伝達系の一部に、倍力手段としてのトグル機構(Tg )を、具備し、
該トグル機構(Tg )は、開脚・閉脚する2枚の板片(36)(37)を、備え、
ラジアル内方側の板片(37)は、上記制動把持舌片(10B)に対して、上記ラジアル方向力(FR )を付与して、上記回転軸(1)を停止状態に保つように構成した請求項1記載のクランプ装置。
【請求項3】
上記ラジアル内方側の板片(37)は、その内端辺部(38)がストレート状であり、かつ、横断面が略半円弧状であると共に、
上記制動把持舌片(10B)には、横断面が円弧状の凹溝(15)が形成され、該凹溝(15)にて、上記内端辺部(38)を、受けるように構成した請求項2記載のクランプ装置。
【請求項4】
横断面が円弧状の上記凹溝(15)は、溝最深部位に、当接逃げ用小凹溝(22)が、形成されている請求項3記載のクランプ装置。
【請求項5】
ラジアル内方向の上記板片(37)の内端辺部(38)は、回転軸(1)の軸心方向から見て、中央切欠部(40)を有し、左右端部(41)(41)のみが、制動把持舌片(10B)に圧接自在とした請求項3又は4記載のクランプ装置。
【請求項6】
上記制動把持舌片(10B)の自由状態で、その内周面が、舌片先端方向にしだいに拡径するテーパ面(30)を有すると共に、上記ラジアル方向力(FR )が付与された回転軸(1)の停止状態では、上記テーパ面(30)が回転軸(1)の外周面(1A)に接触するように構成した請求項1,2,3,4又は5記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、
図13と
図14に示すようなクランプ装置を提案し、特許を取得している(特許文献1参照)。
即ち、
図13と
図14に示す従来例は、回転軸51を停止状態に保つための付勢力を付与するために、4個の油圧アクチュエータ52,52,52,52を回転軸51の周囲に配設する。そして、トグル機構53を介して、横断面円弧状の制動把持片54を、押圧して、制動把持片54の内面を強く回転軸51に、圧接させる構成である。
【0003】
また、隣り合う制動把持片54,54の間には、ゴム等の弾性反撥部材55が介設される。
各制動把持片54の外周面には浅い凹窪部56が形成される。この凹窪部56に、トグル機構53の(ラジアル内方側の)板片57が嵌込まれる。
【0004】
そして、第1カップ61と第2カップ62にて形成された密封状空室部58内に、油圧が作用すれば、矢印F52にて示す押圧力が、トグル機構53に作用する。
トグル機構53が開脚方向に作動することで、(ラジアル内方側の)板片57の内端辺部57Aが、制動把持片54を押圧し、これによって、回転軸51の外周面に対し、強い押圧力をもって、制動状態となる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近のクランプ装置にあっては、(工作機械等の技術分野において)超高精度の回転静止(停止)保持性能が要求される場合が発生しており、回転軸が1°の、何百分の一乃至何千分の一の(秒単位の)回転静止(停止)保持性能が、厳しく求められる。
【0007】
図13と
図14に示すクランプ装置であっても、十分に対応できない厳しい要求である。つまり、
図13と
図14に示したクランプ装置に於ては、以下の点で問題が残っている。
即ち、(i)複数の制動把持片54,54の間には、弾性反撥部材55が介設されているので、複数の制動把持片54,54,54,54はバラバラ(独立的)に回転軸51に対して回転阻止力を発揮している状況であって、角度が秒単位の回転静止保持が困難である。(ii)制動把持片54の凹窪部56の左右の各内端と、(トグル機構53の)板片57のラジアル方向左右角部との微小間隙の存在によって、バラバラ(独立的)に回転阻止力を発揮している状況の制動把持片54の一個が動いて、秒単位の回転静止保持が崩れる。(iii)4個の制動把持片54,54,54,54を内嵌状に保持する把持片受け輪59の各窓部59Aの内端面と、板片57との公差の存在、及び、4個の板片57に関する各々の上記公差の大小の存在によって、制動把持片54の内の一個が動き始めて、回転軸の秒単位の回転静止保持が崩れる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係るクランプ装置は、クランプケーシング内に固設される閉円環板状リング体と;該リング体の内周端縁から回転軸の軸心と平行なアキシャル一方向に突設され、回転軸の外周面に接触可能な複数個の制動把持舌片と;を一体として有するクランプリングを備え;アクチュエータから発生した制動のための付勢力を、力伝達系を介して、上記制動把持舌片に対しラジアル方向力として、付与して、上記回転軸を停止状態に保つように構成した。
【0009】
また、上記力伝達系の一部に、倍力手段としてのトグル機構を、具備し;該トグル機構は、開脚・閉脚する2枚の板片を、備え;ラジアル内方側の板片は、上記制動把持舌片に対して、上記ラジアル方向力を付与して、上記回転軸を停止状態に保つように構成した。
また、上記ラジアル内方側の板片は、その内端辺部がストレート状であり、かつ、横断面が略半円弧状であると共に;上記制動把持舌片には、横断面が円弧状の凹溝が形成され、該凹溝にて、上記内端辺部を、受けるように構成した。
【0010】
また、横断面が円弧状の上記凹溝は、溝最深部位に、当接逃げ用小凹溝が、形成されている。
また、ラジアル内方向の上記板片の内端辺部は、回転軸の軸心方向から見て、中央切欠部を有し、左右端部のみが、制動把持舌片に圧接自在とした。
また、上記制動把持舌片の自由状態で、その内周面が、舌片先端方向にしだいに拡径するテーパ面を有すると共に、上記ラジアル方向力が付与された回転軸の停止状態では、上記テーパ面が回転軸の外周面に接触するように構成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るクランプ装置は、回転軸を秒単位の角度をもって、超高精度の回転静止(停止)保持が初めて可能となった。しかも、回転軸に近い領域における、部品点数が著しく減少可能となり、組立作業も容易である。さらに、回転軸に近い領域における構成部品の寿命が長く、全体の耐久性も優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示す一部断面側面図である。
【
図3】トグル機構を示す図であって、(A)は正面図、(B)は拡大横断面図である。
【
図5】クランプリングの一実施例を示す正面図である。
【
図8】クランプリングと、トグル機構のラジアル内方向の板片との、当接部位を説明した斜視図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態を示す一部断面側面図である。
【
図11】
図10と
図1の要部を比較して説明するための図であって、(A)は
図10の要部拡大一部断面斜視図、(B)は
図1の要部平面図である。
【
図14】従来例を示す図であって、(A)は要部断面正面図、(B)は一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1~
図8は、本発明の実施の一形態を示し、1は回転軸であり、クランプケーシング2の孔部に挿通され、(
図1,
図2の左方の図外に設けられた図示省略の)軸受にて、上記回転軸1は回転自在に枢着されている。
【0014】
クランプケーシング2は、(
図1,
図2の図例では、)工作機械のボディ等の固定部3に(図示省略のボルト等によって)固設される第1部材2Aと、この第1部材2Aの外端面に(図示省略のボルト等によって)固設される短円筒体状の第2部材2Bとを、有する。
第1部材2Aには、回転軸1の外径よりも、十分大径の孔部12Aと、この孔部12Aのアキシャル内方角部を切欠いた矩形状凹部12Bとを有する。
【0015】
そして、10はクランプリングである。
図5~
図7、及び、
図1,
図2等に示す如く、このクランプリング10は、クランプケーシング2の矩形状凹部12Bの軸心直交面13に、ボルト等の固着具14にて固着される閉円環板状リング体10Aと、この閉円環板状リング体10Aの内周端縁5から、回転軸1の軸心L
1 と平行なアキシャル一方向A
1 に突設された複数個の制動把持舌片10Bとを、一体として、有する。
このように、閉円環板状リング体10Aと、複数個の制動把持舌片10Bを、一体として有するクランプリング10を、本発明は具備する。
【0016】
クランプリング10の上記制動把持舌片10Bは、(
図2に示すように、)回転軸1の外周面1Aに接触可能(圧接制動可能)である。
そして、
図1、
図2に示す実施形態に於ては、アクチュエータ6は油圧式の場合を示す。このアクチュエータ6から発生する制動のための付勢力F
6 は、「力伝達系」を介して、制動把持舌片10Bに対しラジアル方向力(ベクトル)F
R (
図2と
図3参照)として、付与する。
【0017】
このラジアル方向力(ベクトル)F
R によって、
図1から
図2に弾性変形したクランプリング10は、
図2に示した接触面圧力Pの分布を示す山型をもって、強く回転軸1の外周面1Aに圧接し、(回転)停止状態に保つ。
【0018】
また、
図1~
図3に示したように、「力伝達系」の一部に、倍力手段としてのトグル機構Tg を、介設する。なお、本発明における「力伝達系」とは、
図1,
図2の実施形態(及び、後述する
図9に示した他の実施形態)では、アクチュエータ6が力F
6 を付与する押圧端面6Pから、制動把持舌片10Bの回転軸圧接面までが、該当する。
【0019】
図3(A)はトグル機構Tg の正面図であり、
図3(B)はその拡大断面図である。この
図3に於て、ラジアル外方側の(第1)板片36は、外端36Aが円弧状であり、下辺がストレート状(直線状)である。ラジアル内方側の(第2)板片37は、上辺が直線状(ストレート状)であって、第1板片36の下辺と接触状態となる。また、ラジアル内方側の(第2)板片37の内端辺部38がストレート状である。
【0020】
図3(B)を最終開脚状態として、各板片36,37が、水平状対称線L
6 に関して、角度θをもって、開脚しているとする。アクチュエータ6の押圧端面6Pから矢印のような付勢力F
6 が付与されると、各板片36,37には、F
36,F
37をもって示されるベクトルが生じる。β=90°-θとすれば、F
R =F
37×cosβにて示される大きなラジアル内方向のベクトルF
R が、制動把持舌片10Bに対して作用する(
図2参照)。
【0021】
このようにして、ラジアル内方側の板片37───つまり第2板片37───は、制動把持舌片10Bに対してラジアル方向力(ベクトル)F
R を、付与することができ、
図2に示すように、回転軸1を停止状態(回転静止保持状態)に保つ。
【0022】
ところで、制動把持舌片10Bには、横断面円弧状の凹溝15が形成されている。この円弧状の凹溝(U字型溝)15が、上述の(第2)板片37の内端辺部38を、受けるように、組付けられている。なお、ラジアル内方(第2)板片37の内端辺部38は、
図3(A)に示す如く直線状である。この直線状の内端辺部38に対応するように、クランプリング10の制動把持舌片10Bの円弧状凹溝15の最深部位15Bは、軸心L
1 と平行な方向───アキシャル方向───から見て、直線状とする。
なお、
図1,
図2に示すアクチュエータ6は、従来例の
図13のアクチュエータ52と同様の構成であり、かつ、前記特許文献1にて公知のものであるので、(詳細な)説明を省略する。
【0023】
次に、
図4はクランプ装置の全体を、軸心L
1 方向から見た正面図であって、(
図1,
図2に示した)アクチュエータ6が、例えば、6個配設されていることを示す。つまり、回転軸1が挿入されるべき孔の周縁に沿って、同数(6個)の制動把持舌片10Bが、対応するように、等ピッチで配設される。
【0024】
そして、
図5~
図8に於て、クランプリング10の形状と構造を、説明する。閉円環板状リング体10Aは、軸心L
1 に直交する軸心直交面状の閉円形板に、固着具14(
図1,
図2参照)としてのボルトが挿通される貫孔(取付孔)11を等ピッチで、有する。
【0025】
また、
図1,
図2及び
図5~
図8から明らかなように、制動把持舌片10Bの肉厚(平均)寸法が、閉円環板状リング体10Aよりも、大きく形成され、2つの凸部16,17の間に、深目に凹溝15を形成している。
【0026】
また、把持舌片10Bと閉円環板状リング体10Aとの直角状連結部10Cは、断面形状が内外が緩やかな弯曲面に形成される(
図1,
図2参照)。しかも、この直角状連結部10Cは、肉厚寸法も緩やかに変化し、閉円環板状リング体10A側から把持舌片10Bに至るまで、しだいに肉厚が増加するよう形成している。そして、
図1に示す制動把持舌片10Bの自由状態では、舌片内周面が、舌片先端方向にしだいに拡径するテーパ面30を有する。そして、
図2に示すように、ラジアル内方向力F
R が付与された回転軸1の停止状態では、テーパ面30は、回転軸1の外周面1Aに適切な面圧力Pをもって接触(圧接)する。
【0027】
次に、
図9は第2の実施形態を示す。アクチュエータ6が第1の実施形態の油圧式ではなく電磁式である。つまり、電磁コイル25を有する固定鉄心20と、これに吸着自在な可動鉄心19を、備える。この可動鉄心19の孔部に、作動軸体18が挿通固着され、作動軸体18の内端に形成された外鍔部18Aが、内部のトグル機構Tg の板片36,37に、当接している。
【0028】
この作動軸体18の外鍔部18Aの内端面が、2枚の八の字形状を成す板片36,37を押圧する前記押圧端面6Pを有することとなる。コイルバネ27によって、作動軸体18は、
図9の右方向に弾発付勢される。つまり、コイルバネ27にて、ギャップΔGが形成される。
【0029】
電磁コイル25の通電によって可動鉄心19が吸着されると、ギャップΔGが零となり、作動軸体18の端面6Pが板片36,37のラジアル内端を押圧し、板片36,37が開脚方向に作動しつつ、クランプリング10の制動把持舌片10Bは、回転軸1の外周面1Aに圧接する(
図2と同様の状態として圧接する)。この
図9におけるその他の構成は、
図2と同様である(同一符号は同様の構成である)。
【0030】
次に、
図10と
図11(A)に本発明の変形例を示す。
即ち、
図10と
図11(A)に示したように、横断面が円弧状の凹溝15は、溝最深部位15Bに、内端辺部38の当接を逃げるために、当接逃げ用小凹溝22が、形成されている。
図10と
図11(A)では、この小凹溝22は(断面が)小さな矩形の場合を示す。
【0031】
図1~
図9の場合には、第2板片37の内端辺部38の断面円弧形状と、断面円弧状凹溝15との、僅かな形状・寸法の誤差や力の掛り方等に起因して、
図11(B)に示すように、凹溝15の中心線L
15に対して矢印a,bの如く、第2板片37の中心線L
37が遊ぶ(振れる)場合も考えられる。
【0032】
それに対し、
図10と
図11(A)のように当接逃げ用小凹溝22を最深部位15Bに形成すれば、
図11(A)に示す如く、図の左右2点(側面)P
L ,P
R のみが強く当接して、上記のように、中心線L
37が振れることを、確実に防止することができる。これにより、クランプリング10の舌片10Bが高精度に正規の姿勢と形状を維持しながら回転軸1を把持し、極微小の回転軸回転をも確実に阻止可能となる。
【0033】
次に、
図12に示す変形例を説明すると、第2板片37───ラジアル内方の板片37───の内端辺部38は、回転軸1の軸心方向から見て、中央切欠部40を有する。この中央切欠部40の形成によって、内端辺部38の左右端部41,41のみが、制動把持舌片10Bに圧接自在とする。
【0034】
この
図12に於て、内端辺部38の左右端部41,41が回転軸1の外周面に対し、圧接した状態の接触面圧力P
1 を示す。この
図12からも明らかな如く、左右端部41,41の接触面圧力P
1 ,P
1 が急峻山型42,42となる。従って、トグル機構Tg の第2板片37から制動把持舌片10Bに作用するラジアル内方向の押圧力(ベクトル)F
R は、有効的に制動力(把持力)として、働く。
【0035】
本発明は、以上詳述したように、クランプケーシング2内に固設される閉円環板状リング体10Aと;該リング体10Aの内周端縁5から回転軸1の軸心L1 と平行なアキシャル一方向A1 に突設され、回転軸1の外周面1Aに接触可能な複数個の制動把持舌片10Bと;を一体として有するクランプリング10を備え;アクチュエータ6から発生した制動のための付勢力F6 を、力伝達系を介して、上記制動把持舌片10Bに対しラジアル方向力FR として、付与して、上記回転軸1を停止状態に保つように構成したので、複数個の制動把持舌片10Bは、(一個の)閉円環板状リング体10Aに連結一体化されており、周方向(回転軸1の回転方向)には、全舌片10Bが共働き(協力)して、微小移動さえ起こさず、回転軸1の回転静止保持性能は極めて優る。特に、最近の産業界に於て要求されるような回転軸が1°の何千分の一の(秒単位の)回転静止保持性能をも、十分に満足させることができる。さらに、制動把持舌片10Bは一体ものとして、閉円環板状リング体10Aにて、連結一体化されているので、組立作業が著しく容易・迅速となり、かつ、制動(把持)性能も常に安定する。
【0036】
また、上記力伝達系の一部に、倍力手段としてのトグル機構Tg を、具備し;該トグル機構Tg は、開脚・閉脚する2枚の板片36、37を、備え;ラジアル内方側の板片37は、上記制動把持舌片10Bに対して、上記ラジアル方向力FR を付与して、上記回転軸1を停止状態に保つように構成したので、アクチュエータ6の大きさ(容積)を減少することが可能となり、クランプ装置全体の容積のコンパクト化を図り得る。かつ、全体の重量も低減できる。
【0037】
また、上記ラジアル内方側の板片37は、その内端辺部38がストレート状であり、かつ、横断面が略半円弧状であると共に;上記制動把持舌片10Bには、横断面が円弧状の凹溝15が形成され、該凹溝15にて、上記内端辺部38を、受けるように構成したので、力伝達系の損失が低減できて、高い力伝達効率をもって、アクチュエータ6からの付勢力を、有効にかつ正確に、制動把持舌片10Bに伝えることができて、強力かつ高性能なクランプ作用を行う。
【0038】
また、横断面が円弧状の上記凹溝15は、溝最深部位に、当接逃げ用小凹溝22が、形成されているので、
図11(B)に示したように、凹溝最深部位15Bにおいて、板片37の内端辺部38が、「線接触」となって、同図中の矢印a,bの如く振れる虞れが無くなり、凹溝15の左右内側面にて、安定した力伝達が行い得る。これによって、強力かつ安定した(回転軸1の)回転静止保持性能を発揮できる。
【0039】
また、ラジアル内方向の上記板片37の内端辺部38は、回転軸1の軸心方向から見て、中央切欠部40を有し、左右端部41,41のみが、制動把持舌片10Bに圧接自在としたので、
図12に示したように、左右端部41,41が回転軸1の外周面に圧接した際の、接触面圧力P
1 ,P
1 が急峻山型42,42として、有効な、回転軸1への把持力を、発揮し、一層、高精度な1°の数千分の一の秒単位の回転静止保持を行い得る。
【0040】
また、上記制動把持舌片10Bの自由状態で、その内周面が、舌片先端方向にしだいに拡径するテーパ面30を有すると共に、上記ラジアル方向力FR が付与された回転軸1の停止状態では、上記テーパ面30が回転軸1の外周面1Aに接触するように構成したので、回転軸との接触面圧力Pが(極端に高いピークを示さず)テーパ面30にて比較的均等な(低い目の)面圧力をもって、接触させ得る。従って、舌片10Bの回転軸接触面の損傷を、抑制できる。
【符号の説明】
【0041】
1 回転軸
1A 外周面
2 クランプケーシング
5 内周端縁
6 アクチュエータ
10 クランプリング
10A 閉円環板状リング体
10B 制動把持舌片
15 円弧状凹溝
22 当接逃げ用小凹溝
30 テーパ面
36 板片
37 板片
38 内端辺部
40 中央切欠部
41 左右端部
A1 アキシャル一方向
F6 付勢力
FR ラジアル方向力
L1 軸心
Tg トグル機構